説明

射出成形品の製造装置及び製造方法

【課題】射出成形品に形成される貫通孔において、貫通孔の径方向へ延在する形状のバリの発生を抑制すること。
【解決手段】型閉じ及び型開きが可能であり且つ型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される第一金型12及び第二金型14のうち第一金型12が備え、且つ第二金型14側へ向けて突出する第一貫通孔形成用突出部18が有する凹部20の底面20aと、第二金型14が備え且つ第一金型12側へ向けて突出する第二貫通孔形成用突出部24の第二先端面24aを、型閉じ状態で面接触させた状態で形成した成形空間内へ溶融樹脂を射出充填して、硬化した溶融樹脂からなる、射出成形品を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキャナー等に用いられる接触型イメージセンサーモジュールが備える、射出成形品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スキャナーに用いられる接触型イメージセンサーモジュール(CISM:Contact Image Sensor Module、以降の文中では、「CISM」と記載する場合がある)は、複数箇所の貫通孔(アパーチャ)を有する部品(アパーチャアレイ)を備えている。ここで、アパーチャとは、レンズアレイ(複数のレンズをアレイ状に配列したもの)の一部を形成するレンズの絞りを設定するための貫通孔である。
このような、貫通孔を有する部品の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている製造方法は、一対の金型の一方のうち貫通孔に対応する部分に、貫通孔の少なくとも一部分に対応する棒状部材が、他方の金型へ向かう方向に付勢状態で突設されている成形装置を用いる方法である。具体的には、一方の金型が有する成形用凹部に溶融樹脂を供給した後、一対の金型を型閉じ状態としてプレス成形することにより、貫通孔を有する部品を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7‐266354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている製造方法では、一対の金型を型閉じ状態とし、さらに、貫通孔を形成するための棒状部材が他方の金型へ付勢された状態で溶融樹脂を硬化させて、貫通孔を有する部品を形成している。すなわち、特許文献1に開示されている製造方法では、棒状部材と他方の金型との接触部分に、金型の分割線(パーティングライン)が形成されている。
このため、成形装置の継続的な使用等により、棒状部材のうち他方の金型と接触する部分や、他方の金型のうち棒状部材と接触する部分に磨耗等が生じて、棒状部材や他方の金型が欠損すると、棒状部材と他方の金型との接触部分に隙間が形成される可能性がある。
【0006】
そして、貫通孔を有する部品を製造する際に、上記の隙間へ溶融樹脂が侵入して硬化すると、上述した金型の分割線にバリ(余分な突出部分)が形成されるため、貫通孔の周辺に、貫通孔の径方向へ延在する形状のバリが形成されることとなる。
貫通孔の径方向へ延在する形状のバリは、CISMの外部からレンズへ入射する入射光の光路を大幅に妨げることとなるため、貫通孔の径方向に延在する形状のバリが形成された貫通孔を有する部品を備えたCISMでは、入射光量が低下することとなる。
本発明の課題は、射出成形品に形成される貫通孔において、貫通孔の径方向へ延在する形状のバリの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形品(例えば、図1の射出成形品1)の製造装置(例えば、図2の射出成形用金型10)は、
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間(例えば、図3の成形空間26)が内部に形成される一組の金型(例えば、図2の第一金型12及び第二金型14)を備え、前記一組の金型のうち一方の金型(例えば、図2の第一金型12)は、他方の金型(例えば、図2の第二金型14)側へ向けて突出し且つ前記他方の金型と対向する第一先端面(例えば、図2の第一先端面18a)に開口した凹部(例えば、図2の凹部20)を有する柱状の第一貫通孔形成用突出部(例えば、図2の第一貫通孔形成用突出部18)を備え、前記他方の金型は、前記一方の金型側へ向けて突出する柱状の第二貫通孔形成用突出部(例えば、図2の第二貫通孔形成用突出部24)を備え、前記第二貫通孔形成用突出部の第二先端面(例えば、図2の第二先端面24a)は、前記型閉じ状態で前記凹部の底面(例えば、図2の底面20a)と面接触することを特徴としている。
【0008】
このような構成により、一方の金型と他方の金型との分割線を、型閉じ状態で凹部と第二貫通孔形成用突出部とが対向する部分に形成することが可能となる。これに加え、一方の金型と他方の金型との分割線の端部が延在する方向を、凹部の深さ方向へ延在する方向に規定することが可能となる。
【0009】
これにより、型閉じ状態において、凹部の内周面と第二貫通孔形成用突出部との間に隙間が形成された状態で、射出成形品が製造された場合であっても、射出成形品に発生するバリの形成箇所を、貫通孔のうち、凹部の内周面と対応する部分のみに規定することが可能となる。これに加え、形成されたバリの形状を、凹部の深さ方向へ延在する形状に規定することが可能となる。
【0010】
このため、金型の欠損等により貫通孔の周辺にバリが形成される状態であっても、バリの形状が、貫通孔の径方向へ延在する形状となることを防止することが可能となり、射出成形品に形成される貫通孔において、貫通孔の径方向へ延在する形状のバリの発生を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る射出成形品の製造装置は、
前記第一貫通孔形成用突出部及び前記第二貫通孔形成用突出部のうち一方は、前記一組の金型がつながる位置における断面積が、前記凹部の底面積よりも大きいことを特徴としている。
このような構成により、貫通孔の両端側を形成する二箇所の開口部を、一方の内径が他方の内径よりも小さい構成とすることが可能となるとともに、バリが形成される位置を、二箇所の開口部以外の位置に規定することが可能となる。
【0012】
