容器内表面の熱流束の推定方法、装置及びプログラム
【課題】容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を高精度に推定できるようにする。
【解決手段】容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する際に、演算部102では、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する。前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定する。
【解決手段】容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する際に、演算部102では、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する。前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を推定する容器内表面の熱流束の推定方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスおいて、溶鋼鍋やタンディッシュ内の溶鋼温度を管理することは製品品質を確保する上で、或いは生産性を向上させたり、製造トラブルを回避したりする上で必須であり、そのための溶鋼温度推定を高精度化することは加熱・冷却処理を必要最小限に止め、コスト削減に繋がる。
【0003】
溶鋼鍋内の溶鋼温度を精度良く推定するには、溶鋼鍋に移動する熱量、合金等の投入による吸熱量もしくは発熱量、アーク加熱により加えられる熱量等、溶鋼の熱収支を精度良く推定する必要がある。この中で、合金等の投入に関する熱収支は投入する合金の種類と投入量から、アーク加熱に関する熱収支はアーク電力量から精度良く推定することができる。
【0004】
しかしながら、溶鋼鍋に移動する熱量は、溶鋼鍋の状態が一定でないことから、精度良く推定するためには以下のことを加味する必要がある。第一に、溶鋼鍋の使用履歴によって転炉から出鋼するときの溶鋼鍋内の温度分布は異なり、それが原因で熱移動量が影響を受けることである。第二に、溶鋼鍋の耐火物厚みは損耗により変化し、それが原因で熱移動量は影響を受けることである。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、溶鋼鍋の使用履歴と耐火物の厚みの影響を反映させて溶鋼温度を予測する方法が提案されている。
【0006】
一方、例えば特許文献2には、容器外表面の温度測定点における測温データから非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、容器の厚みと容器内表面の熱流束を推定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−186734号公報
【特許文献2】特開2007−71686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている溶鋼温度予測手法では、以下の二つのことが精度向上の妨げとなっている。一つは、耐火物の厚みを計測或いは推定することが困難であるため、溶鋼温度の推定には溶鋼鍋の使用回数を代替指標として採用している点である。耐火物の損耗状況が通常と極端に異なった場合は、それが影響して溶鋼温度の良好な推定精度は得られない。もう一つは、溶鋼鍋に移動する熱量を推定することなく直接溶鋼温度降下量を推定している点である。溶鋼鍋の使用履歴や耐火物の厚みと溶鋼鍋に移動する熱量との間には比例関係等のような簡単な関係は成り立たないからである。
【0009】
また、特許文献2に開示されている逆問題解析手法を用いれば、溶鋼鍋に移動する熱量を推定することは可能であるが、この方法では事前に内外挿関数に含まれるパラメータを類似実験等で決定しておく必要がある。このパラメータは原理的に容器(溶鋼鍋)の初期温度分布に依存することから、溶鋼鍋の使用状況の変化が大きい場合には不適である。
【0010】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、容器内に高温液体が注入されたときに、容器の厚み、容器の熱物性値、容器内外表面における対流熱伝達係数や放射率等の伝熱境界条件のパラメータの何れかを事前に知り得ない場合でも、容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を高精度に推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の容器内表面の熱流束の推定方法は、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定方法であって、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手順を有し、前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする。
また、本発明の容器内表面の熱流束の推定方法の他の特徴とするところは、前記推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する手順を更に有する点にある。
また、本発明の容器内表面の熱流束の推定方法の他の特徴とするところは、前記第2のステップでは、式(7)、式(8)、式(9)のいずれかを用いて残差Rを計算する点にある。
【数1】
本発明の容器内表面の熱流束の推定装置は、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定装置であって、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手段を備え、前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする。
本発明のプログラムは、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定するためのプログラムであって、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する処理をコンピュータに実行させ、前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器内に高温液体が注入されたときに、容器の厚み、容器の熱物性値、容器内外表面における対流熱伝達係数や放射率等の伝熱境界条件のパラメータの何れかを事前に知り得ない場合でも、容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定方法を示すフローチャートである。
