寸法計測装置および寸法計測方法
【課題】比較的細径の管内径寸法の計測を行うこと。
【解決手段】管の内部に挿入される挿入部1と、挿入部1に設けられており管の内部に配置された状態で所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部11と、挿入部1に設けられておりセンサ部11を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構12と、を備える。比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部11において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部11を管の径方向に移動させることにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することができる。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【解決手段】管の内部に挿入される挿入部1と、挿入部1に設けられており管の内部に配置された状態で所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部11と、挿入部1に設けられておりセンサ部11を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構12と、を備える。比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部11において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部11を管の径方向に移動させることにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することができる。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子力容器に設けられた管の内径寸法を計測する寸法計測装置および寸法計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の原子炉容器の管台作業システムでは、原子炉容器の管台内部の保守作業を行うものである。この保守作業のうち、検査において、例えば溶接部に欠陥が検出された場合、切削・補修を行うことになるが、その際、欠陥部分を切削する前、欠陥部分の切削後、切削部分の肉盛溶接後、および肉盛溶接部分の仕上げ加工後に該当部分の内径寸法を計測する。そして、この原子炉容器の管台作業システムにおいて、寸法計測装置(寸法計測ユニット)は、ガイドポストが配設されたフレームと、ガイドポストに沿って移動可能に設けられて管台の内面を撮影する計測用画像取得部と、計測用画像取得部をガイドポストに沿って走行させる走行駆動部と、管台に対する相対位置を検出する位置センサと、計測用画像取得部で撮影する範囲全体を撮影する撮影手段と、フレームに取り付けられた被接続部とを有する(特許文献1:段落0076および図20参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−17670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、蒸気発生器を2機接続する2ループの原子炉においては、出口管台や入口管台の他に原子炉内に冷却水を注水するための注水配管が接続される注水管台が設けられている。かかる注水管台と注水配管との溶接部においても、保守のために内径寸法を計測する必要が生じる。
【0005】
しかし、上述した特許文献1の寸法計測装置は、内径がほぼ740mmの出口管台や入口管台の内径寸法の計測に適用されるもので、内径がほぼ92mmや87mmの注水管台に挿入することはできない。したがって、注水管台のような細径の管に挿入し、その内径寸法を計測することのできる寸法計測装置が切望されている。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことのできる寸法計測装置および寸法計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の寸法計測装置は、管の内部に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられており前記管の内部に配置された状態で所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部と、前記挿入部に設けられており前記センサ部を前記管の径方向に移動させるセンサ部移動機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この寸法計測装置によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部を管の径方向に移動させることにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することができる。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【0009】
また、本発明の寸法計測装置は、前記センサ部移動機構は、前記管の径方向への前記センサ部の移動を案内するガイド部と、前記管の軸方向に沿って往復作動する駆動源部と、前記駆動源部の往復作動を前記センサ部の移動方向に変換するリンク部とからなることを特徴とする。
【0010】
この寸法計測装置によれば、駆動源部が管の軸方向に沿って往復作動することから、センサ部を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構において、管の径方向への大型化を防ぐことができ、装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の寸法計測装置は、前記センサ部移動機構は、前記センサ部の移動位置を規定する規定部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この寸法計測装置によれば、センサ部が移動した位置を規定することで、センサ部の移動位置の再現性を向上し、センサ部による計測精度を維持することができる。
【0013】
また、本発明の寸法計測装置は、前記挿入部の外形の範囲内に前記センサ部および前記センサ部移動機構を配置し、かつ前記挿入部の挿入端に、当該挿入部の外形よりも大きく形成されると共に前記管の内部に挿入可能に形成された先端部を備えることを特徴とする。
【0014】
この寸法計測装置によれば、寸法計測装置を管に設置する際、挿入部を管に挿入することになるが、挿入部の挿入端に先端部を備えることで、当該先端部によって挿入部自体、または挿入部に設けたセンサ部やセンサ部移動機構などが管の内面に衝突する事態を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の寸法計測装置は、前記挿入部を前記管の内部に配置する支持ロッドを備え、当該支持ロッドを前記管の軸廻りに回転移動させる回転移動機構と、前記支持ロッドを前記管の軸方向に沿って移動させる軸方向移動機構とを前記管の外部に配置してなることを特徴とする。
【0016】
この寸法計測装置によれば、回転移動機構によって支持ロッドを管の軸廻りに回転移動させることで挿入部に配置したセンサ部が管の軸廻りに回転移動するので、管の周方向での内面形状が得られる。また、軸方向移動機構によって支持ロッドを管の軸方向に沿って移動させることで挿入部に配置したセンサ部が管の軸方向に沿って移動するので、管の軸方向での内面形状が得られる。そして、これら回転移動機構および軸方向移動機構を管の外部に配置することで、当該機構を管の内部に配置することなく比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【0017】
上述の目的を達成するために、本発明の寸法計測方法は、管の軸方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する軸方向計測工程と、前記管の周方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する周方向計測工程とを含み、各前記工程によって得られた各径方向寸法から前記管の内面形状を得る寸法計測方法において、前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程について所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法が前記センサ部による計測範囲を逸脱した場合、前記センサ部を前記管の径方向に移動させて各前記工程を再び行う再計測工程をさらに含み、当該再計測工程によって得られた前記管の内面形状と、前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程によって得られた前記管の内面形状とを組み合わせることを特徴とする。
【0018】
この寸法計測方法によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部を管の径方向に移動させて再計測工程を行うことにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することができる。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、原子力設備の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、原子炉容器の横断面図である。
【図3】図3は、注水管台の断面図である。
