説明

寸法安定性を有する接着剤およびそれをスティック状接着剤に使用する方法。

【課題】寸法安定性を有する接着剤およびそれをスティック状接着剤に使用する方法。
【解決手段】寸法安定性を有する接着剤は室温または常温で基材表面に対して利用できる。これは、メタロセン触媒の存在下で製造された少なくとも1種または2種またはそれ以上のポリオレフィンを含み、50〜165℃の範囲の環球式軟化点、50 x 0.1 mm未満の針入度、および170℃の温度で測定された場合に20〜40000 mPasの範囲の溶融粘度を有する。該接着剤は、水不含および溶剤不含であり、スティック状、塊状、図形、球状または錐体の形態のスティック状接着剤として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優先権主張の基礎となる2006年7月18日に出願された独国特許出願第102006033148.6号に記載されたものであり、この独国特許出願は、参照することにより本明細書において全て開示されたものとして組み込まれる。
【0002】
本発明は、室温または常温で利用でき、少なくとも1種のポリオレフィンを含む寸法安定性を有する接着剤、および、当該接着剤をスティック状接着剤において使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体またはペースト形態にある接着剤と比較して非常に使い勝手が良いことから、スティック状接着剤は、特に家庭においてまたは会社において、紙、カード、写真、布地、ラベル等の接着のために広範囲に利用されている。その構造から、これらは経済的であり環境にもやさしく、反応型接着剤または溶剤含有接着剤の代わりとなるものである。
【0004】
通常のスティック状接着剤は、主に水を基礎とする糊のようなまたはゲル様の接着剤を含むが、さらに溶剤を含むこともできる(例えば、非特許文献1参照)。接着剤は、成形および取り扱いのために、口紅と同様に、移動できないように固定された棒状体として固形容器内に導入されている。特許文献1には、例えば、接着剤としてポリビニルアルコール、デキストリン、水溶性セルロースエーテルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むことができるスティック状接着剤が記載されている。特許文献2に記載されている接着剤は、天然ゴムおよび粘着性化樹脂の組み合わせである。通常、棒状体が成形され、水性セッケンゲルを使用することによりその堅さが調節される。これに代わって、ソルビトールおよびベンズアルデヒドの反応生成物(特許文献3)、またはテレフタルアミド誘導体(特許文献4)、またはポリウレタンもまた記載されている。接着強さおよび耐水性は、例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂または尿素-ホルムアルデヒド樹脂をさらに添加することにより調節することができる。スティック状接着剤を利用すると、水および/または溶剤が蒸発した後に、接着剤皮膜(adhesive film)により安定した接着組立(adhesive assembly)が得られる。
【0005】
全ての公知スティック状接着剤における不利な点の1つは、接着剤の堅さが糊のようで柔らかいことであり、これ自体では接着が行われる表面に対して直接的かつ容易に利用することができず、従って、特定のディスペンシング機能(dispensing function)を有する追加的な収容容器を必要とすることである。容器の形成および接着剤の該ケースへの導入により、通常のスティック状接着剤の製造は不便かつ高価なものとなってしまう。スティック状接着剤は、利用している間に接着剤がきれいに塗れなくなり、場合によっては糸曳き(stringing)を示す傾向もあることがわかっている。さらに、接着剤層が固化するためには、存在する水および/または溶剤が接着剤層から浮かび出て、蒸発できることが必要なので、公知のスティック状接着剤の使用は、適度に蒸気透過性である基材、例えば紙またはカードに限られる。公知のスティック状接着剤の別の不利な点は、容器が適切に気密的に閉じられてない場合には容易に乾ききってしまい、その接着性を完全に失ってしまうことである。
【0006】
メタロセン触媒の存在下において製造されるポリオレフィンを含めて、ポリオレフィンを接着剤用の処方成分として使用することは公知である(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、これまでは、この種の接着剤はホットメルトとしての利用だけが見出されており;すなわち、適当に高い温度において液状溶融状態で利用されている。対照的に、スティック状接着剤は通常は室温または常温で用いられる。
【特許文献1】独国特許発明第3500283号明細書
【特許文献2】欧州特許第0278297号明細書
【特許文献3】独国特許発明第2204482号明細書
【特許文献4】独国特許発明第2620721号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1631641号明細書
