説明

封止用基板及びその封止用基板を用いた有機ELパネルの製造方法

【課題】 有機ELパネルの電気的接続の信頼性を向上させ、また、有機ELパネルの製造工程を簡素化させることが可能な封止用基板及び有機ELパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】 封止用基板10は、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極間により挟持してなる複数の有機EL素子が形成される支持基板と接着され前記有機EL素子を封止する。個々の前記有機EL素子に対応する個々の封止基板を連結し前記支持基板との接着後に切断除去される連結部(第二の凹部)10bを含み、前記連結部10bの前記支持基板との対向面に少なくとも切断個所に位置するように柔軟性を有するコーティング層11を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透光性の一対の電極により挟持され所定の発光をなす有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を封止するための封止用基板及びその封止用基板を用いた有機ELパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ELパネルとしては、ガラス材料からなる支持基板上に、ITO(Indium Tin Oxide)等によって陽極となる透明電極と、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層からなる有機層と、陰極となるアルミニウム(Al)等の非透光性の背面電極とを順次積層して積層体である有機EL素子を形成し、この有機EL素子を覆うガラス材料からなる封止部材を支持基板上に配設してなるものが知られている。このような有機ELパネルは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
また有機ELパネル1は、前記両電極を外部電源と電気的に接続するべく、前記両電極からそれぞれ延長形成された引き出し部を前記支持基板上に形成し、この引き出し部が前記封止部材から露出するように構成されている。
【0004】
かかる有機ELパネルの製造方法として、本願出願人は特許文献2において、透光性の支持基板上に、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により挟持してなる有機EL素子を複数個所に形成する有機EL素子形成工程と、前記有機EL素子の数に応じた第一,第二の凹部を備える封止基板を用意し、前記有機EL素子と前記第一の凹部とが対向し、前記電極と電気的に接続された引き出し部と前記第二の凹部とが対向するように前記支持基板上に前記封止基板を配設するとともに、前記支持基板と前記封止基板とを接着する有機EL素子封止工程と、前記支持基板及び前記封止基板の所定個所を切断し、個々の有機ELパネルを得る第一切断工程と、前記第二の凹部に対応する個所を切断し前記引き出し部を露出させる第二切断工程と、を含む有機ELパネルの製造方法を提案している。
【0005】
かかる製造方法によれば、個々の封止部材を有機EL素子に合わせて配設する方法に比べ、連結部である前記第二の凹部に対応する個所を切断するといった簡単な製造方法によって、前記引き出し部の端部が外部に露出する有機ELパネル1を得ることが可能となる。また、いわゆるマルチ取りの大型の基板からの切断工程のみで個々の有機ELパネル1を得ることができることから生産性を向上させるとともに、製造コストを低減させることが可能となる。
【特許文献1】特開2001−267066号公報
【特許文献2】特開2001−297878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記連結部である前記第二の凹部を切断する第二切断工程において、前記第二の凹部の切断個所は前記支持基板と接着されない個所であるため、前記第二の凹部を切断する際に微細なガラス破片が前記引き出し部に付着し、電気的接続に障害が生じるおそれがあり、有機ELパネルの電気的接続の信頼性の面で改善の余地があった。また、前記ガラス破片は、洗浄工程等によって取り除くことが可能であるものの、洗浄工程を必要とすることから製造工程を煩雑にしてしまい、製造工程の簡素化の点で改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、前述した問題点に着目し、有機ELパネルの電気的接続の信頼性を向上させ、また、有機ELパネルの製造工程を簡素化させることが可能な封止用基板及び有機ELパネルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の封止用基板は、前記課題を解決するため、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極間により挟持してなる複数の有機EL素子が形成される支持基板と接着され前記有機EL素子を封止する封止用基板であって、個々の前記有機EL素子に対応する個々の封止基板を連結し前記支持基板との接着後に切断除去される連結部を含み、前記連結部の前記支持基板との対向面に少なくとも切断個所に位置するように柔軟性を有するコーティング層を形成してなることを特徴とする。