これにより、貫通孔の両端側を形成する開口部のうち、レンズと対向する側の開口部と反対側の開口部、すなわち、CISMの外部へ向けて開口している側の開口部に、バリが形成されることを防止することが可能となる。
このため、貫通孔の他の部分に形成されたバリよりも、CISMの外部からレンズへ入射する入射光の光路を妨げることとなるバリが形成されることを、防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る射出成形品の製造方法は、
型閉じ及び型開きが可能である一組の金型の内部に前記型閉じ状態で形成される成形空間内へ溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程を有し、前記樹脂射出工程では、前記一組の金型のうち一方の金型が備え且つ他方の金型側へ向けて突出する柱状の第一貫通孔形成用突出部の、前記他方の金型と対向する第一先端面に開口した凹部の底面と、前記他方の金型が備え且つ前記一方の金型側へ向けて突出する柱状の第二貫通孔形成用突出部の第二先端面と、を前記型閉じ状態で面接触させた状態で、前記成形空間を形成することを特徴としている。
【0014】
このような構成により、一方の金型と他方の金型との分割線を、型閉じ状態で凹部と第二貫通孔形成用突出部とが対向する部分に形成した状態で、成形空間内へ溶融樹脂を射出充填することが可能となる。これに加え、一方の金型と他方の金型との分割線の端部が延在する方向を、凹部の深さ方向へ延在する方向に規定することが可能となる。
これにより、型閉じ状態において、凹部の内周面と第二貫通孔形成用突出部との間に隙間が形成された状態で、射出成形品が製造された場合であっても、射出成形品に発生するバリの形成箇所を、貫通孔のうち、凹部の内周面と対応する部分のみに規定することが可能となる。これに加え、形成されたバリの形状を、凹部の深さ方向へ延在する形状に規定することが可能となる。
【0015】
このため、金型の欠損等により貫通孔の周辺にバリが形成される状態であっても、バリの形状が、貫通孔の径方向へ延在する形状となることを防止することが可能となり、射出成形品に形成される貫通孔において、貫通孔の径方向へ延在する形状のバリの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】射出成形品の概略構成を示す図であり、射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図2】射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図3】樹脂射出工程における第一金型と第二金型の状態を示す断面図である。
【図4】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図5】第一の比較対象とする射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図6】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図7】第二の比較対象とする射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図8】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図9】第一実施形態の変形例を示す図である。
【図10】第一実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本発明に係る射出成形品の製造装置及び製造方法の実施の形態(実施形態)を説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1を用いて、第一実施形態における、射出成形品の構成について説明する。
図1は、射出成形品の概略構成を示す図であり、射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【0018】
図1中に示すように、射出成形品1は、複数個のレンズ2の上面(図1中では、レンズ2の上側の面)側に配置される部品であり、射出成形品1の板厚方向(図1中では、上下方向。以降の文中でも同様)に貫通する複数箇所の貫通孔4を有している。なお、図1中には、射出成形品1が有する複数箇所の貫通孔4のうち一箇所における射出成形品1の断面図を示している。
第一実施形態では、一例として、射出成形品1を、上述したCISMを形成する部品とした場合について説明する。すなわち、第一実施形態の射出成形品1は、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4(アパーチャ)を有する開口板(アパーチャアレイ)である。
【0019】
また、射出成形品1は、後述する射出成形用金型を用いて成形されており、その材料として、例えば、プラスチック等の樹脂材料を用いている。
また、射出成形品1のうち、図1中に示す部分である、貫通孔4を有する部分の厚さ(図1中では、上下方向の長さ)は、例えば、1.0[mm]以下に設定されている。なお、第一実施形態では、一例として、射出成形品1のうち貫通孔4を有する部分の厚さを、1.0[mm]に設定した場合を説明する。
【0020】
貫通孔4は、貫通孔方形断面部4aと、貫通孔台形断面部4bから形成されている。
貫通孔方形断面部4aは、貫通孔4のうち、レンズ2と対向する側と反対側の部分を形成しており、貫通孔4の射出成形品1の板厚方向と直交する断面の方向(図1中では、紙面と直交する方向。以降の文中でも同様)から見た形状が、上底と下底の長さが等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。
ここで、貫通孔方形断面部4aの上底は、貫通孔4の両端のうち一方を形成する開口部となっている。
【0021】
貫通孔台形断面部4bは、貫通孔4のうち、レンズ2と対向する側の部分を形成しており、貫通孔4の、射出成形品1の板厚と直交する方向から見た形状が、上底の長さよりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。すなわち、貫通孔台形断面部4bは、貫通孔4の、射出成形品1の板厚と直交する方向から見て、貫通孔台形断面部4bの内径面を形成する二本の直線が、共に、単一及び同一のテーパーを有している。
