説明

密封構造

【課題】2部材の組み付け時にガスケットが倒れることを抑制でき、また2部材のうちの少なくともいずれか一方が熱変形した場合でもシール性を維持することができる密封構造を提供する。
【解決手段】2部材1,2の内の一方の部材1の被シール面1aに凹設された溝部10にガスケット3を装着し、前記2部材間をシールする密封構造であって、前記溝部は、深さ方向F奥側に形成された第1溝部11と、前記溝部の開口側に前記第1溝部よりも幅広で、且つ、対向する両内壁12a,12aが略平行に形成された第2溝部12とを備え、前記ガスケットは、前記第1溝部に挿入される挿入部31を有したガスケット本体部30と、該ガスケット本体部よりも幅寸法が大きく、且つ、他方の部材の被シール面2aに対向する曲面部32aを有した突出部32とを備え、前記突出部の最大幅寸法Bは、前記第1溝部の幅寸法L1よりも大きく、前記第2溝部の幅寸法L2よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関におけるシリンダヘッドとインテークマニホールドとの間、或いはシリンダヘッドとヘッドカバーとの間を、ガスケットを介してシールする密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述のような2部材間をガスケットを介してシールする密封構造が、種々提案されており、例えば、以下の特許文献1が挙げられる。
特許文献1には、ブレーキ液圧制御装置における電磁制御弁のソレノイド駆動機構部を収容するケーシングにおけるシール構造が開示されている。
このシール構造においては、ケーシングを構成する第1構成ユニットの組み付けシール面側に環状シール溝が形成され、この環状シール溝は、底部側の幅狭溝部と、開口部側の幅広溝部とを有している。一方、この環状シール溝に装着される環状シール部材は、該環状シール溝の深さより長手方向が長い断面略長円状の形状とされている。そして、環状シール溝に環状シール部材を装着した状態で、第1構成ユニットに第2構成ユニットを組み付ける際に、環状シール部材が幅狭溝部に圧縮状態で充填されると共に、環状シール部材における環状シール溝の開口縁部より突出する先端潰れ部が幅広溝部に収容される。これによって、組み付け時における環状シール部材の倒れを防止すると共に、第1構成ユニット及び第2構成ユニット間での環状シール部材の噛み込みを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−263496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるシール構造の場合、環状シール部材は、幅狭溝部の内壁に対して干渉する範囲が大きくなっているため、例えば熱を受けることにより2部材のいずれか一方に熱変形が生じる場合、次のような問題が生じることが予想される。即ち、2部材間に環状シール部材を組み付けた後、熱が加わることによって、2部材のいずれか一方に熱変形が生じると両部材間のシール面間隔が大きくなろうとする。この時、前記のように環状シール部材の幅狭溝部の内壁への干渉範囲が大きいと、シール部材と幅狭溝部の内壁との間に生じる摩擦抵抗も大きくなるため、環状シール部材はシール面の間隔の変動に追従して弾性変形することが難くなり、シール面間におけるシール性が低下することになる。また、環状シール部材の幅狭溝部の内壁への干渉範囲を小さくするために幅狭溝部の深さを小さくすることも考えられる。しかしながら、この場合、環状シール部材における前記幅狭溝部より突出する部分の割合が大きくなり、これに伴って幅狭溝部の内壁では環状シール部材の傾きを規制することが難しくなる。そのため、第1構成ユニットと第2構成ユニットとを組み付ける際に、環状シール部材が組み付け時に倒れ易くなることが予想される。