容器開栓動作における負担評価方法、負担評価装置、スクリュー開栓式容器の蓋及びその製造方法、並びに、スクリュー開栓式容器の容器本体及びその製造方法
【課題】本発明の目的は、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、開栓性を客観的かつ定量的に評価することを可能とすることである。これによって、開発品を消費者が実際にどのように主観的に評価するか推定することを可能とすることである。
【解決手段】本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器を密封した状態で、前記容器本体と前記蓋とを開栓しないように固定する第1工程と、前記容器本体を開栓しようとする動作が、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまでなされたときの骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する第2工程と、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する第3工程と、を有する。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【解決手段】本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器を密封した状態で、前記容器本体と前記蓋とを開栓しないように固定する第1工程と、前記容器本体を開栓しようとする動作が、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまでなされたときの骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する第2工程と、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する第3工程と、を有する。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器全般について、容器開栓時に消費者にかかる負担の度合いを定量的に評価し、消費者が開栓動作に対してどの程度の負担と感じるかを推測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の開栓性を評価する方法は官能評価であり、数多くの被験者が開発した試作品と従来品とを開栓し、その使用感を5段階乃至7段階で点数付けして、それらを集計して相対的に評価していた。
【0003】
ところで、骨格筋の筋電図を測定し、そのデータを衣類等の脱着性評価に使用する技術の開示がある(例えば特許文献1を参照。)。特許文献1の技術に拠れば、アンケートによる主観評価に頼ることなく、客観的な数値で測定・評価することができるとしている。
【0004】
その他同様に、筋負担を測定する技術の開示がある(例えば特許文献2〜4を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003‐64575号公報
【特許文献2】特開2004‐275214号公報
【特許文献3】特開2006‐75200号公報
【特許文献4】特開2004‐344356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のとおり、容器の開栓性を評価する方法が官能評価であると、数多くの被験者を集めて評価しなければならず、時間と労力がかかる。したがって、開発途中の段階においては官能評価に時間がかかりすぎるため、試作のたびに行なうことは難しい。
【0007】
また、容器の開栓性は、容器本体又は蓋の特性によって変化する。従来のインタビューやアンケートによる調査方法では、どちらの要素がどの程度悪いのか(良いのか)が明らかにならない。そのため、開発品をさらに改良していく場合に、改良の方向性が明確とならない。
【0008】
特許文献1に記載の発明は、客観的な数値が得られるものの、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象とした評価方法ではないため、適用することができない。
【0009】
そこで本発明の目的は、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、開栓性を客観的かつ定量的に評価することを可能とすることである。これによって、開発品を消費者が実際にどのように主観的に評価するか推定することを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、骨格筋の筋電位を利用して、開栓性の評価方法を確立した。すなわち、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器を密封した状態で、前記容器本体と前記蓋とを開栓しないように固定する第1工程と、前記容器本体を開栓しようとする動作が、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまでなされたときの骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する第2工程と、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する第3工程と、を有することを特徴とする。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【0011】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法では、前記第2工程は、前記蓋をひねって開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。蓋についての開栓性を評価することができる。
【0012】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法では、前記第2工程は、前記容器本体を把持して開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。開栓時における容器本体の開栓負担におよぼす影響を評価することができる。
【0013】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価装置は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器の開栓動作における負担評価装置であって、骨格筋の筋電位の測定手段と、前記開栓動作に伴う開栓トルクの測定手段と、前記筋電位のデータ及び前記開栓トルクのデータを入力し、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する演算手段とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価装置では、前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記蓋をひねって開栓する動作における負担を評価する装置であることが好ましい。蓋についての開栓性を評価することができる。
【0015】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価装置では、前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記容器本体を把持して開栓する動作における負担を評価する装置であることが好ましい。開栓時における容器本体の開栓負担におよぼす影響を評価することができる。
【0016】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように蓋の外形状を決定したことを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて、開栓性の良好な蓋を製造することができる。
【0017】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の容器本体の製造方法は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように容器本体の外形状を決定することを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて、開栓時における開栓負担を低減させる容器本体を製造することができる。
【0018】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の蓋は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて形成した開栓性の良好な蓋である。