【非特許文献1】Kleben - Grundlagen, Technologien, Anwendungen, Springer Verlag, 4th ed. 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加熱または溶融することなく室温で、表面に対して簡単な方法で利用することができ、表面どうしを合わせて押し付けることにより耐久性のある接着を得ることができる、寸法安定性を有する接着剤を提供することにある。寸法安定性を有する接着剤は、固形としての堅さを有するべきであり、そして容器なしで取り扱い可能であるべきである。さらに、これは溶剤を含まず、任意の形状を採ることができ、毒物学的および環境的に異論のないものであり、そして長期間にわたって有効な保存安定性を示すものである必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、上述した一般的なタイプの接着剤であって、メタロセン触媒の存在下で製造された少なくとも1種のポリオレフィンを含み、50〜165℃の滴点(drop point)または環球式軟化点(ring&ball softening point)、50 x 0.1 mm未満の針入度、および170℃の温度で測定された場合に20〜40000 mPa・s、好ましくは50〜30000 mPa・s、より好ましくは10〜20000 mPa・sの範囲の溶融粘度を有するという特徴が見られる前記の接着剤により、この目的が達成されることが見出された。
【0009】
特に有利なことに、本発明の接着剤は、接着が目的であるということを別にすれば消しゴムと同様に、収容容器なしで使用するのに十分な機械的強度および寸法安定性を有するので、スティック状接着剤に通常使用される接着剤の代替として好適なものである。本発明の接着剤は、きれいに塗れないという傾向がなく、そして糸曳きも示さないが、適当な基材への接着に関しては際立った特性を有する。
【0010】
本発明接着剤の別の有利な点は、これが水も溶剤も含まないために、蒸気不透過性の基材、例えばポリマーフィルムまたは金属箔等の接着にも使用できることである。
【0011】
本発明の接着剤は室温で固体であり、少なくとも60℃までの温度においては寸法安定性を維持する。これはまた保存安定性も有し、乾ききることもない。これは、淡い色から無色に至るまでの色を有し、不透明ないし透明であり、そして、無臭、非脆性、耐光性および耐水性である。
【0012】
本発明においては、特に好ましくは、接着剤は水不含および溶剤不含である。
【0013】
本発明においては、60〜165℃、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは80〜140℃の範囲の滴点または環球式軟化点を有する少なくとも1種のポリオレフィンを含む接着剤がさらに好ましい。
【0014】
本発明はさらに、上記で特定され、500〜20000 g/mol、好ましくは800〜10000 g/mol、そしてより好ましくは1000〜5000 g/molの範囲の数平均分子量Mn、および1000〜40000 g/mol、好ましくは1600〜30000 g/mol、そしてより好ましくは2000〜20000 g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有するポリオレフィンを含む接着剤を提供する。
【0015】
本発明の同様に好ましい実施態様において、接着剤に存在するポリオレフィンは、プロピレンのもしくは高級の1-オレフィンのホモポリマー、または、ポリプロピレンおよび/または高級の1-オレフィンおよび場合によりエチレンを含むオレフィンコポリマーである。使用される高級の1-オレフィンは、好ましくは、4〜20個の炭素原子を有し、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状オレフィンである。これらのオレフィンは、オレフィン性二重結合に結合した芳香族置換基を有していてもよい。可能な1-オレフィンには、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンまたは1-オクタデセン、またはスチレンが含まれる。コポリマーは、1種のオレフィンを好ましくは70重量%〜99.9重量%、そしてさらに好ましくは80重量%〜99重量%含む。
【0016】
本発明の1つの好ましい実施態様において、接着剤中に存在するポリオレフィンは、プロピレンとエチレンおよび4〜20個の炭素原子、好ましくは4〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状1-オレフィンから選択される少なくとも1種または2種またはそれ以上のさらなるモノマーとのコポリマーであって、プロピレンに由来する構造単位の量が好ましくは70重量%〜99.9重量%、より好ましくは80重量%〜99重量%である前記のコポリマーである。
【0017】
さらなる実施態様において、接着剤中に存在するポリオレフィンは、エチレンと3〜20個の炭素原子を有する少なくとも1種の分岐状または非分岐状1-オレフィンとのコポリマーであって、エチレンに由来する構造単位の量が70重量%〜99.9重量%である前記のコポリマーである。
【0018】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、接着剤中に存在するポリオレフィンは、プロピレンとエチレンおよび/または4〜20個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状1-オレフィンから選択される1種またはそれ以上のさらなるモノマーとのコポリマーであって、当該コポリマーにおけるエチレン由来の構造単位の量は0.1重量%〜30重量%であり、当該コポリマーにおける1-アルケン由来の構造単位の量は0.1重量%〜50重量%の範囲である。
