説明

寒冷地用乗客コンベアの運転制御装置

【課題】凍結センサと制御装置により凍結を防止する寒冷地用乗客コンベアの運転制御装置の提供。
【解決手段】凍結センサTHSを乗客コンベア内に設置し、乗客コンベアを低速運転させるための制御装置を有し、凍結センサTHSが凍結を検出すると、インバータ制御装置により、乗客コンベアが低速運転し、可動部の凍結を防止させる構造としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターおよび電動道路などの乗客コンベアで、特に各部に凍結のおそれがある寒冷地に設置された寒冷地用乗客コンベアの運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地向けの乗客コンベアにおいては、実開昭56−29077号などで、凍結のおそれがある各部分にヒータを有し、夜間などの運転停止時には、これを動作させ、乗客コンベアの各部分が凍結するのを防止する構造となっている。
【特許文献1】実開昭56−29077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術の構造によると、ヒータの設置によって各部分の凍結を防止する点では考慮されてはいるが、それによって全ての可動部の凍結防止になるか否かは不確実であり、またヒータの効果も完璧ではない。そのために時々、乗客コンベアを保守員が手動で起動し、通常運転を行わなければならないという問題があった。
【0004】
本発明は上記の欠点を鑑みてなされたもので、しかも、経済的な運転を行う寒冷地用乗客コンベアの運転制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、凍結を検知する凍結センサ、インバータ制御装置、およびその制御装置を備え、凍結センサが動作したとき、乗客コンベアを自動的に省エネルギーのため低速運転を行う手段を備えた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来のヒータを不要にし、また保守員が夜間などに手動で運転しなければならない手間をなくす効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0008】
図1は乗客コンベアのモータ制御回路図である。
【0009】
図1において、R、S、Tはモータ電源であり主遮断機FFBを通して、インバータINVに接続される。インバータの起動指令用端子UPは上昇用、DNは下降用、COMは共通端子である。この低速運転用端子は例えば上昇用に設定しておけば乗客コンベアは低速で上昇方向に運転する。上昇、下降の可逆運転をしたい場合は各々の端子を設ければよい。インバータのR、S、T、U、V、Wへ可逆電圧、可変周波数の電力が供給される。
【0010】
図2は凍結防止運転を行う制御回路図である。
【0011】
P、Nは制御回路電源である。運転スイッチの平常側に平常運転リレー43A 、温度側に低温による低速運転リレー43THを接続する。手動による上昇スイッチ、下降用スイッチには各々上昇用リレー11、下降用リレー12を接続し、自己保持回路に手動による停止スイッチSTOPを接続する。乗客コンベアの機械室に設置された凍結センサTHSにより動作する回路にタイマーT、注意用回転灯L1、進入禁止灯L2、注意用部ブザーBZを接続する。低温時の低速運転用リレー43THはタイマー接点Tにより動作する。低速運転用リレー43THに、一定時間のみ動作するタイムスイッチTSと凍結防止運転用リレー接点STを接続する。凍結防止運転停止用リレーに、乗客コンベア付近に設けられた手動による凍結防止運転停止用スイッチASTを接続する。
【0012】
図3は乗客コンベアを一定時間運転させるためのタイマーT1、T2の回路図である。
【0013】
まず平常運転を説明する。図2の運転スイッチを平常側にONさせると、平常運転リレー43AがONし、上昇用スイッチUP、下降用スイッチDN回路が有効となる。運転員がUPスイッチをONさせれば上昇用リレー11がONし、自己保持する。11がONしたことにより、図1のインバータのUP端子に接続されている接点11がONするためインバータINVはONし、モータIMを起動させ乗客コンベアを一定速度で運転する。停止は、停止スイッチSTOPをOFFすれば上昇用リレー11はOFFするのでインバータINVも停止し、モータIMも停止し、乗客コンベアは停止する。下降運転も同様に動作する。
【0014】
次に低温時の凍結防止運転を説明する。図2の運転スイッチを温度側にONさせると凍結防止運転の低速運転リレー43THはONする。これにより平常運転回路を切離し、凍結防止運転回路のみ有効とする。
