説明

導光部材およびそれを備えるマルチディスプレイ装置

【課題】 簡単な構成でかつ安価な製造コストで、マルチディスプレイ装置における非表示領域を目立たなくさせることができる導光部材、およびそれを備えるマルチディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 導光部材30は、画像を表示可能な表示パネル20および表示パネル20における表示領域V1を外囲するベゼル21を備える画像表示装置10を平面的に複数並べて構成されるマルチディスプレイ装置1に対し、隣接する表示領域V1間のベゼル21を被覆可能な長尺の形状に、かつ透光性を有する材料によって形成される長尺部を有し、被覆状態において、隣接する各表示領域V1から出射される表示光を取り込むとともに、取り込んだ光を隣接する表示領域V1の間で外部へ出射可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディスプレイ装置において画像を表示することができない額縁などの非表示領域を目立たなくさせるための導光部材、および、その導光部材を備えるマルチディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイとして、画像を表示可能な表示パネルを備える画像表示装置を、複数台縦横に隣接して配置することによって、全体として1つの大きな画像を表示可能なマルチディスプレイ装置が用いられるようになっている。
【0003】
マルチディスプレイ装置は、複数の表示パネルを並べることで大型の画面を容易に構築することができる反面、各画像表示装置間の継目部分には、ベゼルとも称される額縁が配置されるため、画像を表示することができない領域(以下、「非表示領域」と称する)が形成されることになる。この非表示領域により、マルチディスプレイ装置で表示される大型の画面は、格子状の線が入ったように見えてしまい、表示される画像の品位が低下してしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するための従来技術は、たとえば特許文献1に提案されている。特許文献1に記載される従来技術では、画像光を投影する複数の投影機と、各投影機から投影される画像光を平行光にする複数のフレネルレンズと、平行光にされた画像光の結像位置に設けられ、画像光を前方へ導く複数の導光体によって構成されるスクリーン部とを備え、各導光体において画像光入力端面に対して画像光出力端面が中心側に偏倚するように、各導光体を構成する光ファイバを湾曲させることにより、スクリーン部の前端面に、額縁の生じない統一画像表示面を形成したマルチディスプレイ装置が提案されている。
【0005】
この特許文献1に記載される従来技術では、マルチディスプレイ装置を実現するための構成が複雑となるだけでなく、マルチディスプレイ装置を実現するために、画素数に相当する本数の光ファイバの束が必要となり、製造コストが高額になってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−177632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡単な構成でかつ安価な製造コストで、マルチディスプレイ装置における非表示領域を目立たなくさせることができる導光部材、およびそれを備えるマルチディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像を表示可能な表示パネルと該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁とを備える画像表示装置を平面的に複数並べて構成されるマルチディスプレイ装置に取付可能な導光部材であって、
前記導光部材は、透光性を有する材料によって長尺の形状に形成され、マルチディスプレイ装置における隣接する表示領域間の額縁を被覆する長尺部を有し、
前記長尺部は、被覆状態において、隣接する各表示領域から出射される表示光を取り込むとともに、取り込んだ光を前記隣接する表示領域の間で外部へ出射可能に形成されていることを特徴とする導光部材である。
【0009】
また本発明は、前記長尺部は、
長手方向に沿って互いに平行に延び、被覆状態において、隣接する各表示領域に臨む一対の光入射面と、
前記一対の光入射面において、互いに離反する側の端縁に連なり、前記一対の光入射面が離間する幅方向および前記長手方向に垂直な高さ方向の一方側に向かって凸に形成される光出射面と、
前記一対の光入射面において、互いに近接する側の端縁に連なり、前記高さ方向の一方側に向かって凸に形成される光反射面とを含み、
