説明

導体接続構造

【課題】導体同士の接続箇所の小型化を図り、部品点数の削減を図ると共に、挿入・抜出に伴う導体同士の接点部分の摩耗速度を抑えた導体接続構造を提供する。
【解決手段】複数の素線導体2を撚り合わせた撚線導体3と撚線導体3の外周に形成された絶縁層4とからなるケーブル6を、オス端子部材に接続するための導体接続構造において、ケーブル6の端部の撚線導体3を絶縁層4から突出させて突出部7を形成すると共に、その突出部7の端部中心から拡げて中空にして、突出部7にオス端子部材を挿入するための筒状のメス端子5を形成し、メス端子5の外周に、オス端子部材との接続時にメス端子5を締め付けて、オス端子部材を締結する締結部材8をスライド自在に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ハイブリッド車、電気自動車などで採用される可能性が高い技術であり、導体接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル(絶縁ケーブル)の導体同士を電気的に接続する導体接続構造として、例えば、一方のケーブルの端部にオス端子を、他方のケーブルにメス端子を夫々設け、それらを嵌合させることで導体同士を電気的に接続する端子接続方式が知られている。
【0003】
また、例えば、電源ケーブル(動力電線)のような大容量のケーブルの接続部分に用いられる導体接続構造としては、ケーブルの先端にメス端子となるソケット端子を設け、そのソケット端子にオス端子となるピン端子を嵌合する端子接続方式が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−103152号公報
【特許文献2】特開2008−103153号公報
【特許文献3】特開2008−123997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の導体接続構造、すなわち端子接続方式では、オス端子とメス端子との嵌合箇所がケーブルの外径よりも大きくなる傾向にあるという問題がある。そのため、接続箇所が大型化してしまい、特に複数のケーブルを他のケーブル(又はピン端子)に接続する箇所では、接続箇所の小型化が困難となっていた。
【0006】
さらに、ケーブルの導体に端子を接続する必要があるため、部品点数が増加してしまうという問題もある。
【0007】
また、例えば、ハイブリッド車や電気自動車など、振動の多い環境で用いられるケーブルの接続部分では、振動による接続部分への影響を排除する必要がある。このような振動対策として、メス端子の外周にスプリングを設けて、メス端子とオス端子を強固に固定することが考えられる。
【0008】
しかし、振動対策でスプリングを強くした場合、端子の挿入・抜出に伴う接点部分の摩耗速度が速くなってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、導体同士の接続箇所の小型化を図り、部品点数の削減を図ると共に、挿入・抜出に伴う導体同士の接点部分の摩耗速度を抑えた導体接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数の素線導体を撚り合わせた撚線導体と該撚線導体の外周に形成された絶縁層とからなるケーブルを、オス端子部材に接続するための導体接続構造において、前記ケーブルの端部の撚線導体を前記絶縁層から突出させて突出部を形成すると共に、その突出部の端部中心から拡げて中空にして、前記突出部に前記オス端子部材を挿入するための筒状のメス端子を形成し、該メス端子の外周に、前記オス端子部材との接続時に前記メス端子を締め付けて、前記オス端子部材を締結する締結部材をスライド自在に設けた導体接続構造である。
【0011】
前記メス端子は、前記突出部の端部の撚線導体を拡径して筒状に成型した筒部を含み、前記筒部に、軸方向に沿って複数のスリットを形成し、前記筒部を周方向に分割するようにしてもよい。
【0012】
前記スリットは、前記筒部を周方向に偶数個、均等に分割するよう形成されてもよい。
【0013】
前記メス端子の筒部は、その端部に向けて末広がり形状に形成されてもよい。
【0014】
前記締結部材は、その内壁が前記メス端子の端部に向けて拡がるテーパ状に形成されてもよい。
【0015】
前記メス端子は、前記突出部の周囲にメス端子成型器を配置すると共に、前記突出部の端部に、先端が尖った突起部を有する押し込み部材を押し込み、前記突出部の複数の素線導体を内側から拡げると共に、前記メス端子成型器と前記押し込み部材間で加圧成型して形成されてもよい。
【0016】
前記メス端子の筒部は、前記加圧成型後、その端部を外側に拡げて末広がり形状に形成されてもよい。
【0017】
