説明

容器内の吸液部材を遮蔽した液体容器

【課題】透明な容器の内部に吸液部材が取り付けられた構造を有する容器の美観を高めるため、容器内部にほぼ垂直に挿入されている吸液部材を、容器の外部から見た場合に遮蔽された状態とし得る容器の構造の開発である。
【解決手段】一部または全部が透明な容器の内部に、吸液部材が取り付けられた構造を有する容器において、容器の外面または/ 及びその裏面の一部または全部に、縦縞状または斜縞状の曲面または多角面が形成され、吸液部材が容器の内部に取り付けられてなる、外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状の芳香剤、消臭剤等の揮発性を有する薬剤を、適量ずつ蒸散、押し出しまたはスプレイして使用する容器の構造に関するものである。更に詳しく述べると、通常これらの液状の薬剤は透明な容器に収納され、その内部に挿入された吸液部材を通して吸い上げられ、容器上部から蒸散、押し出しまたは吹きつけられる構造となっている。これらの薬剤は使用目的上容器のデザインや美観が重視されるため、外部から容器内の吸液部材が見えることがその障害となっている。このためこの課題を解決した構造及び機能を有する透明な液体容器が求められている。
【背景技術】
【0002】
透明な容器の内部に挿入されている吸液部材は外観上、容器全体のデザインや美観の大きな障害となっている。これらの課題の解決方法として、例えば、特開2001-322643 公報には断面が楕円形の透明容器に液状の薬剤を入れた場合、正面または背面から見ると光の屈折のため、楕円の長軸の左右の部分は死角となって見えない現象を利用して、その部分に吸液部材を取り付ける方法が開示されている (特許文献1)。
【0003】
しかし、この構造の容器では正面または背面以外の角度から見た場合には、吸液部材がそのままの形に見える他、通常液体が入っていない容器の上部でも光の屈折が起こらないため、吸液部材がそのまま見えるという問題がある。更に、この構造は通常最も使用頻度が高い断面形状である円形の容器では、楕円形の容器と較べて吸液部材が遮蔽される見掛上死角となる範囲が狭くなるため、容器の仕様が限定される点にも問題がある(特許文献1、図3及び図4)。
【0004】
その他、特開2004-267382 公報には透明な容器の内部に吸液部材を取り付け、透明な容器の壁面と吸液部材との間に不透明なフィルムを設置することによって、外部から見た時吸液部材が遮蔽されて見えないようにする構造が開示されている (特許文献2)。
【0005】
この構造によれば、容器内の吸液部材は不透明なフィルムによって遮蔽されるが、外部からは遮蔽材の不透明なフィルムが大きく見えることになり、透明な液体容器としての美観が損なわれる。
【特許文献1】特開2001-322643 公報
【特許文献2】特開2004-267382 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように透明な容器の内部に吸液部材が挿入された構成と、容器全体のデザインや美観を高めるための問題点にかんがみ、通常容器上部の入り口から容器内部に垂直に挿入されている吸液部材を、容器の外部から見た場合に遮蔽された状態とすることができる、容器の構造を開発して提供しようとするものである。尚、ここで外観上吸液部材を遮蔽するとは、必ずしも完全に吸液部材を遮蔽することを意味するのではなく、吸液部材の像を分散させ或いは不鮮明にして、デザイン上の美観を妨げないようにする場合も含まれている。更に本発明の対象にはデザインや美観が特に重視されない汎用の液体容器も含まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
透明な液体が入った容器の内部に吸液部材を挿入すると、その像が容器の壁面で屈折されて乱れ変形する。この現象を利用して外部から吸液部材を観察した場合、その像が分散され或いはボケさせて不鮮明とすることによって、吸液部材を遮蔽する方法について検討した。その結果、容器の表面に縦縞状曲面を形成すれば、容器の外部から吸液部材を観察した場合、光が縦縞状曲面で屈折されて分裂・分散し、その像が不鮮明となるため、外観上遮蔽効果があることを見出した。
【0008】
ここで、吸液部材はその機能上容器上部の開口部から底面までほぼ垂直に挿入されている。そのため、容器の表面に縦縞状または斜縞状の曲面を形成したのは、この縦棒状の像を分裂・分散させるためである。より好ましくは縦縞状曲面とすることが好ましい。この縦縞も幾何学的な縦縞に限定されるのではなく、斜縞状の曲面でも同様な効果が認められる範囲で使用可能である。また曲面の他多角面例えば、断面形状が三角形、四角形または台形等の場合にも適用できる。
【0009】
尚、通常容器上部には液が入っていないため、この部分では容器の外面縦縞状曲面としたのみでは、縦棒状の吸液部材の像の分裂・分散が不十分な場合がある。このような場合には容器壁面の裏面にも縦縞状曲面を形成すれば、容器壁面の光の屈折・分散が高められるため、吸液部材の像が乱れ不鮮明とすることができる。このように容器壁面の表裏に縦縞状曲面を形成すれば、容器を使用している間、液が入っている下部では吸液部材の像が一層分裂・分散されて不鮮明となり、容器上部で液が空の部分でも壁面の表裏の屈折作用によって、吸着部材の像が分裂・分散されて不鮮明となり遮蔽効果が得られる。前述のように容器内の液量が減少した場合にも、吸液部材の遮蔽効果が認められ、また容器の表面をこのような形状とした場合でも、外部から容器内の液量が容易に分る。このような点でも引用特許文献等従来知られていた容器と較べて優れている。
