説明

対物レンズ駆動装置およびそれを備えた光ピックアップ装置

【課題】マグネットの大型化やコスト高等を抑制してマグネットの有効磁束を強めることを可能とする対物レンズ駆動装置およびそれを備えた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】本発明の対物レンズ駆動装置50は、OBLホルダ21を移動可能に支持するアクチュエータフレーム41とから構成されている。OBLレンズホルダ21の側壁には、トラッキングコイル36−39が取り付けられ、トラッキングコイル36−39に対向する様に、アクチュエータフレーム41のバックヨークにマグネット32−35が取り付けられている。更に、トラッキングコイル38、39は、OBLホルダ21の側壁に対して傾斜して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズ駆動装置およびそれを備えた光ピックアップ装置に関する。特に、本発明は、アクチュエータフレームに備えられるマグネットの有効磁束を強化する構成を備えた対物レンズ駆動装置およびそれを備えた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに対して光学的に信号の読み取り、あるいは書き込みを行う光学ヘッドにおける対物レンズ駆動装置においては、対物レンズ(Objective lens)が取り付けられた対物レンズホルダ(以下、OBLホルダと称する)をアクチュエータフレームに対して変位可能に支持されている。また、OBLホルダには、フォーカスコイル及びトラッキングコイル、あるいは必要に応じてチルトコイルをOBLホルダに装着すると共に、これらの駆動コイルの有効領域を磁気回路により形成される所定の磁界内に配置することにより各駆動コイルに供給する信号に応じて対物レンズを駆動する構成となっている。
【0003】
従来から存在する対物レンズ駆動装置の構造は、例えば下記特許文献1に示されている。この文献の図3を参照すると、略矩形の枠状に形成されたコイル保持部24の内部に、フォーカシングコイル25およびトラッキングコイル26が収納されている。そして、フォーカシングコイル25およびトラッキングコイル26の磁気作用により、コイル支持部24を備えた対物レンズ駆動装置8が所定方向に駆動される。更に、当該文献の図2を参照すると、チルトマグネット29の背面にバックヨーク28が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−302161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1では、バックヨーク28を設けることにより、チルトマグネット29の有効磁束を強化しているものの、光ピックアップの小型化やコスト低減のためには、この効果をより大きくする必要があった。
【0006】
この対処方法として、マグネットの周囲に磁性材料からなるヨークを多数配置することも考えられるが、このようにすると対物レンズ駆動装置の大型化を招く恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、装置全体の大型化等を抑制してマグネットの有効磁束を強めることを可能とする対物レンズ駆動装置およびそれを備えた光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の対物レンズ駆動装置は、対物レンズを保持する対物レンズホルダと、前記対物レンズホルダの第1側壁部の外側に配置された第1トラッキングコイルおよび第2トラッキングコイルと、前記対物レンズホルダの前記第1側壁部に対向する第2側壁部の外側に配置された第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルと、前記対物レンズホルダを移動可能に支持するアクチュエータフレームと、第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイル、および前記第4トラッキングコイルの有効領域に対して有効磁束を発生するように、前記アクチュエータフレームに固定された、第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットおよび第4マグネットと、を備え、前記第1トラッキングコイルおよび前記第2トラッキングコイルは、前記第1側壁部に対して傾斜して導線を巻回することで形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の対物レンズ駆動装置は、対物レンズを保持する対物レンズホルダと、前記対物レンズホルダの第1側壁部の外側に配置された第1トラッキングコイルおよび第2トラッキングコイルと、前記対物レンズホルダの前記第1側壁部に対向する第2側壁部の外側に配置された