説明

容器詰液体調味料

【課題】 低食塩含量で塩化カリウムを含有するにもかかわらず、塩化カリウム由来の異味が抑制されて適度な塩味を呈し、柑橘類や魚節類の香り立ちに優れ、希釈時においても風味バランスが良好な容器詰液体調味料を提供する。
【解決手段】 次の(A)、(B)及び(C)、
(A)ナトリウム 1.2〜3質量%
(B)カリウム 0.8〜2.5質量%
(C)エタノール 1〜10質量%
を含有し、(A)ナトリウム/(B)カリウム質量比が1.1〜1.9である容器詰液体調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム、カリウム及びエタノールを特定量含有する容器詰液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)の過剰摂取は、高血圧、心臓疾患などを招き易く、いわゆるメタボリックシンドロームの要因となりうる為、食塩含量の高い食品、特に醤油や醤油加工品などの液体調味料を摂取することに対して懸念する者が増加している。
そこで、食塩の一部を塩化カリウムで代替し、塩化カリウム由来の異味をマスキングすることで、食塩含量が低いにも関わらず、適度な塩味を呈する技術が提案されているが(特許文献1〜7)、実際の製品への応用はあまり進んでいないのが現状である。
【0003】
つゆやポン酢醤油などの液体調味料は、醤油を主原料とし、副原料として魚節類や柑橘類を用いて製造されている。
柑橘類を配合するポン酢醤油の工業的生産においては、柑橘類の配合を少なくすると、醤油感が強すぎることにより酸味や柑橘類特有の香り立ちが損なわれたり、保存性が低下したりする。一方、柑橘類の配合を多くすると、酸味が強すぎたりムレ臭が生じ、ポン酢醤油の風味が損なわれてしまったり、コストがかかったりする。そこで、これら不快臭をマスキングする技術が開示されている(特許文献8)。この他、フラボノイドを添加する技術が提案されている(特許文献9)。
また、魚節類を配合するつゆの工業的生産においては、醤油風味が強すぎると魚節の香り立ちが弱くなり、魚節風味が強すぎると魚節由来の生臭みが生じて、つゆの風味が損なわれてしまう。これに対して、醤油感の低減された、つゆ等の液体調味料用に好適な醤油が提案されている(特許文献10〜12)。
【0004】
【特許文献1】特開昭59-55165号公報
【特許文献2】特開昭59-187761号公報
【特許文献3】特開平11-187841号公報
【特許文献4】特開2002-325554号公報
【特許文献5】特開2006-166750号公報
【特許文献6】特開2006-141223号公報
【特許文献7】特開2006-149205号公報
【特許文献8】特開2001-78700号公報
【特許文献9】国際公開2007/55426号パンフレット
【特許文献10】特開平5-115261号公報
【特許文献11】特開平9-271351号公報
【特許文献12】特開2004-141014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
麺のつゆや、鍋物などに用いられるポン酢醤油等は、麺や具材に付着する水分により、食事中に徐々に希釈されてしまい、風味バランスが崩れたり、塩味が薄すぎたりする等の特有の課題がある。また、ポン酢醤油においては、前述のように柑橘類の配合量による風味バランスの課題がある。更に、つゆにおいては、液体調味料用に好適な醤油を製造するには工程が複雑になる、新たな設備が必要となる等の新たな課題が生じてしまう。本発明者は、以上のような風味を主とする課題がある中で、これらポン酢醤油、つゆにおいて食塩含量を低減させ、その代替として塩化カリウムを含有させた場合に生ずる風味上の課題について検討してきた。
【0006】
従って、本発明の目的は、低食塩含量で塩化カリウムを含有するにもかかわらず、塩化カリウム由来の異味が抑制されて適度な塩味を呈し、柑橘類や魚節類の香り立ちに優れ、希釈時においても風味バランスが良好な容器詰液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、風味良好で有用な容器詰液体調味料について検討してきた結果、ナトリウム、カリウム及びエタノールを特定の含有量・比率で配合することにより、低食塩含量で塩化カリウムを含有するにもかかわらず、塩化カリウム由来の異味が抑制されて適度な塩味を呈し、柑橘類や魚節類の香り立ちに優れ、希釈時においても風味バランス良好な容器詰液体調味料が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の(A)、(B)及び(C)、
(A)ナトリウム 1.2〜3質量%
(B)カリウム 0.8〜2.5質量%
(C)エタノール 1〜10質量%
を含有し、(A)ナトリウム/(B)カリウム質量比が1.1〜1.9である容器詰液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低食塩含量で塩化カリウムを含有するにもかかわらず、塩化カリウム由来の異味が抑制されて適度な塩味を呈し、柑橘類や魚節類の香り立ちに優れ、希釈時においても風味バランスが良好な容器詰液体調味料を簡便に得ることができる。また、本発明の容器詰液体調味料を用いることで、ナトリウム量の少ない食品の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の容器詰液体調味料においては、(A)ナトリウム、(B)カリウム及び、(C)エタノールを特定量含有する。
【0011】
