説明

容器詰飲料

【課題】 食物繊維由来の濁りや変色が生じにくく経時的に安定な野菜搾汁含有容器詰飲料の提供。
【解決手段】 アルギン酸又はその塩の配合時の飲料のpHが5〜7.5であって、次いでpHを3.7〜4.6に調整したものである野菜搾汁含有容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸又はその塩を配合した安定で飲みやすい容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
健康意識の高まる中、近年、日本人に不足がちな食物繊維を効果的に摂取する要望が高くなってきている。多量の食物繊維を無理なく摂取するには飲料形態が望ましく、更に多量の食物繊維を配合しても粘性が上がらず飲みやすいようにするためには、低分子化した粘性の低い食物繊維素材を用いることが望ましい。そのような低分子化した食物繊維素材としては、ウロン酸を構成糖に含有する水溶性酸性多糖類であるアルギン酸ナトリウムが挙げられる(特許文献1)。
しかしながら、低pH飲料においては製造後の溶解状態が安定ではなく、食物繊維が液中に分散した状態となり濁りや変色を生じやすい。
【特許文献1】特開2000−232855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、食物繊維由来の濁りや変色が生じにくく経時的に安定な容器詰飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、アルギン酸又はその塩を配合した容器詰飲料の経時安定性を改善すべく種々検討したところ、アルギン酸又はその塩を含有する飲料の配合時のpHを一度5以上に調整した後、次いでより低いpHに調整する二段階pH調整を行うことにより、食物繊維の濁りや変色が生じにくい安定な野菜搾汁含有容器詰飲料が得られることを見出した。
【0005】
すなわち、本発明は、アルギン酸又はその塩の配合時の飲料のpHが5〜7.5であって、次いでpHを3.7〜4.6に調整したものである野菜搾汁含有容器詰飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の野菜汁含有容器詰飲料は、食物繊維由来の濁りを生じにくく、またアルギン酸又はその塩由来の塩味がマスキングされ、飲みやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の容器詰飲料で使用するアルギン酸塩は、アルギン酸アルカリ金属塩が好ましく、更に低分子化アルギン酸アルカリ金属塩が好ましく、特に低分子化アルギン酸ナトリウムが好ましい。また、アルギン酸又はその塩の分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量が20万以下、さらに1,000〜100,000、特に1,000〜60,000のものが好ましい。
【0008】
アルギン酸又はその塩は、食物繊維による便通改善効果及び整腸効果の点で、容器詰飲料中に1〜15重量%、さらに2〜10重量%、特に3〜8重量%であるのが好ましい。
【0009】
本発明で使用される野菜の搾汁としては、トマト、ニンジン、ホウレン草、キャベツ、ピーマン、ブロッコリー、セロリ等が挙げられる。これら野菜搾汁は、アルギン酸又はその塩由来の塩味をマスキングする点で有効である。野菜搾汁は、飲料全体中の80質量%以上であることが好ましく、さらに90質量%以上が好ましい。
【0010】
本発明の容器詰飲料は、例えば後述の製造方法で製造されるが、アルギン酸又はその塩を配合するときのpH及びアルギン酸又はその塩を配合した後のpHをそれぞれ一定の範囲に調整することを要する。
まず、アルギン酸又はその塩の配合時のpHを5〜7.5に調整することを要するが、このpHは、特に6〜7.2であるのが好ましい。水溶液の安定性を高める目的からアルギン酸又はその塩の配合時のpHは5以上が好ましく、飲料の塩味を抑える目的からは7.5以下が好ましい。
pHを5〜7.5に調整した後、次いでpHを3.7〜4.6、特に3.8〜4.2に調整することにより、食物繊維由来の濁りを生じにくい、安定な野菜汁含有飲料が得られる。
なお、あらかじめ調製された1質量%水溶液とした場合にpHが5〜7.5となるアルギン酸又はその塩を1〜15質量%配合し、pHを3.7〜4.6に調整した野菜搾汁含有容器詰飲料も本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明におけるpH調整は、容器詰飲料中の成分の種類、配合量等により異なるが、pH調整剤を用いて行うことが好ましい。ここで使用するpH調整剤としては例えば、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機及び無機の食用酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリが挙げられる。好ましい酸は、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、リン酸又はそれらの混合物を含めた食用有機酸である。特に好ましい酸はクエン酸及びリンゴ酸である。 酸味料は飲料成分を安定化させる酸化防止剤としても役立つ。
【0012】
本発明の容器詰飲料には、上記成分のほか、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、花蜜エキス類、品質安定剤等の任意成分を、適宜その目的に応じて単独又は併用して配合できる。
【0013】
例えば、酸化防止剤としては、アスコルビン酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)及びそれらの塩、植物抽出エキス等を使用してもよい。
【0014】
甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパラテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。
【0015】
本発明の容器詰飲料には、ビタミンをさらに含有させることができる。好ましくは、ビタミンA、ビタミンC及びビタミンEが加えられる。ビタミンD及びビタミンBのような他のビタミンを加えてもよい。
【0016】
本発明の容器詰飲料に使用される容器は、一般の容器詰飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(PETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態の容器を使用することができる。亜硫酸塩成分が鉄に作用して、硫化水素が発生するので、鉄イオンの溶出しない容器が好ましい。特に、透明容器のPETボトルが好ましく、リキャップ性に優れているという観点から好ましい容器である。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0017】
本発明の容器詰飲料の好ましい製造法として、例えば、アルギン酸又はその塩及び野菜搾汁を、水に分散、溶解し、更に適宜他の成分を加えて、常法により攪拌し、pHを二段階で調整し、加熱殺菌し、次いで室温まで冷却して、PETボトル等の容器に充填して製造する方法が挙げられる。
【0018】
容器詰飲料の製造時の加熱は、特に制限されず、例えば、加熱殺菌工程における加熱であってもよい。この際、加熱は110〜140℃、において、0.5〜10分間行うのが、外観の経時安定性の点で好ましい。
容器詰飲料の製造時における加熱は、例えば、(1)金属缶容器等の加熱殺菌できる容器は、容器詰してからの食品衛生法に定められた殺菌条件で加熱殺菌して製造する;(2)PETボトル、紙容器等のレトルト殺菌できない容器は、あらかじめ飲料を殺菌、例えばプレート式熱交換器等を用い高温短時間で殺菌する工程を経て、一定の温度まで冷却して容器に充填する製造等の方法が好ましい。
【実施例】
【0019】
実施例1、2及び比較例1
トマト汁を用いて表1の配合処方の野菜飲料組成物を調製し、10質量%のクエン酸水溶液でpH調整(pH調整1)し、次いで1質量%重炭酸ナトリウム水溶液でpH調整(pH調整2)した後、更に85℃で30分加熱殺菌してからPETボトルに充填して野菜搾汁含有容器詰飲料を製造した。
野菜搾汁含有容器詰飲料を−20℃で凍結後、解凍し、4℃条件下で1日保存して、変色の有無を目視で調べた。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明の野菜搾汁含有容器詰飲料は変色せず、また濁りを生じなく、経時安定性に優れていた。更に、本発明の野菜搾汁含有容器詰飲料は、飲みやすかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸又はその塩の配合時の飲料のpHが5〜7.5であって、次いでpHを3.7〜4.6に調整したものである野菜搾汁含有容器詰飲料。

【公開番号】特開2006−271255(P2006−271255A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95058(P2005−95058)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】