【0019】
本発明の1つの特に好ましい実施態様において、接着剤中に存在するポリオレフィンは、プロピレンと0.1重量%〜30重量%、特に1重量%〜20重量%のエチレンとのコポリマーである。
【0020】
本発明の接着剤において使用されるポリオレフィンは、それぞれの場合の接着剤の全重量を基準として、好ましくは2重量%〜100重量%、より好ましくは30重量%〜90重量%、特に好ましくは40重量%〜70重量%、さらに好ましくは50重量%〜60重量%の量で接着剤中に存在する。
【0021】
本発明の別の好ましい実施態様において、接着剤はポリオレフィンに加えて、1種またはそれ以上の極性変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む。
【0022】
極性変性ポリマーは、酸素含有ガスを用いる酸化、例えば、空気を用いる酸化により、または極性モノマー(例えばα,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体、例えば、アクリル酸、マレイン酸または無水マレイン酸、または不飽和オルガノシラン化合物、例えばトリアルコキシビニルシラン)との遊離基グラフト化反応により、非極性ポリマーから公知の方法で製造される。空気酸化によるメタロセンポリオレフィンの極性変性は従来技術であり、例えば欧州特許第0890583号明細書に記載されており;グラフト化による変性は、例えば欧州特許第0941257号明細書に記載されている。
【0023】
本発明に従って用いられる極性変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、500〜20000 g/mol、好ましくは800〜10000 g/mol、そしてより好ましくは1000〜3000 g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0024】
極性変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーは、使用されるポリオレフィンの重量を基準として、0重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜8重量%、より好ましくは2重量%〜7重量%の量で本発明の接着剤において使用される。
【0025】
接着性成分として、本発明の接着剤は1種またはそれ以上の樹脂を含むことができる。利用可能な樹脂の例には、代表的な、いわゆる脂肪族および脂環式または芳香族炭化水素樹脂が含まれる。これらの樹脂は、石油の処理において得られる特定の樹脂油留分の重合により製造することができる。例えば、水素化または官能基化により変性され得るこのような樹脂は、例えば、商標名(R)Eastoflex、(R)RegalREZ、(R)Kristalex、(R)Eastotac、(R)Piccotac(Eastman Chemical Company製)または(R)Escorez(ExxonMobil Chemical Company製)で市販されている。
【0026】
本発明において好適な樹脂にはさらに、例えばFriedel-Crafts触媒の存在下でテルペン、ピネンを重合させることにより製造されるポリテルペン樹脂、ならびに、水素化ポリテルペン、天然テルペンのコポリマーおよびターポリマー、例えばスチレン/テルペンコポリマーまたはα-メチルスチレン/テルペンコポリマーが含まれる。天然ロジンおよび変性ロジン、特に樹脂エステル、樹脂のグリセロールエステル、樹脂およびトール油樹脂のペンタエリスリトールエステル、およびこれらの水素化誘導体、および樹脂のフェノール変性ペンタエリスリトールエステル、およびフェノール変性テルペン樹脂もまた好適である。
【0027】
上記レジンは、個別的にまたは所望の組み合わせで、接着剤の全重量を基準として0重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜50重量%、より好ましくは20重量%〜40重量%の重量で本発明の接着剤中に存在することができる。
【0028】
本発明における特に好ましい接着剤のうちの1つは、以下:
a)メタロセン触媒の存在下で製造された1種またはそれ以上のポリオレフィン
b)1種またはそれ以上の樹脂性接着剤成分
c)1種またはそれ以上の可塑剤
を含む。
【0029】
適当な可塑剤には、流動パラフィンまたはその他の炭化水素が含まれる。芳香族または脂肪族ジカルボン酸エステル、例えば、フタル酸エステルまたはアジピン酸エステルもまた可能である。大部分が非晶質のコポリマーまたは完全に非晶質のコポリマー、例えば、分岐状もしくは非分岐状1-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン等の場合によりエチレンとのコポリマーもまた使用できる。室温では通常液体であり、程度の差はあるが粘性であるこの種のポリオレフィンは、例えば、Ziegler触媒またはメタロセン触媒を用いて製造することができる。メタロセン触媒で製造されるこの種のコポリマーの例は、欧州特許第0200351号明細書、欧州特許第0586777号明細書、欧州特許第1554320号明細書に記載されている。
【0030】
可塑剤は、それぞれの場合において使用されるポリオレフィンの重量を基準として、0重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜8重量%、より好ましくは2重量%〜7重量%の量で本発明の接着剤において使用される。