前記光出射面には、凹凸が前記幅方向の外側から中央部に向かって密となるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記各光入射面は、矩形状に形成され、
前記各光入射面における短手方向の寸法は、幅方向の中央部における前記高さ方向の厚みよりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記光反射面には、鏡面が設けられていることを特徴とする。
また本発明は前記凹凸は、前記長手方向に沿って延びる突条または凹溝を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記光出射面は、湾曲面に形成されていることを特徴とする。
また本発明は、画像を表示可能な表示パネルと、該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁と、該表示パネルに対して光を照射するバックライトと、該バックライトの駆動を制御するバックライト制御部とを備え、平面的に並べて配置される複数の画像表示装置と、
隣接する表示領域間の額縁を被覆する、前記導光部材とを含み、
前記バックライト制御部は、前記表示領域における前記導光部材の光入射面に対向する領域から出射される光の光量が増大するように、前記バックライトの駆動を制御することを特徴とするマルチディスプレイ装置である。
【0013】
また本発明は、画像を表示可能な表示パネルと、該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁と、該表示パネルの駆動を制御する表示制御部とを備え、平面的に並べて配置される複数の画像表示装置と、
隣接する表示領域間の額縁を被覆する、前記導光部材とを含み、
前記表示制御部は、前記表示領域における前記導光部材の光入射面に対向する領域から出射される光の光量が増大するように、前記表示パネルの駆動を制御することを特徴とするマルチディスプレイ装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成でかつ安価な製造コストで、マルチディスプレイ装置における非表示領域を目立たなくさせることができる。これにより、マルチディスプレイ装置に表示される画像の品位が低下してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る導光部材30を備えるマルチディスプレイ装置1を示す斜視図である。
【図2】図1の切断面線II−IIから見た断面を簡素化して示す図である。
【図3】マルチディスプレイ装置1の正面図であって、導光部材30が取り外された状態のマルチディスプレイ装置1を示している。
【図4】導光部材30をその長手方向Yに垂直な仮想平面で切断したときの断面を拡大して示す断面図である。
【図5】マルチディスプレイ装置1の表示状態を示す正面図であり、図5(a)は、画像表示装置10に導光部材30が取り付けられていないときの画面の表示状態を示し、図5(b)は、画像表示装置10に導光部材30が取り付けられたときの画面の表示状態を示す図である。
【図6】他の実施形態に係る導光部材30Aをその長手方向Yに垂直な仮想平面で切断したときの断面を拡大して示す断面図である。
【図7】本実施例におけるマルチディスプレイ装置1を図1の切断面線II−IIから見た断面図である。
【図8】本実施例におけるマルチディスプレイ装置1を構成する液晶表示装置10のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る導光部材30を備えるマルチディスプレイ装置1を示す斜視図である。図2は、図1の切断面線II−IIから見た断面を簡素化して示す図である。図3は、マルチディスプレイ装置1の正面図であって、導光部材30が取り外された状態のマルチディスプレイ装置1を示している。
【0017】
マルチディスプレイ装置1は、画像情報に応じた画像を表示可能な表示パネル20を備える複数台の画像表示装置10を、各表示パネル20がマトリクス状にまたは一方向に沿って平面的に並ぶように、互いに近接させて配置することによって構成され、各画像表示装置10に対し、1つの画像を表示パネル20の配置に応じて分割した分割画像の画像情報を与えることによって、複数の表示パネル20が全体として前記1つの画像を表示することができるように構成されている。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るマルチディスプレイ装置1は、4台の画像表示装置10を、縦横2×2のマトリクス状に並ぶように配置して構成されている。他の実施形態では、たとえば16台の画像表示装置10を、縦横4×4のマトリクス状に並ぶように配置して構成してもよく、一方向に沿って3台の画像表示装置10が並ぶように配置して構成してもよい。