第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルと、前記対物レンズホルダを移動可能に支持するアクチュエータフレームと、第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイル、および前記第4トラッキングコイルの有効領域に対して有効磁束を発生するように、前記アクチュエータフレームに固定された、第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットおよび第4マグネットと、を備え、前記第1マグネットおよび前記第2マグネットは、前記アクチュエータフレームの一部を曲折加工した第1バックヨークに固定され、前記第3マグネットおよび前記第4マグネットは、前記アクチュエータフレームの他の一部を曲折加工した第2バックヨークに固定され、前記第2バックヨークの両端部を更にそれぞれ曲折させた各サブヨークを、それぞれ前記第3トラッキングコイルおよび前記第4トラッキングコイルの有効領域に対して有効磁束を発生するように配置することを特徴とする。
【0010】
本発明の光ピックアップ装置は、上記構成の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トラッキングコイルの少なくとも一部を、対物レンズホルダの側壁部に対して傾斜して配置したので、トラッキングコイルがマグネットに接近し、トラッキングコイルに作用するマグネットの有効磁束が強化される。
【0012】
更に本形態では、バックヨークの側方端部を曲折させてサブヨークとし、バックヨークおよびサブヨークでマグネットを包囲している。これにより、マグネットの有効磁束を更に強めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す平面図である。
【図2】本発明の対物レンズ駆動装置を示す平面図である。
【図3】本発明の対物レンズ駆動装置を示す図であり、(A)はOBLホルダの部分を拡大して示す平面図であり、(B)はアクチュエータフレームを示す斜視図である。
【図4】本発明の対物レンズ駆動装置を示す図であり、(A)は対物レンズ駆動装置を示す側面図であり、(B)は対物レンズ駆動装置の平面図である。
【図5】本発明の対物レンズホルダを示す図であり、(A)は各種コイル等が組み込まれた状態の対物レンズホルダを示す斜視図であり、(B)はコイルが組み込まれる前の状態の対物レンズホルダを示す斜視図である。
【図6】本発明の対物レンズ駆動装置の製造方法を示す図であり、(A)は各種コイル等が組み込まれた状態の対物レンズホルダを示す斜視図であり、(B)はその平面図であり、(C)は一部を拡大して示す平面図である。
【図7】本発明の対物レンズ駆動装置の製造方法を示す図であり、(A)はボビンを経由して接着剤を供給する工程を示す斜視図であり、(B)はその状態を詳細に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図7を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、図1は本実施形態の光ピックアップ装置100の概略を示す平面図である。
【0015】
光ピックアップ装置100は、一例としてCD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格、およびBD(Blu−ray Disc)規格の各光ディスクに対応する構成となっており、対物レンズ駆動装置50および各種光学部品がハウジング51に設置されて構成されている。光ピックアップ装置の概略的機能は、光ディスクの情報記録層に対して所定の規格のレーザー光を照射し、この情報記録層で反射したレーザー光を受光することで、光ディスクからの情報の読出しまたは書き込みを行うことにある。
【0016】
対物レンズ駆動装置50は、対物レンズ(Objective lens)ホルダ(以下、OBLホルダ)21を移動可能に保持する。OBLホルダ21は、上記した各規格の何れかまたは全てに対応する対物レンズ31が装着される。
【0017】
レーザーユニット1はレーザーダイオードを備え、このレーザーダイオードから上記した規格のレーザー光が放射される。具体的には、BDに適した青紫色(青色)波長帯395nm〜420nm(例えば405nmの波長)のレーザー光、DVDに適した赤色波長帯645nm〜675nm(例えば650nmの波長)のレーザー光、またはCDに適した赤外波長帯765nm〜805nm(例えば780nmの波長)のレーザー光が、レーザーダイオードから放射される。
【0018】