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、2部材の組み付け時にガスケットが倒れることを抑制でき、また2部材のうちの少なくともいずれか一方が熱変形した場合でもシール性を維持することができる密封構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る密封構造は、2部材の内の一方の部材の被シール面に凹設された溝部にガスケットを装着し、前記2部材間をシールする密封構造であって、前記溝部は、深さ方向奥側に形成された第1溝部と、前記溝部の開口側に前記第1溝部よりも幅広で、且つ、対向する両内壁が略平行に形成された第2溝部とを備え、前記ガスケットは、前記第1溝部に挿入される挿入部を有したガスケット本体部と、該ガスケット本体部よりも幅寸法(溝部の深さ方向に直交する方向に沿った寸法)が大きく、且つ、他方の部材の被シール面に対向する曲面部を有した突出部とを備え、前記突出部の最大幅寸法(同上)は、前記第1溝部の幅寸法(同上)よりも大きく、前記第2溝部の幅寸法(同上)よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、一方の部材の溝部にガスケットが装着される際、ガスケット本体部の挿入部が第1溝部に挿入される。それぞれの被シール面が当該ガスケットを介在させてシールされるよう2部材を組み付けると、ガスケットが前記深さ方向に圧縮され、前記挿入部が幅方向への膨大化を伴い変形して第1溝部の底壁に弾接する。この組み付けの際、挿入部が倒れようとしても、第1溝部の開口縁部ないしは内壁に当たって倒れが防止される。また、ガスケットは、最大幅寸法がガスケット本体部の幅寸法より大きい突出部を備えているから、前記組み付けの際、この突出部が幅方向への膨大化を伴い変形する。そして、この時、ガスケットが倒れようとしても、突出部が第2溝部の開口縁部ないしは内壁に当たることで倒れが防止される。このように、2部材が組み付けられる際に、ガスケットは第1溝部及び第2溝部の両方で倒れが防止されるため、第1溝部及び第2溝部の深さ寸法に拘らず、ガスケットは倒れ難い。そして、前記突出部の最大幅寸法は、ガスケット本体部の幅寸法及び前記第1溝部の幅寸法よりも大きく、前記第2溝部の幅寸法よりも小さいから、ガスケット本体部自体は第2溝部の内壁に対して非接触ないしは小さな力で弾接する。従って、溝部の内壁に対するガスケットの干渉範囲がガスケットの全体には及ばないので、溝部の内壁との間で生じる摩擦抵抗が大きくない。そのため、例えば2部材の少なくとも一方が熱変形することによって両部材の被シール面の間隔が変動しても、ガスケットはその復元弾力によって被シール面間の変動に追従して弾性変形することができ、突出部と対向する被シール面との弾接状態が維持される。これによって、シール性が維持される。更に、突出部の前記被シール面に対向する部分が曲面部とされているから、組み付け開始時におけるこの曲面部と被シール面との当接が、線接触状態から幅広の接触状態に移行する。そのため、2部材の組み付けの際における圧縮力が曲面部に分散して加わり、曲率半径の小さなものと比べてガスケット本体に対する圧縮力の集中の度合いが小さい。従って、両部材の被シール面が平行になっていない状態で両部材が組み付けられようとしても、ガスケットを倒そうとする方向の力は小さくなり、所謂斜め組み付けによるガスケットの倒れが生じ難くなる。
【0008】
本発明の密封構造において、前記挿入部が、先側に向かって幅が次第に小さくなる先細形状に形成されているものとしても良い。これによれば、第1溝部に挿入部が挿入されて圧縮状態となった際、第1溝部が充填過多になり難く、挿入部の圧縮阻害を生じ難くすることができる。
【0009】
本発明の密封構造において、前記2部材のうちの少なくともいずれか一方が樹脂材製であっても良い。樹脂材製の部材は熱によって変形し易いが、前述のように、熱変形して2部材の被シール面の間隔が変動しても、ガスケットがこれに追従して弾性変形し被シール面におけるシール性が維持される。特に、2部材の一方の部材が樹脂材製である場合が多い前記シリンダヘッドとインテークマニホールドとの間、或いはシリンダヘッドとヘッドカバーとの間に、本発明の密封構造を適用すれば、熱変形によってもシール性が低下せず、これらの適性が増大する。
【0010】
