説明

導材を用いた杭打ち施工管理システムおよび方法

【課題】導材を用いた杭打ち工事において導材の撤去後に杭に要求される杭頭中心位置などが所定の許容値内に収まり、杭の打設精度を高めることのできる施工管理システムおよび方法を提供する。
【解決手段】この杭打ち施工管理システム10は、導材を用いた杭打ちにおける施工管理システムであって、打設時の杭Pの変位を抑制するために導材1を構成する導材部材または導材部材に設けられたガイド部における荷重を測定する計器7a〜7d,8a〜8dと、杭打設時における計器からの測定データを処理する処理装置11,12と、を備え、所定の基準値を超えるような荷重が導材に作用しないようにリアルタイムで監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導材を用いた杭打ちの施工管理システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打ち作業に要求される管理項目として、杭頭中心位置、杭天端、杭の傾斜があげられ、それぞれに許容値が定められ、その精度を確保することは、構造物全体の品質にも影響するため、非常に重要である。例えば、非特許文献1は、これらの許容値を次のように定めている。
杭頭中心位置:10cm以下
天端高:±5cm以内
杭の傾斜:直杭2°以下、斜杭3°以下
【0003】
杭打ち工事において、杭頭中心位置の精度を確保するために、導材を用いる施工方法が広く用いられている。とくに、打設する地盤からの杭の突出長が大きい場合や杭の打設方法がフライングハンマ工法による場合には、杭頭中心位置のずれの防止のために、導材の役割は重要となる。ただし、導材の果たす機能はあくまで、打設する杭の変位を導材自体の剛性により抑制する機能のみであり、杭の打設精度は、通常、トランシットを用いた誘導により確保される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「港湾工事共通仕様書」平成21年5月(社)日本港湾協会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導材を用いた杭打ち工事で生じる問題について図8(a)(b)を参照して説明する。図8(a)のように、ハンマN等を用いて打設中の杭Pには地盤Gの影響等により例えば水平方向Xへ変位が発生することがある。その変位を導材Dが抑制している場合、図8(b)のように、杭Pの打設完了後に導材Dを撤去すると、杭Pを抑制していた力が解放される結果、杭Pが破線位置から実線位置へ変位する。
【0006】
打設中から打設完了時までの杭頭中心位置は、通常、トランシット測量によって所定の許容値内に収まっていることを確認できる。しかし、導材撤去後に杭に変位が発生する場合、その変位量を把握することは不可能であった。よって、打設完了時に許容値内であった杭頭中心位置が、導材撤去後に許容値を超えてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、導材を用いた杭打ち工事において導材の撤去後に杭に要求される杭頭中心位置などが所定の許容値内に収まり、杭の打設精度を高めることのできる施工管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための杭打ち施工管理システムは、導材を用いた杭打ちにおける施工管理システムであって、打設時の杭の変位を抑制するために前記導材を構成する導材部材または前記導材部材に設けられたガイド部における荷重を測定する計器と、前記杭打設時における前記計器からの測定データを処理し出力する処理装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この杭打ち施工管理システムによれば、打設中の杭が変位すると、所定の位置に杭を打設するために設けられた導材を構成する導材部材または導材部材に設けられたガイド部に杭が接触し、荷重が発生するが、かかる荷重を計器で測定し、その測定データを処理出力装置で処理して得た測定値に基づいて、導材を用いた杭打ち工事において所定値を超えるような荷重が導材に作用しないようにリアルタイムで監視することができる。これにより、導材の撤去後に杭頭中心位置などが所定の許容値内に収まるように杭を打設することができ、杭の打設精度を高めることができる。
【0010】
上記杭打ち施工管理システムにおいて前記ガイド部は、打設される杭の周方向で前記杭に接するように配置された複数のガイドローラを有し、前記複数のガイドローラの近傍に複数の前記計器をそれぞれ配置することが好ましい。これにより、杭がどの方向にどの程度変位しようとしているかを検知できる。また、杭がいずれの方向に変位しようとしても、導材に作用する荷重を検知することができる。