【0022】
また、貫通孔4の、射出成形品1の板厚と直交する方向から見た、貫通孔台形断面部4bの内径面を形成する直線の傾斜(テーパー)は、例えば、レンズ2の絞りが設計した値となるように設定されている。
ここで、貫通孔4の、射出成形品1の板厚と直交する方向から見た、貫通孔台形断面部4bの上底は、貫通孔方形断面部4aの下底と連続している。このため、貫通孔台形断面部4bの上底の長さは、貫通孔方形断面部4aの上底及び下底の長さと同じ長さとなっている。したがって、貫通孔台形断面部4bの最小内径は、貫通孔方形断面部4aの内径と等しくなっている。
【0023】
一方、貫通孔4の、射出成形品1の板厚と直交する方向から見た、貫通孔台形断面部4bの下底は、貫通孔4の両端のうち他方を形成する開口部となっている。
また、貫通孔方形断面部4aの中心と貫通孔台形断面部4bの中心は、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている。
貫通孔4の両端は、内径が異なる、二箇所の開口部6a,6bで形成されている。
二箇所の開口部6a,6bのうち一方の開口部6aは、貫通孔方形断面部4aの上底により形成されており、射出成形品1のうち、レンズ2と対向する側と反対の面に開口し、CISMの外部へ向けて開口している。なお、以降の説明では、開口部6aを、「小径開口部6a」と記載する場合がある。
【0024】
一方、二箇所の開口部6a,6bのうち他方の開口部6bは、貫通孔台形断面部4bの下底により形成されており、射出成形品1のうち、レンズ2と対向する側の面に開口している。なお、以降の説明では、開口部6bを、「大径開口部6b」と記載する場合がある。
小径開口部6aの内径Id1は、大径開口部6bの内径Id2未満である。また、小径開口部6aの内径Id1は、レンズ2の絞りを設計した値とするための内径に設定されており、例えば、0.5〜1.0[mm]程度に設定されている。
なお、第一実施形態では、一例として、小径開口部6aを、内径が0.5[mm]程度の円形に形成した場合を説明する。これに伴い、第一実施形態では、一例として、大径開口部6bを、内径が1.0[mm]程度の円形に形成した場合を説明する。
【0025】
また、第一実施形態では、一例として、小径開口部6aの中心と大径開口部6bの中心が、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている場合について説明する。
なお、図1中に示すレンズ2は、レンズアレイ8を構成する複数のレンズの一つであり、その一部が、貫通孔4内、具体的には、貫通孔台形断面部4b内に配置されている。また、レンズアレイ8は、複数のレンズ2をアレイ状に配列(第一実施形態では、複数のレンズ2を直列に配列した状態)して形成されている。
【0026】
(射出成形品1の製造装置)
以下、図1を参照しつつ、図2を用いて、射出成形品1の製造装置について説明する。
射出成形品1(アパーチャアレイ)を製造する装置(射出成形品1の製造装置)としては、例えば、図2中に示すような射出成形用金型10を用いる。なお、図2は、射出成形用金型10の概略構成を示す断面図である。
【0027】
(射出成形用金型10の構成)
以下、射出成形用金型10の概略構成について説明する。
射出成形用金型10は、第一金型12と、第二金型14を備えている。
第一金型12と第二金型14は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型であり、射出成形品1を製造する際には、型閉じ状態で内部に形成される成形空間内に、射出成形品1の材料である溶融樹脂を射出充填する。なお、図2中には、型開き状態の第一金型12及び第二金型14を示している。
【0028】
第一金型12は、射出成形品1の板厚方向(図2中では、上下方向)へ移動可能な可動金型であり、第一平板部16と、第一貫通孔形成用突出部18を備えている。
第一平板部16は、板状に形成されており、第二金型14と対向する面が平坦面で形成されている。
第一貫通孔形成用突出部18は、第二金型14へ向けて突出する柱状に形成されており、第一平板部16のうち、第二金型14と対向する面上に設けられて、第一平板部16と一体に形成されている。なお、第一実施形態では、一例として、第一貫通孔形成用突出部18を、円柱状に形成した場合を説明する。
【0029】
また、第一貫通孔形成用突出部18は、貫通孔台形断面部4bと対応する形状に形成されている。
したがって、第一実施形態では、第一貫通孔形成用突出部18が、第一貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図2中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底の長さ(先端側の外径)よりも下底の長さ(基端側の外径)が短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。
ここで、第一貫通孔形成用突出部18の、第一貫通孔形成用突出部18の径方向から見た上底は、第一貫通孔形成用突出部18のうち、第二金型14と対向する面である第一先端面18aを形成している。
【0030】
一方、第一貫通孔形成用突出部18の、第一貫通孔形成用突出部18の径方向から見た下底は、第一貫通孔形成用突出部18の第一基端部18bを形成している。
すなわち、第一実施形態では、一例として、第一貫通孔形成用突出部18の外径面が、第一貫通孔形成用突出部18の径方向から見て、対称な斜辺を形成する二本の直線で形成されており、これら二本の直線が、貫通孔4のうち、貫通孔台形断面部4bの内径面に対応する単一及び同一のテーパーを有している場合を説明する。
【0031】
また、第一貫通孔形成用突出部18のうち、第二金型14と対向する面である第一先端面18aには、凹部20が開口している。
凹部20は、円形に形成されており、深さ方向(図2中では、上下方向)に亘って内径が均一となるように形成されている。
また、第一先端面18aのうち、凹部20の周辺部分を形成している部分には、凹部20の周方向全体に亘って面取り(図示せず)が設けられている。
【0032】
第一貫通孔形成用突出部18の第一基端部18bは、第一平板部16のうち第二金型14と対向する面上に設けられている。
