説明

容器詰炭酸飲料及びその製造方法

【課題】アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制された容器詰炭酸飲料を提供する。
【解決手段】アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料であって、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bが1.3〜3.0であることを特徴とする容器詰炭酸飲料。容器詰炭酸飲料は、果汁及び/又は野菜汁を含有することが好ましく、アントシアニンは、果汁及び/又は野菜汁に由来するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰炭酸飲料、容器詰炭酸飲料の製造方法、容器詰炭酸飲料の光劣化抑制方法、容器詰炭酸飲料の炭酸感改善方法、並びに容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料は、その味わいのみならず、飲用した時に炭酸ガスの刺激によって清涼感を得ることができる清涼飲料であり、従来から広く普及している。さらに、果汁又は野菜汁を含有させることで、果汁の風味を活かし、かつ炭酸ガスによる清涼感や爽快感を出すために、種々工夫された果汁入り炭酸飲料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/067702号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブドウやベリー類のフレーバー等を含有する炭酸飲料、又はブドウやベリー類の果汁を含有する炭酸飲料は、アントシアニンを含有するものであるが、このアントシアニンは光に弱く劣化しやすいという性質を有する。中でも炭酸飲料においては、アントシアニンが光による劣化を強く受けやすいため、アントシアニンを含有する炭酸飲料は、特に販売段階における長期保管が困難であるという問題があった。このため、アントシアニンを含有する炭酸飲料としては、色素を添加したものしか存在しなかった。一方、色素を添加した場合、飲用時における炭酸感が減少するうえに、製造過程における炭酸飲料の容器への充填時において、泡立ちが激しくなる傾向があり、そのため炭酸飲料の製造が困難になる等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制された容器詰炭酸飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第一に本発明は、アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料であって、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bが1.3〜3.0であることを特徴とする容器詰炭酸飲料を提供する(発明1)。
【0007】
上記発明(発明1)の容器詰炭酸飲料は、炭酸感に優れるほか、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制され、特に長期間の光照射条件下においても色調が変化しないものとなる。
【0008】
上記発明(発明1)においては、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの520nmにおける吸光度Aが0.3〜3.5であることが好ましい(発明2)。
【0009】
上記発明(発明1,2)においては、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bが0.07〜3.4であることが好ましい(発明3)。
【0010】
上記発明(発明1〜3)においては、果汁及び/又は野菜汁を含有することが好ましく(発明4)、また前記アントシアニンが、前記果汁及び/又は前記野菜汁に由来するものであることが好ましい(発明5)。
【0011】
上記発明(発明4)の容器詰炭酸飲料は、果汁及び/又は野菜汁による果実感及び/又は野菜感に優れたものとなる。
【0012】
第二に本発明は、アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料の製造方法であって、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整することを特徴とする容器詰炭酸飲料の製造方法を提供する(発明6)。
【0013】
第三に本発明は、アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料の光劣化抑制方法であって、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整することを特徴とする容器詰炭酸飲料の光劣化抑制方法を提供する(発明7)。
【0014】
第四に本発明は、アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料の炭酸感改善方法であって、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整することを特徴とする容器詰炭酸飲料の炭酸感改善方法を提供する(発明8)。
【0015】
第五に本発明は、果汁及び/又は野菜汁を含有する容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法であって、前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整することを特徴とする容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法を提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0016】
本発明の容器詰炭酸飲料は、炭酸感に優れるほか、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制され、特に長期間の光照射条件下においても色調が変化しないものとなる。また、本発明の容器詰炭酸飲料が果汁及び/又は野菜汁を含有する場合においては、当該果汁及び/又は野菜汁による果実感及び/又は野菜感に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、アントシアニンを含有するものである。