本発明の密封構造において、前記ガスケット本体部の高さ寸法(溝部の深さ方向に沿った寸法)を、前記突出部の高さ寸法(同上)より大きくしても良い。このような寸法関係にすることにより、ガスケット全体におけるガスケット本体部の割合が大きくなり、溝部の内壁に対するガスケットの干渉範囲が相対的に小さくなる。これによって、ガスケットは、前記熱変形による2部材の被シール面の間隔変動に対してより追従して弾性変形し易くなる。特に、少なくとも一方が合成樹脂のように熱変形を生じ易い素材で構成される2部材間をシールする場合においてより有効である。
【0011】
本発明の密封構造において、前記ガスケット本体部の幅寸法が、前記第1溝部の幅寸法よりも小さいものとしても良い。このような寸法関係によって、ガスケット本体部の挿入部が第1溝部に円滑に挿入される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の密封構造によれば、2部材の組み付け時にガスケットが倒れることを抑制でき、また2部材のうちの少なくともいずれか一方が熱変形した場合でもシール性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の密封構造が適用されるシール対象の2部材の締結状態を示す要部の断面図である。
【図2】図1におけるZ部の拡大断面図であり、同密封構造に用いられるガスケットの一実施形態を示し、このガスケットを2部材間に配置した状態を示す図である。
【図3】同実施形態のガスケットを介在させ、2部材を締結によって組み付けて構成した密封構造を示す断面図である。
【図4】同実施形態のガスケットの部分破断斜視図である。
【図5】同ガスケットを用い、2部材を斜め組み付けさせる際のガスケットの圧縮過程の状態を示す断面図である。
【図6】比較例としてのガスケットを用い、2部材を斜め組み付けさせる際のガスケットの圧縮過程の状態を示す断面図である。
【図7】他の実施形態のガスケットの部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1ないし図3は、内燃機関におけるインテークマニホールド(1方の部材)とシリンダヘッド(他方の部材)2との間を、ガスケット3を介してシールする密封構造を示している。インテークマニホールド1は合成樹脂の成型体からなり、該インテークマニホールド1の被シール面1aには、ガスケット3を装着するための溝部10が凹設されている。被シール面1aは、環状に形成され、溝部10は、環状の被シール面1aの周方向に沿って環状に凹設されている。溝部10は、深さ方向(被シール面1aに直交する方向)Fの奥側に形成された第1溝部11と、第1溝部11の開口側に該第1溝部11よりも幅広で、且つ、対向する内壁12a,12aが略平行に形成された第2溝部12とを備えている。第2溝部12は、図2に示すように、その幅寸法L2が第1溝部11の幅寸法L1より大となるよう、第1溝部11に対し段差部13を介して連なって形成されている。第1溝部11及び第2溝部12は、前記深さ方向Fに沿った中心線に対し線対称に形成されている。
【0015】
ガスケット3は、FKM,NBR,H−NBR,EPDM,CR,ACM,AEM,VMQ及びFVMQ等のゴム材による加硫成型体からなり、前記環状の溝部10に填まり得るよう環状に形成されている。該ガスケット3は、図4にも示すように、前記第1溝部11に挿入される挿入部31を有したガスケット本体部30と、該ガスケット本体部30よりも幅寸法が大きく、且つ、シリンダヘッド2の被シール面2aに対向する曲面部32aを有した突出部32とを備えている。ガスケット本体部30は、断面形状が長方形部分と、その長手方向一端側に、先側に向かって幅が次第に小さくなる先細形状(山形テーパ形状)に形成された前記挿入部31とよりなる。また、ガスケット本体部30の長手方向他端側には、該ガスケット本体部30の幅寸法(短手方向寸法)Aより最大幅寸法Bが大きい前記突出部32が一体に形成されている。図例の突出部32は断面形状が円形とされ、前記最大幅寸法Bは、該円形の突出部32の直径に略相当する。
【0016】
