説明

射出成形機

【課題】停電が発生した場合であっても、蓄電装置における電力により成形動作を継続できるようにする射出成形機を提供すること。
【解決手段】本発明の実施例に係る射出成形機は、停電の際に使用可能な電力を蓄電する蓄電装置33と、停電発生時に、蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作の継続の可否を判定する成形動作継続可否判定部213とを備える。また、成形動作継続可否判定部213は、交流電源10からの交流電力の供給を受けることなく射出成形機の成形動作を継続することができる時間が、停電発生から外部電源による給電開始までの予定時間以上である場合に、蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を継続できると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源の停電発生時に使用可能な電力を蓄電する蓄電装置を備えた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラーパネルで発電した電力を蓄電する蓄電池を備えた射出成形機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この射出成形機は、商用交流電源によって駆動される主制御装置と、その蓄電池によって駆動されるサブ制御装置とを備え、その主制御装置の制御データをリアルタイムでそのサブ制御装置におけるメモリに記録しておき、停電発生時にもその制御データを保持できるようにしながら、停電解消時に、そのメモリに記録されたその制御データの内容(すなわち、停電発生時の状況)をCRTに表示できるようにし、停電発生により停止した射出成形機を操作者が再始動させるのを支援することができる。
【0004】
また、制御用直流電圧を得るためのコンバータ回路、及び、モータ駆動用電圧を得るためのコンバータ回路のそれぞれにエネルギー蓄積用のコンデンサを備えた射出成形機が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
この射出成形機は、停電発生後に、それらコンデンサに蓄積されたエネルギーを利用することによって、各駆動軸を駆動して構成部品を安全に停止させるようにし、また、射出成形機の状態を表すデータを不揮発性記憶装置に保存させるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−202886号公報
【特許文献2】特開2004−216829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の射出成形機は何れも、停電発生後にその成形動作を停止させることを前提としており、停電発生後に蓄電池又はコンデンサに蓄電された電力を利用してその成形動作を継続させることを想定しておらず、たとえ停電発生直後に非常用交流予備電源等による給電復帰が予定されるような場合であっても、その成形動作を必ず停止させてしまうこととなる。
【0008】
上述の点に鑑み、本発明は、停電が発生した場合であっても、蓄電装置における電力により成形動作を継続できるようにする射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る射出成形機は、停電中に使用可能な電力を蓄電する蓄電装置を備えた射出成形機であって、停電発生時に、前記蓄電装置に蓄電された電力による成形動作の継続の可否を判定する成形動作継続可否判定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述の手段により、本発明は、停電が発生した場合であっても、蓄電装置における電力により成形動作を継続できるようにする射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る射出成形機に搭載される成形制御システムの構成例を示す概略図である。
【図2】制御部におけるコントローラの構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】停電時制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る射出成形機に搭載される成形制御システムSYSの構成例を示す概略図であり、図2は、制御部20におけるコントローラ21の構成例を示す機能ブロック図である。
【0014】
成形制御システムSYSは、射出成形機の成形動作を制御するためのシステムであり、主に、交流電源10、制御部20、電力変換部30、電動モータ40、成形機センサ50、周辺機器センサ51、表示装置60、及び音声出力装置61で構成される。
【0015】
交流電源10は、制御部20及び電力変換部30に対して交流電力を供給するための装置であり、例えば、商用の3相交流電源である。
【0016】
制御部20は、射出成形機の成形動作を制御するための装置であり、主に、コントローラ21、スイッチング電源22、第一蓄電装置23、及び交流電圧検出回路24で構成される。