ここで、第一貫通孔形成用突出部18の第一基端部18bの断面形状は、大径開口部6bの内径Id2に対応する形状に設定されている。第一実施形態では、上述したように、大径開口部6bの内径Id2を1.0[mm]程度としているため、第一貫通孔形成用突出部18の第一基端部18bの断面形状は、第一貫通孔形成用突出部18の第一基端部18bにおける外径Od1が1.0[mm]程度となる値に設定する。
【0033】
また、第一貫通孔形成用突出部18は、第一金型12と第二金型14(一組の金型)がつながる位置における断面積が、凹部20の底面積よりも大きくなるように形成されている。ここで、凹部20の底面積とは、凹部20の底面20aの面積である。
第二金型14は、固定金型であり、第二平板部22と、第二貫通孔形成用突出部24を備えている。
第二平板部22は、板状に形成されており、第一金型12と対向する面が平坦面で形成されている。
【0034】
また、第二平板部22は、溶融樹脂が通過可能な形状に形成された樹脂通路(図示せず)を備えている。なお、樹脂通路は、例えば、第一平板部16に設けてもよい。
第二貫通孔形成用突出部24は、第一金型12へ向けて突出する柱状に形成されており、第二平板部22のうち、第一金型12と対向する面上に設けられて、第二平板部22と一体に形成されている。なお、第一実施形態では、一例として、第二貫通孔形成用突出部24を、円柱状に形成した場合を説明する。
【0035】
また、第二貫通孔形成用突出部24は、貫通孔方形断面部4aと対応する形状に形成されている。
したがって、第一実施形態では、第二貫通孔形成用突出部24が、第二貫通孔形成用突出部24の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図2中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底と下底の長さが等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となるように形成されている。
【0036】
ここで、第二貫通孔形成用突出部24の、第二貫通孔形成用突出部24の径方向から見た上底は、第二貫通孔形成用突出部24のうち、第一金型12と対向する面である第二先端面24aを形成している。
一方、第二貫通孔形成用突出部24の、第二貫通孔形成用突出部24の径方向から見た下底は、第二貫通孔形成用突出部24の第二基端部24bを形成している。
【0037】
また、第二貫通孔形成用突出部24のうち、第一金型12と対向する面である第二先端面24aは、第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とした場合に、凹部20の底面20aと面接触する。
すなわち、第一貫通孔形成用突出部18の軸方向への長さ(図2中では、上下方向への長さ。以降の文中でも同様)と、第二貫通孔形成用突出部24の軸方向への長さ(図2中では、上下方向への長さ。以降の文中でも同様)は、第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とした場合に、第一金型12と第二金型14の内部に、射出成形品1の形状に応じた成形空間が形成されるとともに、第二先端面24aと凹部20の底面20aが面接触する長さに設定されている。ここで、凹部20の底面20aと第二先端面24aは、共に、平坦面で形成されている。
【0038】
また、第一金型12側(図2中では、下側)から見た、第二貫通孔形成用突出部24の第二基端部24bの断面形状は、小径開口部6aの内径Id1に対応する形状に設定されている。第一実施形態では、上述したように、小径開口部6aの内径Id1を0.5[mm]程度としているため、第一金型12側から見た、第二貫通孔形成用突出部24の第二基端部24bにおける断面形状は、第二貫通孔形成用突出部24の第二基端部24bにおける外径Od2が0.5[mm]程度となる値に設定する。
また、第一実施形態では、上述したように、小径開口部6aの中心と大径開口部6bの中心が、射出成形品1の板厚方向から見て重なっているため、第一貫通孔形成用突出部18の中心軸と第二貫通孔形成用突出部24の中心軸は、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている。
【0039】
(射出成形品1の製造方法)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、射出成形用金型10を用いた射出成形品1の製造方法について説明する。
射出成形品1の製造方法は、成形空間内へ溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程を有している。
樹脂射出工程では、具体的に、第一貫通孔形成用突出部18の凹部20の底面20aと、第二貫通孔形成用突出部24の先端面とを、型閉じ状態で面接触させた状態で、成形空間を形成する。
【0040】
(樹脂射出工程)
以下、樹脂射出工程について説明する。
樹脂射出工程では、まず、型開き状態において、第一金型12を移動させ、図3中に示すように、第一金型12と第二金型14とを接触させて第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とし、第一金型12及び第二金型14の内部に成形空間(キャビティ)26を形成する。なお、図3は、樹脂射出工程における第一金型12と第二金型14の状態を示す断面図である。
このとき、第一貫通孔形成用突出部18の第一先端面18aに形成された凹部20の底面20aを、第二貫通孔形成用突出部24の第二先端面24aを面接触させた状態で、成形空間26を形成する。
【0041】
したがって、第一実施形態では、型閉じ状態で凹部20と第二貫通孔形成用突出部24とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線(パーティングライン)が形成されている。ここで、第一金型12と第二金型14との分割線は、型閉じ状態で、第一貫通孔形成用突出部18の第一先端面18a及び凹部20の底面20aと平行な線と、第一貫通孔形成用突出部18及び凹部20の内周面20bと平行な線とが連続した線となる。また、第一金型12と第二金型14との分割線の端部が延在する方向は、凹部20の深さ方向へ延在する方向に規定されている。