レーザーユニット1から放射されたレーザー光は、回折格子6で0次光、+1次光、−1次光に分離されてハーフミラー13で反射された後に、1/4波長板9およびコリメートレンズ12を通過し、不図示の立ち上げミラーで反射されて対物レンズ31で光ディスクの情報記録層に合焦される。また、レーザーユニット1から放射されたレーザー光の一部はハーフミラー13を透過してFMD20で検出され、この検出に基づいてレーザーユニット1の出力が調整される。
【0019】
そして、光ディスクの情報記録層で反射した戻り光のレーザー光は、立ち上げミラー、コリメートレンズ12、1/4波長板9、ハーフミラー13を透過し、その後、第1プレート16および第2プレート19で不要な非点収差が打ち消され、所望の非点収差が付与された後に、光検出器17(PDIC)で検出される。光検出器17で検出された信号に基づいて、OBLホルダ21のコイルに制御信号が供給され、フォーカスコイル、トラッキングコイル、またはチルトコイルに制御電流が供給される。この結果、フォーカス制御、トラッキング制御及びラジアルチルト制御が行われる。ここで、後述する対物レンズ駆動装置50の場合、フォーカスコイルがチルトコイルの機能を兼ねており、チルトコイルが省かれている。
【0020】
ここで、図1に示すDt方向とはタンジェンシャル方向であり、Dr方向とはトラッキング方向(光ディスクのラジアル方向)であり、Df方向とはフォーカス方向である。これらの各方向は互いに直交している。
【0021】
図2を参照して、上記した光ピックアップ装置に組み込まれる対物レンズ駆動装置50を説明する。
【0022】
対物レンズ駆動装置50は、アクチュエータ可動部40とアクチュエータフレーム41とから成る。また、アクチュエータ可動部40はOBLホルダ21と、支持ワイヤ45から構成される。アクチュエータフレーム41は、珪素鋼板等の磁性金属材料から形成され、部分的に直角に曲折加工されることで、後述する各ヨークが形成される。
【0023】
アクチュエータ可動部40は、支持ワイヤ45によりアクチュエータフレーム41に対してフォーカス方向(Df方向)、トラッキング方向(Dr方向)及びラジアルチルト方向(Drt方向)に変位可能に弾性的に支持される。支持ワイヤ45は、一端がOBLホルダ21の側壁に固定され、他端がアクチュエータフレーム41に固定された固定基板44に固定される。前記固定基板44は支持ワイヤ45を制振させるダンパー材が充填される補助部材43に接着され、該補助部材43と共にアクチュエータフレーム41にねじ止め固定される。支持ワイヤ45は、アクチュエータフレーム41の1つの側面に対して例えば3本ずつ架設され、アクチュエータ可動部40を中空状態で機械的に支持すると共に、アクチュエータ可動部40に備えられる各コイルに供給される電流が流れる接続手段としても機能している。
【0024】
図3を参照して、図2に示した対物レンズ駆動装置50に組み込まれるアクチュエータ可動部40の構成を説明する。図3(A)はアクチュエータ可動部40およびアクチュエータフレーム41を部分的に示す図であり、図3(B)はアクチュエータフレーム41のみを抜き出して示す斜視図である。
【0025】
図3(A)を参照して、アクチュエータ可動部40は、OBLホルダ21と、OBLホルダ21の上面に固定された対物レンズ31と、OBLホルダ21の側壁部の外側の面に巻回されたトラッキングコイル36−39と、OBLホルダ21に内蔵されたフォーカスコイル29、30とを主要に備える。
【0026】
OBLホルダ21の側壁部外側に配置された各トラッキングコイル36−39に面するアクチュエータフレーム41の各バックヨークに、マグネット32−35が配置されている。具体的には、OBLホルダ21の紙面上下方の側壁部にトラッキングコイル39およびトラッキングコイル38が設けられ、トラッキングコイル39に対向してマグネット35が配置されており、トラッキングコイル38に対向してマグネット34が配置されている。一方、OBLホルダ21の紙面上上方の側壁部にトラッキングコイル36およびトラッキングコイル37が配置され、トラッキングコイル36に対向してマグネット32が配置されており、トラッキングコイル37に対向してマグネット33が配置されている。
【0027】
各マグネット32−35の、各トラッキングコイル36−39に対向する面は同一の極性(例えばN極)である。また、各マグネット32−35は、トラッキングコイル36−39の有効領域に対して有効磁束を発生させる。この様な構成でトラッキングコイル36−39に電流を供給すると、トラッキングコイル36−39に電流が流れることで発生する磁界と、マグネット32−35で生成される磁界で形成される磁気回路との協働により、OBLホルダ21はDr方向に変位する。
【0028】