【0017】
コントローラ21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static RAM)、フラッシュメモリ、ROM等を備えたコンピュータであって、例えば、成形制御部210、停電判定部211、成形動作継続可能時間算出部212、成形動作継続可否判定部213、成形動作停止判定部214、及び停止モード選択部215(図2参照。)の各機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAM上に展開し、各機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0018】
なお、各機能要素は、アナログ回路、デジタル回路、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、FPAA(Field Programmable Analog Array)等を用いてハードウェアで構成されていてもよい。
【0019】
また、コントローラ21は、第一蓄電装置23、第二蓄電装置33、成形機センサ50、及び周辺機器センサ51等のそれぞれが出力する検出値を取得し、上述の各機能要素に対応する処理を実行し、その処理結果に応じて表示装置60及び音声出力装置61に対して制御信号を出力する。
【0020】
更に、コントローラ21は、電動モータ40の回転軸に取り付けられたエンコーダ(図示せず。)が出力する電動モータ40の回転速度の値を監視しながら、所望のモータ回転速度の指令値を含むタイミング制御信号を生成し、生成したタイミング制御信号を、電動モータ40を駆動するインバータ回路34に対して出力する。
【0021】
スイッチング電源22は、交流電源10の交流電力を直流電力に変換する装置であり、所定電圧の交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。
【0022】
第一蓄電装置23は、スイッチング電源22が出力する直流電力を蓄電しながらその直流電力をコントローラ21に対して供給するための装置であり、例えば、交流電源10からの交流電力の供給が途絶え、スイッチング電源22からの直流電力の供給が途絶えた場合であっても、一定期間にわたり所定電圧の直流電力をコントローラ21に対して継続的に供給できるように構成される。
【0023】
また、第一蓄電装置23は、蓄電電圧等の蓄電状態に関する情報をコントローラ21に対して出力し、コントローラ21が第一蓄電装置23の蓄電状態を監視・把握できるようにしてもよい。
【0024】
交流電圧検出回路24は、スイッチング電源22に供給される交流電圧を検出するための装置であり、例えば、その検出結果をコントローラ21に対して出力することによって、交流電源10における停電発生の有無をコントローラ21が検知できるようにする。なお、交流電圧検出回路24は、第一蓄電装置23に供給される直流電圧を検出するための装置で置き換えられてもよい。
【0025】
電力変換部30は、交流電力を直流電力に変換し、更にその直流電力を各種負荷に適した交流電力に変換するための装置であり、例えば、射出成形機に搭載されるインバータであって、ダイオードモジュール31と、コンデンサ32と、第二蓄電装置33と、インバータ回路34とを備える。
【0026】
ダイオードモジュール31は、交流電源10の交流電力を直流電力に変換する装置であり、所定電圧の交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。
【0027】
コンデンサ32は、ダイオードモジュール31の出力を平滑化するための装置であり、例えば、電解コンデンサである。
【0028】
第二蓄電装置33は、ダイオードモジュール31が出力しコンデンサ32によって平滑化された直流電力を蓄電しながらその直流電力をインバータ回路34に対して供給するための装置であり、例えば、交流電源10からの交流電力の供給が途絶え、ダイオードモジュール31からの直流電力の供給が途絶えた場合であっても、一定期間にわたり所定電圧の直流電力をインバータ回路34に対して継続的に供給できるようにする。
【0029】
また、第二蓄電装置33は、蓄電電圧等の蓄電状態に関する情報をコントローラ21に対して出力し、コントローラ21が第二蓄電装置33の蓄電状態を監視・把握できるようにしてもよい。
【0030】
インバータ回路34は、第二蓄電装置33が出力する直流電力を交流電力に変換するための装置であり、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IPM(Intelligent Power Module)又はパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のパワースイッチング素子で構成され、制御部20におけるコントローラ21からのタイミング制御信号に応じてパワースイッチング素子のオン/オフを切り換え、直流電力から交流電力への変換を行う。
