説明

容器内の液体種別を判別する装置およびその制御方法

(課題)各種形状の容器に適用でき、また、容器内液体の残存量がまちまちな場合であっても適用可能な、容器内の液体種別を判別する装置あるいは判別方法を提供する。(解決手段)本発明の容器内の液体種別を判別する装置には、2枚の平板電極1a,1bが対向して配置される平板型のコンデンサ1と、内部に液体を収容できる非導電性の容器2を、平板電極1a,1bで挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持部材3と、コンデンサ1を含む発振回路4と、その発振周波数を検知する制御部5と、を備え、容器支持部材3は、平板電極1aから容器2までの距離を容器2の大きさに応じて調節するものとする。また、容器2の底部に接して平板電極1bと同電位の第3の電極18を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、容器内の液体種別を判別する装置およびその制御方法に関し、特に容器内の液体が危険物ではない水を主成分とする液体であるか否かを判別する技術に適用して有効なものである。
【背景技術】
航空機、電車、バス等の旅客輸送機関は旅客を安全に輸送する義務がある。特に、航空機における事故はその被害が甚大であり、安全性には高い注意を払う必要がある。そのため、航空機を利用する旅客にはX線画像撮影装置による手荷物検査、金属探知機あるいはボディチェックによる身体検査、必要に応じて尋問等を行い、悪意のある旅客を峻別して航空機の利用を拒否するようにしている。しかしながら、利用旅客の多さ、旅客への利便性を考慮すると、多大な時間をかけた厳密な検査あるいは尋問を旅客全員に施すことは困難である。一方、悪意のある旅客(たとえばテロリスト)はこれら検査をかいくぐって危険物を機内に持ち込もうとする。現状の手荷物検査等で発見できる危険物については特に問題を生じないものの、金属探知機、X線撮影で検知できない危険物、たとえばガソリン等の可燃液体などはこれを検知することが比較的困難である。ガソリン等の危険物液体はこれを市場で調達することが容易であり、さらに、危険物液体を市販飲料の容器(たとえばペットボトル)に充填したような場合には、真正な飲料との区別がつき難くなるので、悪意のある者には採用し易い危険行為であると言える。従って、これら危険行為に対する対策は十分に検討しておく必要がある。
ところで、ガソリン等危険物液体と主成分が水である飲料とを識別するには、臭いを嗅ぐ等の官能検査その他各種の識別方法がある。しかし、航空機利用の際の手荷物検査では検査の迅速性が要求されるので非接触で迅速に検査できることが望ましい。非接触かつ迅速な検査方法として、液体の誘電率の相違を利用する方法がある。水はその誘電率が高く、ガソリン等の危険物液体は一般に低い。この誘電率の違いを利用して液体種別を判別することが考えられる。
特許文献1には、容器の外部から液体種類を判別する方法および装置が開示されている。この文献記載の技術では、液体を容器内部に充填し、液体の少なくとも一部を挟むように一対の電極を容器外に配置し、この電極で構成されるコンデンサの静電容量を測定して液体の種別を判別している。このような技術を利用すれば、液体が水であるときの容量と液体が危険物液体(たとえばガソリン)であるときの容量を予め測定しておき、内容不明の液体が充填された容器を電極間に配置すれば、そのときの静電容量を測定して容器内部の液体の種別を瞬時かつ確実に判別することが可能である。
【特許文献1】 特開2001−272368号公報
【発明の開示】
しかしながら、前記特許文献1の技術による液体種別の判別方法には、以下のような問題がある。第1に容器の大きさ、容器内の液体量を固定しなければならないことである。周知の通り、コンデンサの電極間に誘電体を挿入すれば誘電率に応じて静電容量の値が変化する。特許文献1の技術はまさにこの原理を利用したものであるが、その誘電体の形状(幅や厚さ)や配置が変化してもやはり静電容量が変化する。すなわち、コンデンサの電極間に挿入する誘電体の誘電率を静電容量の測定から知りたいのであれば、誘電体の形状、配置を固定する必要がある。特許文献1の技術の場合、これは容器の形状、配置、容器内に充填する液体量を固定することを意味する。前記したような航空機の手荷物検査用途に本文献の技術を利用しようとすると原理的な困難を引き起こす。つまり、旅客が持参する飲料物は各種形状のペットボトルに入っているのであり、また、その残存量もまちまちであって一定でない。よって引用文献記載の技術は、極めて限られた条件下(たとえば特定形状のペットボトル等に適合するように電極を配置する等)においてのみ利用できるものであり、各種容器の形状に対応した検査や、容器内液体の残存量がまちまちな場合の検査には利用することができない。
本発明の目的は、各種形状の容器に適用でき、また、容器内液体の残存量がまちまちな場合であっても適用可能な、容器内の液体種別を判別する装置あるいは判別方法を提供することにある。特に、容器内の液体残存量が少ない場合であっても感度良くその種別を判別できる装置を提供することにある。
本明細書で開示する発明は、以下の通りである。すなわち、本願第1発明の容器内の液体種別を判別する装置は、2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、内部に液体を収容出来る非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、を有し、前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知することにより容器内の液体種別を判別するものであることを特徴とする。
また、本明細書で開示する他の発明(第2発明)である容器内の液体種別を判別する装置は、2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、内部に液体を収容出来る非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、前記容器内の前記液体が重力によって滞留することとなる前記容器の部位に沿った前記容器の外側の電極であって前記2枚の平板電極以外の第3の電極と、を有し、前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知することにより容器内の液体種別を判別するものであることを特徴とする。
