説明

導光部材

【課題】大型の太陽光受光面(例えば1m超)を有し、受光した太陽光を効率的に導光することができる部材であって、簡便な方法で製造することができる導光部材を提供することを目的とする。
【解決手段】反射性金属膜が積層された太陽光受光面と、前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、前記導光層に太陽電池を取付けるための取付け部とを備える導光部材であって、前記受光面には、前記金属膜を貫通し、前記導光層に達する凹部からなる入射口を有し、かつ前記凹部の内側面は逆錘形状である、導光部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光部材、特に、太陽光を太陽電池(例えば、多接合型化合物太陽電池)に導光するための導光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のなかで最も効率が高く、集光型太陽電池に適している太陽電池として、多接合型III-V族化合物太陽電池がある。このような高効率の太陽電池への集光構造として、太陽電池素子に太陽光を効率的に導光するための導光構造を組み合わせたものがある(例えば、特許文献1や非特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に示されている太陽電池の導光構造を、図9Aに示す。図9Aは、太陽電池の導光構造の模式断面図である。図9Aに示す導光構造200は、受光層210と、導光層220と、乱反射層230と、太陽電池素子100と、を有する。
【0004】
従来の導光構造として、プリズムアレイシートで光に方向性を持たせる技術も提案されている(非特許文献1を参照)。図9Bに示されるように、プリズムアレイシート300で方向性を与えた光を、さらに別部品の導光構造のリフレクター310で太陽電池320に集光させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-212280号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本太陽エネルギー学会 2009年、通号189、P53〜60「進化的アルゴリズムによる集光PV用プリズムアレイシートの最適設計」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の導光構造200では、受光層210と導光層220とを別部品で構成し、貼りあわせるため、生産リードタイムが長くなる。大型サイズ(例えば1m超)の受光面を有する受光層と導光層とを均一に貼りあわせることは、熱膨張係数の違いから困難であった。また、乱反射層230は、光を様々な方向に乱反射させるため、太陽電池素子100にむかって効率的に導光させることができず、太陽電池素子100への光の集光率を低下させる課題がある。
【0008】
また、非特許文献1に示される導光構造でも、プリズムアレイシート300とリフレクター310とが別個の部品であり、適切なギャップを保持しながら一体化する必要がある。そのため、生産リードタイムが長くなり、大型サイズ(例えば、1m超)のプリズムアレイシートとリフレクターとをはり合わせようとすると、安定したギャップを保持できない。
【0009】
また、太陽光のリフレクターへの入射角によっては、一旦リフレクターに入射した光が、再度リフレクターから出射し、太陽電池320への集光効率が低下する。また、リフレクター310は、受光面に対して傾けて(θ)配置されるため、リフレクター310が大きくなると太陽電池320も大きくなり、しかも重量が重くなるため、実用性が低い。
【0010】
そこで本発明は、大型の太陽光受光面(例えば1m超)を有し、受光した太陽光を効率的に導光することができる部材であって、簡便な方法で製造することができる導光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一は、以下のように構成される導光部材に関する。
[1]反射性金属膜が積層された太陽光受光面と、前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、前記導光層に太陽電池を取付けるための取付け部と、を備える導光部材であって、
前記受光面には、前記金属膜を貫通し、前記導光層に達する凹部からなる入射口を有し、かつ前記凹部の内側面は逆錘形状である、導光部材。
【0012】
