説明

対称ヒドロキシル官能化シロキサンから形成されるシリコーンヒドロゲル

本発明は、少なくとも約20重量%の水を有し、少なくとも1つの非反応性親水性ポリマーと、少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーンモノマーと、を含む反応性混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルに関する。本発明のシリコーンヒドロゲルは、親水性モノマーを含有しない反応性混合物から形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第12/769,689号(2010年4月29日出願)及び米国特許仮出願第61/219,963号(2009年6月24日出願)の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、シリコーンヒドロゲルポリマー、前記シリコーンヒドロゲルポリマーから形成される成型物品、並びに前記ヒドロゲル及び物品の製造プロセスに関する。より詳細には、本発明は、対称ヒドロキシル官能性シリコーン含有モノマーと、親水性ポリマーと、を含むシリコーンヒドロゲルポリマーに関する。医療機器、並びに前記ヒドロゲル及び医療機器を製造する方法も開示される。
【背景技術】
【0003】
シリコーンヒドロゲルは、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー及び少なくとも1つの親水性モノマーを含有する混合物を重合させることによって調製されてきた。シリコーン含有モノマー若しくは親水性モノマーのいずれかが架橋剤として機能してよく、又は別の架橋剤を使用してもよい。シリコーンモノマー及び親水性モノマーの相溶化には、n−ヘキサノール、エタノール、及びn−ノナノールなどの様々なアルコール類が希釈剤として使用されてきた。しかし、これらの成分及び希釈剤から製造された物品は、透明な物品を形成しないか、又はコーティングなしで使用するには十分に湿潤ではないかのいずれかである。
【0004】
5個以上の炭素原子を有する一級アルコール及び二級アルコールもまた、シリコーン含有ヒドロゲルの希釈剤として有用であると開示されている。しかし、これら希釈剤の多くは、反応性混合物中に内部湿潤剤が含まれると、透明で湿潤性のある物品を形成しない。これら希釈剤は有用である一方で、その多くが、非コーティングの透明で湿潤性のある成型物品の製造に更なる相溶化成分を必要とする。
【0005】
対称反応性シリコーン成分もまた当該技術分野において開示されている。
【0006】
特定のHansen溶解度パラメーター及びKamletアルファ値を有する化合物もまた、シリコーンヒドロゲル用希釈剤として有用であると開示されている。しかし、その多くが水と混和せず、複雑な溶媒水交換プロセスの使用を必要とする。したがって、当該技術分野において、医療機器、例えば湿潤表面を有する非コーティングの透明コンタクトレンズを得ることができる、経済的かつ効率的な方法で重合されるシリコーンヒドロゲルの必要性がまだ残る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は更に、少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーンモノマーと、少なくとも1つの親水性ポリマーと、を含み、これらから本質的になり、及びこれらからなる、反応性混合物から形成されるシリコーンヒドロゲルポリマーに関する。いくつかの実施形態では、反応性混合物は、反応性親水性成分を実質的に含まない。
【0008】
本発明は更に、前記シリコーンヒドロゲルポリマーから製造される医療機器に関する。
【0009】
本発明は更に、少なくとも1つの有機希釈剤を含む湿潤性シリコーンヒドロゲルを形成するプロセスに関する。
【0010】
更に本発明は、機器、特に眼科用機器、更に詳細にはコンタクトレンズの製造方法及びその方法で製造された物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンタクトレンズを製造するために請求され得るレンズ型を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、少なくとも1つの親水性ポリマーと、少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーン含有成分と、を含むシリコーンヒドロゲル組成物に関する。本発明のシリコーンヒドロゲルは、少なくとも約20%の水分含量、並びに約100℃未満及びいくつかの実施形態では約80℃未満の前進動的接触角を有する。いくつかの実施形態では、反応性混合物は更に、少なくとも1つの希釈剤を含む。
【0013】
本明細書で使用するとき、「希釈剤」は、反応性組成物の溶媒を指す。生体医療用機器の部分を形成するのに、希釈剤は反応しない。
【0014】
本明細書で使用するとき、「対称ヒドロキシル官能化シロキサン」は、以下の式
【化1】

