説明

容器入り大根おろし含有液状調味料

【課題】大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料であって、容器内の大根おろしの分散性が良好であり、かつ、喫食時には口腔内で大根おろしの食感を認識しやすい容器入り大根おろし含有液状調味料を提供する。
【解決手段】大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料において、乾燥マッシュポテトを添加してある容器入り大根おろし含有液状調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料に関し、大根おろしの沈殿が生じ難く内容物を均一な状態で注ぎ出すことができ、かつ、喫食した際には口腔内で大根おろしの食感を認識しやすい容器入り大根おろし含有液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
大根おろしのさっぱりとした食味は、食事の美味しさを引き立て、食欲を刺激するため、例えば、液状調味料と合わせててんぷらや鍋料理のつけだれとして利用される。このような大根のおろしを加えた液状調味料は、容器入りの製品として、店舗で市販もされている。
【0003】
大根のおろしを加えた液状調味料を容器入りの製品としたものは、大根おろしの分散性を向上させるため一般的に澱粉等の増粘材が添加される。このように増粘剤が添加されて適度増粘していることで、製品の保存中に大根おろしの沈殿が生じ難くなる。また、沈殿が生じた場合であっても容器ごと軽く振とうして再分散した後、その分散状態を一定時間保持することができる。このような増粘材による分散性の改善により、使用時に内容物を均一な状態で注ぎ出すことができる。
【0004】
しかしながら、このように増粘材を添加すると喫食時に口腔内で大根おろしの食感を感じ難くなるといった問題があった。大根のおろしを加えた液状調味料については、例えば、特開平08−317771号(特許文献1)には、おろし野菜含有液状調味料を野菜などにかけた場合に当該おろし野菜含有液状調味料が容器底部に流れ落ちることを防止するため、冷凍おろし野菜を用いることが提案されている。また、特開2002−142705号(特許文献2)には、おろし含有食品の見た目のボリューム感を得るために、おろし原料である可食性植物を加熱処理した後、磨砕処理することが提案されている。しかしながら、これらの文献では増粘材と大根おろしを含む液状調味料を喫食した際に口腔内で大根おろしの食感を感じ難くなるという上述の問題については一切検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−317771号
【特許文献2】特開2002−142705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料であって、容器内の大根おろしの分散性が良好であり、かつ、喫食時には口腔内で大根おろしの食感を認識しやすい容器入り大根おろし含有液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の食材を添加した容器入り大根おろし含有液状調味料は、意外にも容器内の大根おろしの分散性が良好であり、かつ、喫食時には口腔内で大根おろしの食感を認識しやすいことを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料において、乾燥マッシュポテトを添加してある容器入り大根おろし含有液状調味料、
(2)乾燥マッシュポテトの添加量が大根おろし含有液状調味料に対して0.05〜5%である(1)記載の容器入り大根おろし含有液状調味料、
(3)粘度が0.1〜30Pa・sである(1)又は(2)に記載の容器入り大根おろし含有液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料であって、大根おろしの沈殿が生じ難く内容物を均一な状態で注ぎ出すことができ、かつ、喫食した際には口腔内で大根おろしの食感を認識しやすい容器入り大根おろし含有液状調味料を提供できる。したがって、大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料の更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料を詳述する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
本発明の大根おろし含有液状調味料とは、大根おろしを含む液状調味料である。液状調味料の具体例としては、例えば、乳化液状ドレッシング、分離液状ドレッシング、あるいは、食用油脂を原材料として配合していないドレッシングタイプ調味料、更には、種々のソース、たれ等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いる前記大根おろしとは、大根の粉砕物をいい、例えば、常法により、コミトロール、フードカッター、サイレントカッター、マスコロイダー、チョッパー等の粉砕処理装置や、回転すりおろし盤を備えたすりおろし装置等で粉砕処理したもの等が挙げられる。