【図4】図4は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図5】図5は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の一部裁断した側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の全体斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の一部の斜視図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の一部の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の制御系のブロック図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
図1は、原子力設備の一例を示す概略図であり、図2は、原子炉容器の横断面図である。図1に示すように、原子力設備100は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)がある。この原子力設備100は、原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103およびポンプ104が、一次冷却水管105により順次連結されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。また、蒸気発生器103とタービン(図示省略)との間には、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0023】
この原子力設備100では、一次冷却水が原子炉容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換により蒸気となった二次冷却水は、タービンに供給される。タービンは、二次冷却水の蒸気により駆動される。そして、タービンの動力が発電機(図示省略)に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、凝縮して水となり蒸気発生器103に供給される。一方、熱交換後の一次冷却水は、一次冷却水管105を介してポンプ104側に回収される。
【0024】
蒸気発生器103は、図1に示すように、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。この伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。また、入口側水室103aは、配管ノズルとしての入口管台103fが設けられ、この入口管台103fに入口側の一次冷却水管105が接続されている。一方、出口側水室103bは、配管ノズルとしての出口管台103gが設けられ、この出口管台103gに出口側の一次冷却水管105が接続されている。
【0025】
原子炉容器101は、図1に示すように、燃料集合体(図示省略)が挿抜できるように、容器本体101aとその上部に装着される容器蓋101bとにより構成されている。容器蓋101bは、容器本体101aに対して開閉可能に設けられている。容器本体101aは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口管台101cおよび出口管台101dが設けられている。出口管台101dは、蒸気発生器103の入口管台103fに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口管台101cは、蒸気発生器103の出口管台103gに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、原子炉容器101は、図2に示すように、容器本体101aにおいて入口管台101cおよび出口管台101dと同等高さの位置に、注水用の管である注水管台101eが設けられている。注水管台101eは、管である注水配管101fが溶接によって接続されている。
【0026】
図3は、注水管台の断面図であり、図4および図5は、注水管台の切削・補修の説明図である。注水管台101eは、上述した原子力設備100の安全性や信頼性を確保するため、定期的に検査が行われる。この検査の結果、図3に示す、注水管台101eと注水配管101fとの接続部分である溶接部101gに、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、当該溶接部101gを切削・補修する。具体的には、図4に示すように、溶接部101gの内面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行い、溶接肉盛Bを行った部分およびその周囲を仕上げ加工する。また、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合は、図5に示すように、溶接部101gの内面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に深く切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行い、溶接肉盛Bを行った部分およびその周囲を仕上げ加工する。なお、図4に示す浅い切削および肉盛は、注水管台101eの内面の全周に沿って行う。また、図5に示す深い切削および肉盛は、注水管台101eの内面の局部または全周に沿って行う。
【0027】
上記の切削・補修の箇所において、切削前、切削後、溶接後および仕上げ後に、該当部分の内径寸法を計測するため、本実施の形態に係る寸法計測装置が適用される。図6は、本実施の形態に係る寸法計測装置の一部裁断した側面図であり、図7は、本実施の形態に係る寸法計測装置の全体斜視図であり、図8および図9は、本実施の形態に係る寸法計測装置の一部の斜視図である。
【0028】
寸法計測装置は、上述した原子炉容器101の内側であって注水管台101eから注水配管101fに至る管の内部に挿入されるもので、図6および図7に示すように、管の内部に挿入される挿入部1と、当該挿入部1を管の内部に配置する筒状の支持ロッド2とを有している。
【0029】
挿入部1は、図6〜図9に示すように、管の内部に挿入されるように、当該管の内径よりも細径に形成され、管の延在方向(軸方向)に沿う軸S1に延びる板状体をなしている。挿入部1は、センサ部11と、センサ部移動機構12と、撮像部13とを有している。
【0030】
センサ部11は、管の内部に配置された状態で所定位置から計測対象物である管の内面に至る径方向寸法を計測するためのものである。センサ部11は、例えば、発光素子(半導体レーザ)と光位置検出素子(PSD:Position Sensitive Detector)とを組み合わせてなるもので、半導体レーザの光を投光レンズによって集光して計測対象物(管の内面)に照射し、計測対象物から拡散反射された光線の一部を受光レンズによって光位置検出素子に集光することで所定位置から対象物までの変位量を検出するレーザ変位センサが適用される。
【0031】
センサ部移動機構12は、センサ部11を管の径方向(軸S1に直行する方向)に移動させるためのものである。センサ部移動機構12は、ガイド部121と、駆動源部122と、リンク部123と、規定部124とを有してなる。
【0032】
ガイド部121は、管の径方向へのセンサ部11の移動を案内するもので、径方向に長手状に延在するように挿入部1に固定された一対のレール部材121aと、このレール部材121aの長手方向(径方向)に沿って移動可能に設けられた移動部材121bとを含み構成されている。センサ部11は、移動部材121bに固定されており、当該移動部材121bの移動に伴って径方向に移動可能に設けられている。
【0033】
駆動源部122は、アクチュエータであって、本実施の形態ではエアシリンダが適用されている。この駆動源部122は、管の軸方向に沿って往復作動するように挿入部1に設けられている。
【0034】
リンク部123は、駆動源部122の作動子と、ガイド部121の移動部材121bとに接続されたもので、駆動源部122の軸方向の往復作動を、移動部材121b(センサ部11)の径方向の移動に変換する。
【0035】
なお、駆動源部122の軸方向の往復作動を移動部材121b(センサ部11)の径方向の移動に変換するストロークは、センサ部11が挿入部1の径方向寸法の範囲とされている。すなわち、センサ部11の移動は、挿入部1の外形の範囲内であり、挿入部1が管の内部に挿入された状態で、センサ部11が管の内面に当接することはない。
【0036】
規定部124は、挿入部1に固定されたピン部材であって、移動部材121bの径方向への移動の一方側と他方側とにそれぞれ設けられている。規定部124は、移動部材121bが径方向に移動した場合に、その一方側と他方側とで当接することで、移動部材121b(センサ部11)の移動位置を規定する。
【0037】
撮像部13は、撮像手段である固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)と、照明手段である発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)とが筒状体に内装されたもので、照明手段で照らす範囲を撮像手段で撮像する。また、本実施の形態の撮像部13は、筒状体が長手方向を管の軸方向に沿って設けられ、ミラーによって軸方向に交差する方向に照明手段の照射方向および撮像手段の撮像方向が変えられている。この撮像部13は、センサ部11において半導体レーザの光を計測対象物(管の内面)に照射する位置を撮像する。
【0038】
