説明

封止されたプラズマ敏感性デバイスの作製方法

封止されたプラズマ敏感性デバイスの作製方法。この方法は、基板に隣接してプラズマ敏感性デバイスを設けるステップと、非プラズマベースのプロセス、または修正型スパッタリングプロセスから選択されたプロセスを使用して、プラズマ保護層をプラズマ敏感性デバイス上に堆積するステップと、少なくとも1つのバリアスタックをプラズマ保護層に隣接して堆積するステップであって、その少なくとも1つのバリアスタックが、少なくとも1つのデカップリング層と、少なくとも1つのバリア層とを備え、プラズマ敏感性デバイスが基板と少なくとも1つのバリアスタックとの間で封止され、デカップリング層、バリア層、または両方がプラズマプロセスを使用して堆積され、封止されたプラズマ敏感性デバイスが、プラズマ保護層なしで作製された、封止されたプラズマ敏感性デバイスに比べて、プラズマによって引き起こされる損傷の量が低減されている、ステップとを含む。封止されたプラズマ敏感性デバイスもまた述べられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に封止デバイスに関し、より詳細には、封止されたプラズマ敏感性デバイスに、また封止されたプラズマ敏感性デバイスの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のデバイスは、大気中の酸素および水蒸気など環境の気体または液体、あるいは電子製品の処理で使用される化学薬品が浸透することによって引き起こされる劣化を受ける。これらのデバイスは、通常、劣化を防止するために封止される。
【0003】
様々なタイプの封止デバイスが知られている。たとえば、2001年7月31日に発行された「Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And Method Of Making」という名称の米国特許第6268695号、2003年2月18日に発行された「Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And Method Of Making」という名称の米国特許第6522067号、および2003年5月27日に発行された「Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And Method Of Making」という名称の米国特許第6570325号は、封止された有機発光デバイス(OLED)について述べており、これらのすべてを参照により本明細書に組み込む。2003年6月3日に発行された「Encapsulated Display Devices」という名称の米国特許第6573652号は、封止された液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)、発光ポリマー(LEP)、電気泳動インクを使用する電子サイネージ、エレクトロルミネッセントデバイス(ED)、リン光デバイスについて述べており、これを参照により本明細書に組み込む。2003年4月15日に発行された「Semiconductor Passivation Using Barrier Coatings」という名称の米国特許第6548912号は、集積回路、電荷結合素子、発光ダイオード、発光ポリマー、有機発光デバイス、金属センサパッド、マイクロディスクレーザ、エレクトロクロミックデバイス、フォトクロミックデバイス、微小電子機械システム、太陽電池を含めて、封止されたマイクロ電子デバイスについて述べており、これを参照により本明細書に組み込む。
【0004】
一般に、封止デバイスは、デバイスの片面または両面に隣接してバリアスタックを堆積することによって作製することができる。バリアスタックは、典型的には、少なくとも1つのバリア層と、少なくとも1つのデカップリング層とを含む。1つのデカップリング層と1つのバリア層があることもあれば、1つまたは複数のバリア層の片面に複数のデカップリング層があることもあれば、1つまたは複数のバリア層の両面に1つまたは複数のデカップリング層があることもある。重要な特徴は、バリアスタックが少なくとも1つのデカップリング層と少なくとも1つのバリア層を有することである。
【0005】
封止されたディスプレイデバイスの一実施形態が図1に示されている。この封止されたディスプレイデバイス100は、基板105と、ディスプレイデバイス110と、バリアスタック115とを含む。バリアスタック115は、バリア層120と、デカップリング層125とを含む。バリアスタック115は、ディスプレイデバイス110を封止し、環境の酸素および水蒸気がディスプレイデバイスを劣化させるのを防止する。
【0006】
バリアスタック内の各バリア層および各デカップリング層は、同じ材料製とすることも、異なる材料製とすることもできる。バリア層は、典型的には厚さ約100〜400Åであり、デカップリング層は、典型的には厚さ約1000〜10,000Åである。
【0007】
図1にはバリアスタックが1つだけ示されているが、バリアスタックの数は制限されない。必要とされるバリアスタックの数は、特定の応用例に必要とされる水蒸気および酸素の耐浸透性のレベルによって決まる。1つまたは2つのバリアスタックにより、いくつかの応用例にとって十分な障壁特性が得られるはずである。最も厳しい応用例は、5つ以上のバリアスタックを必要とする可能性がある。