【0010】
本発明において、容器本体の表面または裏面、或いは表面及び裏面の両面に形成される縦縞状または斜縞状の曲面または多角面は、容器内にほぼ垂直に取り付けられている吸液部材を外部から見た時、その像を分裂・分散させて不鮮明のボケた状態とすることが目的である。従って、これらの縦縞状または斜縞状の断面形状は、特に限定する必要がないが、容器の外観及び光の屈折を考慮して図1(2) 及び図2(1) 〜(3) に示すように、縦縞状または斜縞状の断面が凸レンズ状または凹レンズ状あるいは多角面状の断面が連続した形状とすることが好ましい。更に本発明の容器の断面は円形に限定されず、楕円形その他多角形でもよい。また断面形状も図3に示すように多角面が容器の表面に連続的に形成された形状でもよい。
【0011】
その他、本発明の容器の吸液部材の材質としては、繊維集合体または、連続気泡からなる発泡プラスチック成形体、毛細管束等或いは、吸い上げ用単管からなり、断面形状が円形、楕円形、三角形、四角形または多角形等が使用可能であり、これらのいずれを使用した場合でも遮蔽効果が得られる。これらを一種以上組み合わせて用いてもよい。尚、容器の外側から吸液部材を見た場合、その像を分裂・分散させて遮蔽効果を高めるためには、吸液部材は可及的に細くすることが好ましい。前述のこれらの知見に基づいて本発明に到達した。
【0012】
すなわち、一部または全部が透明な容器の内部に、吸液部材が取り付けられた構造を有する容器において、容器の外面または/ 及びその裏面の一部または全部に、縦縞状または斜縞状の曲面または多角面が形成されている。吸液部材が容器の内部に取り付けられてなる、外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器である。ここで、容器の断面形状が円形、楕円形、三角形、四角形その他多角形である液体容器が好ましい。また、発明の効果を妨げない範囲で容器の中心線に対して左右対称な形状のものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明には容器の外面または/ 及びその裏面に形成された、縦縞状または斜縞状の曲面の断面が、凸面または凹面が容器の周囲に配置された形状を有し、より好ましくは凸レンズ状または凹レンズ状の断面が連続して容器の周囲に形成された形状を有する、透明な液体容器が好ましい。または容器の外面または/ 及びその裏面に形成された、縦縞状または斜縞状の多角面の断面が、三角形、四角形または台形である、透明な液体容器が好ましい。
【0014】
更に本発明には、吸液部材が繊維集合体または、連続気泡からなる発泡プラスチック成形体、毛細管束或いは、吸い上げ用単管からなり、断面形状が円形、楕円形、三角形、四角形または多角形である、外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器が好ましい。また、容器の内部に取り付けられた吸液部材の取付位置が、容器本体から離れた位置に取り付けられ、より好ましくは容器のほぼ中心線に設けられた入口から底面まで、ほぼ垂直に取り付けられた透明な液体容器が好ましい。また、本発明の外観上の遮蔽効果を妨げない範囲において、吸液部材が容器の垂直方向の一部から折れ曲がったように挿入されてもかまわない。具体的には、容器上部から鉛直方向に投影した場合、吸液部材部材下端の位置が、吸液部材の挿入の位置と同位置にない場恣意も含まれる。
【0015】
本発明の液体容器は、液体芳香剤、液体消臭剤を適量ずつ揮発し得る液体揮散製品、香水、オーデコロン、液体化粧品、シャンプー、リンス、ハンドソープ用の他、スプレイ用の容器としても使用できる。更に本発明の対象にはデザインや美観が特に重視されない汎用の液体容器も含まれている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の容器は液状の芳香剤、消臭剤等の揮発性を有する薬剤や、香水、オーデコロン、液体化粧品、シャンプー、リンス、ハンドソープ等の薬剤を適量ずつ蒸散、押し出しまたはスプレイするためにも使用される場合が多い。その他、家庭用品及び種々な分野で使用されるが、その目的及び用途によっては、容器のデザインや美観が商品の重要な要素となっている。このため外観上障害となる透明な容器内の吸液部材の像を遮蔽することにより、商品価値を高め、更に新しい用途開発のために有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0018】
図1(1) に本発明の外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器の一態様の正面図を示す。図1(2) に液体容器本体(1) の A-A′線における断面図を示す。容器本体 (1) の材質は透明なポリエチレンテレフタレートのブロー成形体である。液体容器上部の開口部(2) には開閉度の調節が可能な開閉自在キャップ(3) を備えた、繊維集合体からなる液体蒸散部(4) が取り付けられている。液体蒸散部(4) と連結された繊維集合体からなる、細長い円筒状の吸液部材(5) がほぼ垂直に下方に伸び、容器本体(1) の底面に達している。
【0019】