本第1発明および第2発明である容器内の液体種別を判別する装置では、容器はコンデンサの電極間に配置されるわけではなく、電極の外側に配置される。よって、液体入りの容器を配置することによるコンデンサの静電容量の変化量は電極間に配置する場合に比較して小さくなる。しかし、電極間に容器を配置する場合に比較して、容器形状の変化、容器内の液体量の相違による静電容量の変化率を相対的に小さくできる。これは、本発明の場合、コンデンサの電極間の電界(つまり平行電界領域であって電界強度のもっとも大きい領域)を容量変化の検出に利用するのではなく、コンデンサの電極間から漏れ出た漏れ電界(平行電界領域より電界は弱い)を利用していることによる。漏れ電界は一般に発散電界であるためコンデンサから離れるほど電界強度は弱くなる。後に説明するように容器の配置をうまく工夫(たとえば大きい容器ほどコンデンサから遠くなるように配置する)すれば、また、容器内の残存する液体は容器下部に集まるので、コンデンサを容器の下側に配置すれば、容器形状や容器内の液体残存量に対して容量変化率を比較的鈍感にできる。つまり、検出対象の液体を通過する電気力線の本数が容器形状や液体残存量にできるだけ依存しないようにできる。このような構成によって、本発明では、容器形状、容器内の液体残存量が変化しても、迅速かつ確実に容器内液体の種類を判別することが可能になる。
さらに、本第2発明では、コンデンサを構成する2枚の平板電極の他に第3の電極を有する。この第3の電極は、容器内の液体が重力によって滞留することとなる容器の部位に沿って容器の外側に配置されるものであり、コンデンサからの漏れ電界を容器内の液体の方向に引き寄せる機能を持つ。ここで「容器内の液体が重力によって滞留することとなる容器の部位」は、たとえば容器が水平面に倒して配置されたりあるいは傾斜して配置される場合であって、コンデンサが水平面や傾斜面に沿って配置される場合には、容器の底面や側面(コンデンサが配置される側面ではない)に対応する部位である。容器を立てて配置する場合には、容器底部の側面がその部位に対応する。このような第3の電極を配置することにより、コンデンサからの漏れ電界を容器の重力方向底部(容器内の液体が溜まっている部位)に引き寄せることができ、容器内の液体種別によるコンデンサの容量変化を大きく検知すること、つまり液体種別の判別の精度向上を実現できる。
なお、前記第3の電極は、前記平板型のコンデンサに対し垂直な平面であって前記容器の外側に接する面に沿って配置される平板電極または線状電極とすることができる。第3の電極は、容器内の液体が溜まる部位に沿うよう配置されるならその配置される位置や形状は任意であるが、平板型のコンデンサに対し垂直な平面に沿う平板電極であれば、容器として想定するペットボトルの形状に適した電極配置を実現できる。また、電極形状は平板である必要はなく、線状の電線(ワイヤ)をそのまま電極として用いることができる。
また、第3の電極は、前記容器が前記容器支持手段に配置されることを検知してまたは前記容器が前記容器支持手段に配置されることに連動して、前記容器の外側面に移動するものとすることができる。つまり、第3の電極は固定である必要はなく、容器の配置を検出して、あるいは容器の配置に連動して容器外壁に沿うよう可動するものであっても良い。たとえば容器を容器支持手段に配置することを光電スイッチ等で検知して第3の電極を駆動手段により駆動し、容器外壁に当接させるよう移動しても良い。あるいは、容器を容器支持手段に配置すると適当な機構手段が作動し、この機構手段にリンクした第3の電極が容器外壁に当接するよう移動するようにしても良い。これら第3の電極を移動させる場合、容器の形状や大きさに依存せず第3の電極を容器の外壁に当接させあるいは近傍に移動させることが可能になる。
また、第3の電極の電圧は、容器側に配置されるコンデンサの平板電極(第1平板電極)の電圧とその絶対値または位相またはその両方が異なるもの、あるいは第1平板電極に対向するコンデンサの第2平板電極と等しい電圧とすることができる。コンデンサの平板電極間にはその容量を調べるため、または発振回路を構成するため通常交流電圧を印加する。この交流電圧はコンデンサの何れかの電極を基準(通常接地)として印加され、本発明の場合容器より遠い側の電極(第2平板電極)が接地電極となる。ここで、本発明では、第3の電極の電圧として第1平板電極とは振幅の絶対値または位相または両方が異なるとするものである。特に第3電極の電圧(電位)を第2平板電極と同じ(接地電位)とする。このような第3電極の電位とすることにより、コンデンサからの漏れ電界を容器内の液体側に引き寄せることが可能となる。
また、前記第1発明および第2発明において、前記容器支持手段は、前記2枚の平板電極のうち前記容器の側に配置された第1平板電極から前記容器までの距離を前記容器の大きさに応じて調節するもの、とすることができる。本発明では、コンデンサから容器までの距離を容器の大きさに応じて調節する容器支持手段を有する。このため、容器の大きさがおおきいほど容器をコンデンサから離して配置することが可能になり、容器の大きさが変化しても液体を横切る電気力線を一定に近づけて液体の誘電率の変化を静電容量の変化に反映させることができる。
具体的には、円柱形または角柱形の外形を持つ容器に対して、容器の柱方向が第1平板電極に対して平行に配置する場合に、容器支持手段として、第1平板電極に垂直な方向に高くなる2つの階段状部材が対向して配置されたものとし、2つの階段状部材のステップあるいはその稜部に角柱形または円柱形の容器の外周面を当接させ、容器と第1平板電極との距離を容器の大きさに応じて調節することができる。なお、柱方向に延在するステップの片側に段差部材を配置し、2つの階段状部材のステップに容器の外形を当接させ、より大きな容器の一端が、段差部材によって持ち上げられることにより、第1平板電極までの平均距離が大きくなるようにしても良い。
なお、本明細書において「平行」あるいは「垂直」は、厳密な意味における平行あるいは垂直を意味しない。垂直あるいは平行を厳密な意味で言えば面あるいは線と他の面あるいは線とが厳密に90度の角度で交差するあるいは無限遠まで交差しないことを言うこととなる。しかし、現実に部材を配置する際には配置の誤差や部材の加工誤差が存在するのは当然であるから、本明細書では厳密な意味での90度の角度からのズレ(ある程度の範囲)を許容するものとする。また、部材間の角度を垂直や平行から意図的にずらした場合であっても本発明の趣旨、つまり容器内の液体を漏れ電界を用いてその種別を測定するという趣旨から逸脱しない範囲において「垂直」あるいは「平行」の範囲に含まれるものとする。たとえば本明細書において部材間の位置関係が「垂直」と記述されている場合には、厳密に90度である場合のほか、90度を含む若干の意図しないあるいは意図的な範囲を含むものとする。
あるいは、円柱形、角柱形または球形の外形を持つ容器に対して、容器の柱方向が第1平板電極に対して垂直に配置する場合に、容器支持手段として、第1平板電極に垂直な方向に高くなる階段状部材で囲まれた構造とし、階段状部材のステップに角柱形または円柱形の容器の底面を当接させ、ステップの稜部に球形の容器の外周面を当接させ、容器と第1平板電極との距離を容器の大きさに応じて調節することができる。
あるいは、円柱形または角柱形の外形を有する容器に対して、容器の柱方向が第1平板電極に対して平行に配置する場合に、容器支持手段として、第1平板電極に垂直な方向に開口を持つその断面がV字形の溝を有することができ、V字形の溝面に角柱形または円柱形の容器の外周面を当接させ、容器と第1平板電極との距離を容器の大きさに応じて調節することができる。