【0008】
バリア層は、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、有機金属化学蒸着(MOCVD)、プラズマ化学蒸着(PECVD)、蒸着、昇華(sublimation)、電子サイクロトロン共鳴プラズマ蒸着(ECR−PECVD)、およびそれらの組合せなど、真空プロセスを使用して堆積することができる。好適なバリア材料は、それだけには限らないが、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸ホウ化物(metal oxyboride)、およびそれらの組合せを含む。
【0009】
デカップリング層は、真空下でのインサイチュ重合を伴うフラッシュ蒸着、またはプラズマ堆積および重合など真空プロセス、あるいはスピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、またはスプレイなど大気中プロセスを使用して堆積することができる。デカップリング層用の好適な材料は、それだけには限らないが、有機ポリマー、無機ポリマー、有機金属ポリマー、有機/無機ハイブリッドポリマー系、ケイ酸を含む。
【0010】
一例として、OLEDは、1つまたは複数のポリマーデカップリング層と、1つまたは複数のバリア層とを含むバリアスタックで封止することができる。ポリマーデカップリング層は、アクリレート機能性前駆体から形成することができ、これらの前駆体は、フラッシュ蒸着を使用して堆積され、紫外線(UV)露光によって重合される。バリア層は、反応性スパッタ形成された酸化アルミニウムとすることができる。
【0011】
多層バリアスタックを、ポリマーフィルムなど比較的不感の基板上で堆積すると、通常、基板に対する損傷が生じない。実際、いくつかの特許は、基板上の多層バリアについて特性を改善するための、プラズマ処理の使用を開示している。米国特許第6083628号は、特性を改善するための手段として、ポリマーフィルム基板、およびフラッシュ蒸着プロセスを使用して堆積されたアクリレートからのポリマー層のプラズマ処理を開示している。同様に、米国特許第5440466号は、特性を改善するための基板およびアクリレート層のプラズマ処理について論じている。
【0012】
しかし、本発明者らは、封止されるいくつかのデバイスが、バリア層および/またはデカップリング層を堆積する際に使用されたプラズマによって損傷を受けていることを発見した。プラズマ損傷は、OLEDなどプラズマ敏感性デバイスが載置された基板が、バリア層またはデカップリング層を堆積するためにプラズマをベースとするプロセスおよび/またはプラズマ支援プロセスが使用される多層バリアスタックで封止されたとき発生した。たとえば、プラズマ損傷は、AlOのバリア層を、障壁特性を達成するのに適した条件下で反応性スパッタ形成するとき、AlOのバリア層をプラズマ敏感性デバイスの上面上にスパッタ形成するとき、および/またはAlOのバリア層を、真空堆積された、アクリレートをベースとするポリマー層上にスパッタ形成するとき発生した。先に堆積されたデカップリング層上にバリア層を堆積するとき観察される損傷は独特なもの(distinct)であり、同時係属の特許出願第60/711136号(VIT0062MA)の主題である。
【0013】
バリア層、デカップリング層、または別の層の堆積に関連するプラズマ損傷は、本質的には、封止に起因する、デバイスの電気特性および/またはルミネッセンスの特性に対する負の影響を有する。これらの作用は、デバイスのタイプ、デバイスの製造者、および放たれる光の波長によって変わることになる。プラズマ損傷は封止しようとするデバイスの設計に依存することに留意することが重要である。たとえば、一部の製造者によって作製されたOLEDは、プラズマ損傷をほとんど、ないし全く示さず、一方、他の製造者によって作製されたOLEDは、同じ堆積条件下で、著しいプラズマ損傷を示す。これは、プラズマ暴露に対するデバイスの敏感性に影響を及ぼす、デバイス内の特徴があることを示唆する。
【0014】
プラズマ損傷を検出するための1つの方法は、指定されたレベルのルミネッセンスを達成するために必要とされる電圧を測定することである。もう1つの方法は、ルミネッセンスの強度を測定することである。プラズマ損傷により、同じレベルのルミネッセンスを達成するための電圧要件が高くなり(典型的には、OLEDについて0.2Vから0.5V高くなる)、かつ/またはルミネッセンスが低くなる。
【0015】