前記メス端子は、前記突出部の複数の素線導体を内側から拡げて加圧成型した後、導電性の金属を付着させて形成されてもよい。
【0018】
前記メス端子は、前記撚線導体端部の複数の素線導体に導電性の金属を付着させた後、前記複数の素線導体を内側から拡げて加圧成型して形成されてもよい。
【0019】
前記締結部材が、前記撚線導体と同じ材料、またはステンレスからなってもよい。
【0020】
前記オス端子部材が、ピン端子であってもよい。
【0021】
前記オス端子部材が、複数の素線導体を撚り合わせた撚線導体と該撚線導体の外周に形成された絶縁層とからなるケーブルであり、該ケーブルの端部の撚線導体を絶縁層から突出させて突出部を形成すると共に、その突出部の端部を圧縮して縮径して、前記突出部に前記メス端子に嵌合するオス端子を形成したものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、導体同士の接続箇所を小型化でき、部品点数を削減することができ、挿入・抜出に伴う導体同士の接点部分の摩耗速度を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る導体接続構造に用いるメス端子形状ケーブルの正面図であり、(b)はその側端面図、(c)はオス端子形状ケーブルの側端面図であり、(d)はその正面図、(e)はピン端子の側端面図であり、(f)はその正面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1(a)のメス端子形状ケーブルの製造方法を説明する図である。
【図3】メス端子形状ケーブルを製造する際に用いる押し込み部材を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)はその3B−3B線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る導体接続構造を説明する図であり、(a)は締結前の正面図、(b)はその縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る導体接続構造を説明する図であり、(a)は締結後の正面図、(b)はその縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る導体接続構造に用いるメス端子形状ケーブルの正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る導体接続構造に用いるメス端子形状ケーブルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
本発明の導体接続構造は、ケーブルをオス端子部材(他のケーブル又はピン端子)に接続するための構造であり、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる大電流用ワイヤハーネスのコネクタなどに用いる構造である。
【0026】
図1(a)は、本実施形態に係る導体接続構造に用いるメス端子形状ケーブルの正面図であり、図1(b)はその側端面図である。
【0027】
図1(a),(b)に示すように、メス端子形状ケーブル1は、ケーブル6の端部にメス端子5を一体に形成し、そのメス端子5の外周にスライド自在に締結部材(スプリング)8を設けたものである。
【0028】
ケーブル6は、複数の素線導体2を撚り合わせた撚線導体3と、撚線導体3の外周に形成された絶縁層4とからなる。
【0029】
ケーブル6の撚線導体3としては、多数の素線導体2を撚り合わせたものを用いることが望ましく、少なくとも20本以上、好ましくは50本以上の素線導体2を撚り合わせたものを用いるとよい。素線導体2としては、例えば、外径φ0.1〜1.0mm程度のものを用いるとよい。撚線導体3の外径は、例えば、4.0〜10mmであり、全体として剛性を有していることが望ましい。
【0030】
素線導体2は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などからなり、絶縁層4は、ゴム材料やプラスチック材料からなる。図1(a),(b)では、絶縁層4を1層としているが、多層構造であってもよい。
【0031】
メス端子5は、後述するオス端子部材を挿入、嵌合するためのものであり、突出部7の先端側の一部であって突出部7の端部の撚線導体3を拡径して筒状に成型した筒部5aと、突出部7と絶縁層4との境目である突出部7の基端部7aと筒部5aとの間であって基端部7aから徐々に拡径されたテーパ状の基部5cとからなる。メス端子5の端部には、筒部5aに囲まれた中空部5bが形成される。また、メス端子5の筒部5aは、その端部に向けて末広がり形状に形成される。
【0032】