本発明の容器詰液体調味料は、(A)ナトリウムを1.2〜3質量%(以下、単に「%」で示す)含有するが、好ましくは1.3〜2.8%、更に1.5〜2.6%、特に1.7〜2.3%、殊更1.8〜2.25%含有するのが、塩味発現、ナトリウムの過剰摂取抑制、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ち、保存性、工業的生産性の点で好ましい。
【0012】
本発明において、ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、調味料中に塩の形態で配合されているものをいう(以下に記載するナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属についても同様である)。ナトリウムは、人体にとって重要な電解質のひとつであり、その大部分が細胞外液に分布している。濃度は135〜145mol/L程度に保たれており、細胞外液の陽イオンの大半を占める。そのため、ナトリウムの過剰摂取は濃度維持のための水分貯留により、高血圧の大きな原因となる。
【0013】
本発明において、ナトリウムとして、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、これらの2種以上の混合物が挙げられる。塩化ナトリウムとして食塩を使用するのが、コストの点で好ましい。
【0014】
食塩として、様々なものが市販されているが、乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、塩化マグネシウムを0.01〜2部、塩化カルシウムを0.01〜2部、塩化カリウムを0.01〜2部含有するものが、風味、工業的生産性の点で好ましい。
【0015】
本発明において、ナトリウム(Na)の含有量は原子吸光光度計(Z−6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定することができる。
【0016】
本発明の液体調味料において、(B)カリウムの含有量は0.8〜2.5%であるが、好ましくは1〜2.3%、更に1.1〜1.9%、特に1.2〜1.7%、殊更1.3〜1.5%であることが、苦味や刺激味といった塩化カリウム由来の異味を生じない点から好ましい。また、カリウムとしては、塩味がありかつ異味が少ない点から塩化カリウムを用いることが好ましい。塩化カリウムを用いる場合は、その含有量を1.5〜4.8%、好ましくは1.9〜4.4%、更に2.1〜3.6%、特に2.3〜3.2%、殊更2.5〜2.9%とすることが好ましい。
【0017】
本発明において、カリウム(K)は、人体に不可欠の電解質であり、カリウムイオンとして200gほど存在する。主に細胞内に分布しており、細胞外液での濃度は3.5〜4.5mmol/L程度と非常に小さく保たれている。一日の所要量は1〜2g/日/人とされるが、2005年4月の厚生労働省「日本人の食事摂取基準」において、生活習慣病予防の観点から3.5g/日/人、摂取することが望ましいとされている。
【0018】
本発明において、カリウム(K)の含有量は原子吸光光度計(Z−6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定することができる。
【0019】
本発明において、(A)ナトリウム/(B)カリウム質量比(Na/K)は1.1〜1.9であるが、好ましくは1.2〜1.8、更に1.3〜1.7、特に1.4〜1.6であるのが、風味バランス、塩味発現、塩化カリウム由来の異味抑制、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。
【0020】
本発明において、(C)エタノールの含有量は1〜10%であるが、好ましくは1.1〜8%、更に1.3〜6、特に2〜5.5%、殊更3〜5%であるのが、魚節類や柑橘類の香りが立ち、塩味が鋭く感じられ、塩化カリウム由来の異味を低減するので好ましい。
【0021】
本発明において、エタノールの含有量は、ナトリウム100部に対して5〜250部、好ましくは10〜200部、より好ましくは20〜180部、更に40〜170部、特に70〜135部、殊更90〜130部であるのが、魚節類や柑橘類の香りが立ち、塩味が鋭く感じられ、塩化カリウムの異味を低減するので好ましい。
【0022】
本発明において、エタノール(EtOH)の含有量は、原料由来のエタノール量と新たに添加したエタノール量との合計量をいう。すなわち、調味料の原料として日本酒、ワイン等の酒、醤油、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料の他、発酵物等を用いると、原料由来のエタノールが含まれることがある。その場合には、原料由来のエタノール量と新たに添加したエタノール量との合計が、上記範囲内であるものとする。なお、エタノールの含有量は、ガスクロマトグラフィー(GLC)を使用して、測定することができる(「しょうゆ試験法」、(財)日本醤油研究所編集、(株)醤協通信社販売、昭和60年)。
【0023】
本発明において、容器詰液体調味料中の(D)糖類の含有量は4〜20%であるのが好ましく、より好ましくは4.5〜18%、更に5〜16%、特に6〜15%、殊更7〜14%であるのが、塩化カリウム由来の異味抑制、魚節類や柑橘類の香り立ち、塩味、風味バランスの点で好ましい。糖類としては、グルコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、シュークロース、マルトース、液糖、転化糖、水飴、澱粉、デキストリン等のほか、エリスリトール、グリセロール、ソルビトール、トレハロース、還元水あめ等の糖アルコールも例示されるが、グルコース、フルクトース、シュークロース、これらの2種以上の混合物が好ましい。また必要によりグリチルリチン、ステビオサイド、アスパルテームなどの甘味料を用いてもよい。
