説明

容器詰飲料の製造方法

【課題】不快なエグ味が抑制された容器詰飲料の製造方法を提供すること。
【解決手段】茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、殺菌処理後の茶抽出液又は茶抽出物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不快なエグ味が抑制された容器詰飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果としては、コレステロール上昇抑制作用やαアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(特許文献1、2)。このような生理効果を発現させるためには、より簡便に大量のカテキン類を摂取することが有効であり、そのため飲料にカテキン類を高濃度配合する技術が望まれていた。この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物(特許文献3)などを利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法がある。
【0003】
茶の苦味を抑制し飲み易くする試みも数多くなされており、例えば、サイクロデキストリンを添加する技術が知られている(特許文献4、5)。
【0004】
一方、茶を抽出する方法によってはエグ味という不快な異味を発生する場合がある。茶系飲料以外では、このエグ味を抑制し飲み易くする試みも数多くなされており、スピラントールを含有する植物抽出物、ビセニン−2からなる高甘味度甘味料である呈味改善剤、トレハロースを添加する技術が知られている(例えば、特許文献6〜8参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−156614号公報
【特許文献2】特開平3−133928号公報
【特許文献3】特開昭59−219384号公報
【特許文献4】特開2004−73057号公報
【特許文献5】特開2004−159641号公報
【特許文献6】特開2006−223104号公報
【特許文献7】特開2006−238828号公報
【特許文献8】国際公開第2004/060077号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カテキン類を含有する飲料に甘味料を少量添加しただけでは不快なエグ味を十分に低減できず、他方甘味料を多量に添加すると茶本来の風味や香りを損ないやすい。したがって、甘味料を添加してエグ味を抑制する方法には限界がある。
そこで、本発明の目的は、不快なエグ味が抑制された容器詰飲料の製造方法、及びこの製造方法により得られた容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、非重合体カテキン類を含有する容器詰飲料のエグ味を抑制すべく検討した結果、茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を特定条件下で複数回殺菌処理を施すことにより、エグ味が低減した容器詰飲料が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の容器詰飲料の製造方法を提供するものである。
(1)茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
殺菌処理後の茶抽出液又は茶抽出物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。
(2)茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
緑茶抽出物の精製物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
殺菌処理後の茶抽出液又は茶抽出物、及び殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。
(3)緑茶抽出物の精製物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な操作により、不快なエグ味が抑制された容器詰飲料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の容器詰飲料は、茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を使用して製造されるが、本発明において、茶抽出液とは、茶から水を用いて抽出された液であって、濃縮や精製操作を行わない液のことをいう。また、茶抽出物とは茶抽出物の濃縮物及び精製物を包含する概念であり、茶抽出物の濃縮物とは茶を水により抽出した液から水分を一部除去したものをいう。その形態としては、固体、水溶液、スラリー状等の種々のものが挙げられる。市販品として、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物が挙げられる。また、茶抽出物の精製物としては、茶抽出物の濃縮物を水、又は水とエタノール等の有機溶媒との混合物に懸濁して生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去したものが挙げられ、茶から水により抽出した茶抽出液を濃縮したものを更に精製したもの、あるいは茶抽出液を直接精製したものを用いることができる。茶抽出物の精製物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものが挙げられる。
本発明においては、茶抽出液又は茶抽出物として、非重合体カテキン類の含有割合の高い緑茶抽出液又は緑茶抽出物が好適に使用される。
【0011】