前記[1]の導光部材によれば、生産リードタイムの短縮と同時に、導光部材の大判化(例えば、受光面を1m以上とする)と、集光効率の向上とが実現される。
【0013】
本発明の第二は、以下のように構成される導光部材に関する。
[2]太陽光受光面と、前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、前記導光層に太陽電池を接続するための取付け部と、を備える導光部材であって、
前記太陽光受光面と対向する面は非対称プリズム面であり、前記導光層を導光する光を、前記接続部にまで導光させやすくする、導光部材。
【0014】
前記[2]の導光部材によれば、導光層に入射した太陽光を、より効率的に太陽電池素子に集光することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の太陽電池の導光部材によれば、太陽光を効率的に太陽電池に導光することができる。また、太陽電池素子サイズよりも、大きな面積に照射される太陽光を太陽電池素子に導光して効率的に発電できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の導光部材の全体構成を示す模式断面図(図1A)と、図1AにおけるA部の拡大図(図1A)である。
【図2】本発明の導光部材において、受光面に照射された太陽光が、表面凹部からなる入射口を経て、導光層に入射する様子を示す図(図2A)と、導光層に入射した光が、導光層内部を導光する様子を示す図(図2B)である。
【図3】本発明の導光部材の製造フローの第1工程(導光材料基板を用意する工程)を示す図(図3A)と、第2工程(受光面の裏面に凹部を形成する工程)を示す図(図3B)である。
【図4】本発明の導光部材の製造フローの第3工程(導光材料基板の表面に、金属膜を成膜する工程)を示す図(図4A)と、第4工程(受光面に凹部を形成する工程)を示す図(図4B)である。
【図5】本発明の導光部材の導光層に、太陽電池を配置する様子を示す図である。
【図6】太陽電池を、インターポーザー基板に実装する様子を示す図である。
【図7】多接合型化合物太陽電池の構造と、太陽光の吸収スペクトルを示す図である。
【図8】多接合型化合物太陽電池パッケージの詳細構造を示す図である。
【図9】従来の太陽電池の導光構造の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.導光部材について
本発明の第一の導光部材は、1)反射性金属膜が積層された太陽光受光面と、2)前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、3)前記導光層に太陽電池を取付けるための取付け部と、を備える。太陽光は、太陽光受光面から導光層に入射し、導光層の内部を導光して、取付け部に集光される。第一の導光部材は、太陽光受光面に配置された入射口に特徴がありうる。
【0018】
すなわち、本発明の第一の導光部剤の太陽光受光面には、前記金属膜を貫通し、前記導光層に達する凹部からなる入射口が配置され、かつ前記凹部は逆錘形状の凹部とされている。それにより、太陽光受光面に照射された光は、どのような角度で照射されても、効率的に入射口を経て導光層に入射できる(図2A参照)。
【0019】
また、本発明の第一の導光部材の太陽光受光面の入射口以外の面には、前記金属膜が配置されているので、一旦導光層に入射した光が、太陽光受光面から漏出することが抑制される(図2B参照)。
【0020】
本発明の第二の導光部材は、1)太陽光受光面と、2)前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、3)前記導光層に太陽電池を取付けるための取付け部と、を備える。第一の導光部材と同様に、太陽光は、太陽光受光面から導光層に入射し、導光層の内部を導光して、取付け部に集光される。第二の導光部材は、太陽光受光面に対して反対の面に特徴がありうる。
【0021】
すなわち、本発明の第二の導光部材の太陽光受光面に対して反対の面は、非対称プリズム面とされている。非対称プリズムの形状を調整することで、導光層内部に入射して、導光層を導光する太陽光を、効率的に、太陽電池取付け部にまで導光させやすくしている(図2B参照)。
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る太陽電池の導光部材について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0023】
<導光部材の全体構成>
