説明

容器漬貝干物食品

【課題】貝干物を手軽に焙ることができるようにすること。
【解決手段】姫貝等の貝干物12の少なくとも一部分、特に、内臓周辺部分13に、燃焼可能な酒類を染みこませた状態とする。染みこませた酒類18に着火して燃焼させることで、貝干物12を焙る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貝干物を利用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
バカ貝(青柳等とも呼ばれる)を乾燥させた姫貝等の貝干物は、酒の肴等として愛好されている。このような貝干物は、焙られると、香ばしくなって美味しくなる。
【0003】
なお、貝食品に関する従来技術として特許文献1及び2に開示のものがある。特許文献1及び2には、貝をアルコールに浸漬する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−94054号公報
【特許文献2】特開平2−186974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記貝干物は、ガスコンロ、炭火コンロ等、直火調理が可能な直火調理設備によって焙る必要があり、手軽に焙って食することは困難となっていた。特に、近年では、オール電化住宅等が普及し、直火調理が困難な状況が増加している。
【0006】
なお、上記特許文献1及び2は、貝をアルコールに浸漬する内容のみが開示され、上記問題に対する解決策を何ら提示していない。
【0007】
そこで、本発明は、貝干物を手軽に焙ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る貝干物食品は、貝干物の少なくとも一部分に、燃焼可能な酒類が染みているものである。
【0009】
第2の態様に係る貝干物食品は、第1の態様に係る貝干物食品であって、前記貝干物は、二枚貝の内臓周辺部分と斧足部分とを長尺状に伸して乾燥させた干物であり、前記内臓周辺部分に、前記酒類が染みているものである。
【0010】
第3の態様に係る貝干物食品は、第1又は第2の態様に係る貝干物食品であって、前記酒類は、アルコール度数60%以上のエチルアルコール溶液であるものである。
【0011】
第4の態様に係る貝干物食品は、前記貝干物として姫貝を用いたものである。
【0012】
また、上記課題を解決するため、第5の態様に係る容器漬貝干物食品は、開口を有する容器本体と、前記開口を閉塞する蓋部とを有する容器と、前記容器本体内に入れられた貝干物と、前記貝干物の少なくとも一部分が浸るように前記容器内に封入された、燃焼可能な酒類と、を備えるものである。
【0013】
第5の態様に係る容器漬貝干物食品は、第5の態様に係る容器漬貝干物食品であって、前記貝干物は、二枚貝の内臓周辺部分と斧足部分とを長尺状に伸して乾燥させた干物であり、前記内臓周辺部分を前記容器本体の底側に向けた姿勢で前記容器本体内に配設され、前記酒類は、前記貝干物の前記内臓周辺部分が浸かる程度の量、前記容器内に封入されているものである。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様に係る貝干物食品によると、貝干物の少なくとも一部分に染みている酒類をマッチ或はライター等で着火することで、手軽に貝干物を焙ることができる。
【0015】
第2の態様によると、内臓周辺部分に染みた酒類を着火して焙ることで、当該内臓周辺部分の臭みを抑制することができる。
【0016】
第3の態様によると、酒類がより確実に着火する。
【0017】
第4の態様に係る貝干物食品によると、姫貝を手軽に焙ることができる。
【0018】
第5の態様に係る容器漬貝干物食品によると、酒類の蒸発を抑制して流通、保存できる。そして、容器から取出した貝干物の少なくとも一部分に染みている酒類をマッチ或はライター等で着火することで、手軽に貝干物を焙ることができる。
【0019】
第6の態様に係る容器漬貝干物食品によると、酒類を、内臓周辺部分を中心として十分に染みこませることができる。そして、主として内臓周辺部分に染みた酒類を着火して焙ることで、当該内臓周辺部分の臭みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る貝干物食品を示す斜視図である。
【図2】貝干物食品を焙る作業を示す説明図である。
【図3】貝干物食品を焙る作業を示す説明図である。
【図4】容器漬貝干物食品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係る貝干物食品及について説明する。
【0022】
図1は貝干物食品10を示す斜視図である。この貝干物食品10は、貝干物12の一部分に酒類が染みた構成とされている。