茶としては不発酵茶を使用することができ、不発酵茶としてはCamellia属、例えば、C.sinensis、C.assamica、やぶきた種、及びそれらの雑種から選ばれる茶から製茶された、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等の緑茶が挙げられる。また、茶として半発酵茶又は発酵茶を用いてもよく、半発酵茶又は発酵茶としては、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica、やぶきた種、及びそれらの雑種から選ばれる茶から半発酵又は発酵工程を経て製茶された、紅茶、烏龍茶、黒茶等が挙げられる。これらのうち、発酵茶としては紅茶が好ましく、半発酵茶としては烏龍茶が好ましい。
【0012】
本発明においては、茶葉だけなく、茎茶、棒茶、芽茶を使用することができる。茎茶としては茶の茎の部分であって通常茎茶として用いられているものが挙げられ、また棒茶としては茶葉の軸や茎の部分であって通常棒茶として用いられているものが挙げられ、更に芽茶としては未だ葉にならない柔らかい芽の部分であって通常芽茶として用いられているものが挙げられる。
【0013】
抽出操作は、通常100℃以下の水を用いて行われるが、好ましい温度は50〜95℃であり、更に好ましくは60〜90℃であり、特に好ましくは65〜90℃である。このような温度条件を採用することで、非重合体カテキン類の回収率が高く、雑味成分の少ない茶抽出液を得ることができる。
【0014】
抽出に用いる水の量は、茶に対して5〜40質量倍、特に5〜25質量倍が好ましい。抽出時間は抽出方法及び抽出する際のスケールに依存し一様ではないが、例えば、1〜120分程度が好ましく、更に好ましくは1〜100分、特に好ましくは1〜80分である。使用する水は、水道水、蒸留水、イオン交換水等を適宜選択することが可能であるが、味の面からイオン交換水が好ましい。
【0015】
抽出方法は、ニーダー抽出、撹拌抽出(バッチ抽出)、向流抽出(ドリップ抽出)等の公知の方法を採用することができる。また、カラム中に茶を充填し、これに冷水を通過させる方法が、複数回の抽出を行う場合には風味がよい(例えば、特許第3629489号公報参照)。また、抽出時の水に、予めアスコルビン酸又はそのナトリウム塩などの有機酸又はその塩類を添加してもよい。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去するような、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を用いてもよい。
【0016】
次に、このようにして得られた茶抽出液又は茶抽出物(以下、「茶抽出液等」いう)を、不快なエグ味を除去するために殺菌処理する。茶抽出液等を飲用する際に苦味とは違ったエグ味を感じる場合があるが、エグ味は、茶成分のシュウ酸、タンパク質、更には繊維に起因すると一般的に言われているが明らかではない。本発明者らは、茶抽出液等に後述の殺菌処理を施すことによりエグ味の除去が可能になることを見出した。
【0017】
本工程における殺菌処理の条件は、次のとおりである。
殺菌温度は80℃以上130℃未満であるが、風味の観点から、殺菌温度の下限は85℃、特に好ましくは90℃であり、他方上限は、好ましくは120℃、特に好ましくは110℃である。
また、F値(日本防菌防黴学会編、防菌防黴ハンドブック、p642(技報堂出版)参照)は0.1分以上であるが、好ましくは1分以上、特に好ましくは3分以上である。他方、F値の上限は10分未満であるが、好ましくは8分以下、特に好ましくは6分以下である。このF値はレトルト食品の殺菌温度を規定するもので、121℃(250°F)、1分をF値=1と定義される。このような条件で殺菌することで、茶抽出液等のエグ味を十分に除去することができる。
【0018】
本発明の容器詰飲料は、緑茶抽出物の精製物を単独で又は上記した茶抽出液等と併用して製造することができるが、緑茶抽出物の精製物としては上記した茶抽出液等と同様に殺菌処理したものが使用される。殺菌処理した緑茶抽出物の精製物としては、緑茶抽出液等を殺菌処理後に精製物を調製したものを使用してもよいが、エグ味抑制の観点から、緑茶抽出液等から精製物を調製後に殺菌処理したものを使用することが好ましい。なお、殺菌条件は、加熱温度は80℃以上130℃未満であるが、85〜120℃、特に90〜110℃が好ましい。また、F値は0.1分以上10分未満であるが、0.5分以上8分未満、特に1分以上6分未満が好ましい。
このように、緑茶抽出物の精製物においても殺菌処理したものを使用することで、エグ味抑制効果が高められる。また、緑茶抽出物の精製物を併用することで、所望の非重合体カテキン類濃度の容器詰飲料を調製しやすくなる。
【0019】
本発明において使用する緑茶抽出物の精製物としては、緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒水溶液に懸濁させ、生じた沈殿を濾過する前に、活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも1種を添加して精製したものが好ましく、活性炭と、酸性白土又は活性白土とを添加して精製したものが特に好ましい。これにより、不快なエグ味をより一層低減することができる。
緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物を、活性炭、酸性白土及び活性白土と接触させる順序は特に限定されないが、例えば、緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物を水又は有機溶媒水溶液に分散又は溶解させた後、活性炭と、酸性白土又は活性白土に接触させる方法が好ましく採用される。
【0020】
精製に使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類が挙げられ、特に飲食品への使用を考慮すると、アルコール類、特にエタノールが好ましい。水としては、イオン交換水、蒸留水、水道水、天然水等が挙げられ、特に味の点からイオン交換水が好ましい。
緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物と、水又は有機溶媒水溶液との割合は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して、緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物(乾燥質量換算)を10〜40質量部、特に10〜30質量部添加して処理するのが、処理効率の点で好ましい。