【0018】
アントシアニンは、ポリフェノールの一種である一群の化合物群であって、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体の総称である。アントシアニンとしては、デルフィニジン−3−グルコシド、シアニジン−3−グルコシド、ペチュニジン−3−グルコシド、ペオニジン−3−グルコシド及びマルビジン−3−グルコシド等が挙げられる。アントシアニンは、ブドウ、カシス、ベリー類などの果実や野菜に豊富に含まれており、抗酸化作用等の生理活性を有するほか、光を吸収し呈色する性質を有するため色素としても用いられる。本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、アントシアニン化合物単体を配合しても良く、又はアントシアニンを含有する組成物(例えば、アントシアニン色素や、アントシアニンを含有する果汁及び/又は野菜汁等)を配合しても良い。
【0019】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料におけるアントシアニンの含有量は、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの520nmにおける吸光度Aによって測定することができる。アントシアニン化合物はいずれも色素として光を吸収する性質があり、総じてpHを3.17〜3.23に調整したときの520nmにおける吸光度Aと、アントシアニン含有量との間において、良好な相関関係を示す。そのため、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの520nmにおける吸光度Aを測定することにより、総アントシアニンの含有量を評価することができる。
【0020】
ここで、アントシアニンはpHにより吸光スペクトルが変化するという性質を有するため、pHを所定の条件に規定しなければ、520nmにおける吸光度とアントシアニン含有量との相関関係を規定することは難しい。そのため、本明細書においては、特に断りがない限り、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整した場合において、容器詰炭酸飲料の吸光度を測定するものとする。なお、本明細書において、「pHを3.17〜3.23に調整する」とは、容器詰炭酸飲料を過度に希釈しないように、高濃度の酸性水溶液若しくは塩基性水溶液、又は固体の酸若しくは塩基を容器詰炭酸飲料に添加し、当該飲料のpH調整前後における容量変化及び質量変化を0.5%未満に抑えた条件にて、当該飲料のpHを3.17〜3.23の範囲に調整することをいう。さらに、本明細書においては、このpHの調整を単に「pHを3.2に調整する」と記載することもある。
【0021】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料におけるアントシアニンの含有量は、上述した吸光度Aの他、公知の測定方法、例えば、高速液体クロマトグラフ法、吸光光度法等による測定も可能である。本明細書においては、容器詰炭酸飲料を塩酸−メタノール溶液で抽出し、高速液体クロマトグラフ法にて測定した値を、容器詰炭酸飲料におけるアントシアニンの含有量(mg/100g)[X]として用いることがある。
【0022】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bが1.3〜3.0となるものである。
【0023】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上記A/Bが上述した範囲にあることで、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制される。ここで、本明細書において、「光劣化」とは、光が長期間照射される環境下においても色調が大きく変化しないこと、例えばA/Bが大きく変化しないことをいう。なお、520nmにおける吸光度Aが大きいほど青紫色が強いと人間には知覚され、一方、430nmにおける吸光度Bが大きければ茶色が強いと知覚されるため、A/Bの値は、容器詰炭酸飲料の色調を表わす指標であるということができる。ただし実際には、A/Bの値が異なることに伴う色調の違いは、人間にとって知覚されづらい。しかし、一見すると色調の違いが知覚されづらい容器詰炭酸飲料であっても、A/Bが上述した範囲内となる本実施形態の容器詰炭酸飲料は、光が長期間照射される環境下においても色調が大きく変化しないものとなる。
【0024】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、A/Bが1.3以上であることで、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制されるため、長期間の光照射環境下においても色調が変化せず、消費者への訴求力が維持されたものとなる。また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、A/Bが3.0以下であることで、飲用時における炭酸の刺激感が強いものとなり、嗜好的に好ましいものとなる(これらの効果を以下「主効果」という)。上記A/Bは、1.4〜2.6であることが好ましく、1.6〜2.3であることがさらに好ましい。
【0025】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの520nmにおける吸光度Aが、0.3〜3.5であることが好ましく、0.3〜3.2であることがより好ましく、0.6〜3.2であることがさらに好ましい。上記吸光度Aが上述した範囲内にあることで、上述した主効果がより顕著なものとなり、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bが、0.07〜3.4であることが好ましく、0.07〜2.5であることがより好ましく、0.07〜2.1であることがさらに好ましい。上記吸光度Bが上述した範囲内にあることで、上述した主効果がより顕著なものとなり、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。