【0009】
また、前記コーティング層は、粘着性を有する材料からなることを特徴とする。
【0010】
また、前記連結部は、前記支持基板に形成され前記電極と接続される引き出し部と対向することを特徴とする。
【0011】
また、前記有機EL素子と対向する前記封止基板となる第一の凹部と、前記支持基板に形成され前記電極と接続される引き出し部と対向する前記連結部である第二の凹部と、を有してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の有機ELパネルの製造方法は、前記課題を解決するため、支持基板上に、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により挟持してなる有機EL素子を複数個所に形成する有機EL素子形成工程と、個々の前記有機EL素子に対応する個々の封止基板を連結部によって連なるように形成した封止用基板を用意し、前記連結部における前記支持基板との対向面の少なくとも切断個所に柔軟性を有するコーティング層を形成するコーティング層形成工程と、前記電極と接続された引き出し部と前記連結部とが対向するように前記支持基板上に前記封止用基板を配設するとともに、前記支持基板と前記封止用基板とを接着する有機EL素子封止工程と、前記支持基板及び前記封止用基板の所定個所を切断し、個々の有機ELパネルを得る第一の切断工程と、前記連結部に対応する個所を切断し前記引き出し部を露出させる第二の切断工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記コーティング層は、粘着性を有する材料からなることを特徴とする請求項5に記載の有機ELパネルの製造方法。
【0014】
また、前記封止用基板は、前記有機EL素子と対向する前記封止基板となる第一の凹部と、前記引き出し部と対向する前記連結部である第二の凹部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、少なくとも一方が透光性の一対の電極により挟持され所定の発光をなす有機EL素子を封止するための封止用基板及びその封止用基板を用いた有機ELパネルの製造方法に関するものであり、有機ELパネルの電気的接続の信頼性を向上させ、また、有機ELパネルの製造工程を簡素化させることが可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき説明するが、従来例と同一もしくは相当個所には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0017】
図1において、有機ELパネル1は、ガラス基板2,透明電極3,絶縁層4,有機層5,背面電極6及び封止部材(封止基板)7から主に構成されている。
【0018】
ガラス基板2は、長方形形状からなる透光性の平板部材である。
【0019】
透明電極3は、ガラス基板2上にITO等の導電性材料によって構成され、日の字型の表示セグメント部3aと、個々のセグメントからそれぞれ引き出し形成されたリード部3bと、リード部3bの終端部に設けられる端子部(引き出し部)3cとを備えている。端子部3cは、ガラス基板2の一辺に集中的に配設される。
【0020】
絶縁層4は、ポリイミド系等の絶縁材料からなり、表示セグメント部3aに対応した窓部4aと、背面電極5の後述する端子部に対応する切り欠き部4bとを有し、発光領域の輪郭を鮮明に表示するため、透明電極3の表示セグメント部3aの周縁部と若干重なるように窓部4aが形成され、また、透明電極3と背面電極6との絶縁を確保するためにリード部3b上を覆うように配設される。
【0021】
有機層5は、少なくとも発光層を有するものであれば良いが、本発明の実施の形態においては正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層を順次積層形成してなるものである。有機層5は、絶縁層4における窓部4aの形成個所に所定の大きさをもって配設される。