このように、センサ部11と、センサ部移動機構12と、撮像部13とを有する挿入部1は、管の内部に挿入され得る外形に形成されており、その外形の範囲内にセンサ部11、センサ部移動機構12および撮像部13を配置している。そして、挿入部1は、管への挿入の先端である挿入端に、先端部14が設けられている。先端部14は、例えば、耐磨耗性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れた超高分子ポリエチレンによりなり、挿入部1の外形よりも大きく形成されていると共に、管の内部に挿入可能な大きさに形成されている。
【0039】
また、挿入部1は、挿入端の軸方向の反対側である後端に固定部15が設けられている。固定部15は、筒状に形成され、支持ロッド2の先端を挿入しつつ支持ロッド2に対してネジによって固定される。また、センサ部11のケーブル11aや、センサ部移動機構12の駆動源部122のケーブル(本実施の形態ではエアチューブ)122aや、撮像部13のケーブル13aは、固定部15の内部に挿通されると共に、筒状の支持ロッド2の内部に挿通される。
【0040】
支持ロッド2は、上述した先端に固定された挿入部1を管の内部に配置するものである。この支持ロッド2は、図7に示すように、挿入部1が固定される先端から、軸方向の反対側である後端に至る外周面に、ボールスプライン溝21とボールネジ溝22とが長手方向に沿って設けられている。ボールスプライン溝21は、図7では単一で示しているが複数あってもよい。
【0041】
支持ロッド2は、図6に示すように、挿入部1を管の内部に配置した状態で、後端側が管の外部(原子炉容器101の内側)に突出される。この管の外部に突出された支持ロッド2の後端側には、支持ロッド移動部3が設けられている。支持ロッド移動部3は、回転移動機構31と軸方向移動機構32とを含み構成されている。
【0042】
回転移動機構31は、支持ロッド2を管の軸廻りに回転移動させるものである。回転移動機構31は、図6および図7に示すように、円筒状の外筒311の内部に、円筒状の内筒312が内装されている。内筒312は、軸S1の廻りに外筒311と相対的に回転可能に設けられている。内筒312は、先端側の内部に、支持ロッド2のボールスプライン溝21と係合するボールスプライン313が軸S1を中心として固定されている。支持ロッド2と内筒312とは、ボールスプライン溝21とボールスプライン313との係合によって、軸S1の延在方向(軸方向)に相対的に移動可能であるが、軸S1の廻りは回転しない関係とされている。また、内筒312は、後端側が外筒311の外部に延在しており、当該後端側の外部に軸S1を中心とした従動歯車314が固定されている。この従動歯車314は、外筒に固定される回転駆動モータ315の出力側に設けられたノンバックラッシギアからなる駆動歯車(図示せず)が噛み合っている。
【0043】
なお、外筒311は、その外面に突出するフランジ311aが設けられている。そして、外筒311は、図6に示すように、管の外部において、原子炉容器101の内側に気中作業環境を構成する有底筒状のプラットフォーム(特開2011−17670号公報のプラットフォームに相当)106に固定される。具体的に、プラットフォーム106は、筒状の側壁に、管に通じる円形の窓穴106aが設けられており、この窓穴106aに取付基部107が固定されている。取付基部107は、円筒状に形成され、窓穴106aに挿入された状態でプラットフォーム106内に配置される端部の外周に突出するフランジ107aが設けられている。この取付基部107は、窓穴106aに対し、円筒状の中心を管の軸に合わせて固定される。外筒311は、この取付基部107に挿通されて取付基部107のフランジ107aに対してフランジ311aが固定されることで、支持ロッド2の軸S1を管の軸に合わせて取り付けられることになる。
【0044】
このように構成される回転移動機構31は、回転駆動モータ315によって従動歯車314が回転すると、従動歯車314と共に内筒312およびボールスプライン313が軸S1の廻りに回転する。すると、ボールスプライン313に対してボールスプライン溝21が係合する支持ロッド2が軸S1の廻りに回転することになる。このため、支持ロッド2の先端に固定されている挿入部1が軸S1の廻りに回転する。この結果、挿入部1に設けられたセンサ部11が軸S1の廻りに回転し、管の周方向における径方向寸法が計測される。
【0045】
軸方向移動機構32は、支持ロッド2を管の軸方向に沿って移動させるものである。軸方向移動機構32は、図6および図7に示すように、内筒312の内部において、支持ロッド2を挿通しつつ、当該支持ロッド2のボールネジ溝22と係合するボールネジナット321が設けられている。ボールネジナット321は、その後端に、軸S1を中心とした従動歯車322が固定されている。この従動歯車322は、内筒312に固定される軸方向駆動モータ323の出力側に設けられたノンバックラッシギアからなる駆動歯車(図示せず)が噛み合っている。また、軸方向移動機構32は、回転移動機構31のボールスプライン313をその構成に含んでいる。
【0046】
このように構成される軸方向移動機構32は、軸方向駆動モータ323によって従動歯車322が回転すると、従動歯車322と共にボールネジナット321が軸S1の廻りに回転する。すると、ボールネジナット321に対してボールネジ溝22が係合し、かつボールスプライン313に対してボールスプライン溝21が係合する支持ロッド2が、ボールスプライン313によって軸S1の廻りの回転を規制されつつ、ボールネジナット321へのボールネジ溝22の係合によって軸方向に移動する。この結果、挿入部1に設けられたセンサ部11が軸方向に移動し、管の軸方向における径方向寸法が計測される。なお、軸方向移動機構32は、回転移動機構31によって内筒312の回転に伴って共に回転する。
【0047】
図10は、本実施の形態に係る寸法計測装置の制御系のブロック図である。上述した寸法計測装置は、センサ部11、センサ部移動機構12の駆動源部122(本実施の形態では駆動源部122へのエア供給部)、撮像部13、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323が、制御部4に接続されている。
【0048】
制御部4は、マイコンなどで構成され、記憶部41および演算部42が接続されている。記憶部41は、RAMやROMなどから構成され、プログラムやデータが格納されている。記憶部41に格納されるデータは、回転駆動モータ315の駆動に伴う支持ロッド2の回転角度(センサ部11の周方向位置)のデータや、軸方向駆動モータ323の駆動に伴う支持ロッド2の軸方向移動量(センサ部11の軸方向位置)のデータや、駆動源部122の駆動によるセンサ部11の径方向位置のデータがある。また、演算部42は、センサ部11によって検出した変位量(寸法データ)に基づいて管の径方向寸法を演算する。また、図には明示しないが、制御部4は、表示手段が接続されて、演算部42による径方向寸法の演算結果を表示することが可能である。
【0049】
具体的に、制御部4による寸法計測装置の動作を説明する。図11〜図14は、本実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。この寸法計測装置の動作は、対象の管(例えば、注水管台101eおよび注水配管101fの溶接部101g)の検査を行い、当該管に欠陥が発生するおそれや欠陥が発生した場合に、管の内径寸法を計測するためのものである。この場合、図6に示すように、対象の管に寸法計測装置を設置する。この際、先端部14は、挿入部1や、センサ部11や、センサ部移動機構12や、撮像部13などの構成よりも外形が大きく、管への挿入部1の挿入において、先端部14が管の内面に接触することで前記構成を管の内面に接触させずに管の内部に案内することが可能である。
【0050】
まず、図11に示すように、補修に先立ち、切削する前の管の内径寸法を計測する。ここでは、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させ、管の内面を含む計測範囲Hとする。そして、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。
【0051】
次に、図12に示すように、切削した後の管の内径寸法を計測する。この場合の切削は、溶接部101gの内面全周を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に比較的浅く切削している。ここでは、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させ、管の内面を含む計測範囲Hとする。そして、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、上述と同様に、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。
【0052】
次に、図12に示すように、肉盛溶接した後(図12に破線で示す)の管の内径寸法を計測する。ここでは、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させ、管の内面を含む計測範囲Hとする。そして、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、上述と同様に、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。また、肉盛溶接部分を仕上げ加工した後においても、同様に内径寸法を計測する。
【0053】
このように、管の補修において、欠陥部分を切削する前、欠陥部分の切削後、切削部分の肉盛溶接後、および肉盛溶接部分の仕上げ加工後に該当部分の内径寸法を寸法計測装置によって計測することでそれぞれの状態での管の内面形状を得る。これにより、得られた管の内面形状に基づいて切削や、肉盛溶接や、仕上げ加工を行うことができ、仕上げ加工後の管の内面形状を確認することができる。