【図3】未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する処理を示すフローチャートである。
【図4】実施例における溶鋼鍋の1サイクルにおける工程を示す図である。
【図5】実施例1における溶鋼鍋鉄皮表面温度の計測値と推定値を示す図である。
【図6】実施例1における溶鋼鍋内表面の熱流束の推定値を示す図である。
【図7】実施例2におけるタンディッシュ鉄皮表面温度の計測値と推定値を示す図である。
【図8】実施例2におけるタンディッシュ内表面の熱流束の推定値を示す図である。
【図9】実施例3における本発明の方法による溶鋼温度変化の推定値と実績値の関係を示す図である。
【図10】実施例3における特許文献1の方法による溶鋼温度変化の推定値と実績値の関係を示す図である。
【図11】実施例4における溶鋼鍋鉄皮表面温度の計測値と推定値を示す図である。
【図12】実施例4における本発明の方法による溶鋼温度変化の推定値と実績値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明の適用対象となる容器としては、稼動(容器内に高温液体が存在する)、非稼動(容器内に高温液体が存在しない)状態のサイクルを繰り返すもの、例えば製鉄プロセスにおいては、トーピードカー、溶鋼鍋、タンディッシュ、二次精錬における反応槽等がある。ただし、容器壁内部に冷却機構を有するもの対しては適用させることは困難である。何故ならば、容器内表面の伝熱状況が容器外表面の温度情報として伝わる途中で、冷却機構により情報が強く打ち消されるためである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定装置の概略構成を示す図である。101は入力部であり、容器の過去の使用履歴(稼働時間及び非稼働時間)データ、及び、高温液体が注入されたときの容器外表面の測温データを入力する。
【0016】
102は演算部であり、後述するように、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する。そして、推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する。なお、ここで言う熱物性値とは、熱伝導率、密度、比熱を指すが、これらから一意に決まる他の熱物性値(例えば熱拡散率)を使用しても構わない。
【0017】
103は出力部であり、演算部102により推定された容器内表面の熱流束や高温液体の温度を例えば不図示のディスプレイに表示する。
【0018】
以下、図2のフローチャートを参照して、本発明の実施形態に係る、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定方法を説明する。容器の使用履歴データとして、稼働時間及び非稼働時間をデータベースもしくは他の方法で記録しておき、そのデータを入力部101により入力する(ステップS101)。一方で、高温液体が注入されたときの容器外表面温度をサーモグラフィや放射温度計等で測定し、測温データを入力部101により入力する(ステップS102)。
【0019】
次に、演算部102により、伝熱逆問題解析により事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における対流熱伝達係数や放射率等の伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する(ステップS103)。ステップS103の詳細については後述する。
【0020】
次に、演算部102により、ステップS103で推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する(ステップS104)。具体的には、高温液体から容器への単位時間当たりの熱移動量を算出する。高温液体から容器への単位時間当たりの熱移動量Qは、式(1)のように容器内表面の溶鋼接触領域全体で熱流束を積分することにより得られる。通常は容器外表面の一部しか温度を測定することができないため、熱流束の推定は温度測定部の内表面しかできず、その値で代表させても良い。このとき、熱移動量は、式(2)のように容器内表面の溶鋼接触領域の面積と代表熱流束との積で表される。さらに、容器内表面の熱流束が一様でないと予想される場合には、高温液体の注入量がほぼ一定であるとの前提条件があれば、式(3)のように比例関係を仮定して事前の実験によりこの比例定数を決めておく方法が望ましい。このとき、熱移動量Qを直接計測するのは困難であるため、式(3)の両辺を時間積分した式(4)から求めれば良い。つまり、右辺の熱流束の積分は推定結果を用いて計算できるし、左辺は高温液体の温度変化量を測定して高温液体の全熱容量との積をとった値と一致する(式(5))から、回帰分析等により比例定数Aを求めることができる。以上のいずれかの方法で算出した高温液体から容器への単位時間当たりの熱移動量Qを用いて、高温液体の温度を算出する。具体的には、高温液体の温度を一度測定しておき、それ以降の温度は式(6)で算出することができる。
【0021】
【数2】
【0022】
次に、図3のフローチャートを参照して、ステップS103の処理の詳細を説明する。第1ステップ(ステップS1)では、未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで推定する。このとき、モデル化の方法としては差分法や有限要素法等、一般的に知られているもので良い。また、初期温度分布は過去に推定した時点のものを使用し、容器の使用履歴に従って伝熱境界条件を設定する。過去に推定した温度分布がなければ、例えば、容器が取りうる最低温度(常温)を初期温度としたものと、最高温度(高温液体の温度)を初期温度としたものを計算し、現在の稼動状態の温度が一致するまで十分に過去に遡って計算を開始すればよい。
【0023】
第2ステップ(ステップS2)では、第1ステップで推定した容器外表面の温度と測温データとの残差Rを計算する。残差Rの計算は、式(7)を用いるのが一般的であるが、式(8)や式(9)等を用いても良い。
【0024】
【数3】
【0025】