対物レンズ31を挟む箇所のOBLホルダ21の内部には、Df方向に巻回軸を有する2つのフォーカスコイル29、30が配置されており、マグネット32−35は、フォーカスコイル29、30の有効領域に対しても有効磁束を発生させている。従って、フォーカスコイル29、30に対して電流を供給すると、フォーカスコイル29、30に電流が流れることで発生する磁界と、マグネット32−35で生成される磁界で形成される磁気回路との協働により、OBLホルダ21はDf方向に変位する。尚、本形態では、フォーカスコイル29、30に、チルト方向に対する制御を行うための制御信号を付与することで、OBLホルダ21をチルト方向(Drt方向)に制御している。
【0029】
バックヨーク46Aは、図3(B)に示すように、アクチュエータフレーム41の端部を直角に曲折加工させた部位であり、OBLホルダ21に面するバックヨーク46Aの側面にマグネット35、34が固着されている。上記したように、磁性金属材料から成るバックヨーク46Aにマグネット35、34を固着することにより、マグネット35、34の有効磁束を強めることができる。
【0030】
更に、アクチュエータフレーム41の他の部位を直角に曲折加工することでバックヨーク46Bが形成されており、OBLホルダ21に面するバックヨーク46Bの側面に、マグネット32、33が固着されている。更にまた、バックヨーク46Bの両端部を、Df方向から見て直角に曲折させることでサブヨーク47を設けている。これにより、マグネット32、33は、バックヨーク46Bおよびサブヨーク47に包囲される。各サブヨーク47はバックヨーク46Bにマグネット32、33の単一磁極(例えばS極)が密着されることにより各トラッキングコイル36、37に有効に作用する磁束を発生し、マグネット32、33側の磁気回路は、有効磁束が強められている。
【0031】
ここで、マグネット34、35を保持するバックヨーク46Aの側方に上記したサブヨークを設けることも可能ではあるが、本形態ではそのようにしていない。その理由は、バックヨーク46Aの側方にサブヨークを設けると、そのサブヨークが支持ワイヤ45に接触し、使用状況下に於けるOBLホルダ21の動作を阻害する恐れがあるからである。
【0032】
対向ヨーク48、49は、バックヨーク46A等と同様に、アクチュエータフレームを直角に曲折させた部位であり(図3(B)参照)、夫々がフォーカスコイル29、30に挿入する位置に設けられている(図3(A)参照)。対向ヨーク48、49をこのように配置することで、フォーカスコイル29、30及び各トラッキングコイル36−39に有効に作用する有効磁束を強めることができ、OBLホルダ21のDf方向、Dr方向及びDrt方向の感度を向上させるのに有効である。
【0033】
本形態では、図3(A)を参照して、トラッキングコイル38、39をOBLホルダ21の側面に対して傾斜して配置している。具体的には、トラッキングコイル38、39は、内側部分が外側部分よりもマグネット34、35に接近するように、傾斜して配置されている。これにより、トラッキングコイル38、39の内側の部分と、マグネット34、35との距離が短くなるので、トラッキングコイル38、39に作用する有効磁束が強くなる。尚、トラッキングコイル38、39を傾斜して巻回する方法は図6を参照して後述する。
【0034】
一方、トラッキングコイル36、37は、傾斜して巻回されること無く、OBLホルダ21の側面に密着して平行に巻回されている。この理由は、トラッキングコイル36、37を傾斜して形成することも可能ではあるが、このようにすると、フォーカスコイル29、30との距離が長くなり、フォーカス方向への感度が悪くなるからである。
【0035】
トラッキングコイル36、37に有効磁束を発生するマグネット32、33が固着されるバックヨーク46Bには、OBLホルダ21の下方に配置されて対物レンズ31にレーザー光を導く反射ミラーへのレーザー光の光路を確保する切り欠き80が形成されている。この切り欠き80は、前記光路を確保するためにマグネット34、35が固着されるバックヨーク46Aに形成される切り欠き81より幅が広く設定されている。その為、一対のマグネット32、33はもう一対のマグネット34、35よりそれぞれ幅の狭いものが使用されている。これらのマグネット32、33、34、35は同一種類のマグネットにより構成されているためマグネット形状の大小により一対のマグネット32、33により発生される磁力はもう一対のマグネット34、35により発生される磁力より弱いが、マグネット32、33側の磁気回路においては、バックヨーク46Bにトラッキングコイル36、37のそれぞれに対して有効磁束を発生させるサブヨーク47を形成し、トラッキングコイル36、37に作用する有効磁束を増やし、各サブヨーク47の作用によりマグネット32、33がマグネット34、35より小さいことによる磁力低下が補償されている。
【0036】
逆に、マグネット34、35側の磁気回路においては、一対のマグネット34、35はもう一対のマグネット32、33より大きいマグネットを使用すると共に、トラッキングコイル38、39の内側部分を外側部分よりもマグネット34、35に接近させることにより各トラッキングコイル38、39に有効に作用する磁束を強めている。