図1Aは、本発明の一実施形態の導光部材の全体構成を示す概略断面図である。図1Aに示すように、導光部材50は、太陽電池素子10に太陽光を導光するために用いられる。導光部材50の形状は特に制限されないが、シート状とすることができ、例えば細長いシート状とする。
【0024】
導光部材50は、導光層1と、導光層1の表面に積層された金属膜2と、を有する。導光部材のうち、太陽光を受光する面(受光面)には、表面凹部3からなる入射口が複数形成されている。一方、導光部材50の受光面とは反対側の面は、裏面凹部7からなる非対称プリズムが形成されており、非対称プリズム面とされている。
【0025】
導光層1の材料は、太陽光が透過できる透明材料であればよく、各種樹脂やガラスでありうる。透明樹脂の具体例には、完全フッ素化ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル(PMMA)、ポリアミド、ポリエステル及びこれらを主成分とする共重合体、並びにこれらの混合物が含まれる。ガラスの例には、石英ガラスが含まれる。
【0026】
導光層1の厚みは、0.5〜10mmであることが好ましく、例えば、約3mmである。
【0027】
金属膜2は、反射性の金属であることが好ましく;反射性の金属の例には、Ag、Al、Au、Pt、Pdなどが含まれるが、AgまたはAlが好ましい。金属膜2の厚みは特に限定されないが、通常は10〜30μmの範囲である。
【0028】
図1Bは、図1AのA部拡大図である。入射口を構成する表面凹部3の内側面がなす角度θは、30°≦θ<90°であることが好ましい。受光面に照射された光を、入射口を経て効率的に導光層1に入射させるためである。つまり、入射口を構成する表面凹部3の内側面(入射反射面2X,図2A参照)が、太陽光の導光層1への入射を促進する。
【0029】
入射口を構成する表面凹部3の、導光層1における幅(入射口幅5)は、1.2μm〜2μmであることが好ましい。入射口を構成する表面凹部3の、導光層1における深さ(入射口深さ6)は、0.6〜2μmであることが好ましい。入射口幅5や入射口深さ6は、太陽光を効率良く回折させながら、効率よく導光層1に入射させることができるように設定すればよい。上述のサイズは、太陽光スペクトルの波長650〜1200nmまで利用するために設定したサイズである。
【0030】
一方、導光部材50の裏面凹部7は、非対称プリズム構造を構成している。長辺側7aでの反射光が太陽電池10に進行し、短辺側7bでの反射光が太陽電池10とは逆側に進行するようにする。このようにすることで、導光層1を導光する太陽光が、効率的に太陽電池10に導光される。裏面凹部深さ8は、1〜100μmであることが好ましく、裏面凹部の内側面がなす角度(プリズムの頂角θ’)は、90°<θ’≦150°であることが好ましい。
【0031】
本発明の導光部材は、太陽電池に太陽光を集光するために用いられる。具体的には、導光部材50は、太陽電池10を取付けるための取付け部30を有する。取付け部30には金属膜2が積層されておらず、導光層1が露出している。導光部材50がシート状部材である場合には、例えば、シート側面に取付け部50を設けることができる。
【0032】
導光部材50の取付け部30に取付けられる太陽電池10は、その受光面を、取付け部50の面に対向させて配置される。太陽電池10は、導光部材50の取付け部30に固定されることが好ましい。固定は、例えば透明接着剤24にて行えばよい。
【0033】
<太陽電池素子>
導光部材50の取付け部30に取付けられる太陽電池10は、太陽光を電気エネルギーに変換できる素子であればよく、公知の種々の素子が利用できる。公知の太陽電池素子の例には、シリコン系、化合物系、有機物系太陽電池が含まれる。シリコン系太陽電池には、単結晶又は多結晶の結晶系シリコン太陽電池や、アモルファスシリコンを薄膜状に成膜した薄膜系シリコン太陽電池などがある。化合物系太陽電池には、銅・インジウム・セレンなどを原料とするCIS系太陽電池や、ガリウム砒素などの化合物半導体を用いたGaAs系太陽電池のほか、Ge系太陽電池やCdTe-CdS系太陽電池などがある。また有機物系太陽電池には、色素増感型太陽電池などがある。
【0034】
特に、GaAs系太陽電池は素子に入射される光エネルギーの増加に対する光電変換効率が高く、導光部材を組み合わせることで効果的に発電量が高まる。本発明に好適に用いられうる多接合型GaAs系太陽電池について後述する。
【0035】