【0023】
貝干物12は、貝の体(いわゆる身の部分)を干す等して乾燥させたものである。ここでは、貝干物12として、内臓周辺部分13と斧足部分14とが直線状に連なる構成のものを用いている。このような貝干物12は、例えば、二枚貝の体の内臓周辺部分と斧足部分とを長尺状に伸して乾燥させることで製造される。一般的に、バカ貝(青柳等とも呼ばれる)を上記のようにして乾燥させたものは、姫貝と呼ばれ、高級珍味として知られている。ここでは、貝干物12として当該姫貝を想定した例で説明する。もっとも、貝干物12としては、姫貝以外にも各種貝の干物を用いることができる。
【0024】
この貝干物12のうちの一部分、ここでは、内臓周辺部分13に酒類が染みている。図1において、酒類が染みた領域部分に網線を付している。
【0025】
上気した通り、貝干物12自体は、乾燥により水分が除去された状態であるため、酒類を染みこませ易い状態となっている。
【0026】
酒類は、燃焼可能な程度にエチルアルコールを含有するものであり、特に常温で燃焼可能な程度にエチルアルコールを含有していることが好ましい。アルコール度数でいうと、酒類は、アルコール度数60%以上のエチルアルコール溶液であることが好ましい。かかるエチルアルコール溶液としては、ウオッカ、ラム酒、アブサン等の各種蒸留酒を用いることができる。これにより、常温下で、貝干物12に染みた酒類を円滑に着火することができる。また、酒類は、アルコール度数90%以上のエチルアルコール溶液であることがより好ましい。かかるエチルアルコール溶液としては、ポーランド産のウオッカであるスピリタス等を用いることができる。これにより、貝干物12に染みた酒類をより円滑に着火することができる。もちろん、酒類は、その他各種工業的手法等により、アルコール度数を高められたものであってもよい。
【0027】
貝干物12のうち酒類が染みる部分は、貝干物12全体であってもよいし、一部分であってもよい。
【0028】
もっとも、貝干物12の一部分にのみ酒類を染みこませ、残部に酒類を染みこませない(実質的に燃焼しない程度にほとんど染みていない場合を含む)ようにすると次のメリットがある。つまり、この場合、後述するように、残部をトング或は箸等で持ちつつ、貝干物12の一部分に染みこんだ酒類を着火して燃焼させると、燃焼は主として当該一部分で行われ、トング等で掴んだ残部自体は燃焼し難い。このため、トング等及びトングを所持する手等には熱が伝わり難いというメリットがある。
【0029】
また、上記のように貝干物12の一部分に酒類を染みさせる場合、次の理由から、貝干物12のうちの内臓周辺部分13に酒類が染みていることが好ましい。つまり、通常、貝干物12のうち斧足部分14よりも内臓周辺部分13の方が、臭みが強い。そこで、当該内臓周辺部分13に酒類を染みこませて焙るようにすることで、酒類自体の臭み消し作用及び香ばしさによる作用によって前記臭みを緩和することができる。
【0030】
図2及び図3は上記貝干物食品10を焙る作業を示す説明図である。
【0031】
まず、図2に示すように、貝干物食品10の斧足部分14側端部をトング20等で掴んで保持する。この状態で、マッチ或はライター等の着火道具22の炎23を貝干物食品10の内臓周辺部分13に近づける。すると、内臓周辺部分13に染みた酒類が着火し炎23を出して燃焼する。これにより、当該内臓周辺部分13が焙られた状態となり、酒類自体による芳香に、焙られることによる香ばしさが加わって美味しくなる。また、焙られることにより、暖められると共に柔らかくなり、体感温度的及び歯触りとしても美味しさを向上させる。
【0032】
このように、本実施形態に係る貝干物食品10によると、貝干物12に染みている酒類を着火することで、直火調理設備が無い状況下等でも貝干物12を手軽に焙ることができる。もちろん、直火調理設備がある状況下で、染みている酒類を燃焼させて貝干物12を焙ってもよい。また、食べる人の目前で、貝干物12を焙って見せ、直後に直に供することができるため、楽しさ及び美味しさも増す。
【0033】
また、内臓周辺部分13に染みた酒類を着火して焙っているため、酒類自体の臭み消し作用及び焙ることによる香ばしさによって当該内臓周辺部分13の臭みを抑制することができる。
【0034】
特に、姫貝自体は、長尺形状を有しており、その一端部に内臓周辺部分13を有しているため、主として内臓周辺部分13を上記のように焙って食するのに適しているため、本実施形態の適用例として適しているといえる。
【0035】
以下では、上記貝干物食品10を用いた容器漬貝干物食品30について説明する。図4は容器漬貝干物食品30を示す斜視図である。
【0036】
この容器漬貝干物食品30は、容器32と、貝干物12と、酒類18とを備えている。