【0019】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の容器本体は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて形成した開栓時における開栓負担を低減させる容器本体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に拠れば、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、開栓性を客観的かつ定量的に評価することができる。これによって、開発品を消費者が実際にどのように主観的に評価するか推定することが可能である。また、手間の係る官能評価を行なわずに済むので、評価に要する時間を短縮することができる。さらに、被験者母集団の境界に位置するような人、例えば母集団の中で手の大きな人、小さな人、握力の大きい人、小さい人などを選定し、これらの人のデータを取ることで、最も母集団に適した容器を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0022】
まず、本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法について説明する。本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法は、少なくとも3つの工程、すなわち第1工程:非開栓容器の準備工程、第2工程:骨格筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定工程、第3工程:開栓トルクと最大筋力比との相関算出工程、である。以下、順に説明する。
【0023】
(非開栓容器の準備工程)
まず、測定対象の容器本体及び蓋を準備する。本負担評価方法で評価対象とする容器は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器である。すなわちスクリュー開栓式容器である。容器の材質の組み合わせは、例えば、プラスチック樹脂製容器本体とプラスチック樹脂製蓋の組み合わせ、金属製容器本体と金属製蓋の組み合わせ(ボトル缶)又は金属製容器本体とプラスチック樹脂製蓋の組み合わせがある。プラスチック樹脂は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0024】
本負担評価方法では、通常の開栓動作によって開栓するときの開栓トルクを超える開栓トルクを容器にかける必要があるため、容器本体に蓋がされた状態で固定する。蓋の固定方法は、被験者が最大の力で開けようとしても開栓できない程度の強度で固定されていればいかなる固定方法でもよい。例えば接着剤による固定法、融着による固定法又はピン止めなど機械的な固定法である。
【0025】
蓋を固定した容器に開栓トルクを測定するためのセンサーを図1に示すように取り付ける。図1は、容器に歪ゲージを取り付ける方法を示す説明図である。具体的には、アルミ製ボトル飲料缶を利用して、ボトル肩部の対向しあう2箇所に切り欠きをいれ、軸方向に対して45度に2枚の歪ゲージを貼り、せん断歪を検出できるようにした。歪ゲージを二ゲージ法で結線し、歪アンプ内蔵データロガーで時系列のデータを計測できるようにした。得られたデータは、後述するデータ処理を行なう。なお、歪ゲージのデータは蓋の開栓性評価において使用し、測定時の被験者の動作は、一方の手で容器本体を把持し、容器本体を持った手をひねらずに、蓋を持った手をひねる(反時計回りにひねる)という動作で行う。一方、容器本体の評価を行なう場合は、歪ゲージは使用せず、容器本体をトルクメーターに固定し、それを容器本体把持側の手で開栓時と同様の動作、すなわち、蓋を握る手はひねらずに容器本体把持側の手で容器本体を時計回りに回転させる動作を行ない、測定を行う。なお、他の測定方法として次のように行ってもよい。すなわち、反時計回りするモーターの上にトルクメーターを直結し、トルクメーターの上に容器を固定する。次に、容器本体を一方の手で把持し、モーターを反時計回りに回転させ、容器本体を把持する手は一定箇所に固定させる。このときのトルクメーターの値を計測する方法である。
【0026】
(骨格筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定工程)
次に容器本体を開栓しようとする動作を、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまで行ない、動作に伴う骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する。力を加えない状態とは、被験者が開栓動作は容器本体を左右のどちらかの手で把持し、他方の手で蓋を持って力を加えない状態である。最大に力を加えた状態とは、被験者が容器本体を左右のどちらかの手で把持し、他方の手で蓋を持って最大の力で開栓を試みている状態である。そして、測定中において被験者は徐々に開栓を行なうために蓋をねじる。ここで、被験者はデータ解析を行ないやすいように、力を増して一定状態で静止、そして、さらに加えて力を増して一定状態で静止というように段階的に力を増やしていくことが好ましい。例えば、最大の力を100%とすると、0%、20%、40%、60%、100%の力を出し、10秒程度維持する。このように段階的に力を増していきながら、動作に伴う骨格筋の筋電位の変移を測定する。骨格筋の筋電位の測定は、筋電計を用いて公知の方法、例えば手・腕の筋部位に電極を取り付け、筋電位を測定する。
【0027】
開栓トルクの変移の測定は、動作に伴う骨格筋の筋電位の変移の測定と同時に並行して行なう。具体的には、蓋の評価の場合、図1に示した歪ゲージから歪みアンプ内蔵データロガーにデータを取りこむ。ここで後述するように歪ゲージの歪量とトルクメーターのトルク値との検量線を作成しておき、取り込まれた歪ゲージの歪量からトルク値を算出する。一方容器本体の評価の場合、トルクメーターからデータを取り込む。
【0028】
開栓動作は、消費者によっていろいろな動作の種類がある。これらを検討すると容器本体の保持の仕方、蓋の握り方、順手・逆手などの組み合わせによって10パターンに分類される。そこで、この10パターンについて全て同様に、骨格筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定をそれぞれ測定する。手及び腕の骨格筋としては、図2(出典:森, 小川他, 金原監修:分担解剖学1 総説・骨学・人体学・筋学,金原出版株式会社,1982)に示した筋がある。また把持・回転の動作で負担のある筋は表1に示すとおりである。
【0029】
【表1】
【0030】
(開栓トルクと最大筋力比との相関算出工程)
次に開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する。本発明者らは開栓トルクと最大筋力比とは相関があることを見出した。具体的にはデータ処理は下記のとおりに行なうことが好ましい。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【0031】
まず、最大筋力比について説明する。数1の開栓動作に伴う筋電位とは、開栓動作中に検出される筋電位である。最大随意当尺性収縮時の筋電位とは、最大に力を加えた状態において検出される筋電位である。
【0032】
ここで、開栓動作に伴う筋電位は、被験者が同じ力を加えようと意図しても測定値が瞬時に変化していくため、最大筋力比を求める場合、測定データについて次のデータ処理を施すことが好ましい。まず、筋電計、歪みアンプ内蔵データロガー(蓋の評価の場合)若しくはトルクメーター(容器本体の評価の場合)から別々のファイルに書き出したデータを、トリガ信号を元に同期をとり、データ長を合わせる。次に歪ゲージの出力のデータ処理は次のように行なうことが好ましい。すなわち、歪ゲージの出力のAD変換値に10Hz以下のローパスフィルタをかける。予めトルクメーターを用いて測定しておいたキャリブレーションデータにより1次近似によってAD変換値をトルク[Nm]に変換する。データロギング開示時にはトルクが加えられていない状態であることを利用し、νε単位の零点補正のために、トルクが加えられていない状態での100個のデータ出力のサンプルの平均値を零点としてバランスした。次に、筋電計の筋電位出力値を全波整流した後、全試行の全データを昇順に並べ、上位5%を外れ値として除く。残った値の最大値を最大随意当尺性収縮時の筋電位(以下、「MVC:maximum voluntary contraction」ともいう)とし、100%MVCとした。そして、開栓動作に伴う筋電位に相当する各値を%MVC化した。なお、全試行の全データを昇順に並べるが、前述のとおり段階的に力を加えていくため、隣接した時間におけるデータの入れ替えがある程度である。したがって、時系列のデータの変移が求められる。
【0033】