【0037】
図4を参照して、上記した対物レンズ駆動装置50に備えられるカバー24を説明する。図4(A)はカバー24が備え付けられた対物レンズ駆動装置50を示す側面図であり、図4(B)は上方から見た対物レンズ駆動装置50を示す平明図である。
【0038】
図4(A)を参照して、カバー24は、アクチュエータフレーム41と同様に、磁性体材料からなり、各ヨークおよびOBLホルダ21を被覆するように、アクチュエータフレーム41の上面に固着されている。
【0039】
図4(B)を参照して、カバー24の平面視での外形形状は、各ヨーク(図4(A)に示すバックヨーク46A、46B、対向ヨーク48)およびOBLホルダ21を被覆可能な大きさとなっている。更に、カバー24の中央部付近を開口させた開口部25が設けられており、この開口部25から対物レンズ31が露出している。カバー24には他にも複数の開口部が設けられているので、全体としては枠形状を呈している。
【0040】
また、バックヨーク46Aから対向ヨーク48を被覆する部分を被覆する部分で、カバー24を太くした被覆部26を形成している。図4(A)を参照して、この被覆部26により、バックヨーク46Aと対向ヨーク48とが磁気的に接続される。これにより、図3(A)を参照して、トラッキングコイル38、39およびフォーカスコイル29に対して作用するマグネット34、35の有効磁束が強められる。一方、図4(B)の紙面上で上方のバックヨーク46Bの部分では、上記した被覆部26の様に幅広な部分は設けられていない。即ち、バックヨーク46Bを被覆する部分のカバー24の幅は、バックヨーク46Aを被覆する部分のカバー24の幅よりも狭い。ここで、被覆部26は、バックヨーク46Bを被覆する部分のカバー24よりも広くしても良いし、厚くしても良く、更にはこれらの組み合わせでも良く、これにより上記と同様の効果が奏される。
【0041】
上記したように、バックヨーク46Aにはサブヨークは設けられていないが、幅広な被覆部26をカバー24に設けることにより、バックヨーク46Aに固着されるマグネットの有効磁束を強めることができる。
【0042】
図5を参照して、上記したアクチュエータ可動部に含まれるOBLホルダ21の構成を説明する。図5(A)は各コイルが備えられた状態のOBLホルダ21を示す斜視図であり、図5(B)はOBLホルダ21のみを示す斜視図である。
【0043】
OBLホルダ21の概略的形状は、下方に開口部が設けられた筐体形状である。具体的には、OBLホルダ21は、対物レンズ31が装着される円形の開口部が設けられた主面部56と、主面部56の周辺部から下方に一体的に連続する4つの側壁部とを備えている。この側壁部としては、紙面上の奥側で長手方向の第1側壁部52、紙面上の手前側で第1側壁部52に対向する第2側壁部53、紙面上で右側に設けられた短手方向の第3側壁部54、および紙面上で左側端部に設けられた第4側壁部55が含まれている。第1側壁部52および第2側壁部53の主面はDr方向に対して平行であり、第3側壁部54および第4側壁部55の主面はDr方向に対して垂直である。
【0044】
第1側壁部52の外側の主面には、ボビン57、58が設けられており、これらのボビンには夫々トラッキングコイル36、37が巻回されている。また、第2側壁部53の外側の主面には、ボビン59、60が設けられており、これらのボビンには夫々トラッキングコイル38、39が巻回されている。本形態では、各ボビン57−60は、Dr方向において対物レンズ31よりも外側の端部に配置されている。この理由は、OBLホルダ21を、小型の光ピックアップに収納させると、対物レンズ31の直下に立ち上げミラーが配置されると共に、前記立ち上げミラーへの光路を確保する空間70(図5(B))をOBLホルダ21の第1側壁部52及びあるいは第2側壁部53の中央から下方の領域に設ける必要があり、この領域にコイル等の部品を収納させるためのマージンが無いからである。
【0045】
各ボビンに巻回されるトラッキングコイル36−39は、1本の細長いエナメル線等の導線から成り、その一端は、第3側壁部54の一部を突出させた絡げ部61に絡げられ、他端は第4側壁部55に設けた絡げ部61に絡げられる。ここで、各トラッキングコイル36−39は、Dt方向に巻回軸を有し、全体として角を丸めた四角形状を呈するように、ボビン57−60に巻回されている。また、トラッキングコイル36−39は、OBLホルダ21自身を磁気作用によって駆動させるための駆動コイルであり、このような機能は後述するフォーカスコイル29、30も同様である。
【0046】
本形態では、第1側壁部52に備えられるトラッキングコイル36、37は、第1側壁部52の外面に対して巻回軸が垂直になるように平行に巻かれる。一方、第2側壁部53に備えられるトラッキングコイル38、39は、第2側壁部53の外面に対して傾斜して配置される。この事項は図6(C)を参照して後述する。
