説明

密閉型電池

【課題】電池ケース内に電極体及び電解液が封入された密閉型電池において、リード線の長さが長くなることなく、電池ケース上に接続部材を省スペースで取り付け可能な構成を得る。
【解決手段】密閉型電池(1)は、内部に電極体(30)及び電解液が封入され、該電極体(30)の一方の極性の端子として機能する電池ケース(2)と、該電池ケース(2)とは電気的に絶縁された状態で該電池ケース(2)に設けられ、前記電極体(30)の他方の極性の端子として機能する負極端子(22)(外部端子)と、前記電池ケース(2)に前記負極端子(22)と並んで設けられた前記電解液の注入口(24)を塞ぐための封止栓(25)(封止部材)と、を備える。前記電池ケース(2)上に、前記封止栓(25)の少なくとも一部を覆うように、リード線(50)が接続される接続板(40)(接続部材)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ケース内に電極体及び電解液が封入されていて、該電池ケースに外部端子及び電解液の注入口が設けられた密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電極体及び電解液が封入される電池ケースに外部端子や電解液の注入口が設けられた密閉型電池が知られている。このような密閉型電池では、例えば特許文献1、2に開示されるように、電池ケースが一方の極性の端子として機能するとともに、リード線が接続される接続部材(正極側導電接続部、電流取出用リード板)が、電池ケース上に取り付けられている。この接続部材は、電池ケースと同じ金属材料の層及びリード線と同じ金属材料の層を有するクラッド材によって構成されているとともに、該電池ケースと同じ金属材料の層が電池ケースと接触するように、該電池ケース上に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3523530号公報
【特許文献2】特許第3675954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機器の小型化及び軽量化に伴い、近年、電池も小型化が図られている。そのうえ、電池ケースには、外部端子や注入口、内部の圧力が上昇した際に開裂するベントなどが並んで設けられているため、小型の電池の外部端子周辺には、上述の特許文献1,2のような接続部材を取り付けるための十分なスペースはほとんどない。しかも、電池ケースに対して接続部材を溶接によって固定する場合には、溶接のためのスペースも必要になるため、電池ケースへの接続部材の取り付けが難しくなる。
【0005】
これに対し、電池ケースの外部端子とは反対側に、接続部材を取り付けることも考えられる。しかしながら、その場合には、接続部材に接続されるリード線を回路につなぐために、該リード線を電池ケースの外部端子とは反対側から外部端子側に引き回す必要があり、その分、リード線の長さが長くなる。
【0006】
そのため、電池ケース内に電極体及び電解液が封入された密閉型電池において、リード線の長さが長くなることなく、電池ケース上に接続部材を省スペースで取り付け可能な構成を得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態にかかる密閉型電池は、内部に電極体及び電解液が封入され、該電極体の一方の極性の端子として機能する電池ケースと、該電池ケースとは電気的に絶縁された状態で該電池ケースに設けられ、前記電極体の他方の極性の端子として機能する外部端子と、前記電池ケースに前記外部端子と並んで設けられた前記電解液の注入口を塞ぐための封止部材と、を備え、前記電池ケース上には、前記封止部材の少なくとも一部を覆うように、リード線が接続される接続部材が設けられている(第1の構成)。
【0008】
以上の構成により、電池ケースが一方の極性の端子として機能し且つ該電池ケースに外部端子及び注入口が形成された構成において、リード線が接続される接続部材をコンパクトに配置することができる。すなわち、接続部材は、注入口を塞ぐための封止部材の少なくとも一部を覆うように配置されるため、外部端子及び注入口とは別に接続部材の配置スペースを設けることができないような小型の電池であっても、接続部材を取り付けることが可能になる。
【0009】
また、上述の構成により、外部端子と同じ側に接続部材を設けることができるため、外部端子とは反対側に接続部材を取り付ける場合に比べて、接続部材に接続されるリード線の長さを短くすることが可能になる。
【0010】
前記第1の構成において、前記接続部材は、前記電池ケースと同じ金属材料の層及び前記リード線と同じ金属材料の層を有するクラッド材によって構成されているとともに、前記電池ケースと同じ金属材料の層が該電池ケースに当接するように、該電池ケース上に取り付けられていて、前記リード線は、前記接続部材のうち該リード線と同じ金属材料の層に接続されているのが好ましい(第2の構成)。
【0011】
これにより、クラッド材によって構成される接続部材によって、電池ケースとリード線とをより強固に接続することができる。