以上のデータ処理によって、時系列の開栓トルクの変移及び最大筋力比の変移が求められる。次に同時刻における開栓トルクと最大筋力比とを関連づける。そして、5%MVC毎のレンジに振り分け、各レンジの平均値を開栓トルクvs最大筋力比のグラフにプロットすることで筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る。なお、5%MVC毎というのは例示であり、5%未満のレンジでもよいし、5%超のレンジでもよい。
【0034】
(蓋の開栓性の評価)
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法では、蓋と容器本体が組み合わさった容器自体の開栓性の評価のみならず、蓋自体の開栓性の評価を行なうことができる。蓋自体の開栓性の評価を行なうためには、第2工程は、蓋をひねって開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。図2に第1背側骨間筋と浅指屈筋を図示した。図2に示すとおり骨格筋は多種あるが、前記開栓動作の10パターンについて、蓋をひねる動作における筋電位が全て検出できた骨格筋が第1背側骨間筋と浅指屈筋であった。したがって、蓋をひねって開栓する動作を評価するためには、蓋を持つ手の第1背側骨間筋と浅指屈筋に電極をつけて筋電計で筋電位を測ることが好ましい。評価の仕方としては、(1)第1背側骨間筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(2)浅指屈筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(1)と(2)で得た特性曲線を併用する、の3型がある。
【0035】
(容器本体の開栓時の開栓負担に及ぼす影響の評価)
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法では、蓋と容器本体が組み合わさった容器自体の開栓性の評価のみならず、容器本体の開栓時の開栓負担に及ぼす影響の評価を行なうことができる。容器本体の開栓時の開栓負担に及ぼす影響の評価を行なうためには、第2工程は、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。図2に第1背側骨間筋と長母指伸筋を図示した。図2に示すとおり骨格筋は多種あるが、前記開栓動作の10パターンについて、容器本体を把持する動作における筋電位が全て検出できた骨格筋が第1背側骨間筋と長母指伸筋であった。したがって、容器本体を把持する動作を評価するためには、容器本体を持つ手の第1背側骨間筋と長母指伸筋に電極をつけて筋電計で筋電位を測ることが好ましい。評価の仕方としては、(1)第1背側骨間筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(2)長母指伸筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(1)と(2)で得た特性曲線を併用する、の3型がある。
【0036】
次に本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置について説明する。次に本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置は、次に本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法を行なうための装置である。すなわち、測定対象の容器はスクリュー開栓式容器である。骨格筋の筋電位の測定手段と、開栓動作に伴う開栓トルクの測定手段と、筋電位のデータ及び開栓トルクのデータを入力し、開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する演算手段とを有する。骨格筋の筋電位の測定手段は、前述したとおり例えば手・腕に貼り付けるタイプの電極を有する筋電計である。開栓トルクの測定手段は、前述したとおり、切り込みを入れた容器本体に取り付ける歪ケージと歪みアンプ内蔵データロガーである。演算手段は、筋電計と歪みアンプ内蔵データロガーとから取り出したデータを前述したとおりの処理を行なって、時系列の最大筋力比の変移、時系列の開栓トルク変移及び筋負担と開栓トルクの特性曲線を算出する演算手段である。
【0037】
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置において、蓋についての開栓性を評価する場合は、骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段とすることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置において、開栓時における容器本体の開栓負担におよぼす影響を評価する場合は、骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段とすることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係るスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法及び容器本体の製造方法について、実施例を示しながら合わせて説明する。
【実施例】
【0040】
まず、蓋の開栓性の評価について実施例を示す。被験者は2名とし、手長が15.5cmの女性被験者と、手長が19.8cmの男性被験者とした。また、形状の異なるキャップサンプルを四種類(モデルA,B,C,D)及びデフォルトとして市販28mm蓋を準備した。図3にキャップサンプルA,B,C,Dの外観を示す画像を示した。また、蓋と組み合わせる容器本体の形状は市販と同じ型(図8のデフォルト型)とした。この条件にて、筋負担の測定を前記説明したとおりの手順に従って行なった。図4に、女性被験者によるモデルCの蓋についての主動筋の最大筋力比の経時変化、主動筋以外の最大筋力比の経時変化及び歪ゲージ(トルクセンサ)出力値の経時変化を示した。他の蓋(モデルA,B,D,デフォルト)についても同様に測定を行なった。また、男性被験者についても同様にデータをとった。次にこれらのデータを処理して、図5に示す最大筋力比[横軸]と開栓トルク[縦軸]の相関特性のグラフを得た。ここで左グラフは女性被験者の場合、右グラフは男性被験者の場合を示す。なお、図5は、5%MVC毎のレンジに振り分け、各レンジの平均値を開栓トルクvs最大筋力比のグラフにプロットしたグラフである。なお、図5では、第一背側骨間筋に基づく結果である。
【0041】
本発明者らは、最大筋力比と筋負担に対する被験者の主観的評価(例えば楽である、やや楽である、ややきつい、きついなど)との関係を調べたところ、一次相関があることを突き止めた。図6に最大筋力比と筋負担に対する被験者の主観的評価との関係を示す。左のグラフは女性被験者、右のグラフは男性被験者のものである。なお、図7に、図6における縦軸の被験者の主観的評価の数値の具体的基準を示した。
【0042】
図6と図7から、筋電位の値の大小は個人差があるものの、最大筋力比を基準にすれば筋負担に対する被験者の主観的評価が被験者に拠らず統一されることがわかる。具体的には、最大筋力比が50%を超えると被験者がややきついと筋負担を感じはじめることがわかる。そこで、図5において蓋をひねって開栓する動作がなされた際の最大筋力比が0.5以下(MVC%=50%以下)の領域の形状の蓋であれば、蓋を開ける被験者は快適に感じることとなる。MVC%は、消費者の快適性確保の観点から40%以下がより望ましく、30%以下が更に望ましい。次に開栓トルクが1.0Nm未満であると、固体のばらつきを考慮すると、最低限要求される開栓トルクを下回る固体も生じうる。そこで、図5において開栓トルクが1.0Nm以上を領域の形状の蓋であれば製品バラツキの問題は生じにくい。以上のことから、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように蓋の外形状を決定することによって、消費者が快適に開栓することができる蓋を従来の官能評価を経ずして製造することができる。
【0043】
図5の左のグラフ(女性被験者のデータ)において、鎖線の長方形で囲んだ領域は、MVC%が50%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域であり、この領域を通るモデルCの蓋とモデルDの蓋とデフォルトの蓋は手長の短い消費者が快適に開栓することができる蓋となっている。なお、モデルCとモデルDとデフォルトの蓋はMVC%が30%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域をも通っている。一方、図5の右のグラフ(男性被験者のデータ)において、鎖線の長方形で囲んだ領域は、MVC%が50%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域であり、この領域を通るモデルCの蓋とモデルDの蓋とモデルAの蓋とモデルBの蓋は手長の長い消費者が快適に開栓することができる蓋となっている。なお、モデルCの蓋とモデルDの蓋とモデルAの蓋とモデルBの蓋はMVC%が30%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域をも通っている。
