説明

射出成形用金型及びその製造方法

【課題】簡単で安価な構造でそのキャビティ内に充填された溶融樹脂を効率的に均一冷却できる射出成形の生産性とコスト性に優れた射出成形用金型を提供する。
【解決手段】可動金型11と固定金型12とを結合して構成されるキャビティ内へ溶融樹脂を射出し、キャビティ内の溶融樹脂を冷却硬化させて成形品を得る射出成形用金型10において、可動金型11及び固定金型12にそれぞれ放熱を均一化させる円形外周面11c、12dを形成して、略矩形状の金型支持部材11a、12aにより支持されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックスを射出成形するための射出成形用金型に関し、特にその金型加工製造時におけるワークセッティングを容易とする生産性に優れるとともに、射出成形品を成形するのに好適な放熱特性を有した射出成形用金型及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形体を成形する射出成形用金型は、可動金型と固定金型とから略構成され、可動金型と固定金型とを型締めすることによりそのセッティング結合面にキャビティが形成される。これらキャビティには溶融樹脂の通路としてのスプール、ランナ、ゲートが設けられており、上記溶融樹脂通路を通じて溶融樹脂がキャビティ内に充填されて所望の形状の樹脂成形品が成形される。このような固定金型と可動金型との当接面には、成形品の形状に対応するキャビティが形成され、ランナ、ゲートを通じて射出ノズルから射出された溶融樹脂が充填されるように構成されている。
【0003】
このような従来の射出成形用金型に関しては、溶融樹脂がキャビティ内で硬化する時間を短縮して生産性を上げるために冷却構造を付加したものが知られている。例えば特許文献1(特開2000−79630号公報)には、固定側金型又は可動側金型のいずれか一方の金型に入れ子状コアの一端側の基部が取付けられ、入れ子状コアの他端側がキャビティ内に突出されている射出成形用金型であって、冷却媒体流路を形成させる入れ子状コアの基部がペルチェ素子により冷却できるようにした射出成形用金型が記載されている。
【特許文献1】特開2000−79630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金型に冷却水を通す通路を設けた従来の射出成形用金型では、狭いキャビティを形成する金型のコアやピン内部に冷却水通路を設けることは至難である。さらに、キャビティ内に冷却され難い箇所が生じて均一な放熱性が得られず、不均一収縮に伴う熱変形やひずみが射出成形品に生じ易いため、その生産性が損なわれることがあるといった問題があった。
特に、特許文献1に記載のものでは、その冷却箇所が局所的であって均一な放熱性を確保することが困難であることに加えて、別途ペルチェ素子用電源やその制御部が必要で、しかもペルチェ素子が高価であることからコスト的にも不利であるという問題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、簡単で安価な構造でそのキャビティ内に充填された溶融樹脂を効率的に均一冷却して優れた生産性を実現するとともに、金型製造過程におけるセッティング時間や手間を省略してコスト性に優れた射出成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)以上の目的を達成するためになされた本発明は、固定金型と可動金型とを結合して構成されるキャビティ内へ溶融樹脂を射出し、キャビティ内の溶融樹脂を冷却硬化させて成形品を得る射出成形用金型において、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ放熱を均一化させる円形外周面が形成されるとともに、略矩形状の金型支持部材によりそれぞれが支持されるように構成されている。
【0006】
(2)本発明は前記(1)において、前記固定金型と前記可動金型における金型結合面の前記キャビティを形成する突出部の基部が断面矩形状に形成され、前記金型結合面の嵌合部に着脱自在に嵌合された入れ子構造を備えていることにも特徴を有している。
【0007】
(3)本発明は前記(1)又は(2)において、前記固定金型及び前記可動金型の前記円形状外周面には前記キャビティ内の溶融樹脂の放熱を均一化させる放熱構造が設けられていることにも特徴を有している。
【0008】