理論に縛られることは望まないが、プラズマを使用するデカップリング層、スパッタ形成されたAlO、またはプラズマを使用する別の層がOLEDまたは他の敏感性デバイス上に直接形成(堆積)されるとき観察されるプラズマ損傷は、荷電化学種または中性化学種、UV放射、および高い熱入力を含めた、プラズマの1つまたは複数の構成要素との有害な相互作用によるものと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、様々なデバイスの封止において、プラズマを使用するプロセスによって引き起こされる損傷を防止する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、封止されたプラズマ敏感性デバイスの作製方法において、基板に隣接してプラズマ敏感性デバイスを設けるステップと、非プラズマベースのプロセス、または修正型スパッタリングプロセスから選択されたプロセスを使用して、プラズマ保護層をプラズマ敏感性デバイス上に堆積するステップと、少なくとも1つのバリアスタックをプラズマ保護層に隣接して堆積するステップであって、その少なくとも1つのバリアスタックが、少なくとも1つのデカップリング層と、少なくとも1つのバリア層とを備え、プラズマ敏感性デバイスが基板と少なくとも1つのバリアスタックとの間で封止され、デカップリング層、バリア層、または両方がプラズマプロセスを使用して堆積され、封止されたプラズマ敏感性デバイスが、プラズマ保護層なしで作製された、封止されたプラズマ敏感性デバイスに比べて、プラズマによって引き起こされる損傷の量が低減されている、ステップとを含む方法を提供することによって、この必要を満たす。
【0018】
本発明の他の態様は、封止されたプラズマ敏感性デバイスである。この封止されたプラズマ敏感性デバイスは、基板と、基板に隣接するプラズマ敏感性デバイスと、非プラズマベースのプロセス、または修正型スパッタリングプロセスから選択されたプロセスを使用して堆積された、プラズマ敏感性デバイス上のプラズマ保護層と、保護層に隣接する少なくとも1つのバリアスタックであって、その少なくとも1つのバリアスタックが、少なくとも1つのデカップリング層と、少なくとも1つのバリア層とを備え、プラズマ敏感性デバイスが基板と少なくとも1つのバリアスタックとの間で封止され、封止されたプラズマ敏感性デバイスが、プラズマ保護層なしで作製された、封止されたプラズマ敏感性デバイスに比べて、プラズマによって引き起こされる損傷の量が低減されている、バリアスタックとを含む。「adjacent(隣接)」により、本発明者らは隣りを意味するが、必ずしも直接隣りを意味するものではない。基板とバリアスタックの間に介在する追加の層があってもよい。「on(上に、上で)」により、本発明者らは、どの介在する層もなしに先の層上に直接堆積されることを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
プラズマ損傷を低減する、または回避するために、層を追加し、下にあるデバイスを(バリア層、デカップリング層、または両方の堆積からの)プラズマに対する暴露から遮蔽することが示されている。
【0020】
1つの方法は、非プラズマベースのプロセスを使用してプラズマ保護層を堆積することを含む。好適な非プラズマベースのプロセスは、真空プロセスと大気中プロセスを共に含む。好適な真空プロセスは、それだけには限らないが、熱蒸着、電子ビーム蒸着、化学蒸着(CVD)および有機金属化学蒸着(MOCVD)、触媒化学蒸着、レーザ熱転写、または蒸着もしくは化学蒸着と、それに続くイオン支援高密度化(ion assisted densification)を含む。好適な大気中プロセスは、それだけには限らないが、スピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スプレイ、グラビア印刷、オフセット印刷、レーザ熱転写を含む。大気中プロセスの場合、作動ガスは、OおよびHOを含有しないものとすべきである。
【0021】
プラズマ保護層は、無機材料および有機材料製とすることができる。好適な無機材料は、それだけには限らないが、LiF、MgF、CaF、SiOなど、ハロゲン化金属を含む。好適な有機材料は、それだけには限らないが、アルミニウムトリ8−8−ヒドロキシキノリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、および同様の多環式芳香族を含む。
【0022】
他の方法は、修正型スパッタリングプロセスを使用してプラズマ保護層を堆積することを含む。修正型スパッタリングプロセスは、それだけには限らないが、修正型反応性スパッタリングプロセスを含む。スパッタリング構成および/またはスパッタリングのプロセス条件を変更することにより、受容表面に対する影響の点で、より低いエネルギーのプロセスを得ることができる。これにより、より広範な無機化合物、たとえばAlOおよびSiOをベースとする層を含むようにプラズマ保護層の範囲が拡張され、これらの化合物は、誘電体であり化学的に不活性であることを含めて、利点を有する。しかし、これらの変更は、堆積された層の物理特性、またあまり大きくないが化学特性に影響を及ぼす。たとえば、密度(気孔率の増大)、応力、粒径が変わる可能性がある。この1つの結果は、下にあるOLEDをプラズマ損傷から遮蔽する能力が実証されているにもかかわらず、障壁特性の損失となる可能性がある。たとえば、AlOの層を、プラズマ損傷を回避する条件下で堆積することができ、封止がバリア層を最初にして設計されているとき、AlOの第2の層をバリア層として堆積することができる。
【0023】
スパッタリングプロセスの1つの修正は、ターゲットカソード(堆積される材料の少なくとも一部のソース)と、スパッタ被覆しようとするデバイスを有する基板との間に配置されたスクリーンの使用を含む。このプロセスの図が、図2に示されている。カソード210はスクリーン215の側にあり、一方、OLED225を有する基板220は他方の側にある。不活性のスパッタリングガス230がカソード側に導入され、スパッタリングプラズマ235もまた、この側にある。反応ガス240が基板/デバイス側で供給される。スクリーン215が存在することにより、反応ガスの、カソード210の表面との反応が低減される。