【0012】
ここで、同じ金属材料とは、主成分となる金属種(50体積%以上含まれる金属種)が共通している材料を意味する。
【0013】
前記第1または第2の構成において、前記電池ケースは、軸線方向に延びる柱状に形成されていて、前記外部端子、前記封止部材及び前記接続部材は、前記電池ケースの軸線方向の一方の端部に設けられているのが好ましい(第3の構成)。
【0014】
このように、電池ケースの端部に外部端子及び封止部材がまとめて設けられていて接続部材の配置スペースがほとんどない構成でも、前記第1の構成のように、封止部材の少なくとも一部を覆うように接続部材を設けることにより、該接続部材をコンパクトに配置することができる。
【0015】
前記第2または第3の構成において、前記封止部材は、前記電池ケースの前記注入口の周縁部分に、溶接によって接合されていて、前記リード線も、前記接続部材に、溶接によって接合されており、前記接続部材のうち前記リード線と同じ金属材料の層の厚みは、該リード線の厚みよりも大きいのが好ましい(第4の構成)。
【0016】
封止部材と注入口の周縁部分とが溶接によって接合されている構成において、リード線を接続部材に対して溶接によって接合する場合、該接続部材の厚みによっては溶接の熱により封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分が再溶融してしまう可能性がある。そうすると、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分に隙間が生じて電池内部の電解液が漏れ出す可能性がある。
【0017】
これに対し、上述の構成のように、接続部材のうちリード線と同じ金属材料の層の厚みを、該リード線の厚みよりも大きくすることで、接続部材とリード線との溶接によって、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分が再溶融するのを防止できる。したがって、上述の構成により、接続部材とリード線との溶接によって封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分に隙間が生じて電解液等が漏れ出すのを防止できる。
【0018】
前記第4の構成において、前記接続部材のうち前記リード線と同じ金属材料の層の厚みは、該リード線の厚みに対して2倍以上であるのが好ましい(第5の構成)。これにより、接続部材とリード線とを溶接によって接合する際に、該接続部材の他方の金属材料の層が溶融するのを防止できるため、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分が再溶融するのをより確実に防止できる。
【0019】
前記第4または5の構成において、前記リード線と前記接続部材とは、抵抗溶接によって接合されているのが好ましい(第6の構成)。リード線と接続部材とが抵抗溶接によって接合される場合、該リード線と接続部材との接触部分を中心として溶融するため、前記第4の構成のように、接続部材のうちリード線と同じ金属材料の層の厚みを該リード線の厚みよりも大きくすることで、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分が再溶融するのを防止できる。
【0020】
前記第1から第6の構成のうちいずれか一つの構成において、前記接続部材は、前記封止部材を挟んで少なくとも2箇所で前記電池ケースに溶接されていて、前記リード線は、前記接続部材における前記電池ケースとの溶接箇所同士の間に溶接固定されているのが好ましい(第7の構成)。
【0021】
このような構成では、接続部材においてリード線が溶接される部分が、該接続部材と電池ケースとの溶接箇所とは異なる位置になるため、リード線を接続部材の比較的平らな部分に溶接することが可能となる。これにより、リード線と接続部材との溶接強度を確保することができる。しかも、接続部材は、封止部材を挟んで少なくとも2箇所で電池ケースに溶接されるため、該接続部材と電池ケースとの溶接強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態にかかる密閉型電池によれば、電解液の注入口を塞ぐ封止部材の少なくとも一部を覆うように、リード線が接続される接続部材を設けた。これにより、電池に接続部材をコンパクトに配置することができる。
【0023】