【0042】
そして、上記のように、第一金型12と第二金型14を型閉じ状態とし、凹部20の底面20aと第二貫通孔形成用突出部24の先端面とを面接触させた状態で、樹脂通路を介して、成形空間26内へ溶融樹脂を射出充填して、樹脂射出工程を終了する。
樹脂射出工程において成形空間26内へ射出充填した溶融樹脂が硬化した後、第一金型12と第二金型14を型開き状態(図2参照)とし、硬化した溶融樹脂により形成された射出成形品1を射出成形用金型10から取り出して、射出成形用金型10を用いた射出成形品1の製造を終了する。
【0043】
(射出成形用金型10が欠損している場合)
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、射出成形用金型10が欠損している状態で、上述した製造方法により形成した射出成形品1について説明する。
射出成形用金型10の継続的な使用等により、凹部20の内面(底面、内周面)や、第二貫通孔形成用突出部24に磨耗等が生じて、この磨耗した部分が欠損すると、型閉じ状態で凹部20と第二貫通孔形成用突出部24とが対向する部分に、隙間が形成される。なお、以下の説明は、凹部20の内周面20bのうち、型閉じ状態で第二貫通孔形成用突出部24の外径面の一部と対向する部分に磨耗が生じ、この磨耗部分が欠損した場合を前提として記載する。
【0044】
凹部20の内周面20bのうち、型閉じ状態で凹部20と第二貫通孔形成用突出部24とが対向する部分に隙間が形成された状態で、上述した樹脂射出工程を行うと、成形空間26内と、型閉じ状態で凹部20の内周面20bと第二貫通孔形成用突出部24の外径面の間に形成された隙間内へ、溶融樹脂が射出充填される。
ここで、第一実施形態では、型閉じ状態で凹部20と第二貫通孔形成用突出部24とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線が形成されており、この分割線は、型閉じ状態で、第一貫通孔形成用突出部18の第一先端面18a及び凹部20の底面20aと平行な線と、第一貫通孔形成用突出部18及び凹部20の内周面20bと平行な線とが連続した線となる。これにより、第一実施形態では、第一金型12と第二金型14との分割線の端部が延在する方向を、凹部20の深さ方向へ延在する方向に規定することが可能となる。
【0045】
このため、成形空間26内及び上記の隙間内へ射出充填された溶融樹脂が硬化し、この硬化した溶融樹脂を、型開き状態で射出成形用金型10から取り出した射出成形品1には、図4中に示すように、貫通孔4内において、貫通孔台形断面部4bのうち、貫通孔方形断面部4aの内径面と連続する部分から、大径開口部6b側(図4中では、下側)へ向けて、射出成形品1の板厚方向であり、凹部20の深さ方向へ延在する形状のバリ28が形成されることとなる。なお、図4は、欠損している射出成形用金型10を用いて形成した射出成形品1の一部を示す断面図である。また、図4中に示す射出成形品1の部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応している。
【0046】
なお、第一実施形態では、上述したように、射出成形用金型10の構成を、凹部20の内面や、第二貫通孔形成用突出部24が磨耗等により欠損すると、凹部20と第二貫通孔形成用突出部24との接触部分に隙間が形成される構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、射出成形用金型10の構成を、予め、凹部20の内周面20bと、第二貫通孔形成用突出部24のうち、型閉じ状態で凹部20の内周面20bと対向する部分との間に隙間が形成される構成としてもよい。この場合、射出成形品1には、射出成形用金型10の使用回数や頻度等に因らず、貫通孔4内において、貫通孔台形断面部4bのうち、貫通孔方形断面部4aの内径面と連続する部分から、大径開口部6b側へ向けて、凹部20の深さ方向へ延在する形状のバリ28が、意図的に形成されることとなる。
【0047】
ここで、射出成形用金型10を用いて射出成形品1を製造する、射出成形品1の製造ラインでは、例えば、製造後の射出成形品1に対する検査(各種センサー等を用いた形状の検査)により、バリ28が形成されている射出成形品1が発見された場合には、例えば、製造ラインの稼動を停止して、射出成形用金型10の状態(形状)を点検する。
この場合、射出成形品1に形成されているバリ28の形状寸法が、レンズ2の絞りが設計した値となる程度の許容可能な形状寸法であれば、バリ28が形成されている射出成形品1であっても、破棄することなく使用可能であるため、射出成形品1の製造に関して、コストの増加及び歩留りの低下を抑制することが可能となる。
【0048】
(動作)
次に、図1から図4を参照して、射出成形品1の動作を説明する。
上述したように、第一実施形態の射出成形品1は、スキャナーに用いられるCISMを形成する部品であり、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4を有する開口板である。
したがって、スキャナーの使用時、すなわち、紙面に印刷された文字等を読み取る際に、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光は、小径開口部6aから貫通孔4を通過して、レンズ2へ入射することとなる。
【0049】
ここで、第一実施形態の射出成形用金型10(射出成形品1の製造装置)では、第一金型12と第二金型14との分割線が、型閉じ状態で凹部20と第二貫通孔形成用突出部24とが対向する部分に形成されている。これに加え、第一実施形態の射出成形用金型10では、第一金型12と第二金型14との分割線が、型閉じ状態で、第一貫通孔形成用突出部18の第一先端面18a及び凹部20の底面20aと平行な線と、第一貫通孔形成用突出部18及び凹部20の内周面20bと平行な線とが連続した線となる。
【0050】
これにより、第一実施形態の射出成形用金型10では、第一金型12と第二金型14との分割線の端部が延在する方向を、凹部20の深さ方向へ延在する方向に規定することが可能となる。