メス端子5の筒部5aには、軸方向に沿って複数のスリット9が形成され、筒部5aを周方向に分割するようにされる。
【0033】
スリット9は、筒部5aを周方向に偶数個、均等に分割するよう形成されることが好ましい。このように構成することにより、分割された筒部5aの各々の内面がオス端子部材(中空部5b)を挟んで直線上に相対する位置に配置されることになるため、メス端子5とオス端子部材とをしっかり嵌合させることができる。また、スリット42もオス端子部材(中空部5b)を挟んで直線上に相対する位置に配置されることになるため、例えば、スリット42にオス端子部材が嵌り込んでしまい、メス端子5の形状が変形してしまうということを抑制することができる。
【0034】
メス端子5の外周には、スライド自在に締結部材8が設けられる。締結部材8は、メス端子5とオス端子部材とを接続する際に、メス端子5を締め付けてオス端子部材を締結するためのものであり、リング状、あるいは横断面視でC状に形成される。本実施形態では、リング状の締結部材8を用いる場合を説明する。締結部材8の内壁(内周面)8aは、メス端子5の端部に向けて拡がるテーパ状に形成される。
【0035】
締結部材8としては、通電性(導電性)の高い材料を用いることが望ましいが、異種金属接触腐食を防ぐため、撚線導体3が銅あるいは銅合金からなる場合は銅または銅合金、撚線導体3がアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる場合はアルミニウムまたはアルミニウム合金と、撚線導体3と同じ材料からなるものを用いるとよい。
【0036】
また、大電流用のケーブルなど発熱量の多い環境下に適用する場合は、熱による応力緩和によりバネ力が弱くなり接触抵抗が大きくなってしまうことが懸念されるため、特に横断面視でC状の締結部材8を用いる場合は、バネ性を長期間維持するという観点から、ステンレスなどのバネ性を有する鉄系の合金を用いることが好ましい。このように、締結部材8に用いる材料は、使用用途や撚線導体3の材質などに応じて適宜決定すればよい。
【0037】
メス端子形状ケーブル1を製造する際は、図2(a)に示すように、まず、ケーブル6の端部の撚線導体3を絶縁層4から突出させて突出部7を形成し、その突出部7の周囲にメス端子成型器21を配置する。このとき、突出部7に予め締結部材8を通しておくとよい。ケーブル6の端部から突出させる撚線導体3の長さ(突出部7の長さ)は、例えば15〜20mmである。
【0038】
メス端子成型器21には、内径が略一定のメス端子成型用孔21aが形成されており、そのメス端子成型用孔21a内に、突出部7を配置する。
【0039】
その後、図2(b)に示すように、突出部7の端部に、先端が尖った突起部22aを有する押し込み部材22を押し込み、突出部7の端部中心から拡げて中空にすると共に、メス端子成型器21と押し込み部材22間で加圧して成型し、突出部7に中空部5bを含むメス端子5を形成する。押し込み部材22の突起部22aは、後述するオス端子部材の外径(中空部5bに挿入、嵌合させる部分の外径)と等しいか、やや小さく形成される。
【0040】
図3(a),(b)に示すように、押し込み部材22の突起部22aの外周には、軸方向に沿ってスリット形成用突起22bが形成されており、撚線導体3を加圧成型してメス端子5を形成する際に、スリット9も同時に形成される。撚線導体3は複数の素線導体2を撚り合わせたものであるが、突出させた部分の撚線導体3は短いため殆どストレートとなっており、スリット形成用突起22bを形成した押し込み部材22を差し込めばスリット9を成型することが可能である。
【0041】
その後、図2(c)に示すように、メス端子成型器21および押し込み部材22を取り外し、筒部5aの端部を外側に拡げる。これにより、スリット9が拡がり、筒部5aの端部が末広がり形状に形成される。末広がり形状に加工する前の筒部5aの外径は例えばφ10mm、内径は例えばφ5mm、中空部5bの軸方向の長さ(嵌合長)は例えば10mmである。
【0042】
以上により、図1(a),(b)のメス端子形状ケーブル1が得られる。ここでは、加圧成型後に筒部5aの端部を外側に拡げる場合を説明したが、メス端子5の加圧成型時に、筒部5aの端部を末広がり形状に成型することも可能である。
【0043】
また、メス端子5には、メス端子5の機械的強度を補強すべく、導電性の金属を付着させてもよい。付着させる導電性の金属としては、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、錫、錫合金(例えば、半田など)、金、金合金、プラチナ、プラチナ合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛、亜鉛合金などが挙げられる。
【0044】