また、クラッド材によって構成される接続部材のうちリード線と同じ金属材料の層の厚みを、リード線の厚みよりも大きくしたため、該リード線と接続部材とを溶接する際に、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分が溶けて隙間が生じるのを防止できる。したがって、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分から電解液等が漏れ出すのを防止できる。特に、接続部材のうちリード線と同じ金属材料の層の厚みを、リード線の厚みの2倍以上にすることによって、封止部材と注入口の周縁部分との溶接部分から電解液等が漏れ出すのをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる密閉型電池の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図3は、図2における接続板の周辺部分の構成を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図4は、接続板の厚みと該接続板の引き剥がし強度との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、接続板の厚みと抵抗溶接によって2点溶接が可能な印加電圧との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0026】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態にかかる密閉型電池1の概略構成を示す斜視図である。この密閉形電池1は、有底筒状の外装缶10と、該外装缶10の開口を覆う蓋板20と、該外装缶10内に収納される電極体30とを備えている。外装缶10に蓋板20を取り付けることによって、内部に空間を有する柱状の電池ケース2が構成される。なお、この電池ケース2内には、電極体30以外に、非水電解液(以下、単に電解液という)も封入されている。
【0027】
電極体30は、それぞれシート状に形成された正極31及び負極32を、例えば両者の間及び該負極32の下側にセパレータ33がそれぞれ位置するように重ね合わせた状態で、図2に示すように渦巻状に巻回することによって形成された巻回電極体である。電極体30は、正極31、負極32及びセパレータ33を重ね合わせた状態で巻回した後、押しつぶして扁平状に形成される。
【0028】
ここで、図2では、電極体30の外周側の数層分しか図示していない。しかしながら、この図2では電極体30の内周側部分の図示を省略しているだけであり、当然のことながら、電極体30の内周側にも正極31、負極32及びセパレータ33が存在する。また、図2では、蓋板20の電池内方に配置される絶縁体等の記載も省略している。
【0029】
正極31は、正極活物質を含有する正極活物質層を、アルミニウム等の金属箔製の正極集電体の両面にそれぞれ設けたものである。詳しくは、正極31は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有酸化物である正極活物質、導電助剤及びバインダなどを含む正極合剤を、アルミニウム箔などからなる正極集電体上に塗布して乾燥させることによって形成される。正極活物質であるリチウム含有酸化物としては、例えば、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物やLiMnなどのリチウムマンガン酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物等のリチウム複合酸化物を用いるのが好ましい。なお、正極活物質として、1種類の物質のみを用いてもよいし、2種類以上の物質を用いてもよい。また、正極活物質は、上述の物質に限られない。
【0030】
負極32は、負極活物質を含有する負極活物質層を、銅等の金属箔製の負極集電体の両面にそれぞれ設けたものである。詳しくは、負極32は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質、導電助剤及びバインダなどを含む負極合剤を、銅箔などからなる負極集電体上に塗布して乾燥させることによって形成される。負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料(黒鉛類、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類など)を用いるのが好ましい。負極活物質は、上述の物質に限られない。
【0031】
また、電極体30の正極31には、正極リード34が接続されている一方、負極32には負極リード35が接続されている。これにより、正極リード34及び負極リード35が、電極体30の外部に引き出されている。そして、この正極リード34の先端側は、蓋板20に接続されている。一方、負極リード35の先端側は、後述するように、リード板27を介して負極端子22に接続されている。
【0032】
外装缶10は、アルミニウム合金製の有底筒状部材であり、蓋板20とともに電池ケース2を構成する。詳しくは、外装缶10は、図1に示すように、長方形の短辺側が円弧状に形成された底面を有する有底筒状の部材である。すなわち、外装缶10は、底面の短辺方向に対応する厚み方向の寸法が、底面の長辺方向に対応する幅方向よりも小さくなる(例えば、厚みが幅の1/10程度になる)ように、扁平形状に形成されている。また、この外装缶10は、後述するように、正極リード34に接続される蓋板20と接合されているため、密閉型電池1の正極端子(一方の極性の端子)も兼ねている。図2に示すように、外装缶10の内側の底部には、該外装缶10を介して電極体30の正極31と負極32との間での短絡発生を防止するためのポリエチレンシートからなる絶縁体11が配置されている。上述の電極体30は、該絶縁体11上に一方の端部が位置付けられるように配置されている。
