説明

封止用部材およびそれを備える電子機器

【課題】 筺体内部へ挿入される挿入部材に装着可能であると共に、挿入部材に悪影響を与えにくい封止用部材を提供すること。
【解決手段】
筺体2,3の開口部に挿入される挿入部材5を挟持する弾性部材11a,11bを有し、弾性部材11a,11bは、筺体2,3に対し吸着する、または、弾性部材11a,11bと挿入部材5とが密着状態を保つように、挿入部材5との間若しくは弾性部材11a,11b同士で吸着する吸盤部を有する封止用部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用部材およびそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯情報端末(PDA)などの電子機器には、筺体に形成された開口部からフレキシブル基板等の挿入部材を挿通させる場合がある。かかる場合にその開口部から筺体内に異物が侵入しないように、その開口部と挿入部材との間に封止用部材を設ける場合がある。
【0003】
たとえば、封止用部材としては、開口部と挿入部材との間隙に液状のゴムを充填してなるものが知られている(特許文献1を参照)。また、封止用部材と挿入部材との密着性を向上させるために、挿入部材と封止用部材とを一体成型されたものも知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報WO2003/085793
【特許文献2】特開2005−348341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1あるいは特許文献2に記載の封止用部材では、挿入部材と封止用部材とを一体成型しているため、その一体成型の際に加えられる熱および圧力等により、挿入部材が破損あるいは変形等するという問題がある。たとえば、挿入部材としてフレキシブル基板等を用いる場合、一体成型の際に加えられる熱および圧力等により、フレキシブル基板に内包されている導線の断線を招く危険性がある。
【0006】
また、特許文献1あるいは特許文献2に記載の封止用部材では、挿入部材と封止用部材とが固着しているため、挿入部材に加えられた張力により、挿入部材と封止用部材との固着部分にストレスが生じ、破損等する危険性がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであって、筺体内部へ挿入される挿入部材に装着可能であると共に、挿入部材に悪影響を与えにくい封止用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の封止用部材は、筺体の開口部に挿入される挿入部材を挟持する弾性部材を有し、弾性部材は、筺体に対し吸着する、または、弾性部材と挿入部材とが密着状態を保つように、挿入部材との間若しくは弾性部材同士で吸着する、吸盤部を有する。
【0009】
また、吸盤部の吸着面側には、内側にへこむ凹部を有し、吸盤部は、弾性変形により凹部内方に形成された空間における気圧が、その外部との気圧に対し低くなることで吸着できるものであるのが好ましい。
【0010】
さらに、吸盤部の少なくとも一部は、弾性部材の筺体と接する部分に設けられているのが好ましい場合もある。
【0011】
さらに、弾性部材には、弾性部材よりも弾性力が小さいバネ部材が埋設されていてもよい。
【0012】
また、別の発明の電子機器の実施の形態では、筺体に設けられた開口部から挿入される挿入部材と、挿入部材を挟持する弾性部材を有し、かつ、開口部を封止する封止用部材と、を有し、弾性部材は、筺体に対し吸着する、または、弾性部材と挿入部材とが密着状態を保つように、挿入部材との間若しくは弾性部材同士で吸着する吸盤部を有するものとしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筺体内部へ挿入される挿入部材に装着可能であると共に、挿入部材に悪影響を与えにくい封止用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る封止用部材を備える電子機器としての携帯電話の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す携帯電話が折り畳まれた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る封止用部材が装着された挿入部材を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3の封止用部材について、Aで示す領域を拡大して示す斜視図である。