【0027】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、アントシアニンの含有量[X]が1.3〜14mg/100gであることが好ましく、1.3〜9.5mg/100gであることがより好ましく、2.0〜9.5mg/100gであることがさらに好ましい。アントシアニンの含有量[X]を上述した範囲内とすることで、上述した主効果がより顕著なものとなり、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。なお、アントシアニンの含有量[X]の具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0028】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料においては、マルビジン−3−グルコシドがアントシアニン全量中にて30質量%以上含まれていることが好ましく、50質量%以上含まれていることがより好ましい。マルビジン−3−グルコシドがアントシアニン全量中にて30質量%以上含まれていることで、A/Bを上述した範囲内とすることが容易になるため、上述した主効果がより顕著なものとなり、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。
【0029】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、アントシアニンを含む果汁及び/又は野菜汁を含有することが好ましく、アントシアニンを含む果汁を含有することがさらに好ましい。特にアントシアニンを含む果汁を含有することで、A/Bを上述した範囲内にすることが容易となり、上述した主効果を容易に得ることができる上に、果汁による果実感に優れるため、嗜好的に極めて好ましい容器詰炭酸飲料を得ることができる。ここで、本明細書において、果汁及び/又は野菜汁とは、果実及び/又は野菜に対し、搾汁、破砕、磨砕等の処理を行って得られるものであり、果汁、混濁果汁、透明果汁;野菜汁;果実及び/又は野菜の破砕物及び/又は磨砕物、並びにこれらの混合物等が挙げられるが、これらからさらに抽出・精製処理等により得られる抽出物・精製物等(例えば、色素等)は含まない。上記の果汁及び/又は野菜汁は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
アントシアニンを含有する果汁の原料となる果実の種類としては、本発明の効果が発揮される限りにおいて特に限定されることなく、例えば、ブドウ、カシス、ベリー類(ブルーベリー,ラズベリー,クランベリー,ビルベリー,ブラックベリー,ボイセンベリー,エルダーベリー,マルベリー等)、いちご、ハスカップ、プルーン、アサイー等が挙げられる。また、アントシアニンを含有する野菜汁の原料となる野菜の種類としては、例えば、紫キャベツ、赤キャベツ、紫タマネギ、シソ、ナス、紫トウモロコシ、有色素米、黒豆、小豆、黒ゴマ、有色素サツマイモ、ベニイモ等が挙げられる。上記の果実及び/又は野菜は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上述した中でも、ブドウ果汁を含有することがより好ましく、赤ブドウ果汁及び/又は黒ブドウ果汁を含有することが特に好ましい。ブドウは、その果皮や果実の色の違いにより白ブドウ、赤ブドウ、黒ブドウ等に分類され、このうち赤ブドウや黒ブドウの果皮及び果実にはアントシアニンが豊富に含まれている。しかし、上述したように、アントシアニンは光劣化を起こしやすいため、従来のブドウ果汁含有容器詰炭酸飲料においては、カラメル色素等の色素を添加したものしか存在しなかった。一方、色素を添加することにより、炭酸感が弱くなってしまうという問題があった。しかし、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制され、また炭酸の刺激感が強いものとなるため、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料にブドウ果汁を含有することで、光劣化が抑制され、炭酸の刺激感が強く、かつブドウ果汁による果実感が強い容器詰炭酸飲料を得ることができる。
【0032】
果汁及び/又は野菜汁は、常法により得ることができ、例えば、搾汁、破砕、磨砕等の処理により、さらに所望により裏ごしすることにより、得ることができる。搾汁する場合には、例えば、果実又は野菜(所望により洗浄し選別されたもの)を、クラッシャー等を用いて破砕し、リーマ等を用いて搾り取る方法、油圧プレス機、ローラー圧搾機やインライン搾汁機を用いて圧搾し搾汁する方法、パルパー・フィニッシャー等を用いて破砕し裏ごしする方法、並びにチューブヒーター等で加熱して殺菌及び酵素失活を行った後、エクストラクター等を用いて搾汁する方法が挙げられる。さらに、これらの方法に従って圧搾(搾汁)されたものを、所望により、ジューサーやホモジナイザーにかけたり、濃縮や殺菌を行ったりしても良い。
【0033】
破砕又は磨砕して果汁及び/又は野菜汁を得る場合には、例えば、原料としての果実又は野菜に対して、温める、煮る、蒸す等の加熱処理や、十分な水洗い、水にさらす、薬品処理する等の非加熱処理を施してから、ラインミキサー、エマルダー、カッターミル、ディスパー、ジューサーミキサー、マイルダー、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー等の装置を使用して、破砕又は磨砕する。裏ごしは、パルパー・フィニッシャー等の裏ごし機を使用して行うことができる。
【0034】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において、炭酸ガスのガスボリュームは、1.5〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.9であることがより好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましい。炭酸ガスのガスボリュームがこの範囲にあることで、炭酸によるほどよい刺激感が得られるため、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料が有する効果をさらに効果的に発揮させることができる。また、炭酸ガスのガスボリュームが上述した範囲にあることで、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができる。なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0035】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、水や、公知の飲料に含まれる材料(成分)、例えば、ビタミン類、甘味付与剤、酸味料、香料、ミネラル分、機能性成分等を、本実施形態による効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0036】