【0047】
絡げ部61は、第3側壁部54に3つ配置されており、2つはフォーカスコイル29を構成するエナメル線の両端が夫々絡げられ、1つにはトラッキングコイル36−39の端部が絡げられる。同様に、第4側壁部55にも3つの絡げ部61が設けられ、2つの絡げ部61にはフォーカスコイル30を構成するエナメル線の両端部が絡げられ、1つの絡げ部61にはトラッキングコイル36−39の他の端部が絡げられる。これらの絡げ部に絡げられたエナメル線には、図2に示した支持ワイヤ45が夫々接続される。
【0048】
フォーカスコイル29、30は、OBLホルダ21の内部に収納されている。フォーカスコイル29は第3側壁部54側の端部に設けられた収納領域22に配置さており、フォーカスコイル30は第4側壁部55側に設けられた収納領域に配置されている。これにより、フォーカスコイル29、30は、Dr方向に於いて、対物レンズ31よりも外側に配置されている。フォーカスコイル29、30を収納する収納領域22、23が、対物レンズ31の外周端部よりも外側の端部に設けられる理由は、上記したボビン57−60を端部に配置する理由と同様である。ここで、平面視での収納領域22、23の大きさは、収納されるフォーカスコイル29、30と同等か若干大きい程度に設定される。
【0049】
また、フォーカスコイル29、30は、Df方向に巻回軸を有し、全体として角を丸めた四角形状を呈するようにエナメル線が巻回されて構成される。ここで、上記したトラッキングコイル36−39は、OBLホルダ21の一部であるボビン57−60に直に巻回される一方、フォーカスコイル29、30は巻回された状態で用意され、接着剤を介してOBLホルダ21の内部に固着される。また、不図示ではあるが、OBLホルダ21の内部には、フォーカスコイル29、30を所定位置に収納するための突起部が設けられている。
【0050】
図5(B)を参照して、本形態では、ボビン59に巻回されるトラッキングコイルを、第2側壁部53の側面に対して傾斜して巻回するために、ボビン59の近傍にて第2側壁部53の側面を外側に突起させた突起部27Aを設けている。突起部27Aは、ボビン59よりも内側の第2側壁部53の外側側面を部分的に突起させた部位であり、Df方向に細長い矩形形状を呈している。突起部27Aを設けることにより、ボビン59に巻回されるトラッキングコイルが、突起部27Aに接触し、第2側壁部53に対して巻回軸が前記突起部27Aと逆方向に垂直から傾いて巻回され、傾斜して形成される。
【0051】
同様に、ボビン60の内側側方の第2側壁部53を部分的に突起させて突起部27Bが形成されている。そして、ボビン60に巻回されるトラッキングコイルが突起部27Bに接触することで、第2側壁部53に対して巻回軸が前記突起部27Bと逆方向に垂直から傾いて巻回され、傾斜して形成される。
【0052】
上記した各図および図6および図7を参照して、次に、上記した構成の対物レンズ駆動装置を製造する方法を説明する。図6(A)はOBLホルダ21を示す斜視図であり、図6(B)はそれを上方から見た平面図であり、図6(C)はトラッキングコイル39の部分を拡大して示す平面図である。
【0053】
先ず、図6(A)に示すような形状を備えたOBLホルダ21を用意する。OBLホルダ21は、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)などの樹脂材料を、モールド金型のキャビティに注入することにより形成される。OBLホルダ21は、4つの側壁部を有し、第1側壁部52および第2側壁部53に、トラッキングコイルを巻回するためのボビンが側壁部と一体で設けられている。
【0054】
次に、各ボビン57−60にエナメル線を巻回することでトラッキングコイル36−39を形成する。トラッキングコイル36−39は、1本のエナメル線から成り、ボビン59、58、57、60の順番で自動化された機械により巻回される。トラッキングコイル36−39と成るエナメル線の一端は、第3側壁部54に設けられた絡げ部61に絡げられる。また、このエナメル線の他端は、第4側壁部55に設けられた絡げ部61に絡げられる。
【0055】
更に、フォーカスコイル29、30をOBLホルダ21の内部に収納する。具体的には、OBLホルダ21の開口する下部からフォーカスコイル29、30を、OBLホルダ21の内部に収納する。本形態では、OBLホルダ21のDr方向に於ける両端部に、収納領域22、23が設けられており、各々の収納領域にフォーカスコイル29、30が収納される。そして、フォーカスコイル29を構成するエナメル線の両端を、第3側壁部54に設けた絡げ部61に夫々絡げる。また、フォーカスコイル30を構成するエナメル線の両端部を、第4側壁部55に設けた絡げ部61に夫々絡げる。