【0011】
また、前記測定データから得られた測定値が所定値を超えたとき、警告信号を発生する警告信号発生手段を備えることで、所定値を超えるような荷重が導材に作用したことをリアルタイムで確実に検知することができる。
【0012】
上記目的を達成するための杭打ち施工管理方法は、導材を用いた杭打ちにおける施工管理方法であって、打設時の杭の変位を抑制するために前記導材を構成する導材部材または前記導材部材に設けられたガイド部における荷重を計器により測定し、前記杭打設時において前記計器からの測定データを処理装置で処理し、前記測定データから得られた測定値をリアルタイムで監視しながら前記測定値が所定値を超えないように前記杭打ちを行うことを特徴とする。
【0013】
この杭打ち施工管理方法によれば、打設中の杭が変位すると、所定の位置に杭を打設するために設けられた導材を構成する導材部材または導材部材に設けられたガイド部に杭が接触し、荷重が発生するが、かかる荷重を計器で測定し、その測定データを処理出力装置で得た測定値が所定値を超えないように杭打ちを管理できるので、杭の変位により導材に作用している荷重が所定値を超えないように杭打ちを行うことができる。このように、導材を用いた杭打ち工事において所定値を超えるような荷重が導材に作用しないようにリアルタイムで監視することで、導材の撤去後に杭頭中心位置などが所定の許容値内に収まるように杭を打設することができ、杭の打設精度を高めることができる。
【0014】
前記所定値は、前記導材撤去後に目標とする値を超過する前記杭の変位が発生するような荷重が前記導材部材または前記ガイド部に作用しないような値に設定されることが好ましい。
【0015】
また、前記ガイド部は、打設される杭の周方向で前記杭に接するように配置された複数のガイドローラを有し、前記複数のガイドローラの近傍に複数の前記計器をそれぞれ配置し、前記複数の計器のすべての測定データから得られた前記測定値が所定値を超えないように前記杭打ちを行うことにより、杭がどの方向にどの程度変位しようとしているかを検知できる。また、杭がいずれの方向に変位しようとしても、導材に作用する荷重を検知でき、杭打ちの管理の精度をより高めることができる。
【0016】
前記測定値が前記所定値を超えたとき警告信号を発生することで、導材に作用している荷重が所定値を超えたことを確実に検知でき、杭打設の中止や修正作業の実行等の対策を即座にとることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の施工管理システムおよび方法によれば、導材を用いた杭打ち工事において導材の撤去後に杭に要求される杭頭中心位置などが所定の許容値内に収まるように管理でき、杭の打設精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における導材の基本構成を示す平面図(a)、側断面図(b)および定規部材の要部を示す側面図(c)である。
【図2】図1の定規材と管理対象の杭とを概略的に示す平面図である。
【図3】図2の定規材と管理対象の杭との間にガイドローラを設けた構成例を概略的に示す平面図である。
【図4】本実施形態による杭打ち施工管理システムの構成を概略的に示す図である。
【図5】本実施形態による杭打ち施工管理工程S01〜S06を説明するためのフローチャートである。
【図6】図3のガイドローラとH形鋼との間に荷重計としてロードセルを配置した例を説明するための要部平面図である。
【図7】本実施形態における導材の別の基本構成を示す平面図(a)および側断面図(b)である。
【図8】導材を使用した場合に杭の打設時に発生する変位について説明するための平面図(a)および断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は本実施形態における導材の基本構成を示す平面図(a)、側断面図(b)および定規部材の要部を示す側面図(c)である。図2は図1の定規材と管理対象の杭とを概略的に示す平面図である。
【0021】
図1(a)〜(c)のように、本実施形態における導材1は、打設される管理対象の杭Pをガイドする導枠2と、地盤Gに打設され導枠2を水平に支持する導杭3と、導枠2に設置されて打設中に管理対象の杭Pの変位を規制する定規材4とから構成され、所定位置に杭Pを打設するために設けられる。
【0022】