【0024】
本発明において、糖類の含有量は、原料由来の糖類量と新たに添加した糖類量との合計量をいう。すなわち、調味料の原料として日本酒、ワイン等の酒、醤油、味醂(本みりん、みりん風調味料、塩みりん等)等の醸造調味料の他、発酵物等を用いると、原料由来の糖類が含まれることがある。その場合には、原料由来の糖類量と新たに添加した糖類量との合計が、上記範囲内であるものとする。なお、糖類の含有量は、液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、測定することができる(「しょうゆ試験法」、(財)日本醤油研究所編集、(株)醤協通信社販売、昭和60年)。
【0025】
本発明の容器詰液体調味料は、(E)魚節類及び/または(F)柑橘類を含有するのが好ましい。(E)魚節類は0.01〜60%含有するのが好ましく、より好ましくは0.1〜50%、更に0.2〜40%、特に0.5〜30%、殊更1〜20%含有するのが、魚節類の香り立ち、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランスの点で好ましい。
【0026】
魚節類とは、魚節、魚節出汁、魚節エキス、魚節調味料、魚節フレーバーから選ばれる1種又は2種以上の混合物をいう。魚節としては、かつお節、そうだ節、まぐろ節、さば節、むろ節、うるめ節、いわし節、さんま節、煮干などが挙げられ、かつお節が好ましい。かつお節には、香気成分、例えばギ酸や酢酸、カプチン酸などの酸、ホルムアルデヒドやアセトン、メチルアミルケトンなどのカルボニル、アンモニアやイソブチルアミン、ルチジンなどの塩基、ブタノールやフェニルエチルアルコールなどのアルコール、硫化水素などの含硫化合物、フェノールやジメチルフェノールなどのフェノール類、メチルイソオイゲノールなどのフェノールエーテル、テトラデカンやヘキサデカン、エイコサンなどの炭化水素、ジベンゾフランなどのフラン、ジメチルピラジンなどのピラジン類が含有されている。これらのうち、ピラジン類は香ばしい焙焼香を、フェノール類はくん臭を、含硫化合物は肉質的な香りを主に示す。なお、かつお節は、かつおを燻して製造した荒節、荒節のタール分を削り、カビつけした枯節などがあり、本発明においては、いずれも使用することができる。荒節は燻臭が強いという特徴があるのに対し、枯節はカビの作用を経ており、より複雑な風味を醸し出す特徴がある。つゆにおいては、荒節風味よりも枯節風味が好まれる傾向にある。
【0027】
魚節出汁としては、かつお節出汁、そうだ節出汁、まぐろ節出汁、さば節出汁、むろ節出汁、うるめ節出汁、いわし節出汁、さんま節出汁、煮干出汁などが挙げられ、かつお節出汁が好ましい。魚節出汁は、魚節を、水に入れて加熱する方法、魚節をはじめに水に浸漬した後加熱する方法、魚節を沸騰水中に入れる方法等の種々の方法で、製造することができる。前記魚節から魚節出汁を得る場合、魚節は予め削ったり、粉末状として使用する。魚節は一種または二種以上を適宜選択して使用することができる。魚節の添加量は、特に制限されるものではないが、一般的には抽出する水に対して、1〜10%、好ましくは2〜6%添加することが好ましい。本発明においては、魚節に昆布や椎茸などを併用した出汁を使用してもよく、特にかつお節と昆布を併用した出汁を使用するのが好ましい。
【0028】
魚節エキスとしては、かつお節エキス、そうだ節エキス、まぐろ節エキス、さば節エキス、むろ節エキス、うるめ節エキス、いわし節エキス、さんま節エキス、煮干エキスなどが挙げられ、かつお節エキスが好ましい。魚節エキスとは、魚節を熱水もしくはアルコールまたは両者の混合液を用いて抽出した液状の抽出液のことである。
【0029】
魚節調味料としては、かつお節調味料、そうだ節調味料、まぐろ節調味料、さば節調味料、むろ節調味料、うるめ節調味料、いわし節調味料、さんま節調味料、煮干調味料などが挙げられ、かつお節調味料が好ましい。魚節調味料とは、魚節又は魚節エキスに、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、昆布エキスなどの調味料を添加、混合して製造されたものをいう。
【0030】
魚節フレーバーとしては、かつお節フレーバー、そうだ節フレーバー、まぐろ節フレーバー、さば節フレーバー、むろ節フレーバー、うるめ節フレーバー、いわし節フレーバー、さんま節フレーバー、煮干フレーバーなどが挙げられ、かつお節フレーバーが好ましい。
【0031】
本発明においては、かつお節、かつお節出汁、かつお節調味料、かつお節エキス、かつお節フレーバーから選ばれる1種又は2種以上の混合物を含有するのが、かつお節の香り立ち、風味バランスの点で好ましい。
【0032】
(F)柑橘類は0.01〜40%含有するのが好ましく、より好ましくは0.1〜30%、更に0.2〜20%、特に0.5〜15%、殊更1〜10%含有するのが、柑橘類の香り立ち、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランスの点で好ましい。柑橘類とは、柑橘果汁、柑橘エキス、柑橘フレーバーから選ばれる1種又は2種以上の混合物をいう。
【0033】
