説明

容積形往復ポンプ

【課題】部品点数を少なくし、磨耗、騒音、振動を小にし、吐出効率を向上させ、水中での使用を可能にした容積形往復ポンプを提供することにある。
【解決手段】ピストン108〜113の往復運動によりシリンダ室116〜121の容積を変化させ、作動流体の吸い込みと吐き出しを行う容積形往復ポンプにおいて、駆動モータ100と、該駆動モータ100に直結して回転自在な円板101と、該円板101の円周方向に取り付けられた突起部材102〜107と、該突起部材102〜107に当接自在なピストン108〜113と、該ピストン108〜113が挿入されて吸込みポート114及び吐出しポート115を有するシリンダ室116〜121を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの往復運動によりシリンダ室の容積を変化させ、作動流体の吸い込みと吐き出しを行う容積形往復ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容積形往復ポンプは、例えば特開平6−2648号公報(特許文献1)に開示され、この特開平6−2648号公報の図1に相当する本願の図7に示すように、ケーシング本体3とエンドキャップ4から成るケーシング2を備えている。
【0003】
上記ケーシング2内には、傾板5が配置され、傾板5を貫通する駆動軸6が、軸受9、10を介してケーシング本体3とエンドキャップ4に回転自在に支持されている。
【0004】
上記駆動軸6には、シリンダブロック11がスプライン結合し、該シリンダブロック11には複数個のシリンダ室14が円周方向に設けられており、各シリンダ室14にはピストン15が軸方向に摺動自在に挿入されている。
【0005】
各ピストン15の頭部15a(ピストンボール)には、シュー17が取り付けられ、該シュー17は、傾板5に設けたスラストプレート50に接触して摺動可能であり、各シュー17は、シューリテーナ20で支持され、該シューリテーナ20はボールリテーナ18に嵌合している。
【0006】
また、上記ボールリテーナ18は、図示するように、駆動軸6の外側面に設けられていてスプリング21により傾板5側に付勢され、これにより、シューリテーナ20によりシュー17を前記スラストプレート50に押し付けている。
【0007】
一方、前記傾板5は、コンタクトピース25、26を有し、該コンタクトピース25、26は、エンドキャップ4側のサーボシリンダ27、バイアスシリンダ28に当接しており、よく知られているように、傾板5は所定の傾斜角で傾斜している。
【0008】
この構成により、若し図8に示すように、傾板5が傾斜角αで傾斜している場合には、駆動軸6を回転させれば、シリンダブロック11と各ピストン15とシュー17が同時に回転し、各シュー17が前記スラストプレート50の上面を下端から上端まで摺動する間に、ピストン15は右側に移動するようになっている。
【0009】
これにより、図7(図8)のポンプを例えば作動流体である水の中に入れて水を吸い上げようとする場合には、前記右側に移動するピストン15の作用により、水が、エンドキャップ4側(図7)のバルブプレート12に設けた吸込みポート(図示省略)からシリンダ室14に入り込む。
【0010】
そして、駆動軸6が更に回転を続行し、シュー17がスラストプレート50の上面を上端から下端まで摺動する間に、ピストン15は左側に移動するようになっている。
【0011】
これにより、前記左側に移動するピストン15の作用により、シリンダ室14内の水が、エンドキャップ4側のバルブプレート12に設けた吐出しポート(図示省略)から吐き出される。
【0012】
このようにして、図7(図8)のポンプは、ピストン15の往復運動によるシリンダ室14の容積変化を利用することにより、作動流体の吸い込みと吐き出しを行うようになっている。
【特許文献1】特開平6−2648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記特開平6−2548号公報に開示された容積形往復ポンプにおいては、次のような課題がある。
【0014】
部品点数が多い。即ち、上記ピストン15の往復運動機構や傾板5の傾斜保持機構を構成する部品の数は極めて多い。
【0015】
例えば、ピストン15(図7)の往復運動機構を構成する部品として、ピストン15と傾板5の間には、シュー17と、該シュー17が接触するスラストプレート50と、各シュー17が支持されているシューリテーナ20と、該シューリテーナ20が嵌合しているボールリテーナ18が設けられ、更に、ボールリテーナ18を傾板5側に付勢するスプリング21が設けられている。
【0016】