【0037】
容器32は、貝干物12及び酒類18を封入可能な器であり、好ましくは、酒類18の蒸発を抑制できる程度の密封性を有する器である。ここでは、容器32は、開口35を有する容器本体34と、蓋部36とを有している。容器本体34はガラス製であり、略円筒状で底部を有すると共に上方に向けて漸次狭まる胴部34aと、前記胴部34aの上方に延在する首部34bとを有している。首部34bは上方に開口しており、その外周にはネジ溝が形成されている。蓋部36は、首部34bの開口及び外周に被せられる部材であり、浅い円筒皿状に形成されている。この蓋部36は、例えば、金属等により形成される。蓋部36の内周には、ネジ溝が形成されている。そして、蓋部36のネジ溝を首部34bのネジ溝に螺合させることで、容器本体34の開口に対して蓋部36を十分な密封性で取付けることができるようになっている。
【0038】
貝干物12は、上記容器本体34内に入れられている。より具体的には、貝干物12は、内臓周辺部分13を容器本体34の底部に向けた姿勢で容器本体34内に入れられている。貝干物12は、略鉛直姿勢であることが好ましいが、必ずしもその必要はなく斜めに傾いていてもよい。また、ここでは、複数の貝干物12は、容器32内に入れられている。
【0039】
酒類18は、上気したように燃焼可能な酒類であり、貝干物12の少なくとも一部が浸る程度の量で、上記容器32内に封入されている。ここでは、酒類18は、貝干物12の一部が浸かる程度の量、より具体的には、内臓周辺部分13が浸かる程度の量、容器32内に封入されている。これにより、貝干物12のうち主として内臓周辺部分13に酒類18に浸して、当該内臓周辺部分13に酒類18を染みこませることができる。もっとも、内臓周辺部分13の一部分(例えば、先端部)が酒類18に浸っていれば、毛細管現象によって内臓周辺部分13のおおよその部分に酒類18が染みた状態とすることが期待できるため、内臓周辺部分13の全体が酒類18に浸っている必要はない。
【0040】
この容器漬貝干物食品30によると、上記貝干物食品10を、アルコールの蒸発を抑制して流通させ、また、保存することができる。
【0041】
また、貝干物12のうち内臓周辺部分13に十分に酒類18を染みこませることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 貝干物食品
12 貝干物
13 内臓周辺部分
14 斧足部分
18 酒類
30 容器漬貝干物食品
32 容器
34 容器本体
35 開口
36 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝干物の少なくとも一部分に、燃焼可能な酒類が染みている、貝干物食品。
【請求項2】
請求項1記載の貝干物食品であって、
前記貝干物は、二枚貝の内臓周辺部分と斧足部分とを長尺状に伸して乾燥させた干物であり、前記内臓周辺部分に、前記酒類が染みている、貝干物食品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の貝干物食品であって、
前記酒類は、アルコール度数60%以上のエチルアルコール溶液である、貝干物食品。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の貝干物食品であって、
前記貝干物は姫貝である、貝干物食品。
【請求項5】
開口を有する容器本体と、前記開口を閉塞する蓋部とを有する容器と、
前記容器本体内に入れられた貝干物と、
前記貝干物の少なくとも一部分が浸るように前記容器内に封入された、燃焼可能な酒類と、
を備える容器漬貝干物食品。
【請求項6】
請求項5記載の容器漬貝干物食品であって、
前記貝干物は、二枚貝の内臓周辺部分と斧足部分とを長尺状に伸して乾燥させた干物であり、前記内臓周辺部分を前記容器本体の底側に向けた姿勢で前記容器本体内に配設され、
前記酒類は、前記貝干物の前記内臓周辺部分が浸かる程度の量、前記容器内に封入されている、容器漬貝干物食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−10630(P2011−10630A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159607(P2009−159607)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【特許番号】特許第4435272号(P4435272)
【特許公報発行日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(506095526)
【Fターム(参考)】