【0024】
スパッタリングプロセスの他の修正は、軸外しスパッタリングを含む。このプロセスの一実施形態の図が、図3に示されている。スパッタ形成される材料を受ける基板/デバイスは、スパッタリングプラズマから離れた(斜めの)位置に配置される。図3は、「対面ターゲット」または「対面カソード」構成を示す。互いに面する2つのカソード250、255がある。スパッタリングプラズマ260は、2つのカソード250、255間に配置される。基板/デバイス265は、そばに離れて位置し、2つのカソード250、255に対して垂直である。この構成により、カソード250、255から基板/デバイス265への直接経路がなくなる。スパッタリングされる化学種は、複数の衝突の後で初めて基板に到達し、途中で大半のエネルギーを失うことになる。これにより、デカップリング層内でのラジカルの生成が低減される。軸外しスパッタリングプロセスの別の利点は、熱に敏感な基板に対するスパッタ堆積の熱影響の緩和である。すなわち、より低いエネルギーの化学種の直接的でない経路により、受容表面の加熱が少なくなる。同様の堆積方式をもたらす、また使用することができる軸外しスパッタリングの、他の変形形態がある。
【0025】
スパッタリング構成を変更する代わりに、またはそれに加えて、暴露時間またはプラズマのエネルギー/電力を含めて、スパッタリングのためのプロセスパラメータを変えることも可能である。実験結果では、デバイスがプラズマに長く暴露されるほど、プラズマ損傷が大きくなることが示されている。これにより、プラズマ損傷を低減する、またはなくするためにプロセス速度を増大することになった。
【0026】
典型的には、満足のゆくバリア層を堆積するように決定されているスパッタリング構成(カソード、磁石配置、間隔、ガス供給など)の場合、バリア層は、約2000ワットの電力で、約30cm/分のトラック速度で堆積される。1つの修正型プロセスは、トラック速度を約90cm/分(標準的なトラック速度の約3倍)に増大すること、および電力を2500ワットに増大することを含む。トラック速度の増大がより高い電力を相殺し、プラズマに対する暴露全体が減少する。別法として、トラック速度を約20cm/分に低減し、電力を約500ワットに低減することができる。電力削減がより低い速度を相殺し、プラズマに対する暴露が低下する。
【実施例1】
【0027】
2つの製造者によって作製されたOLEDで、電圧シフトおよび光の減少についてテストした。OLEDは、製造者によって、ガラス基板上で供給された。次いでこれらが封止された。第1の層はAlOの厚い層(1000Å)であり、4つのアクリレートポリマー(0.5ミクロン)/AlO(300Å)対がそれに続いた。酸化物層が、スクリーンなしでスパッタ形成された(構成I)。
【0028】
結果が表1に示されている。製造者1によって作製された青色OLEDは、0.5〜0.8Vの電圧シフトと、あまり大きくない光の減少を示した。製造者3によって作製された緑色OLEDは、1Vの電圧シフトと、強い光の減少を示した。
【0029】
スクリーンを用いて酸化物層をスパッタ形成することによって封止されたOLEDに関する電圧シフトおよび光の減少が測定された(構成II)。これらのOLEDは、AlOの第1の厚い層(1000Å)と、それに続く4つまたは6つのアクリレートポリマー(0.5ミクロン)/AlO(300Å)対で封止された。これらのOLEDは、30cm/分の標準的なトラック速度、および2000ワットの標準的な電力で処理された。
【0030】
結果が表1に示されている。異なる製造者からのOLEDは、様々な量の電圧シフトおよび光の減少を示した。さらに、同じ製造者からの異なる色のOLEDは、異なる量の電圧シフトおよび光の減少を示した。これにより、異なる製造者からのOLEDに関して、また異なる色のOLEDに関してプラズマ損傷の変動があることが確認される。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
いくつかの封止されたOLEDが、LiFの300Åのプラズマ保護層を用いて作製された。LiFは、熱蒸着プロセスを使用して堆積された。これらのOLEDは、AlOの厚い層(1000Å)と、それに続く4つまたは6つのアクリレートポリマー(0.5ミクロン)/AlO(300Å)対を有していた。
【0033】
これらのOLEDで、電圧シフト、漏れ電流、および消灯についてテストした。比較のために、いくつかのOLEDが、LiF保護層なしで作製された。結果は、図4〜6および表2に示されている。LiF保護層により、厚いバリア層のスパッタリング堆積中に、プラズマに対する暴露によって引き起こされる電圧シフトがなくなった。
【0034】
図7は、LiFの様々な厚さに関する電圧シフトを示す。LiFの層がOLED上に堆積され、バリア層としてAlOの層がそれに続いた。それらの結果は、電圧シフトをなくするために、少なくとも約300Åの厚さが必要とされる可能性があることを示唆している。
【0035】
【表2】

【実施例3】
【0036】
