説明

容器

【課題】内圧の変動を抑制しながら、圧力を容器外に逃がすこと。
【解決手段】内容物が収容される容器体と、ガスGを放出する放出孔10が形成された天板3aを有し、容器体の開口部に着脱自在に被着された蓋体3と、天板上に印刷により形成された凸部11と、放出孔及び凸部を覆うように天板上に重ねられ、該天板に対して外縁部が外周に沿ってシールされたシート体4と、を備え、シート体の外縁部には、部分的にシールが解かれた非シール部4aが形成されており、該非シール部と天板とで放出されたガスを流出する流出口12を画成し、凸部とシート体と天板とで、放出孔から放出されたガスを流出口に導く流通路13を画成する容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、液体状或いは固体状の食品や食材等の内容物を収納した容器を電子レンジ等で加熱した場合、内容物中の水分が蒸発してガス(水蒸気)が発生し、容器の内圧が高まってしまう。この内圧が所定圧以上になってしまうと、容器の蓋が外れる等の不都合が生じてしまう。そこで、内圧を容器外に適宜逃がすことができる容器が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この容器は、容器本体に薄肉の薄膜部が形成されている。薄肉部には、スリットによって屈曲自在な複数の舌片が形成されている。そして、これら舌片が屈曲することで、容器内外が連通遮断されるようになっている。
この容器によれば、内圧が上昇して所定圧に達すると、複数の舌片が屈曲して容器内外が連通するようになっており、これにより容器内の圧力を逃がして内圧を低下させることが可能とされている。
なお、内圧が低下すると、複数の舌片が自身の復元力により元の状態に復帰し、容器内外の連通を遮断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3144711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の容器では、内圧が所定圧に達した時点で舌片が屈曲するので、内圧が急激に低下してしまうものであった。そのため、内圧が大きく変動してしまい、内圧の変動をできるだけ抑制しながら加熱を行うことが難しかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内圧の変動を抑制しながら、圧力を容器外に逃がすことができる容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る容器は、有底筒状に形成され、内部に内容物が収容される容器体と、ガスを放出する放出孔が形成された天板を有し、前記容器体の開口部に着脱自在に被着された蓋体と、前記天板上に印刷により形成された凸部と、前記放出孔及び前記凸部を覆うように前記天板上に重ねられ、該天板に対して外縁部が外周に沿ってシールされたシート体と、を備え、前記シート体の外縁部には、部分的に前記シールが解かれた非シール部が形成されており、該非シール部と前記天板とで放出された前記ガスを流出する流出口を画成し、前記凸部と前記シート体と前記天板とで、前記放出孔から放出された前記ガスを前記流出口に導く流通路を画成することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る容器においては、加熱等によって内容物からガスが発生すると、このガスは放出孔から放出された後、天板とシート体との間に流れ込む。ここで、天板とシート体との間には、凸部とシート体と天板とで画成された流通路が形成されている。そのため、放出孔から放出されたガスは、この流通路を流れながら流出口に導かれた後、該流出口より外部に排出される。これにより、容器内の圧力を容器外に逃がすことができ、内圧上昇を防止することができる。
【0009】
特に、凸部とシート体と天板とで画成された狭い流通路を利用してガスを流すので、このガスは流動抵抗を受けてゆっくりと流出口から排出される。従って、従来と異なり、内圧が急激に低下することを抑制することができる。つまり、内圧の変動を抑制しながら圧力を容器外に逃がすことができる。従って、容器内の圧力を一定に維持し易く、圧力変動に起因する影響を内容物に与え難い。
【0010】
(2)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記流通路が、前記放出孔から放出された前記ガスの流動方向を少なくとも1回変化させながら前記流出口に導くことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る容器においては、流通路が放出孔から放出されたガスを流出口に導く際に、ガスの流動方向を少なくとも1回変化させるように形成されている。そのため、ガスは、流動方向が変わることで流動抵抗を受けるので、さらに速度が低下し、時間をかけてゆっくりと流出口から排出される。
従って、内圧が急激に低下することをより効果的に抑制することができ、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器外に逃がすことができる。