本発明に使用する柑橘果汁としては、柑橘類であればいずれのものでも使用し得るが、ゆず、すだち、かぼす、レモン、ライム、だいだい、ゆこう、みかん、オレンジ、グレープフルーツ、カラマンシー、シークワーサー等が例示され、特にライム、レモン、ゆず、すだち、かぼす等の甘味の少ない柑橘類から搾汁される果汁が好ましい。この柑橘果汁は、果汁が100%の天然果汁、果汁含有率45〜99%の果汁飲料、果汁含有率10〜45%の清涼飲料、天然果汁を濃縮した濃縮果汁のいずれも使用し得るが、なかでも天然果汁、濃縮果汁が好ましい。これらの柑橘果汁は1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0034】
本発明に使用する柑橘エキスとしては、ゆずエキス、すだちエキス、かぼすエキス、レモンエキス、ライムエキス、だいだいエキス、ゆこうエキス、みかんエキス、オレンジエキス、グレープフルーツエキス、カラマンシーエキス、シークワーサーエキスが例示され、特に、ゆずエキス、すだちエキス、かぼすエキスが好ましい。柑橘エキスとは、柑橘果実・果皮を熱水もしくはアルコールまたは両者の混合液を用いて抽出した液状の抽出液のことである。
【0035】
本発明に使用する柑橘フレーバーとしては、ゆずフレーバー、すだちフレーバー、かぼすフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、だいだいフレーバー、ゆこうフレーバー、みかんフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフルーツフレーバー、カラマンシーフレーバー、シークワーサーフレーバーが例示され、特に、ゆずエキス、すだちエキス、かぼすエキスが好ましい。
【0036】
本発明においては、(G)うま味調味料を含有するのが好ましい。容器詰液体調味料中のうま味調味料の含有量は0.1〜10%であるのが好ましく、より好ましくは0.2〜7%、更に0.4〜5%、特に0.7〜3%、殊更1〜2.5%含有するのが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点で好ましい。
【0037】
更に、(A)ナトリウム100部に対して、うま味調味料を20〜250部含有するのが好ましく、より好ましくは25〜150部、更に30〜100部、特に35〜70部、殊更40〜50部含有するのが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点で好ましい。
【0038】
うま味調味料としては、タンパク質・ペプチド系調味料(魚節由来を除く)、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、エキス系調味料(魚節由来を除く)、有機酸塩系調味料が挙げられるが、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸塩系調味料、これらの2種以上の混合物が、風味バランスの点で好ましい。
【0039】
核酸系調味料としては、酵母エキス、5′−グアニル酸、イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等が挙げられる。容器詰液体調味料中の核酸系調味料の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.01〜0.1%が特に好ましい。なお、本発明においては、核酸ナトリウム塩を使用した場合は、ナトリウムの部分は成分(A)として、核酸の部分は成分(G)として本発明を構成するものとする。例えば、イノシン酸2ナトリウムの場合、2ナトリウムは成分(A)、グルタミン酸は成分(G)として含有量を換算する。
【0040】
アミノ酸系調味料としては酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、及びこれらの塩が挙げられる。なお、本発明においては、アミノ酸ナトリウム塩を使用した場合は、ナトリウムの部分は成分(A)として、アミノ酸の部分は成分(G)として本発明を構成するものとする。例えば、グルタミン酸ナトリウムの場合、ナトリウムは成分(A)、グルタミン酸は成分(G)として含有量を換算する。
【0041】
本発明において、容器詰液体調味料中のアミノ酸系調味料の含有量は、酸性アミノ酸が0.1%超、及び/又は塩基性アミノ酸が0.1%超であるのが好ましい。また、酸性アミノ酸は0.1%超5%以下、更に0.5〜4.5%、特に1〜3.8%であることが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。塩基性アミノ酸は0.1%超3%以下、更に0.5〜2.5%、特に1〜2%であることが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。
【0042】
なお、本発明の容器詰液体調味料は、醸造調味料をベースとしたものが熟成風味、醤油感、さわやか風味、風味バランスの点から好ましいが、この場合には、アミノ酸は原料醤油由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸塩等を更に添加することが好ましい。なお、本発明にいう「酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸」は、遊離(フリー)のアミノ酸又はアミノ酸塩の状態のものを指すが、本発明に規定する含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。