また、傾板5の傾斜保持機構を構成する部品として、エンドキャップ4と傾板5の間には、エンドキャップ4に固定したサーボロッド30と、該サーボロッド30で左右方向に摺動するサーボシリンダ27と、該サーボシリンダ27が当接するコンタクトピース25、及びエンドキャップ4に固定したバイアスロッド34と、該バイアスロッド34で左右方向に摺動するバイアスシリンダ28と、該バイアスシリンダ28が当接するコンタクトピース26がそれぞれ設けられている。
【0017】
このことから、既述したように、ピストン15の往復運動機構や傾板5の傾斜保持機構を構成する部品の数は極めて多い。
【0018】
更に、従来技術においては、駆動軸6がモータに直結した構造とはなっていず、ベルト等を介して駆動軸6をモータに結合しなければならず、この点でも部品点数が多い。
【0019】
その結果、従来の容積形往復ポンプは、構成が複雑であり、また組み立てが面倒であり、更に、全体が大型になる。
【0020】
磨耗、騒音、振動が大である。例えば、傾板5は(図7)、ピストン15に対して傾斜しており、そのため、駆動軸6を介してシリンダブロック11が回転する間に、ピストン15には傾板5側からの力F(ピストン15の軸線に直交)が働いて、各ピストン15とシリンダ室14との接触面間の圧力(側圧)が高まり、ピストン15とシリンダ室14の磨耗が大となる。
【0021】
また、従来は、ピストン15の往復運動を行う場合に、傾板5側のスラストプレート50の上面には、シリンダブロック11の一端(図7の右側)から突出したピストン15に取り付けられているシュー17が摺動し、エンドキャップ4側のバルブプレート12の上面には、シリンダブロック11の他端(図7の左側)が摺動し、従って、スラストプレート50とバルブプレート12の磨耗、騒音、振動が大きくなる。
【0022】
この課題を解決するために、前記従来技術においては、スラストプレート50の傾板5側には、防振合金製部材51を、シュー17側には、摺動性の良い部材52をそれぞれ配置する等の手段を講じているが、部品点数が益々多くなり、構成も複雑となり、更にコスト高となるので、好ましくない。
【0023】
また、従来技術においては(図7)、構造上の理由から、吸込みポート(図示省略)と吐出しポート(図示省略)がそれぞれ1個しか設けられていず、ポンプが処理する作動流体の量に比べて、極めて少なく狭い。即ち、全体として共通の吸込みポートと吐出しポートがそれぞれ1個しか設けられていない。
【0024】
その結果、作動流体は、ポンプによる吸込みと吐出し時には、この1個ずつしかない吸込みポートと吐出しポートに集中するので、作動流体の速度が速くなって、圧力が低下し、よく知られているように、キャビテーションやエアレーションが発生して、吸込みポートと吐出しポートの磨耗、騒音、振動が大となる。
【0025】
吐出効率が低い。即ち、従来技術においては、既述したように、駆動軸6(図8)を回転させると、シリンダブロック11とピストン15とシュー17が同時に回転し、シュー17が傾斜角αで傾斜している傾板5上のスラストプレート50の上面を下端から上端まで摺動する間に、ピストン15は右側に移動する。
【0026】
これにより、作動流体である例えば水が、前記右側に移動するピストン15の作用により、エンドキャップ4側(図7)のバルブプレート12に設けた吸込みポート(図示省略)からシリンダ室14に入り込むが、このときのシリンダブロック11の角度位置を180°、ピストン15の往復運動位置をPとする(図6の一点鎖線で示す従来技術)。
【0027】
換言すれば、シリンダブロック11が半回転すると、ピストン15の先端部は、0からPの位置まで移動し、水を吸い込む(図8)。
【0028】
そして、既述したように、駆動軸6が更に回転を続行すれば、シュー17がスラストプレート50の上面を上端から下端まで摺動する間に、ピストン15は左側に移動するようになっている。
【0029】
これにより、前記左側に移動するピストン15の作用により、シリンダ室14内の水が、エンドキャップ4側(図7)のバルブプレート12に設けた吐出しポート(図示省略)から吐き出されるが、このときのシリンダブロック11の角度位置を360°、ピストン15の往復運動位置を0とする(図6の一点鎖線で示す従来技術)。
【0030】
換言すれば、シリンダブロック11が更に半回転すると、ピストン15の先端部は、Pから0の位置まで移動し、水を吐き出す(図8)。
【0031】
しかし、このように、従来は、シリンダブロック11が1回転する間に(図6の横軸における0°〜360°)、ピストン15が0からPに移動し、Pから0に移動するというように、該ピストン15は、わずか1回しか往復運動を行わない。
【0032】
従って、そのために、従来は、単位時間内における作動流体の吐出量があまりに少なく、吐出効率が極めて低い。