【図5】図5は、図4の封止用部材を挿入部材に装着した場合に挿入部材に接する面側から、弾性部材を見た場合の斜視図である。
【図6】図6は、図4の封止用部材をB−B線に沿って切断した場合の断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の変形例に係る封止用部材について、図6と同様の断面で示す断面図である。
【図8】図8は、本発明のさらなる別の変形例に係る封止用部材について、図6と同様の断面で示す断面図である。
【図9】図9は、本発明のさらなる別の変形例に係る封止用部材について、挿入部材の挿入方向から見た場合の正面図である。
【図10】図10は、図9の封止用部材を挿入部材の方向に加圧した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態に係る電子機器および封止用部材について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
1.電子機器の構成
図1は、本発明の実施の形態に係る封止用部材10を備える電子機器としての携帯電話1の斜視図である。なお、図1においては、携帯電話1に備えられる挿入部材5および封止用部材10を点線にて示している。
【0017】
携帯電話1は、第1の筺体2および第2の筺体3を有している。携帯電話1は、第1の筺体2と第2の筺体3とを連結部4により連結する。挿入部材5は、一端側が第1の筺体2に設けられた開口部を通って、第1の筺体2の内部に挿入され、他端側が第2の筺体3に設けられた開口部を通って、第2の筺体3の内部に挿入されている。また、挿入部材5は、連結部4の内部を通って、第1の筺体2の内部に位置する基板と第2の筺体3に位置する基板とにそれぞれ接続されている。挿入部材5は、第1の筺体2側と第2の筺体3側とにそれぞれ封止用部材10を装着している。
【0018】
封止用部材10は、第1の筺体2に設けられた開口部および第2の筺体3に設けられた開口部を塞ぐように装着されている。また、封止用部材10は、第1の筺体2または第2の筺体3に挿入した状態において、その内壁から封止用部材10を互いに押し付ける方向への挟圧力が付与されている。そのため、封止用部材10は、挿入部材5を挟持した状態で保持されると共に、第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内壁と封止用部材10との間および封止用部材10と挿入部材5との間に隙間が生じないように開口部を封止できる。
【0019】
図2は、図1に示す携帯電話1が折り畳まれた状態を示す斜視図である。なお、図2においては、携帯電話1に備えられる挿入部材5および封止用部材10を点線にて示している。
【0020】
携帯電話1は、第1の筺体2と第2の筺体3とが連結部4により回動可能に連結された、いわゆる折り畳みタイプの携帯電話として構成されている。したがって、挿入部材5は、携帯電話1の折り畳みにより、連結部4にて折れ曲げられたり、長さ方向に張力が加えられたりする。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態に係る封止用部材10が装着された挿入部材5を示す斜視図である。
【0022】
挿入部材5としては、たとえば、フレキシブルプリント回路基板(FPC)を用いることができる。FPCは、携帯電話1の折り畳み動作に追従できるような柔軟な配線資材となることから、第1の筺体2および第2の筺体3を連動させるために用いられる。本実施の形態では、挿入部材5は、帯状のFPCであって、その両端部に、コネクタ6をそれぞれ備える。封止用部材10が挿入部材5を挟むように装着されると、挿入部材5は、封止用部材10に挿通された状態となる。
【0023】
2.封止用部材の構成
(第1の実施の形態)
図4は、図3の封止用部材10について、Aで示す領域を拡大して示す斜視図である。
【0024】
封止部材10は、挿入部材5を挿入するために第1の筺体2および第2の筺体3に設けられた開口部を封止し、第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内部に水、埃あるいはその他の異物の侵入を防ぐ部材である。封止用部材10は、主に弾性部材11aおよび弾性部材11bにより構成されている。本実施の形態では、弾性部材11aおよび弾性部材11bは、同じ形態を有するため、以後、弾性部材11aまたは弾性部材11bのいずれか一方を指す場合は、弾性部材11という。弾性部材11は、挿入部材5を挟むようにして挿入部材5に対して着脱可能な部材である。