水は、飲用に適した水であればよく、例えば、純水、硬水、軟水、イオン交換水等のほか、これらの水を脱気処理した脱気水等が挙げられる。
【0037】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK及びビタミンB群等が挙げられる。
【0038】
甘味付与剤としては、糖類又は甘味料を使用することができ、糖類としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等が挙げられる。甘味料としては、例えば、砂糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等のほか、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料が挙げられる。また、ソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよいし、シュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。
【0039】
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等が好ましく、クエン酸が特に好ましい。
【0040】
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、植物の種実、根茎、木皮、葉等又はこれらの抽出物、乳又は乳製品、合成香料等が挙げられる。
【0041】
ミネラル分としては、例えば、カルシウム、カリウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛等が挙げられる。
【0042】
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、牡蠣エキス、キトサン、プロポリス、ローヤルゼリー、トコフェロール、ポリフェノール、梅エキス、アロエ、乳酸菌、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
【0043】
また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、着色料(色素)、ガム、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
【0044】
なお、着色料(色素)としては、本実施形態の効果を損なわない範囲で添加することも可能であるが、上述したように、色素を添加することにより容器詰炭酸飲料の製造過程において、炭酸飲料の容器への充填時に泡立ちが激しくなる傾向があり、そのため内容量がばらつくなど炭酸飲料の製造が困難になるという問題があった。そのため、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は色素を添加しないことが好ましく、特にカラメル色素を添加しないことが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料のpHは、2.7〜3.9であることが好ましく、2.7〜3.8であることがより好ましく、2.9〜3.8であることがさらに好ましい。容器詰炭酸飲料のpHが上記範囲内にあると、ほどよい酸味が得られ、嗜好的に好ましい飲料となる。また、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料が含有するアントシアニンは、pHによりその色調が変化するが、容器詰炭酸飲料におけるpHが上記範囲にあることで、上述したA/Bを本実施形態に規定する範囲内に収めることが容易となる。
【0046】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。さらに、本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、光劣化が抑制されたものとなるため、透明の飲料用容器(例えば、PETボトル等)を用いても良い。
【0047】
本実施形態に係る容器詰炭酸飲料は、上記A/Bが所定の範囲内となるようにアントシアニンを含有する組成物等を配合する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、アントシアニンを含有する組成物等を添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。
【0048】
以上の容器詰炭酸飲料は、炭酸感に優れるほか、アントシアニンを含有しながら光劣化が抑制され、特に長期間の光照射条件下においても色調が変化しないものとなる。また、本発明の実施形態に係る容器詰炭酸飲料に果汁及び/又は野菜汁を含有する場合においては、当該果汁及び/又は野菜汁による果実感及び/又は野菜感に優れたものとなる。
【0049】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0050】
以下、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0051】
〔容器詰炭酸飲料の製造(1)〕
水に、容器詰炭酸飲料における最終濃度が表1に示す濃度になるようにブドウ果汁、甘味料及びカラメル色素を添加し、さらに容器詰炭酸飲料における酸度が0.26になるように酸味料を添加し、かつpHを調整した後、98℃40秒間の殺菌を行い、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが表1に示す値になるよう、純水と無添加炭酸水とによって規定量にメスアップした後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃10分が確保できる後殺菌を行い、容器詰炭酸飲料を得た(試料1〜9)。