(4)本発明は前記(1)〜(3)において、被加工物を挟持する対向配置された第1主軸及び第2主軸からなる主軸部と、前記主軸部の旋回軸に対して離接回動自在に配置される第3主軸を備えた旋回工具部とを有した複合旋盤によって加工される射出成形用金型の製造方法であって、前記固定金型及び前記可動金型となる被加工物を前記主軸部に装着して前記円形外周面を形成加工する工程と、前記被加工物を前記主軸部の一方に装着したまま前記固定金型及び前記可動金型との金型結合面を前記旋回工具部を用いて加工する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る射出成形用金型およびその製造方法によれば、射出成形品のキャビティ周囲となる金型外側面を円形状とすることにより、キャビティ内の溶融樹脂の熱がコア外方へ容易に排出されるため、射出成形直後の放熱を効率的に行うことができる。そのため、射出成形用金型の凹凸部などに冷却水流路などを設けるためのスペースが確保できない場合でも、熱伝導性の高い金型材料を使用したり、金型の複雑な設計変更等を行ったりしなくても、射出成形時における成形品の熱変形を有効に防止できる。また、射出成形直後の溶融樹脂からの放熱が効率的に行われるため、射出成形のサイクル時間を短縮することができる。さらに、射出成形用金型の主たる部材の外周面を円形状とすることにより、その切削加工に際して被加工物のセッティングを簡素化して段取り時間を短縮することができ、射出成形用金型を経済的に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態に係る射出成形用金型は、固定金型と可動金型とを結合して構成されるキャビティ内へ溶融樹脂を射出し、キャビティ内の溶融樹脂を冷却硬化させて成形品を得る射出成形用金型において、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ放熱を均一化させる円形外周面が形成されるとともに、略矩形状の金型支持部材によりそれぞれが支持されるように構成されている。これによって、キャビティを形成する固定金型及び可動金型の外周面を円形状にするだけでそのキャビティ内に充填された溶融樹脂を均一冷却して、射出成形直後のコアの放熱が効率的に行われるため、射出成形における溶融樹脂の射出、冷却硬化、型抜きなどのサイクルタイムが短縮でき、生産性に優れた射出成形が可能となる。さらに、このような射出成形用金型の製造工程においては、そのワークセッティングの手間を省略してコスト性に優れた射出成形用金型の製造方法を提供できる。
【0011】
固定金型及び可動金型は、アルミ(A7075相当)や金型一般鋼材、例えばJIS規格の耐食性材料(SKD61、SUS420など)や耐磨耗性材料(SCM440、SKD11など)からなり、その結合面(パーティング面)には凹部や凸部が配設され、両者を合わせることで成形品に対応したキャビティが形成されるようになっている。
この固定金型及び可動金型はそれぞれが略矩形状の金型支持部材によって支持され、金型のそれぞれの外周面は旋盤加工機などを介して円形状に旋盤加工されて形成されるとともに、両者の結合面は切削工具を用いたフライス加工などで凹凸状に加工されることによって、溶融樹脂を射出するためのスプールやランナ、ゲート、ガス抜き部などが形成されている。
溶融樹脂としては、熱可塑性のプラスチック、生分解性プラスチックなどを含む汎用プラスチックが適用できる。なお、これらの樹脂に、ゴム、樹脂、金属、セラミックス、ガラス繊維、カーボン繊維などを混合して補強することもできる。
【0012】
本実施形態に係る射出成形用金型は、前記固定金型と前記可動金型における金型結合面の前記キャビティを形成する突出部の基部が断面矩形状に形成され、前記金型結合面の嵌合部に着脱自在に嵌合された入れ子構造を備えていることにも特徴を有している。これによって、突出部を交換することでキャビティの形状を容易に調整することができるとともに、型内における突出部のズレの少ない構造として寸法精度に優れた射出成形用金型とすることができる。
【0013】
突出部は、射出成形品の内側部分などに相当するキャビティ部分を金型結合面(パーティング面)に形成するための部材であって、その基部が断面矩形状に形成され、他方の金型の結合面における矩形状に形成された嵌合部に着脱自在に嵌合されるようになっている。
【0014】
本実施形態に係る射出成形用金型は、前記固定金型及び前記可動金型の前記円形状外周面に、前記キャビティ内の溶融樹脂の放熱を均一化させる放熱構造が設けられていることにも特徴を有している。これによって、射出成形時において、円形外周面に設けられた放熱構造を介してキャビティ内の熱が容易に排出されるため、射出成形直後のコアの放熱をさらに効率的に行うことができる。そのため、金型のキャビティ周囲に冷却水路を設けるためのスペースが確保できない場合でも、従来のように熱伝導性の高い金型材料を使用したり、金型の複雑な設計変更等を行ったりしなくても、射出成形時における成形品の熱変形を有効に防止できる。
【0015】
放熱構造は、溶融樹脂が充填されるキャビティの周囲を円周状に囲繞し、この外表面から溶融樹脂の熱を効率的に排出して、冷却硬化された樹脂成形品を得るためのものであって、例えば、放熱溝や放熱フィンなどを固定金型及び可動金型の円形状外周面に配設して構成されるものである。