第2ステップで計算した残差Rは、仮定した未知パラメータの値が変われば変化するものであり、第3ステップ(ステップS3)では、残差Rを最小にするように未知パラメータを決定する。この最小化問題を解く方法としては、Nelder-Meadの方法等を用いることができる。決定した未知パラメータに対応する容器内表面の熱流束は、再度伝熱モデルで求めても良いし、第1ステップにおける伝熱計算で未知パラメータに対応する熱流束を保管しておき、それを取り出しても良い。
【0026】
以上述べた方法で求めることができる未知パラメータの数は、測温データの採取状況によって決まってくる。つまり、ある時刻の温度レベルが読み取れる程度のデータ数しか得られなければ未知数は1つ、温度の時間変化率が読み取れるほどのデータ数が得られれば未知数は2つまで、更に温度の時間変化率の変化が読み取れるほどであれば未知数は3つ(同時刻では2つまで)まで決定できる。
【0027】
ただし、同時刻に選択できるのは、容器の厚みと熱物性値との中から1つ、伝熱境界条件から1つである。容器の厚みと熱物性値とにおいて、熱伝導現象に対して厚みや熱物性値がどのような割合で関与しているかまで把握できないためである。伝熱境界条件も同様である。
【実施例】
【0028】
図4(a)〜(f)は、本発明の実施例に係る製鉄プロセスにおける溶鋼鍋の1サイクルにおける工程を示す図である。図4(a)に示すように、転炉3において精錬された溶鋼2は溶鋼鍋1に注入される。その後、図4(b)に示すように、溶鋼2は溶鋼鍋1内でアーク加熱装置4により加熱される。次に、図4(c)に示すように、溶鋼2は真空脱ガス槽5を含む脱ガス装置により脱ガス処理される。次に、図4(d)に示すように、溶鋼鍋1内の溶鋼2は連続鋳造機のタンディッシュ6に注入される。その結果、図4(e)に示すように、溶鋼鍋1には溶鋼が存在しない空鍋状態となる。溶鋼鍋1は次回転炉3から溶鋼が注入される直前に、図4(f)に示すように、溶鋼鍋予熱装置7により内表面が加熱される。
【0029】
(実施例1)
実施例1は、溶鋼鍋1の内表面の熱流束を推定した例である。伝熱モデルは厚み方向の1次元差分モデルを用いた。溶鋼鍋1の最外層は鉄皮で、内側にいくに従いパーマ煉瓦、準パーマ煉瓦、ウェア煉瓦といった構造になっている。これらの初期厚みと熱物性値は表1に示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
3回前の稼動終了時の温度分布は推定しており、その後の使用履歴は表2に示す通りである。
【0032】
【表2】
【0033】
伝熱境界条件は式(10)のように放射伝熱と対流熱伝達の和で表す。更に、外表面の対流熱伝達係数は式(11)で与える。
【0034】
【数4】
【0035】
各状態での伝熱境界条件のパラメータの値は表3に示す通りである。
【0036】
【表3】
【0037】
溶鋼鍋1は図4(a)〜(f)のサイクルの中で移動するので、図4(c)のように脱ガス処理工程において溶鋼鍋1側面の鉄皮表面温度を放射温度計8で計測し、予熱時の内表面雰囲気温度とウェア煉瓦厚みを未知として逆問題解析を行った。このとき、残差の最小化問題の解法はNelder-Meadの方法を用いた。測温のサンプリング間隔は1分とした。
【0038】
逆問題解析の結果得られた鉄皮表面温度の推移を図5に示す。図中のプロット点は鉄皮表面温度の計測値であり、実線は逆問題解析により決定した予熱時の内表面雰囲気温度とウェア煉瓦厚みに対応する鉄皮表面温度の推定値である。時間は前回の稼動終了時点(表2の稼動(前回))からの経過時間としている。すなわち、図5の鉄皮表面温度の推移は、表2の非稼動(81分)、非稼動(内表面予熱)(85分)、非稼動(15分)、非稼動(内表面予熱)(6分)、非稼動(4分)、稼動(今回)(199分)での特性である。計測値と推定値との間には良好な一致が見られる。逆問題解析の結果得られた予熱時の内表面雰囲気温度は1004℃、ウェア煉瓦厚みは133mm、内表面の熱流束は図6のようになった。
【0039】
(実施例2)
タンディッシュ6の場合も、溶鋼鍋1と同様に本発明を適用することができる。実施例2は、タンディッシュ6の内表面の熱流束を推定した例である。伝熱モデルは厚み方向の1次元差分モデルを用いた。タンディッシュ6の最外層は鉄皮で、内側にいくに従いパーマ煉瓦、キャスタブルといった構造になっている。これらの初期厚みと熱物性値は表4に示す通りである。
【0040】
【表4】
【0041】
6回前の稼動終了時の温度分布は推定しており、その後の使用履歴は表5に示す通りである。
【0042】
【表5】
【0043】
伝熱境界条件は実施例1と同様に式(10)及び式(11)で与え、各状態での伝熱境界条件のパラメータの値は表6に示す通りである。
【0044】
【表6】
【0045】
タンディッシュ6側面の鉄皮表面温度を放射温度計で計測し、予熱時の内表面雰囲気温度とキャスタブル厚みを未知として逆問題解析を行った。このとき、残差の最小化問題の解法はNelder-Meadの方法を用いた。測温のサンプリング間隔は2分とした。
【0046】
逆問題解析の結果得られた鉄皮表面温度の推移を図7に示す。図中のプロット点は鉄皮表面温度の計測値であり、実線は逆問題解析により決定した予熱時の内表面雰囲気温度とキャスタブル厚みに対応する鉄皮表面温度の推定値である。時間は前回の稼動終了時点(表5の稼動(前回))からの経過時間としている。すなわち、図7の鉄皮表面温度の推移は、表5の非稼動(4分)、稼動(今回)(78分)での特性である。計測値と推定値との間には良好な一致が見られる。逆問題解析の結果得られた予熱時の内表面雰囲気温度は1041℃、キャスタブル厚みは142mm、内表面の熱流束は図8のようになった。
【0047】
(実施例3)
実施例3は、溶鋼鍋1内の溶鋼温度を本発明の方法と特許文献1の方法とで推定し、推定精度を比較した例である。図4(b)のアーク加熱処理工程終了時から図4(c)の脱ガス処理工程開始時までの間の溶鋼温度変化について推定を行った。
【0048】
本発明の方法の推定式は、式(4)と式(5)から導いた式(12)の形で与えられる。一方、特許文献1の方法の推定式は、式(13)の形で与えられる。
【0049】
【数5】
【0050】
表7は、推定式作成のために行った実験データであり、データ数は14である。表7の熱流束積分とは式(12)の熱流束を時間積分したもののことであり、熱流束は実施例1の方法で推定した。但し、本実施例では実施例1と異なる溶鋼鍋を使用しているため、構造は同様であるものの初期厚みと熱物性値は表8に示したものとなっている。他の条件については実施例1と同じである。