【0054】
また、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合は(図5参照)、欠陥部分を切削する前、切削部分の肉盛溶接後、および肉盛溶接部分の仕上げ加工後については、上述と同様に該当部分の内径寸法を寸法計測装置によって計測する。
【0055】
そして、欠陥部分の切削後については、図13に示すように、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させた状態であると、所定位置から管の内面に至る径方向寸法がセンサ部11による計測範囲Hを逸脱する部分が生じることになるため、切削後の深さに対応して内径寸法を計測することができない。これは、内径寸法を計測できない部分からセンサ部11の検出信号が得られなくなることで判断することができる。このような場合、図13に示すように、一旦、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させた状態で計測を行い、センサ部11の検出信号が得られなったときに、図14に示すように、センサ部11を管の内面に近づく方向(管の内面側)に径方向に移動させ、計測範囲Hを径方向にスライド移動させる。そして、再計測として、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。そして、再計測によって得られた管の内面形状と、それ以前の計測によって得られた管の内面形状とを組み合わせる。なお、この場合、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させた状態の計測範囲Hと、センサ部11を管の内面に近づく方向(管の内面側)に径方向に移動させた状態の計測範囲Hとを一部重複させることで、各内面形状を組み合わせることができる。
【0056】
このように、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合であっても、管の内面形状を得ることができる。
【0057】
上述したように、本実施の形態の寸法計測装置は、管の内部に挿入される挿入部1と、挿入部1に設けられており管の内部に配置された状態で所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部11と、挿入部1に設けられておりセンサ部11を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構12とを備える。
【0058】
この寸法計測装置によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部11において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部11を管の径方向に移動させることにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することが可能である。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことが可能になる。
【0059】
また、本実施の形態の寸法計測装置では、センサ部移動機構12は、管の径方向へのセンサ部11の移動を案内するガイド部121と、管の軸方向に沿って往復作動する駆動源部122と、駆動源部122の往復作動をセンサ部11の移動方向に変換するリンク部123とからなる。
【0060】
この寸法計測装置によれば、駆動源部122が管の軸方向に沿って往復作動することから、センサ部11を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構12において、管の径方向への大型化を防ぐことができ、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0061】
また、本実施の形態の寸法計測装置では、センサ部移動機構12は、センサ部11の移動位置を規定する規定部124をさらに備える。
【0062】
この寸法計測装置によれば、センサ部11が移動した位置を規定することで、センサ部11の移動位置の再現性を向上し、センサ部11による計測精度を維持することが可能になる。
【0063】
また、本実施の形態の寸法計測装置は、挿入部1の外形の範囲内にセンサ部11およびセンサ部移動機構12を配置し、かつ挿入部1の挿入端に、当該挿入部1の外形よりも大きく形成されると共に管の内部に挿入可能に形成された先端部14を備える。
【0064】
この寸法計測装置によれば、寸法計測装置を管に設置する際、挿入部1を管に挿入することになるが、挿入部1の挿入端に先端部14を備えることで、当該先端部14によって挿入部1自体、または挿入部1に設けたセンサ部11やセンサ部移動機構12などが管の内面に衝突する事態を防ぐことが可能になる。
【0065】
また、本実施の形態の寸法計測装置は、挿入部1を管の内部に配置する支持ロッド2を備え、当該支持ロッド2を管の軸廻りに回転移動させる回転移動機構31と、支持ロッド2を管の軸方向に沿って移動させる軸方向移動機構32とを管の外部に配置してなる。
【0066】
この寸法計測装置によれば、回転移動機構31によって支持ロッド2を管の軸廻りに回転移動させることで挿入部1に配置したセンサ部11が管の軸廻りに回転移動するので、管の周方向での内面形状が得られる。また、軸方向移動機構32によって支持ロッド2を管の軸方向に沿って移動させることで挿入部1に配置したセンサ部11が管の軸方向に沿って移動するので、管の軸方向での内面形状が得られる。そして、これら回転移動機構31および軸方向移動機構32を管の外部に配置することで、当該機構を管の内部に配置することなく比較的細径の管内径寸法の計測を行うことが可能になる。
【0067】
また、本実施の形態の寸法計測方法は、管の軸方向に亘ってセンサ部11を移動させて管内の所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測する軸方向計測工程と、管の周方向に亘ってセンサ部11を移動させて管内の所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測する周方向計測工程とを含み、各工程によって得られた各径方向寸法から管の内面形状を得る寸法計測方法において、軸方向計測工程や周方向計測工程について所定位置から管の内面に至る径方向寸法がセンサ部11による計測範囲を逸脱した場合、センサ部11を管の径方向に移動させて各前記工程を再び行う再計測工程をさらに含み、当該再計測工程によって得られた管の内面形状と、軸方向計測工程や周方向計測工程によって得られた管の内面形状とを組み合わせる。
【0068】
この寸法計測方法によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部11において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部11を管の径方向に移動させて再計測工程を行うことにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することが可能である。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
1 挿入部
11 センサ部
12 センサ部移動機構
121 ガイド部
121a レール部材
121b 移動部材
122 駆動源部
123 リンク部
124 規定部
13 撮像部
14 先端部
15 固定部
2 支持ロッド
21 ボールスプライン溝
22 ボールネジ溝
3 支持ロッド移動部
31 回転移動機構
311 外筒
311a フランジ
312 内筒
313 ボールスプライン
314 従動歯車
315 回転駆動モータ
32 軸方向移動機構
321 ボールネジナット
322 従動歯車
323 軸方向駆動モータ
4 制御部
41 記憶部
42 演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子力容器に設けられた管の内径寸法を計測する寸法計測装置および寸法計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の原子炉容器の管台作業システムでは、原子炉容器の管台内部の保守作業を行うものである。この保守作業のうち、検査において、例えば溶接部に欠陥が検出された場合、切削・補修を行うことになるが、その際、欠陥部分を切削する前、欠陥部分の切削後、切削部分の肉盛溶接後、および肉盛溶接部分の仕上げ加工後に該当部分の内径寸法を計測する。そして、この原子炉容器の管台作業システムにおいて、寸法計測装置(寸法計測ユニット)は、ガイドポストが配設されたフレームと、ガイドポストに沿って移動可能に設けられて管台の内面を撮影する計測用画像取得部と、計測用画像取得部をガイドポストに沿って走行させる走行駆動部と、管台に対する相対位置を検出する位置センサと、計測用画像取得部で撮影する範囲全体を撮影する撮影手段と、フレームに取り付けられた被接続部とを有する(特許文献1:段落0076および図20参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−17670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、蒸気発生器を2機接続する2ループの原子炉においては、出口管台や入口管台の他に原子炉内に冷却水を注水するための注水配管が接続される注水管台が設けられている。かかる注水管台と注水配管との溶接部においても、保守のために内径寸法を計測する必要が生じる。
【0005】