【0016】
本実施形態に係る射出成形用金型は、被加工物を挟持する対向配置された第1主軸及び第2主軸からなる主軸部と、前記主軸部の旋回軸に対して離接回動自在に配置される第3主軸を備えた旋回工具部とを有した複合旋盤によって加工される射出成形用金型の製造方法であって、前記固定金型及び前記可動金型となる被加工物を前記主軸部に装着して前記円形外周面を形成加工する工程と、前記被加工物を前記主軸部の一方に装着したまま前記固定金型及び前記可動金型との金型結合面を前記旋回工具部を用いて加工する工程とを有することを特徴とする。これによって、被加工物のセッティングに関する段取り時間を短縮して、経済性に優れた射出成形用金型を提供することができる。
【0017】
複合旋盤は、例えば、ベッドに水平同軸配設された第1主軸台及び第2主軸台と、ベッド上のXYZ軸方向に移動可能に配設された第3主軸台と、XZ方向に移動可能に配設された刃物台とを備えた加工機である。このような複合旋盤では、一度の段取りで全ての面に対して加工が可能で、各軸に角度の任意割りし機能が付いており任意の角度を持った形状に対して、特別なジグを必要としない。このため、第1主軸と第2主軸とのワーク受け渡し機能が必須となるような従来の加工機における段取り換えのほとんどを省略でき、工程の短縮を図ることができる。
なお、従来の3軸マシニングセンタでは、任意の角度を持った形状を加工するために専用または汎用のジグを必要とする。また、5軸マシニングセンタでは、任意角の形状を加工することはできるが、ワーク下面の加工に段取り換えを要するため、複合旋盤を適用する場合に比較して、射出成形用金型の加工工程が複雑になる欠点を有している。
【0018】
(実施例1)
以下図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は本実施例の射出成形用金型の斜視図であり、図2はその正断面図であり、図3はその分解斜視図である。
実施例1の射出成形用金型10は、図1〜図3に示すように、その内部に溶融樹脂が充填されるキャビティを形成するための上下一対の可動金型11及び固定金型12と、前記可動金型11及び固定金型12にそれぞれ固定される略矩形状に形成された金型支持部材11a、12aを有している。
可動金型11及び固定金型12は、その外周面11c、12cの横断面が円形状に形成され、外周面11c、12cを放熱面として、キャビティ内に充填された溶融樹脂の冷却が効率的かつ均一に行えるようにしている。そして、溶融樹脂が充填される箱型状のキャビティは、対向して配置される可動金型11の凸状部11dと、固定金型12の凹状部12dとの隙間により形成されるようになっている。
可動金型11は、金型支持部材11aによりその下部側がボルトなどを介して固定されるとともに、図4に示す、硬化後の射出成形品13を突出部となる凸状部11dから型抜きするための押出ピン11eが上下動可能に内蔵されている。
固定金型12の金型支持部材12aには、溶融樹脂をキャビティに注入するためのスプールなどからなる樹脂注入部12bを、その凹状部12dの略中央に備えている。
【0019】
(実施例2)
図5は実施例2の射出成形用金型の説明図である。実施例2の射出成形用金型20を構成する一対の可動金型21、固定金型22は、その円形状に形成された外周面21a、22aを有するとともに、可動金型21、と固定金型22における金型結合面のキャビティを形成するための突出部23の基部の横断面が矩形状に形成され、金型結合面の嵌合部24にボルト25を介して着脱自在に嵌合される入れ子構造を備えている。突出部23は、その矩形状に形成された基部側を可動金型21の嵌合部24に装着した後、その底部側のボルト挿入孔からボルト25を挿入して、突出部23底に穿設されたボルト締結部26を介して可動金型21に固定されるようになっている。こうして、金型により成形される射出成形品の形状に応じて突出部23を交換したり、キャビティの形状を容易に調整したりすることができ、汎用性と寸法精度とに優れた射出成形を可能としている。
【0020】
(実施例3)
図6は実施例3の射出成形用金型の説明図であり、その円形状となる可動金型と固定金型の外周面に放熱構造が設けられている。実施例3の射出成形用金型30を構成する一対の可動金型31、固定金型32は、その円形状に形成された外周面31a、32aに、横溝33や縦溝34を設けたものである。こうして、外周面31a、32aにおける有効放熱面積を増やすことによって、射出成形用金型30の放熱性をさらに高めることができる。したがって、キャビティ内に充填された溶融樹脂の効率的な均一冷却を容易にして熱変形や歪みの少ない射出成形品の製造を可能にするとともに、射出成形におけるサイクル時間を短縮して、射出成形品の効率的な製造を可能としている。
【0021】
(実施例4)