【0013】
大根おろし含有液状調味料に対する前記大根おろしの含有量としては、液状調味料と大根おろしの食味とのバランスを考慮し、生換算で、好ましくは3〜70%、より好ましくは5〜60%である。
【0014】
本発明において、容器入り大根おろし含有液状調味料とは、前記大根おろし含有液状調味料が容器に充填されたものである。容器としては、特に制限は無く、一般的に食品の保存に利用される種々の容器を使用することができ、例えば、ガラス、金属、樹脂、あるいは紙等からなる容器が挙げられる。
【0015】
本発明は、上述した容器入り大根おろし含有液状調味料において、乾燥マッシュポテトを添加してあることを特徴とする。
【0016】
ここで、前記乾燥マッシュポテトとは、加熱したジャガイモを裏ごし処理、あるいは、磨砕処理等により粉砕後、乾燥したものであり、例えば、インスタントマッシュポテトと称されるもの等が挙げられる。前記乾燥マッシュポテトは、液状調味料に添加すると水戻しされるので、そのまま添加して用いることができるが、予め、湯で戻してから添加すると水戻りがしやすく好ましい。
【0017】
本発明においては、前記乾燥マッシュポテトを添加してあることが肝要であり、これにより、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料は、適度に増粘するため、製品の保存中に大根おろしの沈殿が生じ難くなり、また、沈殿が生じた場合であっても容器ごと軽く振とうして再分散した後、その分散状態を一定時間保持することができる。そのため、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料は、使用時に内容物を均一な状態で注ぎ出すことができるものとなる。
【0018】
更に、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料は、大根おろしの分散性が改善していることに加えて、喫食時に口腔内で大根おろしの食感を認識しやすいという効果を奏する。このように、口腔内で大根おろしの食感を認識しやすくなるのは、乾燥マッシュポテトにより、大根おろし含有液状調味料を喫食して嚥下した際に残留感のある物性、つまり、口腔内に大根おろし含有液状調味料が長く留りやすい物性に改質されているためである。この乾燥マッシュポテトによる残留感の改質は、べたつき感を生じさせることがないため大根おろしの食感を認識しやすいものとなる。
【0019】
これに対して、前記乾燥マッシュポテトではなく、乾燥処理を施していないマッシュポテトを添加した場合は、添加したマッシュポテト自体が沈殿しやすいため、使用時に軽く振とうしたとしても内容物を均一な状態とし難く好ましいものとならない。また、乾燥マッシュポテトを添加せず、従来のように澱粉等の増粘材を単に添加した場合は、液状調味料が増粘してトロミが付与されることにより、大根おろしの分散性は改善されるものの、喫食時に口腔内で大根おろしの食感を認識し難いものとなる。
【0020】
前記乾燥マッシュポテトの添加量は、液状調味料に適度なトロミを付与して大根おろしの分散性を改善し、更に、喫食時に口腔内で大根おろしの食感を認識しやすくなるように物性を改善する効果が得られやすい点から、大根おろし含有液状調味料に対して、好ましくは0.05〜5%、より好ましくは0.1〜3%である。前記範囲よりも添加量が少ないと前記改質効果が得られ難く、一方、前記範囲よりも多いと、乾燥マッシュポテトにより液状調味料の食感がざらつく場合があるためである。更に、喫食時に口腔内で大根おろしらしい自然な食感を得る点からは、前記乾燥マッシュポテトの添加量は、生換算した大根おろし100部に対して、乾燥マッシュポテトの添加量が好ましくは1〜40部、より好ましくは3〜30部である。
【0021】
また、本発明においては、上述の乾燥マッシュポテトを添加して適度な粘性を付与することにより大根おろしの分散性を改善するが、その際の大根おろし含有液状調味料の粘度としては、具体的には、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.3Pa・s以上である。一方、粘度の上限としては、大根おろしの含有量にもよるが、液状調味料としての使いやすさを考慮し好ましくは30Pa・s以下である。
【0022】
前記粘度は、BH形粘度計で、品温20℃、回転数20rpmの条件で、粘度が0.375Pa・s未満のときローターNo.1、0.375Pa・s以上1.5Pa・s未満のときローターNo.2、1.5Pa・s以上3.75Pa・s未満のときローターNo.3、3.75Pa・s以上7.5Pa・s未満のときローターNo.4、7.5Pa・s以上15Pa・s未満のときローターNo.5、15Pa・s以上のときローターNo.6を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。