【0031】
電動モータ40は、交流電力を受けて動作する電気負荷であり、例えば、クローズドループ制御のサーボモータであって、電力変換部30が射出成形機に搭載される場合の射出用モータ、型締用モータ、樹脂計量用モータ、エジェクタ用モータ等である。
【0032】
なお、図1において、成形制御システムSYSは、電力変換部30と電気負荷(電動モータ40)との組み合わせを一つだけ備えるものとして示されているが、別の組み合わせ(例えば、電力変換部30と射出シリンダ用ヒータとの組み合わせ等である。)を追加的に備えるものであってもよい。
【0033】
また、その場合、第二蓄電装置33は、複数の組み合わせのそれぞれにおける電力変換部30に個別に含まれるものであってもよく、複数の電力変換部30によって共用されるものであってもよい。
【0034】
成形機センサ50は、射出成形機本体の動作状態を検出するためのセンサであり、例えば、射出用モータ、型締用モータ、樹脂計量用モータ、及びエジェクタ用モータのそれぞれの回転状態を検出するために各モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ、射出スクリュの背圧を検出するための歪みセンサ、射出シリンダ内の温度を検出するための温度センサ、又は、射出シリンダ内の圧力を検出するための圧力センサ等であり、検出した値をコントローラ21に対して出力する。
【0035】
周辺機器センサ51は、射出成形機に付属する周辺機器の動作状態を検出するためのセンサであり、例えば、射出シリンダに樹脂ペレットを供給するためのフィーダ、又は、射出シリンダを加熱する射出シリンダ用ヒータ等の動作状態を検出するセンサであり、検出した値をコントローラ21に対して出力する。
【0036】
表示装置60は、各種情報を表示するための装置であり、例えば、液晶ディスプレイ又はLED(Light Emitting Diode)等であって、停電の発生、蓄電装置の電力による成形動作の開始、停電の解消(非常用交流予備電源等による給電の開始)等の射出成形機の成形動作に関する情報を表示する。
【0037】
音声出力装置61は、各種情報を音声出力するための装置であり、例えば、スピーカやブザーであって、停電の発生、蓄電装置の電力による成形動作の開始、停電の解消(非常用交流予備電源等による給電の開始)等の射出成形機の成形動作に関する情報を報知する。
【0038】
次に、コントローラ21が有する各機能要素について説明する。
【0039】
成形制御部210は、射出成形機の成形動作を制御するための機能要素であり、例えば、成形機センサ50や周辺機器センサ51の出力に応じて、一又は複数の電動モータ40(例えば、射出用モータ、型締用モータ、樹脂計量用モータ、及びエジェクタ用モータ等である。)のそれぞれに対応するインバータ回路34のためのタイミング制御信号を生成し、それら一又は複数のインバータ回路34のそれぞれに対してそれら生成したタイミング制御信号を出力する。
【0040】
また、成形制御部210は、成形機センサ50や周辺機器センサ51の出力に応じて、一又は複数の周辺機器(例えば、エジェクタ、樹脂供給用フィーダ、金型用ヒータ、又は射出シリンダ用ヒータ等であり、射出成形機とは異なる電源によって駆動される機器であってもよく、射出成形機と同じ電源によって駆動される機器であってもよい。)のそれぞれに対する制御信号を生成し、それら一又は複数の周辺機器に対してそれら生成した制御信号を出力する。
【0041】
なお、成形制御部210は、所定のサンプリング間隔で受信する成形機センサ50や周辺機器センサ51の出力をログ情報の一部として時系列でRAMに記録し、射出成形機の成形動作の推移を事後的に解析できるようにする。
【0042】
停電判定部211は、制御部20又は電力変換部30に対する交流電力の供給が途絶えたか否かを判定するための機能要素であり、例えば、交流電圧検出回路24の出力に基づいて、交流電源10における停電(瞬停を含む。)発生の有無、及び、交流電源10における停電の解消(例えば、非常用交流予備電源による給電の開始である。)の有無等を判定する。
【0043】
成形動作継続可能時間算出部212は、外部電源からの交流電力の供給を受けることなく射出成形機の成形動作を継続することができる時間(以下、「成形動作継続可能時間」とする。)を算出するための機能要素であり、例えば、停電判定部211により、交流電源10からの交流電力の供給が途絶えたと判定された場合に、第二蓄電装置33がコントローラ21に対して出力する蓄電状態に関する情報に基づいて第二蓄電装置33の電力による成形動作継続可能時間を算出する。
【0044】
また、成形動作継続可能時間算出部212は、成形機センサ50の出力に基づいて1成形サイクル当たりの消費電力量を導き出し、その1成形サイクル当たりの消費電力量と、第二蓄電装置33の蓄電状態に関する情報とに基づいて、第二蓄電装置33の電力による成形動作継続可能時間を算出するようにしてもよい。
【0045】