しかし、上述した特許文献1の寸法計測装置は、内径がほぼ740mmの出口管台や入口管台の内径寸法の計測に適用されるもので、内径がほぼ92mmや87mmの注水管台に挿入することはできない。したがって、注水管台のような細径の管に挿入し、その内径寸法を計測することのできる寸法計測装置が切望されている。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことのできる寸法計測装置および寸法計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の寸法計測装置は、管の内部に挿入される挿入部と、前記挿入部に設けられており前記管の内部に配置された状態で所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部と、前記挿入部に設けられており前記センサ部を前記管の径方向に移動させるセンサ部移動機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この寸法計測装置によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部を管の径方向に移動させることにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することができる。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【0009】
また、本発明の寸法計測装置は、前記センサ部移動機構は、前記管の径方向への前記センサ部の移動を案内するガイド部と、前記管の軸方向に沿って往復作動する駆動源部と、前記駆動源部の往復作動を前記センサ部の移動方向に変換するリンク部とからなることを特徴とする。
【0010】
この寸法計測装置によれば、駆動源部が管の軸方向に沿って往復作動することから、センサ部を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構において、管の径方向への大型化を防ぐことができ、装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の寸法計測装置は、前記センサ部移動機構は、前記センサ部の移動位置を規定する規定部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この寸法計測装置によれば、センサ部が移動した位置を規定することで、センサ部の移動位置の再現性を向上し、センサ部による計測精度を維持することができる。
【0013】
また、本発明の寸法計測装置は、前記挿入部の外形の範囲内に前記センサ部および前記センサ部移動機構を配置し、かつ前記挿入部の挿入端に、当該挿入部の外形よりも大きく形成されると共に前記管の内部に挿入可能に形成された先端部を備えることを特徴とする。
【0014】
この寸法計測装置によれば、寸法計測装置を管に設置する際、挿入部を管に挿入することになるが、挿入部の挿入端に先端部を備えることで、当該先端部によって挿入部自体、または挿入部に設けたセンサ部やセンサ部移動機構などが管の内面に衝突する事態を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の寸法計測装置は、前記挿入部を前記管の内部に配置する支持ロッドを備え、当該支持ロッドを前記管の軸廻りに回転移動させる回転移動機構と、前記支持ロッドを前記管の軸方向に沿って移動させる軸方向移動機構とを前記管の外部に配置してなることを特徴とする。
【0016】
この寸法計測装置によれば、回転移動機構によって支持ロッドを管の軸廻りに回転移動させることで挿入部に配置したセンサ部が管の軸廻りに回転移動するので、管の周方向での内面形状が得られる。また、軸方向移動機構によって支持ロッドを管の軸方向に沿って移動させることで挿入部に配置したセンサ部が管の軸方向に沿って移動するので、管の軸方向での内面形状が得られる。そして、これら回転移動機構および軸方向移動機構を管の外部に配置することで、当該機構を管の内部に配置することなく比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【0017】
上述の目的を達成するために、本発明の寸法計測方法は、管の軸方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する軸方向計測工程と、前記管の周方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する周方向計測工程とを含み、各前記工程によって得られた各径方向寸法から前記管の内面形状を得る寸法計測方法において、前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程について所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法が前記センサ部による計測範囲を逸脱した場合、前記センサ部を前記管の径方向に移動させて各前記工程を再び行う再計測工程をさらに含み、当該再計測工程によって得られた前記管の内面形状と、前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程によって得られた前記管の内面形状とを組み合わせることを特徴とする。
【0018】
この寸法計測方法によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部を管の径方向に移動させて再計測工程を行うことにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することができる。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、原子力設備の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、原子炉容器の横断面図である。
【図3】図3は、注水管台の断面図である。
【図4】図4は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図5】図5は、注水管台の切削・補修の説明図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の一部裁断した側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の全体斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の一部の斜視図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の一部の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の制御系のブロック図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
図1は、原子力設備の一例を示す概略図であり、図2は、原子炉容器の横断面図である。図1に示すように、原子力設備100は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)がある。この原子力設備100は、原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103およびポンプ104が、一次冷却水管105により順次連結されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。また、蒸気発生器103とタービン(図示省略)との間には、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0023】
この原子力設備100では、一次冷却水が原子炉容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換により蒸気となった二次冷却水は、タービンに供給される。タービンは、二次冷却水の蒸気により駆動される。そして、タービンの動力が発電機(図示省略)に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、凝縮して水となり蒸気発生器103に供給される。一方、熱交換後の一次冷却水は、一次冷却水管105を介してポンプ104側に回収される。
【0024】
蒸気発生器103は、図1に示すように、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。この伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。また、入口側水室103aは、配管ノズルとしての入口管台103fが設けられ、この入口管台103fに入口側の一次冷却水管105が接続されている。一方、出口側水室103bは、配管ノズルとしての出口管台103gが設けられ、この出口管台103gに出口側の一次冷却水管105が接続されている。
【0025】
原子炉容器101は、図1に示すように、燃料集合体(図示省略)が挿抜できるように、容器本体101aとその上部に装着される容器蓋101bとにより構成されている。容器蓋101bは、容器本体101aに対して開閉可能に設けられている。容器本体101aは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口管台101cおよび出口管台101dが設けられている。出口管台101dは、蒸気発生器103の入口管台103fに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口管台101cは、蒸気発生器103の出口管台103gに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、原子炉容器101は、図2に示すように、容器本体101aにおいて入口管台101cおよび出口管台101dと同等高さの位置に、注水用の管である注水管台101eが設けられている。注水管台101eは、管である注水配管101fが溶接によって接続されている。