【0044】
そして、一般消費者は男性、女性、大人、子供等の手長が異なる人が混在した母集団であるため、手長の短い被験者と手長の長い被験者に係わらず、快適に開栓することができる蓋が好まれる。したがって、図5の左グラフと右グラフにおいて両方ともMVC%が50%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域を通るプロファイルを持つ蓋はモデルCの蓋とモデルDの蓋ということとなる。
【0045】
以上のとおり、本発明によるスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法によれば、母集団の境界付近の人を被験者としてピックアップし、それぞれ図5のような特性曲線を求め、前記領域をいずれの被験者においても通過する形状の蓋とすれば、手長が異なる人等が混在した母集団で形成されている一般消費者の誰もが快適と感じる開栓性を備えた蓋とすることができ、その蓋を従来の官能評価を経ずして製造することができる。
【0046】
次に容器本体の開栓時における開栓負担に及ぼす影響の評価について実施例を示す。被験者は蓋の場合と同じ2名とした。形状の異なる容器本体のサンプルを三種類(1:デフォルト型,2:逆テーパ型,3:Cテーパ型)準備した。図8に1:デフォルト型,2:逆テーパ型,3:Cテーパ型の容器本体の外観を示す画像を示した。この条件にて、筋負担の測定を前記説明したとおりの手順に従って行なった。蓋の実施例と同様のデータ処理を行なって、図9に示すように、長母指伸筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフを得た。また、図10に示すように、第一背側骨間筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフを得た。
【0047】
図9又は図10において容器本体を把持して蓋をひねって開栓する動作がなされた際の最大筋力比が0.5以下(MVC%=50%以下)の領域の形状の容器本体であれば、容器本体を把持する手長の長い被験者は快適に感じることとなる。MVC%は、消費者の快適性確保の観点から40%以下がより望ましく、30%以下が更に望ましい。次に開栓トルクが1.0Nm未満であると、容器本体を把持する手が滑って開け難くなるなど、開栓時の負担が大きくなるという問題が生ずる場合がある。そこで、図9又は図10において開栓トルクが1.0Nm以上を領域の形状の容器本体であればこのような問題は生じにくい。以上のことから、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように容器本体の外形状を決定することによって、手長の長い消費者が快適に把持することができるよう容器本体を従来の官能評価を経ずして製造することができる。
【0048】
蓋の実施例と同様に、一般消費者は男性、女性、大人、子供等の手長が異なる人が混在した母集団であるため、手長の短い被験者と手長の長い被験者に係わらず、快適に保持することができる容器本体とする必要がある。したがって、手長の短い被験者についても図9又は図10と同様のグラフを求め、手長の長い被験者と手長の短い被験者のいずれもが満足する容器本体の形状を決定すれば手長が異なる人が混在した母集団で形成されている一般消費者の誰もが開栓時において開栓負担が少なく快適と感じる容器本体を製造することができる。
【0049】
図9及び図10の結果を踏まえて、快適な形状を有する容器本体について検討したところ、手との接触面積が大きく取れる形状の方が動作のときの負担が小さくなっていることがわかった。図11に容器本体ごとの接触面積の差を示す。より細かく分析すると、母指の付け根と第5指の付け根の接触面積の影響が非常に高いことが図11により確認できた。表2に男性被験者における各容器本体との接触面積の測定結果も合わせて示した。したがって、容器本体において手との接触面積が多い形状とすることが好ましいという示唆が得られた。
【0050】
【表2】
【0051】
筋負担の測定は定量的であるため、これまでのように多くの被験者を集めてデータを収集する必要はなく、身体的特徴(男女、手の大きさなど)の異なる被験者を数名集めて評価するだけで、対象製品の開栓負担を推定することが可能である。実施例を見れば蓋及び容器本体についてのいずれについてもいえる。さらに、図11での検討結果を例に取れば、筋負担と容器本体の形状(若しくは蓋形状)を考察することにより、容器開発の方向性(接触面積を高める方向)を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】容器に歪ゲージを取り付ける方法を示す説明図である。
【図2】各筋の名称と位置を示す図である。
【図3】キャップサンプルA,B,C,Dの外観を示す画像を示した。
【図4】女性被験者によるモデルCの蓋についての主動筋の最大筋力比の経時変化、主動筋以外の最大筋力比の経時変化及び歪ゲージ(トルクセンサ)出力値の経時変化を示した。
【図5】最大筋力比[横軸]と開栓トルク[縦軸]の相関特性のグラフであり、左は女性被験者の場合、右は男性被験者の場合を示す。
【図6】最大筋力比と筋負担に対する被験者の主観的評価との関係を示す。左のグラフは女性被験者、右のグラフは男性被験者のものである。
【図7】図6における縦軸の被験者の主観的評価の数値の具体的基準を示す図である。
【図8】1:デフォルト型,2:逆テーパ型,3:Cテーパ型の容器本体の外観を示す画像を示した。
【図9】長母指伸筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフである。
【図10】第一背側骨間筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフである。
【図11】容器本体ごとの接触面積の差を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器全般について、容器開栓時に消費者にかかる負担の度合いを定量的に評価し、消費者が開栓動作に対してどの程度の負担と感じるかを推測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の開栓性を評価する方法は官能評価であり、数多くの被験者が開発した試作品と従来品とを開栓し、その使用感を5段階乃至7段階で点数付けして、それらを集計して相対的に評価していた。
【0003】
ところで、骨格筋の筋電図を測定し、そのデータを衣類等の脱着性評価に使用する技術の開示がある(例えば特許文献1を参照。)。特許文献1の技術に拠れば、アンケートによる主観評価に頼ることなく、客観的な数値で測定・評価することができるとしている。
【0004】
その他同様に、筋負担を測定する技術の開示がある(例えば特許文献2〜4を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003‐64575号公報
【特許文献2】特開2004‐275214号公報
【特許文献3】特開2006‐75200号公報
【特許文献4】特開2004‐344356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のとおり、容器の開栓性を評価する方法が官能評価であると、数多くの被験者を集めて評価しなければならず、時間と労力がかかる。したがって、開発途中の段階においては官能評価に時間がかかりすぎるため、試作のたびに行なうことは難しい。
【0007】
また、容器の開栓性は、容器本体又は蓋の特性によって変化する。従来のインタビューやアンケートによる調査方法では、どちらの要素がどの程度悪いのか(良いのか)が明らかにならない。そのため、開発品をさらに改良していく場合に、改良の方向性が明確とならない。
【0008】
特許文献1に記載の発明は、客観的な数値が得られるものの、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象とした評価方法ではないため、適用することができない。
【0009】
