説明

導管内における流体の流れの制限を測定するための方法及び装置

例えばヒト又は動物の冠動脈系等の流体媒質を送る導管の標的領域における狭窄病変等の狭窄の大きさを決定するための方法及び装置。標的領域の一方側へ至る少なくとも1つの場所で、一連の圧力測定及びそれに対応する一連の速度測定が行われる。流体媒質における波動スピードcは、対応する速度変化dUの2乗で割り算された圧力変化dPの2乗の関数として決定される。順方向の圧力変化dP+は、逆方向の圧力変化dP−から分離され、少なくともその分離された順方向の圧力変化を用いて狭窄の大きさの指標が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパイプ又はチューブ等の導管内の流体の流れに対する局部的な制限の程度を決定するための方法及び装置に関する。本発明は、限定されるものではないが、特に、血管の狭窄病変の測定における用途を有しており、そして、ヒト又は動物の冠動脈系における冠動脈狭窄病変の重大さを決定するのに、特に有効である。
【背景技術】
【0002】
血流予備量比(FFR)は、冠動脈狭窄病変の評価及びステント展開の適性の評価において、冠動脈カテーテル検査室で広く適用されている技術である。FFRは、狭窄病変の前方側(近位側)での圧力に対するその狭窄病変の後方側(遠位側)での圧力として定義される。該結果は、比率であり、即ち、絶対数である。0.5のFFR比は、ある与えられた狭窄病変がその狭窄病変を横断する血圧において50%降下する結果であることを示している。もっと一般的に述べれば、FFRは、ある導管に制限又は狭窄が存在している場合の導管に沿った流体の最大流量を、そのような制限又は狭窄が存在していない場合に生じると考えられる最大流量と比較した比率を示している。
【0003】
いくつかの研究が、狭窄病変の視覚的評価の限界及び不適切な血管形成術からもたらされ得る危害を実証しているため、FFRの使用は、過去数年間に亘って急速に増えている。通常、FFRの使用は、最大充血状態下における冠動脈狭窄病変のどちらか側の圧力における平均的な低下を測定することにより、実行される。しかしながら、特定の状況下、例えば、急性心筋梗塞後の状況下においては、信頼できなくなる可能性がある。これは、不適切な臨床判断を導くこともあり得る。
【0004】
殆どの血管床における圧力は、一つ流入部(即ち、導管の大動脈側の端部)から生じる一方で、冠動脈の圧力は、略等しい割合で、近位側(大動脈側の端部)の寄与部と遠位側(微小循環側の端部)の寄与部との両方から生じる。遠位側の圧力は、以下の2つの因子により決定される。
(1)冠微小循環の自己調節を介する内因性の(又は「受動的」な)抵抗
(2)心筋に行き渡る小さな微小循環導管の圧縮を介する外因性の(又は「能動的」な)抵抗
【0005】
現行のFFR評価は、「最大」の充血状態を達成すべく、例えばアデノシン等の血管拡張剤の投与により、この遠位側の圧力を可能な限り低減しようと努めている。しかしながら、血管拡張剤の投与は、微小循環性の受動的な抵抗を低減するだろうが、収縮する心筋に行き渡る小さな導管の圧縮からもたらされる遠位側から生じる微小循環性圧力を抑制できない。
【0006】
したがって、FFRにおける僅かな不正確さは、上述の能動的な抵抗成分を取り除くことができないため、内在するものである。さらに、FFRは、内因性抵抗又は外因性抵抗の何れかの調節が影響を受ける病的過程下において、より不正確になり得る。受動的な抵抗機能障害の例は、真性糖尿病、急性冠症候群、心筋梗塞後及び冬眠心筋を含む。能動的な抵抗機能障害の例は、動脈が運動低下領域又は無動領域内に在るときを含む。
【0007】
なぜ、高度に管理された研究検査室における血管内超音波法(IVUS)とFFRとの間での緊密な関係がそのような臨床環境下においてしばしば証明されないのか、の説明となり得るようなエラーについて詳述している多くの既刊文献が存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、例えばパイプ又はチューブ等の導管内における流体の流れに対する局所的な制限の程度を測定するための改善された及び/又は代替的な、方法及び装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、血管内の狭窄病変の測定に、限定されるわけではないが、特に、ヒト又は動物の冠動脈系における冠動脈狭窄病変の重大さ又は影響の決定に使用するような方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