の化合物を意味する。
式中、Rは、H又はCHであり、
Xは、O又はNHであり、
は、CH又は
【化2】

に示すSi部分であり、m、n及びpはそれぞれ1〜10の整数である。
【0015】
一実施形態では、XはOであり、R及びRはCHであり、n及びmはそれぞれ3である。別の実施形態では、XはOであり、RはCHであり、Rは式IIの置換基であり、n、m及びpはそれぞれ3である。
【0016】
本明細書で使用するとき、「生体医療用機器」は、哺乳類組織又は体液中又は上で、一実施形態ではヒト組織又は体液中又は上で使用するように設計されているいずれかの物品である。これらの機器の例には、カテーテル、インプラント、ステント、及び眼科用機器が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、生体医療用機器は、眼科用機器、特にコンタクトレンズ、最も詳細にはシリコーンヒドロゲル製のコンタクトレンズである。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「眼科用機器」は眼の中又はその上に存在する製品を指す。これらの用具は、光学補正、創傷手当て、薬物送達、診断機能、美容補強又は美容作用、あるいはこれらの性質の組み合わせを提供することができる。眼科用機器の非限定例として、レンズ、涙点プラグなどが挙げられる。レンズ(コンタクトレンズ)という用語は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼内挿入物、及び光学挿入物を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書における百分率は全て、特に指定しない限り重量パーセントである。
【0019】
本明細書で使用するとき、語句「表面処理なしの」又は「表面処理されていない」は、本発明の機器の外面が機器の湿潤性を改善するために別に処理されるのではないことを意味する。本発明により先行することのできる処理は、プラズマ処理、グラフティング、コーティングなどを含む。しかし、湿潤性の改善以外の性質を提供するコーティング剤は、抗菌コーティング剤及び着色剤の塗布又は他の美容補強などであるが、それらに制約されず、本発明の機器に塗布することができる。
【0020】
本明細書で使用するとき、語句「反応性混合物」は、ポリマーを形成するポリマー形成条件に従って、反応性成分、希釈剤(使用される場合)、反応開始剤、架橋剤及び添加剤を含む混合成分を指す。反応性成分は、重合時、ポリマーマトリックス内の化学結合又はエントラップメント、若しくはエンタングルメントのいずれかによって、ポリマーの恒久的部分となる反応性混合物中の成分である。例えば、反応性モノマーは、重合を経てポリマー部分となる一方、PVPのような非反応性ポリマー性内部湿潤剤は、エンラップメントを経てポリマー部分となった。希釈剤(使用される場合)及び脱ブロック化剤などの任意に追加される加工補助剤はポリマー構造の一部となることはなく、反応性成分の一部ではない。
【0021】
本明細書で使用するとき、語句「親水性ポリマー」は、約5,000ダルトン以上の重量平均分子量を有する物質を指し、シリコーンヒドロゲル配合物に組み込まれた際に、前記物質は、硬化されたシリコーンヒドロゲルの湿潤性を増加させる。一実施形態では、これら親水性ポリマーの重量平均分子量は約30,000ダルトンを超え、別の実施形態では約150,000〜約2,000,000ダルトンである。更に別の実施形態では、少なくとも1つの親水性ポリマーの分子量は約300,000〜約1,800,000ダルトンであり、更に別の実施形態では約500,000〜約1,500,000ダルトンである。
【0022】
別の方法としては、本発明の親水ポリマーの分子量は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,N−Vinyl Amide Polymers,Second edition,Vol 17,pgs.198〜257,John Wiley & Sons Inc.に記載されているように、運動粘度測定に基づいてK−値で表示することもできる。この方法で表現するとき、親水性モノマーは約46を超えるK−値を有しており、一実施形態では、約46〜約150である。親水性ポリマーは、コンタクトレンズをもたらし、かつ湿潤性の少なくとも10%改善をもたらし、いくつかの実施形態では、表面処理なしの湿潤性のあるレンズをもたらすのに十分な量で、これらの機器の配合中に存在する。コンタクトレンズにおいて、「湿潤性」とは、約80°未満、70°未満、いくつかの実施形態では約60°未満の前進動的接触角を示すレンズである。
【0023】
親水性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリラクトン、ポリイミド、ポリラクタム、及びDMAと、HEMA等のより低分子量のヒドロキシル官能性ポリマーとを共重合させた後に、得られたコポリマーのヒドロキシル基と、イソシアナトエチルメタクリレート若しくはメタクリロイルクロライド等のラジカル重合性基を含有する材料とを反応させることによって官能化されたDMA等の官能化ポリアミド、官能化ポリラクトン、官能化ポリイミド、官能化ポリラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。メタクリル酸グリシジルを有するDMA又はn−ビニルピロリドンから製造される親水性プレポリマーも使用してもよい。メタクリル酸グリシジル環は、開環されてジオールを得、これは、混合系において、他の親水性プレポリマーと併用されて使用され得、親水性ポリマー、ヒドロキシル官能化シリコーン含有モノマー及び相溶性を与える他の全ての基の相溶性を向上させる。一実施形態では、親水性ポリマーは、その主鎖中に、環状アミド又は環状イミドなどであるが、これらに限定されない少なくとも1つの環状部分を含有する。親水性ポリマーとしては、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ビニル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、ポリ−N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、ポリ−N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、及びポリ−N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリ−N−N−ジメチルアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリ−2−エチル−オキサゾリン、ヘパリン多糖類、多糖類、これらの混合物及びコポリマー(ブロック若しくはランダム、分枝状、多鎖型、櫛状又は星状を含む)が挙げられるが、これらに限定されず、一実施形態では、ポリ−N−ビニルピロリドン(PVP)が特に好ましい。PVPのグラフトコポリマー等のコポリマーも使用され得る。
【0024】
親水性ポリマーは、湿潤性、特に本発明の医療機器に対して生体内における湿潤性を提供する。あらゆる理論に束縛されることなく、親水性ポリマーは、水性の環境内で、水に結合した水素原子を受容する水素結合受容体であり、このようにして、事実上、より親水性となると考えられる。水の不存在は、反応性混合物中の親水性ポリマーの混和を円滑にする。特化した親水性ポリマーは別として、前記ポリマーがシリコーンヒドロゲル配合物に添加されるとき、親水性ポリマーが、(a)反応性混合物から実質的に相分離せず、(b)得られた硬化したポリマーに湿潤性を付与する、という条件で、いかなる親水性ポリマーも本発明に有用であることが期待される。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーが反応温度で希釈剤中に可溶性であることが好ましい。
【0025】
親水性ポリマーは、本発明の反応性混合物中に、全反応性成分の総量に基づき、約5〜約30重量パーセント、いくつかの実施形態では約5〜約20重量パーセント、別の実施形態では約6〜約15重量パーセントの量で存在してよい。
【0026】
驚くべきことに、少なくとも1つの式Iのシロキサン及び少なくとも1つの親水性ポリマーを含めることで、望ましい水分含量及び接触角を有するシリコーンヒドロゲルが、いかなる反応性親水性成分を含めずに製造され得ることが見出された。単一の親水性成分として親水性ポリマーを組み込むことで、約20%を超える水分含量を提供できたのは驚くべきことであった。
【0027】
対称ヒドロキシル官能化シロキサンは、反応性混合物中反応性成分の約75〜95重量パーセント、いくつかの実施形態では約75〜90重量パーセントで、反応性混合物中に存在する。
【0028】
本発明の反応性混合物は、少なくとも1つの希釈剤を更に含んでよい。本発明で有用な希釈剤は、反応条件において反応性混合物に非極性成分を可溶化するために、十分に低い極性を有していなくてはならない。本発明の共希釈剤の極性を特徴付ける1つの方法は、Hansen溶解度パラメーターδpを介する。特定の実施形態では、本発明の共希釈剤のδpは約2〜約7である。
【0029】
選択された希釈剤は、反応性混合物中の成分も可溶化しなくてはならない。当然のことながら、この選択された親水性ポリマー及び対称ヒドロキシル官能化シロキサンの特性は、所望の相溶化をもたらすであろう希釈剤の特性に影響を与え得る。例えば、反応性混合物が中程度の極性の成分のみを含有する場合、中程度のδpを有する希釈剤が使用され得る。しかし、反応性混合物が高い極性の成分を含有する場合、希釈剤は高いδpを有する必要がある。
【0030】
好適な希釈剤の種類として、2〜20個の炭素を有し、炭素:ヒドロキシル由来の酸素の比が最大約8:約1であるアルコール、10〜20個の一級アミン由来の炭素原子を有するアミドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、一級及び三級アルコールが好ましい。一実施形態では、5〜20個の炭素、約3:約1〜約6:約1の炭素:ヒドロキシル由来の酸素の比を有するアルコールが共希釈剤として使用され得る。