【0019】
マルチディスプレイ装置1を構成する各画像表示装置10には、矩形平板状に構成される表示パネル20の厚み方向一方側の面であって、画像が表示される側の面(以下、「表示面」と称する)20aにおける矩形枠状の周縁領域を覆うように、額縁であるベゼル21が設けられる。ベゼル21は、表示パネル20の表示面20aにおける前記周縁領域の形状に対応して、矩形枠状に形成されている。以下、表示パネル20の表示面20aにおいて、ベゼル21に覆われずに、外部に露出している領域を、「表示領域」と称する。すなわち、各画像表示装置10の表示領域V1に、前記分割画像が表示される。
【0020】
したがって、マルチディスプレイ装置1を正面(すなわち、表示面20aに対向する側)から見たとき、平面的に並んで配置される各表示領域V1によって挟まれる領域には、ベゼル21の表面が露出し、画像を表示することができない。このように、マルチディスプレイ装置1を正面から見たとき、画像を表示することができない領域を、「非表示領域」と称する。
【0021】
図3に示すように、非表示領域V2には、各表示領域V1によって挟まれる領域(以下、「第1非表示領域」と称する)V21だけでなく、全ての表示領域V1および第1非表示領域V21を外囲する矩形枠状の領域(以下、「第2非表示領域」と称する)V22も含まれるものとする。
【0022】
本実施形態に係るマルチディスプレイ装置1は、図1および図2に示すように、非表示領域V2、特に、第1非表示領域V21に配置されるベゼル21を覆う導光部材30を含んで構成される。導光部材30は、一方向に延びる長尺の部材として形成され、隣接する一対の表示領域V1間に配置されるベゼル21の延在方向と導光部材30の長手方向とが一致するように、かつ、そのベゼル21に近接する一方の表示領域V1の縁領域V11(図4参照)から他方の表示領域V1の縁領域V11に亘って、その縁領域V11間に配置されるベゼル21を跨ぐように設けられる。
【0023】
以下、導光部材30の構成について詳細に説明する。
図4は、導光部材30をその長手方向Yに垂直な仮想平面で切断したときの断面を拡大して示す断面図である。図4では、導光部材30が取り付けられた状態を示し、隣接する一対の画像表示装置10を仮想線で図示している。
【0024】
導光部材30は、図4に示すように、長手方向Yに垂直な断面の形状が、大略的にアーチ形状となるように形成される。ここで、長手方向Yに垂直な導光部材30の断面において、アーチの一端から他端に延びる方向(すなわち、図4における左右方向)を、導光部材30の幅方向Xと規定し、幅方向Xおよび長手方向Yのいずれにも垂直な方向(すなわち、図4における上下方向)を、導光部材30の高さ方向Zと規定する。すなわち、図4に示すように、導光部材30は、その幅方向Xとベゼル21の幅方向とが一致するように、隣接する一対の画像表示装置10に取り付けられる。
【0025】
導光部材30は、透光性を有する材料によって形成され、たとえばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、ガラスなどによって形成される。
【0026】
導光部材30は、幅方向Xの一端部および他端部に、隣接する一対の表示領域V1の各縁領域V11から出射される表示光を内部に採り込むための平坦な光入射面31がそれぞれ形成される。この2つの光入射面31は、いずれも矩形状に形成され、また、長手方向Yに沿って互いに平行に延びるように、かつ、導光部材30の高さ方向Zに垂直な仮想一平面上に形成されている。
【0027】
また、導光部材30は、2つの光入射面31それぞれの外縁31aに連なり、高さ方向Zの一方側に向かって凸に形成される光出射面32と、2つの光入射面31それぞれの内縁31bに連なり、高さ方向Zの一方側に向かって凸に形成される光反射面33とを有する。ここで、外縁31aとは、各光入射面31において、導光部材30の幅方向Xの外側に配置される端縁(互いに離反する側の端縁)のことであり、また内縁31bとは、各光入射面31において、導光部材30の幅方向Xの中央部35側に配置される端縁(互いに近接する側の端縁)のことである。
【0028】