図7は、射出成形用金型10、20、30を、被加工物(ワークW)から切削加工するための複合旋盤を説明する斜視図である。この複合旋盤40では、一度の段取りで全ての面に対して加工が可能であり、従来必要であった段取り換えのほとんどを省略でき、工程の短縮ができる。複合旋盤では各軸に角度の任意割り機能が付いており、任意の角度を持った形状に対して特別なジグを必要としないという利点を有するものである。すなわち、射出成形用金型10、20、30は、その主たる可動金型11、21、31及び固定金型12、22、32の外形を円形状とすることによって、複合旋盤40の使用に最適化したモールドベース構造としたものといえる。
複合旋盤40は、図示するように、搭載面が水平に形成されたベッド41と、上記搭載面に配設された第1主軸42と、第1主軸42に同軸対向してZ軸(左右)方向に移動可能に配設された第2主軸43と、第1,第2主軸42、43の間にX軸(上下),Z軸方向に移動可能に上記搭載面に配設された刃物台44と、X軸,Y軸(前後)及びZ軸方向に移動可能に配設された第3主軸45とを有して構成される。
【0022】
射出成形用金型10、20、30における可動金型及び固定金型となる被加工物(ワーク)は、図8(a)に示すように主軸部である第1主軸42と第2主軸43とに装着されて、その外周が円形状に加工されてそれぞれの外周面が切削加工される。こうして、モールドベース構成プレートのうち、最も加工工数の多い可動型プレート(可動金型11など)および固定型プレート(固定金型12など)の外形を円形とする。
【0023】
つぎに、図8(b)に示すように、前記被加工物を主軸部の一方である第2主軸43にワークWを装着したまま可動金型及び固定金型の金型結合面となる面を旋回工具部となる第3主軸35又は刃物台44を用いて加工することができる。
ちなみに、マシニングセンタを使用した従来工法では、角形モールドベースを使用するため、各面を加工するために多くの段取り換えが必要である。これに対して、複合旋盤40では、第1主軸42と第2主軸42のワーク受け渡しだけの一度の段取りで全ての面に対して加工が可能であり、工程の短縮化が可能となっている。
【0024】
本実施形態の射出成形用金型10、20、30(以下、円形モールドベースと称する)及びその製造方法は、以上説明したように構成される。このような円形モールドベースの概要は以下のようにまとめることができる。
【0025】
1.円形モールドベース発想の目的
(ア)マシニングセンタを主とした従来の工法に最適化した直方体のモールドベースに対して、旋盤ベースの複合加工機を主とした工法に最適化したモールドベースが存在しないこと。
(イ)一段取り全心加工を可能とする複合加工機を金型製作に効果的に適用すること。従来工法に最適化した従来モールドベースは複合加工機を用いた加工には不向きであり、新たに複合加工機に最適化した構造を有するモールドベースを発案することが必要であること。
(ウ)一段取り全面加工を可能とすることによって、金型製作工程の短縮、納期、低コストを実現すること。
【0026】
2.従来モールドベースの特徴
(ア)従来型のモールドベースは、直方体を基本とした複数のプレートで構成されている。
(イ)マシニングセンタを代表としたXYZ軸と各軸に平行に移動するテーブルまたは工具主軸を持った切削加工機を使用して加工することを前提とした構造である。
【0027】
3.従来モールドベースの加工
(ア)モールドベースへの切削加工は、XYZ軸を有した3軸フライス盤、3軸マシニングセンタなど、あるいはXYZ−BC軸を有した5軸マシニンダセンタ、5面マシニングセンタなどを使って行い、いずれの場合でも機械テーブルに載せて加工する。
(イ)その加工の特徴上、ある一面(底面)は必ず機械テーブルに接する、あるいは平行に相対するため、1回の段取りで加工できる面数に限りがある。(3軸マシニングセンタでは上面のみ、6軸・5面マシニングセンタでも上面と側面まで)そのため、全ての面に加工がある場合は、その回数分の段取り換えが必要となり、多くの時間的ロスを生じる。
(ウ)3軸の加工機については、その構造上、テーブルに対して垂直方向の加工しかできず、複雑な角度を要する加工を行う場合は、それ専用の治具を用いなければならない。
【0028】
4,円形モールドベースの特徴
(ア)円形モールドベースは、その主たるプレートに円筒形のプレートを有し、その他のプレートには直方体を用いる構造で構成されている。
(イ)第1主軸、第2主軸を持った旋盤に旋回軸を持った第3主軸となる工具主軸を合わせた構造である複合加工機を使用して加工することを前提とした金型構造である。
【0029】
5.円形モールドベ一スの加工
(ア)このモールドベースは、NC旋盤を母体としてこれにB軸を有する工具軸を追加した複合旋盤40での加工に最適化したものである。
(イ)複合旋盤40は、旋削と切削の加工を同時あるいはどちらか一方を一台で行うことができ、第1主軸42から第2主軸43への自動受け渡しもオプションとして可能であるため一度の段取りで、全面加工を行うことができる。
