容器壁の温度又は熱流束の推定方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに容器壁厚みの推定方法
【課題】 容器の外壁表面における温度測定点での測温データと該測温データをもとに算出した熱流束データ又は前記温度測定点において測定した熱流束データをもとに容器壁の内部の温度を計算し、容器壁厚みを推定し、容器壁の損耗状態を推定する。
【解決手段】 内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び該測温データを基に算出した外壁表面の熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記容器の壁内部、又は壁内部及び内壁表面における温度又は熱流束を推定する。かかる方法で推定した容器の壁内部の温度から、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することができる。
【解決手段】 内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び該測温データを基に算出した外壁表面の熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記容器の壁内部、又は壁内部及び内壁表面における温度又は熱流束を推定する。かかる方法で推定した容器の壁内部の温度から、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高炉、転炉、脱ガス炉、燃焼による鋼材加熱炉、石炭ガス化反応炉などの高温のガス反応又は液体反応を伴う反応容器及び混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋などの溶鉄を運搬する容器等、容器の内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器における、容器壁の温度又は熱流束の推定方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに容器壁厚みの推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉、転炉、脱ガス炉、燃焼による鋼材加熱炉、石炭ガス化反応炉等の高温のガス反応又は液体反応を伴う反応容器及び混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋等の溶鉄を運搬する容器の操業を管理する場合、これら高温物質を扱う容器の壁の状況(例えば、損耗状態)を観測し、その状況を管理する必要がある。
【0003】
従来から、容器の壁の損耗状況は、高温物質が容器内に存在しないときに、人間が壁の内表面の状態を目視で観察することで管理されてきた。
【0004】
しかしながら、高温物質が容器内に存在しないときでも耐火物表面は500℃以上の高温に熱せられており、上記のような推定では、目視で損耗状態を定量的な数値として捉えることは極めて困難であり、定性的な管理とならざるを得ない。また、高温物質が容器内に存在しないときにおける管理を余儀無くされるため、稼動中の内部高温物質の流出という大事故に発展するような事態を管理することができなかった。
【0005】
これに対して、稼動中の容器の外壁表面温度を、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーを使用して計測し、外壁表面温度計測値から容器壁の損耗状態を管理する方法が提案されている。外壁表面温度管理値にある上限を設定し、外壁表面温度計測値がこの上限値より高温になったとき、容器壁の損耗状態が内部高温物質の流出を引き起こすに至る可能性があると判断し、容器を非稼動状態にして、容器壁を修理又は交換する。
【0006】
しかしながら、容器外壁の温度は、容器壁の損耗状態だけで決定されるのではなく、容器の稼動(高温物質が容器内に存在)・非稼動(高温物質が容器内に存在しない)の時間サイクルによる熱履歴の影響を大きく受ける。例えば、容器壁が全く同一の損耗状態であっても、稼動・非稼動の時間サイクルが異なれば、容器の外壁温度も異なった値を示す。そのため、上記のような推定では、容器壁の損耗状態に一意に対応した正確な判定を行うことが困難である。
【0007】
一方、容器壁内の熱伝導現象を非定常熱伝導逆問題と考えて、被評価材(容器壁)内部の複数の温度測定点において測定された温度データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記被評価材の内部又は表面における温度を演算する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、例えば鉄鋼プロセスにおいて、溶鉄を取り扱う混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋等の容器は、複数の工場間又は工程間を移動するため、容器壁内部に熱電対を埋設して温度データを採取することは困難なケースが多く、たとえ、熱電対を埋設できたとしても、埋設した熱電対の保守・整備のため、コスト的な負荷が大きい。また、容器壁に局所的に発生する損耗個所を特定するために多数の熱電対を容器壁内部に埋設する必要があり、コスト的な負荷をさらに大きくする。
【0009】
【特許文献1】特開2005−134383号公報
【非特許文献1】日本機械工学会編 伝熱工学資料 改定第4版 p.68〜p.69
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
容器壁の損耗状態は、容器壁の厚みによって判断することができる。例えば、損耗が均一な形状で1次元形状に近似できる場合、容器壁が熱的に定常状態にあれば、容器壁内部の温度分布は直線状になり、容器壁の厚みLは、容器壁外壁で測定した熱流束Q、容器壁の厚み方向の熱伝導率kx、高温容器内壁温度Tin及び高温容器外壁温度Toutを使って下式(17)より推定できる。
【0011】
【数1】
【0012】
しかし、実際の容器壁の温度は、稼動・非稼動の時間サイクルによって異なった値を示すため、容器壁外壁で測定した熱流束Q値も非定常的に変化する。これに加え、容器壁内部の温度分布は曲線形状で非定常的に変化するため、上記の式で容器壁の厚みを推定すると、大きな誤差を引き起こすことになる。壁内部の測温データがなくても、非定常的に変化する壁内部の温度又は熱流束を求める必要がある。
【0013】
また、より厳密に評価するには、熱伝導現象は、3次元方向に起こるはずであり、容器壁内部の3次元での非定常温度分布を推定することが必要となる。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、容器の外壁表面における温度測定点での測温データと該測温データをもとに算出した熱流束データ又は前記温度測定点において測定した熱流束データをもとに容器壁の内部の温度を計算し、容器壁厚みを推定し、容器壁の損耗状態を推定することを目的とする。更には、1次元だけでなく、2次元、3次元といった空間次元数にも容易に適用可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法は、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び該測温データを基に算出した外壁表面の熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記容器の壁内部、又は壁内部及び内壁表面における温度又は熱流束を推定する点に特徴を有する。
本発明による容器壁厚みの推定方法は、本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法で推定した容器の壁内部の温度から、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定する点に特徴を有する。
本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定装置は、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための装置であって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備えた点に特徴を有する。
本発明による容器壁厚みの推定装置は、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための装置であって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備え、更に、前記演算部では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定する点に特徴を有する。
本発明によるコンピュータプログラムは、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させる点に特徴を有する。
本発明による他のコンピュータプログラムは、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させ、更に前記演算手段では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定する点に特徴を有する。
本発明によるコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明によるコンピュータプログラムを記録した点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器の壁内部の温度を測定しなくとも、外壁表面の温度測定点において測定された測温データと該測温データを基に算出した熱流束データ又は前記温度測定点において測定された熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、上記容器の壁内部における温度又は熱流束を推定することができる。従って、推定した壁内部における温度が壁内壁表面の温度と一致する位置を求めることにより、容器壁の損耗状態の程度を表す容器壁の厚みを推定することができる。