光出射面32は、各光入射面31を介して導光部材30の内部に採り込まれた表示光が外部へ出射されるように形成される面であり、本実施形態では、図4に示すように、この光出射面32には、外方に向かって突出し、長手方向Yに沿って延びる複数の突条34が一体的に形成されている。この複数の突条34は、より詳細には、光出射面32において、導光部材30の幅方向Xの中央部35に向かうにつれて、互いの間隔が狭くなるように形成される。すなわち、光出射面32には、導光部材30の幅方向Xの中央部35に向かうにつれて、突条34が密に設けられている。このような複数の突条34を有する導光部材30は、たとえば押出成形によって容易に作製することができる。
【0029】
また、光反射面33は、高い反射率で光を反射するように構成され、たとえばアルミニウム合金等の金属薄膜を蒸着によって形成し、この金属薄膜を白鏡面仕上げ、鏡加工、メッキ処理などの各種の処理を行うことによって鏡面に加工されて形成される。
【0030】
図4に示すように、本実施形態の導光部材30では、光出射面32および光反射面33はいずれも、高さ方向Zの一方側に凸の湾曲面によって形成されている。より詳細には、導光部材30の幅方向Xの中央部35に向かうにつれて、幅方向Xに延びる仮想線に対する傾斜角が小さくなるような湾曲面によって形成される。したがって、導光部材30の幅方向Xの中央部35が、アーチの頂部に相当する。
【0031】
さらに、本実施形態の導光部材30では、幅方向Xの中央部35に向かうにつれて、光出射面32と光反射面33とが近接するように形成される。したがって、導光部材30は、幅方向Xの中央部35、つまり前記アーチの頂部において、厚さ(高さ方向Zの寸法)Tが最も小さくなるように形成されている。
【0032】
このように形成される導光部材30は、図4に示すように、導光部材30の幅方向Xとベゼル21の幅方向とが一致するように、すなわち2つの光入射面31が表示パネル20の表示面20aに対して平行になるように、隣接する一対の画像表示装置10に取り付けられる。したがって、画像表示装置10へ取り付けられた状態において、導光部材30の光反射面33は、前記一対の画像表示装置10におけるベゼル21に臨み、導光部材30の光出射面32は、表示面20aに対向する側を臨む。
【0033】
導光部材30の画像表示装置10への取付は、たとえば両面粘着テープなどの接着具を用い、ベゼル21に接着固定することによって実現されてもよい。しかしながら、このような接着による取付方法に限定されず、周知の技術に基づく取付方法であってもよい。
【0034】
導光部材30の寸法は、取付対象の画像表示装置10の構成に応じて適宜決定され、たとえば、2つの光入射面31が幅方向Xに離間する距離W2は、隣接する一対の画像表示装置10の各ベゼル21の幅に応じて決定される。
【0035】
また、各光入射面31の幅方向Xの寸法W1は、光入射面31を介して第1非表示領域V21へ導かれる表示光の光量を増加させるという観点から、光入射面31の面積を増大させるために、できるだけ大きくとる方が好ましい。しかしながら、光入射面31の幅方向Xの寸法W1は、画像表示装置10の表示領域V1における縁領域V11の幅に対応するため、光入射面31の幅方向Xの寸法W1が大きくなる程、導光部材30によって画像が不鮮明に見える領域が増大してしまう。したがって、各光入射面31の幅方向Xの寸法W1は、取付対象の画像表示装置10の表示領域V1のサイズ、画面解像度および画素のサイズなどを考慮して決定するのが好ましく、たとえば1〜5画素分に相当する寸法に等しくなるように決定してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、図4に示すように、画像表示装置10に取り付けられたときに、光入射面31と表示パネル20とが当接するように形成されているが、光入射面31と表示パネル20との間に間隙が設けられるように形成されてもよい。
【0037】
なお、導光部材30を形成するに当たっては、図4に示すように、各光入射面31の幅方向Xの寸法W1が、導光部材30の幅方向Xの中央部35の厚さTよりも大きくなるように形成することが好ましい。このような構成によって、第1非表示領域V21へ導かれる表示光の光量を増加させるとともに、導光部材30を画像表示装置10に取り付けたときの導光部材30の表示面20aからの突出量を小さくすることができる。
【0038】
ここで、導光部材30の具体的な寸法の一例を挙げると、マルチディスプレイ装置1が、画面解像度が1920×1080ピクセル、画面サイズが60インチ、および、ベゼル21の幅が3mmの画像表示装置10を並べて構成されている場合、導光部材30の各光入射面31は、その幅方向Xの寸法W1が5mm程度に形成され、また、導光部材30の幅方向Xの中央部35は、その厚みTが1mm程度に形成される。
