説明

容器吊下部材付き水耕栽培装置

【課題】適度な水分状態を維持して植物を栽培することができる容器吊下部材付き水耕栽培装置を提供する。
【解決手段】容器吊下部材2付き水耕栽培装置1は、植栽容器3と、前記植栽容器3の植物に供給する培養液6を貯留して、前記植栽容器3を浮遊状態に収容する貯液容器4とを備え、前記貯液容器4の周壁41に着脱自在に構成されるとともに、前記貯液容器4の周壁41に取り付けられた状態で前記植栽容器3を支持するように構成された容器吊下部材2を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培する水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を栽培する水耕栽培装置として、植栽容器と、植栽容器の植物に供給する培養液に、植栽容器を浮遊状態に収容する貯液容器との組み合わせからなる種々のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−320417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、栽培する植物が大きく成長することにより、植物の自重によって栽培容器が沈んで当該容器に設けた培地が過湿状態となり、植物の根幹部全体が過度の水分で満たされることによって、生育状態が低下してしまう、或いは根腐れが生じて枯れてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、適度な水分状態を維持して植物を栽培することができる容器吊下部材付き水耕栽培装置の提供を目的とする。
【0006】
即ち、本発明は下記[1]〜[4]に記載の構成を有する。
【0007】
[1] 植栽容器と、前記植栽容器の植物に供給する培養液を貯留して、前記植栽容器を浮遊状態に収容する貯液容器とを備える容器吊下部材付き水耕栽培装置において、
前記貯液容器の周壁に着脱自在に構成されるとともに、前記貯液容器の周壁に取り付けられた状態で前記植栽容器を支持するように構成された容器吊下部材を備えることを特徴とする容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【0008】
[2] 前記植栽容器は、底壁に通水部を有する植栽室を包囲し下向きに開口した環状フロート室が形成されてなり、
前記容器吊下部材は直線部を有し、前記直線部の一端側に前記貯液容器の周壁に掛止される掛止部が湾曲形成されてなり、前記環状フロート室の外壁下部に取り付けて前記植栽容器を支持する支持部が湾曲形成されてなることを特徴とする前項1に記載の容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【0009】
[3] 前記掛止部及び前記支持部の先端は、円弧を有する曲線状に形成されることを特徴とする前項2に記載の容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【0010】
[4] 前記容器吊下部材は、ばね鋼材料からなることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【発明の効果】
【0011】
上記[1]に記載の発明によれば、容器吊下部材によって植栽容器を貯液容器から吊下げることができるので、植物が成長して大きくなった場合であっても植栽容器が沈むことがなく、適度な水分状態を維持して植物を栽培することができる。
【0012】
上記[2]に記載の発明によれば、容器吊下部材の一端側を貯液容器に取り付け、他端側に植栽容器を引っ掛けるだけの単純な構成で、適度な水分状態を維持して植物を栽培することができる。
【0013】
上記[3]に記載の発明によれば、掛止部の先端が丸みを帯びた形状に形成されているので、貯液容器の周壁に容器吊下部材を取り付け易い。また、支持部の先端が丸みを帯びた形状に形成されているので安全性が高い。
【0014】
上記[4]に記載の発明によれば、容器吊下部材がばね鋼材料で形成されているので、容器吊下部材を貯液容器に取り付けた場合に、容器吊下部材が貯液容器の壁面に対して垂直になるように取り付けることができ、植栽容器の容器吊下部材への取り付けが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る容器吊下部材付き水耕栽培装置における水耕栽培装置ついて説明する説明図である。
【図2】図1に係る容器吊下部材付き水耕栽培装置における容器吊下部材について説明する説明図である。
【図3】図1に係る容器吊下部材付き水耕栽培装置について説明する説明図である。
【図4】図1に係る容器吊下部材付き水耕栽培装置について説明する説明図である。
【図5】図1に係る容器吊下部材付き水耕栽培装置について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、容器吊下部材2付き水耕栽培装置1について説明する説明図、図2は、図1の容器吊下部材2付き水耕栽培装置1における容器吊下部材2について説明する説明図、図3〜図5は、図1の容器吊下部材2付き水耕栽培装置1について説明する説明図である。
【0018】
水耕栽培装置1は、植栽容器3と、前記植栽容器3の植物に供給する培養液6を貯留して、前記植栽容器3を浮遊状態に収容する貯液容器4と、を備える。植栽容器3には、培地5が収容されて使用される。
【0019】