あるいは、円柱形、角柱形または球形の外形を有する容器に対して、円柱形または角柱形の柱方向を第1平板電極に対して垂直に配置する場合に、容器支持手段として、第1平板電極に垂直な方向にすり鉢状の開口を有することができ、すり鉢状開口の壁面に角柱形もしくは円柱形の容器の底面稜部または球形の容器の外周面を当接させ、容器と第1平板電極との距離を容器の大きさに応じて調節できる。
なお、液体誘電率の変化は、コンデンサの容量としてだけではなく、コンデンサを含む発振回路の発振周波数の変化として検知できることは言うまでもない。
また、前記発明において、前記容器支持手段は、前記2枚の平板電極のうち前記容器の側に配置された第1平板電極に垂直な法線方向から投影した前記平板電極と前記容器との重なり面積を前記容器の大きさに応じて調節するもの、とすることができる。この場合も前記した第1平板電極から前記容器までの距離を調整する場合と同様、コンデンサの漏れ電界を利用するものである。ただし、コンデンサと容器との重なり面積を調節して容器内液体を横切る電気力線の数を一定に近づけようとする点で前記した容器までの距離を調整する場合と相違する。本発明によっても、前記同様の効果を得ることができる。
具体的には、円柱形、角柱形または球形の外形を有する容器に対して、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して平行に配置する場合に、前記容器支持手段として、前記第1平板電極に対して鋭角な斜面を有することができ、前記斜面に前記角柱形もしくは円柱形の容器の底面稜部または前記球形の容器の外周面を当接させて、前記容器と前記平板電極との前記重なり面積を前記容器の大きさに応じて調節できる。あるいは、円柱形、角柱形または球形の外形を有する容器に対して、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して平行に配置する場合に、前記容器支持手段として、前記第1平板電極に平行な方向に高くなる階段状部材を有することができ、前記階段状部材のステップに前記角柱形または円柱形の容器の底面を当接させ、前記ステップの稜部に前記球形の容器の外周面を当接させ、前記容器と前記平板電極との前記重なり面積を前記容器の大きさに応じて調節できる。
また、第1平板電極に対して容器を平行に保持する場合において、容器と平板電極の相対的な位置を保持したまま前記容器保持手段を水平面に対して所定の角度傾斜させることができる。これは前述の平板電極と容器の距離、あるいは平板電極と容器の重なり面積を変化させずに液体を容器下部に集める効果を有し、液量が少量の時に判別をより的確に行うことが出来るようになる利点を有する。
前記した第1発明および第2発明において、前記容器を前記容器支持手段に配置していることまたはしていないことを検知するセンサと、前記容器を前記容器支持手段に配置しないときの前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数と、前記容器を前記容器支持手段に配置したときの前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数との変化量を検出する手段と、前記変化量が所定の閾値より大きいか否かの報知を行う報知手段と、を有することができる。この場合、容器の配置前後のコンデンサ容量または発振周波数の変化を測定することができ、例えば変化量が閾値より大きい場合(液体は水を主成分とすることが推定される)には正常、閾値以下である場合(少なくとも水ではないと推定される)には異常の報知を行うことができる。報知は、発光素子や表示装置による表示報知、音による音響報知、バイブレーション等の振動による報知を例示できる。
また、前記した第1発明および第2発明において、前記容器を前記容器支持手段に配置しないときの前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を記録する記憶手段と、前記記憶手段に記録された前記容量または発振周波数を定期的に更新する手段と、を有することができる。この場合、コンデンサ容量の経時的な変化のキャリブレーションを行うことができる。
また、本願の容器内の液体種別を判別する装置の制御方法は、2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、内部に液体を収容できる非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知する手段と、前記容器が前記容器支持手段に配置されていることまたはいないことを検知するセンサと、を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、前記容器が前記容器支持手段に配置されていないことを検知する第1検知ステップと、前記第1検知ステップの検知を契機として、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第1測定ステップと、前記容器が前記容器支持手段に配置されたことを検知する第2検知ステップと、前記第2検知ステップの検知を契機として、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第2測定ステップと、前記第1測定ステップで測定した容量または発振周波数と、前記第2測定ステップで測定した容量または発振周波数との差が所定の閾値より大きいか否かの報知を行うステップと、を有する。このような構成を有することにより、容器を配置した瞬間に測定を実行し、例えば容器内の液体が安全(水を主成分とするもの)であるかそうでないかが判別できる。
前記方法において、前記第1測定ステップの後の所定時間経過後に、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第3測定ステップと、前記第1測定ステップで測定した容量または発振周波数と、前記第3測定ステップで測定した容量または発振周波数との差の絶対値が、所定の値より大きい場合に、前記第1測定ステップおよび第3測定ステップを繰り返し、前記差の絶対値が所定の値より大きくない場合に、前記容器が前記容器支持手段に配置されたことの検知を待機するとともに所定時間の経過後に前記1測定ステップからのステップを繰り返すステップと、をさらに含むことができる。この場合、容器内液体の測定を行っていないときに自動的にキャリブレーションを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。
第2図は、本発明の一実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置における容器内液体の判別方法の一例を説明したフローチャートである。
第3図は、容器保持部材3と容器2を拡大して示した図である。
第4図は、本実施の形態の装置で測定した発振周波数の変化を各種形状の容器について示したグラフである。
第5図は、コンデンサから容器までの距離を容器の種類によらず一定にした場合の発振周波数の変化を示した比較のためのグラフである。
第6図は、容器保持部材と容器の他の例を示した図である。
第7図は、容器保持部材と容器の他の例を示した図である。
第8図は、容器保持部材と容器の他の例を示した図である。