このため、射出成形品1が、凹部20の内周面20bと、第二貫通孔形成用突出部24の外径面のうち、型閉じ状態で凹部20の内周面20bと対向する部分との間に隙間が形成された状態の射出成形用金型10で製造された場合であっても、射出成形品1に発生するバリ28の形成箇所を、貫通孔4のうち、凹部20の内周面20bと対応する部分のみに規定することが可能となる。これに加え、形成されたバリ28の形状を、凹部20の深さ方向へ延在する形状に規定することが可能となる。
【0051】
したがって、第一実施形態では、射出成形用金型10の欠損等により、貫通孔4の周辺にバリ28が形成される状態であっても、形成されたバリ28の形状が、貫通孔4の径方向へ延在する形状となることを抑制することが可能となる。すなわち、第一実施形態では、射出成形品1に形成される貫通孔4において、貫通孔4の径方向へ延在する形状のバリ28の発生を抑制することが可能となる。これに加え、バリ28が形成される位置を、二箇所の開口部6a,6b以外の位置に規定することが可能となる。
このため、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げる要因の発生を抑制することが可能となる。
【0052】
以上により、第一実施形態では、射出成形品1が、凹部20の内周面20bと、第二貫通孔形成用突出部24の外径面のうち、型閉じ状態で凹部20の内周面20bと対向する部分との間に隙間が形成された状態の射出成形用金型10で製造された場合であっても、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の量(入射光量)が低下することを抑制可能となる。
【0053】
また、第一実施形態では、第一貫通孔形成用突出部18を、第一金型12と第二金型14(一組の金型)がつながる位置における断面積が、凹部20の底面積よりも大きくなるように形成している。
このため、二箇所の開口部6a,6bを、一方の内径が他方の内径よりも小さい構成、すなわち、小径開口部6aと大径開口部6bにより構成することが可能となるとともに、バリ28が形成される位置を、二箇所の開口部6a,6b以外の位置に規定することが可能となる。
【0054】
これにより、特に、貫通孔4の両端側を形成する二箇所の開口部6a,6bのうち、CISMの外部へ向けて開口している側の小径開口部6aに、バリ28が形成されることを防止することが可能となるため、貫通孔4の他の部分に形成されたバリ28よりも、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げることとなるバリ28が形成されることを、防止することが可能となる。
また、第一実施形態では、凹部20の深さを、例えば、凹部20と第二貫通孔形成用突出部24との嵌合度合い等に応じて設定することにより、バリ28の最大長さを規定することが可能となる。
【0055】
また、第一実施形態では、凹部20の底面20aや第二貫通孔形成用突出部24の第二先端面24aに磨耗等が生じて、この磨耗した部分が欠損し、凹部20と第二貫通孔形成用突出部24とが面接触している部分に隙間が形成された場合であっても、凹部20の内周面20bと、第二貫通孔形成用突出部24の外径面のうち、型閉じ状態で凹部20の内周面20bと対向する部分との間に、溶融樹脂が移動可能な隙間が形成されていない状態であれば、貫通孔4の周辺にバリ28が形成される状態であっても、形成されたバリ28の形状が、貫通孔4の径方向へ延在する形状となることを抑制することが可能となる。
【0056】
(第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1と、第一実施形態と構成の異なる射出成形用金型及び射出成形品との比較)
ここで、図1から図4を参照しつつ、図5から図8を用いて、第一実施形態の射出成形用金型10と分割線の異なる射出成形用金型と、この射出成形用金型を用いて製造した射出成形品とを、二つ例示して、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1と比較する。
【0057】
I.第一の比較対象
比較対象とする第一の射出成形用金型としては、例えば、図5中に示すように、第一貫通孔形成用突出部18を、第一先端面18aの面積が、第二金型14側(図5中では、上側)から見た第一貫通孔形成用突出部18の断面積未満となるように形成している射出成形用金型10aを例示する。なお、図5は、第一の比較対象とする射出成形用金型10aの概略構成を示す断面図である。また、図5中では、第一実施形態の射出成形用金型10と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0058】
この射出成形用金型10aでは、第一実施形態の射出成形用金型10と異なり、第一金型12と第二金型14との分割線が、第一貫通孔形成用突出部18のうち、小径開口部6aに対応する部分に形成されている。
このため、射出成形用金型10aの状態が、第一貫通孔形成用突出部18の第一先端面18aと第二金型14との接触部分に隙間が形成された状態である場合、例えば、図6中に示すように、射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品1aは、射出成形品1aに発生するバリ28aの形成箇所が、小径開口部6aとなる。なお、図6は、欠損している射出成形用金型10aを用いて形成した射出成形品1aの一部を示す断面図である。また、図6中に示す射出成形品1aの部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しているため、図6中では、第一実施形態の射出成形品1と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
これに加え、射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品1aは、射出成形品1aに発生するバリ28aの形状が、貫通孔4の内径面から、貫通孔4の径方向中心へ延在する形状となる。
【0059】
II.第二の比較対象
比較対象とする第二の射出成形用金型としては、例えば、図7中に示すように、第一貫通孔形成用突出部18を、第一先端面18aの面積が、第二金型14側(図7中では、上側)から見た第一貫通孔形成用突出部18の断面積未満となるように形成している射出成形用金型10bを例示する。なお、図7は、第二の比較対象とする射出成形用金型10bの概略構成を示す断面図である。また、図7中では、第一実施形態の射出成形用金型10と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0060】