接触処理には、10〜180分程度の熟成時間を設けることが好ましく、これらの処理は10〜60℃で行うことができ、更に10〜50℃、特に10〜40℃で行うのが好ましい。
有機溶媒水溶液中の有機溶媒と水との質量比は、非重合体カテキン類濃度の向上と茶由来の香料成分除去の観点から、99/1〜70/30、特に97/3〜75/25が好ましい。
【0021】
接触処理に用いる活性炭としては、市販品を使用することができ、例えば、ZN−50(北越炭素社製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D(クラレケミカル社製)、白鷲AW50、白鷲A、白鷲M、白鷲C(武田薬品工業社製)等が挙げられる。活性炭の細孔容積は0.01〜0.8mL/g、特に0.1〜0.8mL/gが好ましい。また、比表面積は800〜1600m2/g、特に900〜1500m2/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。
活性炭の使用量は、水又は有機溶媒水溶液100質量部に対して0.5〜8質量部、特に0.5〜3質量部とすることが、精製効率及びろ過工程におけるケーク抵抗が小さい点で好ましい。
【0022】
接触処理に用いる酸性白土及び活性白土は、ともに一般的な化学成分として、SiO2、Al23、Fe23、CaO、MgO等を含有するものであるが、SiO2/Al23比が3〜12、特に4〜9であるものが好ましい。また、Fe23を2〜5質量%、CaOを0〜1.5質量%、MgOを1〜7質量%含有する組成のものが好ましい。
酸性白土又は活性白土の比表面積は、50〜350m2/gが好ましく、pH(25℃、5質量%サスペンジョン)は2.5〜8、特に3.6〜7が好ましい。例えば、酸性白土としては、ミズカエース#600(水澤化学社製)等の市販品を用いることができる。
活性炭と、酸性白土及び活性白土との割合は、質量比で活性炭1に対して1〜10、特に1〜6が好ましい。
【0023】
また、緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物を、水又は有機溶媒水溶液で処理した後に、あるいは活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも1種で処理した後に、更にタンナーゼ処理をすることにより緑茶抽出物の精製物中の非重合体カテキン類のガレート体率を低下させることができる。ここで、本発明において、タンナーゼ処理とは、タンナーゼ活性を有する酵素で処理することをいい、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られるタンナーゼが挙げられる。このうちアスペルギルス オリーゼ由来のものが好ましい。
タンナーゼによる処理は、緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物中の非重合体カテキン類に対してタンナーゼを0.5〜10質量%の範囲になるように添加することが好ましい。タンナーゼ処理の温度は、酵素活性が得られる15〜40℃が好ましく、更に好ましくは20〜30℃である。タンナーゼ処理時のpH(25℃)は、酵素活性が得られる4〜6が好ましく、更に好ましくは4.5〜6であり、特に好ましくは5〜6である。
【0024】
タンナーゼ処理においては、タンナーゼ活性を有する酵素を添加後、非重合体カテキン類中のガレート体率が1〜60質量%に達するまで、緑茶抽出液又は緑茶抽出物の濃縮物を20〜50℃、特に20〜40℃に保持することが好ましい。この場合、非重合体カテキン類中のガレート体率は、3〜55質量%、特に5〜50質量%に調整することが好ましい。その後、できるだけ速やかに上記加熱温度まで昇温し上記F値にて加熱処理して、タンナーゼを失活させ反応を停止させる。これにより、タンナーゼの処理による苦味及び渋味の低減と、加熱処理によるエグ味の低減とが同時に実現できるため、製造工程の簡略化、作業コストの低減化を図りつつ、より一層エグ味が抑制された色調の良好な茶抽出物を得ることができる。また、タンナーゼの失活処理により、その後のガレート体率の低下を防止できるため、目的とするガレート体率を有する茶抽出物を簡便に得ることができる。
【0025】
次に、殺菌処理後の茶抽出液等に、必要により添加剤を配合して混合物(飲料組成物)を調製する。この場合、殺菌処理後の茶抽出液として濃縮したものを用いてもよい。
また、本発明においては、殺菌処理後の茶抽出液等に、殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物を配合して非重合体カテキン類の濃度を調整し、更に必要により添加剤を配合した混合物(飲料組成物)としてもよい。これにより、高濃度の非重合体カテキン類を含有する容器詰飲料を調製しやすくなる。配合方法としては、例えば、殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物の水溶液、あるいは殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物に、殺菌処理後の茶抽出液等を配合する方法が挙げられる。
【0026】
添加剤として、甘味料を配合することができる。甘味剤としては、例えば、炭水化物、糖アルコールが挙げられる。
炭水化物は、単糖、複合多糖、オリゴ糖、糖アルコール又はそれらの混合物を含むものである。単糖の例としてはテトロース、ペントース、ヘキソース及びケトヘキソースがある。ヘキソースの例は、ブドウ糖として知られるグルコースのようなアルドヘキソースである。果糖として知られるフルクトースはケトヘキソースである。単糖類の例としては、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、アガペエキス、蜂蜜等の混合単糖も使用できる。複合多糖としての好ましい例はマルトデキストリンである。さらに、多価アルコール、例えばグリセロール類も本発明で用いることができる。
【0027】