【0025】
図5は、図4の封止用部材10を挿入部材5に装着した場合に挿入部材5に接する面側から、弾性部材11を見た場合の斜視図である。
【0026】
弾性部材11は、弾性変形可能な弾性体から構成される椀状の部材であり、挿入部材5に接する方の面に、弾性部材11の内側にへこむ凹部13と、凹部13の外周部分の外縁12とを有する。外縁12は、挿入部材5に装着された際に、挿入部材5および他方の弾性部材11と密着する部分である。弾性部材11の外縁12および凹部13のへこんでいる面は、弾性部材11の弾性変形により吸盤部として機能する。
【0027】
なお、外縁12のうち、挿入部材5と接触しない部分は、挿入部材5と接触する部分よりも、挿入部材5側に突出しているのが好ましい。このことは、外縁12のうち、挿入部材5と接する領域が、それ以外の領域よりも内側にへこんでいることを意味する。
【0028】
弾性部材11は、好適には、柔軟な樹脂若しくはエラストマーから成る。弾性部材11を柔軟な樹脂若しくはエラストマーから構成することにより、弾性部材11は、第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内面と挿入部材5との隙間を埋めるように容易に変形できる。このため、封止効果を高めることができる。弾性部材11は、たとえば、ショアA硬度が5〜70度のウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等から主に形成されるのが好ましい。それらの中でも、耐久性が高いシリコーンゴムあるいはそれらの複合品を用いるのがより好ましい。
【0029】
弾性部材11の大きさおよび形状は、使用する弾性体の硬度により適宜決定されるが、例えば、弾性部材11aと弾性部材11bとを挿入部材5に装着した状態の大きさは、縦1〜3mm、横1〜10mmの楕円体とすることができる。弾性部材11の一辺が1mm以下の場合には、弾性部材11が第1の筺体2および第2の筺体3と接し、第1の筺体2あるいは第2の筺体3により圧縮および固定された際に、弾性部材11が容易に変形し、各筐体の寸法のばらつきを吸収できる。そのため、弾性部材11と、第1の筺体2および第2の筺体3との間に隙間が生じにくい。また、弾性部材11の最も長い辺の長さが5mm以下の場合には、長期間の使用においても、弾性部材11の弾性力の低下によるシール性能の低下、あるいは弾性部材11自体が変形することによるシール性能の低下の影響を小さくできる。さらに、弾性部材11の最も長い辺を5mm以内とすることで、第1の筺体2および第2の筺体3により弾性部材11が圧縮および固定された際に弾性部材11に加えられた圧縮荷重が大きくなりすぎないため、第1の筺体2あるいは第2の筺体3が変形あるいは破損しにくくなる。また、弾性部材11の硬度を調節すると、弾性部材11と、挿入部材5との密着性あるいは弾性部材11と第1の筺体2もしくは第2の筺体3との密着性を高め、かつ、弾性部材11の寸法精度を確保できる。
【0030】
図6は、図4の封止用部材10をB−B線に沿って切断した場合の断面図である。
【0031】
弾性部材11が挿入部材5に装着される際には、弾性部材11の外縁12は、挿入部材5および他方の外縁12と密着する。また、弾性部材11を装着する際には、挿入部材5方向に押付ける力が加えられるため、弾性部材11が弾性変形し、凹部13の形がつぶれた状態になる。装着後、ユーザが押し付ける力を解放すると、弾性部材11は、その弾性により元の形状(凹部13により形成された空間がより大きくなろうとする方向)に復元しようとする。そのため、凹部13により形成された空間は、外部よりも気圧の低い状態になり、弾性部材11の外側の大気圧との差が生じるため、弾性部材11は、挿入部材5および他方の弾性部材11に対して吸着状態となる。
【0032】
上述のような構成の封止用部材10では、封止用部材10を挿入部材5に装着する際に熱あるいは圧力を加える、または、放射線等を照射する必要がない。このため、熱、圧力あるいは放射線等により挿入部材5が破損あるいは変形することがない。また、封止用部材10では、挿入部材5と封止用部材10とが固着していないため、挿入部材5への張力により、挿入部材5と封止用部材10との固着部分にストレスが生じにくく、挿入部材5の破損等を防ぐことができる。
【0033】