【0012】
(3)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記放出孔が、前記天板の略中心に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る容器においては、天板の略中心に放出孔が形成されているので、該放出孔と流出口との距離を十分に確保することができると共に、流出口をシート体の外縁部のどこに形成しようとも、両者の間に流通路を形成し易くなり、流通路の設計の自由度を向上することができる。
【0014】
(4)本発明に係る容器は、上記本発明の容器において、前記流出口が、前記シート体の外周に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る容器においては、流出口が複数形成されているので、複数の流出口からガスを均等に効率良く排出することができる。従って、内圧が急激に高まった場合であっても、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器外に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る容器によれば、内圧の変動を抑制しながら、圧力を容器外に逃がすことができる。従って、容器内の圧力を一定に維持し易く、圧力変動に起因する影響を内容物に与え難い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る容器の実施形態を示す半縦断面図である。
【図2】図1に示す容器を上方から見た図である。
【図3】図1に示す容器の一部を拡大した断面図である。
【図4】図2に示す領域Aを拡大した図である。
【図5】本発明に係る容器の変形例を示す上面図である。
【図6】本発明に係る容器の別の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る容器の実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
本実施形態の容器1は、図1から3に示すように、内容物Wが収容される容器体2と、該容器体2に着脱自在に被着された蓋体3と、蓋体3の天板上に重ねられたシート体4と、を備えている。
【0019】
なお、図1は、容器1の縦半断面図である。図2は、図1に示す容器1を上方から見た図である。但し、図2においては、シート体4を透過した状態で図示している。図3は、図1に示す容器体2の拡大断面図である。
また、容器体2及び蓋体3の中心軸は、共通軸上に位置している。本実施形態では、この共通軸を中心軸Oといい、この中心軸Oに直交する方向を径方向、中心軸Oを中心に周回する方向を周方向とする。また、中心軸Oに沿って蓋体3側を上側とし、容器体2の底部2a側を下側とする。また、内容物Wの一例として、図1では液体状の食品や食材等を想定して図示している。
【0020】
容器体2は、上部が開口した有底筒状に形成されており、底部2aと胴部2bとで構成されている。なお、本実施形態の胴部2bは、断面円形状に形成されている。胴部2bの上端部には、径方向外方に延在する環状のフランジ部2cが連設されている。
なお、この容器体2は、図示しない金型を利用した各種の成形方法、例えば、射出成形、熱成形(シート成形)や圧縮成形等、を利用して形成されたものである。
【0021】
蓋体3は、容器体2の開口部を覆って内容物Wを封止する部材であり、天板3aと周壁部3bとで構成されている。なお、この蓋体3は、容器体2と同様に、図示しない金型を利用した各種の成形方法を利用して形成されたものである。
天板3aは、その外縁部が容器体2のフランジ部2cに重なるサイズに形成された平面視円形状の部材であり、外縁部に沿って下側に延在するように周壁部3bが形成されている。この周壁部3bの内周面には、径方向内方に向かって突出した環状の係合凸部3cが形成されている。そして、この係合凸部3cがフランジ部2cに係合することで、蓋体3は容器体2の開口部に着脱自在に被着されるようになっている。
【0022】
天板3aの中心には、容器1内で発生したガスGを放出して天板3aとシート体4との間に流す放出孔10が天板3aを貫通するように形成されている。また、天板3a上には、印刷によって樹脂材料等(インク、塗料等)が厚盛りされた凸部11が形成されている。
この際、本実施形態の凸部11は、局所的に突起しているのではなく、突起が連続的に繋がって土手状となった凸条に形成されている。詳細に説明すると、凸部11は放出孔10を囲むように周方向に延在した平面視C形状に形成されている。そして、この平面視C形状の凸部11が、中心軸O回りに180度向きを変えながら、径方向外方に向かって一定の間隔を開けて連続的に並ぶように(中心軸Oを同心として何重にも並ぶように)形成されている。
なお、最外周の凸部11は、その内側の凸部11を囲む平面視C形状の周壁11aと、この周壁11aの両端部に連設され、径方向外方に向かって延在する一対の流出壁11bと、で構成されている。