【0017】
また、内外挿関数を用いた簡便な手法により逆問題解析を行うことができ、1次元だけでなく、2次元、3次元といった空間次元数にも容易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
以下、図面を参照して、本発明における容器壁の温度又は熱流束の推定方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに容器壁厚みの推定方法の実施の形態を説明する。
【0019】
図1−Aには、本発明の実施の形態の1例としての、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置の概略構成を示す。同図に示すように、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置は、容器の外壁表面を赤外線サーモグラフィー(又は放射温度計)(図3を参照)により測定された測温データ、と前記温度測定点において測定された熱流束データが入力される入力部101Aと、入力部101Aに入力される測温データと熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、容器の壁内部における温度又は熱流束を演算する演算部102Aと、演算部102Aにより演算された容器壁の内部における温度又は熱流束をディスプレイに表示等するための出力部103Aとを備えている。
【0020】
図1−Bには、本発明の実施の形態の別の例としての、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置の概略構成を示す。同図に示すように、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置は、容器の外壁表面を赤外線サーモグラフィー(又は放射温度計)(図3を参照)により測定された測温データをもとに熱流束データを算出する熱流束データ算出部101B、測温データと熱流束データが入力される入力部102Bと、入力部102Bに入力される測温データと熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、容器の壁内部における温度又は熱流束を演算する演算部103Bと、演算部103Bにより演算された容器壁の内部における温度又は熱流束をディスプレイに表示等するための出力部104Bとを備えている。
【0021】
ここで、容器の外壁表面における熱流束は、熱流束センサを使用して直接測定しても良いし(図1−Aの場合)、下式(1)〜(3)のいずれかにより計算することもできる(図1−Bの場合)。熱流束センサとは、熱伝導率λが判明している材料内部の伝熱方向において外壁表面近傍の壁内部に、通常2本の温度計を距離dの間隔で埋設し、測定された2本の温度計の温度差△Tから、λ・(△T/d)により熱流束を算出する計測機器である。
【0022】
【数2】
【0023】
なお、σはステファンボルツマン定数、εは容器外壁の放射率、Gは容器外壁温度計測用の放射温度計又は赤外線サーモグラフィーと容器外壁の測温点との角関係、TSは容器外壁表面温度測定値、T0は容器周囲の外気温度、hCは強制対流の熱伝達係数を示す。hNは自然対流の熱伝達係数を示し、下式(4)が提案されている。(非特許文献1参照)
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、Nu=hNL/λ、C1=(3/4){Pr/(2.4+4.9Pr0.5+5Pr)}、Ra=Gr・Prを表し、Lは伝熱面の高さ、λは空気の熱伝導率、Prはプラントル数、Grはグラスホフ数を示す。
【0026】
ここで、非定常熱伝導方程式は、下式(5)により表される。
【0027】
【数4】
【0028】
本実施の形態では、前記非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いることにより、より簡便な手法としての容器壁内部の温度又は熱流束の変化を推定するようにしている。内外挿関数とは、測定点での温度を結んで、その点以外の領域、例えば、解析領域全体又は一部を表現する関数である。内挿とは既知点に囲まれた内部の未知点を推定することをいい、外挿とは既知点の外側や周囲を含めて推定することをいう。
【0029】
以下、図2のフローチャートを参照して、図1−Aの演算部102A、又は、図1−Bの演算部103Bにおいて行われる演算処理について説明する。図1−Aの演算部102A、又は、図1−Bの演算部103Bでは、まず、所定の内外挿関数及びパラメータを用いて非定常熱伝導方程式の解を表現する(ステップS201)。
【0030】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下式(6)で表現される非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いることで、より物理的に意味のある内外挿が施せることを特許文献1で提案している。
【0031】
【数5】
【0032】
上式(6)のtは時間を表し、また、x、y、zは位置ベクトル要素を表し、一般の3次元座標系にも適用可能である。τx、τy、τz、Ax、Ay、Az、X、Y、Zは、適当な任意定数を表し、対象とする系によって、最適な値は変化する。
【0033】
別の関数として、例えば、下式(7)のように表現することも可能である。
【0034】
【数6】
【0035】
同様に、τxy、τz、Axy、Az、X、Y、Zは、適当な任意定数を表し、対象とする系によって、最適な値は変化する。上記式の座標系x,y、zの関係は、相互に交換可能であることは言うまでもない。
【0036】
また、別の関数として、例えば、下式(8)のように表現することも可能である。
【0037】
【数7】
【0038】
これも同様に、τxyz、X、Y、Zは、適当な任意定数を表し、対象とする系によって、最適な値は変化する。
【0039】
これらの関数F(x,y,z,t)は、自動的に非定常熱伝導方程式(5)式を満たす。したがって、物理的に意味のある内外挿を施すことができるので、どの式を使用しても構わない。
【0040】
この関数F(x,y,z,t)を用いて非定常熱伝導方程式の解を一般的に表現すると、下記の式(9)として表現される。
【0041】
【数8】
【0042】
上式(9)のxj、yj、zjは、任意の基準位置ベクトルの各要素、tiは任意の基準時間を表し、x、y、z及びtは、温度を推定しようとしている点の位置ベクトルの要素及び時間である。また、M、Nは、それぞれ基準位置ベクトルの数、及び、時間方向の基準時間の数である。これらの数は、それぞれ、温度測定点の数、即ち、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーによる温度測定点の数、及び、測定温度の時間方向のサンプリング数と一致させることが多いが、必ずしも一致させる必要はない。そして、αj,iはパラメータであるが、この値が決まれば、任意の位置ベクトル(x,y,z)、時間tでの温度T(x,y,z,t)を決めることができるのである。
【0043】
次に、上式(9)により表現される非定常熱伝導方程式の解中のパラメータαj,iの値を、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーにより測定された測温データと、当該測温データから算出された熱流束データ又は温度測定点で測定した熱流束データを用いて決める(ステップS202)。このパラメータαj,iの値は、下記の連立方程式(10)、(11)又は連立方程式(12)、(13)のいずれかを解くことで決めることができる。
【0044】
【数9】
【0045】
上式(10)、(12)、(13)のak、lは放射温度計又は赤外線サーモグラフィーにより測定された温度すなわち測温データT(xk,yk,zk,tl)を示しており、上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)、上付き文字のlはサンプリング時間tlを表す。上式(11)、(13)のqk.lは、放射温度計若しくは赤外線サーモグラフィーにより測定された温度計測点における熱流束データ、又は、温度計測点における測温データから算出された熱流束データを示し、熱流束センサを使用して直接計測しても良いし、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーにより測定された温度T(xk,yk,zk,tl)から、放射伝熱、自然対流条件及び強制対流条件を仮定することにより、上式(1)〜(3)のいずれかの式により計算で求めることができる。kxは、高温容器壁の厚み方向(x方向)の熱伝導率、△xは、容器外壁から内側の距離を示す。
【0046】
ここで、σはステファンボルツマン定数、εは容器外壁の放射率、Gは容器外壁温度計測用の放射温度計又は赤外線サーモグラフィーと容器外壁の測温点との角関係、Tsは容器外壁表面温度測定値、T0は容器周囲の外気温度、hNは自然対流の熱伝達係数、hCは強制対流の熱伝達係数を示す。hNは、上式(4)が提案されている。(非特許文献1参照)
【0047】
式(6)におけるτx、τy、τz、Ax、Ay、Az、X、Y、Zの最適な値を決定するために、解析対象と同一の物性値を有する材料を使用した物理実験又は数値実験を実施し、外壁表面の温度、外壁表面の熱流束及び内壁表面温度を求める。物理実験又は数値実験により求めた外壁表面の温度及び熱流束を基に、式(9)を使って内壁表面温度を計算し、物理実験又は数値実験により求めた内壁表面温度の推定誤差を評価する。τx、τy、τz、Ax、Ay、Az、X、Y、Zの値の組み合わせを変化させ、内壁表面温度の推定誤差が極小となるような値を選択する。なお、式(7)におけるτxy、τz、Axy、Az、X、Y、Z、式(8)におけるτxyz、X、Y、Zも同様である。