【0015】
凍結を検出すると、凍結センサTHSはONする。THSONにより自動運転に入るため周囲の人に注意を喚起するためのブザーBZを鳴動し乗客コンベア昇降口に設けられた注意用回転灯L1を点灯し、進入禁止灯L2も点灯させる。同時にTHSONによりタイマーTはONする。タイマーTは一定時間後に動作するように設定する。タイマーTが動作するとその接点Tにより低速運転用リレーTHがONすることにより接点THがOFFしブザーBZは鳴動を停止する。しかし、回転灯L1、進入禁止灯L2は点灯もままとしておく。
【0016】
THがONすることにより、インバータINVの低速運転指令用端子SLに接続された接点THがONするためインバータINVは低速走行上昇用出力を発生し、モータIMに与える。モータIMは低速回転するため乗客コンベアは低速で上昇運動を行う。また低速運動を行うことにより、インバータINVの回生抵抗が発熱することにより機械室温度が上昇し、凍結を防ぐ。
【0017】
このとき、乗客コンベアを一定時間帯のみ運転させるためのタイムスイッチTSを所定の時間に設定しておき、その出力接点TSを図2の如く凍結センサTHSに直列に接続する。これによりタイマーTは凍結センサTHSとタイムスイッチTSが同時にONしているときのみONするためインバータINVはこの条件のみONするためタイムスイッチTSの設定時間帯のみ乗客コンベアは低速で運転することになる。また、低速運転用リレーTHに、凍結防止運転用リレー接点STを接続することにより、凍結防止運転中にタイムスイッチTSに関係なく乗客コンベアを停止させることができる。
【0018】
乗客コンベア起動後一定時間のみ運転させたいときは図3の如くタイマーT1、T2の時間を例えば1時間に設定すれば1時間運転、1時間休止の運転をさせることができる。
【0019】
尚、このタイムスイッチTS、タイマーT1、T2を取り除けば連続運転とすることもできる。インバータINVの低速運転用端子を上昇用、下降用に分ければ上昇、下降の交互運転もできる。さらにインバータINVを取り除けば定格速度で運転できる。
【0020】
即ち凍結防止運転として下記の運転が実施できる。
【0021】
(1) 低速 − 一定時間帯の断続運転
(2) 低速 − 一定時間の断続運転
(3) 低速連続運転
(4) 定格速度の上記(1)(2)の断続運転
(5) 定格速度連続運転
このように凍結を検出し、乗客コンベアを省エネルギーのため低速で運転し、凍結を防止させることができる。さらに低速運転時に発生する回生抵抗の発熱により、機械室運度を上昇させ、凍結を防止することができる。この運転速度、時間も自由に上記のように設定できる。尚、この運転は自動運転を行う乗客コンベアで長時間乗客が利用しないで動かないときでも本制御回路を用いれば同様に凍結防止運転ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】乗客コンベアのモータ制御回路図である。
【図2】凍結防止運転を行う制御回路図である。
【図3】タイマー回路図である。
【符号の説明】
【0023】
R、S、T モータ電源
FFB 主遮断器
INV インバータ
UP インバータ上昇用端子
DN インバータ下降用端子
SL インバータ低速用端子
COM 共通端子
IM モータ
U、V、W モータ端子
P、N 制御回路電源
43A 平常運転用端子
43TH 低速運転リレー
11 上昇用リレー
12 下降用リレー
THS 凍結センサ
T タイマー
L1 回転灯
L2 進入禁止灯
BZ ブザー
TH 低速運転リレー
TS タイムスイッチ
T1 タイマー
T2 タイマー
ST 凍結防止運転停止リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターおよび電動道路などの乗客コンベアで、特に各部に凍結のおそれがある寒冷地に設置された寒冷地用乗客コンベアの運転制御装置において、凍結を検知する凍結センサ、インバータ制御装置、およびその制御装置を備え、凍結センサが動作したとき、乗客コンベアを自動的に省エネルギーのため低速運転を行う手段を備えたことを特徴とする寒冷地用乗客コンベアの運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302366(P2007−302366A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130403(P2006−130403)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】