導杭3は、例えば、H形鋼などから構成され、水面Sから水底Tへと地盤Gに4本打設され、これらの導杭3により導枠2が水平に支持される。導枠2は、例えば、H形鋼などから構成され、井桁に設置されて固定される。図1(c)のように、導枠2の端部近傍の上面に定規材4が設置され固定される。定規材4は、導枠2に対し取り付け・取り外し自在に構成されることで、一方での杭Pの打設が終了し、次に他方で打設を行う場合、取り外されて、次の打設に用いることができる。
【0023】
図1(a)〜(c)の導材1によれば、両端近傍において、打設される杭Pをガイドし、2本の杭Pの打設が終了すると、隣の次に打設される杭の方に移動させられて次の杭をガイドする。
【0024】
図2のように、定規材4は、複数のH形鋼5から構成され、複数のH形鋼5は、打設される鋼管杭Pが内部に位置することができるように平面形状が略正方形である空間9を形成する。
【0025】
複数のH形鋼5は、空間9において鋼管杭Pを包囲し、各H形鋼5の空間9を向いた内側フランジの内面5aが鋼管杭Pの周面に接するか、または、所定のクリアランスを持って位置するように配置されている。
【0026】
鋼管杭Pは、導枠2の定規材4においてH形鋼5の内面5aにおいて等間隔の複数箇所(4点)で位置規制されることによって杭打ち中の変位が抑制される。
【0027】
導枠2の定規材4においてH形鋼5にはひずみゲージが貼り付けられ、鋼管杭Pの打設中にH形鋼5に生じるひずみを測定する。すなわち、図2のように、ひずみゲージ7a〜7dを各H形鋼5の内側フランジの外面5bに貼り付け、ひずみゲージ8a〜8dを外側フランジの外面5cに貼り付ける。ひずみゲージ7a〜7dは、鋼管杭Pが内面5aに接する位置近傍に配置され、ひずみゲージ8a〜8dも同様の位置に配置される。
【0028】
導枠2の定規材4において鋼管杭Pの外周面が等間隔に複数箇所(4点)でH形鋼5により位置規制されることで、鋼管杭Pは杭打ち中の変位が抑制される。鋼管杭Pが打設中にいずれかの方向に変位しようとすると、その変位を抑制する定規材4のH形鋼5に荷重が発生し、H形鋼5がたわむことで、荷重に応じたひずみがH形鋼5に発生する。そのひずみをひずみゲージ7a〜7d、ひずみゲージ8a〜8dにより測定し、その測定データから算出した荷重をリアルタイムに監視する。
【0029】
次に、図2の定規材4にガイド部を設けた別構成の定規材について図3を参照して説明する。図3は図2の定規材と管理対象の杭との間にガイドローラを設けた構成例を概略的に示す平面図である。
【0030】
図3の定規材4は、図2の定規材にガイド部として複数のガイドローラ6a〜6dを設けたものであり、複数のH形鋼5と、複数のガイドローラ6a〜6dから構成されるガイド部と、を備える。複数のH形鋼5は、平面形状が略正方形である空間9において鋼管杭Pを包囲するが、各H形鋼5の空間9を向いた内側フランジの内面5aにガイドローラ6a〜6dが配置され固定されている。ガイドローラ6a〜6dは、杭Pの軸線の両方向に回転自在に構成され、打設中の鋼管杭Pの周面に接するか、または、所定のクリアランスを持って位置するように配置されている。
【0031】
鋼管杭Pは、導枠2の定規材4においてH形鋼5に固定されたガイドローラ6a〜6dによって位置規制されることで、杭打ち中の変位が抑制される。ガイドローラ6a〜6dは、鋼管杭Pが打設により軸線方向に移動するとそれに追随して回転しながら鋼管杭Pをガイドする。
【0032】
導枠2の定規材4において図2と同様にH形鋼5にはひずみゲージが貼り付けられ、鋼管杭Pの打設中にH形鋼5に生じるひずみを測定する。すなわち、図3のように、各H形鋼5の内側フランジの外面5bにひずみゲージ7a〜7dがガイドローラ6a〜6dの取り付け位置の近くになるように配置される。さらに外側フランジの外面5cに同様にひずみゲージ8a〜8dがガイドローラ6a〜6dの取り付け位置の近くに配置される。
【0033】
上述のように、導枠2の定規材4において鋼管杭Pの外周面を等間隔に複数箇所(4点)でガイドローラ6a〜6dにより位置規制されることで、打設中の鋼管杭Pは杭打ち中の変位が抑制される。鋼管杭Pが打設中にいずれかの方向に変位しようとすると、その変位を抑制する定規材4のH形鋼5に荷重が発生し、H形鋼5がたわむことで荷重に応じたひずみがH形鋼5に発生する。そのひずみをひずみゲージ7a〜7d、ひずみゲージ8a〜8dにより測定し、その測定データから算出した荷重をリアルタイムに監視する。
【0034】
図4を参照して本実施形態による杭打ち施工管理システムについて説明する。図4は本実施形態による杭打ち施工管理システムの構成を概略的に示す図である。
【0035】
図4のように、杭打ち施工管理システム10は、図2または図3のひずみゲージ7a〜7d、8a〜8dからの出力信号をそれぞれ入力ししょての処理をするデータロガー(計測器)11と、データロガー11から入力する測定データについて所定の処理を行うパソコン12と、を備える。