また、上述のような封止用部材10を備える携帯電話1では、携帯電話1の内部に水や埃等の異物が侵入するのを防ぐことができる。なぜなら、携帯電話1の第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内壁と挿入部材5との隙間を封止用部材10が封止しているからである。特に、封止用部材10の弾性部材11は、携帯電話1の第1の筺体2あるいは第2の筺体3の内壁と封止用部材10との隙間を封止できる。また、弾性部材11は、封止用部材10と挿入部材5との隙間をも封止できる。
【0034】
さらに、上述のような封止用部材10では、弾性部材11が吸着盤としても機能し、他方の弾性部材11と吸着する。そのため、弾性部材11aと弾性部材11bとは、閉じられた状態を維持できる。したがって、弾性部材11aと弾性部材11bとが挿入部材5を挟持した状態において、弾性部材11と挿入部材5との間、または、弾性部材11aと弾性部材11bとの間から、携帯電話1の内部に水や埃等の異物が侵入するのを防ぐことができる。また、上述のような封止用部材10では、弾性部材11の吸着により、封止用部材10は、挿入部材5から脱落しにくい。特に、第1の筺体2あるいは第2の筺体3が変形あるいは分解された場合にも、封止用部材10は、単独で挿入部材5に装着された状態を保つことができる。
【0035】
さらに、上述のような封止用部材10では、挿入部材5を挟持する場合には、挿入部材5を長手方向に挿入する必要がない。したがって、挿入部材5がコネクタ6等を有する場合であっても、封止用部材10を挿入部材5に装着しやすい。
【0036】
3.その他の実施の形態
以上、本発明の実施の形態に係る封止用部材10およびそれを備える携帯電話1について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0037】
上述の実施の形態では、電子機器として携帯電話1を例示したが、携帯電話以外の電子機器に封止用部材10を採用してもよい。たとえば、PDA、ポータブルコンピュータあるいはその他の精密機器に封止用部材10を採用してもよい。
【0038】
また、上述の実施の形態では、携帯電話1は、第1の筺体2および第2の筺体3を有するものとしたが、このような形態に限らない。1つの筺体しか有さない電子機器であって、その筺体に何らかの部材を挿入するための開口部が設けられている場合には、本発明を用いることができる。また、本発明の電子機器は、折り畳み式の携帯電話1ではなく、スライド式(第1の筺体2が第2の筺体3に対してスライド移動するもの)の携帯電話であってもよい。
【0039】
また、上述の実施の形態では、挿入部材5は、FPCであるが、このような形態に限らない。FPC以外の挿入部材5に封止用部材10を適用することもできる。かかる場合には、弾性部材11のうち、挿入部材5と接触する各部分には、挿入部材5の表面に沿った形状の凹部が設けられていてもよい。
【0040】
また、上述の実施の形態では、封止用部材10は、挿入部材5に対し、着脱可能に装着されるものとしているが、そのような形態に限らない。たとえば、封止用部材10は、一旦、挿入部材5に装着されると、封止用部材10を破壊しない限り取り外しができないような形態であってもよい。
【0041】
また、封止用部材10が有する吸盤部は、封止用部材10を挿入部材5に仮固定するために用いられてもよい。封止用部材10を挿入部材5に仮固定した後、第1の筺体2または第2の筺体3に封止用部材10を配置し、第1の筺体2または第2の筺体3の内壁から封止用部材10を互いに押し付ける方向へ挟圧力を付与する。第1の筺体2または第2の筺体3の内壁から封止用部材10を互いに押し付ける方向へ挟圧力が付与されている場合には、第1の筺体2若しくは第2の筺体3の内壁と封止用部材10との間、挿入部材5と封止用部材10との間、および弾性部材11aと弾性部材11bとの間を密着させることができる。したがって、封止用部材10は、開口部から第1の筺体2または第2の筺体3の内部に異物が侵入するのを防ぐことができる。
【0042】
また、上述の実施の形態に係る封止用部材10では、挿入部材5を挟む弾性部材11aと弾性部材11bとを、同程度の大きさおよび形状としたが、このような形状に限られない。挿入部材5を挟んで弾性部材11aおよび弾性部材11bの形状あるいは大きさが非対称であってもよい。しかし、異物を侵入させにくくするために、弾性部材11の外周部分は、凹凸が少なく、かつ丸みを帯びているのが好ましい。さらに、封止用部材10は、挿入部材5を中心軸として、左右および上下が略対称の形状であるのが好ましい。かかる場合には、封止用部材10は、弾性部材11のどの部分であっても筺体の内面に均一に密着することができるため、弾性部材11のどの部分からでも均一に異物の侵入を防ぐことができる。