そこで本発明の目的は、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、開栓性を客観的かつ定量的に評価することを可能とすることである。これによって、開発品を消費者が実際にどのように主観的に評価するか推定することを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、骨格筋の筋電位を利用して、開栓性の評価方法を確立した。すなわち、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器を密封した状態で、前記容器本体と前記蓋とを開栓しないように固定する第1工程と、前記容器本体を開栓しようとする動作が、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまでなされたときの骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する第2工程と、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する第3工程と、を有することを特徴とする。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【0011】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法では、前記第2工程は、前記蓋をひねって開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。蓋についての開栓性を評価することができる。
【0012】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法では、前記第2工程は、前記容器本体を把持して開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。開栓時における容器本体の開栓負担におよぼす影響を評価することができる。
【0013】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価装置は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器の開栓動作における負担評価装置であって、骨格筋の筋電位の測定手段と、前記開栓動作に伴う開栓トルクの測定手段と、前記筋電位のデータ及び前記開栓トルクのデータを入力し、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する演算手段とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価装置では、前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記蓋をひねって開栓する動作における負担を評価する装置であることが好ましい。蓋についての開栓性を評価することができる。
【0015】
本発明に係る容器開栓動作における負担評価装置では、前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記容器本体を把持して開栓する動作における負担を評価する装置であることが好ましい。開栓時における容器本体の開栓負担におよぼす影響を評価することができる。
【0016】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように蓋の外形状を決定したことを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて、開栓性の良好な蓋を製造することができる。
【0017】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の容器本体の製造方法は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように容器本体の外形状を決定することを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて、開栓時における開栓負担を低減させる容器本体を製造することができる。
【0018】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の蓋は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて形成した開栓性の良好な蓋である。
【0019】
本発明に係るスクリュー開栓式容器の容器本体は、本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とする。本発明に係る容器開栓動作における負担評価方法によって得られた評価結果を用いて形成した開栓時における開栓負担を低減させる容器本体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に拠れば、把持・回転動作による開栓動作を伴う容器を対象として、開栓性を客観的かつ定量的に評価することができる。これによって、開発品を消費者が実際にどのように主観的に評価するか推定することが可能である。また、手間の係る官能評価を行なわずに済むので、評価に要する時間を短縮することができる。さらに、被験者母集団の境界に位置するような人、例えば母集団の中で手の大きな人、小さな人、握力の大きい人、小さい人などを選定し、これらの人のデータを取ることで、最も母集団に適した容器を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0022】
まず、本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法について説明する。本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法は、少なくとも3つの工程、すなわち第1工程:非開栓容器の準備工程、第2工程:骨格筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定工程、第3工程:開栓トルクと最大筋力比との相関算出工程、である。以下、順に説明する。
【0023】
(非開栓容器の準備工程)
まず、測定対象の容器本体及び蓋を準備する。本負担評価方法で評価対象とする容器は、容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器である。すなわちスクリュー開栓式容器である。容器の材質の組み合わせは、例えば、プラスチック樹脂製容器本体とプラスチック樹脂製蓋の組み合わせ、金属製容器本体と金属製蓋の組み合わせ(ボトル缶)又は金属製容器本体とプラスチック樹脂製蓋の組み合わせがある。プラスチック樹脂は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0024】
本負担評価方法では、通常の開栓動作によって開栓するときの開栓トルクを超える開栓トルクを容器にかける必要があるため、容器本体に蓋がされた状態で固定する。蓋の固定方法は、被験者が最大の力で開けようとしても開栓できない程度の強度で固定されていればいかなる固定方法でもよい。例えば接着剤による固定法、融着による固定法又はピン止めなど機械的な固定法である。
【0025】
蓋を固定した容器に開栓トルクを測定するためのセンサーを図1に示すように取り付ける。図1は、容器に歪ゲージを取り付ける方法を示す説明図である。具体的には、アルミ製ボトル飲料缶を利用して、ボトル肩部の対向しあう2箇所に切り欠きをいれ、軸方向に対して45度に2枚の歪ゲージを貼り、せん断歪を検出できるようにした。歪ゲージを二ゲージ法で結線し、歪アンプ内蔵データロガーで時系列のデータを計測できるようにした。得られたデータは、後述するデータ処理を行なう。なお、歪ゲージのデータは蓋の開栓性評価において使用し、測定時の被験者の動作は、一方の手で容器本体を把持し、容器本体を持った手をひねらずに、蓋を持った手をひねる(反時計回りにひねる)という動作で行う。一方、容器本体の評価を行なう場合は、歪ゲージは使用せず、容器本体をトルクメーターに固定し、それを容器本体把持側の手で開栓時と同様の動作、すなわち、蓋を握る手はひねらずに容器本体把持側の手で容器本体を時計回りに回転させる動作を行ない、測定を行う。なお、他の測定方法として次のように行ってもよい。すなわち、反時計回りするモーターの上にトルクメーターを直結し、トルクメーターの上に容器を固定する。次に、容器本体を一方の手で把持し、モーターを反時計回りに回転させ、容器本体を把持する手は一定箇所に固定させる。このときのトルクメーターの値を計測する方法である。
【0026】
(骨格筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定工程)
次に容器本体を開栓しようとする動作を、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまで行ない、動作に伴う骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する。力を加えない状態とは、被験者が開栓動作は容器本体を左右のどちらかの手で把持し、他方の手で蓋を持って力を加えない状態である。最大に力を加えた状態とは、被験者が容器本体を左右のどちらかの手で把持し、他方の手で蓋を持って最大の力で開栓を試みている状態である。そして、測定中において被験者は徐々に開栓を行なうために蓋をねじる。ここで、被験者はデータ解析を行ないやすいように、力を増して一定状態で静止、そして、さらに加えて力を増して一定状態で静止というように段階的に力を増やしていくことが好ましい。例えば、最大の力を100%とすると、0%、20%、40%、60%、100%の力を出し、10秒程度維持する。このように段階的に力を増していきながら、動作に伴う骨格筋の筋電位の変移を測定する。骨格筋の筋電位の測定は、筋電計を用いて公知の方法、例えば手・腕の筋部位に電極を取り付け、筋電位を測定する。