【0033】
蓋板20は、外装缶10の開口部を覆うように、該外装缶10の開口部にレーザー溶接によって接合されている。この蓋板20は、外装缶10と同様、アルミニウム合金製の部材からなり、該外装缶10の開口部の内側に嵌合可能なように長方形の短辺側が円弧状に形成されている。また、蓋板20には、その長手方向の中央部分に貫通孔が形成されている。この貫通孔内には、ポリプロピレン製の絶縁パッキング21及びステンレス鋼製の負極端子22(外部端子、他方の極性の端子)が挿通されている。具体的には、概略柱状の負極端子22が挿通された概略円筒状の絶縁パッキング21が該貫通孔の周縁部に嵌合されている。負極端子22は、円柱状の軸部の一端側に平面部が一体形成された構成を有している。負極端子22は、平面部が外部に露出する一方、該軸部が絶縁パッキング21内に位置付けられるように、該絶縁パッキング21に対して配置されている。この負極端子22には、ステンレス鋼製のリード板27が接続されている。該リード板27と絶縁パッキング21との間には、絶縁体26が配置されている。
【0034】
蓋板20には、負極端子22を挟んで、一方側にベント23が形成されている一方、他方側に電解液の注入口24が形成されている。ベント23は、蓋板20に平面視で楕円状に形成された溝23aによって構成される。このベント23は、密閉型電池1の内部の圧力が所定値以上の高圧になった場合に開裂する。これにより、密閉型電池1の内部が高圧になって破裂するのを防止できる。
【0035】
蓋板20に設けられた注入口24は、平面視で略円形状に形成されている。また、注入口24は、蓋板20の厚み方向に径が2段階で変化するように小径部及び大径部を有している。この注入口24は、該注入口24の径の変化に対応して段状に形成された封止栓25(封止部材)によって封止されている。そして、封止栓25と注入口24の周縁部との間に隙間が生じないように、該封止栓25の大径部側の底面外周部と注入口24の周縁部とはレーザー溶接によって接合されている(図3の符号28参照)。
【0036】
(接続板)
蓋板20には、注入口24の封止栓25を覆う位置に、接続板40(接続部材)が取り付けられている。この接続板40は、アルミニウム合金とニッケル合金とからなるクラッド材であり、アルミニウム合金側が蓋板20に接するように、該蓋板20にレーザー溶接によって固定されている。すなわち、接続板40は、蓋板20と同じ金属材料からなるアルミニウム合金層41と、ニッケル合金製のリード線50と同じ金属材料からなるニッケル合金層42とを備えている。そして、接続板40は、アルミニウム合金層41が蓋板20と接合される一方、ニッケル合金層42にニッケル合金製のリード線50が抵抗溶接によって接合される。また、接続板40は、例えば、アルミニウム合金層41に対してニッケル合金層42の厚みが約2倍になるように構成されている。リード線50は、平板状であるのが好ましいが、接続板40のニッケル合金層42に溶接によって接合できるような形状であればどのような形状であってもよい。
【0037】
ここで、同じ金属材料とは、主成分となる金属種(50体積%以上含まれる金属種)が共通している材料を意味する。このような材料同士であれば、溶接によって強固に接合することができる。
【0038】
なお、この実施形態では、封止栓25を覆うように接続板40を配置しているが、この限りではなく、封止栓25の少なくとも一部を覆うように接続板40を配置してもよい。
【0039】
上述のように、接続板40をアルミニウム合金層41とニッケル合金層42とからなるクラッド材によって構成することで、ニッケル合金製のリード線50とアルミニウム合金製の蓋板20とを接続板40を介して強固に接続することが可能になる。すなわち、リード線50を蓋板20に接合しようとしても、異種金属であるため、溶接によって強固に接合するのは難しいが、上述のようにグラッド材の接続板40を用いることで異種金属同士を強固に接続すること可能になる。
【0040】
しかも、注入口24の封止栓25を覆う位置に接続板40を設けることにより、サイズの小さい密閉型電池1の蓋板20上の限られたスペースに接続板40を効率良く配置することができる。したがって、負極端子22が設けられている蓋板20に正極側のリード線50を接続することができるため、密閉型電池1から回路までのリード線50の長さを短くすることができる。
【0041】
図3に示すように、接続板40のニッケル合金層42の厚みYは、ニッケル合金製のリード線50の厚みXよりも大きい。このようにニッケル合金層42の厚みYをリード線50の厚みXよりも大きくすることで、ニッケル合金層42とリード線50とを抵抗溶接する際に、蓋板20側に、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分が再溶融するような熱が伝わるのを防止できる。
【0042】