電圧シフトに対するプロセスパラメータの作用が評価された。表3は、プラズマ損傷に対する暴露時間の作用の比較を示す。修正された条件は、トラック速度を90cm/分(標準的なトラック速度の約3倍)に増大すること、および電力を2500ワットに増大すること、ならびにトラック速度を20cm/分に、かつ電力を500ワットに低減することを含んでいた。構成IIと、バリアのための標準的なスパッタリング条件(2000ワットの電力、30cm/分のトラック速度)を使用して作製されたOLEDの電圧シフトおよび光の減少が、比較のために含まれる。電圧シフトおよび光の減少は、暴露時間が低減されたとき低減される、またはなくなる。
【0037】
図8は、放電ファクタ(discharge factor)の関数としての電圧シフトを示す。放電ファクタは、ポリマー、OLEDなど、受容表面の、スパッタリングプラズマ内に存在する反応性化学種に対する暴露を定量化するための手法である。放電ファクタは照射線量(エネルギー/面積)に関連し、照射時間に放電電力を乗ずることによって計算される。電圧シフトは、図8で示されているように、増大する放電ファクタと共に増大した。比較可能な電圧シフトを、異なる堆積条件、たとえば電力またはトラック速度の下で得ることができる。支配的な要因は暴露時間であり、電力は影響がより少ない。これは、暴露時間を低減することにより電圧シフトが減少するはずであることを示唆する。
【0038】
また、電圧シフトが、酸化アルミニウム保護層の厚さの関数として測定された。プロセス条件を変更することにより(トラック速度を90cm/分(標準的なトラック速度の約3倍)に増大すること、および電力を2500ワットに増大すること、ならびにトラック速度を20cm/分に、かつ電力を500ワットに低減すること)、酸化アルミニウム保護層の厚さが変わった。図9に示されているように、約100Åの最小の厚さがあり、それを超えると、それ以上の電圧シフトは、プラズマプロセスによって引き起こされない。
【0039】
【表3】

【0040】
いくつかの代表的な実施形態および詳細が本発明を例示するために示されているが、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなしに、本明細書に開示されている組成および方法に様々な変更を加えることができることが、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】封止されたディスプレイデバイスの一実施形態の一部分の横断面図である。
【図2】本発明による修正型スパッタリングプロセスの一実施形態の図である。
【図3】本発明による修正型スパッタリングプロセスの他の実施形態の図である。
【図4】プラズマ保護層のある電圧シフトとプラズマ保護層のない電圧シフトとの比較を示すグラフである。
【図5】プラズマ保護層のある漏れ電流とプラズマ保護層のない漏れ電流との比較を示すグラフである。
【図6】プラズマ保護層のある光出力とプラズマ保護層のない光出力との比較を示すグラフである。
【図7】熱蒸着を使用して堆積されたプラズマ保護層の厚さの関数として電圧シフトを示すグラフである。
【図8】DF(照射時間×放電電力)の関数として電圧シフトを示すグラフである。
【図9】修正型スパッタリングプロセスを使用して堆積されたプラズマ保護層の厚さの関数として電圧シフトを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止されたプラズマ敏感性デバイスの作製方法において、
基板に隣接してプラズマ敏感性デバイスを設けるステップと、
非プラズマベースのプロセス、または修正型スパッタリングプロセスから選択されたプロセスを使用して、プラズマ保護層を前記プラズマ敏感性デバイス上に堆積するステップと、
少なくとも1つのバリアスタックを前記プラズマ保護層に隣接して堆積するステップであって、前記少なくとも1つのバリアスタックが、少なくとも1つのデカップリング層と、少なくとも1つのバリア層とを備え、前記プラズマ敏感性デバイスが前記基板と前記少なくとも1つのバリアスタックとの間で封止され、前記デカップリング層、前記バリア層、または両方がプラズマプロセスを使用して堆積され、前記封止されたプラズマ敏感性デバイスが、前記プラズマ保護層なしで作製された、封止されたプラズマ敏感性デバイスに比べて、プラズマによって引き起こされる損傷の量が低減されている、ステップとを含む方法。
【請求項2】
前記プラズマ保護層が前記非プラズマベースのプロセスを使用して堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非プラズマベースのプロセスが、真空下で実施されるプロセスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非プラズマベースのプロセスが、熱蒸着、電子ビーム蒸着、化学蒸着、有機金属化学蒸着、触媒化学蒸着、レーザ熱転写、蒸着もしくは化学蒸着とそれに続くイオン高密度化、またはそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記非プラズマベースのプロセスが、大気圧で実施されるプロセスである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