なお、成形動作継続可能時間算出部212は、第二蓄電装置33から情報を受けることなく第二蓄電装置33の蓄電状態を推定し(例えば、満蓄電状態であると推定し)、その推定した蓄電状態に基づいて第二蓄電装置33の電力による成形動作継続可能時間を算出するようにしてもよい。
【0046】
成形動作継続可否判定部213は、外部電源からの交流電力の供給を受けることなく射出成形機の成形動作を継続することができるか否かを判定するための機能要素であり、例えば、停電判定部211により、交流電源10からの交流電力の供給が途絶えたと判定された場合に、周辺機器センサ51がコントローラ21に対して出力する検出値に基づいて一又は複数の周辺機器のそれぞれが成形動作の継続に適した状態にあるか否かを判断し、それら判断結果に基づいて成形動作の継続の可否を判定する。
【0047】
この場合、成形動作継続可否判定部213は、一又は複数の周辺機器が作動不能状態にある場合に、或いは、一又は複数の周辺機器センサ51からの出力を受信できない場合に、成形動作の継続が不可能であると判定する。
【0048】
また、成形動作継続可否判定部213は、成形動作継続可能時間算出部212が算出した成形動作継続可能時間と、交流電源10における停電発生から非常用交流予備電源による給電開始までの時間(予め設定された時間であり、以下、「予備電源切換時間」とする。)とに基づいて、成形動作の継続の可否を判定するようにしてもよい。
【0049】
この場合、成形動作継続可否判定部213は、成形動作継続可能時間が予備電源切換時間以上の場合に、成形動作の継続が可能であると判定し、一方で、成形動作継続可能時間が予備電源切換時間より短い場合に、成形動作の継続が不可能であると判定する。
【0050】
また、成形動作継続可否判定部213は、予備電源切換時間が設定されていない場合には、成形動作継続可能時間の長短にかかわらず、成形動作の継続が不可能であると判定するようにしてもよい。
【0051】
成形動作停止判定部214は、外部電源からの交流電力の供給を受けることなく継続させた成形動作を停止させるか否かを判定するための機能要素であり、例えば、予備電源切換時間が経過したにもかかわらず外部電源による給電が復帰しない場合に、その成形動作を停止させるべきと判定する。
【0052】
また、成形動作停止判定部214は、予備電源切換時間が経過したにもかかわらず外部電源による給電が復帰せず、且つ、第二蓄電装置33の蓄電電圧が所定電圧を下回った場合に、その成形動作を停止させるべきと判定するようにしてもよい。
【0053】
停止モード選択部215は、成形動作継続可否判定部213により、成形動作の継続が不可能であると判定された場合、或いは、成形動作停止判定部214により、継続させた成形動作を停止させるべきと判定された場合に、射出成形機の停止モードを選択するための機能要素である。
【0054】
「停止モード」は、動作中の射出成形機を停止させるための方法であり、例えば、現在実行中の成形サイクルを完了させた上で射出成形機を停止させる「1サイクル停止モード」、現在実行中の成形サイクルにおける保圧工程を完了させた上で射出成形機を停止させる「保圧完了後停止モード」、及び、現在実行中の成形サイクルにおける型開工程を完了させた上で射出成形機を停止させる「型開後停止モード」等がある。
【0055】
停止モード選択部215は、成形機センサ50の出力に基づいて射出成形機の現状を把握し、その現状に最も適した停止モードを選択し、選択した停止モードを実行させる。
【0056】
具体的には、停止モード選択部215は、その選択結果を成形制御部210に対して出力し、その選択結果を受信した成形制御部210は、その選択された停止モードに応じたタイミング制御信号を生成し、一又は複数のインバータ回路34のそれぞれに対してそれら生成したタイミング制御信号を出力することによってその射出成形機による成形動作を停止させる。
【0057】
次に、図3を参照しながら、成形制御システムSYSによる停電時制御処理の流れについて説明する。なお、図3は、その停電時制御処理の流れを示すフローチャートであり、成形制御システムSYSは、その停電時制御処理を所定周期で繰り返し実行するものとする。
【0058】
最初に、制御部20のコントローラ21は、停電判定部211により、交流電圧検出回路24の出力に基づいて停電発生の有無を判定する(ステップS1)。
【0059】
停電が発生していないと判定した場合(ステップS1のNO)、コントローラ21は、今回の停電時制御処理を終了させる。
【0060】
停電が発生したと判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ21は、表示装置60や音声出力装置61に対して制御信号を出力し、停電が発生した旨を表示或いは音声出力させて、操作者にその旨を通知する(ステップS2)。
【0061】
なお、停電が発生すると(交流電源10からの交流電力の供給が途絶えると)、射出成形機は、交流電力によるコントローラ21の制御動作を第一蓄電装置23に蓄電された電力による制御動作に自動的に切り換えて、第一蓄電装置23に蓄電された電力による制御動作を開始させ、且つ、交流電力による成形動作を第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作に自動的に切り換えて、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を開始させることとなる。