第9図は、容器保持部材と容器の他の例を示した図である。
第10図は、容器保持部材と容器の他の例を示した図である。
第11図は、容器保持部材と容器の他の例を示した図である。
第12図は、本発明の他の実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。
第13図は、実施の形態2の第3の電極の部分を拡大して示した図である。
第14図は、本実施の形態2の効果を示すデータの一例を示したグラフである。
第15図は、本実施の形態2の効果を示す他のデータの一例を示したグラフである。
第16図は、実施の形態2の第3の電極の他の例を示した図である。
第17図は、実施の形態2の第3の電極の他の例を示した図である。
第18図は、実施の形態2の第3の電極の他の例を示した図である。
第19図は、実施の形態2の第3の電極の他の例を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
第1図は、本発明の一実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。本実施の形態の容器内の液体種別を判別する装置は、コンデンサ1と、容器2を保持する容器支持部材3と、発振回路4と、制御部5と、LED表示装置6a,6b,6cと、容器センサ7a,7bとを有する。発振回路4は、コンデンサ1、コンデンサ8、コイル9、NOT回路10a,10bからなり、制御部5には、CPU(中央演算処理装置)11、パルスカウンタ12、容器検出回路13、タイマ14、RAM(ランダムアクセスメモリ)15、ROM(リードオンリーメモリ)16、表示制御回路17を含む。
コンデンサ1は、2枚の平板電極1a,1bが平行に配置された平板型のコンデンサである。平板電極の材質は導電性である限り特に問わない。平板電極1a,1bの大きさは、たとえば5cm×12cmであり、電極間隔は、たとえば5mmである。電極間には何も挿入しなくてもよく(つまり空気が存在する状態)、プラスチック等低誘電率の材料が挿入されても良い。なお、ここでは平板電極1aと1bとが平行に配置される平行平板型のコンデンサ1を例示するが、平板電極1aと1bとは平行に配置される必要は特にない。
容器2は、たとえば市販飲料の容器であるペットボトルである。ガラス瓶等他の材質で構成された容器であっても良い。ただし、容器2は非導電体で構成される必要があり、低誘電率の誘電体であることが好ましい。ここでは角柱形の容器を例示するが、後に説明するように円柱形、球形の容器であっても良い。容器内部には被検査対象の液体が収容される。
容器支持部材3は、容器2をその大きさに応じて支持する部材である。容器支持部材3は非導電体で構成される必要があり、低誘電率の誘電体であることが好ましい。容器支持部材3については後に詳述する。なお、本実施の形態では容器支持部材3の上に容器2を配置し、容器支持部材3の下にコンデンサ1を配置する例を示しているが、容器2を容器支持部材3に押し付ける機構がある限り上下左右の配置を問わない。
発振回路4は、コンデンサ1の容量が変化するとその発振周波数が変化する発振回路である。発振回路は、コンデンサ1、コンデンサ8のキャパシタンスとコイル9のインダクタンスによって決定される共振周波数でほぼ発振する。NOT回路10a,10bによって発振はパルス電圧として出力され、パルスカウンタ12によって所定時間(たとえば1秒)にカウントされたパルス数から発振周波数が求められる。
制御部5は、本実施の形態の容器内の液体種別を判別する装置を制御する。CPU11は汎用的な演算処理装置であり、所定のプログラムに従って処理を実行できる。パルスカウンタ12はCPU11によって制御され、発振回路4から出力されるパルスを計数する。容器検出回路13は、容器センサ7a,7bを制御し、容器支持部材3に容器2が配置されたことをまた配置されていないことを検知する。タイマ14はCPU11によって制御され、時間の経過を計測する場合に用いる。RAM15はデータの一時記憶装置である。ROM16からロードしたプログラムやデータを保持し、また、プログラムの実行に利用するワークエリアを確保する。ROM16は、本装置で用いるプログラムやデータを記録する。なお、ROM16に代えてハードディスクドライブ等他のメモリ装置を利用することも可能である。表示制御回路17は、LED表示装置6a,6b,6cの表示を制御する。
LED表示装置6a,6b,6cは後に説明する本装置の状態や本装置による容器2内の液体種別の測定結果を表示する。たとえばLED表示装置6aは緑色、LED表示装置6bは青色、LED表示装置6cは赤色である。なお、ここでは装置の状態や測定結果をLED表示装置6a,6b,6cで報知(表示)する例を説明するが、その他任意の報知手段を適用することが可能である。たとえば液晶表示装置によるメッセージの表示、異常検知の場合のブザー発音による発報等が適用できる。
容器センサ7a,7bは、容器2が容器支持部材3に配置されたことを検出するためのセンサである。たとえばセンサ7aを発光部、センサ7bを受光部とする光センサを例示できる。また、近接センサ等他のセンサを利用することも可能である。
第2図は、本実施の形態の容器内の液体種別を判別する装置における容器内液体の判別方法の一例を説明したフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、その手順をコンピュータプログラムによって実現することが可能であり、このプログラムは前記したROM16に記録される。本明細書においてプログラムもROM16その他の記憶装置に記録される限り本発明の装置の一部を構成するものとする。また、以下の説明ではコンピュータプログラムによって下記処理を実行する例を説明するが、シーケンス制御、ハードウェアによる自動制御等他の制御手段によって同様の処理が実現できることは勿論である。
まず、ステップ20で容器2が検出されるかを判断する。ここで容器が検出されている場合には容器が検出されなくなるまでステップ20を繰り返す。容器が検出されなくなると、ステップ21に進む。
ステップ21では周波数測定を実行する。周波数測定は、たとえば1秒等適当な期間を定め、この期間内にパルスカウンタ12によってカウントされるパルス数を計測する。計測値から1秒あたりにカウントされたパルス数を求めると発振周波数を求めることができる。ここで計測した発振周波数は変数AとしてたとえばRAM15に記録する。
次に、たとえば0.5秒の待機を行い(ステップ22)、再度発振周波数を測定する(ステップ23)。測定した発振周波数は変数Bとして記録する。次に、記録したAとBの差を求め(A−B)、その絶対値が所定の値、たとえば5Hzより大きいかを判断する(ステップ24)。所定の値より大きい場合、装置が安定していないと判断してステップ21に戻り、同様の処理を繰り返す。
ステップ24で所定の値より小さいと判断した場合、装置が安定していると判断して緑ランプを点灯させる(ステップ25)。装置の操作者は緑ランプが点灯していることを確認して本装置を使用できることを認識できる。