記非プラズマベースのプロセスが、スピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スプレイ、グラビア印刷、オフセット印刷、レーザ熱転写、またはそれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマ保護層が無機コーティングである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記無機コーティングが、LiF、MgF、CaF、またはそれらの組合せから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマ保護層が有機コーティングである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記有機コーティングが、アルミニウムトリ8−ヒドロキシキノリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、多環式芳香族、またはそれらの組合せから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プラズマ保護層が、前記修正型スパッタリングプロセスを使用して堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記修正が、ターゲットカソードと前記プラズマ敏感性デバイスの間にスクリーンを設けるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記修正が、軸外しスパッタリングを適用するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記修正が、前記プラズマ敏感性デバイスの、プラズマに対する暴露の時間を低減するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記修正が、プラズマのエネルギーを低減するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマ保護層が、AlO、SiO、またはそれらの組合せから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記プラズマ保護層がバリア層でない、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記修正型スパッタリングプロセスが、修正型反応性スパッタリングプロセスを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法によって生産された製品。
【請求項20】
請求項2に記載の方法によって生産された製品。
【請求項21】
請求項11に記載の方法によって生産された製品。
【請求項22】
基板と、
基板に隣接するプラズマ敏感性デバイスと、
非プラズマベースのプロセス、または修正型スパッタリングプロセスから選択されたプロセスを使用して堆積された、前記プラズマ敏感性デバイス上のプラズマ保護層と、
前記プラズマ保護層に隣接する少なくとも1つのバリアスタックであって、前記少なくとも1つのバリアスタックが、少なくとも1つのデカップリング層と、少なくとも1つのバリア層とを備え、前記プラズマ敏感性デバイスが前記基板と前記少なくとも1つのバリアスタックとの間で封止され、封止されたプラズマ敏感性デバイスが、前記プラズマ保護層なしで作製された、封止されたプラズマ敏感性デバイスに比べて、プラズマによって引き起こされる損傷の量が低減されている、バリアスタックとを備える、封止されたプラズマ敏感性デバイス。
【請求項23】
前記プラズマ保護層が無機コーティングである、請求項22に記載の封止されたプラズマ敏感性デバイス。
【請求項24】
前記無機コーティングが、LiF、MgF2、CaF2、AlO、SiO、またはそれらの組合せから選択される、請求項23に記載の封止されたプラズマ敏感性デバイス。
【請求項25】
前記プラズマ保護層が有機コーティングである、請求項22に記載の封止されたプラズマ敏感性デバイス。
【請求項26】
前記有機コーティングが、アルミニウムトリ8−ヒドロキシキノリン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、多環式芳香族、またはそれらの組合せから選択される、請求項25に記載の封止されたプラズマ敏感性デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−538504(P2009−538504A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512014(P2009−512014)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/010068
【国際公開番号】WO2007/139643
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(504122295)ヴィテックス・システムズ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】