【0043】
また、本発明の容器詰液体調味料においては、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の中でも酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸が塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましく、更に、アスパラギン酸とグルタミン酸を併用することが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。この場合、アスパラギン酸の含有量は0.1%超4%以下が好ましく、更に0.5〜2.5%、特に1〜2%であることが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。アスパラギン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム等を更に添加することが好ましい。また、グルタミン酸の含有量は0.1%超3%以下が好ましく、更に0.5〜2.5%、特に1〜2%であることが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。グルタミン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム等を更に添加することが好ましい。
【0044】
塩基性アミノ酸としては、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びオルニチンが挙げられるが、中でもリジン、ヒスチジンが好ましく、特にヒスチジンが好ましい。リジンの含有量は0.5〜1%であることが塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点で好ましい。ヒスチジンの含有量は0.2〜2%、更に0.5〜1%であることが、塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点から好ましい。これらの塩基性アミノ酸も醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、更に添加することが好ましい。
【0045】
上記以外のものとしては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、シスチン、スレオニン、チロシン、イソロイシン、あるいはこれらのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられ、これらを1種又は2種以上配合することができる。配合後のアミノ酸の含有量はそれぞれ遊離のアミノ酸に換算した場合、グリシンは0.3%超、アラニンは0.7%超、フェニルアラニンは0.5%超、シスチンは0%超、スレオニンは0.3%超、チロシンは0.2%超、イソロイシンは0.5%超であり、かつそれぞれ上限は1.5%以下が好ましい。中でもイソロイシンが塩化カリウム由来の異味抑制、塩味、風味バランス、魚節類や柑橘類の香り立ちの点で好ましく、含有量は0.5〜1%であることが好ましい。
【0046】
アミノ酸の含有量は、アミノ酸分析計(日立L−8800型)を用いて測定することができる。核酸、有機酸の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定することができる(「しょうゆ試験法」、(財)日本醤油研究所編集、(株)醤協通信社販売、昭和60年)。
【0047】
本発明において、有機酸塩系調味料としては乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等を使用することができる。特にコハク酸二ナトリウム、グルコン酸ナトリウムが好ましい。これらの含有量は0〜0.3%が好ましく、0.05〜0.2%が特に好ましい。なお、本発明においては、有機酸ナトリウム塩を使用した場合は、ナトリウムの部分は成分(A)として、有機酸の部分は成分(G)として本発明を構成するものとする。例えば、グルコン酸ナトリウムの場合、ナトリウムは成分(A)、グルコン酸は成分(G)として含有量を換算する。
【0048】
本発明において、核酸系調味料、成分(G)以外のアミノ酸系調味料、有機酸塩系調味料及び酸味料等を含有することが相乗的に塩味を増強できる点、及び塩味のみならず、苦味の低減、風味バランス等の点から好ましい。
【0049】
また、本発明の容器詰液体調味料においては、pHは2以上7未満の酸性であるが、好ましくは2.5〜6.5、更に3〜6、特に3.2〜5.5、殊更3.5〜5.3であることが、柑橘類や魚節の香り立ち、カリウム由来の異味抑制、保存性、風味バランスの点から好ましい。酸味料等を添加することより、pHを所望の範囲に調製することができる。
【0050】
本発明において、酸味料としては、乳酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、フィチン酸等を使用することができる。中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、フィチン酸が好ましく、特に乳酸が好ましい。乳酸の含有量は0〜2%が好ましく、0.3〜1%が特に好ましい。また、リンゴ酸、クエン酸、リン酸、フィチン酸の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.02〜0.1%が特に好ましい。工業的には、食酢や柑橘果汁を使用し、pHを所定の範囲とするのが、風味、生産効率、コストの点で好ましい。食酢としては、米酢等の穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢等の果実酢、醸造酢の他、合成酢などを使用することができる。