緑ランプの点灯と同時にタイマを作動させ、たとえば3分経過したかを判断する(ステップ26)。3分経過の場合、装置が安定であるかの判断を行うため、再度ステップ21からの処理を繰り返す。ステップ26で未だ3分を経過していないと判断した場合には、ステップ27に進み、容器が検出および測定の処理に進む。なお、ここで経過時間として3分を例示しているが、あくまでも一例である。装置の安定度が推認できる期間を3分としているだけであり、この時間は装置安定度に応じて任意に設定できる。
ステップ27では容器が検出されたかを判断し、容器が検出されない場合はステップ26に戻って処理を繰り返す。容器が検出された場合には、発振周波数の測定を行い、測定結果を変数Cとして記録する(ステップ28)。
次に、変数Bと変数Cの差を求め、この値が所定の閾値より大きいか小さいかを判断する(ステップ29)。すなわち、変数Bの値は前記のとおり容器が設置されていないときの発振周波数であり、変数Cの値は容器が設置されたときの発振周波数の値である。容器内のなんらかの液体が収容されている場合、液体の誘電率は空気よりは大きいので、Cの値はBより小さくなる。一方、容器内に水を主成分とする液体がある場合、水はガソリン等危険物液体と比較して高い誘電率を有するのでコンデンサ1のキャパシタンスは大きくなり、発振周波数が小さくなって、B−Cの値は大きくなる。逆に、容器内にガソリン等危険物液体が収容されている場合には、コンデンサ1のキャパシタンスは前記と比較して小さくなるのでB−Cの値は小さくなる。閾値はこれを識別できる値として設定する。
この結果、ステップ29でB−Cが閾値より大きい場合、容器内液体は安全な水を主成分とする液体であると判断でき、青ランプを点灯する(ステップ30)。逆に、ステップ29でB−Cが閾値より大きくない場合、容器内液体は安全な水を主成分とする液体とは判断できないので、異常を示す赤ランプを点灯する(ステップ31)。ステップ30、31の後、ステップ20に戻り上記処理を繰り返す。以上のようにして、容器内液体の種類を判別することが可能である。
第3図は、容器支持部材3と容器2を拡大した示した図である。上図は正面図であり、下図は上面図である。第3図上図に図示するように、容器支持部材3には階段状の部材が相対するように配置されており、もっとも下の段には小さな容器2cが、中段には容器2が、上段には大きな容器2bが配置されるように構成されている。すなわち、容器の大きさに応じて平面電極1aからの距離が各々L1,L2,L3になるよう構成されている。このように、容器支持部材3が、容器の大きさが大きくなるほどコンデンサ1からの距離が離れるように構成されているため、コンデンサ1からの漏れ電界による電気力線を容器の大きさに依存せずほぼ一定にすることができる。これは、容器の大きさに依存せず、容器内液体の種別を判別することが可能になることを意味する。また、容器支持部材3(容器2)がコンデンサ1の外部に配置されるため、コンデンサ1の漏れ電界を測定に利用することになる。漏れ電界はコンデンサ1に近いほど強いので、キャパシタンス変化への寄与は容器下部の方が強く、容器上部は相対的に弱いこととなる。よって、容器内の液体が半分以下等の残量であっても液体は下部に溜まるのでこれを測定することなり、容器内液体の残量に依存しない測定が可能になる。
第4図は、本実施の形態の装置で測定した発振周波数の変化を各種形状の容器について示したグラフである。第5図は、比較のために示した図であり、コンデンサから容器までの距離を容器の種類によらず一定にした場合の発振周波数の変化を示したグラフである。第4図および第5図において、縦軸は周波数変化を示し、横軸は容器の違いである。横軸の1は350ミリリットルの円柱型容器を、2は500ミリリットルの円柱型容器を、3は500ミリリットルの角柱型容器を、4は900ミリリットルの角柱型容器を、5は1500ミリリットルの円柱型容器を、6は1500ミリリットルの角柱型容器を、7は2000ミリリットルの角柱型容器を示す。実線は容器に水を収容した場合、破線は容器にエタノールを収容した場合である。それぞれの容器には液体をほぼ最大容量充填している。
第4図および第5図に示すように、何れの容器であっても同じ容器で比較した場合、内容物が水の場合の方が、内容物がエタノールの場合より周波数変化が大きい。これは内容物の誘電率の違いを反映したものである。しかし第5図に示すように、7の容器(2000ミリリットルの角柱形容器)にエタノールを充填した場合の周波数変化は、5の容器(1500ミリリットルの円柱形容器)に水を充填した場合より大きい。これはこれら容器に水あるいはエタノールを充填した場合に、単一の閾値でこれら内容物を判別することが出来ないことを表す。しかし、第4図に示す本実施の形態では、容器の大きさに応じてコンデンサからの距離を変化させるので、7の容器(2000ミリリットルの角柱形容器)をより遠くに配置するようにして周波数変化が小さくなるようにできる。また、その他の容器についてもエタノールが充填されたときにその周波数変化がほぼ同じになるようその容器の大きさに応じた距離を調整するようにする。これは、第3図における1段目(その底辺のコンデンサからの距離がL1)の幅を30mm、2段目(その底辺のコンデンサからの距離がL2)の幅55mmとし、L1=8mm、L2=13mm、L3=16mm、とすることによりほぼ達成できる。この結果、第4図に示すように、各容器にエタノールを充填した場合の周波数変化は3000Hzでほぼ一定となり、単一の閾値(たとえば3500Hz)で各容器の内容物が水であるかそうでないかを判別することが可能となる。
以上説明したとおり、本実施の形態の装置を用いれば、容器内液体の種類(水を主成分とするかそうでないか)を容器の形状、容器内液体の残量に依存せず行うことができる。
なお、前記例では、容器の外形として角柱形を例示したが、第6図に示すように円柱形であっても良い。この場合であっても容器の高さを容器外形に応じて調整することが可能である。
また、前記例では容器支持部材として階段状部分を有する部材を例示したが、第7図に示すようにその断面がV字型の部材であってもよい。この場合も容器の大きさに応じてその高さを調整することが可能である。
また、前記例では、容器を横に倒した状態で測定を行う例を示したが、第8図に示すように、容器を立てて測定を行っても良い。この場合、容器支持部材34として、図示するように容器底部を囲むように階段状部材を有する構成を例示できる。なお、第8図の構成において円柱形、球形の容器を適用できることは勿論である。また、容器支持部材34に代えて、すり鉢状の開口を持つ部材を適用しても良い。すり鉢状の開口プロファイルを持つ部材はその断面が第7図同様であり、この場合も容器の大きさに応じてその高さを調整することが可能であることは容易に理解できよう。
また、前記例において、容器内液体を横切る電気力線の本数をほぼ一定にする手法としてコンデンサ1からの垂直距離を容器の大きさに応じて調整する手法を例示した。しかし、第9図に示すように、上方から見た容器とコンデンサ1との重なり距離L4,L5を容器の大きさに応じて調整するようにしてもよい。この場合、調整は、容器設置方向に傾きを持つ斜面を有する容器支持部材35によって実現できる。