【0031】
使用され得る特定の希釈剤として、2−オクタノール、第三−アミルアルコール、第三−ブタノール、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、TPME 3−メチル−3−ペンタノール(3M3P)、3,7−ジメチル−3−オクタノール(D3O)、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。希釈剤はまた、6〜18個の炭素原子を有するカルボン酸、及びC6〜10アルキル基で置換したフェノールなどの共希釈プロトン化希釈剤を含んでもよい。一実施形態では、プロトン化希釈剤は、デカン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物などから選択される。あるいは、6〜14個の炭素原子を有するアミンなど、プロトン化可能希釈剤(プロトンを受容できる希釈剤)を使用してよい。プロトン化可能希釈剤は、脱プロトン型で反応性混合物中に含まれ、レンズ加工中にプロトン化される。好適なプロトン化可能希釈剤の例として、デシルアミン、オクチルアミン、ヘキシルアミン、これらの混合物などが挙げられる。
【0032】
希釈剤は、反応性混合物中の全成分の合計の、約20〜約60重量%の量で使用できる。一実施形態では、希釈剤は、反応性混合物中の全成分の合計の約50重量%未満の量、別の実施形態では約30〜約45重量%の量で使用される。驚くべきことに、本発明の希釈剤を使用するとき、改善された光学特性を有する湿潤性のある眼科用製品が、水性加工条件を採用した場合でも製造できることが見出された。
【0033】
反応性混合物には、架橋モノマーとも称する架橋剤1個以上を添加することが、一般に必要であり、例えばエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(この場合、ポリエチレングリコールは、例えば約5000までの分子量を有する)、並びに他のポリアクリレート及びポリメタクリレートエステル、(例えば2個以上の末端メタクリレート部分を含有する上記のエンドキャップ化ポリオキシエチレンポリオールなど)である。架橋剤は、反応性混合物中、例えば、約0.000415〜約0.0156モル/反応性成分100グラムの通常量で使用される(反応性成分とは、ポリマー構造の一部とならない希釈剤及び任意の追加の加工助剤以外の、反応性混合物中の全成分である)。別の方法としては、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有モノマーが、架橋剤として作用する場合、反応性混合物への架橋剤の追加は任意である。架橋剤として作用でき、存在する場合に反応性混合物への追加架橋剤の添加を必要としない親水モノマーの例は、2個以上の末端メタクリレート部分を含有する上記ポリオキシエチレンポリオールを含む。
【0034】
架橋剤として作用でき、存在する場合に反応性混合物への架橋モノマーの追加を必要としないシリコーン含有モノマーの例として、α,ω−ビスメタクリルオキシプロピル(bismethacryloypropyl)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0035】
反応性混合物には、これらに限定されないが、紫外線吸収剤、薬剤、抗微生物化合物、反応性発色剤、顔料、共重合性及び非重合性色素、離型剤及びこれらの組み合わせなどの更なる成分を含有してもよい。反応性混合物には、好ましくは重合触媒が含まれる。重合開始剤としては、過酸化ラウリル、過酸化ベンゾイル、過炭酸イソプロピル、アゾビスイソブチロニトリルなどの適度な昇温でフリーラジカルを発生する化合物、並びに芳香族α−ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及びジケトンを加えた第三級アミン、これらの混合物などの光重合開始剤系が挙げられる。光開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6−トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、及びカンファーキノンとエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。市販の可視光開始剤系としては、Irgacure 819、Irgacure 1700、Irgacure 1800、Irgacure 819、Irgacure 1850(いずれもCiba Specialty Chemicalsより)及びLucirin TPO開始剤(BASF社より販売)が挙げられる。市販の紫外光開始剤としては、Darocur 1173及びDarocur 2959(Ciba Specialty Chemicals)が挙げられる。使用することが可能なこれら及び他の光開始剤は、本明細書に援用するVolumeIII,Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization,2ndEdition by J.V.Crivello & K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998に開示されている。この開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば反応性モノマー100重量部に対し、約0.1〜約2重量部の量で反応性混合物中に用いられる。反応性混合物の重合反応は、使用される重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光、又は他の手段を適宜選択して開始することができる。また、例えば電子線を使用することにより光開始剤を使用することなく反応を開始させることもできる。しかしながら、光開始剤が使用される一実施形態では、好ましい開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))、のようなビスアシルホスフィンオキシド、又は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4−4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせが挙げられ、好ましい重合開始方法は可視光線である。好適なものとしては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819(登録商標))である。
【0036】
反応性成分と希釈剤の組み合わせは、約75〜約95重量%の対称ヒドロキシル官能化シリコーン、約0.2〜約3重量%の架橋剤、約0〜約3重量%の紫外線吸収モノマー、約5〜約30重量%の親水性ポリマー(全て、全反応性成分の重量%に基づく)、及び約20〜約60重量%(反応性及び非反応性両方の全成分の重量%)の1つ以上の希釈剤を有するものを含む。
【0037】
本発明の反応性混合物は、振盪又は攪拌などの当業者に周知のいずれかの方法で形成でき、周知法によるポリマー用品又は用具の形成に使用できる。
【0038】
例えば、本発明の生体医療用機器は、反応性成分及び希釈剤を重合開始剤と混合し、適切な条件下で硬化させることによって調製して、生成物を形成し、その後、木摺打ち、切断などによって適切な形状に形成することができる。別法として、反応性混合物は、型に入れた後に硬化させ、適当な物品とすることができる。
【0039】
コンタクトレンズの生産における反応性混合物の加工には、スピンキャスティング及び静鋳造法(static casting)を含めた様々なプロセスが既知である。スピンキャスト法については米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示されており、静止キャスト法については米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。一実施形態では、本発明のポリマーを含むコンタクトレンズの製造方法は、シリコーンヒドロゲルを直接型成形することによるものであり、この方法は経済的であり、かつ含水レンズの最終的な形状の正確な制御を可能とするものである。この方法の場合、最終の所望のシリコーンヒドロゲル、すなわち、水膨潤ポリマー、の形状を有する型に反応性混合物を入れ、モノマーが重合する条件に当該反応性混合物を供し、それによって、ポリマー/希釈剤混合物を所望の最終製品の形状にする。
【0040】
図1を参照すると、コンタクトレンズなどの眼科用レンズ100、及び眼科用レンズ100の形成に用いられる成形型部品101、102の図が示される。いくつかの実施形態では、成形型部品は、背面成形型部品101及び前面成形型部品102を備える。本明細書で使用するとき、用語「前面成形型部品」は、その凹面104が、眼科用レンズの前面を形成するのに用いられるレンズ形成面である、成形型部品を指す。同様に、用語「背面成形型部品」は、その凸面105が、眼科用レンズ100の背面を形成するレンズ形成面を形成する成形型部品101を指す。いくつかの実施形態では、成形型部品101及び102は凹凸状であり、好ましくは、成形型部品101、102の凹凸部の最上端縁部周囲を囲む平面環状フランジを含む。
【0041】