液体容器の本体(1) の外面(6) には図1(1) に示すように縦縞状曲面(7) が形成され、またその A-A′線における断面図は図1(2) に示すように、円周に沿って多数の凸面の断面が環状に連結された形状となっている。容器の外面が縦縞状の曲面とされているのは、容器内部にほぼ垂直に取り付けられ細い棒状の吸液部材(5) を、容器の外部から観察した場合その像を光の屈折によって、分裂・分散させ不鮮明のボケた形状とすることによって、吸液部材を遮蔽する効果を上げるためである。縦型の細長い物体の像を光の屈折によって分裂・分散させるためには、基本的には縦縞状の曲面とする必要がある。尚、斜縞状の曲面でも吸液部材の像を分裂・分散させ不鮮明のボケた形状にし得る範囲内で使用可能である。
【0020】
尚、ここで縦縞状曲面とは厳密な平行線で構成された形状に限定せず、ほぼ縦縞をベースとした斜縞状の曲面であれば使用可能であり、曲面は凸面の断面形状には限定されず、凹面その他広範囲な形状の曲面、その他多角面とすることも可能である。どの様な曲面或いは多角面であっても、容器内部の吸液部材の像が分裂・分散されて不鮮明となり、遮蔽効果が得られば使用可能である。図1(2) に示した断面の形状は、光の屈折によって吸液部材の像が分裂・分散されて不鮮明のボケた状態とするため効果と、容器の外観のデザイン及び美観の両者を考慮したものである。
【0021】
図2(1) に縦縞状曲面のその他の一態様の A-A′線における断面図を示す。容器本体( 1) の外面に多数の面凹の断面が環状に連結された形状となっている。また図2(2) の容器本体 (1) の外面の表裏に多数の凸面の断面が環状に連結された形状となっている。更にその他の一態様である図2(3) も、容器本体 (1) の外面に多数の凸レンズの断面が環状に連結された形状であるが、外面に配置された隣り合う2つの凸面の頭頂部を結ぶ直線の垂直二等分線上に内面の凸面の頭頂部が配置さている。いずれの態様も外部から容器内の吸液部材を見た時、その像が分裂・分散されて不鮮明のボケた形状となり、吸液部材の遮蔽効果が認められる。その他図3には断面形状を多角面とした一態様が示されている。本発明のその他の態様と同様に、吸液部材の像をボケさせて遮蔽する効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は液状の芳香剤、消臭剤等の揮発性を有する薬液を、容器中の吸液部材で吸い上げ適量ずつ蒸散またはスプレイするために使用される容器である。その他、家庭用品及び種々な広範囲の分野で使用される。透明な容器に薬液を収納して使用する用途は多く、この分野では容器のデザインや美観が重視される。このためデザイン上の障害となる容器内の吸液部材を遮蔽する技術は、今後本発明以外の分野でも広く利用される可能性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(1) は本発明の、外観上容器内の吸液部材を遮蔽した液体容器の一態様の正面図を、(2) はその断面図を示す。
【図2】(1) 、(2) 及び(3) は、図1に示した液体容器のその他の態様の断面図を示す。
【図3】本発明の液体容器のその他の態様の断面図を示す。
【符号の説明】
【0024】
1 容器本体
2 容器の開口部
3 容器のキャップ
4 液体蒸散部
5 吸液部材
6 本体の外面
7 縦縞状曲面
8 多角面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部または全部が透明な容器の内部に、吸液部材が取り付けられた構造を有する容器において、容器の外面または/ 及びその裏面の一部または全部に、縦縞状または斜縞状の曲面または多角面が形成され、吸液部材が容器の内部に取り付けられてなる、外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器。
【請求項2】
容器の断面形状が円形、楕円形、三角形、四角形その他多角形である、請求項1記載の外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器。
【請求項3】
容器の外面または/ 及びその裏面に形成された、縦縞状または斜縞状の曲面の断面が、凸面または凹面が容器の周囲に配置された形状を有する、請求項1または2に記載の外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器。
【請求項4】
容器の外面または/ 及びその裏面に形成された、縦縞状または斜縞状の多角面の断面が、三角形又は四角形が容器の周囲に配置された形状を有する、請求項1または2に記載の外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器。
【請求項5】
吸液部材が繊維集合体または、連続気泡からなる発泡プラスチック成形体、毛細管束或いは、吸い上げ用単管からなり、断面形状が円形、楕円形、三角形、四角形または多角形である、請求項1〜4のいずれかに記載の外観上の吸液部材遮蔽効果を有する液体容器。
【請求項6】
液体容器が、液体芳香剤、液体消臭剤を適量ずつ揮発し得る液体揮散製品、香水、オーデコロン、液体化粧品、シャンプー、リンス、ハンドソープ用またはスプレイ用の容器である、請求項1ないし5のいずれかに記載の外観上吸液部材遮蔽効果を有する液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−282238(P2006−282238A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105545(P2005−105545)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】