【0026】
図3は、注水管台の断面図であり、図4および図5は、注水管台の切削・補修の説明図である。注水管台101eは、上述した原子力設備100の安全性や信頼性を確保するため、定期的に検査が行われる。この検査の結果、図3に示す、注水管台101eと注水配管101fとの接続部分である溶接部101gに、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、当該溶接部101gを切削・補修する。具体的には、図4に示すように、溶接部101gの内面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行い、溶接肉盛Bを行った部分およびその周囲を仕上げ加工する。また、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合は、図5に示すように、溶接部101gの内面を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に深く切削し、切削された切削部Aに所定合金種の溶接肉盛Bを行い、溶接肉盛Bを行った部分およびその周囲を仕上げ加工する。なお、図4に示す浅い切削および肉盛は、注水管台101eの内面の全周に沿って行う。また、図5に示す深い切削および肉盛は、注水管台101eの内面の局部または全周に沿って行う。
【0027】
上記の切削・補修の箇所において、切削前、切削後、溶接後および仕上げ後に、該当部分の内径寸法を計測するため、本実施の形態に係る寸法計測装置が適用される。図6は、本実施の形態に係る寸法計測装置の一部裁断した側面図であり、図7は、本実施の形態に係る寸法計測装置の全体斜視図であり、図8および図9は、本実施の形態に係る寸法計測装置の一部の斜視図である。
【0028】
寸法計測装置は、上述した原子炉容器101の内側であって注水管台101eから注水配管101fに至る管の内部に挿入されるもので、図6および図7に示すように、管の内部に挿入される挿入部1と、当該挿入部1を管の内部に配置する筒状の支持ロッド2とを有している。
【0029】
挿入部1は、図6〜図9に示すように、管の内部に挿入されるように、当該管の内径よりも細径に形成され、管の延在方向(軸方向)に沿う軸S1に延びる板状体をなしている。挿入部1は、センサ部11と、センサ部移動機構12と、撮像部13とを有している。
【0030】
センサ部11は、管の内部に配置された状態で所定位置から計測対象物である管の内面に至る径方向寸法を計測するためのものである。センサ部11は、例えば、発光素子(半導体レーザ)と光位置検出素子(PSD:Position Sensitive Detector)とを組み合わせてなるもので、半導体レーザの光を投光レンズによって集光して計測対象物(管の内面)に照射し、計測対象物から拡散反射された光線の一部を受光レンズによって光位置検出素子に集光することで所定位置から対象物までの変位量を検出するレーザ変位センサが適用される。
【0031】
センサ部移動機構12は、センサ部11を管の径方向(軸S1に直行する方向)に移動させるためのものである。センサ部移動機構12は、ガイド部121と、駆動源部122と、リンク部123と、規定部124とを有してなる。
【0032】
ガイド部121は、管の径方向へのセンサ部11の移動を案内するもので、径方向に長手状に延在するように挿入部1に固定された一対のレール部材121aと、このレール部材121aの長手方向(径方向)に沿って移動可能に設けられた移動部材121bとを含み構成されている。センサ部11は、移動部材121bに固定されており、当該移動部材121bの移動に伴って径方向に移動可能に設けられている。
【0033】
駆動源部122は、アクチュエータであって、本実施の形態ではエアシリンダが適用されている。この駆動源部122は、管の軸方向に沿って往復作動するように挿入部1に設けられている。
【0034】
リンク部123は、駆動源部122の作動子と、ガイド部121の移動部材121bとに接続されたもので、駆動源部122の軸方向の往復作動を、移動部材121b(センサ部11)の径方向の移動に変換する。
【0035】
なお、駆動源部122の軸方向の往復作動を移動部材121b(センサ部11)の径方向の移動に変換するストロークは、センサ部11が挿入部1の径方向寸法の範囲とされている。すなわち、センサ部11の移動は、挿入部1の外形の範囲内であり、挿入部1が管の内部に挿入された状態で、センサ部11が管の内面に当接することはない。
【0036】
規定部124は、挿入部1に固定されたピン部材であって、移動部材121bの径方向への移動の一方側と他方側とにそれぞれ設けられている。規定部124は、移動部材121bが径方向に移動した場合に、その一方側と他方側とで当接することで、移動部材121b(センサ部11)の移動位置を規定する。
【0037】
撮像部13は、撮像手段である固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)と、照明手段である発光ダイオード(LED: Light Emitting Diode)とが筒状体に内装されたもので、照明手段で照らす範囲を撮像手段で撮像する。また、本実施の形態の撮像部13は、筒状体が長手方向を管の軸方向に沿って設けられ、ミラーによって軸方向に交差する方向に照明手段の照射方向および撮像手段の撮像方向が変えられている。この撮像部13は、センサ部11において半導体レーザの光を計測対象物(管の内面)に照射する位置を撮像する。
【0038】
このように、センサ部11と、センサ部移動機構12と、撮像部13とを有する挿入部1は、管の内部に挿入され得る外形に形成されており、その外形の範囲内にセンサ部11、センサ部移動機構12および撮像部13を配置している。そして、挿入部1は、管への挿入の先端である挿入端に、先端部14が設けられている。先端部14は、例えば、耐磨耗性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れた超高分子ポリエチレンによりなり、挿入部1の外形よりも大きく形成されていると共に、管の内部に挿入可能な大きさに形成されている。
【0039】
また、挿入部1は、挿入端の軸方向の反対側である後端に固定部15が設けられている。固定部15は、筒状に形成され、支持ロッド2の先端を挿入しつつ支持ロッド2に対してネジによって固定される。また、センサ部11のケーブル11aや、センサ部移動機構12の駆動源部122のケーブル(本実施の形態ではエアチューブ)122aや、撮像部13のケーブル13aは、固定部15の内部に挿通されると共に、筒状の支持ロッド2の内部に挿通される。
【0040】
支持ロッド2は、上述した先端に固定された挿入部1を管の内部に配置するものである。この支持ロッド2は、図7に示すように、挿入部1が固定される先端から、軸方向の反対側である後端に至る外周面に、ボールスプライン溝21とボールネジ溝22とが長手方向に沿って設けられている。ボールスプライン溝21は、図7では単一で示しているが複数あってもよい。
【0041】
支持ロッド2は、図6に示すように、挿入部1を管の内部に配置した状態で、後端側が管の外部(原子炉容器101の内側)に突出される。この管の外部に突出された支持ロッド2の後端側には、支持ロッド移動部3が設けられている。支持ロッド移動部3は、回転移動機構31と軸方向移動機構32とを含み構成されている。
【0042】
回転移動機構31は、支持ロッド2を管の軸廻りに回転移動させるものである。回転移動機構31は、図6および図7に示すように、円筒状の外筒311の内部に、円筒状の内筒312が内装されている。内筒312は、軸S1の廻りに外筒311と相対的に回転可能に設けられている。内筒312は、先端側の内部に、支持ロッド2のボールスプライン溝21と係合するボールスプライン313が軸S1を中心として固定されている。支持ロッド2と内筒312とは、ボールスプライン溝21とボールスプライン313との係合によって、軸S1の延在方向(軸方向)に相対的に移動可能であるが、軸S1の廻りは回転しない関係とされている。また、内筒312は、後端側が外筒311の外部に延在しており、当該後端側の外部に軸S1を中心とした従動歯車314が固定されている。この従動歯車314は、外筒に固定される回転駆動モータ315の出力側に設けられたノンバックラッシギアからなる駆動歯車(図示せず)が噛み合っている。
【0043】
なお、外筒311は、その外面に突出するフランジ311aが設けられている。そして、外筒311は、図6に示すように、管の外部において、原子炉容器101の内側に気中作業環境を構成する有底筒状のプラットフォーム(特開2011−17670号公報のプラットフォームに相当)106に固定される。具体的に、プラットフォーム106は、筒状の側壁に、管に通じる円形の窓穴106aが設けられており、この窓穴106aに取付基部107が固定されている。取付基部107は、円筒状に形成され、窓穴106aに挿入された状態でプラットフォーム106内に配置される端部の外周に突出するフランジ107aが設けられている。この取付基部107は、窓穴106aに対し、円筒状の中心を管の軸に合わせて固定される。外筒311は、この取付基部107に挿通されて取付基部107のフランジ107aに対してフランジ311aが固定されることで、支持ロッド2の軸S1を管の軸に合わせて取り付けられることになる。
【0044】
このように構成される回転移動機構31は、回転駆動モータ315によって従動歯車314が回転すると、従動歯車314と共に内筒312およびボールスプライン313が軸S1の廻りに回転する。すると、ボールスプライン313に対してボールスプライン溝21が係合する支持ロッド2が軸S1の廻りに回転することになる。このため、支持ロッド2の先端に固定されている挿入部1が軸S1の廻りに回転する。この結果、挿入部1に設けられたセンサ部11が軸S1の廻りに回転し、管の周方向における径方向寸法が計測される。