ガスケット本体部30の幅寸法Aは、前記第1溝部11の幅寸法(前記深さ方向Fに直交する方向の幅)L1より小とされ、また、突出部32の最大幅寸法Bは、第1溝部11の幅寸法L1より大きく、第2溝部12の幅寸法(同上)L2より小さく設定されている。また、挿入部31を含むガスケット本体部30の高さ(前記深さ方向Fに沿った高さ)H1は、突出部32の高さ(同上)H2より大とされている。更に、ガスケット本体部30の高さH1は、溝部10の深さF0より小さく、ガスケット3の全体高さH1+H2は、溝部10の深さF0より大とされている。ガスケット本体部30における前記挿入部31に連なる部分の両外側部には、その周方向に沿って、適宜間隔毎に複数の脱落防止突起33が突設されている。この脱落防止突起33は、後記するように、前記挿入部31を第1溝部11に挿入する際に、第1溝部11の開口縁部11b,11b近傍の内壁11a,11aに圧縮状態で弾接し得るようにその位置及び突出高さが設定されている。
【0017】
次に、インテークマニホールド1及びシリンダヘッド2の各被シール面1a,2a間に前記ガスケット3を介在させて、当該2部材1,2間をシールする密封構造を構成する要領を説明する。先ず、図2に示すように、ガスケット3の挿入部31を、インテークマニホールド1の被シール面1aに形成された溝部10の第1溝部11に挿入する。この挿入は、ガスケット本体部30の両外側部に形成された脱落防止突起33をガスケット本体部30の幅方向中心部に向け圧縮させながら、挿入部31の頂部が第1溝部11の底壁11cに当接ないし近接するようになされる。これによって、ガスケット3の溝部10に対する装着がなされる。このように、挿入部31を第1溝部11に挿入することによって、ガスケット3を溝部10に装着させた状態では、脱落防止突起33は圧縮反力により第1溝部11の両内壁11a,11aに突っ張るよう弾接する。従って、インテークマニホールド1の被シール面1aを下向きにしても、この脱落防止突起33の突っ張るような弾接力によって、ガスケット3が脱落することなく溝部10に安定的に保持される。
【0018】
次いで、図2に示すように、ガスケット3が溝部10に装着されたインテークマニホールド1を、その被シール面1aを下向きにして、シリンダヘッド2の被シール面2aの上に重ね、ボルト4の締結によってシリンダヘッド2に組み付ける。ボルト4による締結過程で、ガスケット3が前記深さ方向Fに沿って圧縮され、この圧縮に伴い、ガスケット3の各部位が幅方向に膨大化するよう弾性変形する。挿入部31においては、先側に向かって幅が次第に小さくなる山形テーパ形状とされているため、ガスケット3の圧縮前においては第1溝部11に空間部が確保されており、ガスケット3が圧縮されると第1溝部11の空間部を満たすように弾性変形がなされる。そのため、ガスケット3が圧縮された状態でも第1溝部11が充填過多とならず、図3に示すように、挿入部31が、第1溝部11内に均一に、且つ、圧縮阻害を生じることなく充填される。また、締結過程で、挿入部31が倒れようとしても、第1溝部11の開口縁部11bないしは開口縁部11bの近傍内壁11aに当たって、それ以上の倒れが防止される。
【0019】
また、ガスケット本体部30及び突出部32においても、前記深さ方向Fへの圧縮に伴い幅方向に膨大化して、第2溝部12の空間部を満たすように弾性変形がなされる。この場合、突出部32の最大幅寸法Bがガスケット本体部30の幅寸法Aより大とされているから、ガスケット本体部30の両側部は、図3に示すように両内壁12a,12aに非接触ないしは小さな力で弾接する。そして、締結過程でガスケット本体部30及び突出部32が倒れようとしても、突出部32が第2溝部12の開口縁部12bないしは開口縁部12bの近傍内壁12aに当たって、それ以上の倒れが防止される。
【0020】
インテークマニホールド1及びシリンダヘッド2が、図1及び図3に示すように、所定の締結合体状態に組みつけられた時には、ガスケット3は溝部10内に圧縮された状態とされる。この圧縮状態では、ガスケット本体部30の挿入部31を含む一端側部分が第1溝部11の内壁11a及び底壁11cに弾接し、また突出部32が第2溝部12の内壁12a及びシリンダヘッド2の被シール面2aに弾接する。これによって、インテークマニホールド1及びシリンダヘッド2の被シール面1a,2aがシールされるとともに、ガスケット3を膨潤(劣化)させる媒体(例えば、燃料等)が溝部10内にまで進入することを抑制できる。