【0027】
開栓トルクの変移の測定は、動作に伴う骨格筋の筋電位の変移の測定と同時に並行して行なう。具体的には、蓋の評価の場合、図1に示した歪ゲージから歪みアンプ内蔵データロガーにデータを取りこむ。ここで後述するように歪ゲージの歪量とトルクメーターのトルク値との検量線を作成しておき、取り込まれた歪ゲージの歪量からトルク値を算出する。一方容器本体の評価の場合、トルクメーターからデータを取り込む。
【0028】
開栓動作は、消費者によっていろいろな動作の種類がある。これらを検討すると容器本体の保持の仕方、蓋の握り方、順手・逆手などの組み合わせによって10パターンに分類される。そこで、この10パターンについて全て同様に、骨格筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定をそれぞれ測定する。手及び腕の骨格筋としては、図2(出典:森, 小川他, 金原監修:分担解剖学1 総説・骨学・人体学・筋学,金原出版株式会社,1982)に示した筋がある。また把持・回転の動作で負担のある筋は表1に示すとおりである。
【0029】
【表1】
【0030】
(開栓トルクと最大筋力比との相関算出工程)
次に開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する。本発明者らは開栓トルクと最大筋力比とは相関があることを見出した。具体的にはデータ処理は下記のとおりに行なうことが好ましい。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【0031】
まず、最大筋力比について説明する。数1の開栓動作に伴う筋電位とは、開栓動作中に検出される筋電位である。最大随意当尺性収縮時の筋電位とは、最大に力を加えた状態において検出される筋電位である。
【0032】
ここで、開栓動作に伴う筋電位は、被験者が同じ力を加えようと意図しても測定値が瞬時に変化していくため、最大筋力比を求める場合、測定データについて次のデータ処理を施すことが好ましい。まず、筋電計、歪みアンプ内蔵データロガー(蓋の評価の場合)若しくはトルクメーター(容器本体の評価の場合)から別々のファイルに書き出したデータを、トリガ信号を元に同期をとり、データ長を合わせる。次に歪ゲージの出力のデータ処理は次のように行なうことが好ましい。すなわち、歪ゲージの出力のAD変換値に10Hz以下のローパスフィルタをかける。予めトルクメーターを用いて測定しておいたキャリブレーションデータにより1次近似によってAD変換値をトルク[Nm]に変換する。データロギング開示時にはトルクが加えられていない状態であることを利用し、νε単位の零点補正のために、トルクが加えられていない状態での100個のデータ出力のサンプルの平均値を零点としてバランスした。次に、筋電計の筋電位出力値を全波整流した後、全試行の全データを昇順に並べ、上位5%を外れ値として除く。残った値の最大値を最大随意当尺性収縮時の筋電位(以下、「MVC:maximum voluntary contraction」ともいう)とし、100%MVCとした。そして、開栓動作に伴う筋電位に相当する各値を%MVC化した。なお、全試行の全データを昇順に並べるが、前述のとおり段階的に力を加えていくため、隣接した時間におけるデータの入れ替えがある程度である。したがって、時系列のデータの変移が求められる。
【0033】
以上のデータ処理によって、時系列の開栓トルクの変移及び最大筋力比の変移が求められる。次に同時刻における開栓トルクと最大筋力比とを関連づける。そして、5%MVC毎のレンジに振り分け、各レンジの平均値を開栓トルクvs最大筋力比のグラフにプロットすることで筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る。なお、5%MVC毎というのは例示であり、5%未満のレンジでもよいし、5%超のレンジでもよい。
【0034】
(蓋の開栓性の評価)
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法では、蓋と容器本体が組み合わさった容器自体の開栓性の評価のみならず、蓋自体の開栓性の評価を行なうことができる。蓋自体の開栓性の評価を行なうためには、第2工程は、蓋をひねって開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。図2に第1背側骨間筋と浅指屈筋を図示した。図2に示すとおり骨格筋は多種あるが、前記開栓動作の10パターンについて、蓋をひねる動作における筋電位が全て検出できた骨格筋が第1背側骨間筋と浅指屈筋であった。したがって、蓋をひねって開栓する動作を評価するためには、蓋を持つ手の第1背側骨間筋と浅指屈筋に電極をつけて筋電計で筋電位を測ることが好ましい。評価の仕方としては、(1)第1背側骨間筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(2)浅指屈筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(1)と(2)で得た特性曲線を併用する、の3型がある。
【0035】
(容器本体の開栓時の開栓負担に及ぼす影響の評価)
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法では、蓋と容器本体が組み合わさった容器自体の開栓性の評価のみならず、容器本体の開栓時の開栓負担に及ぼす影響の評価を行なうことができる。容器本体の開栓時の開栓負担に及ぼす影響の評価を行なうためには、第2工程は、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることが好ましい。図2に第1背側骨間筋と長母指伸筋を図示した。図2に示すとおり骨格筋は多種あるが、前記開栓動作の10パターンについて、容器本体を把持する動作における筋電位が全て検出できた骨格筋が第1背側骨間筋と長母指伸筋であった。したがって、容器本体を把持する動作を評価するためには、容器本体を持つ手の第1背側骨間筋と長母指伸筋に電極をつけて筋電計で筋電位を測ることが好ましい。評価の仕方としては、(1)第1背側骨間筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(2)長母指伸筋の筋電位及び開栓トルクの変移の測定を測定して、筋負担と開栓トルクの特性曲線を得る、(1)と(2)で得た特性曲線を併用する、の3型がある。
【0036】
次に本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置について説明する。次に本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置は、次に本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価方法を行なうための装置である。すなわち、測定対象の容器はスクリュー開栓式容器である。骨格筋の筋電位の測定手段と、開栓動作に伴う開栓トルクの測定手段と、筋電位のデータ及び開栓トルクのデータを入力し、開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する演算手段とを有する。骨格筋の筋電位の測定手段は、前述したとおり例えば手・腕に貼り付けるタイプの電極を有する筋電計である。開栓トルクの測定手段は、前述したとおり、切り込みを入れた容器本体に取り付ける歪ケージと歪みアンプ内蔵データロガーである。演算手段は、筋電計と歪みアンプ内蔵データロガーとから取り出したデータを前述したとおりの処理を行なって、時系列の最大筋力比の変移、時系列の開栓トルク変移及び筋負担と開栓トルクの特性曲線を算出する演算手段である。
【0037】
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置において、蓋についての開栓性を評価する場合は、骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段とすることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る容器開栓動作における負担評価装置において、開栓時における容器本体の開栓負担におよぼす影響を評価する場合は、骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段とすることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係るスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法及び容器本体の製造方法について、実施例を示しながら合わせて説明する。