【0033】
水中での使用が困難である。即ち、従来技術においては、ピストン15ごとに、パッキン等のシール部材が設けられていない。
【0034】
そのため、若し従来のポンプを水中に設置した場合には、ピストン15が挿入されているシリンダ室14に水が入り込む等の不都合が生じるおそれがある。
【0035】
このため、従来は、水中での使用が困難である。
【0036】
本発明の目的は、部品点数を少なくし、磨耗、騒音、振動を小にし、吐出効率を向上させ、水中での使用を可能にした容積形往復ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載されているように、ピストン108〜113の往復運動によりシリンダ室116〜121の容積を変化させ、作動流体の吸い込みと吐き出しを行う容積形往復ポンプにおいて、駆動モータ100と、該駆動モータ100に直結して回転自在な円板101と、該円板101の円周方向に取り付けられた突起部材102〜107と、該突起部材102〜107に当接自在なピストン108〜113と、該ピストン108〜113が挿入されて吸込みポート114及び吐出しポート115を有するシリンダ室116〜121を設けたことを特徴とする容積形往復ポンプという手段を提供する。
【0038】
そして、この請求項1の従属項として、請求項2に記載されているように、上記突起部材102〜107が方向自在な球体により、ピストン108〜113の先端部108A〜113Aが円錐体によりそれぞれ構成され、請求項3に記載されているように、上記駆動モータ100が水中モータにより構成され、請求項4に記載されているように、上記シリンダ室116〜121の内壁に高圧側シール部材122と低圧側シール部材123がそれぞれ設けられ、又はシリンダ室116〜121の内壁に低圧側シール部材123がシリンダ室116〜121の外壁からピストン108〜113の基端部に亘ってダイヤフラム124がそれぞれ設けられ、請求項5に記載されているように、上記高圧側シール部材122と低圧側シール部材123の間、又はダイヤフラム124と低圧側シール部材123の間には、リークホール125が設けられ、該リークホール125の出口側には、逆止め弁126が設けられているという手段を提供する。
【0039】
上記本発明の構成によれば、ピストン108〜113(図1)の往復運動機構を構成する部品としては、ピストン108〜113を付勢するバネ127、及び円板101とその円板101の円周方向に取り付けられた突起部材102〜107だけであり、円板101は傾斜していないので、従来のサーボロッド30(図7)ような傾斜保持機構を構成する部品は不要であり、また、駆動モータ100(図1)は円板101に直結しているので、ベルト等の部品も不要であり、このため、本発明によれば、部品点数が極めて少なくなる。
【0040】
また、本発明の構成によれば、円板101は(図1)傾斜していないので、本発明の各ピストン108〜113には、従来のような力F(図8)が円板101側からは働かず、従って、ピストン108〜113(図1)とシリンダ室116〜121の磨耗は小となり、また、ピストン108〜113が往復運動する間に(図5(A)〜図5(K))、各ピストン108〜113の先端部108A〜113Aが前記円板101側の突起部材102〜107に摺動するだけであって、他の部分(例えばケーシング99(図1)の後端(左側))は摺動する構造となっていず、しかも、突起部材102〜107が方向自在な球体により、ピストン108〜113の先端部108A〜113Aが円錐体によりそれぞれ構成されているので、突起部材102〜107による各ピストン108〜113の往復運動が(図5(A)〜図5(K))円滑に行われ、従って、各ピストン108〜113の磨耗、騒音、振動は小となり、更に、各シリンダ室116〜121ごとに吸込みポート114(図1)と吐出しポート115が設けられており、このため、各吸込みポート114と吐出しポート115を通過する作動流体の速度は従来よりも遅く、従って圧力はそれほど低下せずに、従来のようにキャビテーションやエアレーションが発生することがなく、各吸込みポート114と吐出しポート115の磨耗、騒音、振動も小となる。
【0041】
また、本発明の構成によれば、ピストン108〜113の往復運動は(図5(A)〜図5(K))、回転する円板101に設けられた突起部材102〜107の各ピストン108〜113に対する押圧(例えば図5(A))・解放(例えば図5(B))作用に基づいて行われるので、円板101が1回転する間に(図6の横軸における0°〜360°)、1つのピストンは何回も往復運動を行い(図6の縦軸における0〜Pを例えば6回往復する(図6の実線))、その分、単位時間内における作動流体の吐出量が多くなり、従って、吐出効率が向上する。