培地5に植物の種子や苗を載置しておくと、培地5の毛管現象により上昇させられた培養液6を種子や苗が吸収することにより植物が成長する。
【0020】
図1に示すように、貯液容器4は、下部から上部にいくに従って徐々に拡開するテーパーの有底円筒状に形成されている。
【0021】
植栽容器3は、植栽室34と、植栽室34を包囲し下向きに開口した環状フロート室33が一体形成されてなる。植栽室34の底壁31には、多数の通孔321が放射状かつ同心円状に設けられ、これら多数の通孔321が通水部32を構成する。
【0022】
植栽室34には多孔質材料からなる培地5が収容される。培地5には、例えば、ロックウール成形品、ウレタンやフェノール等の各種発泡樹脂成形品、ブロック状やマット状等に形成された植物繊維、無機繊維等からなる成形品が用いられる。
【0023】
環状フロート室33は、植栽室34と一体成形されており、下向きに開口する断面コ字状に形成されるとともに、周方向に所定間隔(例えば、90度間隔)をおいて設けられた隔壁により4つの小房36に分割されている。このような小房36を備えた環状フロート室33の構成により、培養液上に浮かべた小房36に空気などの気体が充填されて浮力体となることで、別体の浮力体を必要とすることなく植栽容器3を培養液6上に浮遊させることができる。
【0024】
環状フロート室33の外壁面は、平面視において略正方形に形成されている。環状フロート室33の外壁面の四隅は、それぞれが外方に突出する曲面状に形成された近接面332をなす。近接面332は、貯液容器4の内壁に略々沿うように形成される。隣り合う近接面332の間は、平面状に形成され、貯液容器4の内壁との間に手指の挿入が可能な間隔を有した隔離面331をなす。
【0025】
このように貯液容器4の内壁との間に手指挿入可能な間隔が形成されているため、植栽容器3を掴み易く、貯液容器4からの出し入れを行い易い。
【0026】
植栽室34の底壁31の下方には、脚部35が円弧状に配置されている。植栽室34の底壁31に脚部35が配置されることにより、貯液容器4内の培養液6が渇水状態になったり、或いは渇水状態に近づいたりした場合にも、植栽室34の底壁31が貯液容器4の底面に当接することはない。
【0027】
図3に基づいて植物を当該水耕栽培装置1で育成させる場合について説明すると、培地5を植栽室34に収容して、培地5に苗を植えるようにして置いた後、植栽容器3を貯液容器4内に入れて、脚部35を貯液容器4の底面に載置する。
【0028】
続いて、培地5の上から培養液6を少しずつ掛けていき、植栽容器3が培養液6上に浮かぶまで培養液6を貯液容器4に注入する。
【0029】
植栽容器3が培養液6中に浮遊した状態では、植栽室34に収容された状態の培地5の下半分が培養液6に浸かった状態であり、苗の根が短い場合には培地5の毛管現象によって苗が培養液6を吸収し、苗の根が生長して長くなっている場合には、培地5を浸している培養液6から直接吸収する。
【0030】
苗による吸収と自然蒸発とによって培養液6の総量が減少して液面が徐々に低下するため、その都度貯液容器4に培養液6を補充するなどすればよい。貯液容器4に培養液6を補充することによって、再度植栽容器3の浮遊状態を実現できる。
【0031】
図4に示すように、栽培している植物が成長してその自重により植栽容器3が培養液6上に浮遊しなくなった場合或いは培養液6上で植栽容器3が傾いてしまう場合等には、容器吊下げ部材を用いて、植栽容器3の植物が培養液6を吸収可能な高さ位置に調整する必要がある。
【0032】
容器吊下部材2は、貯液容器4の周壁41に取り付けられた状態で、植栽容器3が貯液容器4に吊下げられた状態となるように容器吊下部材2によって植栽容器3を支持するように構成されている。
【0033】
図2に示すように、容器吊下部材2は、ばね鋼材料からなる線材を用いて形成され、植物の成長度合いに合わせて容器吊下部材2を使用することができるように、貯液容器4の周壁41に着脱自在に構成されている。
【0034】
容器吊下部材2がばね鋼材料で形成されているので、容器吊下部材2を貯液容器4に取り付けた場合に、容器吊下部材2の支持部23が貯液容器4の壁面に対して垂直になるように、本実施例では支持部23が貯液容器4の中心方向に向くように取り付けられる。容器吊下部材2がこのように取り付けられるので、植栽容器3の容器吊下部材2への取り付けが容易である。
【0035】
前記容器吊下部材2は直線部22を有している。前記容器吊下部材2には、前記直線部22の一端側に前記貯液容器4の周壁41に掛止される掛止部21が湾曲形成されてなり、前記環状フロート室33の外壁下部に取り付けて前記植栽容器3を支持する支持部23が湾曲形成されてなる。
【0036】
例えば、貯液容器4の周壁41に取り付けられる掛止部21は、貯液容器4の周壁41を内側及び外側の両方からばね力によって挟み込むような形状となっている。環状フロート室33の外壁下部に取り付けられる支持部23は、掛止部21よりも緩やかな傾斜で湾曲しており、環状フロート室33の外壁を支持部23の湾曲部分で支持し易い角度で傾斜するように構成されている。例えば、直線部22に対する支持部23の傾斜角度は、鋭角であることが好ましい。
【0037】
容器吊下部材2の一端側を貯液容器4に取り付け、他端側に植栽容器3を引っ掛けるだけの単純な構成で、適度な水分状態を維持して植物を栽培することができる。
【0038】
また、容器吊下部材2に設けた掛止部21及び支持部23の先端211,231は、円弧を有する曲線状に形成されている。
【0039】