【0048】
以上述べた手法を用いることで、空間(2次元)及び時間方向に離散的な容器外壁表面の測温データがあれば、非定常熱伝導方程式に支配される容器壁領域全体(任意の時空間位置)での温度推定値が得られることになる。
【0049】
ここで、熱伝導における逆問題解析というのは、計算領域を支配する非定常熱伝導方程式を基にして、領域の一部で得られる温度データ又は熱流束データを既知として、領域全体での温度や熱流束を推定する問題を指す。
【0050】
上記手法においては、領域の一部で得られる温度データ又は熱流束データは、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーで計測した容器外壁表面の測温データ及び該測温データを基に算出した容器外壁表面の熱流束データに相当する。又は、領域の一部で得られる温度データ又は熱流束データは、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーで計測した容器外壁表面の測温データ及び熱流束センサを使って測定した容器外壁表面の熱流束データに相当する。
【0051】
上記手法から直接得られるのは、内壁表面及び容器壁の内部の任意位置での温度であるが、その温度の分布から温度勾配が推定でき、内壁表面においてもその近傍の温度分布から温度勾配が判るので、結果的には容器壁の内部及び表面の任意位置での熱流束変化も推定できることになる。
【0052】
本発明の大きな特徴の一つは、容器の内壁表面及び外壁表面だけでなく解析領域全体の温度の経時変化を簡便に推定できることである。通常の熱伝導逆問題では、計測点の温度(離散測定点の温度)だけではなく、その他の解析領域における、ある時間断面での温度(一般には初期温度)が既知であることを前提として、定式化していることが普通である。ところが、実際問題として、容器壁内の温度は、どの時間軸を取っても、不明であることが一般的である。従って、通常の逆問題解法を採用した場合、いろいろな工夫を施して、実際の温度分布を探索・推定しながら、安定的に解を探索する手法を、適宜付加していくことが求められる。ところが、本発明の手法は、原理的には、離散測定点での温度変化さえあれば、解析領域全体の温度の経時変化を簡便に推定できるのである。
【0053】
また、この手法では空間次元数の制約はないので、空間1次元、2次元、3次元の逆問題解析手法としてそのまま適用することができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態の装置は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等により構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。従って、コンピュータに対し、上記実施の形態の機能を実現するためのプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラム自体は本発明を構成する。
【0055】
また、上記プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0056】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより、上述の実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施の形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムは本発明の実施の形態に含まれることはいうまでもない。
【0057】
更に、供給されたプログラムがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることはいうまでもない。
【0058】
なお、上記実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、本発明をネットワーク環境で利用すべく、全部或いは一部のプログラムが他のコンピュータで実行されるようになっていてもかまわない。
【0059】
(実施例1)
本発明の実施例について説明する。実施例1はモデル実験した例である。支配方程式は式(5)であり、内外挿関数は式(6)で表される。式(6)のτx,Ax,Xは、解析対象と同一材料を使用した数値実験をあらかじめ実施し、材料の外壁温度と外壁熱流束をもとに計算した内壁表面温度の推定誤差が極小となるように決定する。
【0060】
図4は、均一厚み75mmの容器壁断面の模式図である。耐火物外壁表面の点A、B、C、D、Eにおいて温度計測をする。図5は耐火物外壁表面の正面図であり、点Aを中心に25mm離れた位置に点B、C、D、Eを配置した。容器壁は、熱伝導率kx=2.9W/(m・K)温度計測、比熱Cp=963J/(kg・K)、密度ρ=2500kg/m3の耐火物で出来ているとした。容器は、初期壁温度分布30℃一定状態からスタートし、図6に示すような稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを繰り返す。稼動(溶鋼有)時の容器内壁表面は1600℃の溶鋼により均一に加熱され、耐火物内壁表面温度は溶鋼温度に等しくなっているとする。非稼動(溶鋼無)時の容器内壁表面は30℃の周囲外壁への放射伝熱によって冷却されているとする。また、容器外壁表面は、稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)にかかわらず、30℃の周囲外壁への放射伝熱によって冷却されているとする。
【0061】
図7は、図6の稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを各々120分、90分と繰り返し、9番目の稼動(溶鋼有)開始の時刻をゼロとしたときの容器外壁表面温度の1000秒から2000秒までの時間推移を示す。容器壁が熱的に定常状態になっていないため、容器の壁厚は75mmで一定であるにもかかわらず、外壁表面温度は時間的に変化している。
【0062】
例えば、図4の点Aにおける外壁表面温度を、図7の経過時間1200秒及び1800秒のタイミングで、10秒のサンプリング間隔で50秒間、計測したとする。容器壁の厚みは均一で、内壁面表面と外壁表面の加熱及び冷却は均一であるため、点B、C、D、Eの温度も点Aと同一である。これらA、B、C、D、Eの各々を、逆問題解析に入力する測温データとする。
【0063】
また、図4の点Aにおける外壁熱流束を、計測した容器外壁表面温度Tsから、上式(1)で計算した結果を図7に示す。前述した温度と同様、点B、C、D、Eの外壁熱流束も点Aと同一である。図7に示す経過時間1200秒及び1800秒のタイミングで、10秒のサンプリング間隔で50秒間の点A、B、C、D、Eの熱流束の履歴を逆問題解析の入力情報とする。上式(1)において、T0は外気雰囲気温度を示し、30℃とした。σはステファンボルツマン定数を示す。また、放射率εは0.8、角関係Gは1.0とした。
【0064】
△x=5mmとして、下式(14)、(15)の連立方程式を解き、係数パラメータαj,iの値を決定した。また、τx=10000秒として、計算が発散しないようにした。ak、lは前記の逆問題解析の入力測温データである外壁表面温度T(xk,yk,zk,tl)を示しており、上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)である外壁表面の位置座標を表し、上付き文字のlはサンプリング時間tlを表す。qk.lは、前記の逆解析の入力熱流束情報である外壁表面Q(xk,yk,zk,tl) を示しており、上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)である外壁表面の位置座標を表し、上付き文字のlはサンプリング時間tlを表す。
【0065】
【数10】
【0066】
決定した係数パラメータαj,iを使って、下式(16)より耐火物内部の任意の位置座標(x,y,z)及び時間tにおける耐火物温度T(x,y,z,t)を計算する。
【0067】
【数11】
【0068】
図9に、逆問題解析により計算した容器壁内部の温度をプロットした。●は、経過時間1200秒のタイミングの計測データによる逆問題解析推定値、○は経過時間1800秒のタイミングの計測データによる逆問題解析推定値を示す。いずれの場合も、実線で示した内部温度の設定値を高い精度で再現できている。
【0069】
図9の逆問題解析で計算した容器壁の内部の温度から、高温容器内壁表面が溶鋼温度1600℃になる位置を求めることにより、容器壁の厚みが、経過時間1200秒の計測タイミング、1800秒の計測タイミングのいずれにおいても、75mmと推定できる。このように、容器外壁表面温度が変化しても、逆問題解析を使用することにより、容器壁の損耗状態を精度良く判定することが可能となる。
【0070】
(実施例2)
図10は、各々、均一厚み25mm、50mm、75mmの容器壁断面の模式図である。容器壁は、熱伝導率kx=2.9W/m・K温度計測、比熱Cp=963J/kg・K、密度ρ=2500kg/m3の耐火物で出来ているとした。容器は、厚み方向の初期壁温度30℃一定状態からスタートし、図11に示すような稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを繰り返す。稼動(溶鋼有)時の容器内壁表面は1600℃の溶鋼により均一に加熱され、耐火物内壁表面温度は溶鋼温度に等しくなっているとする。非稼動(溶鋼無)時の容器内壁表面は30℃の周囲外壁壁への放射伝熱によって冷却されているとする。また、容器外壁表面は、稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)にかかわらず、30℃の周囲外壁壁への放射伝熱によって冷却されているとする。
【0071】
