説明

寿司用冷凍米飯の製造方法及び寿司用冷凍米飯

【課題】自然解凍又は電子レンジにより容易に解凍できるように改良された寿司用冷凍米飯を得る方法を提供する。
【解決手段】ゼラチンを低分子化したアミノ酸を含む、解凍を容易にするための冷凍液を準備する。炊飯釜に、水に浸漬した米を入れ、上記冷凍液と、さらに少なくともpH調節剤と食用植物性油脂とを加え、かき混ぜる。次に炊飯し、炊飯後は炊飯釜の廻りの温度が下がらないようにして蒸らす。その後、炊飯釜から取り出し、50℃前後の温度に冷却し、合わせ酢を入れて攪拌する。一口サイズの大きさに分けて、プレスして成型し、急速冷凍する。アミノ酸として、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリンの含有量が、他のアミノ酸に抜きん出るものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に寿司用冷凍米飯の製造方法に関するものであり、より特定的には、自然解凍又は電子レンジにより、容易に解凍できるように改良された寿司用冷凍米飯を得る方法に関する。この発明は、またそのような方法によって得られた寿司用冷凍米飯に関する。
【背景技術】
【0002】
一度冷凍した寿司用米飯を解凍したら、白蝋化し、食物としては利用できないと一般に考えられていた。このような場合再加熱することにより、白蝋化した寿司米を回復させることができるが、酢飯の風味を損なう。また、通常の急速冷凍の20倍のスピードで凍らせる性能を持つ冷凍設備を用いて、酢飯の風味を損なうことなく、保存性の高いシャリの冷凍をする技術も提案されている。しかし、設備に費用がかかる。
【0003】
さらに、糖類を炊飯時に加えて、米飯への浸透圧を強め、解凍しやすい状態にする技術も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−42807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の技術でも、白蝋化の防止が不十分であるという問題点があった。また、糖を使うので、甘さが勝ちすぎて、米飯の食味が損なわれるという問題点もあった。
【0005】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、自然解凍又は電子レンジにより、白蝋化させず速く解凍できるように改良された寿司用冷凍米飯を得る方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、食味の良い寿司用冷凍米飯を得る方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、そのような方法によって得られた寿司用冷凍米飯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る寿司用冷凍米飯の製造方法においては、まず、ゼラチンを低分子化したアミノ酸を含む、解凍を容易にするための冷凍液を準備する。炊飯釜に、水に浸漬した米と炊き水を入れ、さらに少なくとも前記冷凍液とpH調節剤と食用植物性油脂とを加え、かき混ぜる。次に炊飯し、炊飯後は炊飯釜の廻りの温度が下がらないようにして蒸らす。その後、炊飯釜から取り出し、50℃前後の温度に冷却し、合わせ酢を入れて攪拌する。一口サイズの大きさに分けて、プレスして成型し、急速冷凍する。
【0009】
上記冷凍液の好ましい配合量は55.125重量%〜70.895重量%であり、pH調整剤は23.625重量%〜30.375重量%であり、食用植物性油脂は8.95重量%〜11.25重量%である。
【0010】
上記冷凍液は、上記アミノ酸以外に、諸糖類、発酵調味料、酒精及び食塩を含むのが好ましい。糖類、酒精などを追加的に加えることにより、糖度が高まり、より自然解凍しやすくなる。上記冷凍液中の、ゼラチンを低分子化したアミノ酸の含有量は50〜75重量%であるのが好ましい。
【0011】
上記ゼラチンを低分子化したアミノ酸としては、コラーゲンを精製して抽出した蛋白質を、食品用酵素(例えばタンパク質分解酵素(プロテアーゼ))で加水分解したものを使用するのが好ましい。
【0012】
上記コラーゲンとして、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリンの含有量が、他のアミノ酸に抜きん出るものが得られる原料を使用することが好ましい。具体的には、牛の皮、豚の皮又は暖寒流系の魚の魚鱗を用いるのが好ましい。