によれば、本発明は、流体媒質を送る導管の狭窄の大きさを決定するための方法を提供し、該方法は、a)導管内の第1の場所であって、標的領域の第1の側に在る第1の場所において、一連の第1の圧力測定Pと、それに対応した一連の第1の速度測定Uとを行うステップと、b)導管内の第2の場所であって、標的領域の第2の側に在る第2の場所において、一連の第2の圧力測定Pと、それに対応した一連の第2の速度測定Uとを行うステップと、c)それぞれの場所に対して、前記流体媒質における波動スピードcを、対応する速度変化dUの2乗で割り算された圧力変化dPの2乗の関数として決定するステップと、d)前記第1の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、圧力変化dP及び速度変化dUの総和の関数として決定するステップと、e)前記第2の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、圧力変化dP及び速度変化dUの総和の関数として決定するステップと、f)前記標的領域を横断する圧力降下の指標である順方向の分離された流れ予備能を、dP+/dP+の比の関数として決定するステップと、を含む。
【0010】
標的領域の前記第1の側は、標的領域の上流であってもよく、そして、前記第2の側は、該標的領域の下流であってもよい。前記波動スピードは、式c=(1/ρ)√(ΣdP/ΣdU)に従って、それぞれの場所で決定されてもよい。式のρ、はその導管内における流体媒質の比重である。ステップd)及びステップe)は、順方向の圧力変化dP+及びdP+を、式dP+=.(dP+ρcdU)/2及び式dP+=.(dP+ρcdU)/2に従って決定することを含んでもよい。ステップf)は、順方向の圧力値P+及びP+を得るために、多数のdP+及びdP+の値を積分又は合計することと、順方向の分離された流れ予備能を、比P+/P+の関数として決定することと、を含んでもよい。本方法は、例えばヒト又は動物の心臓の循環系における導管等の標的領域の何れかの側に変動する圧力源が存在する導管に適用されてもよい。一連の第1及び第2の圧力測定と、一連の第1及び第2の速度測定とは、ヒト又は動物の体の少なくとも1回の完全な心周期に亘って行われてもよい。対応する圧力及び速度の測定は、同時的に行われてもよい。
【0011】
また、本発明は、流体媒質を送る導管の狭窄の大きさを決定するための装置も提供し、該装置は、i)少なくとも標的領域の上流の第1の場所及び該標的領域の下流の第2の場所において、導管内における一連の圧力及び速度の測定を行うための圧力センサ及び速度センサと、ii)プロセッシングモジュールと、を含み、プロセッシングモジュールは、導管内の第1の場所で行われた一連の第1の圧力測定値P及び一連の対応する第1の速度測定値Uを受信することと、導管内の第2の場所で行われた一連の第2の圧力測定値P及び一連の対応する第2の速度測定値Uを受信することと、それぞれの場所に対して、流体媒質内の波動スピードcを、対応する速度変化dUの2乗で割り算された圧力変化dPの2乗の関数として決定することと、第1の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、圧力変化dP及び速度変化dUの総和の関数として決定することと、第2の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、圧力変化dP及び速度変化dUの総和の関数として決定することと、標的領域を横断する圧力降下の指標である順方向の分離された流れ予備能を、dP+/dP+の比の関数として決定することと、をするように構成されている。
【0012】
プロセッシングモジュールは、それぞれの場所における波動スピードcを、式c=(1/ρ)√(ΣdP/ΣdU)に従って決定するように構成されてもよい。式のρは、その導管内における流体媒質の比重である。プロセッシングモジュールは、さらに、前記順方向の圧力変化dP+及びdP+を、式dP+=.(dP+ρcdU)/2及び式dP+=.(dP+ρcdU)/2に従って決定するように構成されてもよい。プロセッシングモジュールは、さらに、順方向の圧力値P+及びP+を得るために、多数のdP+及びdP+の値を積分又は合計し、そして、順方向の分離された流れ予備能を、比P+/P+の関数として決定するように構成されてもよい。前記装置は、心調律をモニタリングするための手段と、前記一連の圧力測定値及び前記一連の速度測定値を1回の完全な心周期の間に収集するために、前記圧力センサ及び前記速度センサを制御するための手段とを含んでもよい。