そして、インテークマニホールド1を含む内燃機関は高温の環境下で使用されるため、図例のようにインテークマニホールド1が合成樹脂の成型体からなる場合、熱変形を起こし易い。この熱変形によって、各ボルト4による隣り合う締結部間におけるインテークマニホールド1の被シール面1aが浮き上がり、被シール面1a,2aの間隔が拡がろうとする。しかし、ガスケット本体部30は第2溝部12の両内壁12a,12aに非接触ないしは小さな力で弾接するから、ガスケット3の溝部10の内壁による干渉範囲は、図3のクロスハッチングに示すように、ガスケット3の全体には及ばない。ガスケット3には圧縮されていることによって深さ方向Fに沿った復元弾力が生じており、ガスケット3と第2溝部12の内壁12aとの間で生じる摩擦抵抗はガスケット3の復元弾力よりも小さくなっているため、被シール面1a,2aの間隔の拡がりに伴い突出部32は被シール面2a側に膨出するよう弾性変形する。これによって、突出部32の下面部(曲面部)32aの被シール面2aに対する弾接状態が一定に維持され、インテークマニホールド1が熱変形しても、シリンダヘッド2とのシール性が低下することがない。
【0021】
前記ガスケット3を介したインテークマニホールド1及びシリンダヘッド2の組み付けの際、両被シール面1a,2aが平行でなく、所謂斜め組み付けがなされる場合が間々ある。この場合、被シール面2aから受ける締結力の方向(被シール面2aに垂直な方向)は、前記深さ方向Fに沿わなくなる。図5は、このような斜め組み付けの際のガスケット3の圧縮過程の状態を示している。図5の2点鎖線で示すように、シリンダヘッド2の被シール面2aがインテークマニホールド1の被シール面1aに対して斜めの状態で締結が開始されると、ガスケット3は被シール面2aとの接触部分で矢印X方向の締結力を受ける。この締結力の方向Xは、前記深さ方向Fに沿わないから、ガスケット3を倒そうとする力として作用する。締結当初では、ガスケット3における突出部32の曲面部32aが被シール面2aに対して線接触状態で当接しているが、曲面部32aの曲率半径が大きいので、締結の開始に伴う突出部32の圧縮によって、程なく面接触状態に移行する。そのため、前記締結力が面接触部分で分散し、実質的にガスケット3を倒そうとする力が分散することになり、これによって、斜め組み付けにおいてもガスケット3の倒れが生じることなく締結による圧縮がなされる。
【0022】
これに対し、図6に示す比較例では、ガスケット3´の被シール面2aに当接する部分32´が曲率半径の小さな曲面部とされている。そのため、締結過程で被シール面2aに当接する部分32´の線接触状態から面接触状態への移行度合いが小さく、従って、前記矢印X方向の締結力がガスケット3´に対して集中し、ガスケット3´を倒そうとする大きな力として作用する。その結果、図6の実線で示すように、ガスケット3´が、締結過程で溝部10内に倒れこむような事態が生じ易くなる。
【0023】
図7は、本発明の密封構造に適用されるガスケットの他の実施形態を示している。この実施形態のガスケット3は、突出部32の形状が前記の実施形態と異なっている。突出部32は、断面形状が倒D字形状であり、その最大幅寸法Bがガスケット本体部30の幅寸法Aより大とされ、シリンダヘッド2の被シール面2aに対向する側に前記実施形態の例よりも曲率半径の大きな曲面部32aを有している。このような形状の突出部32も、前記と同様の機能を奏する。特に、曲面部32aの曲率半径が大きいから、斜め組み付け時におけるガスケット3の倒れの懸念がより少なくなる。ガスケット3のその他の構成は前記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