【0042】
更に、本発明の構成によれば、駆動モータ100は水中モータで構成されていると共に、シリンダ室116〜121の内壁に高圧側シール部材122と低圧側シール部材123が設けられている等二重シールになっており、且つリークホール125が設けらていてシリンダ室116〜121内に水が万一進入してもそれを外部に吐き出すようになっているので、水中での使用が可能である。
【発明の効果】
【0043】
上記のとおり、本発明によれば、部品点数を少なくし、磨耗、騒音、振動を小にし、吐出効率を向上させ、水中での使用を可能にした容積形往復ポンプを提供するという効果を奏する。
【0044】
また、本発明によれば、上記したように、部品点数を少なくしたことにより、構成も簡単になると共に、組み立て作業が簡単になり、装置全体が小型になり、更には、部品点数を少なくしたことにより、維持管理も簡単になり、また、円板101側(図1)の突起部材の個数と、ケーシング99側のピストンの個数を適宜選択することにより、所定の個数の突起部材とピストンを組み合われば、同時により多くのピストンの往復運動を行わせることができ(例えば、円板101側の突起部材を6個、ピストンを8個設置した場合には、円板101が1回転する間に48通りのピストンの往復運動が行われる)、円板101の回転方向は任意であって、正逆双方向の回転が可能である等種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を、実施の形態により添付図面を参照して説明する。図1は、本発明による容積形往復ポンプの斜視図である。
【0046】
図1に示す容積形往復ポンプは、例えば水中に設置され、ケーシング99を有し、該ケーシング99は軸方向(Y軸方向)に向かって延びている。
【0047】
上記ケーシング99の一端(図1に向かって向こう側)には、駆動モータ100が設けられ、該駆動モータ100は、水中モータにより構成されている。
【0048】
上記駆動モータ100の回転軸100A(図2、図3)には、円板101側のボス101Aが嵌め込まれ、これにより、円板101が駆動モータ100に直結されていて該円板101が回転自在に設けられ、該円板101の円周方向には(図4)、突起部材102〜107が設けられている。
【0049】
上記突起部材102(図1)〜107は、方向自在であって、例えばフリーベアのような球体により構成されていて、図示するように上半分が露出しており、各球体102〜107には、ケーシング99側に設けたピストン108〜113の先端部108A〜113Aが当接自在である。
【0050】
図1〜図6は、突起部材102〜107とピストン108〜113がそれぞれ複数個の例であって、突起部材102〜107とピストン108〜113がいずれも6個(図4)設けられている。
【0051】
各ピストン108(図1)〜113は、対応するシリンダ室116〜121において、軸方向(Y軸方向)に移動自在に挿入されていて、バネ127により突起部材102〜107側に付勢され、これにより、該突起部材102〜107には、既述したように、各ピストン108〜113の先端部108A〜113Aが当接自在となっている。
【0052】
そして、回転する円板101に設けられた突起部材102〜107により、各ピストン108〜113が押圧され(例えば図5(A))、またその押圧から解放されるので(例えば図5(B))、その押圧・解放作用に基づいて、各ピストン108〜113の往復運動が行われる。
【0053】
図5において、図5(A)〜図5(K)の右図は、円板101側の突起部材102〜107と、ケーシング99側の各ピストン108〜113との角度位置関係を示し、左図は、そのときのピストン108〜113の往復運動位置を示している。
【0054】
この場合、当初は円板101側の突起部材102〜107は(図5(A))、ケーシング99側のピストン108〜113に当接しており、例えば突起部材102の角度位置を0°とし、他の突起部材103〜107の角度位置は、この0°から60°ずつ順にずれているものとする。
【0055】
また、この図5(A)の状態では、全てのピストン108〜113は、例えばピストン108のように、突起部材102に押圧されることにより(図5(A)の左図)、バネ127の付勢力に抗してシリンダ室116内を左側に移動し、このときの先端部108Aの軸方向の位置、換言すれば、ピストン108の往復運動位置を0とする。
【0056】
この状態で、駆動モータ100(図1)を作動させると、円板101が例えば時計方向Aに回転し(図5(A))、図5(B)の右図に示すように、各突起部材102〜107が30°ずつ角度位置をずらしたとする。
【0057】