【0062】
その後、コントローラ21は、成形動作継続可否判定部213により、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作の継続が可能か否かを判定する(ステップS3)。
【0063】
具体的には、コントローラ21は、周辺機器センサ51から受信した検出値に基づいて一又は複数の周辺機器のそれぞれが成形動作の継続に適した状態にあるか否かを判断し、或いは、成形動作継続可能時間算出部212が算出した成形動作継続可能時間と予備電源切換時間とを比較することによって、その成形動作の継続が可能であるか否かを判定する。
【0064】
その成形動作の継続が可能であると判定した場合(ステップS3のYES)、コントローラ21は、交流電源10から交流電力の供給を受けている場合と同様に、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を継続させる(ステップS4)。
【0065】
その後、コントローラ21は、停電判定部211により、交流電圧検出回路24の出力に基づいて停電解消の有無を判定する(ステップS5)。
【0066】
停電が解消したと判定した場合(ステップS5のYES)、コントローラ21は、表示装置60や音声出力装置61に対して制御信号を出力し、停電が解消した旨を表示或いは音声出力させて操作者にその旨を通知し(ステップS6)、今回の停電時制御処理を終了させる。
【0067】
なお、停電が解消すると(例えば、交流電源10又は非常用交流予備電源からの交流電力の供給が再開されると)、射出成形機は、第一蓄電装置23に蓄電された電力によるコントローラ21の制御動作を交流電力による制御動作に自動的に切り換えて、交流電力による制御動作を開始させ、且つ、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を交流電力による成形動作に自動的に切り換えて、交流電力による成形動作を開始させることとなる。また、射出成形機は、その交流電力による第一蓄装置23及び第二蓄電装置33の蓄電を自動的に開始させることとなる。
【0068】
一方、停電が解消していないと判定した場合(ステップS5のNO)、コントローラ21は、成形動作停止判定部214により、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を停止させるか否かを判定するために、予備電源切換時間が経過したか否かを判定する(ステップS7)。
【0069】
なお、コントローラ21は、予備電源切換時間が経過したか否かを判定する代わりに、第二蓄電装置33の蓄電電圧が所定電圧を下回ったか否かを判定することによって、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を停止させるか否かを判定するようにしてもよい。
【0070】
予備電源切換時間が経過していないと判定した場合(ステップS7のNO)、コントローラ21は、ステップS5の判定を改めて実行するようにする。
【0071】
予備電源切換時間が経過したと判定した場合(ステップS7のYES)、コントローラ21は、停止モード選択部215により、成形機センサ50の出力に基づいて射出成形機の現状を把握し、その現状に最も適した停止モードを選択する(ステップS8)。
【0072】
その後、コントローラ21は、停止モード選択部215により、その選択結果を成形制御部210に対して出力し、成形制御部210により、その選択された停止モードに応じたタイミング制御信号を生成し、一又は複数のインバータ回路34のそれぞれに対してそれら生成したタイミング制御信号を出力することによってその射出成形機による成形動作を停止させる(ステップS9)。
【0073】
また、ステップS3において、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作の継続が不可能であると判定した場合にも(ステップS3のNO)、コントローラ21は、停止モード選択部215により、成形機センサ50の出力に基づいて射出成形機の現状を把握し、その現状に最も適した停止モードを選択する(ステップS8)。
【0074】
そして、コントローラ21は、その選択結果を成形制御部210に対して出力し、成形制御部210により、その選択された停止モードに応じたタイミング制御信号を生成し、一又は複数のインバータ回路34のそれぞれに対してそれら生成したタイミング制御信号を出力することによってその射出成形機による成形動作を停止させるようにする(ステップS9)。
【0075】