また、第10図に示すように、階段状部材のステップに段差部材36を適用することもできる。この場合、段差部材36に掛かる大きさの容器2bは段差部材36によって持ち上げられ、コンデンサ1からの平均距離を大きくして前記同様の効果を得ることが可能になる。
また、第11図に示すように、容器2と第1平板電極1aの相対的位置を保ったまま容器保持手段3,35を水平面38に対して所定の角度傾斜させることも出来る。この場合容器2の下部に液体が集まるため液量の少ない場合の液体種別の判別に効果がある。
(実施の形態2)
第12図は、本発明の他の実施の形態である容器内の液体種別を判別する装置の構成の一例を示したブロック図である。本実施の形態2の液体種別を判別する装置において、第3の電極18を有する他は前記した実施の形態1と同様であり、重複した説明は省略する。なお、本実施の形態2の装置を用いた液体種別の判別方法は前記実施の形態1の場合と同様である。
実施の形態2の装置では、前記の通り第3の電極18を有する。第3の電極18は第13図にも示すように、容器2の底部に接して配置される。また、第3の電極18はコンデンサ1の一方の平板電極1bに接続され、その電位が平板電極1bの電位と同じに保たれる。一般に平板電極1bの電位は接地電位である。ここで、第3の電極18の電位を接地とする例を例示するが、接地には限られない。第3電極の電位は、コンデンサ1の他方の平板電極1aと相違する電圧であれば任意である。ここで相違する電圧とは、平板電極1aに印加される交流電圧の振幅が相違すること、位相が相違すること、振幅と位相の両方が相違することを意味する。
このような平板電極1aに印加される電圧と相違する電位に保持される第3の電極18を容器2の底面に接して配置することにより、コンデンサ1からの漏れ電界が第3の電極18の方向に引き寄せられ、容器2内の液体を通過する電束の密度が第3の電極18を配置しない場合に比較して大きくなる。これは、容器内の液体の誘電率の相違を反映するコンデンサ1の容量変化が大きくなることを意味し、結果として容器内の液体の判別精度が向上する。
第14図は、本実施の形態2の効果を示すデータの一例を示したグラフである。上図は第3の電極18を配置した場合の共振周波数の変化(周波数変化)を示し、下図は第3の電極18を配置しない場合の共振周波数の変化を示す。第14図において容器の種類1は900mlのペットボトルであり種類2は1500mlのペットボトルである。各容器に水あるいはエタノールをほぼ最大容量充填した場合の結果を示している。なお、コンデンサ1や容器支持部材3の形状、配置等は実施の形態1の場合と同様である。
第14図の結果から、第3の電極18がない場合の水とエタノールの共振周波数変化の差が500Hz程度であるのに対し、第3の電極18がある場合には共振周波数変化の差が1kHzに達し、周波数変化の差が約2倍となることがわかる。すなわち、両者とも単一のしきい値で容器内部の液体種別を判別できるものの、第3の電極18がある場合にはその検出余裕が大きく、仮にノイズが発生したとしても十分なSN比を確保できることを示している。
第15図は、本実施の形態2の効果を示す他のデータを示すグラフである。上図は第3の電極18を配置した場合の共振周波数の変化(周波数変化)を示し、下図は第3の電極18を配置しない場合の共振周波数の変化を示す。第15図において液量は500mlのペットボトル内の残存液量を変化させた状態を示す。第3の電極18を配置しない場合(第15図の下図)では、500mlペットボトルの残存液量を200ml〜500mlまで変化させると、液量によって共振周波数が大きく変化してしまう。このため、たとえばエタノールを200ml充填した場合の周波数変化が水を500ml充填した場合の周波数変化より大きくなり、単一のしきい値で液体種別を判別できなくなる。これに対し、第3の電極18を配置した場合(第15図の上図)では、液量の変化によっても共振周波数は大きく変化しない。この結果、500mlのペットボトルを容器とする場合に液量が200mlから500mlに変化しても単一のしきい値(たとえば3700Hz)によって容器内部の液体種別を判別することが可能になる。このように、第3の電極18を有する本実施の形態2の装置では、容器内の液体の残存量が変化した場合に顕著な効果を見出すことができる。
なお、本実施の形態2では、第3の電極18を容器の外壁(底部)に接触させた場合を例示した。しかし、第3の電極18は必ずしも容器外壁に接触させる必要は無く、容器から離れた位置に配置することも可能である。本発明者らの検討によれば、前記した第14図および第15図での測定条件下では容器外壁からの距離が20mm未満であれば第3の電極18を配置する効果が得られる。
また、本実施の形態2では、第3の電極18を容器の底部に配置する場合を説明したが、第16図に示すように第3の電極18bを容器側壁の底面側に配置すること、あるいは、第17図に示すように第3の電極18cを容器側壁の下側に配置することも可能である。すなわち、容器2の内部に残存する液体が少ない場合であっても、液体が重力によって下方に滞留し、この滞留する液体の近傍に第3の電極18,18b,18cが配置されればよい。このように滞留する液体に沿うように第3の電極を配置することにより、第3の電極によって引き寄せられる電束が効果的に容器内液体を通過し、液体種別によるコンデンサ1の容量変化(共振回路の共振周波数変化)が観測できる。
また、本実施の形態2では、第3の電極として平板電極を例示したが、平板形状には限られない。第18図に示すように、第3の電極18dとして直線状の電線(ワイヤ)であってもよい。なお、ワイヤは1本である必要はなく複数本でもよい。また、ワイヤは直線である必要なく、容器2の壁面に沿うあるいは近傍に配置される限り任意の曲線でも良い。
また、本実施の形態2では、第3の電極18等として固定の電極を例示した。しかし、第3の電極は固定である必要はなく、可動式の電極であってもよい。たとえば第19図に示すように、容器支持部材3に、支点41で回転する回転子40、リンク42、支点44で回転する回転子43を備え、回転子43の先端に第3の電極18eを備えることができる。回転子40と回転子43はリンク42によって連結されており、容器2が容器支持部材3に配置されていないときには図示しないばね等の弾性体で点線で示す状態に保持されるものである。そして容器2が配置された場合にはその自重によって回転子40が押し下げられ、リンク42を介した運動によって回転子43が実線で示す状態、つまり第3の電極18eが容器2の底面に押し付けられる状態になる。このように、第3の電極18eを可動式に構成することにより、容器2の大きさや形状が変化しても第3の電極18eが容器2の外壁に接するよう適切に配置される。なお、ここではリンク機構により第3の電極18eが可動する構成を説明したが、容器2の配置を光電スイッチ等で検出し、この検出を契機として第3の電極18eをモータ等で駆動する機構が採用できることは勿論である。
また、本実施の形態2では、容器の外形として角柱形を例示したが、実施の形態1で例示した他の形状の容器にも適用できることは勿論である。