このとき、例えばピストン108の先端部108Aからは、突起部材102が完全に離れるので、該ピストン108は、突起部材102の押圧力から解放され、バネ127の付勢力によりシリンダ室116内を右側に移動し、このときの往復運動位置をPとする。
【0058】
このようにして、駆動モータ100により円板101が時計方向Aに回転を続行すると、例えば図5(C)の右図に示すように、各突起部材102〜107が更に30°ずつ角度位置をずらし、例えば突起部材102が60°の角度位置に来たとする。
【0059】
このとき、突起部材102は、図示するように、ピストン108の右隣に隣接するピストン109に当接し、最初に(図5(A))突起部材102が当接したピストン108には、図5(C)の右図に示すように、突起部材107が当接している。
【0060】
そして、ピストン108は、今度は突起部材107に押圧されることにより(図5(C)の左図)、バネ127の付勢力に抗してシリンダ室116内を左側に移動し、このときの往復運動位置は、前記図5(A)の場合と同様に0である。
【0061】
このようにして円板101に設けられた突起部材102〜107により、ピストン108〜113が往復運動を行う場合において、円板101が1回転する場合の角度位置と、ピストン108〜113の往復運動位置との関係が、図6に示されている。
【0062】
図6においては、円板101が1回転する間に(図6の横軸における0°〜360°)、1つのピストンは何回も往復運動を行い、例えば図6においては6回往復運動を行うことを示している(図6の実線))。
【0063】
このため、本発明によれば、単位時間内における作動流体の吐出量が多くなり、従って、吐出効率が向上する(図6において、従来は、既述したように、シリンダブロック11(図8)が1回転する間に、ピストン15は1回しか往復運動を行わないので、従来技術と本発明において、ケーシングの大きさ、ピストンの数等がほぼ同じであれば、本発明の方が吐出効率が向上する)。
【0064】
また、上記往復運動(図5、図6)を行う各ピストン108〜113の先端部108A〜113Aは(図1)、図示するように、円錐体により構成され、円板101側の突起部材102〜107は、前記したように、方向自在な球体によりそれぞれ構成されている。
【0065】
この構成により、既述したように(図5)、円板101の回転運動に同期して円周方向に移動する突起部材102〜107が、各ピストン108〜113をシリンダ室116〜121内に容易に没入させると共に(例えば図5(A))、シリンダ室116〜121から容易に突出させるようになっており(例えば図5(B))、各ピストン108〜113の往復運動が円滑に行われる(図5(A)〜図5(K))。
【0066】
一方、ケーシング99の他端(図1に向かって手前側)には、図2に示すように、フィルタ取付板200が、その下には、弁取付板201がそれぞれ設けられている。
【0067】
上記フィルタ取付板200には、フィルタ114Aが、弁取付板201には、前記フィルタ114Aと同心状の吸込み弁114Bが、バネ114Cにより外側に付勢されて設けられている。
【0068】
また、弁取付板201には、前記吸込み弁114Bに平行に配置された吐出し弁115Bが、バネ115Cにより内側に付勢されて設けられている。
【0069】
更に、上記吸込み弁114Bと吐出し弁115Bは、いずれも例えばシリンダ室116に連通している。
【0070】
そして、前記フィルタ114Aと吸込み弁114Bにより、吸込みポート114が、また、前記吐出し弁115Bにより吐出しポート115がそれぞれ構成され、該吸込みポート114と吐出しポート115は、図1に示すように、各シリンダ室116〜121ごとに設けられている。
【0071】
この構成により、各ピストン108〜113の往復運動が行われる間に(図5(A)〜図5(K))、対応する各シリンダ室116(図1)〜121の吸込みポート114と吐出しポート115を通過する作動流体の速度は、従来よりも遅くなるので、よく知られているように、圧力はそれほど低下せずに、従来のようにキャビテーションやエアレーションが発生することがなく、磨耗、騒音、振動も小となる。
【0072】
即ち、既述したように、従来は、全体として共通の吸込みポート(図示省略)と吐出しポート(図示省略)がそれぞれ1個しか設けられていず、そのため、作動流体は、この1個ずつしかない吸込みポートと吐出しポートに集中するので、作動流体の速度が速くなって、圧力が低下し、よく知られているように、キャビテーションやエアレーションが発生して、磨耗、騒音、振動が大となる。
【0073】
これに対して、本発明の構成によれば、前記したように、各シリンダ室116〜121ごとに、吸込みポート114と(図1)吐出しポート115を設けた。