尚、ガスケット3の挿入部31の形状は、図例のような先細形状に限定されず、例えば、断面形状がガスケット本体部30と同様に長方形状となるように形成してもよいし、更に、その一端側に突条を設けてもよい。また、ガスケット本体部30の高さH1と突出部32の高さH2とが等しくなるようにガスケット3を形成してもよいし、突出部32の高さH2の方がガスケット本体部30の高さH1よりも大きくなるようにガスケット3を形成してもよい。また、ガスケット3が圧縮されたときに、第1溝部11において充填過多にならないような形状に形成されるのであれば、ガスケット本体部30の幅寸法Aが第1溝部11の幅寸法L1と等しい、若しくは第1溝部11の幅寸法L1より若干大きくなるようにガスケット本体部30の幅寸法Aを設定してもよい。このような形状のガスケット3であっても、ガスケット本体部30を幅方向に圧縮させることで、第1溝部11に挿入することができる。また、前記実施形態では、2部材1,2がインテークマニホールド及びシリンダヘッドである例について述べたが、本発明の密封構造は、これに限定されず、ヘッドカバー及びシリンダヘッド間の密封構造や、ウォーターポンプケース及びその取付部間の密封構造や、オイルパン及びその取付部間の密封構造等、その他の2部材間の密封構造にも適用される。また、1方の部材1であるインテークマニホールドが合成樹脂の成型体からなる場合を例示したが、2部材1,2が共に金属製、或いは合成樹脂製であっても良い。更に、脱落防止突起33を設けるガスケット3の部位は図4の例に限定されず変更してもよい。例えば、脱落防止突起33をガスケット本体部30のうち挿入部31以外の部分、具体的には脱落防止突起33を第2溝部12の内壁12aに対向するガスケット本体部30の側面に設けてもよい。この場合、脱落防止突起33は第2溝部12の両内壁12a,12aに弾接し、ガスケット3が脱落することを防止する。また、脱落防止突起33は、溝部10に装着されたガスケット3の安定性を図る上で有効であるが、本発明の密封構造においては、必ずしも必須とされるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1 インテークマニホールド(一方の部材)
1a 被シール面
10 溝部
11 第1溝部
12 第2溝部
12a 内壁
2 シリンダヘッド(他方の部材)
2a 被シール面
3 ガスケット
30 ガスケット本体部
31 挿入部
32 突出部
32a 曲面部
A ガスケット本体部の幅寸法
B 突出部の最大幅寸法
F 深さ方向
L1 第1溝部の幅寸法
L2 第2溝部の幅寸法
H1 ガスケット本体部の高さ寸法
H2 突出部の高さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材の内の一方の部材の被シール面に凹設された溝部にガスケットを装着し、前記2部材間をシールする密封構造であって、
前記溝部は、深さ方向奥側に形成された第1溝部と、前記溝部の開口側に前記第1溝部よりも幅広で、且つ、対向する両内壁が略平行に形成された第2溝部とを備え、
前記ガスケットは、前記第1溝部に挿入される挿入部を有したガスケット本体部と、該ガスケット本体部よりも幅寸法が大きく、且つ、他方の部材の被シール面に対向する曲面部を有した突出部とを備え、
前記突出部の最大幅寸法は、前記第1溝部の幅寸法よりも大きく、前記第2溝部の幅寸法よりも小さいことを特徴とする密封構造。
【請求項2】
請求項1に記載の密封構造において、
前記挿入部は、先側に向かって幅が次第に小さくなる先細形状に形成されていることを特徴とする密封構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の密封構造において、
前記2部材のうちの少なくともいずれか一方が樹脂材製であることを特徴とする密封構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の密封構造において、
前記ガスケット本体部の高さ寸法は、前記突出部の高さ寸法より大きいことを特徴とする密封構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の密封構造において、
前記ガスケット本体部の幅寸法は、前記第1溝部の幅寸法よりも小さいことを特徴とする密封構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−246969(P2012−246969A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117710(P2011−117710)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】