よって、後述するように、ニッケル合金層42とリード線50との溶接部分が蓋板20の注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分の上方に位置している場合でも、前記抵抗溶接の熱によって、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分が再溶融するのを防止できる。したがって、前記抵抗溶接によって、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分に隙間が形成されて密閉型電池1内の電解液が漏れ出すのを防止できる。
【0043】
図3に、蓋板20、封止栓25及び接続板40のそれぞれの溶接の位置関係の一例を示す。この図3において、符号28は蓋板20の注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分であり、符号43は蓋板20と接続板40との溶接部分、符号51は接続板40とリード線50との溶接部分である。
【0044】
上述のように、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28は、該注入口24の周縁部分と封止栓25との間から電解液が漏れ出さないように、レーザー溶接によって接合されている。すなわち、この溶接部分28は、平面視で、封止栓25の外周に沿って略円形状に形成される。また、蓋板20と接続板40との溶接部分43もレーザー溶接によって接合されている。この溶接部分43は、長方形状の接続板40における長手方向両端部の2箇所に形成される。さらに、接続板40とリード線50との溶接部分51は、抵抗溶接によって接合されている。この溶接部分51は、抵抗溶接の際にリード線50上に押し付けられる2本の電極棒に対応して、2箇所形成される。すなわち、溶接部分51は、抵抗溶接によって2点同時に形成される。
【0045】
図3に示すように、接続板40の大きさが小さいため、接続板40とリード線50との溶接部分51が、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28の上方に位置する場合がある。この場合でも、上述のとおり、接続板40のニッケル合金層42の厚みYがリード線50の厚みXよりも大きいため、該接続板40とリード線50とを抵抗溶接する際に、溶接部分28が再溶融するのを防止できる。
【0046】
このような効果を確認するために、厚みが0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mmの接続板40(ニッケル合金層42の厚みは、それぞれ、0.1mm、0.13mm、0.17mm、0.2mm)に対して、厚み0.1mmのリード線50を抵抗溶接によって溶接した。接続板40の厚みが0.15mmの場合には、前記抵抗溶接によって注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28も溶融していたが、厚みが0.2mm以上の場合には溶接部分28は溶融していなかった。したがって、接続板40のニッケル合金層42の厚みYがリード線50の厚みXよりも大きい場合には、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28の溶融を防止できる。
【0047】
なお、上述の確認試験における接続板40とリード線50との溶接条件は、該接続板40の各厚みにおける最適な抵抗溶接の条件である。具体的には、接続板40の厚みが0.15mmの場合には、電圧13Vで2msecの溶接時間であり、接続板40の厚みが0.2mmの場合には、電圧13Vで1.5msecの溶接時間である。また、接続板40の厚みが0.25mmの場合には、電圧11Vで2.5msecの溶接時間であり、接続板40の厚みが0.3mmの場合には、電圧11Vで2.5msecの溶接時間である。
【0048】
また、上記の実験において、接続板40の厚みが0.2mm、0.25mmの場合(ニッケル合金層42の厚みは、それぞれ、0.13mm、0.17mm)には、接続板40のアルミニウム合金層41が溶融したが、0.3mmの厚みの場合(ニッケル合金層42の厚みは0.2mm)にはアルミニウム合金層41の溶融も見られなかった。したがって、接続板40のニッケル合金層42の厚みYは、リード線50の厚みXの2倍以上がより好ましい。
【0049】
また、上述のように、接続板40のニッケル合金層42の厚みYをリード線50の厚みXよりも大きくすることで、接続板40の溶接部分近傍の強度を向上することができる。図4に、接続板40の厚みを0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mmと変化させた場合(ニッケル合金層42の厚みYはそれぞれ0.1mm、0.13mm、0.17mm、0.2mm)における該接続板40の溶接部分近傍の強度(以下、引き剥がし強度という)の一例を示す。なお、図4に示す引き剥がし強度は、接続板40の一部をアルミニウム合金製の部材に溶接した状態で該接続板40を引っ張ることにより、接続板40が破断したときの力である。