例えば、掛止部21の先端211は、側面視が円形状になるように丸められている。このような構成により、掛止部21の先端211が丸みを帯びた形状に形成されているので、貯液容器4の周壁41に容器吊下部材2を取り付け易い。また、支持部23の先端231が丸みを帯びた形状に形成されているので安全性が高い。
【0040】
図5に基づいて、例えば成長が過度な植物を当該水耕栽培装置1で育成させる場合について説明すると、貯液容器4から植栽容器3を取り外した状態で、容器吊下部材2の掛止部21を貯液容器4の周壁41の上部縁に挿し込んで取り付ける。
【0041】
容器吊下部材2を複数個取り付ける場合には、容器吊下部材2同士が対向するような位置に配置すると、容器吊下部材2により吊下げられた植栽容器3が安定するため好ましい。
【0042】
容器吊下部材2を貯液容器4の周壁41に取り付けると、植栽容器3の外壁を下方から支持するように、貯液容器4の周壁41面に対して垂直に突出した容器吊下部材2の支持部23に植栽容器3を取り付ける。
【0043】
植栽容器3を取り付けると、培地5の上から培養液6を少しずつ掛けていく。この際、植栽容器3の底面と培養液6面との間に空間(隙間)が設けられるように培養液6の注入量を調整する。空間(隙間)を設けて植栽容器3の高さ位置を設定することにより、植物の根腐れを防止することができる。尚、予め植栽容器3の高さ位置を考慮して培養液6が注入された貯液容器4の周壁41に容器吊下部材2を取り付け、植栽容器3を吊り下げるのであってもよい。
【0044】
以上説明したような容器吊下部材2付き水耕栽培装置1により、植栽容器3を容器吊下部材2によって貯液容器4から吊下げることができるので、植物が成長して大きくなった場合であっても植栽容器3が沈むことがなく、適度な水分状態を維持して植物を栽培することができる。
【0045】
上述した容器吊下部材2には、防錆処理が施されていることが好ましい。また、複数の異なる大きさの容器吊下部材2を用いて、植物の成長度合いに応じて植栽容器3の高さ位置を設定変更できるように構成されることが好適である。
【0046】
植栽容器3及び貯液容器4は、本発明の容器吊下部材2の掛止部21を着脱可能な構成の植栽容器3及び貯液容器4であれば、特に上述で説明した構成に限定されるものではない。
【0047】
例えば、上述した植栽容器3は、培養液6上に浮遊させる際に、別体の浮力体を小房36に設けて培養液6上を浮遊させるのであってもよい。
【0048】
また、上述した環状フロート室33は、隔壁で分割された小房36を有すものとして説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、環状フロート室33全体が一つのフロートとなりえる空間として形成されるのであってもよい。
【0049】
上述では、植栽容器3に脚部35を有するように説明したが、これに限定されるものではなく、環状フロート室33に挿入された浮力体を脚部35として兼用するのであってもよいし、環状フロートに脚部35を備えないものであってもよい。
【0050】
上述の説明中の数値については、いずれも設計事項であり、実施例に限定されるものではない。
【0051】
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1…水耕栽培装置
2…容器吊下部材
3…植栽容器
4…貯液容器
6…培養液
21…掛止部
22…直線部
23…支持部
31…底壁
32…通水部
33…環状フロート室
34…植栽室
41…周壁
211…先端
231…先端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽容器と、前記植栽容器の植物に供給する培養液を貯留して、前記植栽容器を浮遊状態に収容する貯液容器とを備える容器吊下部材付き水耕栽培装置において、
前記貯液容器の周壁に着脱自在に構成されるとともに、前記貯液容器の周壁に取り付けられた状態で前記植栽容器を支持するように構成された容器吊下部材を備えることを特徴とする容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【請求項2】
前記植栽容器は、底壁に通水部を有する植栽室を包囲し下向きに開口した環状フロート室が形成されてなり、
前記容器吊下部材は直線部を有し、前記直線部の一端側に前記貯液容器の周壁に掛止される掛止部が湾曲形成されてなり、前記環状フロート室の外壁下部に取り付けて前記植栽容器を支持する支持部が湾曲形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【請求項3】
前記掛止部及び前記支持部の先端は、円弧を有する曲線状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の容器吊下部材付き水耕栽培装置。
【請求項4】
前記容器吊下部材は、ばね鋼材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器吊下部材付き水耕栽培装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157245(P2012−157245A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17140(P2011−17140)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(393008418)株式会社冨永樹脂工業所 (7)
【Fターム(参考)】