【0031】
同様に、本発明の特に好ましい対象は、溶融せずに室温または常温で適当な基材表面に対して利用することができ、そして、以下:
a)メタロセン触媒の存在下で製造される1種またはそれ以上のポリオレフィン
b)必要に応じて、1種またはそれ以上の極性変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマー
c)必要に応じて、1種またはそれ以上の接着剤成分
d)必要に応じて、1種またはそれ以上の可塑剤
を含む、寸法安定性を有する接着剤である。
【0032】
特に有利な実施態様において、本発明の接着剤はさらに着色剤、例えば、染料および顔料を含む。
【0033】
適当な着色剤には、原則として、有機または無機の顔料または染料が含まれる。典型的な例としては、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アンタンスロン(anthanthrone)、ベンズイミダゾロン、ジアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、トリフェンジオキサジンのようなジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、インディゴ、チオインディゴ、チアジンインディゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロン(pyranthrone)、イソビオラントロン(isoviolanthrone)、フラバントロン(flavanthrone)、アントラピリミジンまたはカーボンブラック顔料、および、これらの混晶または混合物の類からの有機顔料が挙げられる。
【0034】
別の例は、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、複合金属酸化物(例えば、ニッケルルチルイエロー、クロムルチルイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、 亜鉛・鉄ブラウン、スピネルブラック)、カドミウム、ビスマス、クロメート、ウルトラマリン、鉄ブルー顔料、およびこれらの混合物の類からの無機顔料であり、同様に、有機および無機顔料の混合物である。
【0035】
同様に、天然染料、例えば、インディゴ、サフラン、カーマイン、カルミン酸、コチニール、クルクミン、リボフラビン、リボフラビン-5'-ホスフェート、クロロフィル、カロチン、β-アポ-8-カロテナール、エチルカロテネート(ethyl carotenate)、リコピン、カプサンシン、カプソルビン、アントシアン、およびビートルートレッドも好適である。
【0036】
脂溶性および油溶性染料、特にアゾ染料が特に好ましい。
【0037】
本発明において使用されるメタロセンポリオレフィンは、式I
【0038】
【化1】

【0039】
で表されるメタロセン化合物を用いて製造される。
【0040】
この式には、式Ia
【0041】
【化2】

【0042】
で表される化合物、式Ib
【0043】
【化3】

【0044】
で表される化合物、および式Ic
【0045】
【化4】

【0046】
で表される化合物もまた包含される。
【0047】
式I、IaおよびIbにおいて、M1は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデンまたはタングステンのような元素周期表のIVb、VbまたはVIb族の金属、例えば、好ましくはチタン、ジルコニウムおよびハフニウムである。
【0048】
R1およびR2は同一であるかまたは異なっており、水素原子、C1-C10、好ましくはC1-C3アルキル基、特にメチル、C1-C10、好ましくはC1-C3アルコキシ基、C6-C10、好ましくはC6-C8アリール基、C6-C10、好ましくはC6-C8アリールオキシ基、C2-C10、好ましくはC2-C4アルケニル基、C7-C40、好ましくはC7-C10アリールアルキル基、C7-C40、好ましくはC7-C12アルキルアリール基、C8-C40、好ましくはC8-C12アリールアルケニル基、またはハロゲン原子、好ましくは塩素原子を示す。
【0049】
R3およびR4は、同一であるかまたは異なっており、中心原子M1とサンドイッチ構造を形成し得る単核もしくは多核炭化水素残基を示す。好ましくはR3およびR4は、シクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、ベンゾインデニルまたはフルオレニルであり、この際、基本骨格は追加の置換基を有していてもよいし、または互いに橋架けされていてもよい。さらに、R3およびR4基のうちの一方は、置換された窒素原子であってもよく、この場合にR24はR17の定義を有し、そして好ましくはメチル、tert-ブチルまたはシクロヘキシルである。
【0050】