ここで、射出成形用金型10bでは、第一貫通孔形成用突出部18が、突出部形成台形断面部30と、突出部形成方形断面部32から形成されている。なお、突出部形成台形断面部30及び突出部形成方形断面部32は、第一平板部16と一体に形成されている。
突出部形成台形断面部30は、第一貫通孔形成用突出部18の径方向から見た断面の形状が、上底の長さよりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。
【0061】
突出部形成方形断面部32は、第一貫通孔形成用突出部18の径方向から見た断面の形状が、上底と下底の長さが等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。
これに加え、突出部形成方形断面部32は、型閉じ状態において、第二金型14に設けられた突出部形成方形断面部配置孔34内に挿入される。なお、突出部形成方形断面部配置孔34は、突出部形成方形断面部32と嵌合する形状に形成されており、断面が円形の凹部である。すなわち、突出部形成方形断面部配置孔34の内径は、突出部形成方形断面部32の外径と等しい。
【0062】
ここで、突出部形成方形断面部32が突出部形成方形断面部配置孔34内に挿入された状態では、突出部形成台形断面部30のみが、成形空間26内において、貫通孔4に対応する部分を形成する。
この射出成形用金型10bでは、第一実施形態の射出成形用金型10と異なり、第一金型12と第二金型14との分割線が、第一貫通孔形成用突出部18のうち、小径開口部6aに対応する部分に形成されているとともに、この分割線は、第一貫通孔形成用突出部18の第一先端面18aと垂直をなす状態で、突出部形成方形断面部配置孔34内に形成されている。
【0063】
このため、射出成形用金型10bの状態が、第一金型12と第二金型14との接触部分、具体的には、突出部形成方形断面部32の外径面と突出部形成方形断面部配置孔34の内径面に隙間が形成された状態である場合、例えば、図8中に示すように、射出成形用金型10bを用いて製造した射出成形品1bは、射出成形品1bに発生するバリ28bの形成箇所が、小径開口部6aとなる。これに加え、バリ28bの形状が、CISMの外部へ向けて延在する形状となる。なお、図8は、欠損している射出成形用金型10bを用いて形成した射出成形品1bの一部を示す断面図である。また、図8中に示す射出成形品1bの部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しているため、図8中では、第一実施形態の射出成形品1と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0064】
III.比較結果
上述したように、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1は、第一及び第二の比較対象と比較して、小径開口部6aにバリ28が形成されることを防止可能であるとともに、射出成形品1に発生するバリ28の形状が、貫通孔4の内径面から、貫通孔4の径方向中心へ延在する形状となることを防止することが可能となる。すなわち、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1は、第一及び第二の比較対象と比較して、射出成形品1に形成される貫通孔4において、貫通孔4の径方向へ延在する形状のバリ28の発生を抑制することが可能となる。
このため、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1は、第一及び第二の比較対象と比較して、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げる要因の発生を抑制することが可能となる。
【0065】
(変形例)
第一実施形態においては、第一金型12が第一貫通孔形成用突出部18を備えるとともに、第二金型14が第二貫通孔形成用突出部24を備える構成としたが、これに限定するものではない。
すなわち、第二金型14が第一貫通孔形成用突出部18を備えるとともに、第一金型12が第二貫通孔形成用突出部24を備える構成としてもよい。
この場合、例えば、図9中に示すように、第二貫通孔形成用突出部24の構成を、突出部形成台形断面部30と突出部形成方形断面部32から形成されている構成とするとともに、第一貫通孔形成用突出部18の構成を、第一貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図9中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底と下底の長さが等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となる構成としてもよい。なお、図9は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0066】
ここで、突出部形成台形断面部30は、第二貫通孔形成用突出部24の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図9中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底の長さよりも下底(第二基端部24bの外径)の長さが短く、上底の長さよりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。また、突出部形成台形断面部30は、第二金型14と対向する面上に設けられて、第一平板部16と一体に形成されている。
【0067】
ここで、突出部形成方形断面部32は、第二貫通孔形成用突出部24の径方向から見た形状が、上底と下底の長さ(第二先端面24aの外径)が等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。また、突出部形成方形断面部32は、突出部形成台形断面部30の第二金型14と対向する面上に設けられて、突出部形成方形断面部32と一体に形成されている。