【0052】
<試験例1>吸光度及びpHの測定
試料1〜9の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、分光光度計(島津製作所社製,UV−1800)にて、光路長10ミリメートルの吸収セルを用い、520nmにおける吸光度Aと、430nmにおける吸光度Bとを測定し、かつ測定結果に基づきA/Bを算出した。また、pHメーターを用いてpHを測定した。結果を表1に示す。
【0053】
<試験例2>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1〜9の各容器詰炭酸飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、ガス内圧計を取り付けて、針先でキャップを穿孔し、一度活栓を開いてガス抜き(以下「スニフト」という。)し、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、ゲージの指針が一定の位置に達したときの値(MPa)を読み取り記録した。
【0054】
スニフトした後ガス内圧計を取り外し、開栓して温度計で液温を測定し記録した。測定して得たガス内圧力と液温を炭酸ガス吸収係数表に当てはめ、必要なガス内圧力の温度補正を行い、炭酸ガスボリュームを導いた。結果を表1に示す。
【0055】
<試験例3>官能評価
試料1〜9の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された7人のパネラーにより、5℃に冷却保管されたサンプル30mLを試飲することにより行った。次に示す基準で、炭酸感/刺激感及び果実感に4項目に関し5段階にて、また充填時の泡立ちに関し3段階にて評価した。最も多かった評価を表1に示す。
【0056】
=炭酸感/刺激感の評価=
5:強く刺激的である
4:やや強い
3:やや弱い
2:弱い
1:かなり弱い
【0057】
=果実感の評価=
5:味の厚みが際立ち果実感を強く感じる
4:味の厚みがあり果実感をやや強く感じる
3:味の厚みがあり果実感を感じる
2:味の厚みが弱いまたは苦渋味がやや強く果実感が弱い
1:味の厚みに乏しいまたは苦渋味が強すぎ果実感を感じない
【0058】
=充填時の泡立ちの評価=
○:多くない
△:やや多い
×:多すぎる
【0059】
また、炭酸感/刺激感の評点(c)と果実感の評点(d)との合計に充填時の泡立ちの評点(e)を乗じることにより、総合点を算出した。算出した総合点より、以下に示す基準にて総合評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
=総合評価=
○:総合点が20以上
△:総合点が10以上19以下
×:総合点が9以下
【0061】
<試験例4>光照射試験
上述した試料1〜5の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、5℃の環境下にて10000luxの光を2週間照射した後、試験例1と同様にして吸光度を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1に示すように、A/Bが1.3〜3.0である試料2〜6は、充填時の泡立ちが抑えられており、かつ炭酸感/刺激感と果実感とが感じられる、嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料であった。これに対し、試料8及び9は、430nm付近に極大吸収を有するカラメル色素が添加されたことにより、Bの値が大きくなったため、A/Bが1.3〜3.0の範囲を満たさないものとなった。この試料8及び9は、充填時の泡立ちが多く、炭酸感/刺激感と果実感とがいずれも低い値であり、嗜好的に好ましくないものであった。
【0065】
また、表2に示すように、製造直後のA/Bが1.3〜3.0である試料2〜5は、光照射環境下に長期間保管された場合であっても、色調の変化が認められず光劣化が抑制されていたのに対し、製造直後のA/Bが1.3未満であった試料1は、色調の変化すなわち光劣化が認められた。
【0066】
さらに、上述のように2週間保管された試料2〜5は、果汁感が若干減少する傾向にあるものの、光劣化により生じる香味(オフフレーバー)が認められず、香味は良好であった。
【0067】
以上より、A/Bが1.3〜3.0である容器詰炭酸飲料は、光劣化が抑制されるとともに、充填時の泡立ちが抑えられており、かつ炭酸感/刺激感と果実感とが感じられる、嗜好的に好ましい容器詰炭酸飲料であることが明らかとなった。
【0068】
<試験例5>アントシアニンの定量
試料4の容器詰炭酸飲料及び市販の100%グレープジュース(サンプル)について、Cassineseらの方法(C.Cassinese,ED.Combarieu,M.Falzoni,N.Fuzzati,R.Pace and N.Sardone,Journal of AOAC International,(2007) Vol.90,No.4,911-919)に記載の測定方法に従い、高速液体クロマトグラフィーにより、17種のアントシアニン(デルフィニジン−3−ガラクトシド,デルフィニジン−3−グルコシド,シアニジン−3−ガラクトシド,デルフィニジン−3−アラビノシド,デルフィニジン−3−ルチノシド,シアニジン−3−グルコシド,ペチュニジン−3−ガラクトシド,シアニジン−3−アラビノシド,シアニジン−3−ルチノシド,ペチュニジン−3−グルコシド,ペオニジン−3−ガラクトシド,ペチュニジン−3−アラビノシド,ペオニジン−3−グルコシド,マルビジン−3−ガラクトシド,ペオニジン−3−アラビノシド,マルビジン−3−グルコシド,マルビジン−3−アラビノシド)の含有量を測定した。また、上記の17種のアントシアニン含有量の合計を総アントシアニン含有量とした。総アントシアニン含有量及び主なアントシアニンの各含有量の結果を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
表3に示すように、試料4に含まれるアントシアニンと市販品に含まれるアントシアニンとでは、アントシアニンの組成が異なっており、特にマルビジン−3−グルコシドの含有量が高いものであった。このことが、試料4等における主効果の発揮に貢献している可能性が考えられた。