炭水化物としては、非重合体カテキン類の保存安定性の向上や最適な甘味を得るために非還元性の糖類又は糖アルコールがより好ましく、カロリーの観点から糖アルコールが特に好ましい。また、これらを併用することもできる。
非還元性の糖類としてはオリゴ糖があるが、例えば、二糖類としてスクロース、マルトース、ラクトース、セルビオース、トレハロース、三糖類としてラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアノース、四糖類としてスタキオ−ス等が挙げられる。このオリゴ糖の重要なタイプは二糖であり、代表例はサトウキビ、サトウダイコンから得られるショ糖又はテンサイ糖として知られるスクロースである。製品としては精製糖であるグラニュー糖、車糖、加工糖、液糖、シュガーケーンやメイプルシロップ等が使用できる。
糖アルコールとしては、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、パラチノース、マンニトール、タガトース等が好ましい。これら炭水化物の中でも、カロリーが少ないエリスリトールが最適である。
【0028】
これらの甘味料は、本発明の容器詰飲料中に0.0001〜20質量%、更に0.001〜15質量%、特に0.01〜10質量%となる量を配合することが好ましい。本発明の容器詰飲料は、ショ糖を1としたときの甘味度が2以上であることが好ましい(参考文献:JISZ8144、官能評価分析−用語、番号3011、甘味;JISZ9080、官能評価分析−方法、試験方法;飲料用語辞典4−2甘味度の分類、資料11(ビバレッジジャパン社);特性等級試験mAG試験、ISO 6564−1985(E)、「Sensory Analysis-Methodology-Flavour profile method」等)。一方、甘味度が8以下であると、甘味による喉にひっかかる感覚を抑制でき喉越しが優れるようになる。尚、これらの炭水化物は茶の成分由来のものも含まれる。
【0029】
本発明の容器詰飲料には、更に前記炭水化物以外の天然甘味料又は人工甘味料を配合することができる。その配合量は、本発明の容器詰飲料中に0.0001〜20質量%、更に0.001〜15質量%、特に0.001〜10質量%となる量が好ましい。人工甘味料の例にはアスパルテーム、スクラロース、サッカリン、シクラメート、アセスルフェーム−K、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味料、L−アスパルチル−D−アラニンアミド、L−アスパルチル−D−セリンアミド、L−アスパルチル−ヒドロキシメチルアルカンアミド甘味料、L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド甘味料などの高甘味度甘味料、ソーマチン、グリチルリチン、合成アルコキシ芳香族化合物等がある。さらにステビオシド及び他の天然源の甘味料も使用できる。
【0030】
本発明の容器詰飲料には、ナトリウム及びカリウムを含有させることができる。ここで、ナトリウム及びカリウムの合計濃度は、本発明の容器詰飲料中に0.001〜0.5質量%となる量が好ましい。
【0031】
ナトリウムの具体例としては、アスコルビン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等及びそれらの混合物のような容易に入手しうるナトリウム塩を配合してもよいし、加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。ナトリウム濃度が高くなるほど、飲料の変色する度合いが高くなる。また、生理効果及び安定性の観点から、ナトリウムの配合量は、本発明の容器詰飲料中に、好ましくは0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.002〜0.4質量%、更に好ましくは0.003〜0.2質量%となる量である。
【0032】
カリウムの具体例としては、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム等又はそれらの混合物のようなカリウム塩を配合してもよいし、加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。カリウム濃度は、ナトリウム濃度に比べて、長期間高温保存時での色調への影響が大きい。安定性の観点から、カリウムの配合量は、本発明の容器詰飲料中に、好ましくは0.001〜0.2質量%、より好ましくは0.002〜0.15質量%、更に好ましくは0.003〜0.12質量%となる量である。
【0033】
本発明の容器詰飲料には、ヒドロキシカルボン酸、コハク酸、フマル酸、リン酸、及びそれらの塩から選ばれる1種以上を酸味料として配合することができる。適度な酸味を得るにはこれらの酸とそれらの塩類との併用が好ましい。フマル酸ナトリウム等が挙げられる。その他の酸味料としては、アジピン酸、天然成分から抽出した果汁類が挙げられる。これらの酸味料は本発明の容器詰飲料中に0.01〜0.5質量%、特に0.02〜0.3質量%となる量を配合することが好ましい。また無機酸類、無機酸塩類も使用することができ、無機酸類、無機酸塩類としてはリン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、メタリン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム等が挙げられる。これらの無機酸類、無機酸塩類は、容器詰飲料中に0.01〜0.5質量%、特に0.02〜0.3質量%となる量を配合することが好ましい。
【0034】