【実施例】
【0040】
まず、蓋の開栓性の評価について実施例を示す。被験者は2名とし、手長が15.5cmの女性被験者と、手長が19.8cmの男性被験者とした。また、形状の異なるキャップサンプルを四種類(モデルA,B,C,D)及びデフォルトとして市販28mm蓋を準備した。図3にキャップサンプルA,B,C,Dの外観を示す画像を示した。また、蓋と組み合わせる容器本体の形状は市販と同じ型(図8のデフォルト型)とした。この条件にて、筋負担の測定を前記説明したとおりの手順に従って行なった。図4に、女性被験者によるモデルCの蓋についての主動筋の最大筋力比の経時変化、主動筋以外の最大筋力比の経時変化及び歪ゲージ(トルクセンサ)出力値の経時変化を示した。他の蓋(モデルA,B,D,デフォルト)についても同様に測定を行なった。また、男性被験者についても同様にデータをとった。次にこれらのデータを処理して、図5に示す最大筋力比[横軸]と開栓トルク[縦軸]の相関特性のグラフを得た。ここで左グラフは女性被験者の場合、右グラフは男性被験者の場合を示す。なお、図5は、5%MVC毎のレンジに振り分け、各レンジの平均値を開栓トルクvs最大筋力比のグラフにプロットしたグラフである。なお、図5では、第一背側骨間筋に基づく結果である。
【0041】
本発明者らは、最大筋力比と筋負担に対する被験者の主観的評価(例えば楽である、やや楽である、ややきつい、きついなど)との関係を調べたところ、一次相関があることを突き止めた。図6に最大筋力比と筋負担に対する被験者の主観的評価との関係を示す。左のグラフは女性被験者、右のグラフは男性被験者のものである。なお、図7に、図6における縦軸の被験者の主観的評価の数値の具体的基準を示した。
【0042】
図6と図7から、筋電位の値の大小は個人差があるものの、最大筋力比を基準にすれば筋負担に対する被験者の主観的評価が被験者に拠らず統一されることがわかる。具体的には、最大筋力比が50%を超えると被験者がややきついと筋負担を感じはじめることがわかる。そこで、図5において蓋をひねって開栓する動作がなされた際の最大筋力比が0.5以下(MVC%=50%以下)の領域の形状の蓋であれば、蓋を開ける被験者は快適に感じることとなる。MVC%は、消費者の快適性確保の観点から40%以下がより望ましく、30%以下が更に望ましい。次に開栓トルクが1.0Nm未満であると、固体のばらつきを考慮すると、最低限要求される開栓トルクを下回る固体も生じうる。そこで、図5において開栓トルクが1.0Nm以上を領域の形状の蓋であれば製品バラツキの問題は生じにくい。以上のことから、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように蓋の外形状を決定することによって、消費者が快適に開栓することができる蓋を従来の官能評価を経ずして製造することができる。
【0043】
図5の左のグラフ(女性被験者のデータ)において、鎖線の長方形で囲んだ領域は、MVC%が50%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域であり、この領域を通るモデルCの蓋とモデルDの蓋とデフォルトの蓋は手長の短い消費者が快適に開栓することができる蓋となっている。なお、モデルCとモデルDとデフォルトの蓋はMVC%が30%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域をも通っている。一方、図5の右のグラフ(男性被験者のデータ)において、鎖線の長方形で囲んだ領域は、MVC%が50%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域であり、この領域を通るモデルCの蓋とモデルDの蓋とモデルAの蓋とモデルBの蓋は手長の長い消費者が快適に開栓することができる蓋となっている。なお、モデルCの蓋とモデルDの蓋とモデルAの蓋とモデルBの蓋はMVC%が30%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域をも通っている。
【0044】
そして、一般消費者は男性、女性、大人、子供等の手長が異なる人が混在した母集団であるため、手長の短い被験者と手長の長い被験者に係わらず、快適に開栓することができる蓋が好まれる。したがって、図5の左グラフと右グラフにおいて両方ともMVC%が50%以下で開栓トルクが1.0Nm以上の領域を通るプロファイルを持つ蓋はモデルCの蓋とモデルDの蓋ということとなる。
【0045】
以上のとおり、本発明によるスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法によれば、母集団の境界付近の人を被験者としてピックアップし、それぞれ図5のような特性曲線を求め、前記領域をいずれの被験者においても通過する形状の蓋とすれば、手長が異なる人等が混在した母集団で形成されている一般消費者の誰もが快適と感じる開栓性を備えた蓋とすることができ、その蓋を従来の官能評価を経ずして製造することができる。
【0046】
次に容器本体の開栓時における開栓負担に及ぼす影響の評価について実施例を示す。被験者は蓋の場合と同じ2名とした。形状の異なる容器本体のサンプルを三種類(1:デフォルト型,2:逆テーパ型,3:Cテーパ型)準備した。図8に1:デフォルト型,2:逆テーパ型,3:Cテーパ型の容器本体の外観を示す画像を示した。この条件にて、筋負担の測定を前記説明したとおりの手順に従って行なった。蓋の実施例と同様のデータ処理を行なって、図9に示すように、長母指伸筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフを得た。また、図10に示すように、第一背側骨間筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフを得た。
【0047】
図9又は図10において容器本体を把持して蓋をひねって開栓する動作がなされた際の最大筋力比が0.5以下(MVC%=50%以下)の領域の形状の容器本体であれば、容器本体を把持する手長の長い被験者は快適に感じることとなる。MVC%は、消費者の快適性確保の観点から40%以下がより望ましく、30%以下が更に望ましい。次に開栓トルクが1.0Nm未満であると、容器本体を把持する手が滑って開け難くなるなど、開栓時の負担が大きくなるという問題が生ずる場合がある。そこで、図9又は図10において開栓トルクが1.0Nm以上を領域の形状の容器本体であればこのような問題は生じにくい。以上のことから、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように容器本体の外形状を決定することによって、手長の長い消費者が快適に把持することができるよう容器本体を従来の官能評価を経ずして製造することができる。
【0048】
蓋の実施例と同様に、一般消費者は男性、女性、大人、子供等の手長が異なる人が混在した母集団であるため、手長の短い被験者と手長の長い被験者に係わらず、快適に保持することができる容器本体とする必要がある。したがって、手長の短い被験者についても図9又は図10と同様のグラフを求め、手長の長い被験者と手長の短い被験者のいずれもが満足する容器本体の形状を決定すれば手長が異なる人が混在した母集団で形成されている一般消費者の誰もが開栓時において開栓負担が少なく快適と感じる容器本体を製造することができる。
【0049】
図9及び図10の結果を踏まえて、快適な形状を有する容器本体について検討したところ、手との接触面積が大きく取れる形状の方が動作のときの負担が小さくなっていることがわかった。図11に容器本体ごとの接触面積の差を示す。より細かく分析すると、母指の付け根と第5指の付け根の接触面積の影響が非常に高いことが図11により確認できた。表2に男性被験者における各容器本体との接触面積の測定結果も合わせて示した。したがって、容器本体において手との接触面積が多い形状とすることが好ましいという示唆が得られた。
【0050】
【表2】
【0051】
筋負担の測定は定量的であるため、これまでのように多くの被験者を集めてデータを収集する必要はなく、身体的特徴(男女、手の大きさなど)の異なる被験者を数名集めて評価するだけで、対象製品の開栓負担を推定することが可能である。実施例を見れば蓋及び容器本体についてのいずれについてもいえる。さらに、図11での検討結果を例に取れば、筋負担と容器本体の形状(若しくは蓋形状)を考察することにより、容器開発の方向性(接触面積を高める方向)を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】容器に歪ゲージを取り付ける方法を示す説明図である。