典型的には、成形型部品101、102は「サンドイッチ」状に配置される。前面成形型部品102は、成形型部品の凹面104が上向きの状態で底部にある。背面成形型部品101は、背面成形型部品101の凸面105が前面成形型部品102の凹部に一部突出している状態で、前面成形型部品102の上部に対称的に配置され得る。一実施形態では、背面成形型部品101は、その凸面105が前面成形型部品102の凹面104の外側縁部に、その周囲全体に嵌合するような寸法であり、それにより、眼科用レンズ100が形成される封止された型穴の形成が助けられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、成形型部品101、102は、熱可塑性樹脂で作製され、重合開始用の化学線に対して、少なくとも一部、いくつかの実施形態では全部が透過するようになっており、型穴中で反応性混合物の重合を開始する上で有効な強度及び波長の化学線は、成形型部品101、102を貫通できる。
【0043】
例えば、成形型部品の製造に好適な熱可塑性樹脂として、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレンなど)、スチレンとアクリロニトリル又はブタジエンのコポリマー又は混合物、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、環状オレフィンコポリマー(Ticonaから入手可能なTopas、又はZeonから入手可能なZeonorなど)、上記の任意のものの組み合わせ、又はその他既存の材料を含めることができる。
【0044】
レンズ100を形成するための反応性混合物の重合の後、レンズ表面103は、典型的には成形型部品表面104に付着するはずである。本発明の工程は、表面103の成形型部品表面からの取り外しを容易にする。
【0045】
第1の成形型部品101は、離型工程において第2の成形型部品102から分離され得る。いくつかの実施形態では、レンズ100は、硬化工程中に第2の成形型部品102(すなわち、前側曲線成形型部品)に付着し、分離後、前側曲線成形型部品102から取り外されるまで、第2の成形型部品102に付着した状態で残る。別の実施形態では、レンズ100は第1の成形型部品101に付着し得る。
【0046】
レンズ100及び離型後に付着する成形型部品は、取り出し溶液と接触してよい。取り出し溶液を、取り出し溶液の沸点を下回る任意の温度まで加熱してよい。
【0047】
本明細書で使用するとき、加工には、成形型からレンズを取り外す工程と、希釈剤を交換溶液で除去又は交換する工程とが含まれる。これらの工程は、別々に、又は単一の工程若しくはステージで行われてもよい。加工温度は、約30℃〜水溶液の沸点、いくつかの実施形態では約30℃〜約95℃、いくつかの実施形態では約50℃〜約95℃の任意の温度であってよい。
【0048】
交換溶液は、水溶液又は有機溶液であってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの領域において、交換溶液への有機溶液の使用が望ましい場合がある。好適な有機交換溶液は、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、TPME、EtOH、ヘキサノール、水及びこれらの混合物を含んでよい。一実施形態では、交換溶液はイソプロピルアルコールを含む。いくつかの実施形態では、交換溶液は水溶液であり、一実施形態では、少なくとも約70重量%の水、別の実施形態では少なくとも約90重量%の水、別の実施形態では少なくとも約95%の水を含み得る。この水溶液は、ホウ酸緩衝生理食塩水、ホウ酸ナトリウム溶液、重炭酸ナトリウム溶液などのコンタクトレンズ包装用溶液であってもよい。水溶液はまた、添加剤、例えば、界面活性剤、防腐剤、取り出し助剤、抗菌剤、薬学的及び栄養学的成分、潤滑剤、湿潤剤、塩類、緩衝剤、これらの混合物なども含んでよい。水溶液中に含めてよい添加剤の特定例として、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Tyloxapol、オクチルフェノキシ(オキシエチレン)エタノール、アンホテリック(amphoteric)10、EDTA、ソルビン酸、DYMED、グルコン酸クロルヘキシジン(chlorhexadine gluconate)、過酸化水素、チメロサール、polyquad、ポリヘキサメチレンビグアニド、これらの混合物などが挙げられる。様々な領域が用いられる場合、異なる溶液を用いてよく、異なる添加剤を異なる領域で含めてよい。例えば、交換溶液がイソプロピルアルコールを含む場合、第1の領域は約90%以上のイソプロピルアルコールを含んでよく、これに続く領域では、連続的により希釈されているイソプロピルアルコールと水の混合液を含んでよい。最終交換溶液は100%水であってよい。いくつかの実施形態では、0.01重量%〜10重量%の様々な量で、ただし累積約10重量%未満の量で、添加剤を交換溶液に添加することができる。
【0049】
眼科用レンズ100の交換溶液への曝露は、洗浄、噴霧、浸漬、水浸、又はこれらの任意の組み合わせといった任意の方法で達成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、レンズ100は水和塔内で脱イオン水を含む水溶液で洗浄され得る。
【0050】
水和塔を用いる実施形態では、レンズ100を含む前側曲線成形型部品102を、パレット又はトレイ内に配置し、垂直方向に積み重ねることができる。交換溶液がレンズ100全体に流下するように、この溶液を積み重ねたレンズ100の上部に導入してよい。また、塔に沿った様々な位置にこの溶液を導入することもできる。いくつかの実施形態では、レンズ100を徐々により新しい溶液にさらすように、トレイを上方に移動させてよい。
【0051】
別の実施形態では、眼科用レンズ100は交換溶液中に浸漬又は水没される。
【0052】
接触工程は、最大約12時間、いくつかの実施形態では最大約2時間、別の実施形態では約2分間〜約2時間継続してよいが、接触工程の長さは、任意の添加剤を含むレンズ材料、交換溶液又は溶媒に用いられる物質、及び溶液温度に依存する。十分な処理時間により、典型的にはコンタクトレンズが収縮し、成形型部品からレンズが取り出される。接触時間を長くすると、浸出がより大きくなる。
【0053】
使用される交換溶液の量は、レンズ1枚あたり約1mL超、いくつかの実施形態ではレンズ1枚あたり約5mL超の任意の量であってよい。
【0054】
いくつかの方法では、分離又は離型後、フレームの一部となる前面曲線上のレンズは、これらが前面曲線から取り出されると、コンタクトレンズを受け入れるための個々の凹状の溝が付けられたカップに結合する。このカップはトレイの一部であってよい。例として、それぞれ32枚のレンズを搭載するトレイを挙げることができ、このトレイ20枚はマガジン内に積み重ねることができる。
【0055】
本発明の別の実施形態によると、レンズは交換溶液内に水浸される。一実施形態では、マガジンを積み重ね、続いて交換溶液を含むタンク内に沈めることができる。この水溶液もまた、上述のその他添加剤を含んでよい。
【0056】
本発明の眼科用製品、特に眼科用レンズは、これらを特に有用にする、バランスのとれた性質を有する。このような性質として、透明性、光学性、含水量、酸素透過性及び接触角が挙げられる。したがって一実施形態では、生体医療用機器は、含水率が約20%よりも大きい、ある実施形態では約25%よりも大きいコンタクトレンズである。
【0057】
本明細書で使用するところの透明性とは、視認できるヘイズが実質的にないことを意味する。透明なレンズは、CSIレンズと比較した場合に約150%未満、より好ましくは約100%未満のヘイズ値を有する。
【0058】
好適な酸素透過性として、約40バーラーを超える、いくつかの実施形態では約60バーラーを超えるものが挙げられる。
【0059】
また、生体医療用機器、特に眼科用機器及びコンタクトレンズは、約80°未満、約75°未満、いくつかの実施形態では約70°未満の平均接触角(前進)を有する。いくつかの実施形態では、本発明の物品は上記に述べた酸素透過係数、含水率、及び接触角の組み合わせを有する。上記の範囲の全ての組み合わせは、本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0060】
Hansen溶解度パラメーター
Hansen溶解度パラメーターδpは、Bartonの「CRC Handbook of Solubility Par.」第1版、1983年、85〜87頁に記載される原子団寄与法、及び表13、14を使用して算出できる。
【0061】
ヘイズ値の測定
ヘイズ値は、室温で、平坦な黒色背景上に置かれた、20×40×10ミリメートルの透明なガラス製セル内のホウ酸緩衝生理食塩水中に検査用の水和レンズを配置し、そのレンズのセルの下部から、セルから垂直に対して66°の角度で、光ファイバーランプ(出力を4〜5.4に設定された口径1.3cm(0.5”)の光導波路を備えたTitan Tool Supply Co.製の光ファイバー光源)で光を照射し、レンズプラットホームの14mm上に配置されたビデオカメラ(Navitar TV Zoom 7000ズームレンズを搭載したDVC 1300C:19130 RGBカメラ)で、このレンズのセル上から垂直にレンズ画像を撮影することによって、測定される。EPIX XCAP V 1.0ソフトウェアを使ってブランクセルの画像を差し引くことによってレンズの散乱から背景散乱を差し引く。差し引き後の散乱光画像は、レンズの中心10mmを積分した(integrating)後、曇り度0と設定したレンズを用いずに、任意に曇り度100に設定した−1.00ジオプターCSI Thin Lens(登録商標)と比較することによって定量的に分析される。5個のレンズを分析し、結果を平均化し、標準CSIレンズのパーセンテージとして曇り度を得る。レンズは、(上述のCSIの)約150%未満、いくつかの実施形態では約100%未満のヘイズ値を有する。
【0062】
含水率
コンタクトレンズの含水率を以下のように測定した。1組3枚のレンズ3組をパッキング溶液中で24時間静置する。各レンズを吸湿拭き取りシートで拭き取り、秤量する。レンズを1.35kPa(0.4インチHg)以下の圧力下、60℃で4時間乾燥する。乾燥したレンズを秤量する。含水率は次のように計算する。
【数1】