【0056】
また、OBLホルダ21の主面部56に設けられた固定部62には、絶縁性の接着剤を介して対物レンズ31を固定する。
【0057】
図6(B)を参照して、上記したトラッキングコイル36−39の内、トラッキングコイル36、37は、OBLホルダ21の第1側壁部52に対して平行に形成されている。一方、トラッキングコイル38、39は、Df方向から見て、内側の部分が外側よりも外部に突出するように、第2側壁部53に対して傾斜して配置されている。
【0058】
図6(C)を参照して、本形態では、ボビン60の近傍に突起部27Bを配置することにより、トラッキングコイル39を傾斜して配置している。
【0059】
突起部27Bは図5(B)を参照して説明したように、ボビン60付近の第2側壁部53を部分的に突起させた部位である。また、トラッキングコイル39を構成するエナメル線が突起部27Bに絡むことを防止するために、突起部27Bの側面は、第2側壁部53に向かって裾広がりの傾斜面となっている。
【0060】
ボビン60にエナメル線を巻回すると、巻回されるエナメル線が突起部27Bに接触し、−Dt方向に押し出されるようにトラッキングコイル39が巻回される。この結果、突起部27Bの厚みに対応して、この部分のトラッキングコイル39が−Dt側に移動して形成され、トラッキングコイル39が傾斜して形成されることに成る。
【0061】
図6(B)を参照して、トラッキングコイル38に関しても、トラッキングコイル39の場合と同様に、図5(B)に示した突起部27Aがボビン59付近に設けられている。従って、トラッキングコイル38を構成するエナメル線が突起部27Aに接触することにより、トラッキングコイル38は第2側壁部53に対して傾斜して配置される。
【0062】
次に、図7を参照して、フォーカスコイル30をOBLレンズホルダに固着するために接着剤を供給する。図7(A)は本工程を示すOBLホルダ21の斜視図であり、図7(B)は図7(B)のB−B’線に於ける断面図である。
【0063】
図7(B)を参照して、トラッキングコイル36が巻回されるボビン57は、第1側壁部52から円筒状に外側に突出する筒状部65と、筒状部65の外側の端部を拡大させた鍔部66とを備えている。そして、筒状部65の内部は、ホルダと外部とを連通させる連通孔63となっており、また、筒状部65の一部を貫通して貫通孔64が設けられている。この構成は、他のボビンも同様である。
【0064】
本工程では、連通孔63に液状の接着剤を供給する。連通孔63に供給された接着剤68は、フォーカスコイル30を構成する導線同士の間に含浸される。また、接着剤68の一部は、第1側壁部52の内壁とフォーカスコイル30との間にも進入する。同様に、第2側壁部53に設けたボビン60(図7(A)参照)からもフォーカスコイル30に対して接着剤を供給する。更に、フォーカスコイル29に対しても、ボビン58,59(図7(A)参照)を経由して接着剤が供給される。
【0065】
連通孔63に供給された接着剤の一部は、トラッキングコイルにも供給される。具体的には、供給された接着剤68は、貫通孔64を経由して、鍔部66と第2側壁部53に囲まれる空間に浸入する。そして、浸入した接着剤は、トラッキングコイル36を構成する導線同士の間隙に含浸される。接着剤68をトラッキングコイル36に供給する方法は、他のボビンでも同様である。
【0066】
その後、接着剤68を硬化させることで、各トラッキングコイル36−39、フォーカスコイル29、30の固化および固着が行われる。
【0067】
上記の工程を経て、図5に構成を示すOBLホルダ21が製造される。また、図2を参照して、支持ワイヤ45を経由して、OBLホルダ21をアクチュエータフレーム41に固定することにより、対物レンズ駆動装置50が製造される。更に、図1を参照して、かかる構成の対物レンズ駆動装置50を、他の光学素子と共にハウジング51に組み込むことによって、光ピックアップ装置100が製造される。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザーユニット
6 回折格子
9 1/4波長板
12 コリメートレンズ
13 ハーフミラー
16 第1プレート
17 光検出器
18 1/4波長板
19 第2プレート
20 FMD
21 OBLホルダ
22 収納領域
23 収納領域
24 カバー
25 開口部
26 被覆部
27A,27B 突起部
29 フォーカスコイル
30 フォーカスコイル
31 対物レンズ
32 マグネット
33 マグネット
34 マグネット
35 マグネット
36 トラッキングコイル
37 トラッキングコイル
38 トラッキングコイル
39 トラッキングコイル
40 アクチュエータ可動部
41 アクチュエータフレーム
43 補助部材
44 固定基板
45 支持ワイヤ
46A,46B バックヨーク