R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、同一であるかまたは異なっており、水素原子、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素原子、C1-C10、好ましくはC1-C4アルキル基、C6-C10、好ましくはC6-C8アリール基、C1-C10、好ましくはC1-C3アルコキシ基、-NR162-基、-SR16-基、-OSiR163-基、-SiR163-基または-PR162基を示し、この際にR16は、C1-C10、好ましくはC1-C3アルキル基、またはC6-C10、好ましくはC6-C8アリール基であるか、またはSiもしくはPを含む基の場合には、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子であり、あるいは、R5、R6、R7、R8、R9またはR10の隣り合う基の対が、これらと結合する炭素原子とともに環を形成する。特に好ましい配位子は、基本骨格であるシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、ベンゾインデニルまたはフルオレニルの置換化合物である。
【0051】
R13は、
【0052】
【化5】

【0053】
=BR17、=AlR17、-Ge-、-Sn-、-O-、-S-、=SO、=SO2、=NR17、=CO、=PR17または=P(O)R17であり、式中、R17、R18およびR19は同一であるかまたは異なっており、水素原子、ハロゲン原子、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素原子、C1-C30、好ましくはC1-C4アルキル基、特にメチル基、C1-C10フルオロアルキル、好ましくはCF3基、C6-C10フルオロアリール、好ましくはペンタフルオロフェニル基、C6-C10、好ましくはC6-C8アリール基、C1-C10、好ましくはC1-C4-アルコキシ基、特にメトキシ基、C2-C10、好ましくはC2-C4アルケニル基、C7-C40、好ましくはC7-C10アラルキル基、C8-C40、好ましくはC8-C12アリールアルケニル基、またはC7-C40、好ましくはC7-C12アルキルアリール基を示すか、または、R17およびR18、またはR17およびR19はそれぞれの場合において、これらと結合する原子と一緒に環を形成する。
【0054】
M2はケイ素、ゲルマニウムまたはスズであり、好ましくはケイ素およびゲルマニウムである。R13は、好ましくは=CR17R18、=SiR17R18、=GeR17R18、-O-、-S-、=SO、=PR17または=P(O)R17である。
【0055】
R11およびR12は同一であるかまたは異なっており、R17に対して記載された定義を有する。mおよびnは、同一であるかまたは異なっており、そして0、1または2、好ましくは0または1を示し、mとnを加えると0、1または2、好ましくは0または1である。
【0056】
R14およびR15はR17およびR18の定義を有する。
【0057】
適当なメタロセンの好ましい例としては、以下のものが挙げられる:
ビス(1,2,3-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(1,2,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(1,2-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(1-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(1-n-ブチル-3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(2-メチル-4,6-ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(4-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(5-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(アルキルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(オクタデシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジベンジル,
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジメチル,
ビステトラヒドロインデニルジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリル-9-フルオレニルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2-メチル-4-エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2-メチル-4-イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-(2-メチルテトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-インデニルジルコニウムジクロリド,
ジメチルシリルビス-1-インデニルジルコニウムジメチル,
ジメチルシリルビス-1-テトラヒドロインデニルジルコニウムジクロリド,
ジフェニルメチレン-9-フルオレニルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド,
ジフェニルシリルビス-1-インデニルジルコニウムジクロリド,
エチレンビス-1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド,