【0051】
更に、塩味を増強させる添加剤としては塩化アンモニウム、乳酸カルシウム等も効果があるが、配合した醤油を用いて加熱調理した際に、前者においては異味を生じ、後者においては調理する食品が硬くなる等の不都合が生じるため、汎用の調味料としての機能も備えるつゆやポン酢醤油としては好ましくない。
【0052】
本発明の容器詰液体調味料は、(A)ナトリウム、(B)カリウム及び(C)エタノールが所定量となるよう配合し、攪拌、混合、溶解した調味液を容器に充填することにより、製造することができる。必要に応じて、残余成分として(D)、(E)、(F)、(G)の他、酸味料、無機塩、酸、賦形剤、香辛料、うま味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、野菜等の食品に使用可能な原料や、水を配合してもよい。
【0053】
また、塩分(ナトリウム含量)を低下させた容器詰液体調味料とする場合は、生醤油を電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量の低下した生醤油(減塩生醤油、低塩生醤油)を調製し、火入れ工程後、成分(A)、(B)、(C)などを混合する方法、又は、火入れ工程後の醤油を電気透析、又は塩析/希釈により食塩含量の低下した醤油(減塩醤油、低塩醤油)を調製し、これと食酢や柑橘果汁を含む調味液に成分(A)、(B)、(C)などを混合する方法等により製造することができる。更に、容器に充填する際には、液体調味料に加熱処理を行うのが好ましい。
成分(A)、(B)及び(C)のうちいずれか1種以上を含む液体調味料を加熱処理する場合には、(1) 加熱処理した後、容器に充填、閉栓する、(2) 加熱処理しながら容器に充填、閉栓する、(3) 容器に充填し、閉栓した後、加熱処理する、(4)容器に充填し、閉栓せずに加熱処理を行い、次いで閉栓する方法があるが、(1)、(2)又は(4)が好ましく、更に(1)又は(2)で製造するのが風味、安定性、色の点で好ましい。
【0054】
本発明において、液体調味料を加熱処理する際の装置としては、プレート式熱交換器、チューブ式熱交換器などが例示される。加熱温度は60℃以上であることが好ましく、より好ましくは65〜130℃、更に70〜100℃、特に73〜95℃、殊更75〜90℃で加熱することが、風味、安定性、色等の点から好ましい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、60℃の場合は10秒〜120分、更に30秒〜60分、特に1分〜10分、殊更2分〜5分であることが、風味、安定性、色等の点から好ましい。80℃の場合は、2秒〜60分、更に5秒〜30分、特に10秒〜10分、殊更30秒〜5分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。90℃の場合は、1秒〜30分、更に2秒〜10分、特に5秒〜5分、殊更10秒〜2分であるのが、風味、安定性、色等の点から好ましい。また、加熱温度と加熱時間を組合せて、60〜70℃で10分以上加熱した後、80℃で1分以上加熱する方法でもよい。
【0055】
本発明の容器詰液体調味料は、液体調味料を容器に充填したものである。本発明に使用される容器の容量は5mL〜20Lであるのが好ましく、次に好ましくは10mL〜5L、より好ましくは50mL〜2L、更に100mL〜1L、特に300mL〜800mL、殊更350〜650mLであるのが、安定性、使い勝手の点で好ましい。本発明に使用される容器は、一般の液体調味料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、紙容器、合成樹脂製の袋、ガラス瓶などの通常の形態で提供することができる。紙容器としては、紙基材とバリア性層(アルミニウム等の金属箔、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン系重合体など)とヒートシール性樹脂層とを含む積層材を製函したものなどが挙げられる。
【0056】
更に、本発明において使用する容器は、その酸素透過指数が0.8(cm3/day・m2)以下であることがより好ましい。本発明でいう「酸素透過指数」とは、JIS法(K 7126 B法)により求められる「酸素透過度」(単位:cm3/day・bottle)を容器の表面積で除して、その材料1m2当たりに換算した値をいう。酸素透過度は、具体的にはMOCON社製装置を用いて、試験片(容器)の一方に酸素を供給し、もう一方に等圧で窒素キャリアーガスを流し、透過した酸素を酸素検知器を用いて測定された値(20℃、相対湿度60%)のことである。本発明に用いる容器の酸素透過指数は、好ましくは0〜0.6、より好ましくは0〜0.4、更に0.01〜0.2、特に0.02〜0.15、殊更0.05〜0.12であるのが、保存性、風味維持の点から好ましい。
【0057】
本発明においては、液体調味料とは、つゆ、たれ、ポン酢醤油等の通常、食塩を含有する液体状の調味料をいい、日本農林規格に適合する「しょうゆ」に調味料、酸味料、香料、だし、エキス類等を添加した、「しょうゆ」と同様の用途で用いられる液体調味料を含む。具体的には、汎用つゆ、麺つゆ、鍋物つゆ、天つゆ、焼肉のたれ、蒲焼のたれ、焼鳥のたれ、ポン酢醤油(ポン酢)、酢醤油、三杯酢、土佐酢、松前酢、ノンオイルドレッシング等が挙げられ、汎用つゆ、麺つゆ、ポン酢醤油が好ましい。