図12は、図11の稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを各々120分、90分と繰り返し、9番目の稼動(溶鋼有)開始の時刻をゼロとしたときの容器外壁表面温度の0秒から2000秒までの時間推移を示す。
【0072】
厚みが薄い場合ほど0秒での温度が低いのは、非稼動の90分で耐火物が輻射冷却され、厚みが薄く熱容量の小さい場合ほど温度が低下しやすいためである。
【0073】
製鉄所の製鋼工場では、溶鋼鍋等の溶鉄を入れる容器の外壁温度が800℃以上の赤熱状態になれば、容器の壁から溶鉄が外部に流出し大事故になるのを防止するため操業を停止し、容器を非常ピットに待避する等の処置がとられるが、図12から耐火物外壁表面が赤熱状態となる800℃以上になったときは、耐火物厚みは既に25mm以下になっており、本パーマ煉瓦と称する鉄皮の内側に配置される最外層の煉瓦が侵食されており、本パーマ煉瓦の目地を通して一気に溶鋼が外部に流出する危険性が極めて大きくなる。
【0074】
図13は、実施例1に記載したのと同様の方法で、図12の各耐火物厚みの外壁表面温度をもとに、経過時間毎に逆解析を使って、耐火物厚みを計算した結果を示す。逆問題解析による耐火物厚みの計算値を使えば、残存厚み50mm〜75mmに相当する本パーマ煉瓦の内側に配置される準パーマ煉瓦侵食の段階で、溶鉄の流出に対する危険度を定量的に判断することができるようになる。
【0075】
容器壁の厚みが不均一の場合、耐火物の内壁表面の加熱がy、z方向に不均一な場合、及び容器壁の厚みと耐火物の内壁表面の加熱がともに不均一な場合は、図4と図5の点A、B、C、D,Eの温度が異なった値を示すが、同様の操作で、容器壁内部の温度及び容器壁厚みを求めることが可能である。
【0076】
上述のように、本発明は、空間1次元から空間3次元まで全てにおいて適用可能であり、容器壁の温度又は熱流束を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1−A】本実施の形態の容器の操業管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図1−B】本実施の形態の容器の操業管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】容器壁の損耗状態管理装置における演算処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】容器の炉壁の1次元断面と赤外線サーモグラフィーによる炉壁外表面温度計測の概念を示す図である。
【図4】実施例1における容器の耐火物の配置関係を示す断面図である。
【図5】実施例1における容器の外壁表面における温度計測点の配置関係を示す正面図である
【図6】実施例1における稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを示す図である。
【図7】実施例1における容器の外壁表面温度の時間履歴と逆解析に使用したデータを説明するための図である。
【図8】実施例1における容器の外壁熱流束の時間履歴と逆解析に使用したデータを説明するための図である。
【図9】実施例1における逆解析結果を説明するための図である。
【図10】実施例2における高温容器の耐火物の配置関係を示す図である。
【図11】実施例2における稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを示す図である。
【図12】実施例2における容器の外壁表面温度の時間履歴を説明するための図である。
【図13】実施例2における逆解析結果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0078】
101A 入力部
102A 演算部
103A 出力部
101B 熱流束データ算出部
102B 入力部
103B 演算部
104B 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高炉、転炉、脱ガス炉、燃焼による鋼材加熱炉、石炭ガス化反応炉などの高温のガス反応又は液体反応を伴う反応容器及び混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋などの溶鉄を運搬する容器等、容器の内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器における、容器壁の温度又は熱流束の推定方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに容器壁厚みの推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉、転炉、脱ガス炉、燃焼による鋼材加熱炉、石炭ガス化反応炉等の高温のガス反応又は液体反応を伴う反応容器及び混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋等の溶鉄を運搬する容器の操業を管理する場合、これら高温物質を扱う容器の壁の状況(例えば、損耗状態)を観測し、その状況を管理する必要がある。
【0003】
従来から、容器の壁の損耗状況は、高温物質が容器内に存在しないときに、人間が壁の内表面の状態を目視で観察することで管理されてきた。
【0004】
しかしながら、高温物質が容器内に存在しないときでも耐火物表面は500℃以上の高温に熱せられており、上記のような推定では、目視で損耗状態を定量的な数値として捉えることは極めて困難であり、定性的な管理とならざるを得ない。また、高温物質が容器内に存在しないときにおける管理を余儀無くされるため、稼動中の内部高温物質の流出という大事故に発展するような事態を管理することができなかった。
【0005】
これに対して、稼動中の容器の外壁表面温度を、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーを使用して計測し、外壁表面温度計測値から容器壁の損耗状態を管理する方法が提案されている。外壁表面温度管理値にある上限を設定し、外壁表面温度計測値がこの上限値より高温になったとき、容器壁の損耗状態が内部高温物質の流出を引き起こすに至る可能性があると判断し、容器を非稼動状態にして、容器壁を修理又は交換する。
【0006】
しかしながら、容器外壁の温度は、容器壁の損耗状態だけで決定されるのではなく、容器の稼動(高温物質が容器内に存在)・非稼動(高温物質が容器内に存在しない)の時間サイクルによる熱履歴の影響を大きく受ける。例えば、容器壁が全く同一の損耗状態であっても、稼動・非稼動の時間サイクルが異なれば、容器の外壁温度も異なった値を示す。そのため、上記のような推定では、容器壁の損耗状態に一意に対応した正確な判定を行うことが困難である。
【0007】
一方、容器壁内の熱伝導現象を非定常熱伝導逆問題と考えて、被評価材(容器壁)内部の複数の温度測定点において測定された温度データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記被評価材の内部又は表面における温度を演算する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、例えば鉄鋼プロセスにおいて、溶鉄を取り扱う混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋等の容器は、複数の工場間又は工程間を移動するため、容器壁内部に熱電対を埋設して温度データを採取することは困難なケースが多く、たとえ、熱電対を埋設できたとしても、埋設した熱電対の保守・整備のため、コスト的な負荷が大きい。また、容器壁に局所的に発生する損耗個所を特定するために多数の熱電対を容器壁内部に埋設する必要があり、コスト的な負荷をさらに大きくする。
【0009】
【特許文献1】特開2005−134383号公報
【非特許文献1】日本機械工学会編 伝熱工学資料 改定第4版 p.68〜p.69
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
容器壁の損耗状態は、容器壁の厚みによって判断することができる。例えば、損耗が均一な形状で1次元形状に近似できる場合、容器壁が熱的に定常状態にあれば、容器壁内部の温度分布は直線状になり、容器壁の厚みLは、容器壁外壁で測定した熱流束Q、容器壁の厚み方向の熱伝導率kx、高温容器内壁温度Tin及び高温容器外壁温度Toutを使って下式(17)より推定できる。
【0011】
【数1】
【0012】
しかし、実際の容器壁の温度は、稼動・非稼動の時間サイクルによって異なった値を示すため、容器壁外壁で測定した熱流束Q値も非定常的に変化する。これに加え、容器壁内部の温度分布は曲線形状で非定常的に変化するため、上記の式で容器壁の厚みを推定すると、大きな誤差を引き起こすことになる。壁内部の測温データがなくても、非定常的に変化する壁内部の温度又は熱流束を求める必要がある。
【0013】
また、より厳密に評価するには、熱伝導現象は、3次元方向に起こるはずであり、容器壁内部の3次元での非定常温度分布を推定することが必要となる。
【0014】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、容器の外壁表面における温度測定点での測温データと該測温データをもとに算出した熱流束データ又は前記温度測定点において測定した熱流束データをもとに容器壁の内部の温度を計算し、容器壁厚みを推定し、容器壁の損耗状態を推定することを目的とする。更には、1次元だけでなく、2次元、3次元といった空間次元数にも容易に適用可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法は、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び該測温データを基に算出した外壁表面の熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記容器の壁内部、又は壁内部及び内壁表面における温度又は熱流束を推定する点に特徴を有する。