【図2】各筋の名称と位置を示す図である。
【図3】キャップサンプルA,B,C,Dの外観を示す画像を示した。
【図4】女性被験者によるモデルCの蓋についての主動筋の最大筋力比の経時変化、主動筋以外の最大筋力比の経時変化及び歪ゲージ(トルクセンサ)出力値の経時変化を示した。
【図5】最大筋力比[横軸]と開栓トルク[縦軸]の相関特性のグラフであり、左は女性被験者の場合、右は男性被験者の場合を示す。
【図6】最大筋力比と筋負担に対する被験者の主観的評価との関係を示す。左のグラフは女性被験者、右のグラフは男性被験者のものである。
【図7】図6における縦軸の被験者の主観的評価の数値の具体的基準を示す図である。
【図8】1:デフォルト型,2:逆テーパ型,3:Cテーパ型の容器本体の外観を示す画像を示した。
【図9】長母指伸筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフである。
【図10】第一背側骨間筋について、男性被験者による開栓トルク[横軸]と最大筋力比[縦軸]との相関特性のグラフである。
【図11】容器本体ごとの接触面積の差を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器を密封した状態で、前記容器本体と前記蓋とを開栓しないように固定する第1工程と、
前記容器本体を開栓しようとする動作が、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまでなされたときの骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する第2工程と、
前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する第3工程と、を有することを特徴とする容器開栓動作における負担評価方法。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【請求項2】
前記第2工程は、前記蓋をひねって開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることを特徴とする請求項1に記載の容器開栓動作における負担評価方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記容器本体を把持して開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることを特徴とする請求項1に記載の容器開栓動作における負担評価方法。
【請求項4】
容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器の開栓動作における負担評価装置であって、骨格筋の筋電位の測定手段と、前記開栓動作に伴う開栓トルクの測定手段と、前記筋電位のデータ及び前記開栓トルクのデータを入力し、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する演算手段とを有することを特徴とする容器開栓動作における負担評価装置。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【請求項5】
前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記蓋をひねって開栓する動作における負担を評価する装置であることを特徴とする請求項4に記載の容器開栓動作における負担評価装置。
【請求項6】
前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記容器本体を把持して開栓する動作における負担を評価する装置であることを特徴とする請求項4に記載の容器開栓動作における負担評価装置。
【請求項7】
請求項2に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように蓋の外形状を決定したことを特徴とするスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように容器本体の外形状を決定することを特徴とするスクリュー開栓式容器の容器本体の製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とするスクリュー開栓式容器の蓋。
【請求項10】
請求項3に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とするスクリュー開栓式容器の容器本体。
【請求項1】
容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器を密封した状態で、前記容器本体と前記蓋とを開栓しないように固定する第1工程と、
前記容器本体を開栓しようとする動作が、力を加えない状態から最大に力を加えた状態となるまでなされたときの骨格筋の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する第2工程と、
前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する第3工程と、を有することを特徴とする容器開栓動作における負担評価方法。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【請求項2】
前記第2工程は、前記蓋をひねって開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることを特徴とする請求項1に記載の容器開栓動作における負担評価方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記容器本体を把持して開栓する動作がなされた際に、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の変移及び開栓トルクの変移を測定する工程であることを特徴とする請求項1に記載の容器開栓動作における負担評価方法。
【請求項4】
容器本体の口部にねじることで開栓する蓋がされた容器の開栓動作における負担評価装置であって、骨格筋の筋電位の測定手段と、前記開栓動作に伴う開栓トルクの測定手段と、前記筋電位のデータ及び前記開栓トルクのデータを入力し、前記開栓トルクと数1で表される最大筋力比との相関を算出する演算手段とを有することを特徴とする容器開栓動作における負担評価装置。
(数1)最大筋力比=開栓動作に伴う筋電位/最大随意当尺性収縮時の筋電位
【請求項5】
前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、浅指屈筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記蓋をひねって開栓する動作における負担を評価する装置であることを特徴とする請求項4に記載の容器開栓動作における負担評価装置。
【請求項6】
前記骨格筋の筋電位の測定手段は、第1背側骨間筋、長母指伸筋又はこれらの両方の筋電位の測定手段であり、前記容器本体を把持して開栓する動作における負担を評価する装置であることを特徴とする請求項4に記載の容器開栓動作における負担評価装置。
【請求項7】
請求項2に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように蓋の外形状を決定したことを特徴とするスクリュー開栓式容器の蓋の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通るように容器本体の外形状を決定することを特徴とするスクリュー開栓式容器の容器本体の製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、蓋をひねって開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とするスクリュー開栓式容器の蓋。
【請求項10】
請求項3に記載の容器開栓動作における負担評価方法によって得られた、容器本体を把持して開栓する動作がなされた際の開栓トルクと最大筋力比との相関プロファイルが、最大筋力比が0.5以下かつ開栓トルクが1.0Nm以上を満たす領域を通る外形状を有することを特徴とするスクリュー開栓式容器の容器本体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−56040(P2009−56040A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224688(P2007−224688)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】
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