【0063】
各試料について含水率の平均及び標準偏差を計算して報告する。
【0064】
弾性率
弾性率は、初期ゲージ高さにまで下げられたロードセルを備えた一定速度移動タイプの引張試験機のクロスヘッドを使用して測定した。好適な試験機としてInstronモデル1122が挙げられる。長さ1.326cm(0.522インチ)、「耳」の幅0.701cm(0.276インチ)、「首」の幅0.541cm(0.213インチ)を有する犬骨の形の試料をグリップに乗せ、破断するまで5.1cm/分(2インチ/分)の一定のひずみ率で伸長した。試料の初期ゲージ長さ(Lo)及び破断試料長さ(Lf)を測定する。各組成物について12個の試料を測定し、平均値を報告する。伸び率(%)=[(Lf−Lo)/Lo]×100である。応力/歪み曲線の初期の直線部分で引張弾性率を測定する。
【0065】
前進接触角
前進接触角を以下のように測定した。幅約5mmの中央のストリップ状部分をレンズから切り抜くことによって各組から4個の試料を調製し、パッキング溶液中で平衡化した。試料を生理食塩水中に浸漬しながら又は生理食塩水から取り出しながら、レンズ表面とホウ酸塩緩衝食塩水との間の湿潤力を、ウィルへルミ微量天秤を使用して23℃で測定する。下式を用いる。
F=2γpcosθ又はθ=cos−1(F/2γp)
式中、Fは湿潤力であり、γは試験液の表面張力であり、pはメニスカスにおける試料の周長であり、θは接触角である。前進接触角は、パッキング溶液中に試料が浸漬されつつあるときの湿潤実験部分から得られる。各試料について4回繰り返し、結果の平均をとってレンズの前進接触角を得た。
【0066】
酸素透過係数(Dk)
Dkは以下のようにして測定される。直径4mmの金陰極及び銀リング陽極からなるポーラログラフィー酸素センサ上にレンズを配置し、メッシュ支持体で上面を覆う。レンズを加湿した2.1% Oの雰囲気にさらす。レンズを通って拡散する酸素をセンサによって測定する。複数のレンズを互いに重ねて厚さを増加させるか、更に厚いレンズを使用する。厚さの値が大きく異なる4個の試料のL/Dkを測定し、厚さに対してプロットする。回帰直線勾配(regressed slope)の逆数が試料のDkである。参照値は、この方法を使用して市販のコンタクトレンズについて測定した値である。Bausch & Lombより販売されるバラフィルコンAレンズは約79バーラーの測定値を示す。エタフィルコンレンズは20〜25バーラーの測定値を示す(1バーラー=10−10(気体のcm×cm)/(ポリマーのcm×秒×cmHg))。
【0067】
以下の実施例は本発明を更に説明するものであるが発明を限定するものではない。これらの実施例は、本発明を実施する方法を示唆するものにすぎない。コンタクトレンズ及び他の専門分野に精通した当業者であれば、本発明を実行する他の方法を見出し得るものである。しかしながらこれらの方法は本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0068】
実施例で用いられるその他材料の一部は以下のとおりである。
【表1】