本発明の導光部材50の受光面に照射された太陽光26は、入射口を通じて導光層1に入射し、導光層1の内部を太陽電池の取付け部30にまで導光される(図2AB)。
【0036】
具体的には、表面凹部3からなる入射口に入射した太陽光26は、入射反射面2Xで反射を繰り返しながら、導光層1の受光面に形成された入射口に集光されながら入射する(図2A)。導光層1に入射した太陽光26は、導光層1と金属膜2との境界にある導光反射面2Yと、受光面とは反対面に形成した裏面凹部7からなる非対称プリズム7の表面に形成した金属膜2との界面(導光反射面2Z)とで、反射を繰り返しながら、導光層1の内部を導光する(図2B)。そのとき、裏面凹部7からなる非対称プリズムの形状が制御されているので、太陽光26は、より効率的に取り付け部30にまで導光される。その結果、導光部材50の受光面に照射された太陽光26は、効率的に太陽電池10に入射されて、光電変換される。
【0037】
導光部材50の受光面に照射される太陽光26は、日中の太陽の動きにより、入射角度が常に変化する。受光面に対して垂直方向から太陽光26が照射されることが、入射光率から理想的である。入射角度が常に変化する太陽光を、常に垂直方向から受光面に照射させるには、太陽追尾装置(トラッカー)を用いて、導光部材50の受光面の面角度を常に調整しなければならない。しかしながら、トラッカーにも設置誤差や追尾誤差があり、常に受光面の面角度を最適化できるとは限らない。さらに、トラッカーはシステムが複雑でコストが高い。そのため、導光部材を固定設置することで、トラッカーレスとすることが求められている。
【0038】
本発明の導光部材50の受光面に対して、斜め方向から照射された太陽光26は、受光面に形成した入射反射面2Xで1回又は複数回の全反射を繰り返して、最終的に導光層1に形成した凹部に導かれて、導光層1に入射する(図2A)。このように、受光面に対して斜めから入射した太陽光26は、表面凹部3に集光されて、導光層1に入射することができる。従って、本発明の導光部材50は、固定設置されていても、効率的に太陽光26を導光層1に入射させることができる。
【0039】
導光層1に入射した太陽光26は、導光層1の内部を、太陽電池10の取付け部30まで導光される(図2B)。具体的には、導光層1の内壁面(金属膜2との界面)での反射を繰り返しながら、太陽電池10の取付け部30まで導かれる。導光層1に入射した太陽光26は、受光面の裏面に形成された裏面凹部7からなる非対称プリズム7の表面に形成された金属膜2との界面(導光反射面2Z)で全反射し、かつ受光面側の導光層内面に形成された導光反射面2Yで全反射する。太陽光26は、この全反射を繰り返して、金属膜2のない取付け部30に導光され、太陽電池10に入射する。
【0040】
導光する太陽光26のうちのごく一部は、受光面にある表面凹部からなる入射口から出射するため、出射光ロスが生じる。しかしながら、入射口幅5は、1.2〜2μmと非常に微細であるため、出射光ロスは極めて少ない。
【0041】
このようにして、本発明の導光部材50の受光面に照射された太陽光26は、効率的に太陽電池10に集光して照射される。そのため、本発明の導光部材に接続された太陽電池は、十分な発電量を示す。
【0042】
2.導光部材の製造方法について
本発明の導光部材は、本発明の効果が得られる限り任意の方法で製造されうるが、以下においてその例を説明する。
【0043】
<導光材料基板の用意>
まず、導光層1となる導光材料基板1’を用意する(図3A)。導光材料基板1’は、通常は板状部材である。導光材料基板1’の材料は、前述の通り、太陽光を透過する透明材料であればよい。本実施例では、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)を用いており、その屈折率は約1.49である。
【0044】
導光材料基板1’のサイズ(面積)は、特に限定されないが、1m×1mとすることができ、さらに大きなサイズにしても構わない。また、導光層1の厚みは、0.5mm〜10mmの範囲であることが好ましい。
【0045】
<非対称プリズム面の形成工程>
導光材料基板1’の一方の面を、非対称プリズム面とする(図3B)。導光材料基板1’の一方の面を、ダイヤモンドバイト25による研削工法で、裏面凹部7を形成することで非対称プリズム面とする。非対称プリズム面は、太陽光受光面の裏面に形成される。導光材料基板1’の一方の面に接触させたダイヤモンドバイト25に、裏面凹部7の深さ8に対応した荷重を印加し、ダイヤモンドバイト25をスキャンさせながら、導光材料基板1’の一方の面に凹部を形成する。ダイヤモンドバイト25のスキャンスピードは、研削深さにもよるが、約10〜100mm/sでありうる。