すなわち、図9中に示す第二貫通孔形成用突出部24は、第二貫通孔形成用突出部24の外径面を形成する線が、傾斜(テーパー)を有する直線と、第二貫通孔形成用突出部24の軸方向(図9中では、上下方向)と平行な直線とを連続させた屈曲線で形成されている。
【0068】
このような構成の射出成形用金型10を用いて形成した射出成形品1は、例えば、図10中に示すように、貫通孔4の構成が、貫通孔台形断面部4bの最小内径が、貫通孔方形断面部4aの内径未満となっており、貫通孔方形断面部4aと貫通孔台形断面部4bとの間には、段差が形成されている。すなわち、貫通孔4の径方向から見た、貫通孔台形断面部4bの上底の長さは、貫通孔方形断面部4aの上底及び下底の長さ未満の長さとなっている。なお、図10は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0069】
また、上述した構成の射出成形用金型10において、凹部20の内周面20bに磨耗等が生じて、この磨耗した部分が欠損し、凹部20の内周面20bと突出部形成方形断面部32との間に隙間が形成されている状態で形成した射出成形品1は、例えば、図10中に示すように、形成されたバリ28の形状が、貫通孔4内において、貫通孔方形断面部4aのうち、貫通孔台形断面部4bと連続する部分から、小径開口部6a側(図10中では、上側)へ向けて、射出成形品1の板厚方向であり、凹部20の深さ方向へ延在する形状のバリ28が形成されることとなる。
【0070】
また、第一実施形態においては、貫通孔4の構成を、貫通孔台形断面部4bの内径面を形成する二本の直線が、貫通孔4の径方向から見て、共に、単一及び同一のテーパーを有している構成とした。これに伴い、第一貫通孔形成用突出部18の構成を、第一貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する二本の直線が、貫通孔4の内径面に対応する単一及び同一のテーパーを有している構成とした。しかしながら、貫通孔台形断面部4b及び第一貫通孔形成用突出部18の構成は、これらに限定するものではない。
【0071】
すなわち、第一貫通孔形成用突出部18の構成を、例えば、第一貫通孔形成用突出部18の外径面が、傾斜(テーパー)の異なる直線を連続させた屈曲線(二段テーパー)で形成されている構成とすることにより、第一貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する線が、第一貫通孔形成用突出部18の径方向から見て、二種類のテーパーを有している構成としてもよい。
【0072】
また、第一実施形態においては、第一貫通孔形成用突出部18を、円柱状に形成したが、これに限定するものではなく、第一貫通孔形成用突出部18を、第二金型14側から見た断面形状が多角形である角柱状に形成してもよい。これは、第二貫通孔形成用突出部24に関しても、同様である。
また、第一実施形態においては、射出成形品1を、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4を有する開口板としたが、射出成形品1は、これに限定するものではなく、例えば、インク等の流体を通過させる貫通孔を有するノズル等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 射出成形品、1a 第一の比較対象とする射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品、1b 第二の比較対象とする射出成形用金型10bを用いて製造した射出成形品、2 レンズ、4 貫通孔、4a 貫通孔方形断面部、4b 貫通孔台形断面部、6a 開口部(小径開口部)、6b 開口部(大径開口部)、8 レンズアレイ、10 射出成形用金型、10a 第一の比較対象とする射出成形用金型、10b 第二の比較対象とする射出成形用金型、12 第一金型、14 第二金型、16 第一平板部、18 第一貫通孔形成用突出部、18a 第一先端面、18b 第一基端部、20 凹部、20a 凹部20の底面、20b 凹部20の内周面、22 第二平板部、24 第二貫通孔形成用突出部、24a 第二先端面、24b 第二基端部、26 成形空間、28 バリ、28a 射出成形品1aに発生するバリ、28b 射出成形品1bに発生するバリ、30 突出部形成台形断面部、32 突出部形成方形断面部、34 突出部形成方形断面部配置孔、Id1 開口部(小径開口部)6aの内径、Id2 開口部(大径開口部)6bの内径、Od1 第一貫通孔形成用突出部18の第一基端部18bにおける外径、Od2 第二貫通孔形成用突出部24の第二基端部24bにおける外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型を備え、
前記一組の金型のうち一方の金型は、他方の金型側へ向けて突出し且つ前記他方の金型と対向する第一先端面に開口した凹部を有する柱状の第一貫通孔形成用突出部を備え、
前記他方の金型は、前記一方の金型側へ向けて突出する柱状の第二貫通孔形成用突出部を備え、
前記第二貫通孔形成用突出部の第二先端面は、前記型閉じ状態で前記凹部の底面と面接触することを特徴とする射出成形品の製造装置。
【請求項2】
前記第一貫通孔形成用突出部及び前記第二貫通孔形成用突出部のうち一方は、前記一組の金型がつながる位置における断面積が、前記凹部の底面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載した射出成形品の製造装置。
【請求項3】
型閉じ及び型開きが可能である一組の金型の内部に前記型閉じ状態で形成される成形空間内へ溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程を有し、
前記樹脂射出工程では、前記一組の金型のうち一方の金型が備え且つ他方の金型側へ向けて突出する柱状の第一貫通孔形成用突出部の、前記他方の金型と対向する第一先端面に開口した凹部の底面と、前記他方の金型が備え且つ前記一方の金型側へ向けて突出する柱状の第二貫通孔形成用突出部の第二先端面と、を前記型閉じ状態で面接触させた状態で、前記成形空間を形成することを特徴とする射出成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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