【0023】
なお、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料には、上述した大根おろし、乾燥マッシュポテトの他に、本発明の効果を損なわない範囲で液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し配合することができる。このような原料としては、例えば、ニンジン、リンゴ等の野菜・果実類、食酢、食塩、砂糖、動植物のエキス類などの各種調味料、澱粉分解物、デキストリン、デキストリンアルコール等の糖類、澱粉、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の増粘材、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化材、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤等が挙げられる。
【0024】
本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料の製造方法は、上述した大根おろし、及び乾燥マッシュポテトを配合する他は、従来の一般的な容器入り液状調味料の製造方法に準じ、配合原料を略均一に混合し、容器詰めすることにより製造することができる。
【0025】
次に、本発明を実施例、比較例及び試験例に基づき、更に説明する。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
下記の配合割合に準じ、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。すなわち、まず、乾燥マッシュポテトに5倍量の湯(90℃)加えて水戻しした。次に、この水戻ししたマッシュポテト、大根おろし、醤油、食酢、食塩及び残りの清水を撹拌タンクに投入して均一に混合することにより、大根おろし含有液状調味料を製した。そして、得られた大根おろし含有液状調味料を250mL容量の蓋付き樹脂製透明容器(容器材質:ポリエチレンテレフタレート(PET))に充填して次いで密栓し、容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は1Pa・sであった。
【0027】
なお、本実施例においては、乾燥マッシュポテトの添加量は、大根おろし含有液状調味料に対して2%であり、生換算した大根おろし100部に対して10部である。
【0028】
<配合割合>
大根おろし 20%
醤油 20%
食酢 10%
食塩 2%
乾燥マッシュポテト 2%
α化澱粉 0.5%
キサンタンガム 0.15%
清水 残余
―――――――――――――――――――――
合計 100%
【0029】
[比較例1]
実施例1において、乾燥マッシュポテトを配合せず、変わりに茹でてすりつぶしたジャガイモ8%を配合した以外は同様にして容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は1Pa・sであった。
【0030】
[比較例2]
実施例1において、乾燥マッシュポテトを配合せず、変わりにα化澱粉1%を配合した以外は同様にして容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は1Pa・sであった。
【0031】
[比較例3]
実施例1において、乾燥マッシュポテトを配合せず、変わりにキサンタンガム0.25%を配合した以外は同様にして容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は1Pa・sであった。
【0032】
[比較例4]
実施例1において、乾燥マッシュポテトを配合しなかった以外は同様にして容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は0.3Pa・sであった。
【0033】
[試験例1]
添加剤の種類が大根おろし含有液状調味料の大根おろしの分散性と食味に与える影響を調べるために以下の試験を行った。すなわち、実施例1、並びに比較例1乃至4で得られた大根おろし含有液状調味料における大根おろしの分散性及び食味喫食し、下記方法により評価した。結果を表1に示す。
【0034】
<大根おろしの分散性の評価方法>
容器入り大根おろし含有液状調味料を容器ごと振って内容物を略均一に混合した後1分間経過後の沈殿物の有無を確認し、沈殿物があった場合には沈殿物の種類を確認した。
【0035】
<大根おろしの食味の評価方法>
大根おろし含有液状調味料5gを口にふくんで嚥下した際の残留感、べたつき感及び大根おろしの食感の認識のしやすさについて下記評価基準で評価した。
残留感
A:残留感がある。
B:残留感がややある。
C:残留感がない。
べたつき感
A:べたつき感がない。