本発明による容器壁厚みの推定方法は、本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法で推定した容器の壁内部の温度から、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定する点に特徴を有する。
本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定装置は、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための装置であって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備えた点に特徴を有する。
本発明による容器壁厚みの推定装置は、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための装置であって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備え、更に、前記演算部では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定する点に特徴を有する。
本発明によるコンピュータプログラムは、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させる点に特徴を有する。
本発明による他のコンピュータプログラムは、内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、入力された該測温データ及び該熱流束データから本発明による容器壁の温度又は熱流束の推定方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させ、更に前記演算手段では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定する点に特徴を有する。
本発明によるコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明によるコンピュータプログラムを記録した点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器の壁内部の温度を測定しなくとも、外壁表面の温度測定点において測定された測温データと該測温データを基に算出した熱流束データ又は前記温度測定点において測定された熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、上記容器の壁内部における温度又は熱流束を推定することができる。従って、推定した壁内部における温度が壁内壁表面の温度と一致する位置を求めることにより、容器壁の損耗状態の程度を表す容器壁の厚みを推定することができる。
【0017】
また、内外挿関数を用いた簡便な手法により逆問題解析を行うことができ、1次元だけでなく、2次元、3次元といった空間次元数にも容易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
以下、図面を参照して、本発明における容器壁の温度又は熱流束の推定方法、装置、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに容器壁厚みの推定方法の実施の形態を説明する。
【0019】
図1−Aには、本発明の実施の形態の1例としての、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置の概略構成を示す。同図に示すように、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置は、容器の外壁表面を赤外線サーモグラフィー(又は放射温度計)(図3を参照)により測定された測温データ、と前記温度測定点において測定された熱流束データが入力される入力部101Aと、入力部101Aに入力される測温データと熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、容器の壁内部における温度又は熱流束を演算する演算部102Aと、演算部102Aにより演算された容器壁の内部における温度又は熱流束をディスプレイに表示等するための出力部103Aとを備えている。
【0020】
図1−Bには、本発明の実施の形態の別の例としての、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置の概略構成を示す。同図に示すように、容器壁の温度又は熱流束、並びに容器壁厚みを推定する装置は、容器の外壁表面を赤外線サーモグラフィー(又は放射温度計)(図3を参照)により測定された測温データをもとに熱流束データを算出する熱流束データ算出部101B、測温データと熱流束データが入力される入力部102Bと、入力部102Bに入力される測温データと熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、容器の壁内部における温度又は熱流束を演算する演算部103Bと、演算部103Bにより演算された容器壁の内部における温度又は熱流束をディスプレイに表示等するための出力部104Bとを備えている。
【0021】
ここで、容器の外壁表面における熱流束は、熱流束センサを使用して直接測定しても良いし(図1−Aの場合)、下式(1)〜(3)のいずれかにより計算することもできる(図1−Bの場合)。熱流束センサとは、熱伝導率λが判明している材料内部の伝熱方向において外壁表面近傍の壁内部に、通常2本の温度計を距離dの間隔で埋設し、測定された2本の温度計の温度差△Tから、λ・(△T/d)により熱流束を算出する計測機器である。
【0022】
【数2】
【0023】
なお、σはステファンボルツマン定数、εは容器外壁の放射率、Gは容器外壁温度計測用の放射温度計又は赤外線サーモグラフィーと容器外壁の測温点との角関係、TSは容器外壁表面温度測定値、T0は容器周囲の外気温度、hCは強制対流の熱伝達係数を示す。hNは自然対流の熱伝達係数を示し、下式(4)が提案されている。(非特許文献1参照)
【0024】
【数3】
【0025】
ここで、Nu=hNL/λ、C1=(3/4){Pr/(2.4+4.9Pr0.5+5Pr)}、Ra=Gr・Prを表し、Lは伝熱面の高さ、λは空気の熱伝導率、Prはプラントル数、Grはグラスホフ数を示す。
【0026】
ここで、非定常熱伝導方程式は、下式(5)により表される。
【0027】
【数4】
【0028】
本実施の形態では、前記非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いることにより、より簡便な手法としての容器壁内部の温度又は熱流束の変化を推定するようにしている。内外挿関数とは、測定点での温度を結んで、その点以外の領域、例えば、解析領域全体又は一部を表現する関数である。内挿とは既知点に囲まれた内部の未知点を推定することをいい、外挿とは既知点の外側や周囲を含めて推定することをいう。
【0029】
以下、図2のフローチャートを参照して、図1−Aの演算部102A、又は、図1−Bの演算部103Bにおいて行われる演算処理について説明する。図1−Aの演算部102A、又は、図1−Bの演算部103Bでは、まず、所定の内外挿関数及びパラメータを用いて非定常熱伝導方程式の解を表現する(ステップS201)。
【0030】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下式(6)で表現される非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いることで、より物理的に意味のある内外挿が施せることを特許文献1で提案している。
【0031】
【数5】
【0032】
上式(6)のtは時間を表し、また、x、y、zは位置ベクトル要素を表し、一般の3次元座標系にも適用可能である。τx、τy、τz、Ax、Ay、Az、X、Y、Zは、適当な任意定数を表し、対象とする系によって、最適な値は変化する。
【0033】
別の関数として、例えば、下式(7)のように表現することも可能である。
【0034】
【数6】
【0035】
同様に、τxy、τz、Axy、Az、X、Y、Zは、適当な任意定数を表し、対象とする系によって、最適な値は変化する。上記式の座標系x,y、zの関係は、相互に交換可能であることは言うまでもない。
【0036】
また、別の関数として、例えば、下式(8)のように表現することも可能である。
【0037】
【数7】
【0038】
これも同様に、τxyz、X、Y、Zは、適当な任意定数を表し、対象とする系によって、最適な値は変化する。
【0039】
これらの関数F(x,y,z,t)は、自動的に非定常熱伝導方程式(5)式を満たす。したがって、物理的に意味のある内外挿を施すことができるので、どの式を使用しても構わない。
【0040】
この関数F(x,y,z,t)を用いて非定常熱伝導方程式の解を一般的に表現すると、下記の式(9)として表現される。
【0041】
【数8】
【0042】
上式(9)のxj、yj、zjは、任意の基準位置ベクトルの各要素、tiは任意の基準時間を表し、x、y、z及びtは、温度を推定しようとしている点の位置ベクトルの要素及び時間である。また、M、Nは、それぞれ基準位置ベクトルの数、及び、時間方向の基準時間の数である。これらの数は、それぞれ、温度測定点の数、即ち、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーによる温度測定点の数、及び、測定温度の時間方向のサンプリング数と一致させることが多いが、必ずしも一致させる必要はない。そして、αj,iはパラメータであるが、この値が決まれば、任意の位置ベクトル(x,y,z)、時間tでの温度T(x,y,z,t)を決めることができるのである。
【0043】