【0039】
図5は、マルチディスプレイ装置1の表示状態を示す正面図であり、図5(a)は、画像表示装置10に導光部材30が取り付けられていないときの画面の表示状態を示し、図5(b)は、画像表示装置10に導光部材30が取り付けられたときの画面の表示状態を示す図である。
【0040】
前述するような導光部材30を、図4に示すように、第1非表示領域V21に配置されるベゼル21を跨ぐように、隣接する一対の画像表示装置10に取り付けることによって、各表示領域V1の縁領域V11から出射された表示光を、縁領域V11に臨む各光入射面31を介して導光部材30の内部へ入射させ、そして、導光部材30の内部へ入射した表示光を、導光部材30の光出射面32で全反射させるとともに、光反射面33で反射させて、導光部材30の幅方向Xの中央部35へ向けて導光させつつ、光出射面32から外方に向かって出射させることができる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、表示領域V1から出射される表示光の一部を利用して、第1非表示領域V21から光を出射させることができる。より詳細には、隣接する画像表示装置10の間で画像が途切れる部分の光をそれぞれ導いて、第1非表示領域V21から光を出射させることができる。これにより、本実施形態に係る導光部材30が取り付けられていないマルチディスプレイ装置では、図5(a)に示すように、分割画像の途切れる部分に格子状の線21Lが視認されていたのに対し、導光部材30を取り付けることによって、画像が途切れる部分の表示色によって第1非表示領域V21が補完され、図5(b)に示すように、格子状の線21Lを目立たなくさせることができる。したがって、マルチディスプレイ装置1全体に表示される画像の品位が低下してしまうことを防止することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、光出射面32には、中央部35に向かうにつれて密となるように複数の突条34が形成されているので、導光部材30の内部に入射した表示光を、幅方向Xの一端部から他端部に亘って、均一に出射させることができる。これにより、前記格子状の線21Lを確実に目立たなくさせることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、前記のように構成される導光部材30を隣接する一対の画像表示装置10に取り付けるだけでよく、簡単な構成でかつ安価な製造コストで、上記のような効果を達成することができる。
【0044】
上記の実施形態に係る導光部材30では、光出射面32が湾曲面によって形成されているが、これに限らず、平面を連接することによって、高さ方向Zの一方側に向かって凸になるように形成してもよい。このような場合であっても、同様の効果を達成することができる。
【0045】
また上記の実施形態では、非表示領域V2のうち第1非表示領域V21に配置されるベゼル21だけを覆うように導光部材30を取り付けているが、第1非表示領域V21だけでなく、さらに第2非表示領域V22に配置されるベゼル21を覆うように導光部材30を取り付けてもよい。
【0046】
また、他の実施形態では、導光部材30を、透光性を有する材料内に、透光性を有する合成樹脂の微粒子、または、ガラスおよびアクリル樹脂などから成る中空の微粒子、または気泡などの光拡散材料を混入することによって構成してもよい。これにより、光入射面31を介して入射した表示光を、導光部材30の内部で拡散させることができる。
【0047】
図6は、他の実施形態に係る導光部材30Aをその長手方向Yに垂直な仮想平面で切断したときの断面を拡大して示す断面図である。本実施形態に係る導光部材30Aは、前述する実施形態に係る導光部材30と略同一に構成されているので、対応する部分についてはそれぞれ同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。
【0048】
本実施形態に係る導光部材30Aの光出射面32には、前述する実施形態に係る導光部材30における突条34に代えて、長手方向Yに沿って延びる複数の凹溝36が、導光部材30Aの幅方向Xの中央部35に向かうにつれて、互いの間隔が狭くなるように形成されている。このように、凹溝36を光出射面32に形成した場合であっても、前述する実施形態と同様の効果を達成することができる。
【0049】