メス端子5に導電性の金属を付着させる際は、メス端子5を加圧成型した後、押し込み部材22を押し込んだままの状態で、メス端子5を導電性の金属を溶融させた溶湯に浸漬して付着させ、その後、筒部5aの端部を拡げるようにすればよい。ここでは、メス端子5を形成した後に導電性の金属を付着させる場合を説明したが、先に突出部7の撚線導体3に導電性の金属を付着させ、その後、加圧成型によりメス端子5を形成するようにしてもよい。
【0045】
図1(a),(b)のメス端子形状ケーブル1のメス端子5に接続されるオス端子部材としては、図1(c),(d)に示すオス端子形状ケーブル10や、図1(e),(f)に示すピン端子15を用いる。
【0046】
図1(c),(d)に示すオス端子形状ケーブル10は、複数の素線導体2を撚り合わせた撚線導体3と、撚線導体3の外周に形成された絶縁層4とを備えたケーブル6において、ケーブル6端部の撚線導体3を成型してオス端子11を形成したものである。ここでは、オス端子形状ケーブル10に用いるケーブル6として、メス端子形状ケーブル1と同じものを用いた場合を説明するが、寸法などは異なっていても構わない。
【0047】
オス端子11は、ケーブル6端部の撚線導体3を絶縁層4から突出させて突出部7を形成すると共に、その突出部7の端部を圧縮して縮径して形成される。ケーブル6の端部から突出させる撚線導体3の長さ(突出部7の長さ)は、例えば15〜20mmである。
【0048】
オス端子11は、突出部7の先端側の一部であって突出部7の端部を縮径した端子部11aと、突出部7と絶縁層4との境目である突出部7の基端部7aと端子部11aとの間であって基端部7aから徐々に縮径されたテーパ状の基部11bとからなる。また、オス端子11の端子部11aの先端部には、オス端子11をメス端子5に挿入し易くするため、オス端子11の先端部に向かってさらに縮径したテーパ状の端子先端部11cが形成される。オス端子11の端子部11aの外径は、例えばφ5mmである。
【0049】
このオス端子形状ケーブル10をメス端子形状ケーブル1と接続する場合、図4(a),(b)に示すように、まず、締結部材8を後方(オス端子形状ケーブル10と反対側)にスライドさせた状態で、オス端子形状ケーブル10のオス端子11の端子部11aを、メス端子形状ケーブル1のメス端子5の中空部5bに挿入する。メス端子5の筒部5aの端部は末広がり形状となっているため、オス端子11の端子部11aを中空部5b内に容易に、かつ、接点部を摩耗させることなく挿入することが可能である。
【0050】
その後、図5(a),(b)に示すように、締結部材8を前方(オス端子形状ケーブル10側)にスライドさせる。すると、スリット9が狭まって筒部5aが縮径され、オス端子11がメス端子5内に締結される。これにより、メス端子形状ケーブル1の撚線導体3とオス端子形状ケーブル10の撚線導体3とが電気的に接続された本発明の導体接続構造51が得られる。なお、締結の強さは、リング状の締結部材8を用いる場合は、締結部材8の内径(最小内径)を調整することにより、横断面視でC状の締結部材8を用いる場合は、締結部材8の内径(最小内径)を調整するか、あるいは締結部材8に用いる材料を適宜選択してバネ性を調整することにより調整可能である。
【0051】
締結を解除する際は、締結部材8を後方にスライドすれば、筒部5aが外側に拡がり、メス端子5内からオス端子11を容易に、かつ、接点部を摩耗させることなく抜出できる。
【0052】
また、メス端子形状ケーブル1とオス端子形状ケーブル10との接続箇所を保護するために、接続箇所に絶縁テープなどを巻き付けるか、あるいは接続箇所にケーシングなどを設けることで、接続箇所を保護するようにしてもよい。
【0053】
図1(e),(f)に示すピン端子15は、メス端子形状ケーブル1のメス端子に嵌合する導体ピン部16と、導体ピン部16と一体に形成され、外部電気機器に接続される外部電気機器用端子部17とを備える。また、導体ピン部16の先端部には、ピン端子15をメス端子5に挿入し易くするため、導体ピン部16の先端部に向かって縮径したテーパ状の端子先端部18が形成される。ピン端子15は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金からなる。
【0054】
オス端子部材としてピン端子15を用いる場合、オス端子形状ケーブル10を用いる場合と同様に、ピン端子15の導体ピン部16を、メス端子形状ケーブル1のメス端子5の中空部5bに挿入、嵌合させて電気的に接続する。
【0055】
本実施形態の作用を説明する。
【0056】
本実施形態に係る導体接続構造では、メス端子形状ケーブル1となるケーブル6の端部の撚線導体3を絶縁層4から突出させて突出部7を形成すると共に、その突出部7の端部中心から拡げて中空にして、オス端子部材を挿入するための筒状のメス端子5を形成し、そのメス端子5の外周に、オス端子部材との接続時にメス端子5を締め付けて、オス端子部材を締結する締結部材8をスライド自在に設けている。