以上の構成により、停電中に使用可能な電力を蓄電する第二蓄電装置33を備えた射出成形機における成形制御システムSYSは、停電が発生した場合であっても、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作の継続(交流電力の供給が再開されるまでの成形動作の実行)が可能であると判定した上でその成形動作を継続させるので、その停電期間中の成形動作を確実に継続させることができる。
【0076】
また、成形制御システムSYSは、外部電源からの交流電力の供給を受けることなく射出成形機の成形動作を継続することができる時間が、停電発生から外部電源による給電が開始されるまでの予備電源切換時間以上の場合に、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を継続させることができると判定するので、電力不足によりその継続させた成形動作を交流電力の供給再開前に中断させてしまうことなく、その停電期間中の成形動作を確実に継続させることができる。
【0077】
また、成形制御システムSYSは、所定の周辺機器が成形動作の継続に適した状態にあると判定した場合に、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を継続できると判定するので、射出成形機本体とは異なる電源によって駆動される周辺機器が存在するような場合であっても、その周辺機器が作動不能状態となったままで成形動作を継続させてしまうようなこともなく、その停電期間中の成形動作を確実且つ適切に継続させることができる。
【0078】
なお、成形制御システムSYSは、停電発生時にコントローラ21に対して電力を供給する第一蓄電装置23、及び、停電発生時にインバータ回路34に対して電力を供給する第二蓄電装置33の二つの蓄電装置を備えるが、停電発生時にコントローラ21及びインバータ回路34の双方に対して電力を供給する一つの蓄電装置を備えるようにしてもよい。
【0079】
この場合、その一つの蓄電装置は、ダイオードモジュール31が出力しコンデンサ32によって平滑化された直流電力を蓄電しながらその直流電力をインバータ回路34及び制御部20のコントローラ21に対して供給し、例えば、交流電源10からの交流電力の供給が途絶え、ダイオードモジュール31からの直流電力の供給が途絶えた場合であっても、一定期間にわたり所定電圧の直流電力をインバータ回路34に対して継続的に供給できるように構成され、且つ、一定期間にわたり所定電圧の直流電力をコントローラ21に対して継続的に供給できるように構成される。
【0080】
この構成により、停電中に使用可能な電力を蓄電するその一つの蓄電装置を備えた射出成形機における成形制御システムSYSは、その構成を更に簡略化させることができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0082】
例えば、上述の実施例において、成形制御システムSYSを搭載する射出成形機は、停電中に電動モータ40を作動させるための電力を蓄電する第二蓄電装置33を備えるが、停電中にフィーダや射出シリンダ用ヒータを作動させるための電力を蓄電する蓄電装置を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10・・・交流電源 20・・・制御部 21・・・コントローラ 22・・・スイッチング電源 23・・・第一蓄電装置 24・・・交流電圧検出回路 30・・・電力変換部 31・・・ダイオードモジュール 32・・・コンデンサ 33・・・第二蓄電装置 34・・・インバータ回路 40・・・電動モータ 50・・・成形機センサ 51・・・周辺機器センサ 60・・・表示装置 61・・・音声出力装置 210・・・成形制御部 211・・・停電判定部 212・・・成形動作継続可能時間算出部 213・・・成形動作継続可否判定部 214・・・成形動作停止判定部 215・・・停止モード選択部 SYS・・・成形制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電中に使用可能な電力を蓄電する蓄電装置を備えた射出成形機であって、
停電発生時に、前記蓄電装置に蓄電された電力による成形動作の継続の可否を判定する成形動作継続可否判定部を備える、
ことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記成形動作継続可否判定部は、所定の周辺機器が成形動作の継続に適した状態にあると判定した場合に、前記蓄電装置に蓄電された電力による成形動作を継続できると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記成形動作継続可否判定部は、外部電源からの交流電力の供給を受けることなく射出成形機の成形動作を継続することができる時間が、停電発生から外部電源による給電開始までの予定時間以上である場合に、前記蓄電装置に蓄電された電力による成形動作を継続できると判定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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