説明

容量的に間隔を検出するためのセンサ装置

本発明は、車両にあるセンサ装置と対象物との間の間隔を容量的に検出するためのセンサ装置に関するものであり、このセンサ装置は対象物と容量的配置を形成するための電極と、この容量的配置のキャパシタンスに比例する信号を生成する装置とを有する。このセンサ装置は、対象物(2)と容量的基準配置(9)を形成するための基準電極(7)と、この容量的基準配置(9)のキャパシタンス(C)に比例する基準信号(I)を生成するための別の装置(13)と、信号(I)と基準信号(I)との比を形成することにより間隔(d)を求めるための評価装置とをさらに有し、前記基準電極(7)の電極形状は電極(5)の電極形状とは異なることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両にあるセンサ装置と対象物との間の間隔を容量的に検出するためのセンサ装置に関するものであり、このセンサ装置は対象物と容量的配置を形成するための電極と、この容量的配置のキャパシタンスに比例する信号を生成する装置とを有する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサ装置は公知である。このセンサ装置は、車両と車両外にある対象物、例えば車両の周囲にある他車との間の間隔測定のために車両で使用される。このために電極が車両に取り付けられており、この電極は(対向電極としての)対象物とともに容量的配置を形成する。この容量的配置のキャパシタンスが検出され、そこからセンサ装置または車両と対象物との間隔が求められる。ここでは電極と対象物との間にある物質、この場合実質的には空気の誘電率が関与する。この種の容量的配置ではそのキャパシタンスが、水と空気の誘電率の差が大きいため、例えば湿度変動または温度変動のような天候の影響を強く受ける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この誘電率の影響を除去するためにセンサ装置は、対象物と容量的基準配置を形成するための基準電極と、この容量的基準配置のキャパシタンスに比例する基準信号を生成するための別の装置と、信号と基準信号との比を形成することにより間隔を求めるための評価装置とをさらに有する。ここで基準電極は、電極の電極形状とは異なる電極形状を有する。電極形状が異なることによって、容量的基準配置のキャパシタンスと基準電極−対象物間の間隔との関係性は、容量的配置のキャパシタンスと電極−対象物間の間隔との関係性とは異なる。評価装置によって、容量的配置のキャパシタンスCと容量的基準配置のキャパシタンスCとの比を形成すると、電極と対象物ないし基準電極と対象物との間にある物質の誘電率ε=εεが除去される。この比の間隔関係性は、幾何的大きさと、電極/基準電極と対象物とのそれぞれの間隔だけに依存する。センサ装置はとりわけ車両に配置されたセンサ装置であり、車両と車両外にある対象物との間隔を検出するために用いられる。この車両外にある対象物は、例えば他車である。
【0004】
本発明の有利な実施形態では、2つの電極(電極または基準電極)の一方がプレート状電極として構成されており、および/または他方の電極がシリンダ状電極として構成されている。プレート状電極とシリンダ状電極の電極形状の差は明白である。シリンダ状電極は例えば相応に形成された導体から形成することができる。プレート状電極/基準電極では、容量的配置/基準配置を近似的にプレートコンデンサと見なすことができる。シリンダ状電極/基準電極では、電極/基準電極と対象物との(シリンダ状電極の半径rより格段に大きい)間隔に対する容量的配置/基準配置を近似的にシリンダコンデンサと見なすことができる。有利には2つの電極の一方がプレート状電極として、他方がシリンダ状電極として構成されている。
【0005】
本発明の有利な実施形態では、信号/基準信号を生成するための装置の少なくとも1つが、信号/基準信号を生成するためのそれぞれ別の装置および評価装置と導電的に分離されている。この導電的分離によって、信号/基準信号の生成を2つの装置で相互に独立して行うことができる。
【0006】