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
このデータから回帰分析により次のような係数の値が得られた。
a1=2.12×10-7[m2℃/J]
b1=0.416[℃/min]
b2=0.0137[1/回]
b3=−1.98×10-5[1/min]
【0054】
この値を用いて、新たに行った9ケースの実験について温度変化の推定を行い、実績値との関係を調べた。図9は本発明の方法で推定した結果、図10は特許文献1の方法で推定した結果である。図9、10において、横軸が実績温度変化、縦軸が推定温度変化であり、直線y=xに近いほど温度変化の推定精度が良いことになる。本発明の方法の推定(図9)の方が特許文献1の推定(図10)よりも改善されているのが分かる。推定誤差の二乗平均平方根は、本発明の方法で1.9[℃]、特許文献1の方法で3.3[℃]となり、良好な精度が得られた。
【0055】
(実施例4)
実施例4は、本発明の方法を用いて溶鋼鍋の次回の稼動時における溶鋼温度変化を推定した例である。溶鋼鍋は実施例3と同一のものを使用した。対象としたのは図4(b)のアーク加熱処理工程終了時から図4(c)の脱ガス処理工程終了時までの間の溶鋼温度変化である。この間の溶鋼温度に影響を与える因子は溶鋼鍋への熱移動のみではなく、脱ガス槽5への熱移動、溶鋼湯面からの放熱、冷材及び合金投入による吸熱がある。溶鋼鍋1や脱ガス槽5への熱移動による温度変化は内表面の熱流束の代表値から推定する。溶鋼湯面からの熱流束はほぼ一定であると考えられるから、その影響による温度変化はアーク加熱処理工程終了から脱ガス処理開始までの所要時間から推定する。冷材及び合金投入による吸熱は冷材とカーボン成分とその他の成分とでは影響度が異なると考えられるので、それぞれの投入量から推定する。以上をまとめて溶鋼温度変化量を式(14)の形で表現し、重回帰分析で係数を決定する。このとき、溶鋼鍋1の内表面の熱流束は実施例1の逆問題解析手法により推定したが、次回の稼動時まで推定精度を向上させるために、図4(d)のように連続鋳造工程でもまた放射温度計8で脱ガス処理工程と同位置の鉄皮表面温度を計測した。
【0056】
【数6】
【0057】
図11は、連続鋳造工程の測温データも用いて推定したときの、溶鋼鍋鉄皮表面温度の計測値と推定値を示したものである。図中のプロット点は鉄皮表面温度の計測値であり、実線は逆問題解析により決定した予熱時の内表面雰囲気温度とウェア煉瓦厚みに対応する鉄皮表面温度の推定値である。推定に使用した測温データは今回稼動時のものだけであるが、次回稼動時の推定値も測温値と良好な一致を示しているのが分かる。一方、脱ガス槽5の内表面の熱流束は鉄皮表面の測温ができなかったため、通常の1次元差分伝熱モデルによる推定を行った。脱ガス槽の最外層は鉄皮で、内側にいくに従いパーマ煉瓦、準パーマ煉瓦、ウェア煉瓦といった構造になっている。これらの厚みと熱物性値は表9に示す通りである。使用履歴に従って表10に示した伝熱境界条件のパラメータ値で伝熱計算を進め、熱流束を推定した。
【0058】
【表9】
【0059】
【表10】
【0060】
実施例3と同様に係数a1〜a6の値を決定するために129ケースの事前実験を行い、重回帰分析を行った。その結果、次のような値が得られた。
a1=1.74×10-7[m2℃/J]
a2=1.20×10-7[m2℃/J]
a3=5.56[℃/hr]
a4=5.86×10-3[℃/kg]
a5=1.90×10-2[℃/kg]
a6=9.82×10-3[℃/kg]
【0061】
この値を用いて104ケースの推定を行った。図12は、図9と同じく推定値と実績値の関係を示す図である。推定誤差の二乗平均平方根は3.5[℃]と良好な精度が得られた。
【0062】
なお、本発明の推定装置は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0063】
また、本発明の目的は、上述した機能を実現するコンピュータプログラムをシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が実行することによっても達成され、この場合、コンピュータプログラム自体が本発明を構成することになる。以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:溶鋼鍋
2:溶鋼
3:転炉
4:アーク加熱装置
5:真空脱ガス槽
6:タンディッシュ
7:溶鋼鍋予熱装置
8:放射温度計
101:入力部
102:演算部
103:出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を推定する容器内表面の熱流束の推定方法、装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスおいて、溶鋼鍋やタンディッシュ内の溶鋼温度を管理することは製品品質を確保する上で、或いは生産性を向上させたり、製造トラブルを回避したりする上で必須であり、そのための溶鋼温度推定を高精度化することは加熱・冷却処理を必要最小限に止め、コスト削減に繋がる。
【0003】
溶鋼鍋内の溶鋼温度を精度良く推定するには、溶鋼鍋に移動する熱量、合金等の投入による吸熱量もしくは発熱量、アーク加熱により加えられる熱量等、溶鋼の熱収支を精度良く推定する必要がある。この中で、合金等の投入に関する熱収支は投入する合金の種類と投入量から、アーク加熱に関する熱収支はアーク電力量から精度良く推定することができる。
【0004】
しかしながら、溶鋼鍋に移動する熱量は、溶鋼鍋の状態が一定でないことから、精度良く推定するためには以下のことを加味する必要がある。第一に、溶鋼鍋の使用履歴によって転炉から出鋼するときの溶鋼鍋内の温度分布は異なり、それが原因で熱移動量が影響を受けることである。第二に、溶鋼鍋の耐火物厚みは損耗により変化し、それが原因で熱移動量は影響を受けることである。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、溶鋼鍋の使用履歴と耐火物の厚みの影響を反映させて溶鋼温度を予測する方法が提案されている。
【0006】
一方、例えば特許文献2には、容器外表面の温度測定点における測温データから非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、容器の厚みと容器内表面の熱流束を推定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−186734号公報