【0013】
炊飯後の上記蒸らしは、上記炊飯釜の廻りの温度が下がらないようにするのが好ましい。
【0014】
上記急速冷凍は、バッチ式で、ドアを閉め密閉状態で行うのが好ましい。
【0015】
上記発酵調味料として、もろみ、黒糖又は砂糖異性液糖を用いるのが好ましい。
【0016】
上記急速冷凍を−40℃〜−50℃の温度で行うのが好ましい。このような低い温度で凍結させると、細胞を傷つけることなく、保水分まで瞬間的に一気に凍結させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる寿司用冷凍米飯の製造方法によれば、ゼラチンを低分子化したアミノ酸を含む、解凍を容易にするための冷凍液を用いるので、解凍が速くなり、白蝋化も発生せず、食味の良い寿司用冷凍米飯が得られる。また、脳細胞の活動を促進するグルタミン酸、成長促進の因子であるリジンを含有させると、胃、腸内の消化吸収を助けるばかりでなく、食物の消化吸収を助ける効果も奏する。また、ゼラチンを低分子化したアミノ酸は、冷水可溶性が良いので、水分のコントロールを行う働きもする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
速く解凍でき、白蝋化も生じないで、食味の良い寿司用冷凍米飯を得るという目的を、ゼラチンを低分子化したアミノ酸を含む冷凍液を用いることによって実現した。以下、この発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
(冷凍液の調整)
ゼラチンを低分子化したアミノ酸、諸糖類、発酵調味料、酒精及び食塩を水に溶かしてなる冷凍液をつくる。冷凍液中の、上記ゼラチンを低分子化したアミノ酸の好ましい含有量は、50〜75重量%、より好ましくは63〜65重量%である。
【0020】
ゼラチンを低分子化したアミノ酸を得るには、まず原料である牛の皮、豚の皮又は暖寒流系の魚の魚鱗などの高蛋白質であるコラーゲンを温水で処理してゼラチンを得る。ゼラチンを精製し抽出して得た蛋白質を食品用酵素で低分子化してアミノ酸を得る。原料の違いにより、アミノ酸は18種〜19種に分かれる。組成を、図1に表として整理する。表中、数値の単位は、原料100gに対するアミノ酸の含有量(mg)である。
【0021】
牛の皮、豚の皮又は暖寒流系の魚の魚鱗を原料に選ぶことにより、グリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンの含有量が、他のアミノ酸に抜きん出ているものが得られた(図中、*印で示す)。これらのアミノ酸が多いと、解凍後の寿司米飯が美味しくなる。
【0022】
糖質は、砂糖、麦芽糖と同じ糖質の仲間でブドウ糖2分子がα、α−1,1グルコシド結合した非還元性の二糖類である。澱粉の劣化抑制、蛋白質の変性抑制、脂質の変敗抑制、鮮度保持、組織安定化、矯味効果(味覚を変化させる現象)などを有する。発酵調味料は、もろみ、黒糖、砂糖異性液糖などである。酒精は、黒糖であり、保存性を向上させる。食塩もまた保存性を向上させる。
【0023】
(米飯の作り方)
水に浸漬した米6.4kg、冷凍液315g、炊き水6.0kg、pH調整剤(腐敗、劣化防止、旨みを与える。酢)250g、食油(炊飯、冷凍加工中の蒸発を抑制し、冷凍後の食味保持、劣化抑制)50g、必要に応じてデキストリン(米のコーティング剤となり、解凍後の食味保持、劣化抑制の働きをする)を炊飯釜に入れて、八の字型によく攪拌して、全体を平坦にしてから、火床に設置する。炊飯後は蒸らしを十分に行う。この時、釜の廻りの温度が下がらないようにする。蒸らしをしっかり行った後、50℃前後の温度に冷却し、合わせ酢を1.5リットル入れて攪拌する。
【0024】
炊飯釜は火力の強いのがよい。炊飯スタートから、12分以内で沸点(100℃)になる釜が良い。釜内の水と米を対流させる機能が優れたものがよい。外気温度の影響を受けない釜がよい。米は、品質が均一のものを使用する。炊飯、冷凍加工中の水分蒸発を極力抑制する。
【0025】
(成型方法)
合わせ酢を入れて攪拌したものを一口サイズの大きさに分けて、寿司型を用いてプレスして成型する。急速冷凍機に入れると、約2割程度体積が減るので、それを計算して成型する。チルドの製品よりも、プレスを緩くして成型する。容器に入れる際に柔らかいので、荷崩れに注意するのが好ましい。