次に、上式(9)により表現される非定常熱伝導方程式の解中のパラメータαj,iの値を、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーにより測定された測温データと、当該測温データから算出された熱流束データ又は温度測定点で測定した熱流束データを用いて決める(ステップS202)。このパラメータαj,iの値は、下記の連立方程式(10)、(11)又は連立方程式(12)、(13)のいずれかを解くことで決めることができる。
【0044】
【数9】
【0045】
上式(10)、(12)、(13)のak、lは放射温度計又は赤外線サーモグラフィーにより測定された温度すなわち測温データT(xk,yk,zk,tl)を示しており、上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)、上付き文字のlはサンプリング時間tlを表す。上式(11)、(13)のqk.lは、放射温度計若しくは赤外線サーモグラフィーにより測定された温度計測点における熱流束データ、又は、温度計測点における測温データから算出された熱流束データを示し、熱流束センサを使用して直接計測しても良いし、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーにより測定された温度T(xk,yk,zk,tl)から、放射伝熱、自然対流条件及び強制対流条件を仮定することにより、上式(1)〜(3)のいずれかの式により計算で求めることができる。kxは、高温容器壁の厚み方向(x方向)の熱伝導率、△xは、容器外壁から内側の距離を示す。
【0046】
ここで、σはステファンボルツマン定数、εは容器外壁の放射率、Gは容器外壁温度計測用の放射温度計又は赤外線サーモグラフィーと容器外壁の測温点との角関係、Tsは容器外壁表面温度測定値、T0は容器周囲の外気温度、hNは自然対流の熱伝達係数、hCは強制対流の熱伝達係数を示す。hNは、上式(4)が提案されている。(非特許文献1参照)
【0047】
式(6)におけるτx、τy、τz、Ax、Ay、Az、X、Y、Zの最適な値を決定するために、解析対象と同一の物性値を有する材料を使用した物理実験又は数値実験を実施し、外壁表面の温度、外壁表面の熱流束及び内壁表面温度を求める。物理実験又は数値実験により求めた外壁表面の温度及び熱流束を基に、式(9)を使って内壁表面温度を計算し、物理実験又は数値実験により求めた内壁表面温度の推定誤差を評価する。τx、τy、τz、Ax、Ay、Az、X、Y、Zの値の組み合わせを変化させ、内壁表面温度の推定誤差が極小となるような値を選択する。なお、式(7)におけるτxy、τz、Axy、Az、X、Y、Z、式(8)におけるτxyz、X、Y、Zも同様である。
【0048】
以上述べた手法を用いることで、空間(2次元)及び時間方向に離散的な容器外壁表面の測温データがあれば、非定常熱伝導方程式に支配される容器壁領域全体(任意の時空間位置)での温度推定値が得られることになる。
【0049】
ここで、熱伝導における逆問題解析というのは、計算領域を支配する非定常熱伝導方程式を基にして、領域の一部で得られる温度データ又は熱流束データを既知として、領域全体での温度や熱流束を推定する問題を指す。
【0050】
上記手法においては、領域の一部で得られる温度データ又は熱流束データは、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーで計測した容器外壁表面の測温データ及び該測温データを基に算出した容器外壁表面の熱流束データに相当する。又は、領域の一部で得られる温度データ又は熱流束データは、放射温度計又は赤外線サーモグラフィーで計測した容器外壁表面の測温データ及び熱流束センサを使って測定した容器外壁表面の熱流束データに相当する。
【0051】
上記手法から直接得られるのは、内壁表面及び容器壁の内部の任意位置での温度であるが、その温度の分布から温度勾配が推定でき、内壁表面においてもその近傍の温度分布から温度勾配が判るので、結果的には容器壁の内部及び表面の任意位置での熱流束変化も推定できることになる。
【0052】
本発明の大きな特徴の一つは、容器の内壁表面及び外壁表面だけでなく解析領域全体の温度の経時変化を簡便に推定できることである。通常の熱伝導逆問題では、計測点の温度(離散測定点の温度)だけではなく、その他の解析領域における、ある時間断面での温度(一般には初期温度)が既知であることを前提として、定式化していることが普通である。ところが、実際問題として、容器壁内の温度は、どの時間軸を取っても、不明であることが一般的である。従って、通常の逆問題解法を採用した場合、いろいろな工夫を施して、実際の温度分布を探索・推定しながら、安定的に解を探索する手法を、適宜付加していくことが求められる。ところが、本発明の手法は、原理的には、離散測定点での温度変化さえあれば、解析領域全体の温度の経時変化を簡便に推定できるのである。
【0053】
また、この手法では空間次元数の制約はないので、空間1次元、2次元、3次元の逆問題解析手法としてそのまま適用することができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態の装置は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等により構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現される。従って、コンピュータに対し、上記実施の形態の機能を実現するためのプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラム自体は本発明を構成する。
【0055】
また、上記プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0056】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより、上述の実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施の形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムは本発明の実施の形態に含まれることはいうまでもない。
【0057】
更に、供給されたプログラムがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることはいうまでもない。
【0058】
なお、上記実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、本発明をネットワーク環境で利用すべく、全部或いは一部のプログラムが他のコンピュータで実行されるようになっていてもかまわない。
【0059】
(実施例1)
本発明の実施例について説明する。実施例1はモデル実験した例である。支配方程式は式(5)であり、内外挿関数は式(6)で表される。式(6)のτx,Ax,Xは、解析対象と同一材料を使用した数値実験をあらかじめ実施し、材料の外壁温度と外壁熱流束をもとに計算した内壁表面温度の推定誤差が極小となるように決定する。
【0060】
図4は、均一厚み75mmの容器壁断面の模式図である。耐火物外壁表面の点A、B、C、D、Eにおいて温度計測をする。図5は耐火物外壁表面の正面図であり、点Aを中心に25mm離れた位置に点B、C、D、Eを配置した。容器壁は、熱伝導率kx=2.9W/(m・K)温度計測、比熱Cp=963J/(kg・K)、密度ρ=2500kg/m3の耐火物で出来ているとした。容器は、初期壁温度分布30℃一定状態からスタートし、図6に示すような稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを繰り返す。稼動(溶鋼有)時の容器内壁表面は1600℃の溶鋼により均一に加熱され、耐火物内壁表面温度は溶鋼温度に等しくなっているとする。非稼動(溶鋼無)時の容器内壁表面は30℃の周囲外壁への放射伝熱によって冷却されているとする。また、容器外壁表面は、稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)にかかわらず、30℃の周囲外壁への放射伝熱によって冷却されているとする。
【0061】
図7は、図6の稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを各々120分、90分と繰り返し、9番目の稼動(溶鋼有)開始の時刻をゼロとしたときの容器外壁表面温度の1000秒から2000秒までの時間推移を示す。容器壁が熱的に定常状態になっていないため、容器の壁厚は75mmで一定であるにもかかわらず、外壁表面温度は時間的に変化している。
【0062】
例えば、図4の点Aにおける外壁表面温度を、図7の経過時間1200秒及び1800秒のタイミングで、10秒のサンプリング間隔で50秒間、計測したとする。容器壁の厚みは均一で、内壁面表面と外壁表面の加熱及び冷却は均一であるため、点B、C、D、Eの温度も点Aと同一である。これらA、B、C、D、Eの各々を、逆問題解析に入力する測温データとする。
【0063】
また、図4の点Aにおける外壁熱流束を、計測した容器外壁表面温度Tsから、上式(1)で計算した結果を図7に示す。前述した温度と同様、点B、C、D、Eの外壁熱流束も点Aと同一である。図7に示す経過時間1200秒及び1800秒のタイミングで、10秒のサンプリング間隔で50秒間の点A、B、C、D、Eの熱流束の履歴を逆問題解析の入力情報とする。上式(1)において、T0は外気雰囲気温度を示し、30℃とした。σはステファンボルツマン定数を示す。また、放射率εは0.8、角関係Gは1.0とした。
【0064】
△x=5mmとして、下式(14)、(15)の連立方程式を解き、係数パラメータαj,iの値を決定した。また、τx=10000秒として、計算が発散しないようにした。ak、lは前記の逆問題解析の入力測温データである外壁表面温度T(xk,yk,zk,tl)を示しており、上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)である外壁表面の位置座標を表し、上付き文字のlはサンプリング時間tlを表す。qk.lは、前記の逆解析の入力熱流束情報である外壁表面Q(xk,yk,zk,tl) を示しており、上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)である外壁表面の位置座標を表し、上付き文字のlはサンプリング時間tlを表す。