また、さらに他の実施形態に係る導光部材の光出射面32には、長手方向Yに沿って延びる突条34や凹溝36に代えて、突起または凹部を点在させるように形成してもよい。この場合、突起または凹部は、導光部材の幅方向Xの中央部35に向かうにつれて密に存在するように光出射面32に形成される。このように、突起または凹部を形成した場合であっても、前述する実施形態と同様の効果を達成することができる。
【0050】
以下、マルチディスプレイ装置1を構成する画像表示装置10が、液晶表示装置である場合を例に挙げて説明する。
【0051】
図7は、本実施例におけるマルチディスプレイ装置1を図1の切断面線II−IIから見た断面図である。マルチディスプレイ装置1は、平面的に並んで配置される複数の液晶表示装置10と、前述する導光部材30とを含んで構成される。
【0052】
液晶表示装置10は、非発光型の表示パネルである液晶パネル20と、液晶パネル20の表示面20aにおける矩形枠状の周縁領域を覆うベゼル21と、液晶パネル20の背面側に設けられるバックライトユニット22と、液晶パネル20とバックライトユニット22との間に設けられる複数の光学部材23と、フレーム24とを含んで構成される。
【0053】
液晶パネル20は、横長な矩形状に形成された一対の透光性を有するガラス製の基板と、その一対の基板間に、電界印加に伴って光学特性が変化する物質である液晶分子を封入することによって形成された液晶層とを備え、液晶層の厚さ分のギャップを維持した状態で、一対の基板がシール剤によって貼り合わせられることによって構成されている。矩形状の液晶パネル20は、液晶表示装置10の画面サイズが60インチの場合、短辺の寸法が760mm程度であり、長辺の寸法が1340mm程度である。
【0054】
一対の基板のうち、一方の基板はCF(Color Filter)基板であり、他方の基板はTFT(Thin Film Transistor)基板である。TFT基板には、液晶層に臨む内面側に、スイッチング素子であるTFTおよび画素電極が多数個並んで設けられるとともに、これらTFTおよび画素電極の周りには、格子状をなすゲート配線およびソース配線が取り囲むようにして配設されている。画素電極は、ITO(Indium Tin Oxide)またはZnO(Zinc Oxide)といった透明電極からなる。
【0055】
一方、CF基板には、液晶層に臨む内面側に、各画素に対応した位置に多数個のカラーフィルタが並んで設けられている。カラーフィルタは、R(red),G(green),B(blue)の三色のサブピクセルが交互に並ぶ配置とされる。各カラーフィルタ間には、混色を防ぐための遮光層(ブラックマトリクス)が形成されている。カラーフィルタおよび遮光層の表面には、TFT基板側の画素電極と対向する対向電極が設けられている。また、各基板の前記内面側には、液晶層に含まれる液晶分子を配向させるための配向膜がそれぞれ形成され、各基板の内面側とは反対側の外面側には、偏光板がそれぞれ貼り付けられている。
【0056】
バックライトユニット22は、一方に開口した略箱型に形成されるバックライトシャーシ22aと、バックライトシャーシ22aに収容される光源22bと、バックライトシャーシ22a内に敷設される図示しない反射シートとを備える。
【0057】
バックライトシャーシ22aは、金属製であり、液晶パネル20と同様の横長な矩形状に形成された底板と、該底板の周縁部から立ち上がる側板とによって、一方に開口した略箱型に形成されている。
【0058】
光源22bは、バックライトシャーシ22aにおける底板の内面に設置され、光を出射して、液晶パネル20を照明する。本実施例では、光源22bは、複数のLED(Light Emitting Diode)ランプを、底板の内面上にマトリクス状に配置することによって構成され、さらに、各LEDランプを個別に制御することによって、エリアごとに光量の制御ができるように構成されている。
【0059】
反射シートは、光の反射性に優れた白色を呈する合成樹脂製であり、バックライトシャーシ22aにおける底板の内面、および側板に装着されるフレーム24の内面を覆うように敷設される。この反射シートにより、光源22bから出射した光の殆どを、バックライトシャーシ22aの開口側へ導くことができる。
【0060】
光学部材23は、光学シート40と、拡散板41とを含んで構成される。光学シート40は、本実施形態では、2枚の光学シート40aおよび光学シート40bによって構成される。光学シート40は、表示画質を向上させるための種々の機能が付与された機能性樹脂シートから成る。たとえば、拡散板41を介して背面側から到達した光の進行の向きを、前面側に向ける機能を有する。
【0061】