【0046】
導光材料基板1’の一方の面を、非対称プリズム面とする(図3B)手法の他の例には、導光材料基板1’を成形するための金型のキャビティー面に、裏面凹部7に対応する凹凸部を設けておいてもよい。本手法によれば、導光材料基板1’の成形と同一工程で、キャビティー面の凹凸部が転写された導光材料基板1’が得られ、非対称プリズム面がより容易に形成される。このように、キャビティー面の凹凸部を導光材料基板1’に転写するには、コンプレッション成形技術を用いることが好ましく;より正確な転写をするために、金型の荷重印加プロファイルを多段にすることが好ましい。
【0047】
<金属膜形成工程>
裏面凹部7を形成した導光材料基板1’の全面に、金属膜2を成膜する(図4A)。金属膜2の厚みは、例えば10〜30μmであり、Ag膜でありうる。金属膜2の成膜には、公知の種々の手法が利用できる。好ましい手法の例には、銀鏡反応を利用した無電解メッキ工法がある。この手法は、特開2010−107854において「プラスチック鏡」と称されている。銀鏡反応とは、鏡の製造にも使われている化学反応のひとつであり、アンモニア性硝酸溶液が還元されると、銀(99.9%)が析出して被対象物質に付着し、鏡のようになる反応である。
【0048】
銀鏡反応を利用したメッキ技術のなかには、塗装工法や、メッキ塗装工法、スプレー塗装など、いろいろなメッキ方法があり、導光層1の大きさや膜厚によって最適な工法を選択すればよい。
【0049】
金属膜2の成膜には、金属スパッタ法による金属蒸着法を採用してもよい。金属スパッタ法による金属膜2の膜厚は、通常、0.1μm〜0.3μmとなる。蒸着する金属の例には、Ag、Al、Au、Pt、Pdなどが含まれる。
【0050】
<受光面の凹部形成工程>
金属膜2を成膜された導光材料基板1’の受光面に、表面凹部3を形成する(図4B)。受光面とは、前述の裏面凹部7からなる非対称プリズム面に対して反対側の面である。受光面にある金属膜2と導光層1の表層を、ダイヤモンドバイト25で研削することで、表面凹部3が形成される。
【0051】
導光材料基板1’の受光面に、表面凹部3を形成する(図4B)手法の他の例には、レーザーカットにより金属膜2と導光層1を部分的に除去したり、レジスト膜を用いて金属膜2と導光層1を部分的にウェットエッチングして凹部を形成したりする手法がある。
【0052】
導光材料基板1’の受光面に、表面凹部3を形成する(図4B)手法のさらに他の例には、導光材料基板1’を成形するための金型のキャビティー面に、表面凹部3に対応する凹凸部を設けておき;成形された導光材料基板1’(表面凹部3が形成されている)の全面に金属膜2を成膜し;成膜した金属膜2をレーザーカットしたり、ウェットエッチングしたりして、入射口を形成する。本手法によれば、導光材料基板1’の成形と同一工程で、キャビティー面の凹凸部が転写された導光材料基板1’が得られる。このように、キャビティー面の凹凸部を導光材料基板1’に転写するには、コンプレッション成形技術を用いることが好ましく、より正確な転写をするために、金型の荷重印加プロファイルを多段にすることが好ましい。
【0053】
<導光部材と太陽電池との位置合わせ工程>
導光材料基板1’の表面に形成された金属膜2のうち、太陽電池10を取り付け部30にある金属膜2を鏡面研磨して、導光層1を露出させる(図5A)。このようにして、導光部材50が得られる。
【0054】
導光部材50の取付け部30と、パッケージ化された太陽電池10(後述)との位置あわせを行う(図5A)。次に、太陽電池10の受光面に透明接着剤24を塗布する。導光部材50の取付け部30に、透明接着材24を介して太陽電池10の受光面を接触させる。
【0055】
<太陽電池の実装工程>
導光部材50の取付け部30に接触させた太陽電池10の透明接着剤24を硬化させて、太陽電池10の実装を行う(図5B)。透明接着剤24にUV光27を照射して、透明接着剤24を硬化させ、太陽電池10と取付け部30とを機械的に固定する。その結果、太陽電池10に、導光層1を導光する太陽光が入射できる構造にする。
【0056】
以上の工程により、本実施例における「太陽電池の導光構造」をもつ構造体が完成する。
【0057】