以上、本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。たとえば、前記例では、コンデンサ1の容量変化を発振回路4によって検知したが、コンデンサ1の容量(キャパシタンス)を直接計測することによって検知することも可能である。
【発明の効果】
本願発明によれば、各種形状の容器に適用でき、また、容器内液体の残存量がまちまちな場合であっても適用可能な、容器内の液体種別を判別する装置あるいは判別方法を提供できる。特に、容器内の液体残存量が少ない場合であっても感度良くその種別を判別できる装置を提供できる。
産業上の利用分野
本発明は、容器内の液体種別を判別する装置およびその制御方法に関し、特に容器内の液体が危険物ではない水を主成分とする液体であるか否かを判別する技術に適用して有効なものである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、
内部に液体を収容出来る非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、を有し、
前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知することにより容器内の液体種別を判別するものである容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項2】
2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、
内部に液体を収容出来る非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、
前記容器内の前記液体が重力によって滞留することとなる前記容器の部位に沿った前記容器の外側の電極であって前記2枚の平板電極以外の第3の電極と、を有し、
前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知することにより容器内の液体種別を判別するものである容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項3】
前記第3の電極は、前記平板型のコンデンサに対し垂直な平面であって前記容器の外側に接する面に沿って配置される平板電極または線状電極である請求の範囲第2項記載の液体種別を判別する装置。
【請求項4】
前記第3の電極は、前記容器が前記容器支持手段に配置されることを検知してまたは前記容器が前記容器支持手段に配置されることに連動して、前記容器の外側面に移動するものである請求の範囲第3項記載の液体種別を判別する装置。
【請求項5】
前記第3の電極の電圧は、
前記コンデンサの前記容器側に配置される第1平板電極の電圧と比較してその絶対値または位相またはその両方が異なる第1の構成、または、
前記第1の平板電極に対向する前記コンデンサの第2平板電極の電圧に等しい第2の構成、
の何れかの構成を有する請求の範囲第2〜4項の何れか一項に記載の液体種別を判別する装置。
【請求項6】
前記容器支持手段は、前記2枚の平板電極のうち前記容器の側に配置された第1平板電極から前記容器までの距離を前記容器の大きさに応じて調節するものである請求の範囲第1〜5項の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項7】
前記容器は、円柱形または角柱形の外形を有し、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対し平行に配置して前記容器支持手段に支持されるものであり、
前記容器支持手段は、前記第1平板電極に垂直な方向に高くなる2つの階段状部材が対向して配置されたものであり、前記2つの階段状部材のステップあるいはその稜部に前記角柱形または円柱形の容器の外周面が当接することにより、前記容器と前記第1平板電極との距離を前記容器の大きさに応じて調節するものである、請求の範囲第6項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項8】
前記柱方向に延在する前記ステップの片側に段差部材を配置し、
前記2つの階段状部材のステップにその外周面が当接する前記容器より大きな容器の一端が、前記段差部材によって持ち上げられることにより、前記第1平板電極までの平均距離が大きくなる請求の範囲第7項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項9】
前記容器は、円柱形、角柱形または球形の外形を有し、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して垂直に配置して前記容器支持手段に支持されるものであり、
前記容器支持手段は、前記第1平板電極に垂直な方向に高くなる階段状部材で囲まれた構造を有し、階段状部材のステップに前記角柱形または円柱形の容器の底面が当接し、前記ステップの稜部に前記球形の容器の外周面が当接することにより、前記容器と前記第1平板電極との距離を前記容器の大きさに応じて調節するものである、請求の範囲第6項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項10】
前記容器は、円柱形または角柱形の外形を有し、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して平行に配置して前記容器支持手段に支持されるものであり、
前記容器支持手段は、前記第1平板電極に垂直な方向に開口を持つその断面がV字形の溝を有し、前記V字形の溝面に前記角柱形または円柱形の容器の外周面が当接することにより、前記容器と前記第1平板電極との距離を前記容器の大きさに応じて調節するものである、請求の範囲第6項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項11】
前記容器は、円柱形、角柱形または球形の外形を有し、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して垂直に配置して前記容器支持手段に支持されるものであり、
前記容器支持手段は、前記第1平板電極に垂直な方向にすり鉢状の開口を有し、前記すり鉢状開口の壁面に前記角柱形もしくは円柱形の容器の底面稜部または前記球形の容器の外周面が当接することにより、前記容器と前記第1平板電極との距離を前記容器の大きさに応じて調節するものである、請求の範囲第6項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項12】
前記容器支持手段は、前記2枚の平板電極のうち前記容器の側に配置された第1平板電極に垂直な法線方向から投影した前記平板電極と前記容器との重なり面積を前記容器の大きさに応じて調節するものである請求の範囲第1〜5項記載の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項13】
前記容器は、円柱形、角柱形または球形の外形を有し、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して平行に配置して前記容器支持手段に支持されるものであり、