【0023】
シート体4は、可撓性を有する破れ難い材料から形成された平面視円形状の薄いシート(フィルム)であり、上述した放出孔10及び凸部11を覆うように天板3a上に重ねられている。この際、シート体4は、最外周の凸部11より大径に形成されている。そして、この最外周の凸部11よりも径方向外方に位置するシート体4の外縁部は、外周に沿って天板3aに対してシールされている(図2の矢印Sで示す斜線領域)。具体的には、熱圧着や接着剤等を利用してシールされている。
【0024】
しかしながら、図2及び図4に示すように、シート体4の外縁部の一部は、シールが解かれた状態の非シール部4aとなっている。詳細には、上記一対の流出壁11b間で挟まれる領域においてシールが解かれている。なお、図4は、図2に示す領域Aを拡大した拡大図である。そして、この非シール部4aと天板3aとで、放出孔10から放出されたガスGを外部に流出させる流出口12を画成している。
【0025】
また、図1から図4に示すように、凸部11と天板3aとシート体4とで、放出孔10から放出されたガスGを流出口12に導く流通路13を画成している。
よって、本実施形態の流通路13によれば、図2に示すように、放出孔10から放出されたガスGを、径方向外方に流動させた後、周方向に半周程度流動させ、その後再度径方向外方に流動させた後、周方向に半周程度流動させ…といったように、ガスGの流動方向を複雑に変化させながら流出口12に導くことができるように設計されている。
【0026】
次に、上述した容器1を電子レンジ等で加熱した場合について説明する。
この場合には、まず図1に示すように加熱によって内容物Wから水蒸気等のガスGが発生し、容器1内の内圧が高まり始める。ところが、このガスGは、図3に示すように天板3aに形成された放出孔10から放出され、天板3aとシート体4との間に流れ込む。そして、このガスGは、図2に示すように、凸部11とシート体4と天板3aとで画成された流通路13に沿って流れながら流出口12に導かれた後、該流出口12より外部に排出される。これにより、容器1内の圧力を容器1外に逃がすことができ、内圧上昇を防止することができる。
【0027】
特に、本実施形態の流通路13は、凸部11とシート体4と天板3aとで画成された狭い流通路であるので、ガスGは流動抵抗を受けてゆっくりと流出口12から排出される。従って、従来と異なり、内圧が急激に低下することを抑制することができる。つまり、内圧の変動を抑制しながら圧力を容器1外に逃がすことができる。
しかも、流通路13は、流出口12にガスGを導く際に、ガスGの流動方向を複雑に変化させながら流出口12に導くように形成されている。つまり、ガスGは、放出孔10から放出された後、径方向外方に流動し、その後周方向に半周程度流動し、その後再度径方向外方に流動し、といったように、径方向外方向への流動と、周方向への流動と、を順次繰り返しながら向きを変え、流出口12に導かれるようになっている。
そのため、ガスGは、流動方向が変わることで流動抵抗を受けるので、さらに速度が低下し、時間をかけてゆっくりと流出口12から排出される。よって、内圧の変動をできるだけ抑制しながら、圧力を容器1外に逃がすことができる。
【0028】
このように、本実施形態の容器1によれば、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器1外に逃がすことができ、容器1内の圧力を一定に維持し易く、圧力変動に起因する影響を内容物Wに与え難い。
【0029】
ところで、蓋体3の天板3a上には凸部11が形成されているが、この凸部11は蓋体3が射出成形等によって形成された後、印刷によって容易に形成することができる。従って、本実施形態の蓋体3を作製する際、金型を変更する必要がなく、従来と同じ金型で容易に作製することができる。よって、手間を掛けることなく容器1を製造することができ、容器1の高コスト化を防止することができる。
【0030】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
例えば、上記実施形態では、容器体2を断面円形状としたが、有底筒状であれば、断面楕円形状や断面角形状にしても構わない。この際、容器体2の形状に合わせて蓋体3の形状を適宜変更すれば良い。
【0032】
また、上記実施形態では、容器体2のフランジ部2cに蓋体3の係合凸部3cを係合させることで、容器体2に対して蓋体3を着脱自在に被着させた構成としたが、この場合に限られるものではない。例えば、蓋体3を容器体2に螺合させることで着脱自在に被着させる構成としても構わない。
【0033】
また、上記実施形態では、放出孔10を天板3aの中心に形成したが、放出孔10の位置は中心に限られず、天板3aのどの位置に形成しても構わない。また、放出孔10の数は、1つに限定されるものではなく、複数個形成しても構わない。