(ウ)第3主軸45となる工具主軸にはB軸を有しているので、これと第1主軸42と第2主軸43の割り出し機能を用いることで、あらゆる角度からの加工が特別な治具を用いることなく行うことが可能である。
(エ)モールドベースの主たるプレート(可動金型11、21、31や固定金型12、22、32)の外周面を円筒形にすることにより、第1主軸と第2主軸へのセッティングを簡素化し、段取り時間を大幅に短縮することができる。
【0030】
本発明は以上説明したように、射出成形品のキャビティ周囲となる金型外側面を円形状としたことを要旨とするものである。これによって、キャビティ内の溶融樹脂の熱が外方へ容易に排出され、射出成形直後の放熱を効率的に行うことができる。こうして、射出成形時における成形品の熱変形を有効に防止できるとともに、射出成形のサイクル時間(型締め → 射出・充填 → 保圧 → 冷却 → 型開き → 製品突出)を短縮することができる。さらに、射出成形用金型の主たる部材の外周面を円形状としているので、複合旋盤を用いる製造加工に際して被加工物のセッティングを簡素化して段取り時間を短縮して、射出成形用金型を経済的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の射出成形用金型の斜視図である。
【図2】実施例1の射出成形用金型の正断面図である。
【図3】実施例1の射出成形用金型の分解斜視図である。
【図4】実施例1の射出成形用金型により成形される射出成形品の斜視図である。
【図5】実施例2の射出成形用金型の説明図である。
【図6】実施例3の射出成形用金型の説明図である。
【図7】実施例4における複合旋盤の斜視図である。
【図8】実施例4の複合旋盤を用いた射出成形用金型の加工工程の説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 実施例1の射出成形用金型
11 可動金型
11a 金型支持部材
11c 外周面
11d 凸状部(突出部)
11e 押出ピン
12 固定金型
12a 金型支持部材
12b 樹脂注入部
12c 外周面
12d 凹状部
20 実施例2の射出成形用金型
21 可動金型
21a 外周面
22 固定金型
22a 外周面
23 突出部
24 嵌合部
25 ボルト
26 ボルト締結部
30 実施例3の射出成形用金型
31 可動金型
31a 外周面
32 固定金型
32a 外周面
33 横溝
34 縦溝
40 実施例4の複合旋盤
41 ベッド
42 第1主軸
43 第2主軸
44 刃物台
45 第3主軸(工具軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とを結合して構成されるキャビティ内へ溶融樹脂を射出し、キャビティ内の溶融樹脂を冷却硬化させて成形品を得る射出成形用金型において、前記固定金型及び前記可動金型にそれぞれ放熱を均一化させる円形外周面が形成されるとともに、略矩形状の金型支持部材によりそれぞれが支持されていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記固定金型と前記可動金型における金型結合面の前記キャビティを形成する突出部の基部が断面矩形状に形成され、前記金型結合面の嵌合部に着脱自在に嵌合された入れ子構造を備えていることを特徴とする請求項1記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記固定金型及び前記可動金型の前記円形状外周面には前記キャビティ内の溶融樹脂の放熱を均一化させる放熱構造が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形用金型。
【請求項4】
被加工物を挟持する対向配置された第1主軸及び第2主軸からなる主軸部と、前記主軸部の旋回軸に対して離接回動自在に配置される第3主軸を備えた旋回工具部とを有した複合旋盤によって加工される射出成形用金型の製造方法であって、
前記固定金型及び前記可動金型となる被加工物を前記主軸部に装着して前記円形外周面を形成加工する工程と、前記被加工物を前記主軸部の一方に装着したまま前記固定金型及び前記可動金型との金型結合面を前記旋回工具部を用いて加工する工程とを有することを特徴とする請求項1〜3記載の射出成形用金型の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−17929(P2010−17929A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179993(P2008−179993)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508209820)株式会社内山精工 (2)
【Fターム(参考)】