【実施例】
【0069】
(実施例1〜5)
異なるモノマー:希釈剤比率を有する別々の反応性混合物(表1)をジャーローラー内25(±3)℃で最低16時間混合した後、700mmHgの高真空下で25(±3)℃で30(±3)分間脱気した。全ての反応性混合物にヘイズはなかった。グローブボックス内で、Zeonor製の熱可塑性樹脂前側曲線コンタクトレンズ成形型、ポリプロピレン製の熱可塑性樹脂後側曲線コンタクトレンズ成形型内に反応性混合物をそれぞれ投入し、前側曲線成形型を上に置き、ウエイト(石英プレート)を閉じた成形型上に置いた後、成形型を、55(±5)℃、窒素雰囲気(<0.5% O)下、25分間、紫外線[1.5〜2.0mWatts、30.5〜45.7cm(12〜18インチ)]で硬化した。得られたレンズを手で離型し、90℃のパッキング溶液に1〜5分間放出した。続いて、パッキング溶液が入った400mLのジャーにレンズを移し、30分間回転させた(ジャー1個あたり最大レンズ100枚)。その後、パッキング溶液をデカントし、新しいパッキング溶液を追加して30分間回転させた後に2回目のデカントを行い、新しいパッキング溶液を追加して一晩中回転させた。レンズが平衡化された時点で、新しいパッキング溶液内で検査した。その後、5mLのパッキング溶液を入れたバイアル瓶にレンズを包装し、蓋をして、121℃で30分間滅菌した。レンズ特性の結果を以下(表2)に示す。
【表2】