【0043】
また、上述の実施の形態では、弾性部材11aおよび弾性部材11bの両方が凹部13を有するものとしたが、このような形態に限らない。例えば、弾性部材11aのみ、または弾性部材11bのみが凹部13を有するような形態であってもよい。弾性部材11aまたは弾性部材11bの一方のみが凹部13を有する場合には、凹部13を有しない方の弾性部材11は、凹部13と対向する面を平面とすることで、吸着され易く好ましい。また、弾性部材11aの弾性率と弾性部材11bの弾性率とは、異なっていてもよい。弾性部材11aの弾性率と弾性部材11bの弾性率とが異なる場合には、平面部の弾性体は、凹部13のへこんでいる面およびその外縁12よりも高硬度するのが好ましい。凹部13が容易に変形できることに加え、外縁12と平面部との密着性を高めることができるためである。また、凹部13は、弾性部材11aにつき1つでなくてもよい。たとえば、凹部13は、弾性部材11と挿入部材5とが接触する領域、弾性部材11aと弾性部材11bとが接触する領域とに分かれて設けられていてもよい。さらに、凹部13は、弾性部材11の挿入部材5側の面の外周のみに溝状に設けられていてもよい。あるいは、凹部13は、微小な凹部が複数設けられていてもよい。さらに、凹部13は、挿入部材5にのみ吸着するような形状であってもよいし、弾性部材11同士でのみ吸着するような形状であってもよい。
【0044】
図7は、本発明の別の変形例に係る封止用部材20について、図6と同様の断面で示す断面図である。
【0045】
上述の実施の形態では、挿入部材5は、2つの弾性部材11により挟持されているが、このような形態に限らない。たとえば、挿入部材5は、3つ以上の弾性部材により挟持されていてもよい。あるいは、挿入部材5は、1つの弾性部材により挟持されてもよい。たとえば、図7に示すように、封止用部材20の弾性部材21は、2つに分割しない程度の切り込み形状の開閉口22を有する1つの部材であってもよい。弾性部材21においては、開閉口22により挿入部材5を挟持できる。
【0046】
図8は、本発明のさらなる別の変形例に係る封止用部材30について、図6と同様の断面で示す断面図である。
【0047】
図8に示すように、封止用部材30は、1つの弾性部材31により挿入部材5を挟持している。封止用部材30では、弾性部材31が挿入部材5を挿入するための開閉口としての貫通孔32を有する。貫通孔32を挿入部材5の断面よりも大きくし、コネクタ6を挿通可能な大きさに設計することにより、挿入部材5をその長手方向に挿入して弾性部材31にて挟持できる。
【0048】
また、弾性部材11,21,31は、1種類の弾性体層から構成されていてもよいし、複数の弾性体層から構成されていてもよい。弾性部材11,21,31が複数の弾性体層から構成される場合、挿入部材5に接する側の面の樹脂は、挿入部材5に接しない側の面の樹脂よりも低硬度であるのが好ましい。低硬度面は、密着対応面に対して形状が追従しやすいので、挿入部材5に接する側の面の樹脂を低硬度とすることで、挿入部材5との間若しくは弾性部材11,21,31同士の密着性が向上する。一方、挿入部材5に接しない側の面を高硬度とすることにより、弾性部材11,21,31がつぶされた場合の復帰する力が大きくなるためより好ましい。たとえば、挿入部材5に接する側の面の樹脂は、ショアA硬度が5〜20度であって、挿入部材5に接しない側の面の樹脂は、ショアA硬度が50〜70度であるのが好ましい。さらに、弾性部材11,21,31の内部に、寸法精度を向上させること等を目的として、硬質の部材を埋設してもよい。ここで「埋設」とは、埋設物が弾性部材11,21,31によって完全に覆われている状態の他、一部のみ覆われている状態も含むように広義に解釈される。以後の「埋設」も同様である。
【0049】
図9は、本発明のさらなる別の変形例に係る封止用部材40について、挿入部材5の挿入方向から見た場合の正面図である。なお、図9では、凹部43の位置を一点鎖線により示し、バネ部材44の位置を鎖線により示している。
【0050】
図9に示すように、封止用部材40は、挿入部材5を挿入するための開閉口としての貫通孔42を有し、弾性部材41の内部に凹部43を囲むようにバネ部材44が配置されている。バネ部材44は、2つの板状部材のうち、少なくとも一方が挿入部材5を貫通させた場合に挿入部材5とは逆側に凸形状(すなわち、外側に突出した椀形状)である。
【0051】
図10は、図9の封止用部材40を挿入部材5の方向に加圧した状態を示す正面図である。なお、図9と同様に、図10においても凹部43の位置を一点鎖線により示し、バネ部材44の位置を鎖線により示している。