【0045】
軸方向移動機構32は、支持ロッド2を管の軸方向に沿って移動させるものである。軸方向移動機構32は、図6および図7に示すように、内筒312の内部において、支持ロッド2を挿通しつつ、当該支持ロッド2のボールネジ溝22と係合するボールネジナット321が設けられている。ボールネジナット321は、その後端に、軸S1を中心とした従動歯車322が固定されている。この従動歯車322は、内筒312に固定される軸方向駆動モータ323の出力側に設けられたノンバックラッシギアからなる駆動歯車(図示せず)が噛み合っている。また、軸方向移動機構32は、回転移動機構31のボールスプライン313をその構成に含んでいる。
【0046】
このように構成される軸方向移動機構32は、軸方向駆動モータ323によって従動歯車322が回転すると、従動歯車322と共にボールネジナット321が軸S1の廻りに回転する。すると、ボールネジナット321に対してボールネジ溝22が係合し、かつボールスプライン313に対してボールスプライン溝21が係合する支持ロッド2が、ボールスプライン313によって軸S1の廻りの回転を規制されつつ、ボールネジナット321へのボールネジ溝22の係合によって軸方向に移動する。この結果、挿入部1に設けられたセンサ部11が軸方向に移動し、管の軸方向における径方向寸法が計測される。なお、軸方向移動機構32は、回転移動機構31によって内筒312の回転に伴って共に回転する。
【0047】
図10は、本実施の形態に係る寸法計測装置の制御系のブロック図である。上述した寸法計測装置は、センサ部11、センサ部移動機構12の駆動源部122(本実施の形態では駆動源部122へのエア供給部)、撮像部13、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323が、制御部4に接続されている。
【0048】
制御部4は、マイコンなどで構成され、記憶部41および演算部42が接続されている。記憶部41は、RAMやROMなどから構成され、プログラムやデータが格納されている。記憶部41に格納されるデータは、回転駆動モータ315の駆動に伴う支持ロッド2の回転角度(センサ部11の周方向位置)のデータや、軸方向駆動モータ323の駆動に伴う支持ロッド2の軸方向移動量(センサ部11の軸方向位置)のデータや、駆動源部122の駆動によるセンサ部11の径方向位置のデータがある。また、演算部42は、センサ部11によって検出した変位量(寸法データ)に基づいて管の径方向寸法を演算する。また、図には明示しないが、制御部4は、表示手段が接続されて、演算部42による径方向寸法の演算結果を表示することが可能である。
【0049】
具体的に、制御部4による寸法計測装置の動作を説明する。図11〜図14は、本実施の形態に係る寸法計測装置の動作を示す側面図である。この寸法計測装置の動作は、対象の管(例えば、注水管台101eおよび注水配管101fの溶接部101g)の検査を行い、当該管に欠陥が発生するおそれや欠陥が発生した場合に、管の内径寸法を計測するためのものである。この場合、図6に示すように、対象の管に寸法計測装置を設置する。この際、先端部14は、挿入部1や、センサ部11や、センサ部移動機構12や、撮像部13などの構成よりも外形が大きく、管への挿入部1の挿入において、先端部14が管の内面に接触することで前記構成を管の内面に接触させずに管の内部に案内することが可能である。
【0050】
まず、図11に示すように、補修に先立ち、切削する前の管の内径寸法を計測する。ここでは、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させ、管の内面を含む計測範囲Hとする。そして、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。
【0051】
次に、図12に示すように、切削した後の管の内径寸法を計測する。この場合の切削は、溶接部101gの内面全周を、注水管台101eおよび注水配管101fの内面の一部と共に比較的浅く切削している。ここでは、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させ、管の内面を含む計測範囲Hとする。そして、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、上述と同様に、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。
【0052】
次に、図12に示すように、肉盛溶接した後(図12に破線で示す)の管の内径寸法を計測する。ここでは、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させ、管の内面を含む計測範囲Hとする。そして、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、上述と同様に、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。また、肉盛溶接部分を仕上げ加工した後においても、同様に内径寸法を計測する。
【0053】
このように、管の補修において、欠陥部分を切削する前、欠陥部分の切削後、切削部分の肉盛溶接後、および肉盛溶接部分の仕上げ加工後に該当部分の内径寸法を寸法計測装置によって計測することでそれぞれの状態での管の内面形状を得る。これにより、得られた管の内面形状に基づいて切削や、肉盛溶接や、仕上げ加工を行うことができ、仕上げ加工後の管の内面形状を確認することができる。
【0054】
また、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合は(図5参照)、欠陥部分を切削する前、切削部分の肉盛溶接後、および肉盛溶接部分の仕上げ加工後については、上述と同様に該当部分の内径寸法を寸法計測装置によって計測する。
【0055】
そして、欠陥部分の切削後については、図13に示すように、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させた状態であると、所定位置から管の内面に至る径方向寸法がセンサ部11による計測範囲Hを逸脱する部分が生じることになるため、切削後の深さに対応して内径寸法を計測することができない。これは、内径寸法を計測できない部分からセンサ部11の検出信号が得られなくなることで判断することができる。このような場合、図13に示すように、一旦、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させた状態で計測を行い、センサ部11の検出信号が得られなったときに、図14に示すように、センサ部11を管の内面に近づく方向(管の内面側)に径方向に移動させ、計測範囲Hを径方向にスライド移動させる。そして、再計測として、回転移動機構31の回転駆動モータ315、および軸方向移動機構32の軸方向駆動モータ323を駆動し、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1の廻りに回転移動させると共に、挿入部1と共にセンサ部11を軸S1に沿う軸方向に移動させて管の内径寸法を計測する。センサ部11によって検出する内径寸法は、軸S1の廻りに所定角度間隔で数カ所、軸S1に沿う軸方向で所定寸法間隔で数カ所を検出する。そして、再計測によって得られた管の内面形状と、それ以前の計測によって得られた管の内面形状とを組み合わせる。なお、この場合、センサ部11を管の内面から離隔する方向(管の中心側)に径方向に移動させた状態の計測範囲Hと、センサ部11を管の内面に近づく方向(管の内面側)に径方向に移動させた状態の計測範囲Hとを一部重複させることで、各内面形状を組み合わせることができる。
【0056】
このように、欠陥が発生するおそれや欠陥が溶接部101gの内面から深い場所にある場合であっても、管の内面形状を得ることができる。
【0057】
上述したように、本実施の形態の寸法計測装置は、管の内部に挿入される挿入部1と、挿入部1に設けられており管の内部に配置された状態で所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部11と、挿入部1に設けられておりセンサ部11を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構12とを備える。
【0058】
この寸法計測装置によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部11において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部11を管の径方向に移動させることにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することが可能である。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことが可能になる。
【0059】
また、本実施の形態の寸法計測装置では、センサ部移動機構12は、管の径方向へのセンサ部11の移動を案内するガイド部121と、管の軸方向に沿って往復作動する駆動源部122と、駆動源部122の往復作動をセンサ部11の移動方向に変換するリンク部123とからなる。
【0060】
この寸法計測装置によれば、駆動源部122が管の軸方向に沿って往復作動することから、センサ部11を管の径方向に移動させるセンサ部移動機構12において、管の径方向への大型化を防ぐことができ、装置の小型化を図ることが可能になる。
【0061】