【0050】
図4から分かるように、接続板40の厚みが0.15mm以上(ニッケル合金層42の厚みYは0.1mm以上)であれば、該接続板40の引き剥がし強度は40Nよりも大きくなる。厚み0.1mmのニッケル合金製のリード線50の引き剥がし強度が20N〜30Nであることを考慮すると、本実施形態の構成の接続板40は十分な強度を有しており、該接続板40が厚み0.1mmのリード線50よりも先に破断することはない。
【0051】
なお、接続板40の厚みは、該接続板40の引き剥がし強度がリード線50の引き剥がし強度の2倍以上になる厚み0.2mm以上が好ましい。また、接続板40の厚みが大きくなると該接続板40と蓋板20との溶接強度が低下する点を考慮して、接続板40の厚みは1.0mm以下であるのが好ましい。
【0052】
図5に、接続板40の厚みを0.15mm、0.2mm、0.25mm、0.3mmと変化させた場合(ニッケル合金層42の厚みYはそれぞれ0.1mm、0.13mm、0.17mm、0.2mm)に、抵抗溶接によって所定時間(図5の例では1ms)で2点溶接可能な最小印加電圧を示す。なお、この図5は、厚み0.1mmのニッケル合金製のリード線50を、各厚みの接続板40に抵抗溶接によって接合した場合の試験結果である。
【0053】
図5から分かるように、接続板40の厚みを大きくすることによって、溶接に必要なエネルギー(電圧)が小さくなる。換言すると、接続板40の厚みが大きい方が、より広い範囲の電圧で安定して溶接を行うことができる。よって、上述のように、接続板40のニッケル合金層42の厚みYをリード線50の厚みXよりも大きくすることで、ニッケル合金層42の厚みが小さい場合に比べて接続板40の厚みも全体的に大きくなるため、抵抗溶接によって接続板40とリード線50とをより安定して接合することが可能になる。
【0054】
また、接続板40の厚みを上述のような厚みにすることで、注入口24の周縁部分に封止栓25をレーザー溶接した場合に形成される溶接部分の盛り上がりによって接続板40の一部が変形するのを防止でき、接続板40の表面をほぼ平らな状態に保つことが可能になる。このように接続板40の表面をほぼ平らな状態に保つことで、該接続板40に対してリード線50を密着させることができ、抵抗溶接によって接続板40とリード線50とをより強固に接合することができる。
【0055】
なお、注入口24の周縁部分に封止栓25をレーザー溶接した場合に形成される溶接部分の盛り上がりは、約0.04mm〜0.05mmである。この場合、接続板40の表面を平らな状態に保ち、該接続板40とリード線50との溶接強度を確保するためには、接続板40の厚みは0.2mm以上の厚みであるのが好ましい。接続板40の厚みは大きい方が好ましいため、0.25mm以上の厚みがより好ましく、0.3mm以上の厚みがさらに好ましい。
【0056】
(実施形態の効果)
以上より、本実施形態では、密閉型電池1の蓋板20上に注入口24の封止栓25の少なくとも一部を覆うように、アルミニウム合金層41及びニッケル合金層42を有するグラッド材によって構成される接続板40を設けた。これにより、密閉型電池1の蓋板20上に、ニッケル合金製のリード線50とアルミニウム合金製の蓋板20とをより強固に接続するための接続板40を、コンパクトに配置することができる。
【0057】
しかも、本実施形態では、接続板40のニッケル合金層42の厚みYを、ニッケル合金製のリード線50の厚みXよりも大きくした。これにより、リード線50と接続板40とを抵抗溶接によって接合する際に、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28が再溶融するのを防止できる。したがって、上述の構成により、前記抵抗溶接によって注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28に隙間が形成され、該隙間から電解液等が漏れ出すのを防止できる。
【0058】
特に、接続板40のニッケル合金層42の厚みYをリード線50の厚みXの2倍以上にすることで、前記抵抗溶接による接続板40のアルミニウム合金層41の溶融も防止できる。これにより、前記抵抗溶接によって注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28から電解液等が漏れ出すのをより確実に防止できる。
【0059】
また、接続板40の構成を上述のような構成にすることで、リード線50の溶接部分近傍の強度に比べて接続板40の溶接部分近傍の強度の方が高くなるため、該接続板40で破断が生じるのを防止できる。
【0060】
さらに、上述のように、接続板40のニッケル合金層42の厚みYをリード線50の厚みXよりも大きくすることで、該接続板40とリード線50とを抵抗溶接によってより強固に接合することが可能になる。
【0061】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0062】