【0071】
〔容器詰炭酸飲料の製造(2)〕
容器詰炭酸飲料における最終濃度が表4に示す濃度になるように、ブドウ果汁及び甘味料を添加し、pHが表4に示す値になるように調整し、かつガスボリュームが表4に示す値になるように純水と無添加炭酸水とを使用した以外は上述と同様に、容器詰炭酸飲料を製造した(試料10〜17)。
【0072】
得られた試料10〜17の各容器詰炭酸飲料(サンプル)について、試験例1〜3と同様に、吸光度、pH及びガスボリュームを測定し、かつ官能評価を行った。なお、ここでは、サンプルのpHを3.2に調整せず、そのまま測定した。結果を表4に示す。また、比較のため、上述した試料4の結果を表4に再掲する。
【0073】
【表4】

【0074】
表4に示すように、pHを2.7から3.9まで変化させることにより、A、B及びA/Bの値は多少の変化が認められたが、いずれも官能評価の結果は良好であり、本発明の主効果が認められた。
【0075】
また、試料4からガスボリュームを変化させた試料16及び17においても、試料4と比較してA、B及びA/Bの値に大きな変化が認められず、かつ試料4と同様に本発明の主効果が認められた。
【0076】
<試験例6>pH調整による吸光度変化の測定
上述した試料11及び14について、製造後に、クエン酸ナトリウム(試料11に対し)又はクエン酸(試料14に対し)の粉末を添加し、飲料を希釈することなくpHを3.2(3.17〜3.23)に調整した後、試験例1と同様に吸光度を測定した。結果を表5に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
表5に示すように、pHが3.2とは異なる値に調整し製造された容器詰炭酸飲料である試料11及び14であっても、製造後にpHを3.2に調整すれば、pHを3.2に調整して製造された容器詰炭酸飲料である試料4と同様の吸光度を示すことが明らかとなった。ここで、上述したように、試料11及び14は試料4と同様に本発明の主効果を奏することが確認されている(表4を参照)。このことから、pHを3.2に調整したときのA/Bが1.3〜3.0である容器詰炭酸飲料であれば、本発明の主効果を奏することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、アントシアニンを含有しながら炭酸の刺激感が強く、かつアントシアニンの光劣化が抑制され、特に長期間の光照射条件下においても色調が変化しないものとして有用である。また、本発明の容器詰炭酸飲料に果汁及び/又は野菜汁を含有する場合においては、当該果汁及び/又は野菜汁による果実感及び/又は野菜感に優れた容器詰炭酸飲料が得られるため、本発明の容器詰炭酸飲料は、果実感に優れかつ炭酸による刺激感の強い容器詰炭酸飲料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料であって、
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bが1.3〜3.0である
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料。
【請求項2】
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの520nmにおける吸光度Aが0.3〜3.5であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項3】
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bが0.07〜3.4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項4】
果汁及び/又は野菜汁を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項5】
前記アントシアニンが、前記果汁及び/又は前記野菜汁に由来するものであることを特徴とする請求項4に記載の容器詰炭酸飲料。
【請求項6】
アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料の製造方法であって、
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整する
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料の製造方法。
【請求項7】
アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料の光劣化抑制方法であって、
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整する
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料の光劣化抑制方法。
【請求項8】
アントシアニンを含有する容器詰炭酸飲料の炭酸感改善方法であって、
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整する
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料の炭酸感改善方法。
【請求項9】
果汁及び/又は野菜汁を含有する容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法であって、
前記容器詰炭酸飲料のpHを3.17〜3.23に調整したときの430nmにおける吸光度Bに対する520nmにおける吸光度Aの比A/Bを、1.3〜3.0に調整する
ことを特徴とする容器詰炭酸飲料における果実感及び/又は野菜感の改善方法。

【公開番号】特開2013−59286(P2013−59286A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199991(P2011−199991)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【特許番号】特許第5119356号(P5119356)
【特許公報発行日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】