【特許文献2】特開2007−71686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている溶鋼温度予測手法では、以下の二つのことが精度向上の妨げとなっている。一つは、耐火物の厚みを計測或いは推定することが困難であるため、溶鋼温度の推定には溶鋼鍋の使用回数を代替指標として採用している点である。耐火物の損耗状況が通常と極端に異なった場合は、それが影響して溶鋼温度の良好な推定精度は得られない。もう一つは、溶鋼鍋に移動する熱量を推定することなく直接溶鋼温度降下量を推定している点である。溶鋼鍋の使用履歴や耐火物の厚みと溶鋼鍋に移動する熱量との間には比例関係等のような簡単な関係は成り立たないからである。
【0009】
また、特許文献2に開示されている逆問題解析手法を用いれば、溶鋼鍋に移動する熱量を推定することは可能であるが、この方法では事前に内外挿関数に含まれるパラメータを類似実験等で決定しておく必要がある。このパラメータは原理的に容器(溶鋼鍋)の初期温度分布に依存することから、溶鋼鍋の使用状況の変化が大きい場合には不適である。
【0010】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、容器内に高温液体が注入されたときに、容器の厚み、容器の熱物性値、容器内外表面における対流熱伝達係数や放射率等の伝熱境界条件のパラメータの何れかを事前に知り得ない場合でも、容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を高精度に推定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の容器内表面の熱流束の推定方法は、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定方法であって、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手順を有し、前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする。
また、本発明の容器内表面の熱流束の推定方法の他の特徴とするところは、前記推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する手順を更に有する点にある。
また、本発明の容器内表面の熱流束の推定方法の他の特徴とするところは、前記第2のステップでは、式(7)、式(8)、式(9)のいずれかを用いて残差Rを計算する点にある。
【数1】
本発明の容器内表面の熱流束の推定装置は、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定装置であって、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手段を備え、前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする。
本発明のプログラムは、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定するためのプログラムであって、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する処理をコンピュータに実行させ、前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容器内に高温液体が注入されたときに、容器の厚み、容器の熱物性値、容器内外表面における対流熱伝達係数や放射率等の伝熱境界条件のパラメータの何れかを事前に知り得ない場合でも、容器内表面の熱流束、更には高温液体の温度を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定方法を示すフローチャートである。
【図3】未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する処理を示すフローチャートである。
【図4】実施例における溶鋼鍋の1サイクルにおける工程を示す図である。
【図5】実施例1における溶鋼鍋鉄皮表面温度の計測値と推定値を示す図である。
【図6】実施例1における溶鋼鍋内表面の熱流束の推定値を示す図である。
【図7】実施例2におけるタンディッシュ鉄皮表面温度の計測値と推定値を示す図である。
【図8】実施例2におけるタンディッシュ内表面の熱流束の推定値を示す図である。
【図9】実施例3における本発明の方法による溶鋼温度変化の推定値と実績値の関係を示す図である。
【図10】実施例3における特許文献1の方法による溶鋼温度変化の推定値と実績値の関係を示す図である。
【図11】実施例4における溶鋼鍋鉄皮表面温度の計測値と推定値を示す図である。
【図12】実施例4における本発明の方法による溶鋼温度変化の推定値と実績値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明の適用対象となる容器としては、稼動(容器内に高温液体が存在する)、非稼動(容器内に高温液体が存在しない)状態のサイクルを繰り返すもの、例えば製鉄プロセスにおいては、トーピードカー、溶鋼鍋、タンディッシュ、二次精錬における反応槽等がある。ただし、容器壁内部に冷却機構を有するもの対しては適用させることは困難である。何故ならば、容器内表面の伝熱状況が容器外表面の温度情報として伝わる途中で、冷却機構により情報が強く打ち消されるためである。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定装置の概略構成を示す図である。101は入力部であり、容器の過去の使用履歴(稼働時間及び非稼働時間)データ、及び、高温液体が注入されたときの容器外表面の測温データを入力する。
【0016】
102は演算部であり、後述するように、容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する。そして、推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する。なお、ここで言う熱物性値とは、熱伝導率、密度、比熱を指すが、これらから一意に決まる他の熱物性値(例えば熱拡散率)を使用しても構わない。
【0017】