前述の通り、本発明の導光部材には任意の太陽電池が接続されるが、太陽電池10はインターポーザーを用いてパッケージ化されていてもよい。図6Aには、多接合型化合物系の太陽電池10を、インターポーザー基板11に位置合わせする工程が示される。インターポーザー基板11は、シリコン、セラミック、ガラスエポキシ基板またはガラスなどで形成される。インターポーザー基板11は、内部に貫通電極15を有する。また、インターポーザー基板11の太陽電池10が接合される面には、素子側電極14が形成され;その反対面には、外部取り出し電極16が形成されている。素子側電極14と外部取り出し電極16はいずれも、その最表層がAu膜で形成されている。Au膜は、フラッシュAuメッキや、電解Auメッキ工法を用いて形成され、その厚みは最大0.5μm厚である。
【0058】
次に、インターポーザー基板11の太陽電池を接合する面に、ACF(Anisotropic Conductive Film)13を貼り付ける(図6A)。例えば、ACF13を接合面に押し当てて、80℃で1秒間保持すればよい。その後、バックコンタクト型の太陽電池10にある、太陽電池電極12と、素子側電極14とを位置合わせする。
【0059】
図6Bには、多接合型化合物系の太陽電池10をインターポーザー基板11に実装して、パッケージ化する工程が示される。インターポーザー基板11に太陽電池10を、150〜250℃に加熱した加圧過熱ヘッド17で約5〜20秒間押圧する。ACF13の母材であるエポキシ樹脂を加熱硬化させる。ACF13には、導電粒子が含まれているので、太陽電池電極12と素子側電極14とが導通する。このようにして、太陽電池10にダメージを与えることなく、太陽電池10をパッケージ化することができる。
【0060】
実装する太陽電池10が、バックコンタクト型ではなく、両面電極型である場合には、太陽電池10の下面電極(インターポーザー基板11に対向する電極)を、はんだやACFなどでインターポーザー基板11に実装し;太陽電池10の上面電極を、ワイヤボンディング工法や、リボンボンディング工法や、金属リードフレームのはんだ付けなどでインターポーザー基板11に実装し、パッケージ化すればよい。
【0061】
<多接合化合物太陽電池の構造>
前述の通り、本発明の導光部材には任意の太陽電池10が接続されるが、太陽電池10は、好ましくは化合物太陽電池であり、より好ましくは多接合化合物太陽電池である。
【0062】
図7に、多接合化合物太陽電池の代表的な例として、3接合化合物太陽電池10の構造を示す。3接合化合物太陽電池10は、GaAs基板の上に、各化合物層を形成していくことで作製されうる。化合物層の形成は、縦型MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置に投入し、エピタキシャル成長法によって積層していく。
【0063】
エピタキシャル成長は、温度約700℃の環境下にて行うことが好ましい。GaAs層を成長させるための原料として、TMG(トリメチルガリウム)とAsH(アルシン)が用いられる。InGaP層を成長させるための原料として、TMI(トリメチルインジウム)、TMGおよびPH(ホスフィン)が用いられる。また、n型のGaAs層、InGaP層およびInGaAs層を形成するための不純物として、SiH(モノシラン)が用いられる。一方、p型のGaAs層、InGaP層およびInGaAs層を形成するための不純物としてDEZn(ジエチル亜鉛)が用いられる。
【0064】
まず、GaAs基板上に、約100nm厚みのAlAs層を成長させる。次に、コンタクト層Cとして、約0.1μm厚みのn型InGaP層を成長させる。
【0065】
次に、トップセルTを積層する。ウィンドウとしての約25nm厚みのn型InAlP層と、エミッターとしての約0.1μm厚みのn型InGaP層と、ベースとしての約0.9μm厚みのp型InGaP層と、BSFとしての約0.1μm厚みのp型InGaP層とを、それぞれエピタキシャル成長法によって形成し、約1μm厚みのトップセルTを積層する。
【0066】
次に、トンネル層を積層する。約12nm厚みのp型AlGaAs層と、約20nm厚みのn型GaAs層を成長させ、約30μm厚みのトンネル層を積層する。
【0067】
次に、ミドルセルMを積層する。ウィンドウとしての約0.1μm厚みのn型InGaP層と、エミッターとしての約0.1μm厚みのn型GaAs層と、ベースとしての約2.5μm厚みのp型GaAs層と、BSFとしての約50nm厚みのp型InGaP層とを、それぞれエピタキシャル成長法によって形成し、約3μm厚みのミドルセルMを積層する。
【0068】
