説明

密封装置

【目的】密封側の流体が跳ねかかる状態で使用される密封装置において、シールリップに供給される流体を減少させて安定した密封性能を確保すること。
【構成】シールリップ5に供給される流体の量を減少させるためのカバー部材9が回転軸1に固定されており、前記のカバー部材9は、前記回転軸1に嵌着されるスリーブ部10と、前記シールリップ5を密封側から覆うフランジ部11とで構成されるとともに、前記フランジ部11は、内周から外周にかけて密封側に向かって傾斜する構成としたこと。また、前記回転軸1に固定されるカバー部材9のスリーブ部10とフランジ部11とを一体に構成し、前記スリーブ部10に上記シールリップ5が摺動接触するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関し、密封側の流体が跳ねかかるような状態で使用されるのに好適な密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密封装置としてのオイルシールは、回転軸に摺動接触するシールリップによって流体であるオイルを密封する装置であるが、流体の量や動きによって密封性能が変化する。そこで、密封側の流体が跳ねかかる状態で使用されるオイルシールにおいては、シールリップに供給される流体の量を減少させる構成を採ることで密封性能の向上が期待できる。
【0003】
従来、このようなオイルシールとしては、密封側からシールリップを覆うように保護環を設けたものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7ー28456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、シールリップを覆う保護環は、単にシールリップを覆うだけで、シールリップに供給される流体の量を効果的に減少させる構造については考慮されていないため、安定した密封性能を確保するには不十分であった。
そこで、本発明は、シールリップに供給される流体の量を減少せしめるようにした密封装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る密封装置は、ハウジングと回転軸との環状の隙間を密封する密封装置であって、前記ハウジングに固定されるシール本体を備え、該シール本体は、前記回転軸に摺動接触するシールリップを備え、密封側の流体が跳ねかかる状態で使用される密封装置において、前記回転軸に、前記シールリップに供給される流体の量を減少させるためのカバー部材が固定され、該カバー部材は、前記回転軸に嵌着されるスリーブ部と、前記シールリップを密封側から覆うフランジ部とで構成されるとともに、前記フランジ部は、内周から外周にかけて密封側に向かって傾斜する構成としたことをその特徴とし、また、前記回転軸に固定されるカバー部材のスリーブ部とフランジ部とを一体に構成し、前記スリーブ部に前記シールリップが摺動接触するようにしたことをその特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の密封装置は、密封側から跳ねかかる流体は回転軸に固定されたカバー部材によってシールリップへの侵入が妨げられ、更に、前記のカバー部材のシールリップを覆うフランジ部が内周から外周にかけて密封側に向かって傾斜する形状に構成されていることにより、前記のフランジ部に跳ねかかった流体を回転軸の回転による遠心力で吹き飛ばす様にして密封側に跳ね返すことができるので、密封側からシールリップに供給される流体の量を極端に減少させることが可能となり、その結果、安定した密封性能を確保することが可能となるものである。
さらに、本発明の密封装置においては、カバー部材のスリーブ部にシールリップが摺動接触する構成としたことで、フランジ部とシールリップを近接せしめた配置構造とすることができ、装置のコンパクト化が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の密封装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における密封装置の実施の形態を説明すると、密封装置は、ほぼ水平の回転軸1に対して縦に装着され、密封側Mのオイル(流体)が跳ねかかる状態で使用されるものである。
【0010】
ハウジング2に固定されるシール本体3は、通常のオイルシールと同様に断面L字状の金属製補強環4に、シールリップ5と一体をなすゴムが加硫接着されたものであり、前記の金属製補強環4の外周を覆うゴム部6によりハウジング2にシール本体3が嵌着されたとき前記のゴム6によってハウジング2の内周面との間に押圧され、ハウジング2から抜け出ることがないようにされている。また、前記シール本体3の大気側Tにはダストストリップ6が設けられ大気側Tからの塵埃等を阻止し、前記のシールリップ5は軸1に摺接し密封側の流体を密封し、その摺接をスプリング7で補完していることは従来のオイルシールと同様である。
【0011】
本実施の形態においては、密封側Mからシールリップ5に供給されるオイルの量を減少させるための手段としてカバー部材9が回転軸1に固定されている。該カバー部材9は金属製で軸1に嵌着されるスリーブ部10と、前記のシールリップ5を密封側Mから覆うフランジ部11とで構成され、これらスリーブ部10とフランジ部11とは一体として構成するのとよい。そして、前記カバー部材9の回転軸1に嵌着されるスリーブ部10の外周面には前記したシールリップ5が摺動接触しており、本実施の形態においては、シールリップ5はカバー部材9のスリーブ部10を介して間接的に回転軸1に摺動接触する構成となっている。
【0012】
前記したカバー部材9のフランジ部11は、内周から外周にかけて密封側Mに向かって傾斜する形状に形成されており、そして、前記カバー部材9のフランジ部11の外周端面とハウジング2の内周面との隙間Sは、0.3〜0.5mm程度の微細な隙間とされているが、カバー部材9の回転には支障はない。
【0013】
上述した構成よりなる本実施の形態の密封装置は、密封側Mから跳ねかかるオイルは、回転軸1に固定されたカバー部材9のフランジ部11によってシールリップ5側への侵入が妨げられることになり、また、前記したカバー部材9のシールリップ5を覆うフランジ部11が内周から外周にかけて密封側Mに向かって傾斜する形状に構成されてことにより、前記フランジ部11に跳ねかかったオイルを回転軸1の回転による遠心力によって吹き飛ばすようにして密封側Mに跳ね返すことができるものであり、これによって、密封側Mからシールリップ5に供給されるオイルの量を極端に減少させることができ、安定した密封性能が確保されるものである。
また、前記したように、カバー部材9のフランジ部11の外周端面とハウジング2の内周面との隙間Sを0.3〜0.5mm程度の微細な隙間としているので、回転軸1の回転により跳ね飛ばされれたオイルは、前記の隙間部より流入することは殆どない。
【0014】
また、前記したようにカバー部材9のスリーブ部10にシールリップ5を摺動接触させる構成としたことにより、カバー部材9のフランジ部11とシールリップ5とを近接させたコンパクトな配置構造とすることが可能となった。
【符号の説明】
【0015】
1 回転軸
2 ハウジング
3 シール本体
4 補強環
5 シールリップ
9 カバー部材
10 スリーブ部
11 フランジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと回転軸との環状の隙間を密封する密封装置であって、前記ハウジングに固定されるシール本体を備え、該シール本体は、前記回転軸に摺動接触するシールリップを備え、密封側の流体が跳ねかかる状態で使用される密封装置において、
前記回転軸に、前記シールリップに供給される流体の量を減少させるためのカバー部材が固定され、該カバー部材は、前記回転軸に嵌着されるスリーブ部と、前記シールリップを密封側から覆うフランジ部とで構成されるとともに、前記フランジ部は、内周から外周にかけて密封側に向かって傾斜する構成としたことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記回転軸に固定されるカバー部材のスリーブ部とフランジ部とを一体に構成し、前記スリーブ部に前記シールリップが摺動接触するようにしたことを特徴とする請求項1記載の密封装置。















【図1】
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【公開番号】特開2011−196469(P2011−196469A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64534(P2010−64534)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】