本発明の容器詰飲料には、嗜好性を高めるため香料(フレーバー)や果汁(フルーツジュース)を配合できる。具体的な例としては天然又は合成香料や果汁であり、これらはフルーツジュース、フルーツフレーバー、植物フレーバー又はそれらの混合物から選択できる。特に、フルーツジュースと一緒に茶フレーバー、好ましくは緑茶又は黒茶フレーバーの組合せが魅力的な味を有している。果汁はリンゴ、ナシ、レモン、ライム、マンダリン、グレープフルーツ、クランベリー、オレンジ、ストロベリー、ブドウ、キゥイ、パイナップル、パッションフルーツ、マンゴ、グァバ、ラズベリー及びチェリーを使用できる。好ましくは、シトラスジュース、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、マンダリン、マンゴ、パッションフルーツ及びグァバのジュース、又はそれらの混合物が最も好ましい。果汁は容器詰飲料中に0.001〜20重量%、更に0.002〜10重量%となる量を配合することが好ましい。好ましい天然フレーバーはジャスミン、カミツレ、バラ、ペパーミント、サンザシ、キク、ヒシ、サトウキビ、レイシ、タケノコ等である。特に好ましい香料はオレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー及びグレープフルーツフレーバーを含めたシトラスフレーバーである。シトラスフレーバーに併せて、リンゴフレーバー、ブドウフレーバー、ラズベリーフレーバー、クランベリーフレーバー、チェリーフレーバー、パイナップルフレーバー等のような様々な他のフルーツフレーバーが使用できる。これらのフレーバーはフルーツジュース及び香油のような天然源から誘導しても、又は合成してもよい。香料には、様々なフレーバーのブレンド、例えばレモン及びライムフレーバー、シトラスフレーバーと選択されたスパイス(典型的コーラソフトドリンクフレーバー)等を含めることができる。このような香料は容器詰飲料中に0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜3重量%となる量を配合することができる。
【0035】
本発明の容器詰飲料には、更にナトリウム及びカリウム以外のミネラルを含有させることができる。好ましいミネラルはカルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛である。特に好ましいミネラルはマグネシウム、リン及び鉄である。これらのミネラルは、飲料1本当たり1日所要量(米国RDI基準:US2005/0003068記載:U.S.Reference Daily Intake)の少なくとも10質量%以上であることが好ましい。
【0036】
本発明の容器詰飲料には、更にビタミンを含有させることができ、好ましくは、ビタミンA、ビタミンB及びビタミンEが加えられる。またビタミンDのような他のビタミンを加えてもよい。ビタミンBとしてはイノシトール、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、リボフラビン、リボフラビン5’−リン酸エステルナトリウム、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシン塩酸塩、シアノコバラミン、葉酸、ビオチンから選ばれるビタミンB群が挙げられる。これらのビタミンは、飲料1本当たり1日所要量(米国RDI基準:US2005/0003068記載:U.S.Reference Daily Intake)の少なくとも10質量%以上であることが好ましい。
【0037】
本発明の容器詰飲料には、茶由来の成分にあわせて、酸化防止剤、各種エステル類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、野菜エキス類、花蜜エキス類、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0038】
これら混合物(飲料組成物)の殺菌処理は、80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で行われるが、殺菌処理は、容器等に充填した後に行ってもよいし、充填前に行ってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、瓶等の容器に充填後、殺菌処理を行うことができる。
【0039】
殺菌方法としては、飲料を製造する一般的な方法であるUHT殺菌やレトルト殺菌が挙げられる。本発明においては、飲料のpHによりF値を変更することが好ましく、例えば、pH5.0〜6.5(25℃、以下、同様である。)の中性飲料の場合、F値は0.5〜40分が好ましく、更に5〜40分、特に10〜40分が好ましい。また、pH2.0〜5.0未満の酸性飲料の場合、加熱による風味劣化回避の観点から、F値は0.001〜0.5分が好ましく、特に0.001〜0.1分が好ましい。なお、殺菌温度は液性を問わず80〜138℃であるが、殺菌後の風味の観点から、好ましくは85〜135℃、特に好ましくは90〜131℃である。
【0040】
また、本発明においては、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器のようにUHT殺菌やレトルト殺菌できないものについては、例えば、プレート式熱交換器等で上記と同等の条件で殺菌後、一定温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【0041】
このようにして本発明の容器詰飲料が得られるが、容器詰飲料中の(A)非重合体カテキン類の含有量は0.05〜0.5質量%が好ましく、更に好ましくは0.08〜0.25質量%、特に好ましくは0.1〜0.2質量%である。非重合体カテキン類の含有量が上記範囲にあると、多量の非重合カテキン類を容易に摂取でき、また風味変化が少ない点からも好ましい。ここで、(A)非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0042】
また、(A)非重合体カテキン類中の(B)非重合体カテキン類のガレート体率は5〜50質量%が好ましく、より好ましくは30〜50質量%、更に好ましくは40〜50質量%である。ここで、(B)非重合体カテキン類のカレート体率とは、エピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びカテキンガレートからなる総称ガレート体の(A)非重合体カテキン類に対する割合をいう。
【0043】
また、本発明の容器詰飲料中の非重合体カテキンガレート体の濃度は、30〜100mg/100mLの範囲であれば後味のキレがよくなるため好ましい。