【表3】

−=測定せず
2回測定し、両方の値を記した
【0070】
比較例1
MC−12をHO−PDMSに換えた以外は、実施例4を繰り返した。反応性混合物をジャーローラー上、25(±3)℃で最低16時間混合した。反応性混合物は混合中ずっと不透明なままであった。レンズは作製されなかった。
【0071】
(実施例6〜7)
(a)表3に記載の希釈剤を表3に記載の量で使用し、(b)得られたレンズを以下のように離型し取り出した以外は、実施例4及び5を繰り返した。20分間後、IPA/脱イオン水の90:10混合液中にレンズを手で離型した。レンズを前面曲線から取り出した時点で、新しいIPA/脱イオン水の90:10溶液に入れ、30分間回転させた。溶液をデカントし、新しいIPA/脱イオン水の90:10溶液を加え、レンズを30分間回転させた。続いて、IPA/脱イオン水の70:30液(2回)、IPA/脱イオン水の50:50液(2回)、IPA/脱イオン水の30:70液(2回)、及び100%脱イオン水を用い、各間隔でレンズを30分間回転させ、上記と同様に水和プロセスを継続した。最後に、レンズをパッキング溶液で平衡化した。レンズが平衡化された時点で、新しいパッキング溶液内で検査した。その後、5mLのパッキング溶液を入れたバイアル瓶にレンズを包装し、蓋をして、121℃で30分間滅菌した。レンズ特性の結果を以下(表4)に示す。
【表4】

【表5】

−=測定せず
2回測定し、両方の値を記した
【0072】
実施例4及び5をそれぞれ実施例6及び7と比較すると、IPAなどの有機溶媒を取り出し及び溶媒交換に用いることにより、得られるコンタクトレンズの%ヘイズ値に大きな影響を与えることがわかる。また、実施例7では、t−アミルアルコールを希釈剤及び有機溶媒交換に用いることにより、有機溶媒をt−アミル以外の希釈剤と、又はt−アミルアルコールと水抽出と使用するときと比較して、実質的に改善された前進動的接触角をももたらすことを示す。
【0073】
〔実施の態様〕
(1) 少なくとも約20重量%の水を含むシリコーンヒドロゲルであって、少なくとも1つの非反応性親水性ポリマーと、式I
【化3】

の少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーンと、を含む反応性混合物から形成され、
式中、Rは、H又はCHであり、
Xは、O又はNHであり、
は、CH又は式II
【化4】