【0074】
このため、本発明によれば、作動流体は、各シリンダ室116〜121ごとに設けた前記吸込みポート114と吐出しポート115で分散して処理され、従来のように集中して処理されることはないので、既述したように、作動流体の速度は、従来よりも遅くなり、よく知られているように、圧力はそれほど低下せずに、従来のようにキャビテーションやエアレーションが発生することがなく、磨耗、騒音、振動も小となる。
【0075】
また、図2に示すように、シリンダ室116〜121の内壁には、高圧側シール部材122と低圧側シール部材123が設けられ、いずれも例えばOリングで形成されたパッキンにより構成されている。
【0076】
このように、シリンダ室116〜121は、二重シールになっていると共に、リークホール125が設けられていて、該リークホール125の出口側には、逆止め弁126が設置されている。
【0077】
この構成により、外部からシリンダ室116〜121内に水が万一進入しても、それを外部に吐き出すようになっている。
【0078】
上記二重シールを構成する部材は、既述したように、高圧側シール部材122と低圧側シール部材123とは限らず、図3に示すように、ダイヤフラム124と低圧側シール部材123でもよい。
【0079】
図3において、例えばピストン108の基端部は、ケーシング99に固定されたダイヤフラム取付板128に接合し、該ダイヤフラム取付板128には、よく知られているように、ダイヤフラム124がねじ止めされている。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、部品点数を少なくし、磨耗、騒音、振動を小にし、吐出効率を向上させ、水中での使用を可能にした容積形往復ポンプに利用され、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による容積形往復ポンプの斜視図である。
【図2】本発明による容積形往復ポンプの第1実施例を示す図である。
【図3】本発明による容積形往復ポンプの第2実施例を示す図である。
【図4】本発明を構成するピストン108〜113と球体102〜107との関係を示す図である。
【図5】本発明の動作説明図である。
【図6】本発明による円板101の角度位置とピストン108〜113の往復運動位置との関係を示す図である。
【図7】従来技術の説明図である。
【図8】図7の概略図である。
【符号の説明】
【0082】
99 ケーシング
100 駆動モータ
101 円板
102〜107 突起部材
108〜113 ピストン
114 吸込みポート
115 吐出しポート
116〜121 シリンダ室
122 高圧側シール部材
123 低圧側シール部材
124 ダイヤフラム
125 リークホール
126 逆止め弁
127 バネ
128 ダイヤフラム取付板
200 フィルタ取付板
201 弁取付板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの往復運動によりシリンダ室の容積を変化させ、作動流体の吸い込みと吐き出しを行う容積形往復ポンプにおいて、
駆動モータと、該駆動モータに直結して回転自在な円板と、該円板の円周方向に取り付けられた突起部材と、該突起部材に当接自在なピストンと、該ピストンが挿入されて吸込みポート及び吐出しポートを有するシリンダ室を設けたことを特徴とする容積形往復ポンプ。
【請求項2】
上記突起部材が方向自在な球体により、ピストンの先端部が円錐体によりそれぞれ構成されている請求項1記載の容積形往復ポンプ。
【請求項3】
上記駆動モータが水中モータにより構成されている請求項1記載の容積形往復ポンプ。
【請求項4】
上記シリンダ室の内壁に高圧側シール部材と低圧側シール部材がそれぞれ設けられ、又はシリンダ室の内壁に低圧側シール部材がピストンの基端部にダイヤフラムがそれぞれ設けられている請求項1記載の容積形往復ポンプ。
【請求項5】
上記高圧側シール部材と低圧側シール部材の間、又はダイヤフラムと低圧側シール部材の間には、リークホールが設けられ、該リークホールの出口側には、逆止め弁が設けられている請求項1記載の容積形往復ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−303746(P2008−303746A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149687(P2007−149687)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(504458688)有限会社 アイテックス (1)
【Fターム(参考)】