とりわけ、信号/基準信号を生成するための装置の少なくとも1つが、これに配属された容量的配置/基準配置と共振回路を形成する。ここで有利には、信号/基準信号は共振回路の時定数または周波数である。
【0007】
有利には信号/基準信号を生成するための装置の少なくとも1つは、他の電位を遮蔽するためのシールド電極を有する。センサ装置が車両に配置されている場合、シールド電極は電極または基準電極を、車両の電位に対して遮蔽する。
【0008】
さらに有利には、信号/基準信号を生成するための装置は、信号および/または基準信号をデジタル信号として評価装置に出力する。このために信号/基準信号は所属の装置のアナログ/デジタル変換器によってデジタル信号またはデジタル基準信号に変換される。続いてこのデジタル信号/基準信号が評価装置に出力される。デジタル信号/基準信号として出力することにより、導電的分離を簡単かつ確実に実現することができる。
【0009】
最後に有利には評価装置は、信号と基準信号との比を形成し、この比から間隔を求めるための計算ユニットを有する。
【0010】
本発明を以下では付属の図面に基づき実施例を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】センサ装置の概略図である。
【図2】電極および基準電極を有する、車両に配置されたセンサ装置と他車とを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、センサ装置1と、検出領域3内にある対象物2との間隔を容量的に検出するためのセンサ装置を概略的に示す。このセンサ装置は図示しない車両に配置されており、図2に示すようにセンサ装置と、車両外の対象物との間隔を検出するために用いられる。したがって検出領域は車両の外の領域である。センサ装置1は実質的にシリンダ状電極4として構成された電極5と、プレート状電極6として構成された基準電極7を有する。電極5は対象物2と容量的配置8を形成する。この容量的配置は電極5と対象物2との間の電界線により示されている。基準電極7は対象物2と容量的基準配置9を形成し、これも相応の電界線により示されている。容量的配置8と容量的基準配置9とがそれぞれ検出領域3に制限されるようにするため、電極5は第1のシールド電極10により、基準電極7は第2のシールド電極11により一部が包囲されている。シールド電極10,11は両方の電極5,7を、検出領域3外の電位に対して遮蔽する。電極5は、容量的配置8のキャパシタンスCに比例する信号を生成する装置12と接続されている。基準電極7は、容量的基準配置9のキャパシタンスCに比例する基準信号を生成する装置13と接続されている。信号Iを生成するために装置12は、本来の信号を生成する測定回路14(とりわけ共振回路)を有する。この測定回路には容量的配置8が電気的に組み込まれている。本来の信号は引き続きアナログ/デジタル変換器15に出力され、このアナログ/デジタル変換器15は本来の信号から相応するデジタル信号Iを生成し、評価装置16に出力する。別の装置が測定回路17を有し、この測定回路17には容量的基準配置9が電気的に組み込まれている。測定回路17によって、容量的基準配置9のキャパシタンスCに比例する本来の基準信号Iが生成される。この本来の基準信号Iは、別の装置13のアナログ/デジタル変換器18に出力される。アナログ/デジタル変換器18は、この本来の基準信号Iからデジタル基準信号Iを生成し、この信号も同様に評価装置16に出力される。評価装置16は、信号と基準信号の比を形成し、この比から間隔を求めるための計算ユニット19を有する。求められた間隔は引き続き出力端20に出力される。
【0013】
センサ装置と対象物2との間隔dを容量的9に検出するためのこのセンサ装置では次の関数が使用される。電極5と基準電極7の電極形状が異なるため、容量的配置8と容量的基準配置9のキャパシタンスC、Cと距離dとの関数関係が異なる。シリンダ状電極4を備える容量的配置(単一導体配置)のキャパシタンスCは、シリンダコンデンサのキャパシタンスにより近似することができる。この容量的配置のキャパシタンスCに対しては次式が当てはまる。
【0014】
【数1】