【0022】
背面電極6は、アルミ等の非透光性の導電性材料から構成され、有機層5上に配設される。背面電極6は、透明電極3における各端子部3cが形成されるガラス基板2の一辺に設けられるリード部6aと電気的に接続される。尚、リード部6aの終端部には、端子部(引き出し部)6bが設けられ、リード部6a及び端子部6bは透明電極3と同材料により形成される。
【0023】
封止部材7は、透明電極3,絶縁層4,有機層5及び背面電極6からなる有機EL素子8を収納するための凹部形状の収納部7aを有し、透明電極3の端子部3c及び背面電極5の端子部6bが露出するようにガラス基板2よりも若干小さ目に構成されている。封止部材7は、ガラス基板2上に紫外線硬化型の接着剤9によって気密的に配設される。また、封止部材7は、後で詳述する封止用基板を個々に切断して得られるものである。また、封止部材7は、収納部7a内に水分を吸着する吸湿作用を有する吸湿剤(図示しない)が配設されている。
【0024】
以上の各部によって有機ELパネル1が構成される。
【0025】
次に、封止用基板10について説明する。
【0026】
封止用基板10は、図2に示すように、サンドブラスト法,切削及びエッチング法等の手段により、有機EL素子8の大きさに対応し収納部7aを有する封止部材7となる第一の凹部10aと、第一の凹部10aと同等な方法により形成され、透明電極3及び背面電極5の各端子部3c,6bの形成領域の大きさに対応する第二の凹部10bとを備えるものである。また、封止用基板10は、後述する有機ELパネルの製造工程において連結部として切断除去される第二の凹部10bの後述する支持基板との対向面にアクリル系あるいはシリコーン系樹脂材料等の柔軟性を有するコーティング層11が塗布されている。なお、コーティング層11の形成個所は少なくとも第二の凹部10bの切断個所に対応する個所であればよい。また、コーティング層11としては柔軟性に加えてさらに粘着性を有する材料によって形成されることが望ましい。
【0027】
次に、封止用基板10を用いた有機ELパネル1の製造方法を説明する。なお、図3において、絶縁層4は省略し図示しないものとする。
【0028】
先ず、透明電極3,絶縁層4,有機層5及び背面電極6からなる有機EL素子8を、ガラス基板2となる支持基板12上の複数個所にスパッタリング法や蒸着法等の手段により形成する(有機EL素子形成工程,図3(a)参照)。
【0029】
そして、第一,第二の凹部10a,10bを備えた封止用基板10を用意し、第二の凹部10bの支持基板12との対向面にコーティング層11を塗布形成する(コーティング層形成工程,図3(b)参照)。
【0030】
次に、封止用基板10における支持基板12との接着面に接着剤9を塗布し、第一の凹部10aが有機EL素子8に対応し、また第二の凹部10bが端子部3c,6bに対応するように、封止用基板10を支持基板12上に接着固定することで有機ELパネル1を複数有するマルチ基板が得られる(有機EL素子封止工程,図3(c)参照)。
【0031】
次に、第二の凹部10bに対応する個所の封止用基板10の表面と、有機ELパネル1の区画領域に応じた支持基板12及び封止用基板10の表面とに、スクライバによって切断溝13を形成する(図3(c)参照)。
【0032】
次に、前記マルチ基板において、第二の凹部10bにおける外側に位置する切断溝13と、有機ELパネル1の区画領域に応じた切断溝13との形成位置を切断し、マルチ基板24を個々の有機ELパネル1に分割する(第一の切断工程,図3(d)参照)。
【0033】
前述した第一の切断工程により個々に分割された有機ELパネル1は、第二の凹部10bの形成個所において、第二の凹部10bの底面部10cが片持ち状態にて存在する構成であるため、第二の凹部10bにおける内側に位置する切断溝13の形成位置を切断して底面部10cを除去して各端子部3c,6bが露出する有機ELパネル1が得られる(第二の切断工程,図3(e)参照)。
【0034】
このとき、第一,第二の切断工程において、封止用基板10の第二の凹部10bに対応する個所を切断する際には、第二の凹部10bに柔軟性を有するコーティング層11が塗布されているため、封止用基板10の切断によって生じるガラス破片はコーティング層11によって保持され、支持基板12に形成される各端子部3c,6bに付着することを抑制することができる。
【0035】