次に、トンネル層を積層する。約12nm厚みのp型AlGaAs層と、約20nm厚みのn型GaAs層を成長させ、約30μm厚みのトンネル層を積層する。
【0069】
次に、グリッド層を積層する。約0.25μm厚みのn型InGaP層を8層積層し、約2μm厚みのグリッド層を形成する。グリッド層は、格子定数のミスマッチで転位や欠陥等の発生を抑制する。
【0070】
次に、バッファ層として、約1μm厚みのn型InGaP層を成長させる。
【0071】
次に、ボトムセルBを積層する。パッシベーション膜としての約50nm厚みのn型InGaP層と、エミッターとしての約0.1μm厚みのn型InGaAs層と、ベースとしての約2.9μm厚みのp型InGaAs層と、パッシベーション膜としての約50nm厚みのp型InGaP層とを、それぞれエピタキシャル成長法によって形成し、約3μm厚みのボトムセルBを積層する。
【0072】
次に、コンタクト層Cとしての約0.1μm厚みのp型InGaAs層を成長させる。
【0073】
図7のグラフに示すように、トップセルTの禁制帯幅は1.87eV、太陽光スペクトルの中で吸収できる波長は650nm以下の領域であり;ミドルセルMの禁制帯幅は1.41eV、太陽光スペクトルの中で吸収できる波長は650nm〜900nmの領域であり;ボトムセルBの禁制帯幅は1.0eV、太陽光スペクトルの中で吸収できる波長は900nm〜1200nmの領域である。このように3層構造にすることにより、太陽光スペクトルを有効に利用できる、高効率の太陽電池を実現できる。
【0074】
<多接合化合物太陽電池ペッケージの詳細構造>
図8には、多接合(3接合)化合物太陽電池10を、インターポーザー基板11に実装してパッケージ化した構造を示す。3接合化合物太陽電池10は、太陽光の入射側から、透明電極18であるZnO層、コンタクト層C、トップセルT、ミドルセルM、ボトムセルB、コンタクト層C、下部電極19、下部電極のAuめっき厚膜部19bで構成されている。Auめっき厚膜部19bの厚みは10〜50μmである。また、透明電極18と接続しており、トップセルTの電位を有する上部電極20が配置されている。
【0075】
次に、トップセルT、ミドルセルM、ボトムセルBの側面に絶縁膜21であるSiN膜を形成し、絶縁膜21の外周面に側面電極22を形成する。側面電極22は、上部電極22と接続しており、破線Lの位置にまで引き出している。このようにして、トップセルの電位を有する電極と、ボトムセルの電位を有する電極とを、いずれも破線Lの位置に配置することで、太陽電池10をバックコンタクト型としている。
【0076】
<インターポーザー基板への実装時の応力吸収>
図8に記載されているパッケージ構造において、突起電極23は、円柱部23bと、応力吸収層23aとを有する。応力吸収層23aの断面(図8の上下方向に直交する断面)は、円柱部23bの断面よりも、小さな面積を有する。具体的には、円柱部23bは円柱形状であり、応力吸収層23aは円錐形状であり、その側面がテーパー構造を有する。例えば、応力吸収層23aの側面は、導通方向(図8の上下方向)に対して、30°〜60°傾斜されたテーパー構造を有する。実施形態の例としては、円柱部23bの直径を20〜50μm、円柱部23bの厚みを6〜10μm、応力吸収層23aの厚みを20μm以上とする。
【0077】
3接合化合物太陽電池10が実装されるときに、応力吸収層23aの円錐形状の先端が平坦状に押し潰される。このように、突起電極23の円柱部23bと応力吸収層23aを、互いに異なる形状とするとともに、応力吸収層23aの断面積を円柱部23bの断面積よりも小さくすることで、太陽電池10の実装時に加わる応力を応力吸収層23aの変形で吸収する。従って、応力吸収層23aを設けることで、太陽電池10をインターポーザー基板11に実装するときに、太陽電池10がダメージを受けにくい。
【0078】
突起電極23の材料は、Au,Ti,Cu,Al,Sn,Ag,Pd,Cu,Bi,Pb,Ni,Crなどの金属材料の単体もしくは複合材でありうるが、一般的にはAuである。突起電極23はワイヤボンディング工法を用いたスタッドバンプ法などの方法によって形成することができる。
【0079】
また、突起電極23は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂と、Ag,Pd,Au,Cu,Al,Ni,Cr,Tiなどの導電性金属とを含む導電性ペーストを、塗布や印刷して形成してもよい。この場合は、突起電極23にテーパー部分を設ける必要はない。溶融した状態の導電性ペーストが太陽電池10の電極と接触し、硬化されるので、太陽電池10に応力がかかりにくい。