拡散板41は、光源22bから発せられた光を、面方向に拡散することによって、輝度が局所的に偏ることを防止する。拡散板41では、輝度が面方向に偏ることを防ぐために、光の進行方向は、ベクトル成分として、面方向の成分を多く含む。これに対し光学シート40は、面方向のベクトル成分を多く含む光の進行方向を、厚み方向の成分を多く含む光の進行方向に変換する。具体的には、光学シート40は、レンズまたはプリズム状に形成される部分が面方向に多数並んで形成され、これによって、厚み方向に進行する光の拡散度を小さくする。
【0062】
フレーム24は、樹脂製であり、大略的に筒状であって、バックライトシャーシ22aにおける側板の内面を覆うような形状に形成されている。フレーム24は、該側板に装着され、ビスなどの締結具によって、側板に対して固定される。
【0063】
導光部材30は、前述するように、隣接する一対の表示領域V1間に配置されるベゼル21の延在方向と導光部材30の長手方向とが一致するように、かつ、そのベゼル21に近接する一方の表示領域V1の縁領域V11から他方の表示領域V1の縁領域V11に亘って、その縁領域V11間に配置されるベゼル21を跨ぐように設けられる。
【0064】
図8は、本実施例におけるマルチディスプレイ装置1を構成する液晶表示装置10のブロック図である。分割画像の映像信号を復号して得られたRGBデジタル信号は、映像回路基板50内の映像信号処理回路51に送られる。映像信号処理回路51では、この信号を液晶パネル20に表示するのに適した信号に変換して制御回路基板60内のエリアアクティブ制御回路61に送信する。
【0065】
制御回路基板60内には、各種パラメータを記憶するメモリ62が設けられている。エリアアクティブ制御回路61は、入力されたRGBデジタル信号を解析し、メモリ62を参照しながら複数のPWM信号およびRGB補正後映像信号を生成する。PWM信号はLED基板70に送信され、各LED駆動回路71のイネーブル端子に入力される。このイネーブル端子によって、LED駆動回路71のスイッチングコンバータとしての動作/停止が切り替わるようになっている。したがって、このPWM信号のデューティを0%から100%まで変化させることによって、LEDランプ90を全消灯から全点灯まで任意に調光することができる。
【0066】
また、RGB補正後映像信号は、液晶コントローラ80に送信された後、適切なタイミングで液晶パネル20上の図示しないソースドライバおよびゲートドライバに送信され、画像として液晶パネル20上に表示される。
【0067】
本実施例におけるマルチディスプレイ装置1の各液晶表示装置10では、エリアアクティブ制御回路61が、導光部材30によって覆われる縁領域V11に対応して配置されている各LEDランプ90のLED駆動回路71に対し、デューティを増大させたPWM信号を送信するように構成されている。この場合、エリアアクティブ制御回路61およびLED駆動回路71が、バックライト制御部に相当する。
【0068】
これにより、導光部材30によって覆われる縁領域V11から出射される表示光の光量が増大し、第1非表示領域V21へ導かれる表示光の光量を増大させることができる。したがって、図5(a)に示されるような格子状の線21Lを確実に目立たなくさせることができる。
【0069】
本実施例では、前記のように、エリアアクティブ制御回路61が、縁領域V11に対応して配置される各LEDランプ90の輝度を上昇させるように構成されているが、他の実施例では、エリアアクティブ制御回路61が、縁領域V11に表示される画像のコントラストを上げるように、画素値を補正したRGB補正後映像信号を生成するように構成してもよい。この場合、エリアアクティブ制御回路61および液晶コントローラ80が、表示制御部に相当する。
【0070】
このような場合であっても、導光部材30によって覆われる縁領域V11から出射される表示光の光量が増大し、第1非表示領域V21へ導かれる表示光の光量を増大させることができる。したがって、図5(a)に示されるような格子状の線21Lを確実に目立たなくさせることができる。
【0071】
前記の実施例では、マルチディスプレイ装置1を構成する画像表示装置として液晶表示装置10が用いられているが、画像表示装置としては、画像を表示可能な表示パネルを備え、その表示パネルにおける画像表示領域を外囲するようにベゼルが設けられているものであれば、液晶表示装置10に限らず、たとえば、自発光型の表示パネルであるプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel)を備えるプラズマディスプレイ装置、および自発光型の表示パネルである有機EL(Electroluminescence)パネルを備える有機ELディスプレイ装置などであってもよい。