また、本実施の形態の寸法計測装置では、センサ部移動機構12は、センサ部11の移動位置を規定する規定部124をさらに備える。
【0062】
この寸法計測装置によれば、センサ部11が移動した位置を規定することで、センサ部11の移動位置の再現性を向上し、センサ部11による計測精度を維持することが可能になる。
【0063】
また、本実施の形態の寸法計測装置は、挿入部1の外形の範囲内にセンサ部11およびセンサ部移動機構12を配置し、かつ挿入部1の挿入端に、当該挿入部1の外形よりも大きく形成されると共に管の内部に挿入可能に形成された先端部14を備える。
【0064】
この寸法計測装置によれば、寸法計測装置を管に設置する際、挿入部1を管に挿入することになるが、挿入部1の挿入端に先端部14を備えることで、当該先端部14によって挿入部1自体、または挿入部1に設けたセンサ部11やセンサ部移動機構12などが管の内面に衝突する事態を防ぐことが可能になる。
【0065】
また、本実施の形態の寸法計測装置は、挿入部1を管の内部に配置する支持ロッド2を備え、当該支持ロッド2を管の軸廻りに回転移動させる回転移動機構31と、支持ロッド2を管の軸方向に沿って移動させる軸方向移動機構32とを管の外部に配置してなる。
【0066】
この寸法計測装置によれば、回転移動機構31によって支持ロッド2を管の軸廻りに回転移動させることで挿入部1に配置したセンサ部11が管の軸廻りに回転移動するので、管の周方向での内面形状が得られる。また、軸方向移動機構32によって支持ロッド2を管の軸方向に沿って移動させることで挿入部1に配置したセンサ部11が管の軸方向に沿って移動するので、管の軸方向での内面形状が得られる。そして、これら回転移動機構31および軸方向移動機構32を管の外部に配置することで、当該機構を管の内部に配置することなく比較的細径の管内径寸法の計測を行うことが可能になる。
【0067】
また、本実施の形態の寸法計測方法は、管の軸方向に亘ってセンサ部11を移動させて管内の所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測する軸方向計測工程と、管の周方向に亘ってセンサ部11を移動させて管内の所定位置から管の内面に至る径方向寸法を計測する周方向計測工程とを含み、各工程によって得られた各径方向寸法から管の内面形状を得る寸法計測方法において、軸方向計測工程や周方向計測工程について所定位置から管の内面に至る径方向寸法がセンサ部11による計測範囲を逸脱した場合、センサ部11を管の径方向に移動させて各前記工程を再び行う再計測工程をさらに含み、当該再計測工程によって得られた管の内面形状と、軸方向計測工程や周方向計測工程によって得られた管の内面形状とを組み合わせる。
【0068】
この寸法計測方法によれば、比較的細径の管に挿入できる小型のセンサ部11において感度が小さい(計測範囲Hが狭い)場合であっても、センサ部11を管の径方向に移動させて再計測工程を行うことにより、十分な範囲の管内径寸法を計測することが可能である。この結果、比較的細径の管内径寸法の計測を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0069】
1 挿入部
11 センサ部
12 センサ部移動機構
121 ガイド部
121a レール部材
121b 移動部材
122 駆動源部
123 リンク部
124 規定部
13 撮像部
14 先端部
15 固定部
2 支持ロッド
21 ボールスプライン溝
22 ボールネジ溝
3 支持ロッド移動部
31 回転移動機構
311 外筒
311a フランジ
312 内筒
313 ボールスプライン
314 従動歯車
315 回転駆動モータ
32 軸方向移動機構
321 ボールネジナット
322 従動歯車
323 軸方向駆動モータ
4 制御部
41 記憶部
42 演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の内部に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられており前記管の内部に配置された状態で所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部と、
前記挿入部に設けられており前記センサ部を前記管の径方向に移動させるセンサ部移動機構と、
を備えることを特徴とする寸法計測装置。
【請求項2】
前記センサ部移動機構は、前記管の径方向への前記センサ部の移動を案内するガイド部と、前記管の軸方向に沿って往復作動する駆動源部と、前記駆動源部の往復作動を前記センサ部の移動方向に変換するリンク部とからなることを特徴とする請求項1に記載の寸法計測装置。
【請求項3】
前記センサ部移動機構は、前記センサ部の移動位置を規定する規定部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の寸法計測装置。
【請求項4】
前記挿入部の外形の範囲内に前記センサ部および前記センサ部移動機構を配置し、かつ前記挿入部の挿入端に、当該挿入部の外形よりも大きく形成されると共に前記管の内部に挿入可能に形成された先端部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の寸法計測装置。
【請求項5】
前記挿入部を前記管の内部に配置する支持ロッドを備え、当該支持ロッドを前記管の軸廻りに回転移動させる回転移動機構と、前記支持ロッドを前記管の軸方向に沿って移動させる軸方向移動機構とを前記管の外部に配置してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の寸法計測装置。
【請求項6】
管の軸方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する軸方向計測工程と、前記管の周方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する周方向計測工程とを含み、各前記工程によって得られた各径方向寸法から前記管の内面形状を得る寸法計測方法において、
前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程について所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法が前記センサ部による計測範囲を逸脱した場合、前記センサ部を前記管の径方向に移動させて各前記工程を再び行う再計測工程をさらに含み、当該再計測工程によって得られた前記管の内面形状と、前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程によって得られた前記管の内面形状とを組み合わせることを特徴とする寸法計測方法。
【請求項1】
管の内部に挿入される挿入部と、
前記挿入部に設けられており前記管の内部に配置された状態で所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測するセンサ部と、
前記挿入部に設けられており前記センサ部を前記管の径方向に移動させるセンサ部移動機構と、
を備えることを特徴とする寸法計測装置。
【請求項2】
前記センサ部移動機構は、前記管の径方向への前記センサ部の移動を案内するガイド部と、前記管の軸方向に沿って往復作動する駆動源部と、前記駆動源部の往復作動を前記センサ部の移動方向に変換するリンク部とからなることを特徴とする請求項1に記載の寸法計測装置。
【請求項3】
前記センサ部移動機構は、前記センサ部の移動位置を規定する規定部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の寸法計測装置。
【請求項4】
前記挿入部の外形の範囲内に前記センサ部および前記センサ部移動機構を配置し、かつ前記挿入部の挿入端に、当該挿入部の外形よりも大きく形成されると共に前記管の内部に挿入可能に形成された先端部を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の寸法計測装置。
【請求項5】
前記挿入部を前記管の内部に配置する支持ロッドを備え、当該支持ロッドを前記管の軸廻りに回転移動させる回転移動機構と、前記支持ロッドを前記管の軸方向に沿って移動させる軸方向移動機構とを前記管の外部に配置してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の寸法計測装置。
【請求項6】
管の軸方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する軸方向計測工程と、前記管の周方向に亘ってセンサ部を移動させて管内の所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法を計測する周方向計測工程とを含み、各前記工程によって得られた各径方向寸法から前記管の内面形状を得る寸法計測方法において、
前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程について所定位置から前記管の内面に至る径方向寸法が前記センサ部による計測範囲を逸脱した場合、前記センサ部を前記管の径方向に移動させて各前記工程を再び行う再計測工程をさらに含み、当該再計測工程によって得られた前記管の内面形状と、前記軸方向計測工程や前記周方向計測工程によって得られた前記管の内面形状とを組み合わせることを特徴とする寸法計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−40785(P2013−40785A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176034(P2011−176034)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]