【0080】
図8で示される太陽電池パッケージにおける透明電極18を、図1Aに示されるように、本発明の導光部材50の取付け部30に対向させて取付けることで、集光型太陽電池が構成される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の太陽電池の導光部材は、受光面で受光した太陽光を、集光しながら太陽電池にまで導光できる。そのため、集光型太陽電池に光を集光するための導光部材として応用できる。本発明の太陽電池の導光部材は、従来の多結晶シリコン型太陽電池(変換効率が約20%程度)にはもちろん、約3mm×3mmの受光面しかない多接合型化合物太陽電池(変換効率が約40%)にも適用できる。受光面の面積が同じであっても、変換効率が2倍になれば、発電量が2倍となるので、本発明の太陽電池の導光部材は、日照量の多い地域での大規模太陽発電システムに最適である。
【符号の説明】
【0082】
1 導光層
1’ 導光材料基板
2 金属膜
2X 入射反射面
2Y,2Z 導光反射面
3 表面凹部
θ 表面凹部の内側面がなす角度
5 入射口幅
6 入射口深さ
7 裏面凹部
7a 長辺
7b 短辺
8 裏面凹部深さ
θ’プリズムの頂角
10 太陽電池
11 インターポーザー基板、
12 太陽電池電極
13 ACF
14 素子側電極
15 貫通電極
16 外部取り出し電極
17 加圧加熱ヘッド
18 透明電極
19 下部電極
19b Auめっき厚膜部
20 上部電極
21 絶縁膜
22 側面電極
23 突起電極
23a 応力吸収層
23b 円柱部
24 透明接着剤
25 ダイヤモンドバイト
26 太陽光
27 UV光
30 取付け部
50 導光部材
C コンタクト層
T トップセル
M ミドルセル
B ボトムセル
100 太陽電池素子
200 導光構造
210 受光層
220 導光層
230 乱反射層
300 プリズムアレイシート
310 リフレクター
320 太陽電池


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射性金属膜が積層された太陽光受光面と、前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、前記導光層に太陽電池を取付けるための取付け部と、を備える導光部材であって、
前記受光面には、前記金属膜を貫通し、前記導光層に達する凹部からなる入射口を有し、かつ前記凹部の内側面は逆錘形状である、導光部材。
【請求項2】
前記反射性金属膜の厚みが、10〜30μmである、請求項1に記載の導光部材。
【請求項3】
前記反射性金属膜が、Ag膜またはAl膜であり、かつ前記導光層が、透明アクリル樹脂(PMMA)層である、請求項1に記載の導光部材。
【請求項4】
前記入射口を構成する凹部の内側面がなす角度θが、30°≦θ<90°であり、
前記入射口を構成する凹部の導光層における幅が、1.2〜2μmであり、
前記入射口を構成する凹部の導光層における深さが、0.6〜2μmである、請求項1に記載の導光部材。
【請求項5】
前記反射性金属膜が、前記太陽光受光面に照射された太陽光を導光層に導く入射反射面と、前記導光層からの光の漏れを抑制する導光反射面と、を備える、請求項1に記載の導光部材。
【請求項6】
太陽光受光面と、前記太陽光受光面から入射した太陽光を導光する導光層と、前記導光層に太陽電池を接続するための取付け部と、を備える導光部材であって、
前記太陽光受光面に対して反対側の面は非対称プリズム面であり、前記導光層を導光する光を、前記接続部にまで導光させやすくする、導光部材。
【請求項7】
前記非対称プリズム面には反射性金属膜が積層されている、請求項6に記載の導光部材。
【請求項8】
前記非対称プリズム面のプリズムの頂角θ’が90°<θ<150°であり、かつ前記プリズムの凹凸高さが1〜100μmである、請求項6に記載の導光部材。
【請求項9】
前記太陽電池が、多接合型化合物太陽電池である、請求項1および請求項6に記載の導光部材。


【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11670(P2013−11670A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143082(P2011−143082)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】