【0044】
また、(A)非重合体カテキン類と、(C)カフェインとの質量比[(C)/(A)]は、0.0001〜0.16が好ましく、より好ましくは0.001〜0.15、更に好ましくは0.01〜0.14、特に好ましくは0.05〜0.13である。非重合体カテキン類に対するカフェインの比率が上記範囲であると、風味バランスが十分であり、飲料の色調の点からも好ましい。カフェインは、原料として用いる茶抽出液等、香料、果汁及び他の成分中に天然で存在するカフェインであっても、新たに加えられたカフェインであってもよい。
【0045】
また、本発明の容器詰飲料は、茶系飲料とすることも、非茶系飲料とすることもできる。茶系飲料としては、緑茶飲料等の不発酵茶飲料、烏龍茶飲料等の半発酵茶飲料、紅茶飲料等の発酵茶飲料が挙げられる。また、非茶系飲料としては、機能性飲料とすることもでき、例えばエンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、スポーツドリンク、ニアウォーター等が挙げられ、更に発泡性飲料とすることもできる。発泡性飲料とするには、例えば、さらにレモン及びライムフレーバー、シトラスフレーバー、コーラフレーバーなどを配合し、耐圧容器にガス圧1〜4kg/cm2で炭酸を充填する。
【0046】
本発明の容器詰飲料のカロリーは、低カロリーである40kcal/240mL以下が好ましく、さらに好ましくは2〜35kcal/240mL以下、特に好ましくは3〜30kcal/240mL以下である。
【0047】
本発明の容器詰飲料は、風味及び保存安定性の観点から、pH(25℃)2.5〜6.5、2.5〜6.2、2.8〜5.0、3.0〜4.5、特に3.8〜4.2が好ましい。すなわち、pHが2.5〜6.5であると、長期保存時において併用する炭水化物との反応などによる非重合体カテキン類の減少が防止される。pHの調整は、アスコルビン酸又はその塩やクエン酸などで前記範囲にすることができ、これにより、長期保存が可能で適度な酸味を有する飲料となる。
【実施例】
【0048】
(非重合体カテキン類、カフェインの測定)
試料をイオン交換水で100gに希釈した後、メンブランフィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着した、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用いて、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0049】
濃度勾配条件(体積%)
時間 移動相A 移動相B
0分 97% 3%
5分 97% 3%
37分 80% 20%
43分 80% 20%
43.5分 0% 100%
48.5分 0% 100%
49分 97% 3%
62分 97% 3%
【0050】
[エグ味の評価]
保存後の容器詰飲料についてパネラー5名による飲用試験を実施した。評価項目は飲用後に残るエグ味の強さであり、個々の評価結果を協議の上まとめた。
(評価基準)
A:飲料として飲用上優れている。
B:飲料として飲用上問題ない。
C:飲料としてやや劣るが飲用できる。
D:異味があり飲用には不適である。
【0051】
実施例1
(緑茶抽出液1の製造)
ニーダー中に65℃に加熱したイオン交換水4,320gと、宮崎産の緑茶葉144gを入れ、5分間撹拌抽出した。その後茶葉分離板で茶葉を取り除いた抽出液をビーカーに移し、98℃に設定した温浴に13分浸漬して加熱殺菌した(F値4分)。その後25℃以下に冷却して緑茶抽出液1を得た。
(緑茶抽出物の精製物1の製造)
市販の緑茶抽出物の濃縮物(三井農林(株)「ポリフェノンHG」)100gを、25℃、200r/minの攪拌条件下で、95質量%エタノール水溶液900g中に懸濁させ、活性炭(クラレコールGLC、クラレケミカル社製)20gと酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)50gを投入後、約10分間攪拌を続けた。次いで、25℃で約30分間の攪拌処理を続けた。2号濾紙で活性炭、酸性白土、及び沈殿物を濾過した後、0.2μmメンブランフィルターによって再濾過を行った。最後にイオン交換水200gを濾過液に添加し、40℃、3.3kPaでエタノールを留去し、減圧濃縮を行った。このうち750gをステンレス容器に投入し、イオン交換水で全量を10,000gとし、5質量%重炭酸ナトリウム水溶液30gを添加してpH5.5に調整した。次いで、22℃、150r/minの攪拌条件下で、イオン交換水10.7g中にタンナーゼKTFH(Industrial Grade、500U/g以上、キッコーマン社製)2.7gを溶解した液を添加し、30分後にpHが4.24に低下した時点で酵素反応を終了した。次いで、95℃の温浴にステンレス容器を浸漬し、98℃で13分間保持(F値4分)して酵素活性を完全に失活させると同時に殺菌処理を行い、25℃まで冷却し、濃縮処理後、緑茶抽出物の精製物1を得た。
(容器詰緑茶飲料の製造)
緑茶抽出液1にサイクロデキストリンとアスコルビン酸ナトリウムを配合して調合液を得た。次いで、緑茶抽出物の精製物1と調合液を混合し、茶飲料中の非重合体カテキン類濃度を調節後、緑茶香料を添加し、10質量%重曹水でpHを調整した。そして、この液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.5分、F値40分)した。得られた容器詰緑茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0052】
実施例2
(緑茶抽出液2の製造)
宮崎産の緑茶葉100gを閉鎖型抽出カラム(内径70mm、高さ137mm)に充填し、65℃に加熱したイオン交換水3,000gをカラム下方から上方に0.5L/minの速度で15分間循環通液した後タンクに回収した。このとき、初期の茶葉仕込み高さは75mm、線速度は13.0cm/min、平均滞留時間は1.1minであった。次いで、タンクに回収した抽出液を98℃、13分間、加熱殺菌した(F値4分)。その後25℃以下に冷却して緑茶抽出液2を得た。
(緑茶抽出物の精製物1の製造)