【0057】
本実施形態では、ケーブル6の撚線導体3自体を端子化してメス端子形状ケーブル1を形成しているため、従来用いていた端子が不要となり、端子を設けていない分、導体同士の接続箇所(メス端子5とオス端子11又は導体ピン部16の接続箇所)をケーブル6の外径より小さくすることが可能となる。よって、接続箇所の小型化を図ることができる。
【0058】
また、端子が不要となるため、部品点数の削減を図ることができ、製造コストを抑制することが可能となる。さらには、小型化及び部品点数の削減を図ることにより、導体接続構造における軽量化を図ることができる。
【0059】
また、端子が不要となるため、撚線導体3と端子との接続部分で発生する接続抵抗の上昇を抑えることができ、接続箇所での発熱を抑えることが可能となる。
【0060】
さらに、メス端子5の外周に締結部材8をスライド自在に設け、オス端子部材との接続時にのみメス端子5を締め付けるようにしているため、オス端子部材の挿入・抜出に伴う接点部分の摩耗を抑えることが可能となり、かつ、メス端子5内にオス端子11を強固に固定することができる。そのため、接続箇所が振動による悪影響を受けることがなく、かつ、挿入・抜出時に接点部分が摩耗することがない導体接続構造を実現できる。よって、例えば、自動車など振動の多い環境で用いられる電線の導体接続構造として好適である。
【0061】
また、本実施形態では、メス端子5の筒部5aをその端部に向けて末広がり形状に形成しているため、オス端子部材の挿入・抜出に伴う接点部分の摩耗をより抑えることができ、オス端子部材をメス端子5の中空部5bに容易に挿入することが可能となる
さらに、本実施形態では、締結部材8の内壁8aをメス端子5の端部に向けて拡がるテーパ状に形成しているため、締結時に締結部材8を容易にスライドさせることが可能となり、容易に筒部5aを縮径させてオス端子部材をメス端子5内に締結することが可能となる。
【0062】
本発明の他の実施形態を説明する。
【0063】
図6に示すメス端子形状ケーブル61は、図1(a),(b)のメス端子形状ケーブル1において、メス端子5の筒部5aの端部に、締結部材8の抜けを防止するためのストッパ62を形成したものである。ストッパ62は、筒部5aの端部から径方向外側に突出するように設けられる。
【0064】
ストッパ62は、メス端子5の加圧成型後に筒部5aの端部を拡げて末広がり形状とする際に、筒部5aの端部の一部をさらに折り曲げて形成してもよいし、メス端子5の加圧成型と同時に形成するようにしてもよい。
【0065】
また、図6では、筒部5a端部の一部にストッパ62を形成する場合を示しているが、筒部5a端部の全周にわたってストッパを形成するようにしてもよい。
【0066】
ストッパ62を設けることで、締結時に締結部材8をスライドさせた際に、締結部材8が誤ってメス端子5から抜けてしまうことを防止できる。
【0067】
上記実施形態では、筒状のメス端子5を形成する場合を説明したが、メス端子の形状はこれに限定されない。例えば、オス端子部材として断面矩形状(平角状)の端子部(あるいは導体ピン部)を有するものを用いる場合は、突出部7の撚線導体3を2分割してクレビス状に成型して横断面視で矩形状(平角状)の2つの端子部を形成し、両端子部の外周に角筒状の締結部材8を設けるようにしてもよい。この場合、両端子部の端部を外側に拡げるように形成することで、オス端子部材の挿入・抜出に伴う接点部分の摩耗を抑えるようにするとよい。
【0068】
上記実施形態では、メス端子5の筒部5aにおける撚線導体3の厚さを一定としたが、図7に示すように、メス端子5の筒部5aにおける撚線導体3の厚さを、筒部5aの端部に向けて拡がるテーパ状に形成するようにしてもよい。すなわち、筒部5aの基部5c側の厚さd1よりも、筒部5aの端部の厚さd2が大きくなるよう、メス端子5の筒部5aをテーパ状に形成してもよい。
【0069】
この場合、中空部5bの径をオス端子11の端子部11aの外径よりもやや大きく形成することで、オス端子部材の挿入・抜出に伴う接点部分の摩耗を抑えることが可能である。図7のメス端子形状ケーブル71を形成する際は、メス端子成型器としてメス端子成型用孔がテーパ状に形成されたものを用い、加圧成型によりメス端子5を形成すればよい。
【0070】