【0072】
以上の実施形態では、導光部材30を備えるマルチディスプレイ装置1について説明したが、前述するような導光部材30は、単一の画像表示装置のベゼルに対して取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 マルチディスプレイ装置
10 画像表示装置
20 表示パネル
20a 表示面
21 ベゼル
30 導光部材
31 光入射面
32 光出射面
33 光反射面
34 突条
35 中央部
36 凹溝
V1 表示領域
V11 縁領域
V2 非表示領域
V21 第1非表示領域
V22 第2非表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示可能な表示パネルと該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁とを備える画像表示装置を平面的に複数並べて構成されるマルチディスプレイ装置に取付可能な導光部材であって、
前記導光部材は、透光性を有する材料によって長尺の形状に形成され、マルチディスプレイ装置における隣接する表示領域間の額縁を被覆する長尺部を有し、
前記長尺部は、被覆状態において、隣接する各表示領域から出射される表示光を取り込むとともに、取り込んだ光を前記隣接する表示領域の間で外部へ出射可能に形成されていることを特徴とする導光部材。
【請求項2】
前記長尺部は、
長手方向に沿って互いに平行に延び、被覆状態において、隣接する各表示領域に臨む一対の光入射面と、
前記一対の光入射面において、互いに離反する側の端縁に連なり、前記一対の光入射面が離間する幅方向および前記長手方向に垂直な高さ方向の一方側に向かって凸に形成される光出射面と、
前記一対の光入射面において、互いに近接する側の端縁に連なり、前記高さ方向の一方側に向かって凸に形成される光反射面とを含み、
前記光出射面には、凹凸が前記幅方向の外側から中央部に向かって密となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導光部材。
【請求項3】
前記各光入射面は、矩形状に形成され、
前記各光入射面における短手方向の寸法は、幅方向の中央部における前記高さ方向の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の導光部材。
【請求項4】
前記光反射面には、鏡面が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の導光部材。
【請求項5】
前記凹凸は、前記長手方向に沿って延びる突条または凹溝を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の導光部材。
【請求項6】
前記光出射面は、湾曲面に形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の導光部材。
【請求項7】
画像を表示可能な表示パネルと、該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁と、該表示パネルに対して光を照射するバックライトと、該バックライトの駆動を制御するバックライト制御部とを備え、平面的に並べて配置される複数の画像表示装置と、
隣接する表示領域間の額縁を被覆する、請求項2〜6のいずれか1つに記載の導光部材とを含み、
前記バックライト制御部は、前記表示領域における前記導光部材の光入射面に対向する領域から出射される光の光量が増大するように、前記バックライトの駆動を制御することを特徴とするマルチディスプレイ装置。
【請求項8】
画像を表示可能な表示パネルと、該表示パネルにおける画像の表示領域を外囲する額縁と、該表示パネルの駆動を制御する表示制御部とを備え、平面的に並べて配置される複数の画像表示装置と、
隣接する表示領域間の額縁を被覆する、請求項2〜6のいずれか1つに記載の導光部材とを含み、
前記表示制御部は、前記表示領域における前記導光部材の光入射面に対向する領域から出射される光の光量が増大するように、前記表示パネルの駆動を制御することを特徴とするマルチディスプレイ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−150366(P2012−150366A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10277(P2011−10277)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】