47 サブヨーク
48 対向ヨーク
49 対向ヨーク
50 対物レンズ駆動装置
51 ハウジング
52 第1側壁部
53 第2側壁部
54 第3側壁部
55 第4側壁部
56 主面部
57 ボビン
58 ボビン
59 ボビン
60 ボビン
61 絡げ部
62 固定部
63 連通孔
64 貫通孔
65 筒状部
66 鍔部
67 孔部
68 接着剤
70 空間
80、81 切り欠き




【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを保持する対物レンズホルダと、
前記対物レンズホルダの第1側壁部の外側に配置された第1トラッキングコイルおよび第2トラッキングコイルと、
前記対物レンズホルダの前記第1側壁部に対向する第2側壁部の外側に配置された第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルと、
前記対物レンズホルダを移動可能に支持するアクチュエータフレームと、
第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイル、および前記第4トラッキングコイルの有効領域に対して有効磁束を発生するように、前記アクチュエータフレームに固定された、第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットおよび第4マグネットと、を備え、
前記第1トラッキングコイルおよび前記第2トラッキングコイルは、前記第1側壁部に対して傾斜して導線を巻回することで形成されることを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイルおよび、前記第4トラッキングコイルは、
前記対物レンズホルダの側壁を側方に突出させた第1ボビン、第2ボビン、第3ボビンおよび、第4ボビンに導線を巻回することで形成され、
前記第1ボビンおよび前記第2ボビン付近の第1側壁部を部分的に突起させて突起部を設け、前記第1トラッキングコイルおよび前記第2トラッキングコイルを構成する前記導線が前記突起部に接触することで、前記第1側壁部に対して傾斜するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
対物レンズを保持する対物レンズホルダと、
前記対物レンズホルダの第1側壁部の外側に配置された第1トラッキングコイルおよび第2トラッキングコイルと、
前記対物レンズホルダの前記第1側壁部に対向する第2側壁部の外側に配置された第3トラッキングコイルおよび第4トラッキングコイルと、
前記対物レンズホルダを移動可能に支持するアクチュエータフレームと、
第1トラッキングコイル、前記第2トラッキングコイル、前記第3トラッキングコイル、および前記第4トラッキングコイルの有効領域に対して有効磁束を発生するように、前記アクチュエータフレームに固定された、第1マグネット、第2マグネット、第3マグネットおよび第4マグネットと、を備え、
前記第1マグネットおよび前記第2マグネットは、前記アクチュエータフレームの一部を曲折加工した第1バックヨークに固定され、
前記第3マグネットおよび前記第4マグネットは、前記アクチュエータフレームの他の一部を曲折加工した第2バックヨークに固定され、
前記第2バックヨークの両端部を更にそれぞれ曲折させた各サブヨークを、それぞれ前記第3トラッキングコイルおよび前記第4トラッキングコイルの有効領域に対して有効磁束を発生するように配置することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項4】
前記対物レンズホルダの内部に収納されるトラッキングコイルを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項5】
前記対物レンズホルダは、支持ワイヤを経由して前記アクチュエータフレームに対して移動可能に支持され、
前記支持ワイヤは、前記第1マグネットおよび前記第2マグネットの側方に架設されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項6】
前記アクチュエータフレームを上面から被覆する磁性材料から成るカバーを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載したことを特徴とする光ピックアップ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−69389(P2013−69389A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208758(P2011−208758)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】