【0036】
データロガー11は、ひずみゲージ7a〜7d、8a〜8dからの信号を荷重データに変換処理しパソコン12へ出力し、パソコン12は、入力した荷重データを出力しモニタ画面13に表示するとともに、測定された荷重が荷重基準値を超えるか超えないかの判定処理を行う機能と、荷重基準値を超えたときに警告信号を発生処理する機能とを有する。なお、データロガー11における荷重データへの変換処理は、パソコン12側で行うようにしてもよい。
【0037】
図5の杭打ち施工管理システム10は、図2または図3の定規材4に取り付けられたひずみゲージ7a〜7d、8a〜8dからデータロガー11を通して得た荷重データをパソコン12に取り込み、パソコン12のモニタ画面13において図4のように、荷重データの時間変化を鋼管杭Pに対する測定個所a〜d毎に複数の小画面13a〜13dにリアルタイムに表示する。そして、荷重値が図4の小画面13a,13bのように、予め設定された荷重基準値を超えると、パソコン12から警告信号が出力し、打設作業を行っている起重機船などのオペレータ室OPに警告音を発するようになっている。
【0038】
上述のように、打設中の杭Pが変位すると、所定の位置に杭Pを打設するための導材1に設けられた定規材4のH形鋼5(図2)に、または、ガイドローラ6a〜6d(図3)に杭Pが接触して導材1側(H形鋼5)に荷重が発生する。図4の杭打ち施工管理システム10によれば、導材1側に作用する荷重により生じるひずみをひずみゲージ7a〜7d、8a〜8dにより測定し、測定したデータをデータロガー11およびパソコン12で処理し、杭が変位することにより導材1側に作用している荷重を算出し、この荷重が所定の荷重基準値を超えないように杭打ちを行うことができる。
【0039】
次に、上記荷重基準値(荷重上限値)について説明する。打設する杭および導材の剛性を考慮した構造計算により、導材撤去後に発生する杭の変位量が目標とする値(以下、「目標値」という。)を超えないような荷重の上限値をあらかじめ算出し、その上限値を導材に作用させることが許される荷重基準値(荷重上限値)として設定する。
【0040】
例えば、鋼管杭Pと導材1の剛性が同程度のため、導材撤去後の鋼管杭Pの変位は2倍程度となると考えられるので、導材が杭頭中心位置の許容値(10cm以下)から杭頭中心位置ずれの目標値を±5.0cmとしたとき、その1/2である2.5cm変位した場合に導材に作用する荷重(構造計算により算出)を荷重基準値(荷重上限値)として設定する。なお、この荷重基準値の設定は一例であって、鋼管杭と導材の剛性の関係や杭頭中心位置ずれの目標値などから適宜設定可能である。
【0041】
図4の杭打ち施工管理システム10を用いた本実施形態による杭打ち施工管理工程S01〜S06について図5のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
鋼管杭Pの打設を、図1の導材1を用いて例えば起重機船により行う(S01)。すなわち、起重機船のオペレータ室OPよりバイブロハンマH(図4)を操作し、鋼管杭Pを水底Tから地盤G内へと打設する。
【0043】
上述の鋼管杭Pの打設工程の間、図4の杭打ち施工管理システム10により図2または図3のひずみゲージ7a〜7d、8a〜8dで測定した測定データから荷重データを取得する(S02)。そして、杭打ち施工管理システム10のパソコン12は、その荷重が予め設定された荷重基準値を超えたか否かを監視し(S03)、荷重基準値を超えないように鋼管杭Pの打設を行う。
【0044】
上記荷重データはリアルタイムに取得されるので、オペレータ室OPで杭打設の進行とともにリアルタイムでモニタリングすることができる。したがって、荷重データ取得工程S02および荷重データ監視工程S03は杭打設工程S01と連動してリアルタイムに実行される。
【0045】
取得した荷重が予め設定された荷重基準値を超えると、パソコン12は警告信号を発し、オペレータ室OPに警告音を発する(S04)。
【0046】
警告音が発せられると、オペレータ室OPよりバイブロハンマHへの出力を低下させて鋼管杭Pの打設を中止する(S05)。そして、鋼管杭Pの傾きなどを修正する作業を行う(S06)。なお、この場合、必要に応じて、鋼管杭Pを引き抜き、再度打設する。
【0047】
本実施形態によれば、導材1に設けられた杭のガイドである導材部材(定規材4のH形鋼5)に作用するひずみを測定し、荷重基準値を超える荷重が導材1側に作用しないようにリアルタイムで監視しながら杭を打設することで、導材1の撤去後に杭に目標値を超える変位が発生するような荷重を超えないようにできる。これにより、杭打ちの打設精度を向上させることができる。