実施例1と同様の方法により、緑茶抽出物の精製物1を得た。
(容器詰緑茶飲料の製造)
緑茶抽出液1に代えて緑茶抽出液2を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、容器詰緑茶飲料を得た。得られた容器詰緑茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0053】
実施例3
(緑茶抽出液1の製造)
実施例1と同様の方法により、緑茶抽出液1を得た。
(緑茶抽出物の精製物2の製造)
ケニア産CTC緑茶葉1,200gを90℃の脱イオン水24,000gで10分間抽出、冷却、搾汁後、金網によりろ過し、19,120gの緑茶抽出液を回収した。次いで、濃縮操作を行った後、98℃に設定した熱交換器に13分の滞留時間(F値4分)で通液することにより殺菌処理し、次に噴霧乾燥を行い382gの緑茶抽出物の濃縮物を得た。得られた緑茶抽出物の濃縮物のうち100gを90.0質量%エタノール900gに分散させ、30分熟成し、2号濾紙及び孔径0.2μmの濾紙で濾過し、水200mLを加えて減圧濃縮を行い、緑茶抽出物の精製物2を得た。
(容器詰緑茶飲料の製造)
緑茶抽出物の精製物1に代えて緑茶抽出物の精製物2を用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、容器詰緑茶飲料を得た。得られた容器詰緑茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0054】
実施例4
(緑茶抽出物の濃縮物の製造)
撹拌機を設置したビーカーに65℃に加熱したイオン交換水8,640gと、中国産の緑茶葉288gを入れ、5分間撹拌抽出した。その後茶葉を取り除いた抽出液をビーカーに移し、98℃に設定した温浴に13分浸漬し加熱殺菌した(F値4分)。その後25℃以下に冷却して緑茶抽出液を得た。次に濃縮操作と噴霧乾燥を行い、150gの緑茶抽出物の濃縮物を得た。
(緑茶抽出物の精製物1の製造)
実施例1と同様の方法により、緑茶抽出物の精製物1を得た。
(容器詰緑茶飲料の製造)
緑茶抽出物の精製物1、緑茶抽出物の濃縮物、無水クエン酸、10質量%重曹水を水に溶解した。次に、無水結晶果糖、エリスリトール、無水クエン酸、アスコルビン酸、緑茶香料、10質量%重曹水を添加してpHを調整し、全量を1,000gとした。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.5分、F値40分)した。得られた容器詰緑茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0055】
実施例5
(紅茶抽出物の濃縮物の製造)
撹拌機を設置したビーカーに85℃に加熱したイオン交換水8,640gと、ケニア産のCTC紅茶葉288gを入れ、5分間撹拌抽出した。茶葉を取り除いた抽出液をビーカーに移し、98℃に設定した温浴に13分浸漬した(F値4分)。その後25℃以下に冷却して紅茶抽出液を得た。次に濃縮操作と噴霧乾燥を行い、150gの紅茶抽出物の濃縮物を得た。
(緑茶抽出物の精製物1の製造)
実施例1と同様の方法により、緑茶抽出物の精製物1を得た。
(容器詰紅茶飲料の製造)
緑茶抽出物の精製物1、紅茶抽出液の濃縮物、無水クエン酸、10質量%重曹水を溶解した。次に、無水結晶果糖、エリスリトール、アスコルビン酸、紅茶香料を添加して全量を1,000gとした。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度98℃、殺菌時間0.5分、F値0.0015分)した。得られた容器詰紅茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0056】
実施例6
(烏龍茶抽出液1の製造)
80メッシュの金網を備えた内径97mmのカラム式抽出機に烏龍茶葉281gを仕込み、高さが均一になるように茶葉上面を平らにした。次いで、0.40質量%重曹水(70℃)を、カラム上方からシャワーして供給すると同時に、抽出液をカラム下方から抜き出した。烏龍茶葉仕込み質量に対して5倍質量を供給した後、シャワーをイオン交換水(90℃)に代えて供給しながら、引き続き抽出液をカラム下方から抜き出した。抜き出した抽出液の質量が烏龍茶葉仕込み質量の50倍になったところで終了し、烏龍茶抽出液を均一に混合した。次いで、タンクに回収した抽出液を98℃、13分間、加熱殺菌した(F値4分)。その後25℃以下に冷却して烏龍茶抽出液1を得た。
(緑茶抽出物の精製物1の製造)
実施例1と同様の方法により、緑茶抽出物の精製物1を得た。
(容器詰烏龍茶飲料の製造)
烏龍茶抽出液1にサイクロデキストリンとアスコルビン酸ナトリウムを配合して調合液を得た。次に、緑茶抽出物の精製物1と調合液を混合し、烏龍茶飲料中の非重合体カテキン類濃度を調節後、烏龍茶香料を添加し、重曹でpHを調整した。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.5分、F値40分)を行った。得られた容器詰烏龍茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
(容器詰非茶系飲料の製造)
実施例1で得られた緑茶抽出物の精製物1に、無水結晶ブドウ糖、エリスリトール、スクラロース、無水クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、食塩、グレープフルーツ香料、グレープフルーツ果汁、サイクロデキストリンを添加し、イオン交換水で全量を1,000gとした。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度98℃、殺菌時間0.5分、F値0.0015分)した。得られた容器詰非茶系飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0058】
実施例8
(容器詰非茶系飲料の製造)