【0065】
【数10】
【0066】
決定した係数パラメータαj,iを使って、下式(16)より耐火物内部の任意の位置座標(x,y,z)及び時間tにおける耐火物温度T(x,y,z,t)を計算する。
【0067】
【数11】
【0068】
図9に、逆問題解析により計算した容器壁内部の温度をプロットした。●は、経過時間1200秒のタイミングの計測データによる逆問題解析推定値、○は経過時間1800秒のタイミングの計測データによる逆問題解析推定値を示す。いずれの場合も、実線で示した内部温度の設定値を高い精度で再現できている。
【0069】
図9の逆問題解析で計算した容器壁の内部の温度から、高温容器内壁表面が溶鋼温度1600℃になる位置を求めることにより、容器壁の厚みが、経過時間1200秒の計測タイミング、1800秒の計測タイミングのいずれにおいても、75mmと推定できる。このように、容器外壁表面温度が変化しても、逆問題解析を使用することにより、容器壁の損耗状態を精度良く判定することが可能となる。
【0070】
(実施例2)
図10は、各々、均一厚み25mm、50mm、75mmの容器壁断面の模式図である。容器壁は、熱伝導率kx=2.9W/m・K温度計測、比熱Cp=963J/kg・K、密度ρ=2500kg/m3の耐火物で出来ているとした。容器は、厚み方向の初期壁温度30℃一定状態からスタートし、図11に示すような稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを繰り返す。稼動(溶鋼有)時の容器内壁表面は1600℃の溶鋼により均一に加熱され、耐火物内壁表面温度は溶鋼温度に等しくなっているとする。非稼動(溶鋼無)時の容器内壁表面は30℃の周囲外壁壁への放射伝熱によって冷却されているとする。また、容器外壁表面は、稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)にかかわらず、30℃の周囲外壁壁への放射伝熱によって冷却されているとする。
【0071】
図12は、図11の稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを各々120分、90分と繰り返し、9番目の稼動(溶鋼有)開始の時刻をゼロとしたときの容器外壁表面温度の0秒から2000秒までの時間推移を示す。
【0072】
厚みが薄い場合ほど0秒での温度が低いのは、非稼動の90分で耐火物が輻射冷却され、厚みが薄く熱容量の小さい場合ほど温度が低下しやすいためである。
【0073】
製鉄所の製鋼工場では、溶鋼鍋等の溶鉄を入れる容器の外壁温度が800℃以上の赤熱状態になれば、容器の壁から溶鉄が外部に流出し大事故になるのを防止するため操業を停止し、容器を非常ピットに待避する等の処置がとられるが、図12から耐火物外壁表面が赤熱状態となる800℃以上になったときは、耐火物厚みは既に25mm以下になっており、本パーマ煉瓦と称する鉄皮の内側に配置される最外層の煉瓦が侵食されており、本パーマ煉瓦の目地を通して一気に溶鋼が外部に流出する危険性が極めて大きくなる。
【0074】
図13は、実施例1に記載したのと同様の方法で、図12の各耐火物厚みの外壁表面温度をもとに、経過時間毎に逆解析を使って、耐火物厚みを計算した結果を示す。逆問題解析による耐火物厚みの計算値を使えば、残存厚み50mm〜75mmに相当する本パーマ煉瓦の内側に配置される準パーマ煉瓦侵食の段階で、溶鉄の流出に対する危険度を定量的に判断することができるようになる。
【0075】
容器壁の厚みが不均一の場合、耐火物の内壁表面の加熱がy、z方向に不均一な場合、及び容器壁の厚みと耐火物の内壁表面の加熱がともに不均一な場合は、図4と図5の点A、B、C、D,Eの温度が異なった値を示すが、同様の操作で、容器壁内部の温度及び容器壁厚みを求めることが可能である。
【0076】
上述のように、本発明は、空間1次元から空間3次元まで全てにおいて適用可能であり、容器壁の温度又は熱流束を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1−A】本実施の形態の容器の操業管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図1−B】本実施の形態の容器の操業管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】容器壁の損耗状態管理装置における演算処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】容器の炉壁の1次元断面と赤外線サーモグラフィーによる炉壁外表面温度計測の概念を示す図である。
【図4】実施例1における容器の耐火物の配置関係を示す断面図である。
【図5】実施例1における容器の外壁表面における温度計測点の配置関係を示す正面図である
【図6】実施例1における稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを示す図である。
【図7】実施例1における容器の外壁表面温度の時間履歴と逆解析に使用したデータを説明するための図である。
【図8】実施例1における容器の外壁熱流束の時間履歴と逆解析に使用したデータを説明するための図である。
【図9】実施例1における逆解析結果を説明するための図である。
【図10】実施例2における高温容器の耐火物の配置関係を示す図である。
【図11】実施例2における稼動(溶鋼有)、非稼動(溶鋼無)のサイクルを示す図である。
【図12】実施例2における容器の外壁表面温度の時間履歴を説明するための図である。
【図13】実施例2における逆解析結果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0078】
101A 入力部
102A 演算部
103A 出力部
101B 熱流束データ算出部
102B 入力部
103B 演算部
104B 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び該測温データを基に算出した外壁表面の熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記容器の壁内部、又は壁内部及び内壁表面における温度又は熱流束を推定することを特徴とする容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項2】
前記算出した外壁表面の熱流束データに替えて、前記外壁表面の温度測定点において測定した熱流束データを用いることを特徴とする請求項1に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項3】
前記温度測定点は前記容器の外壁表面に2次元的に複数存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項4】
前記非定常熱伝導方程式は、密度ρ、比熱Cp、x方向の熱伝導度kx、y方向の熱伝導度ky、z方向の熱伝導度kzとして、
【数1】
で表わされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項5】
前記内外挿関数は、位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、X、Y、Z、τx、τy、τz、Ax、Ay、Azを任意の定数として、
【数2】
の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項6】
前記内外挿関数は、位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、X、Y、Z、τxy、τz、Axy、Azを任意の定数として、
【数3】
の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項7】
前記内外挿関数は、位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、X、Y、Z、τxyzを任意の定数として、
【数4】
の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項8】
パラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,zj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数M、基準時間の数Nとして、前記非定常熱伝導方程式の解を、
【数5】
により表現することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項9】
上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)、lを温度サンプリング時間とし、温度測定点において測定された測温データak,l、温度測定点における熱流束データqk,l、温度測定点の接平面に対し法線方向となる装置壁の厚み方向の座標軸x、x方向の熱伝導度kxとして、上記パラメータαj,iを、下記の2つの式
【数6】
を用いて決めることを特徴とする請求項8に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項10】
kを温度測定位置、lを温度サンプリング時間とし、温度測定点において測定された測温データak,l、温度測定点における熱流束情報qk,l、装置壁の厚み方向の座標軸x、x方向の熱伝導度kx、容器外壁から内部側の距離△xとして、上記パラメータαj,iを、
【数7】
を用いて決めることを特徴とする請求項8に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で推定した容器の壁内部の温度から、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することを特徴とする容器壁厚みの推定方法。