103は出力部であり、演算部102により推定された容器内表面の熱流束や高温液体の温度を例えば不図示のディスプレイに表示する。
【0018】
以下、図2のフローチャートを参照して、本発明の実施形態に係る、容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束及び高温液体の温度の推定方法を説明する。容器の使用履歴データとして、稼働時間及び非稼働時間をデータベースもしくは他の方法で記録しておき、そのデータを入力部101により入力する(ステップS101)。一方で、高温液体が注入されたときの容器外表面温度をサーモグラフィや放射温度計等で測定し、測温データを入力部101により入力する(ステップS102)。
【0019】
次に、演算部102により、伝熱逆問題解析により事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における対流熱伝達係数や放射率等の伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する(ステップS103)。ステップS103の詳細については後述する。
【0020】
次に、演算部102により、ステップS103で推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する(ステップS104)。具体的には、高温液体から容器への単位時間当たりの熱移動量を算出する。高温液体から容器への単位時間当たりの熱移動量Qは、式(1)のように容器内表面の溶鋼接触領域全体で熱流束を積分することにより得られる。通常は容器外表面の一部しか温度を測定することができないため、熱流束の推定は温度測定部の内表面しかできず、その値で代表させても良い。このとき、熱移動量は、式(2)のように容器内表面の溶鋼接触領域の面積と代表熱流束との積で表される。さらに、容器内表面の熱流束が一様でないと予想される場合には、高温液体の注入量がほぼ一定であるとの前提条件があれば、式(3)のように比例関係を仮定して事前の実験によりこの比例定数を決めておく方法が望ましい。このとき、熱移動量Qを直接計測するのは困難であるため、式(3)の両辺を時間積分した式(4)から求めれば良い。つまり、右辺の熱流束の積分は推定結果を用いて計算できるし、左辺は高温液体の温度変化量を測定して高温液体の全熱容量との積をとった値と一致する(式(5))から、回帰分析等により比例定数Aを求めることができる。以上のいずれかの方法で算出した高温液体から容器への単位時間当たりの熱移動量Qを用いて、高温液体の温度を算出する。具体的には、高温液体の温度を一度測定しておき、それ以降の温度は式(6)で算出することができる。
【0021】
【数2】
【0022】
次に、図3のフローチャートを参照して、ステップS103の処理の詳細を説明する。第1ステップ(ステップS1)では、未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで推定する。このとき、モデル化の方法としては差分法や有限要素法等、一般的に知られているもので良い。また、初期温度分布は過去に推定した時点のものを使用し、容器の使用履歴に従って伝熱境界条件を設定する。過去に推定した温度分布がなければ、例えば、容器が取りうる最低温度(常温)を初期温度としたものと、最高温度(高温液体の温度)を初期温度としたものを計算し、現在の稼動状態の温度が一致するまで十分に過去に遡って計算を開始すればよい。
【0023】
第2ステップ(ステップS2)では、第1ステップで推定した容器外表面の温度と測温データとの残差Rを計算する。残差Rの計算は、式(7)を用いるのが一般的であるが、式(8)や式(9)等を用いても良い。
【0024】
【数3】
【0025】
第2ステップで計算した残差Rは、仮定した未知パラメータの値が変われば変化するものであり、第3ステップ(ステップS3)では、残差Rを最小にするように未知パラメータを決定する。この最小化問題を解く方法としては、Nelder-Meadの方法等を用いることができる。決定した未知パラメータに対応する容器内表面の熱流束は、再度伝熱モデルで求めても良いし、第1ステップにおける伝熱計算で未知パラメータに対応する熱流束を保管しておき、それを取り出しても良い。
【0026】
以上述べた方法で求めることができる未知パラメータの数は、測温データの採取状況によって決まってくる。つまり、ある時刻の温度レベルが読み取れる程度のデータ数しか得られなければ未知数は1つ、温度の時間変化率が読み取れるほどのデータ数が得られれば未知数は2つまで、更に温度の時間変化率の変化が読み取れるほどであれば未知数は3つ(同時刻では2つまで)まで決定できる。
【0027】
ただし、同時刻に選択できるのは、容器の厚みと熱物性値との中から1つ、伝熱境界条件から1つである。容器の厚みと熱物性値とにおいて、熱伝導現象に対して厚みや熱物性値がどのような割合で関与しているかまで把握できないためである。伝熱境界条件も同様である。
【実施例】
【0028】
図4(a)〜(f)は、本発明の実施例に係る製鉄プロセスにおける溶鋼鍋の1サイクルにおける工程を示す図である。図4(a)に示すように、転炉3において精錬された溶鋼2は溶鋼鍋1に注入される。その後、図4(b)に示すように、溶鋼2は溶鋼鍋1内でアーク加熱装置4により加熱される。次に、図4(c)に示すように、溶鋼2は真空脱ガス槽5を含む脱ガス装置により脱ガス処理される。次に、図4(d)に示すように、溶鋼鍋1内の溶鋼2は連続鋳造機のタンディッシュ6に注入される。その結果、図4(e)に示すように、溶鋼鍋1には溶鋼が存在しない空鍋状態となる。溶鋼鍋1は次回転炉3から溶鋼が注入される直前に、図4(f)に示すように、溶鋼鍋予熱装置7により内表面が加熱される。
【0029】
(実施例1)
実施例1は、溶鋼鍋1の内表面の熱流束を推定した例である。伝熱モデルは厚み方向の1次元差分モデルを用いた。溶鋼鍋1の最外層は鉄皮で、内側にいくに従いパーマ煉瓦、準パーマ煉瓦、ウェア煉瓦といった構造になっている。これらの初期厚みと熱物性値は表1に示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
3回前の稼動終了時の温度分布は推定しており、その後の使用履歴は表2に示す通りである。
【0032】
【表2】
【0033】
伝熱境界条件は式(10)のように放射伝熱と対流熱伝達の和で表す。更に、外表面の対流熱伝達係数は式(11)で与える。
【0034】
【数4】
【0035】
各状態での伝熱境界条件のパラメータの値は表3に示す通りである。