【0048】
また、打設される杭の周方向の複数箇所において導材1側に作用する荷重をリアルタイムに測定するので、打設中の杭に対しどの方向にどの程度変位しようとしているかが把握でき、杭打設作業に反映させることができる。また、杭がいずれの方向に変位しようとしても、導材1側に作用する荷重を検知でき、杭打ちの管理の精度をより高めることができる。
【0049】
従来技術によれば、導材が鋼管杭の打設中に発生した変位や傾きを抑制しているとき、導材を撤去すると鋼管杭に作用していた変位抑制力が解放され、鋼管杭が変位することがあるが(図8参照)、本実施形態によれば、鋼管杭の打設中に導材側に作用している変位抑制力を管理し、撤去後の鋼管杭の変位を抑制することができるので、杭打ち精度を高めることができる。
【0050】
次に、図6を参照して図3のひずみゲージの代わりに荷重計により直接荷重を測定するようにした例について説明する。図6は、図3のガイドローラとH形鋼との間に荷重計としてロードセルを配置した例を説明するための要部平面図である。
【0051】
図6の構成例は、荷重計としてのロードセル19をガイドローラ6eと定規材4のH形鋼5の内側フランジの内面5aとの間に配置したものである。ロードセル19をH形鋼5の内面5aに固定し、ガイドローラ6eの取り付け部材6zをロードセル19の反対面に固定する。打設中の杭側から荷重がガイドローラ6eに加わると、その荷重がロードセル19に加わることで荷重を測定できる。
【0052】
図3の各ガイドローラ6a〜6dにおいて、図6のようにロードセル19をH形鋼5との間に介在させて配置し、各ロードセル19に鋼管杭Pから各ガイドローラ6a〜6dを介して荷重が加わると、各ロードセル19からの信号が図4のデータロガー11に入力し、荷重データとして出力し、かかる荷重データがパソコン12に取り込こまれてモニタ画面13にリアルタイムに表示されるとともに、予め設定された荷重基準値を超えると、パソコン12から警告信号が出力し、打設作業を行っている起重機船などのオペレータ室OPに警告音を発する。
【0053】
図2または図3では、打設される杭の接触により導材側に作用する荷重により生じるひずみをひずみゲージにより測定し、かかる測定データをパソコン12に取り込んだが、図6では、ロードセル等の荷重計を配置し、その荷重計からの出力値をパソコン12に取り込んで監視できる。荷重基準値を超える荷重が導材側に作用しないようにリアルタイムで監視しながら杭を打設することができる。
【0054】
なお、ロードセル19は、例えば、ひずみゲージ式のものを使用できる。また、ロードセルに代えて、圧力計を配置してもよい。
【0055】
次に、図7を参照して導材の別の構成例について説明する。図7は、本実施形態における導材の別の基本構成を示す平面図(a)および側断面図(b)である。
【0056】
図7(a)(b)の導材1Aは、打設される管理対象の杭Pをガイドする導枠2Aと、地盤Gに打設され導枠2Aを水平に支持する導杭3Aと、導枠2Aに設置されて打設中の管理対象の杭Pの変位を規制する定規材4Aと、から構成され、所定位置に杭Pを打設するために設けられる。導杭3Aは、例えば、剛性を高めた鋼管杭などから構成され、予め水面Sから水底Tへと地盤Gに2本打設される。導枠2Aは、例えば、H形鋼などから構成され、導杭3Aにはめ込まれて水平に支持される。導枠2Aの端部近傍の上面に定規材4Aが設置されて固定される。
【0057】
図7(a)(b)の導材1Aによれば、両端近傍において、打設される杭Pをガイドし、2本の杭Pの打設が終了すると、隣の次に打設される杭の方に移動させられて次の杭をガイドする。定規材4Aは、例えば、図2または図3と同様に構成することができるが、他の構成であってもよく、また、導枠2Aに対し取り付け・取り外し自在に構成されることが好ましい。
【0058】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、打設される杭の接触で導材側に作用する荷重により生じるひずみを直接監視するようにしてもよく、この場合のひずみ基準値を荷重基準値より構造計算により算出し設定する。
【0059】
また、図4のデータロガー11は、ひずみや荷重についての計測器を構成し、信号を荷重値に変換処理しモニタ画面へ出力できるため、図4において、パソコン12を省略し、モニタ画面上で荷重基準値に基づいて直接監視するようにしてもよい。また、データロガーの代わりにアンプ(増幅器)を用いて、信号を増幅した増幅信号の振幅をモニタ画面に出力し、荷重基準値やひずみ基準値から逆算して振幅の基準値を設定し、この振幅基準値に基づいて同様に直接監視するようにしてもよい。