但し、放出孔10を1つ形成する場合には、上述したように天板3aの中心に放出孔10を形成することが好ましい。こうすることで、放出孔10と流出口12との距離を十分に確保することができると共に、流出口12をシート体4の外縁部のどこに形成しようとも、両者の間に流通路13を形成し易くなり、流通路13の設計の自由度を向上することができる。
【0034】
また、凸部11のパターンは、上記実施形態に限定されず、目的に応じて適宜設計変更することができる。特に、ガスGの流動方向を少なくとも1回変化させながら流出口12に導くように流通路13が形成されることが好ましい。
例えば、図5に示すように周方向に延びる円弧状の凸部20にし、この凸部20を周方向及び径方向にそれぞれ規則的に並べて流通路21を形成しても構わない。なお、図5においてはシート体4を透過した状態で図示している。
この場合であっても、放出孔10から流出口12に向かうガスGの流動方向を、径方向外方向と周方向とに順次繰り返しながら変化させることができる。従って、この場合であっても同様の作用効果を奏することができる。
また、このとき図5に示すように、シート体4の外周に沿って流出口12を等間隔毎(中心軸O回りに90度毎)に4つ形成しても構わない。このように、流出口12を複数形成することで、これら複数の流出口12からガスGを均等に効率良く排出することができる。従って、内圧が急激に高まった場合であっても、内圧の変動をできるだけ抑制しながら圧力を容器1外に逃がすことができる。
【0035】
なお、流出口12を複数形成する際、4つに限られず、2つ或いは3つでも構わないし、5つ以上でも構わない。但し、流出口12の数が多いほど、シート体4のシール性が劣るので、4つ程度が好ましい。
【0036】
また、図6に示すように、径方向に延びる直線路31aと周方向に延びる円周路31bとで流通路31が形成されるように、凸部30を形成しても構わない。なお、図6においてはシート体4を透過した状態で図示している。
この場合であっても、放出孔10から放出されたガスGの流動方向を少なくとも1回変化させながら流出口12に導くことができるので、内圧の変動を抑制しながら圧力を容器1外に逃がすことができる。従って、同様の作用効果を奏することができる。
【0037】
また、凸部は、土手状に繋がった凸条に限られるものではなく、局所的に突起した形状でも構わない。この場合であっても、ガスGの流動方向を少なくとも1回変化させながら流出口12に導く流通路を形成することができる。
【0038】
更に、放出孔10の周囲を囲む環状の壁部を天板3a上に形成し、この壁部の径方向外側に凸部を形成しても構わない。つまり、壁部の径方向外側に凸部を含む流通路を形成しても構わない。この場合には、放出孔10から放出されたガスGが、壁部を乗り越えた後、流通路に流れ込み、該流通路によって流出口に導かれる形となる。特に、この場合は、壁部によってガスGの流れを効果的に抑えることができるので、流通路に達する前の時点でガスGの速度を低下させることができ、より内圧の変動を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0039】
G…ガス
W…内容物
1…容器
2…容器体
3…蓋体
3a…天板
4…シート体
4a…非シール部
10…放出孔
11、20、30…凸部
12…流出口
13、21、31…流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成され、内部に内容物が収容される容器体と、
ガスを放出する放出孔が形成された天板を有し、前記容器体の開口部に着脱自在に被着された蓋体と、
前記天板上に印刷により形成された凸部と、
前記放出孔及び前記凸部を覆うように前記天板上に重ねられ、該天板に対して外縁部が外周に沿ってシールされたシート体と、を備え、
前記シート体の外縁部には、部分的に前記シールが解かれた非シール部が形成されており、該非シール部と前記天板とで放出された前記ガスを流出する流出口を画成し、
前記凸部と前記シート体と前記天板とで、前記放出孔から放出された前記ガスを前記流出口に導く流通路を画成することを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器において、
前記流通路は、前記放出孔から放出された前記ガスの流動方向を少なくとも1回変化させながら前記流出口に導くことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器において、
前記放出孔は、前記天板の略中心に形成されていることを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の容器において、
前記流出口は、前記シート体の外周に沿って複数形成されていることを特徴とする容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−93575(P2011−93575A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250445(P2009−250445)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】