前記容器支持手段は、前記第1平板電極に対して鋭角な斜面を有し、前記斜面に前記角柱形もしくは円柱形の容器の底面稜部または前記球形の容器の外周面が当接することにより、前記容器と前記平板電極との前記重なり面積を前記容器の大きさに応じて調節するものである、請求の範囲第12項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項14】
前記容器は、円柱形、角柱形または球形の外形を有し、前記円柱形または角柱形の柱方向を前記第1平板電極に対して平行に配置して前記容器支持手段に支持されるものであり、
前記容器支持手段は、前記第1平板電極に平行な方向に高くなる階段状部材を有し、前記階段状部材のステップに前記角柱形または円柱形の容器の底面が当接し、前記ステップの稜部に前記球形の容器の外周面が当接することにより、前記容器と前記平板電極との前記重なり面積を前記容器の大きさに応じて調節するものである、請求の範囲第12項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項15】
前記容器支持手段と前記2枚の平板電極の相対的位置を保持しつつ、前記容器支持手段を水平面に対し所定角度傾斜させたことを特徴とする請求の範囲第6、7、8、10、12、13項または請求の範囲第14項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項16】
前記容器を前記容器支持手段に配置していることまたはしていないことを検知するセンサと、
前記容器を前記容器支持手段に配置していないときの前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数と、前記容器を前記容器支持手段に配置しているときの前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数との変化量を検出する手段と、
前記変化量が所定の閾値より大きいか否かの報知を行う報知手段と、
を有する請求の範囲第1〜15項の何れか一項に記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項17】
前記容器を前記容器支持手段に配置していないときの前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を記録する記憶手段と、
前記記憶手段に記録された前記容量または発振周波数を定期的に更新する手段と、
を有する請求の範囲第16項記載の容器内の液体種別を判別する装置。
【請求項18】
2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、内部に液体を収容できる非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知する手段と、前記容器が前記容器支持手段に配置されていることまたはいないことを検知するセンサと、を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、
前記容器が前記容器支持手段に配置されていないことを検知する第1検知ステップと、
前記第1検知ステップの検知を契機として、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第1測定ステップと、
前記容器が前記容器支持手段に配置されたことを検知する第2検知ステップと、
前記第2検知ステップの検知を契機として、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第2測定ステップと、
前記第1測定ステップで測定した容量または発振周波数と、前記第2測定ステップで測定した容量または発振周波数との差が所定の閾値より大きいか否かの報知を行うステップと、
を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項19】
2枚の平板電極が対向して配置される平板型のコンデンサと、内部に液体を収容できる非導電性の容器を、前記2枚の平板電極で挟まれた領域以外の領域に保持する容器支持手段と、前記容器内の前記液体が重力によって滞留することとなる前記容器の部位に沿った前記容器の外側の電極であって前記コンデンサを構成する前記2枚の平板電極以外の第3の電極と、前記コンデンサの容量または前記コンデンサを含む発振回路の発振周波数を検知する手段と、前記容器が前記容器支持手段に配置されていることまたはいないことを検知するセンサと、を有し、前記第3の電極の電圧が、前記コンデンサの前記容器側に配置される第1平板電極の電圧と比較してその絶対値または位相またはその両方が異なる第1の構成、または、前記第1の平板電極に対向する前記コンデンサの第2平板電極の電圧に等しい第2の構成、の何れかの構成を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法であって、
前記容器が前記容器支持手段に配置されていないことを検知する第1検知ステップと、
前記第1検知ステップの検知を契機として、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第1測定ステップと、
前記容器が前記容器支持手段に配置されたことを検知する第2検知ステップと、
前記第2検知ステップの検知を契機として、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第2測定ステップと、
前記第1測定ステップで測定した容量または発振周波数と、前記第2測定ステップで測定した容量または発振周波数との差が所定の閾値より大きいか否かの報知を行うステップと、
を有する容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。
【請求項20】
前記第1測定ステップの後の所定時間経過後に、前記コンデンサの容量または前記発振回路の発振周波数を測定する第3測定ステップと、
前記第1測定ステップで測定した容量または発振周波数と、前記第3測定ステップで測定した容量または発振周波数との差の絶対値が、所定の値より大きい場合に、前記第1測定ステップおよび第3測定ステップを繰り返し、前記差の絶対値が所定の値より大きくない場合に、前記容器が前記容器支持手段に配置されたことの検知を待機するとともに所定時間の経過後に前記1測定ステップからのステップを繰り返すステップと、
を有する請求の範囲第18項または請求の範囲第19項記載の容器内の液体種別を判別する装置の制御方法。

【国際公開番号】WO2005/008230
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511894(P2005−511894)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010379
【国際出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】