【0060】
また、図4のパソコン12は、打設作業を行っている起重機船などのオペレータ室OPに設置できるが、これに限定されず、例えば、陸側の工事事務所に設置し、オペレータ室OPに必要な情報をリアルタイムで送信するようにしてもよい。
【0061】
また、図4,図5では、取得した荷重データが予め設定された荷重基準値を超えると、パソコン12が警告信号を発し、警告音でオペレータ等に知らしめるようにしたが、本発明はこれに限定されず、警告音とともに、または、警告音に代えて、黄色や赤色などの警告ランプを点灯させたり点滅させたりしてもよい。
【0062】
また、本実施形態では、測定値と比較する荷重基準値を杭頭中心位置に対する許容値に基づいて設定したが、本発明はこれに限定されず、杭の傾斜角などに対する許容値に基づいて設定するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、定規材に発生するひずみまたは荷重を測定したが、本発明はこれに限定されず、導枠や導杭に発生するひずみまたは荷重を測定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の杭打ち施工管理システムおよび方法によれば、導材を用いた杭打ち工事において導材の撤去後に杭に要求される杭頭中心位置などが所定の許容値内に収まるように管理でき杭の打設精度を高めることのできるので、杭の精度を確実に確保することができ、その杭を用いた構造物全体の品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
1,1A 導材 2,2A 導枠 3,3A 導杭 4,4A 定規材 5 H形鋼 6a〜6d ガイドローラ 7a〜7d,8a〜8d ひずみゲージ(計器) 10 施工管理システム 11 データロガー 12 パソコン 13 モニタ画面 a〜d 測定個所 19 ロードセル(計器) H バイブロハンマ P 杭、鋼管杭 G 地盤 T 水底

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導材を用いた杭打ちにおける施工管理システムであって、
打設時の杭の変位を抑制するために前記導材を構成する導材部材または前記導材部材に設けられたガイド部における荷重を測定する計器と、
前記杭打設時における前記計器からの測定データを処理し出力する処理出力装置と、を備えることを特徴とする杭打ち施工管理システム。
【請求項2】
前記ガイド部は、打設される杭の周方向で前記杭に接するように配置された複数のガイドローラを有し、
前記複数のガイドローラの近傍に複数の前記計器をそれぞれ配置することを特徴とする請求項1に記載の杭打ち施工管理システム。
【請求項3】
前記測定データから得られた測定値が所定値を超えたとき、警告信号を発生する警告信号発生手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の杭打ち施工管理システム。
【請求項4】
導材を用いた杭打ちにおける施工管理方法であって、
打設時の杭の変位を抑制するために前記導材を構成する導材部材または前記導材部材に設けられたガイド部における荷重を計器により測定し、
前記杭打設時において前記計器からの測定データを処理出力装置で処理し出力し、
前記測定データから得られた測定値をリアルタイムで監視しながら前記測定値が所定値を超えないように前記杭打ちを行うことを特徴とする杭打ち施工管理方法。
【請求項5】
前記所定値は、前記導材撤去後に目標とする値を超過する前記杭の変位が発生するような荷重が前記導材部材または前記ガイド部に作用しないような値に設定されることを特徴とする請求項4に記載の杭打ち施工管理方法。
【請求項6】
前記ガイド部は、打設される杭の周方向で前記杭に接するように配置された複数のガイドローラを有し、
前記複数のガイドローラの近傍に複数の前記計器をそれぞれ配置し、
前記複数の計器のすべての測定データから得られた前記測定値が所定値を超えないように前記杭打ちを行うことを特徴とする請求項4または5に記載の杭打ち施工管理方法。
【請求項7】
前記測定値が前記所定値を超えたとき警告信号を発生することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の杭打ち施工管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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