【0015】
容量的基準配置9のキャパシタンスCはプレートコンデンサのキャパシタンスとして近似することができ、次式が当てはまる。
【0016】
【数2】

【0017】
ここでlは電極5の長さ、rは電極5の半径、そしてdは対象物2の表面までの間隔である。プレートコンデンサでは、Aが作用する電極面積、dがプレート間隔である。さらに電界定数εと誘電率εが式1と2に入り込む。誘電率εは、電極/基準電極5,7と対象物2との間にある物質の特徴的な材料定数である。センサ装置1が、このセンサ装置1と車両の外にある対象物2との間隔測定に使用される場合、容量的配置および容量的基準配置8,9のキャパシタンスは、水の誘電率が空気の誘電率に対して格段に大きいため天候の影響、例えば湿度変動および温度変動の影響を受ける。異なる電極形状に構成された電極5と基準電極7により測定することによって、この天候への依存性を除去することができる。
【0018】
キャパシタンスC、Cの測定は測定回路14,17によって、例えば時定数としての立上がり時間を測定することにより行われる。ここでキャパシタンスC、Cの測定、およびこのキャパシタンスC、Cに比例する信号I、Iの生成は相互に独立して行わなければならない。このことはアナログ/デジタル変換器15、18によって導電分離することにより達成される。これらのアナログ/デジタル変換器の出力信号は電極5および基準電極7の電位には依存しない。アナログ/デジタル変換器15、18の出力信号(デジタル信号とデジタル基準信号)は評価装置16に出力され、この評価装置は信号と基準信号の比(C/C)を形成する。この商形成により、天候に依存する誘電率εを消去することができる。以下の間隔依存性q(d)が得られ、この間隔依存性は幾何的大きさと、電極5,7と対向電極としての対象物の表面との間隔dにだけ依存する。
【0019】
【数3】

【0020】
図2は、電極5と基準電極7を備えるセンサ装置1を車両21に取り付けるための実施形態を示す。容量的配置8と容量的基準配置9の相応の対向電極は、他車22である対象物により形成される。電極5,7を車両21のアースに対して遮蔽するためのシールド電極は図示されていない。間隔dを連続的に、または時間間隔をおいて検出することにより、対象物2のセンサ装置1に対する相対速度を求めることができる。図2のセンサ装置1の配置は車両21の側面領域であり、車両21に向かって運動する(矢印23)他車22との衝突を、本来の衝突の前に明白に検知するために使用することができ、例えば車両21の乗客24を保護するための措置を執ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配置されたセンサ装置と対象物との間の間隔を容量的に検出するためのセンサ装置であって、該センサ装置は対象物と容量的配置を形成するための電極と、該容量的配置のキャパシタンスに比例する信号を生成する装置とを有する形式のセンサ装置において、
対象物(2)と容量的基準配置(9)を形成するための基準電極(7)と、
該容量的基準配置(9)のキャパシタンス(C)に比例する基準信号(I)を生成する装置(13)と、
前記信号(I)と基準信号(I)の比を形成することにより前記間隔(d)を求めるための評価装置(16)とを有し、
前記基準電極(7)は、前記電極(5)の電極形状とは異なる電極形状を有する、ことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記対象物(2)は、前記車両(21)の外にある対象物(2)であることを特徴とする請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記2つの電極(5,7)の一方がプレート状電極(6)として構成されており、および/または前記2つの電極(5,7)の他方がシリンダ状電極(4)として構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記装置(12,13)の少なくとも1つは、それぞれ他方の装置(12,13)および評価装置(16)から導電分離されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記装置(12,13)の少なくとも1つは、これに所属する容量的構成体/基準構成体(8,)と共振回路を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記装置(12,13)の少なくとも1つは、他の電位を遮蔽するためのシールド電極(10,11)を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記装置(12,13)は信号(I)および/または基準信号(I)をデジタル信号として評価装置(16)に出力することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記評価装置(16)は、比を形成し、間隔(d)を求めるための計算ユニット(19)を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−540946(P2010−540946A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527387(P2010−527387)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062050
【国際公開番号】WO2009/047073
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】