【0058】
ここで、「しょうゆ」とは、日本農林規格の「しょうゆ」と同一概念である。また、しょうゆに調味料、酸味料、香料、だし、エキス類等を添加したものを「しょうゆ加工品」という。なお、本願で記載する「液体調味料」は、上記のしょうゆ及びしょうゆ加工品を含むことはもちろん、これらの規格からは外れるが本願の要件を備えた調味料を含める概念とする。
【0059】
食塩の過多な摂取は、腎臓病、心臓病、高血圧症に悪影響を及ぼすことから食塩の摂取量を制限するために、本発明の容器詰液体調味料が、使用頻度の高い醤油を含有する調味料であるのが好ましい。原料として使用する醤油としては、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、低塩醤油、減塩醤油等を挙げることができるが、製品100g中のナトリウム量が3.55g超〜5.5g以下の低塩醤油、3.55g以下である減塩醤油を用いるのが、食塩摂取量、風味バランスの点で好ましい。
【0060】
本発明の容器詰液体調味料を、食品の製造・加工・調理に使用することで、塩化カリウム由来の異味抑制、魚節類や柑橘類の香り立ち、良好な風味バランスなどの改善効果が得られる。従って、本発明は、風味改善方法、食品の加工・調理方法、食品の製造方法としても有用である。
【0061】
本発明の容器詰液体調味料は、各種食品に使用することができる。本発明の容器詰液体調味料を用いることで、食塩含量が低いにもかかわらず強い塩味を呈することから、塩分量が少ない食品の設計が可能となる。
【0062】
本発明の容器詰液体調味料を使用した食品としては、喫食時に食塩が含まれるものであれば特に制限はないが、例えば、サラダ、刺身、お浸し、冷奴、湯豆腐、鍋物、煮物、揚げ物、焼き物、蒸し物、酢の物等の調理食品等が挙げられる。すなわち、本発明の容器詰液体調味料の食品への用途(使用方法)としては、これらの食品に容器詰液体調味料をかける用途、これらの食品を容器詰液体調味料につける用途、容器詰液体調味料と食材を用いて調理する用途、容器詰液体調味料を用いて加工食品を製造する用途などが例示される。
【0063】
本発明の容器詰液体調味料の、食品中の含有量は0.01〜50%であるのが好ましく、更に0.05〜20%、特に0.1〜10%、殊更0.5〜5%であるのが風味バランス、ナトリウムや食塩摂取量の点で好ましい。
【実施例】
【0064】
(1)試験品1〜5(ポン酢醤油)
表1に示す配合で、醤油(ヤマサ減塩しょうゆ、ヤマサ(株))、柑橘果汁、塩化カリウム、食塩、上白糖、かつお節調味料(かつおだし、マルトモ(株))、水、エタノール等を混合、溶解した。これをガラス製サンプル瓶に入れ、アルミ箔で蓋をして、湯せんで加熱(内容物の温度:75℃達温後5分間保持)した。次いで閉栓し、水冷した後、冷蔵庫(5℃)に3日間静置して、容器詰液体調味料(試験品1〜5)を製造した(EtOH=1.1%)。これらの風味について、官能評価を行った(そのまま評価、水で希釈して評価)。その結果を表1に示す。なお、表中の「Na」及び「K」含量は、いずれも原子吸光光度計(Z−6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定した(以下同じ)。また、エタノールは「しょうゆ試験法 1−1−5 アルコール分」(財団法人 日本醤油研究所)により測定した(以下同じ)。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示すように、試験品1〜3(Na/K=1.2〜1.85)では、塩化カリウム由来の異味は全く感じられないか、殆ど感じられず、柑橘果汁の香りが立ち、良好な風味であった。水で希釈しても、塩化カリウムの異味が殆ど感じられなく、他の風味とのバランスも良好であった。これに対し、試験品4(Na/K=2.0)では、塩化カリウム由来の異味は感じられないものの、醤油感が強く、果汁の香り立ちが小で、風味バランスは良好ではなかった。また、試験品5(Na/K=1.0)においては、特に希釈時に塩化カリウム由来の異味が感じられて良好な風味ではなかった。
このように、Na含量、K含量、Na/K比が特定のものに、塩化カリウム由来の異味が抑制されて、柑橘果汁の香り立ちが良好となり、更に、希釈時においても良好な風味となることが示された。
【0067】
(2)試験品6〜10(麺つゆ)
表2に示す配合で、醤油(ヤマサ減塩しょうゆ、ヤマサ(株))、塩化カリウム、食塩、上白糖、かつお節エキス(エキスメイトかつお、味の素(株))、かつお節調味料(かつおだし、マルトモ(株))、水、エタノール等を混合、溶解した。更に、別に作製しただし汁を加え、ガラス製サンプル瓶に入れ、アルミ箔で蓋をして、湯せんで加熱(内容物の温度:75℃達温後5分間保持)した。次いで閉栓し、水冷した後、冷蔵庫(5℃)に3日間静置して、容器詰液体調味料(試験品6〜10)を製造した(EtOH=1.3%)。これらの風味について、官能評価を行った(そのまま評価、水で希釈して評価)。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2に示すように、試験品6〜8(Na/K=1.2〜1.85)では、塩化カリウム由来の異味は全く感じられないか、殆ど感じられず、かつお節の香りが立ち、良好な風味であった。水で希釈しても、塩化カリウムの異味があまり感じられなく、他の風味とのバランスも良好であった。これに対し、試験品9(Na/K=2.0)では、塩化カリウム由来の異味は感じられないものの、醤油感が強く、かつお節の香り立ちが小で、風味バランスは良好ではなかった。また、試験品10(Na/K=1.0)においては、塩化カリウム由来の異味が感じられて良好な風味ではなかった。