【0036】
【表3】
【0037】
溶鋼鍋1は図4(a)〜(f)のサイクルの中で移動するので、図4(c)のように脱ガス処理工程において溶鋼鍋1側面の鉄皮表面温度を放射温度計8で計測し、予熱時の内表面雰囲気温度とウェア煉瓦厚みを未知として逆問題解析を行った。このとき、残差の最小化問題の解法はNelder-Meadの方法を用いた。測温のサンプリング間隔は1分とした。
【0038】
逆問題解析の結果得られた鉄皮表面温度の推移を図5に示す。図中のプロット点は鉄皮表面温度の計測値であり、実線は逆問題解析により決定した予熱時の内表面雰囲気温度とウェア煉瓦厚みに対応する鉄皮表面温度の推定値である。時間は前回の稼動終了時点(表2の稼動(前回))からの経過時間としている。すなわち、図5の鉄皮表面温度の推移は、表2の非稼動(81分)、非稼動(内表面予熱)(85分)、非稼動(15分)、非稼動(内表面予熱)(6分)、非稼動(4分)、稼動(今回)(199分)での特性である。計測値と推定値との間には良好な一致が見られる。逆問題解析の結果得られた予熱時の内表面雰囲気温度は1004℃、ウェア煉瓦厚みは133mm、内表面の熱流束は図6のようになった。
【0039】
(実施例2)
タンディッシュ6の場合も、溶鋼鍋1と同様に本発明を適用することができる。実施例2は、タンディッシュ6の内表面の熱流束を推定した例である。伝熱モデルは厚み方向の1次元差分モデルを用いた。タンディッシュ6の最外層は鉄皮で、内側にいくに従いパーマ煉瓦、キャスタブルといった構造になっている。これらの初期厚みと熱物性値は表4に示す通りである。
【0040】
【表4】
【0041】
6回前の稼動終了時の温度分布は推定しており、その後の使用履歴は表5に示す通りである。
【0042】
【表5】
【0043】
伝熱境界条件は実施例1と同様に式(10)及び式(11)で与え、各状態での伝熱境界条件のパラメータの値は表6に示す通りである。
【0044】
【表6】
【0045】
タンディッシュ6側面の鉄皮表面温度を放射温度計で計測し、予熱時の内表面雰囲気温度とキャスタブル厚みを未知として逆問題解析を行った。このとき、残差の最小化問題の解法はNelder-Meadの方法を用いた。測温のサンプリング間隔は2分とした。
【0046】
逆問題解析の結果得られた鉄皮表面温度の推移を図7に示す。図中のプロット点は鉄皮表面温度の計測値であり、実線は逆問題解析により決定した予熱時の内表面雰囲気温度とキャスタブル厚みに対応する鉄皮表面温度の推定値である。時間は前回の稼動終了時点(表5の稼動(前回))からの経過時間としている。すなわち、図7の鉄皮表面温度の推移は、表5の非稼動(4分)、稼動(今回)(78分)での特性である。計測値と推定値との間には良好な一致が見られる。逆問題解析の結果得られた予熱時の内表面雰囲気温度は1041℃、キャスタブル厚みは142mm、内表面の熱流束は図8のようになった。
【0047】
(実施例3)
実施例3は、溶鋼鍋1内の溶鋼温度を本発明の方法と特許文献1の方法とで推定し、推定精度を比較した例である。図4(b)のアーク加熱処理工程終了時から図4(c)の脱ガス処理工程開始時までの間の溶鋼温度変化について推定を行った。
【0048】
本発明の方法の推定式は、式(4)と式(5)から導いた式(12)の形で与えられる。一方、特許文献1の方法の推定式は、式(13)の形で与えられる。
【0049】
【数5】
【0050】
表7は、推定式作成のために行った実験データであり、データ数は14である。表7の熱流束積分とは式(12)の熱流束を時間積分したもののことであり、熱流束は実施例1の方法で推定した。但し、本実施例では実施例1と異なる溶鋼鍋を使用しているため、構造は同様であるものの初期厚みと熱物性値は表8に示したものとなっている。他の条件については実施例1と同じである。
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
このデータから回帰分析により次のような係数の値が得られた。
a1=2.12×10-7[m2℃/J]
b1=0.416[℃/min]
b2=0.0137[1/回]
b3=−1.98×10-5[1/min]
【0054】
この値を用いて、新たに行った9ケースの実験について温度変化の推定を行い、実績値との関係を調べた。図9は本発明の方法で推定した結果、図10は特許文献1の方法で推定した結果である。図9、10において、横軸が実績温度変化、縦軸が推定温度変化であり、直線y=xに近いほど温度変化の推定精度が良いことになる。本発明の方法の推定(図9)の方が特許文献1の推定(図10)よりも改善されているのが分かる。推定誤差の二乗平均平方根は、本発明の方法で1.9[℃]、特許文献1の方法で3.3[℃]となり、良好な精度が得られた。
【0055】
(実施例4)
実施例4は、本発明の方法を用いて溶鋼鍋の次回の稼動時における溶鋼温度変化を推定した例である。溶鋼鍋は実施例3と同一のものを使用した。対象としたのは図4(b)のアーク加熱処理工程終了時から図4(c)の脱ガス処理工程終了時までの間の溶鋼温度変化である。この間の溶鋼温度に影響を与える因子は溶鋼鍋への熱移動のみではなく、脱ガス槽5への熱移動、溶鋼湯面からの放熱、冷材及び合金投入による吸熱がある。溶鋼鍋1や脱ガス槽5への熱移動による温度変化は内表面の熱流束の代表値から推定する。溶鋼湯面からの熱流束はほぼ一定であると考えられるから、その影響による温度変化はアーク加熱処理工程終了から脱ガス処理開始までの所要時間から推定する。冷材及び合金投入による吸熱は冷材とカーボン成分とその他の成分とでは影響度が異なると考えられるので、それぞれの投入量から推定する。以上をまとめて溶鋼温度変化量を式(14)の形で表現し、重回帰分析で係数を決定する。このとき、溶鋼鍋1の内表面の熱流束は実施例1の逆問題解析手法により推定したが、次回の稼動時まで推定精度を向上させるために、図4(d)のように連続鋳造工程でもまた放射温度計8で脱ガス処理工程と同位置の鉄皮表面温度を計測した。
【0056】
【数6】
【0057】
図11は、連続鋳造工程の測温データも用いて推定したときの、溶鋼鍋鉄皮表面温度の計測値と推定値を示したものである。図中のプロット点は鉄皮表面温度の計測値であり、実線は逆問題解析により決定した予熱時の内表面雰囲気温度とウェア煉瓦厚みに対応する鉄皮表面温度の推定値である。推定に使用した測温データは今回稼動時のものだけであるが、次回稼動時の推定値も測温値と良好な一致を示しているのが分かる。一方、脱ガス槽5の内表面の熱流束は鉄皮表面の測温ができなかったため、通常の1次元差分伝熱モデルによる推定を行った。脱ガス槽の最外層は鉄皮で、内側にいくに従いパーマ煉瓦、準パーマ煉瓦、ウェア煉瓦といった構造になっている。これらの厚みと熱物性値は表9に示す通りである。使用履歴に従って表10に示した伝熱境界条件のパラメータ値で伝熱計算を進め、熱流束を推定した。