エチレンビス-1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
エチレンビス-1-(2-メチルテトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド,
エチレンビス-1-(4,7-ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
エチレンビス-1-インデニルジルコニウムジクロリド,
エチレンビス-1-テトラヒドロインデニルジルコニウムジクロリド,
インデニルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド,
イソプロピリデン(1-インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
イソプロピリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド,
フェニルメチルシリルビス-1-(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド,
および、これらのメタロセンジクロリドの各々のアルキル誘導体またはアリール誘導体。
【0058】
前記の単一中心の触媒系は、適当な共触媒を用いて活性化される。式Iのメタロセンに好適な共触媒は、有機アルミニウム化合物、特にアルミノキサン、またはR20xNH4-xBR214、R20xPH4-xBR214、R203CBR214またはBR213のようなアルミニウム不含系である。これらの式中、xは1〜4の数であり、R20基は、同一であるかまたは異なっており、好ましくは同一であり、そしてC1-C10アルキルまたはC6-C18アリールを示すか、または、2つのR20基がこれらと結合する原子と一緒に環を形成し、そして、R21基は、同一であるかまたは異なっており、好ましくは同一であり、そしてアルキル、ハロアルキルまたはフルオロで置換されていてもよいC6-C18 -アリールである。特に、R20はエチル、プロピル、ブチルまたはフェニルであり、そして、R21はフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,5-ビストリフルオロメチルフェニル、メシチル、キシリルまたはトリルである。
【0059】
さらに、極性触媒毒からの保護を維持するために、多くの場合に第三成分が必要である。このような成分で好適なものには、有機アルミニウム化合物、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム等、およびこれらの混合物が含まれる。
【0060】
製造法に依存して、担持型の単一中心触媒を使用することもできる。担持材料および共触媒の残りの量が製造物中で100 ppmの濃度を超えないような触媒系が好ましい。
【0061】
このようなポリオレフィンを製造する方法は、例えば、欧州特許第321851号明細書、欧州特許第321851号明細書、欧州特許第384264号明細書、欧州特許第571882号明細書、および欧州特許第890584号明細書に記載されている。
【0062】
本発明の接着剤はさらに、ポリオレフィン系プラスチック、ワックス、極性ポリマー、例えば、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカルボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、メタロセン触媒を用いて製造されていないポリオレフィン、ゴムポリマー、例えばニトリルコポリマーもしくはスチレン/ブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、スチレン-ブタジエン-スチレンもしくはスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、ゴム、充てん剤、安定剤および/または酸化防止剤を含むことができる。
【0063】
本発明の接着剤は、スティック状、塊状、図形(figures)、球状または錐体のような考え得るいずれの形態でも存在することができ、そして、紙、カード、木材、ガラス、プラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、および金属、例えばアルミホイルの接着に非常に適している。
【実施例】
【0064】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明をこれらの実施例に限定するものではない。すべてのパーセントは重量パーセントである。
【0065】
溶融粘度は回転式粘度計を用いてDIN 53019に従って測定した。
【0066】
滴点はASTM D3954に従って、環球式軟化点はASTM D3104に従って測定した。
【0067】
針入度(needle penetration number:NPN)は、ASTM D1321に従って測定した。
【0068】
重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、135℃で1,2-ジクロロベンゼン中においてゲル透過クロマトグラフィーにより測定した。
【0069】