このように、Na含量、K含量、Na/K比が特定のものに、塩化カリウム由来の異味が抑制されて、かつお節の香り立ちが良好となり、更に、希釈時においても良好な風味となることが示された。
【0070】
(3)試験品11〜15(ポン酢醤油)
表3に示す配合で、醤油(ヤマサ減塩しょうゆ、ヤマサ(株))、柑橘果汁、塩化カリウム、食塩、上白糖、かつお節調味料(かつおだし、マルトモ(株))、水、エタノール等を混合、溶解した。これをガラス製サンプル瓶に入れ、アルミ箔で蓋をして、湯せんで加熱(内容物の温度:75℃達温後5分間保持)した。次いで閉栓し、水冷した後、冷蔵庫(5℃)に3日間静置して、容器詰液体調味料(試験品11〜15)を製造した(Na=1.34%、K=0.95%、Na/K=1.41)。試験品11を対照品(コントロール)として、エタノール(EtOH)含量の異なる試験品12〜15の風味について、官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
表3に示すように、試験品11(EtOH=0.8%)は、塩化カリウム由来の異味が
若干感じられた。これに対し、試験品12(EtOH=1.4%)は、塩化カリウム由来の異味は全く感じられず、ゆず果汁の香り立ちや塩味がやや強くなり、すっきりとした良好な風味となった。また、試験品13(EtOH=4.9%)においては、わずかにエタノール臭が感じられたものの、ゆず果汁の香り立ちや塩味が強くなり、非常に良好な風味となった。試験品14(EtOH=9.9%)では、ゆず果汁の香り立ちや塩味が更に強くなったが、ややエタノール臭が感じられて、良好な風味となった。試験品15(EtOH=19.9%)では、エタノール臭が強すぎて、ゆず果汁の香りが抑制され、しかもエグ味が強くなり良好な風味ではなかった。
このように、Na含量、K含量、Na/K比が一定で、特定量のエタノールを含むものは、塩化カリウム由来の異味が抑制されて、柑橘果汁の香り立ちが良好となり、更に、低Naであるにもかかわらず塩味が鋭く感じられて良好な風味となることが示された。
【0073】
(4)試験品16〜20(汎用つゆ)
表4に示す配合で、醤油(ヤマサ減塩しょうゆ、ヤマサ(株))、塩化カリウム、食塩、上白糖、かつお節エキス(エキスメイトかつお、味の素(株))、かつお節調味料(かつおだし、マルトモ(株))、水、エタノール等を混合、溶解した。更に、別に作製しただし汁を加え、ガラス製サンプル瓶に入れ、アルミ箔で蓋をして、湯せんで加熱(内容物の温度:75℃達温後5分間保持)した。次いで閉栓し、水冷した後、冷蔵庫(5℃)に3日間静置して、容器詰液体調味料(試験品16〜20)を製造した(Na=1.71%、K=1.07%、Na/K=1.6)。試験品16を対照品(コントロール)として、エタノール(EtOH)含量の異なる試験品17〜20の風味について、官能評価を行った。その結果を表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表4に示すように、試験品16(EtOH=0.95%)は、塩化カリウム由来の異味
が若干感じられた。これに対し、試験品17(EtOH=1.4%)は、塩化カリウム由来の異味は全く感じられず、かつお節の香り立ちや塩味がやや強くなり、さわやかで良好な風味となった。また、試験品18(EtOH=5%)においては、わずかにエタノール臭が感じられたものの、かつお節の香り立ちや塩味が強くなり、非常に良好な風味となった。試験品19(EtOH=10%)では、かつお節の香り立ちや塩味が更に強くなったが、ややエタノール臭が感じられて、良好な風味となった。試験品20(EtOH=20%)では、エタノール臭が強すぎて、かつお節の香りが抑制され、しかもエグ味が強くなり良好な風味ではなかった。
このように、Na含量、K含量、Na/K比が一定で、特定量のエタノールを含むものは、塩化カリウム由来の異味が抑制されて、かつお節の香り立ちが良好となり、更に、低Naであるにもかかわらず塩味が鋭く感じられて良好な風味となることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)及び(C)、
(A)ナトリウム 1.2〜3質量%
(B)カリウム 0.8〜2.5質量%
(C)エタノール 1〜10質量%
を含有し、(A)ナトリウム/(B)カリウム質量比が1.1〜1.9である容器詰液体調味料。
【請求項2】
(D)糖類を4〜20質量%含有する請求項1に記載の容器詰液体調味料。
【請求項3】
(E)魚節類を含有する請求項1又は2に記載の容器詰液体調味料。
【請求項4】
(F)柑橘類を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器詰液体調味料。
【請求項5】
液体調味料が、ポン酢醤油又はつゆである請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器詰液体調味料。
【請求項6】
液体調味料を60℃以上で加熱処理する工程を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器詰液体調味料の製造方法。