実施例1で得られた緑茶抽出物の精製物1と、無水クエン酸と、10質量%重曹水とを溶解した。次に、この液に無水結晶果糖、エリスリトール、アスコルビン酸、レモンライム香料を添加して全量を1,000gとした。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度98℃、殺菌時間0.5分、F値0.0015分)した。得られた容器詰非茶系飲料の組成、エグ味の評価の結果を表1に示す。
【0059】
比較例1
(緑茶抽出液3の製造)
加熱殺菌を行わなかったこと以外は実施例1と同様の方法により緑茶抽出液3を製造した。
(緑茶抽出物の精製物3の製造)
加熱殺菌を行わなかったこと以外は実施例3と同様の方法により緑茶抽出物の精製物3を製造した。
(容器詰緑茶飲料の製造)
緑茶抽出液3に、サイクロデキストリンとアスコルビン酸ナトリウムを配合して調合液を得た。次いで、緑茶抽出物の精製物3と調合液を混合し、茶飲料中の非重合体カテキン類濃度を調節後、緑茶香料を添加し、10質量%重曹水でpHを調整した。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.5分、F値40分)を行った。得られた容器詰緑茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表2に示す。
【0060】
比較例2
(緑茶抽出液4の製造)
ニーダー中に65℃に加熱したイオン交換水4,320gと、宮崎産の緑茶葉144gを入れ、5分間撹拌抽出した。その後、茶葉分離板で茶葉を取り除いた抽出液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.1分、F値15分)を行った。その後、25℃以下に冷却して緑茶抽出液4を得た。
(緑茶抽出物の精製物3の製造)
138℃、殺菌時間0.1分(F値15分)の加熱殺菌を行なったこと以外は実施例3と同様の方法により緑茶抽出物の精製物4を製造した。
(容器詰緑茶飲料の製造)
緑茶抽出液4に、サイクロデキストリンとアスコルビン酸ナトリウムを配合して調合液を得た。次いで、緑茶抽出物の精製物4と調合液を混合し、茶飲料中の非重合体カテキン類濃度を調節後、緑茶香料を添加し、10質量%重曹水でpHを調整した。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.5分、F値40分)した。得られた容器詰緑茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表2に示す。
【0061】
比較例3
(烏龍茶抽出液2の製造)
加熱殺菌を行わなかったこと以外は実施例6と同様の方法により烏龍茶抽出液2を製造した。
(緑茶抽出物の精製物3の製造)
加熱殺菌を行わなかったこと以外は実施例3と同様の方法により緑茶抽出物の精製物3を製造した。
(容器詰烏龍茶飲料の製造)
烏龍茶抽出液2に、サイクロデキストリンとアスコルビン酸ナトリウムを配合して調合液を得た。次いで、緑茶抽出物の精製物3と調合液を混合し、烏龍茶飲料中の非重合体カテキン類濃度を調節後、烏龍茶香料を添加し、10質量%重曹水でpHを調整した。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度138℃、殺菌時間0.5分、F値40分)した。得られた容器詰烏龍茶飲料の組成、エグ味の評価の結果を表2に示す。
【0062】
比較例4
(容器詰非茶系飲料の製造)
比較例1で得られた緑茶抽出物の精製物3に、ブドウ糖、エリスリトール、スクラロース、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、食塩、グレープフルーツ香料、グレープフルーツ果汁、サイクロデキストリンを添加し、イオン交換水で全量を1,000gとした。最後にこの液をUHT殺菌処理(殺菌温度98℃、殺菌時間0.5分、F値0.0015分)した。得られた容器詰非茶系飲料の組成、エグ味の評価の結果を表2に示す。
【0063】
表1、2から、本発明の製造方法により得られた容器詰飲料は、エグ味が低減していることが明らかである。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
殺菌処理後の茶抽出液又は茶抽出物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。
【請求項2】
茶から得られた茶抽出液又は茶抽出物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
緑茶抽出物の精製物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
殺菌処理後の茶抽出液又は茶抽出物、及び殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。
【請求項3】
緑茶抽出物の精製物を80℃以上130℃未満の温度、かつF値0.1分以上10分未満の条件で殺菌処理する工程と、
殺菌処理後の緑茶抽出物の精製物を含む混合物を80〜138℃の温度、かつF値0.001〜40分の条件で殺菌処理する工程とを含む容器詰飲料の製造方法。
【請求項4】
茶抽出液又は茶抽出物が緑茶から得られたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
茶抽出液又は茶抽出物が半発酵茶又は紅茶から得られたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
(A)非重合体カテキン類の含有量が0.05〜0.5質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
(B)非重合体カテキン類のガレート体率が5〜50質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により得られた容器詰飲料。

【公開番号】特開2009−55908(P2009−55908A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203727(P2008−203727)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】