【請求項12】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための装置であって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、
前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備えたことを特徴とする容器壁の温度又は熱流束の推定装置。
【請求項13】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための装置であって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、
前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備え、
更に、前記演算部では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することを特徴とする容器壁厚みの推定装置。
【請求項14】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、
入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、
演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項15】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、
入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、
演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させ、
更に前記演算手段では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び該測温データを基に算出した外壁表面の熱流束データから、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行うことにより、前記容器の壁内部、又は壁内部及び内壁表面における温度又は熱流束を推定することを特徴とする容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項2】
前記算出した外壁表面の熱流束データに替えて、前記外壁表面の温度測定点において測定した熱流束データを用いることを特徴とする請求項1に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項3】
前記温度測定点は前記容器の外壁表面に2次元的に複数存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項4】
前記非定常熱伝導方程式は、密度ρ、比熱Cp、x方向の熱伝導度kx、y方向の熱伝導度ky、z方向の熱伝導度kzとして、
【数1】
で表わされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項5】
前記内外挿関数は、位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、X、Y、Z、τx、τy、τz、Ax、Ay、Azを任意の定数として、
【数2】
の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項6】
前記内外挿関数は、位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、X、Y、Z、τxy、τz、Axy、Azを任意の定数として、
【数3】
の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項7】
前記内外挿関数は、位置ベクトル(x,y,z)、時間tとし、X、Y、Z、τxyzを任意の定数として、
【数4】
の関係を有することを特徴とする請求項4に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項8】
パラメータαj,i、基準位置ベクトル(xj,yj,zj)、基準時間ti、基準位置ベクトルの数M、基準時間の数Nとして、前記非定常熱伝導方程式の解を、
【数5】
により表現することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項9】
上付き文字のkは測定位置(xk,yk,zk)、lを温度サンプリング時間とし、温度測定点において測定された測温データak,l、温度測定点における熱流束データqk,l、温度測定点の接平面に対し法線方向となる装置壁の厚み方向の座標軸x、x方向の熱伝導度kxとして、上記パラメータαj,iを、下記の2つの式
【数6】
を用いて決めることを特徴とする請求項8に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項10】
kを温度測定位置、lを温度サンプリング時間とし、温度測定点において測定された測温データak,l、温度測定点における熱流束情報qk,l、装置壁の厚み方向の座標軸x、x方向の熱伝導度kx、容器外壁から内部側の距離△xとして、上記パラメータαj,iを、
【数7】
を用いて決めることを特徴とする請求項8に記載の容器壁の温度又は熱流束の推定方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法で推定した容器の壁内部の温度から、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することを特徴とする容器壁厚みの推定方法。
【請求項12】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための装置であって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、
前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備えたことを特徴とする容器壁の温度又は熱流束の推定装置。
【請求項13】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための装置であって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力部と、
前記入力部に入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算部と、
前記演算部により演算された温度又は熱流束を出力する出力部とを備え、
更に、前記演算部では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することを特徴とする容器壁厚みの推定装置。
【請求項14】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の温度又は熱流束を推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、
入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、
演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項15】
内壁表面と外壁表面に温度差を有する容器壁の厚みを推定するための処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
容器の外壁表面の温度測定点における測温データ、及び、該測温データを基に算出した熱流束データ又は該温度測定点において測定した熱流束データを入力する入力手段、
入力された該測温データ及び該熱流束データから請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により、非定常熱伝導方程式を満たす内外挿関数を用いた逆問題解析を行い、前記容器の壁内部及び壁内表面における温度又は熱流束を演算する演算手段、
演算された温度又は熱流束を出力する出力手段としてコンピュータを機能させ、
更に前記演算手段では、容器壁の厚み方向の温度分布を求め、容器内の温度又は予測される内壁表面温度と一致する、当該温度分布中の温度を有する厚み方向位置から、容器壁の厚みを推定することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1−A】
【図1−B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1−B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−71686(P2007−71686A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258822(P2005−258822)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16、17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 固定エネルギー削減のための非定常伝熱逆問題センシング技術の研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16、17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 固定エネルギー削減のための非定常伝熱逆問題センシング技術の研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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