【0052】
図10に示すように、封止用部材40は、弾性部材41よりも弾性力が大きいバネ部材44が弾性部材41に埋設されていてもよい。ここで、「弾性力が大きい」とは、変形した場合の復元力が大きいことを指し、一般にショア硬度が高いことを指す。封止用部材40では、バネ部材44が挿入部材5の方向に加圧される(すなわち、凸形状の頂点45が挿入部材5の方向に加圧される)と、バネ部材44の凸形状が反転し、頂点45が挿入部材5側にへこむ。加圧を止めると、バネ部材44は、復元して、凹部43により形成された空隙の容積が増える。このため、その空間の気圧を外部よりも低下させることができる。バネ部材44を有する封止用部材40では、弾性部材41が非常に柔軟な樹脂から成り、弾性復元力が小さい場合にも、バネ部材44により大きな弾性復元力を得ることができる。
【0053】
また、上述の実施の形態では、バネ部材44は、弾性部材41に埋設されるものとしたが、このような形態に限らない。バネ部材44は、挿入部材5、第1の筺体2および第2の筺体3と接触する部分以外にて、弾性部材41に固着されていてもよいし、あるいは嵌め込み可能に構成されてもよい。また、バネ部材44の一部のみが、弾性部材41に埋設されていてもよい。
【0054】
また、上述の実施の形態では、凹部13,43は、挿入部材5側にのみ設けられているが、このような形態に限らない。たとえば、吸盤として機能する部分を、弾性部材11,21,31,41の外周のうち、第1の筺体2あるいは第2の筺体3と接する領域に設けてもよい。弾性部材11,21,31,41の第1の筺体2あるいは第2の筺体3と接する領域に吸盤部が設けられる場合には、弾性部材11,21,31,41と第1の筺体2あるいは第2の筺体3とが吸着するため、それらが離れてしまうのを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、たとえば、防水性あるいは防塵性の電子機器に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 携帯電話(電子機器)
2 第1の筺体(筺体)
3 第2の筺体(筺体)
5 挿入部材
10,20,30,40 封止用部材
13,43 凹部(吸盤部の一部)
11a,11b,11,21,31,41 弾性部材(吸盤部の一部)
22 開閉口
32,42 貫通孔(開閉口の一形態)
44 バネ部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体の開口部に挿入される挿入部材を挟持する弾性部材を有し、
上記弾性部材は、上記筺体に対し吸着する、または、上記弾性部材と上記挿入部材とが密着状態を保つように、上記挿入部材との間若しくは上記弾性部材同士で吸着する、吸盤部を有することを特徴とする封止用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の封止用部材であって、
前記吸盤部の吸着面側には、内側にへこむ凹部を有し、
前記吸盤部は、弾性変形により上記凹部内方に形成された空間における気圧が、その外部との気圧に対し低くなることで吸着できることを特徴とする封止用部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の封止用部材であって、
前記吸盤部の少なくとも一部は、前記弾性部材の前記筺体と接する部分に設けられていることを特徴とする封止用部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の封止用部材であって、
前記弾性部材には、前記弾性部材よりも弾性力が小さいバネ部材が埋設されていることを特徴とする封止用部材。
【請求項5】
筺体に設けられた開口部から挿入される挿入部材と、
上記挿入部材を挟持する弾性部材を有し、かつ、上記開口部を封止する封止用部材と、を有し、
上記弾性部材は、上記筺体に対し吸着する、または、上記弾性部材と上記挿入部材とが密着状態を保つように、上記挿入部材との間若しくは上記弾性部材同士で吸着する、吸盤部を有することを特徴とする電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−160609(P2012−160609A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19760(P2011−19760)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】