したがって、かかる封止用基板10及び封止用基板10を用いた有機ELパネル1の製造方法は、支持基板12との接着後に切断除去される前記連結部である第二の凹部10bの支持基板12との対向面に少なくとも切断個所に位置するように柔軟性を有するコーティング層11を形成することによって、封止部材7から露出する端子部3c,6bにガラス破片に起因する接続障害あるいは傷を生じさせることを抑制し、有機ELパネル1の電気的接続の信頼性を向上させることが可能となる。また、ガラス破片を除去するための洗浄工程が不要となるため、有機ELパネルの製造工程を簡素化することが可能となる。
【0036】
なお、本発明の実施の形態では、日の字型の表示形態を例に挙げているが、例えばドットマトリクス型の有機EL素子を備える有機ELパネルの製造方法であっても有効であり、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。また、封止用基板10は、第一,第二の凹部10a,10bを有するものであったが、封止用基板の形状は任意に変更可能である。図4は、封止用基板10の別例を示しており、第二の凹部10bが、端子部3c,6bとの対向面から延設される支持部10dによって分割される構成となっている。支持部10dを設けることによって前記第二の切断工程において除去される底面部10cが端子部3c,6bに落下することを防止することができる。また、本発明は、凹部を備えない平板状の封止用基板及びその封止基板を用いた有機ELパネルの製造方法であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態における有機ELパネルを示す斜視図。
【図2】同上実施の形態における封止用基板を示す断面図。
【図3】同上実施の形態における有機ELパネルの製造方法を示す図。
【図4】本発明の実施の形態における有機ELパネルの別例を示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 有機ELパネル
2 ガラス基板
3 透明電極
5 有機層
6 背面電極
7 封止部材(封止基板)
3c,6b 端子部(引き出し部)
8 有機EL素子
9 接着剤
10 封止用基板
10a 第一の凹部
10b 第二の凹部(連結部)
11 コーティング層
12 支持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極間により挟持してなる複数の有機EL素子が形成される支持基板と接着され前記有機EL素子を封止する封止用基板であって、
個々の前記有機EL素子に対応する個々の封止基板を連結し前記支持基板との接着後に切断除去される連結部を含み、前記連結部の前記支持基板との対向面に少なくとも切断個所に位置するように柔軟性を有するコーティング層を形成してなることを特徴とする封止用基板。
【請求項2】
前記コーティング層は、粘着性を有する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の封止用基板。
【請求項3】
前記連結部は、前記支持基板に形成され前記電極と接続される引き出し部と対向することを特徴とする請求項1に記載の封止用基板。
【請求項4】
前記有機EL素子と対向する前記封止基板となる第一の凹部と、前記支持基板に形成され前記電極と接続される引き出し部と対向する前記連結部である第二の凹部と、を有してなることを特徴とする請求項1に記載の封止用基板。
【請求項5】
支持基板上に、少なくとも発光層を含む有機層を一対の電極により挟持してなる有機EL素子を複数個所に形成する有機EL素子形成工程と、
個々の前記有機EL素子に対応する個々の封止基板を連結部によって連なるように形成した封止用基板を用意し、前記連結部における前記支持基板との対向面の少なくとも切断個所に柔軟性を有するコーティング層を形成するコーティング層形成工程と、
前記電極と接続された引き出し部と前記連結部とが対向するように前記支持基板上に前記封止用基板を配設するとともに、前記支持基板と前記封止用基板とを接着する有機EL素子封止工程と、
前記支持基板及び前記封止用基板の所定個所を切断し、個々の有機ELパネルを得る第一の切断工程と、
前記連結部に対応する個所を切断し前記引き出し部を露出させる第二の切断工程と、を少なくとも含むことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング層は、粘着性を有する材料からなることを特徴とする請求項5に記載の有機ELパネルの製造方法。
【請求項7】
前記封止用基板は、前記有機EL素子と対向する前記封止基板となる第一の凹部と、前記引き出し部と対向する前記連結部である第二の凹部と、を有することを特徴とする請求項5に記載の有機ELパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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