表1に記載されるような本発明において使用されるポリオレフィン1〜3は、それぞれ欧州特許第0384264号明細書および欧州特許第0571882号明細書に記載される方法に従って製造した。ポリオレフィン4は、欧州特許第941257号明細書(全般的な記載、実施例1〜11)に従って、パーオキシドにより誘導される3重量%無水マレイン酸でのグラフト化によりポリオレフィン1から製造した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表2に記載される原料を記載された割合で溶融し、180℃の温度で混合した。溶融混合物を、2 cmの内径および5 cmの長さを有する円筒形のシリコン型に注入した。冷却後、固体のスティック状物を型から外した。
【0073】
穏やかな圧力で塗りつけることによって、コピー用紙、家庭用アルミホイルおよびLDPEシート上に直線状の接着剤皮膜が形成した。接着剤皮膜上にもう一方のシート等を押し付けることにより、紙、アルミニウム、LDPEおよびポリエステルの考えられる全ての組み合わせの間で安定した接着が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温または常温で基材表面に対して利用でき、メタロセン触媒の存在下で製造された少なくとも1種または2種またはそれ以上のポリオレフィンを含み、そして、50〜165℃の範囲の環球式軟化点、50 x 0.1 mm未満の針入度(needle penetration number)、および170℃の温度で測定された場合に20〜40000 mPa・s、好ましくは50〜30000 mPa・s、より好ましくは10〜20000 mPa・sの範囲の溶融粘度を有する、寸法安定性を有する接着剤。
【請求項2】
水不含および溶剤不含である、請求項1記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項3】
ポリオレフィンが60〜165℃、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜140℃の範囲の滴点または環球式軟化点を有する、請求項1または2のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項4】
ポリオレフィンが500〜20000 g/mol、好ましくは800〜10000 g/molの範囲の数平均分子量Mn、および1000〜40000 g/mol、好ましくは1600〜30000 g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項5】
ポリオレフィンが3〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状1-オレフィンのホモポリマーであるか、または、3〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状1-オレフィンおよび場合によりエチレンを含むオレフィンコポリマーである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項6】
ポリオレフィンがプロピレンホモポリマーであるか、またはプロピレンとエチレンおよび4〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状1-オレフィンから選択される1種またはそれ以上のさらなるモノマーとのコポリマーであって、コポリマーの場合にはポリプロピレンに由来する構造単位の量が70重量%〜99.9重量%、好ましくは80重量%〜99重量%である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項7】
さらに1種またはそれ以上の極性変性オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項8】
メタロセンの存在下で製造されたポリオレフィンの接着剤中における量が、2重量%〜100重量%、好ましくは30重量%〜90重量%、より好ましくは40重量%〜70重量%、特に好ましくは50重量%〜60重量%の範囲である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項9】
さらに1種またはそれ以上の樹脂を0重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜50重量%、より好ましくは20重量%〜40重量%の範囲の量で含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項10】
さらに可塑剤を含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項11】
さらに追加的に非極性または極性ポリオレフィン、ワックス、着色剤、充てん剤、安定剤および/または酸化防止剤を含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の寸法安定性を有する接着剤を、スティック状、塊状、図形(figures)、球状または錐体の形態にあるスティック状接着剤へ使用する方法。

【公開番号】特開2008−24931(P2008−24931A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185140(P2007−185140)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(398025878)クラリアント・インターナシヨナル・リミテッド (74)
【Fターム(参考)】