本発明の導体接続構造は、例えば、ハイブリット車や電気自動車などで採用されている大電流用ワイヤハーネスのコネクタに用いられる。大電流用ワイヤハーネスのコネクタに本発明の導体接続構造を適用する場合、メス端子形状ケーブル1(または61)のメス端子5を覆うようにメス側コネクタを設けると共に、オス側端子形状ケーブル10のオス端子11を覆うようにオス側コネクタを設け、メス側コネクタとオス側コネクタを嵌合させる際に、メス端子5内にオス端子11が挿入されるようにすればよい。また、締結部材8をスライドさせるために、メス側コネクタにロック機構を設けるとよい。
【0071】
ここでは、一例として、ハイブリット車や電気自動車などで採用されている大電流用ワイヤハーネスのコネクタに本発明を適用する場合を説明したが、これに限定されるものではない。
【0072】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1 メス端子形状ケーブル
2 素線導体
3 撚線導体
4 絶縁層
5 メス端子
5a 筒部
5b 中空部
5c 基部
6 ケーブル
7 突出部
8 締結部材
9 スリット
10 オス端子形状ケーブル
11 オス端子部
15 ピン端子
16 導体ピン部
17 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線導体を撚り合わせた撚線導体と該撚線導体の外周に形成された絶縁層とからなるケーブルを、オス端子部材に接続するための導体接続構造において、
前記ケーブルの端部の撚線導体を前記絶縁層から突出させて突出部を形成すると共に、その突出部の端部中心から拡げて中空にして、前記突出部に前記オス端子部材を挿入するための筒状のメス端子を形成し、
前記メス端子の外周に、前記オス端子部材との接続時に前記メス端子を締め付けて、前記オス端子部材を締結する締結部材をスライド自在に設けたことを特徴とする導体接続構造。
【請求項2】
前記メス端子は、前記突出部の端部の撚線導体を拡径して筒状に成型した筒部を含み、前記筒部に、軸方向に沿って複数のスリットを形成し、前記筒部を周方向に分割するようにした請求項1記載の導体接続構造。
【請求項3】
前記スリットは、前記筒部を周方向に偶数個、均等に分割するよう形成される請求項2記載の導体接続構造。
【請求項4】
前記メス端子の筒部は、その端部に向けて末広がり形状に形成される請求項1〜3いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項5】
前記締結部材は、その内壁が前記メス端子の端部に向けて拡がるテーパ状に形成される請求項1〜4いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項6】
前記メス端子は、前記突出部の周囲にメス端子成型器を配置すると共に、前記突出部の端部に、先端が尖った突起部を有する押し込み部材を押し込み、前記突出部の複数の素線導体を内側から拡げると共に、前記メス端子成型器と前記押し込み部材間で加圧成型して形成される請求項1〜5いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項7】
前記メス端子の筒部は、前記加圧成型後、その端部を外側に拡げて末広がり形状に形成される請求項6記載の導体接続構造。
【請求項8】
前記メス端子は、前記突出部の複数の素線導体を内側から拡げて加圧成型した後、導電性の金属を付着させて形成される請求項1〜7いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項9】
前記メス端子は、前記撚線導体端部の複数の素線導体に導電性の金属を付着させた後、前記複数の素線導体を内側から拡げて加圧成型して形成される請求項1〜7いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項10】
前記締結部材が、前記撚線導体と同じ材料、またはステンレスからなる請求項1〜9いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項11】
前記オス端子部材が、ピン端子である請求項1〜10いずれかに記載の導体接続構造。
【請求項12】
前記オス端子部材が、複数の素線導体を撚り合わせた撚線導体と該撚線導体の外周に形成された絶縁層とからなるケーブルであり、該ケーブルの端部の撚線導体を絶縁層から突出させて突出部を形成すると共に、その突出部の端部を圧縮して縮径して、前記突出部に前記メス端子に嵌合するオス端子を形成したものである請求項1〜10いずれかに記載の導体接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−198979(P2010−198979A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44270(P2009−44270)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】