前記実施形態では、蓋板20をアルミニウム合金製とし、リード線50をニッケル合金製としている。しかしながら、蓋板20及びリード線50は、他の金属材料によって構成されていてもよい。その場合でも、接続板40は、蓋板20及びリード線50をそれぞれ構成する金属材料からなるグラッド材によって構成される。
【0063】
前記実施形態では、クラッド材によって構成される接続板40を、ニッケル合金層42の厚みがアルミニウム合金層41の厚みの約2倍になるように構成している。しかしながら、ニッケル合金層42とアルミニウム合金層41との厚みの比を異なる比にしてもよい。
【0064】
前記実施形態では、注入口24の周縁部分と封止栓25との溶接部分28及び蓋板20と接続板40との溶接部分43は、レーザー溶接によって接合され、接続板40とリード線50との溶接部分51は抵抗溶接によって接合されている。しかしながら、これらの溶接部分28,43,51は、他の溶接方法によって接合されてもよい。
【0065】
前記実施形態では、密閉型電池1の電池ケース2を、長方形の短辺側が円弧状に形成された底面を有する柱状形状としている。しかしながら、電池ケース2の形状は、負極端子や注入口、接続板を設けることができる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0066】
前記実施形態では、密閉型電池1をリチウムイオン電池として構成している。しかしながら、密閉型電池1はリチウムイオン電池以外の電池であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、リード線が接続される接続板が電池ケース上に取り付けられる密閉型電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 密閉型電池
2 電池ケース
10 外装缶
20 蓋板
22 負極端子(外部端子)
23 ベント
23a 溝
24 注入口
25 封止栓(封止部材)
28、43、51 溶接部分
30 電極体
31 正極
32 負極
40 接続板(接続部材)
41 アルミニウム合金層
42 ニッケル合金層
50 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電極体及び電解液が封入され、該電極体の一方の極性の端子として機能する電池ケースと、
前記電池ケースとは電気的に絶縁された状態で該電池ケースに設けられ、前記電極体の他方の極性の端子として機能する外部端子と、
前記電池ケースに前記外部端子と並んで設けられた前記電解液の注入口を塞ぐための封止部材とを備え、
前記電池ケース上には、前記封止部材の少なくとも一部を覆うように、リード線が接続される接続部材が設けられている、密閉型電池。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉型電池において、
前記接続部材は、前記電池ケースと同じ金属材料の層及び前記リード線と同じ金属材料の層を有するクラッド材によって構成されているとともに、前記電池ケースと同じ金属材料の層が該電池ケースに当接するように、該電池ケース上に取り付けられていて、
前記リード線は、前記接続部材のうち該リード線と同じ金属材料の層に接続されている、密閉型電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の密閉型電池において、
前記電池ケースは、軸線方向に延びる柱状に形成されていて、
前記外部端子、前記封止部材及び前記接続部材は、前記電池ケースの軸線方向の一方の端部に設けられている、密閉型電池。
【請求項4】
請求項2または3に記載の密閉型電池において、
前記封止部材は、前記電池ケースの前記注入口の周縁部分に、溶接によって接合されていて、
前記リード線も、前記接続部材に、溶接によって接合されており、
前記接続部材のうち前記リード線と同じ金属材料の層の厚みは、該リード線の厚みよりも大きい、密閉型電池。
【請求項5】
請求項4に記載の密閉型電池において、
前記接続部材のうち前記リード線と同じ金属材料の層の厚みは、該リード線の厚みに対して2倍以上である、密閉型電池。
【請求項6】
請求項4または5に記載の密閉型電池において、
前記リード線と前記接続部材とは、抵抗溶接によって接合されている、密閉型電池。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の密閉型電池において、
前記接続部材は、前記封止部材を挟んで少なくとも2箇所で前記電池ケースに溶接されていて、
前記リード線は、前記接続部材における前記電池ケースとの溶接箇所同士の間に溶接固定されている、密閉型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−38576(P2012−38576A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177685(P2010−177685)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】