【0058】
【表9】
【0059】
【表10】
【0060】
実施例3と同様に係数a1〜a6の値を決定するために129ケースの事前実験を行い、重回帰分析を行った。その結果、次のような値が得られた。
a1=1.74×10-7[m2℃/J]
a2=1.20×10-7[m2℃/J]
a3=5.56[℃/hr]
a4=5.86×10-3[℃/kg]
a5=1.90×10-2[℃/kg]
a6=9.82×10-3[℃/kg]
【0061】
この値を用いて104ケースの推定を行った。図12は、図9と同じく推定値と実績値の関係を示す図である。推定誤差の二乗平均平方根は3.5[℃]と良好な精度が得られた。
【0062】
なお、本発明の推定装置は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0063】
また、本発明の目的は、上述した機能を実現するコンピュータプログラムをシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が実行することによっても達成され、この場合、コンピュータプログラム自体が本発明を構成することになる。以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:溶鋼鍋
2:溶鋼
3:転炉
4:アーク加熱装置
5:真空脱ガス槽
6:タンディッシュ
7:溶鋼鍋予熱装置
8:放射温度計
101:入力部
102:演算部
103:出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定方法であって、
容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手順を有し、
前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする容器内表面の熱流束の推定方法。
【請求項2】
前記推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する手順を更に有することを特徴とする請求項1に記載の容器内表面の熱流束の推定方法。
【請求項3】
前記第2のステップでは、式(7)、式(8)、式(9)のいずれかを用いて残差Rを計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器内表面の熱流束の推定方法。
【数1】
【請求項4】
容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定装置であって、
容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手段を備え、
前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする容器内表面の熱流束の推定装置。
【請求項5】
容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定するためのプログラムであって、
容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する処理をコンピュータに実行させ、
前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とするプログラム。
【請求項1】
容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定方法であって、
容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手順を有し、
前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする容器内表面の熱流束の推定方法。
【請求項2】
前記推定した容器内表面の熱流束から高温液体の温度を推定する手順を更に有することを特徴とする請求項1に記載の容器内表面の熱流束の推定方法。
【請求項3】
前記第2のステップでは、式(7)、式(8)、式(9)のいずれかを用いて残差Rを計算することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器内表面の熱流束の推定方法。
【数1】
【請求項4】
容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定する容器内表面の熱流束の推定装置であって、
容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する手段を備え、
前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とする容器内表面の熱流束の推定装置。
【請求項5】
容器内に高温液体が注入されたときの容器内表面の熱流束を推定するためのプログラムであって、
容器の過去の使用履歴データ及び容器外表面の測温データから、事前に知り得なかった容器の厚み、容器の熱物性値、及び容器内外表面における伝熱境界条件のうち少なくともいずれかの未知パラメータを推定し、その結果に対応する容器内表面の熱流束を推定する処理をコンピュータに実行させ、
前記未知パラメータを推定する際に、第1ステップとして該未知パラメータの値を仮定し、容器外表面の温度を伝熱モデルで算出して、第2のステップとして前記第1ステップで算出した容器外表面の温度と測温データとの残差を計算して、第3のステップとして前記第2ステップで計算した残差を最小にするように該未知パラメータを決定することを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−230564(P2010−230564A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79848(P2009−79848)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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