のシリコーン部分であり、
m、n及びpは、それぞれ1〜10の整数である、シリコーンヒドロゲル。
(2) 前記反応性混合物が、前記反応性混合物中の全反応性成分に基づき、約60〜約95重量パーセントの対称ヒドロキシル官能化シリコーンを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(3) 前記反応性混合物が、前記反応性混合物中の全反応性成分に基づき、約60〜約90重量パーセントの対称ヒドロキシル官能化シリコーンを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(4) 前記反応性混合物が、全反応性成分の全量に基づき、約5〜約30重量パーセントの親水性ポリマーを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(5) 前記反応性混合物が、全反応性成分の全量に基づき、約5〜約17重量パーセントの親水性ポリマーを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(6) 前記反応性混合物が、全反応性成分の全量に基づき、約6〜約15重量パーセントの親水性ポリマーを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(7) 前記親水性ポリマーがポリ−N−ビニルピロリドンを含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(8) 前記反応性混合物が少なくとも1つの希釈剤を更に含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(9) 前記希釈剤が、t−アミルアルコール、TPME、D3O、これらの混合物などからなる群から選択される、実施態様8に記載のシリコーンヒドロゲル。
(10) 前記希釈剤が、t−アミルアルコール、TPME、並びにTPME及びデカン酸及び1,2−オクタンジオールの混合物から選択される、実施態様8に記載のシリコーンヒドロゲル。
【0074】
(11) 前記反応性混合物が約20〜約60重量%の希釈剤を含む、実施態様8に記載のシリコーンヒドロゲル。
(12) 前記反応性混合物が約30〜約55重量%の希釈剤を含む、実施態様8に記載のシリコーンヒドロゲル。
(13) 反応開始剤、架橋剤、紫外線吸収剤、薬剤、抗微生物化合物、反応性発色剤、顔料、共重合性及び非重合性色素、離型剤、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分を更に含む、実施態様1に記載のシリコーンヒドロゲル。
(14) シリコーンヒドロゲル物品を形成するプロセスであって、
(a)少なくとも1つの希釈剤と、少なくとも1つの非反応性親水性ポリマーと、式I
【化5】

の少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーンと、を含む反応性混合物を成形型内で硬化させて、シリコーンヒドロゲル物品を形成することであって、
式中、Rは、H又はCHであり、
Xは、O又はNHであり、
CH又は
【化6】

であり、
m、n及びpは、それぞれ1〜10の整数である、ことと、
(b)前記シリコーンヒドロゲル物品を含有する前記成形型を、有機溶液と、前記シリコーンヒドロゲル物品を前記成形型から取り出す上で十分な条件下で接触させることと、
(c)前記有機溶液を水と交換し、約75°未満の前進動的接触角(advancing dynamic contact angle)を有するシリコーンヒドロゲル物品を形成することと、を含む、プロセス。
(15) 前記接触角が約60°未満である、実施態様14に記載のプロセス。
(16) 実施態様1〜13のいずれかに記載のシリコーンヒドロゲルから形成されるコンタクトレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約20重量%の水を含むシリコーンヒドロゲルであって、少なくとも1つの非反応性親水性ポリマーと、式I
【化1】

の少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーンと、を含む反応性混合物から形成され、
式中、Rは、H又はCHであり、
Xは、O又はNHであり、
は、CH又は式II
【化2】

のシリコーン部分であり、
m、n及びpは、それぞれ1〜10の整数である、シリコーンヒドロゲル。
【請求項2】
前記反応性混合物が、前記反応性混合物中の全反応性成分に基づき、約60〜約95重量パーセントの対称ヒドロキシル官能化シリコーンを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項3】
前記反応性混合物が、前記反応性混合物中の全反応性成分に基づき、約60〜約90重量パーセントの対称ヒドロキシル官能化シリコーンを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項4】
前記反応性混合物が、全反応性成分の全量に基づき、約5〜約30重量パーセントの親水性ポリマーを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項5】
前記反応性混合物が、全反応性成分の全量に基づき、約5〜約17重量パーセントの親水性ポリマーを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項6】
前記反応性混合物が、全反応性成分の全量に基づき、約6〜約15重量パーセントの親水性ポリマーを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項7】
前記親水性ポリマーがポリ−N−ビニルピロリドンを含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項8】
前記反応性混合物が少なくとも1つの希釈剤を更に含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項9】
前記希釈剤が、t−アミルアルコール、TPME、D3O、これらの混合物などからなる群から選択される、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項10】
前記希釈剤が、t−アミルアルコール、TPME、並びにTPME及びデカン酸及び1,2−オクタンジオールの混合物から選択される、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項11】
前記反応性混合物が約20〜約60重量%の希釈剤を含む、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項12】
前記反応性混合物が約30〜約55重量%の希釈剤を含む、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項13】
反応開始剤、架橋剤、紫外線吸収剤、薬剤、抗微生物化合物、反応性発色剤、顔料、共重合性及び非重合性色素、離型剤、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分を更に含む、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲル。
【請求項14】
シリコーンヒドロゲル物品を形成するプロセスであって、
(a)少なくとも1つの希釈剤と、少なくとも1つの非反応性親水性ポリマーと、式I
【化3】

の少なくとも1つの対称ヒドロキシル官能化シリコーンと、を含む反応性混合物を成形型内で硬化させて、シリコーンヒドロゲル物品を形成することであって、
式中、Rは、H又はCHであり、
Xは、O又はNHであり、
CH又は
【化4】

であり、
m、n及びpは、それぞれ1〜10の整数である、ことと、
(b)前記シリコーンヒドロゲル物品を含有する前記成形型を、有機溶液と、前記シリコーンヒドロゲル物品を前記成形型から取り出す上で十分な条件下で接触させることと、
(c)前記有機溶液を水と交換し、約75°未満の前進動的接触角を有するシリコーンヒドロゲル物品を形成することと、を含む、プロセス。
【請求項15】
前記接触角が約60°未満である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のシリコーンヒドロゲルから形成されるコンタクトレンズ。

【図1】
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【公表番号】特表2012−531491(P2012−531491A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517550(P2012−517550)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037249
【国際公開番号】WO2010/151411
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(510294139)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
【Fターム(参考)】