【0026】
(冷凍方法)
急速冷凍機に入れるとき、水分の蒸発、水分の移動を抑えるために、容器に入れたとき、外包を行って、若干脱気してシール包装する。急速冷凍機に入れて、成型物の中心温度を−25℃にするために、トレーの深さを33.5cm以内にする。急速冷凍機に入れる台車の段差の間隔が5cm以上あるものを使用する。急速冷凍機は、バッチ式で、−40℃〜−50℃の温度で、ドアを閉め、密閉状態で行うのが特徴である。
【0027】
(冷凍米飯の保管方法)
冷凍された冷凍米飯は速やかに箱詰する。保管冷蔵庫は、常に−30℃以下で使用する。冷気が満遍なく届く場所に保管すると1年間は問題なく品質の保持ができる。出荷する前の作業(伝票、シール等)は、冷凍庫で行う。
【0028】
(冷凍米飯の物流方法)
冷蔵庫の庫内を均一に−20℃以下にする。配送温度が−20℃以下になるように調整する。必要ならドライアイスを使用する。
【0029】
(冷凍米飯の解凍方法)
解凍は、冷凍米飯の温度が−20℃の場合、電子レンジ(700Wの場合)で1分30秒要する。解凍した米飯の上に、寿司ネタを置くだけで、にぎり寿司が出来上がる。
【0030】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる寿司用冷凍米飯の製造方法によれば、解凍を容易にするための、ゼラチンを低分子化したアミノ酸を含む冷凍液を用いるので、解凍が速くなり、白蝋化も発生せず、保湿効果もあり、食味の良い寿司用冷凍米飯が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例に用いたコラーゲンを食品用酵素で加水分解して得られたアミノ酸の生成量の分布を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを低分子化したアミノ酸を含む、解凍を容易にするための冷凍液を準備し、
炊飯釜に、水に浸漬した米と炊き水を入れ、さらに少なくとも前記冷凍液とpH調節剤と食用植物性油脂とを加え、かき混ぜて、
次に炊飯し、炊飯後は炊飯釜の廻りの温度が下がらないようにして蒸らし、
その後、炊飯釜から取り出し、50℃前後の温度に冷却し、合わせ酢を入れて攪拌し、
一口サイズの大きさに分けて、プレスして成型し、急速冷凍することを特徴とする、寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項2】
前記ゼラチンを低分子化したアミノ酸としては、コラーゲンを精製して抽出した蛋白質を、食品用酵素で加水分解したものを使用することを特徴とする、請求項1に記載の寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項3】
前記コラーゲンとして、グリシン、プロリン及びヒドロキシプロリンの含有量が、他のアミノ酸に抜きん出るものが得られる原料を使用することを特徴とする、請求項2に記載の寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項4】
前記コラーゲンの原料として、牛皮、豚皮又は暖寒流系の魚の魚鱗を用いることを特徴とする、請求項3に記載の寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項5】
前記冷凍液は、前記ゼラチンを低分子化したアミノ酸を50〜75重量%含む、請求項1に記載の寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項6】
前記急速冷凍は、バッチ式で、ドアを閉め密閉状態で行うことを特徴とする、請求項1に記載の寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項7】
前記急速冷凍を−40℃〜−50℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1に記載の寿司用冷凍米飯の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の方法によって得られた寿司用冷凍米飯。

【図1】
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