B:べたつき感がややある。
C:べたつき感がある。
大根おろしの食感の認識のしやすさ
A:大根おろしの食感をはっきりと認識できる。
B:大根おろしの食感を認識できる。
C:大根おろしの食感をやや認識し難い。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、乾燥マッシュポテトを添加してある実施例1の容器入り大根おろし含有液状調味料は、乾燥マッシュポテトを添加していない比較例4の容器入り大根おろし含有液状調味料に比べて増粘しており、大根おろしの分散性が良好であることが理解できる。更に、食味に関し、乾燥マッシュポテトを添加してある実施例1の容器入り大根おろし含有液状調味料は、一般的な増粘材を用いた比較例2及び3の大根おろし含有液状調味料と比べて残留感のあるがべたつき感はない物性に改質され、その結果、大根おろしの食感を認識しやすいものとなっていることが理解できる。これに対して、乾燥処理を施していないマッシュポテトを添加した比較例1の容器入り大根おろし含有液状調味料は、添加したマッシュポテト自体が沈殿し好ましいものとならなかった。また、増粘材を単に添加した比較例2及び3の容器入り大根おろし含有液状調味料は、液状調味料が増粘してトロミが付与されることにより、大根おろしの分散性は改善されるものの、喫食時に口腔内で大根おろしの食感を認識し難く好ましいものではなかった。
【0038】
[実施例2]
下記の配合割合に準じ、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。乾燥マッシュポテト、大根おろし、醤油、砂糖、食塩、澱粉、粉末だし及び清水を二重釜に投入して撹拌しながら90℃まで加熱することにより、大根おろし含有液状調味料を製した。そして、得られた大根おろし含有液状調味料を250mL容量の蓋付き樹脂製透明容器(容器材質:ポリエチレンテレフタレート(PET))に充填して次いで密栓し、容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は20Pa・sであった。
【0039】
なお、本実施例においては、乾燥マッシュポテトの添加量は、大根おろし含有液状調味料に対して3%であり、生換算した大根おろし100部に対して5部である。
【0040】
試験例1に準じて得られた容器入り大根おろし含有液状調味料の分散性を評価したところ、沈殿物がなく分散性が良好であった。更に、試験例1に準じて、残留感、べたつき及び大根おろしの食感の認識のしやすさについて評価したところ、口腔内での残留感があり、べたつき感はなく、大根おろしをはっきりと認識でき好ましかった。
【0041】
<配合割合>
大根おろし 60%
醤油 20%
砂糖 5%
食塩 2%
乾燥マッシュポテト 3%
澱粉 2%
粉末だし 1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――
合計 100%
【0042】
[実施例3]
下記の配合割合に準じ、本発明の容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。乾燥マッシュポテト、大根おろし、醤油、砂糖、食塩、キサンタンガム、粉末だし及び清水を二重釜に投入して撹拌しながら90℃まで加熱することにより、大根おろし含有液状調味料を製した。そして、得られた大根おろし含有液状調味料を250mL容量の蓋付き樹脂製容器に充填して次いで密栓し、容器入り大根おろし含有液状調味料を製した。得られた大根おろし含有液状調味料の粘度は0.2Pa・sであった。
【0043】
なお、本実施例においては、乾燥マッシュポテトの添加量は、大根おろし含有液状調味料に対して1%であり、生換算した大根おろし100部に対して20部である。
【0044】
試験例1に準じて得られた容器入り大根おろし含有液状調味料の分散性を評価したところ、沈殿物がなく分散性が良好であった。更に、試験例1に準じて、残留感、べたつき及び大根おろしの食感の認識のしやすさについて評価したところ、口腔内での残留感があり、べたつき感はなく、大根おろしをはっきりと認識でき好ましかった。
【0045】
<配合割合>
大根おろし 5%
醤油 5%
砂糖 2%
食塩 1%
乾燥マッシュポテト 1%
キサンタンガム 0.1%
粉末だし 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――
合計 100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大根おろしを含む容器入り大根おろし含有液状調味料において、乾燥マッシュポテトを添加してあることを特徴とする容器入り大根おろし含有液状調味料。
【請求項2】
乾燥マッシュポテトの添加量が大根おろし含有液状調味料に対して0.05〜5%である請求項1記載の容器入り大根おろし含有液状調味料。
【請求項3】
粘度が0.1〜30Pa・sである請求項1又は2に記載の容器入り大根おろし含有液状調味料。