【0013】
これから、本発明の実施形態が、添付図面を参照して説明のために記述される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、圧力降下を引き起こす狭窄を有する導管であって、流体媒質を送る導管の概略図を示す。
【図2】図2は、導管内の狭窄病変又は他の流れの制限を分析するための適した順方向の圧力における流れ予備能測定技術のフローダイアグラムを示す。
【図3】図3は、図2の方法を実行するための適した装置の概略図を示す。
【図4】図4は、正常な心室と重度な運動低下の心室における近位側から生じる波動と遠位側から生じる波動との間での比率における相違を描いている。
【図5】図5は、正常な左心室機能及び仮定的に障害を有する左心室機能における増大する冠動脈狭窄に伴う血流予備量比の低下を概略的に描いており、正常に収縮する左心室の場合に、血流予備量比が冠動脈狭窄の増大に伴って低下する(実線)のに対して、仮定的に障害を有する左心室モデルの場合に、血流予備量比がそれよりかなり少ない量で低下する(点線)ことを示す。
【図6】図6は、時間の関数として、全体の測定圧力を順方向に走行する成分と逆方向に走行する成分とに分離した様子を描いた一組のグラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最近、冠動脈内における圧力波の大動脈成分と微小循環成分とを如何にして分離することができるのかについての記述が成されている。J E Daviesらによる「Evidence of a dominant backward-propagating "suction" wave responsible for diastolic coronary filling in humans, attenuated in left ventricular hypertrophy」 Circulation 2006 April 11;113(14):1768-78と、J E Daviesらによる「Use of simultaneous pressure and velocity measurements to estimate arterial wave speed at a single site in humans」 Am J Physiol Heart Circ Physiol 2006 February;290(2):H878-H885と、を参照のこと。
【0016】
本発明者らは、遠位側の圧力成分を明らかにする(又は取り除く)必要性を伴うことなく、ここに記述されている順方向の圧力における流れ予備能の技術を用いることにより、狭窄病変の重症度を評価することが可能であるということを認識した。順方向の圧力における流れ予備能は、その圧力波形の近位側成分と遠位側成分(又は「順方向」成分と「逆方向」成分)を分離することにより、従来のFFRの限界を克服する。逆方向の圧力成分は、取り除かれてもよい。冠動脈狭窄病変の評価は、簡素化され、一つの圧力源(即ち、左心室)が存在する大動脈狭窄病変の評価と非常に似たものになる。
【0017】
冠動脈の圧力分離は、いくつかの利点を有している。第一に、冠微小循環の血管を拡張させるためにアデノシンの投与を必要としない。第二に、左心室の機能に依存しない可能性が高く、そのため、評価技術として従来のFFRが禁忌である急性冠症候群、心筋梗塞後及び冬眠心筋での適用が可能になる。
【0018】
実際の問題として、分離された圧力は、同時に生じる圧力(P)及び流速(U)を測定し、そして、順方向側(例えば大動脈側)端部から生じる圧力Pを算出(式1)し、かつ、逆方向側(例えば微小循環側)端部から生じる圧力Pを算出(式2)することにより、決定することができる。
=Σ(1/2).(dP+ρcdU) (式1)
=Σ(1/2).(dP−ρcdU) (式2)
【0019】
dPは、測定された圧力変化を表し、dUは、測定された速度変化を表し、cは、波動スピードであり、そして、ρは、流体媒質の比重、例えば血液の比重である。冠動脈狭窄病変の重症度は、従来のFFRの場合と同様な式により、決定することができる。
従来のFFRの場合、狭窄病変の大きさ(即ち、上記で定義されるFFR比)は、
従来のFFR=(遠位側の圧力)/(近位側の圧力) (式3)
により決定される。
【0020】
FFRの大きさは、代替的に、順方向の圧力における流れ予備能の観点において表現されてもよく、即ち、微小循環側端部から生じる逆方向の圧力の影響をなく、表現してもよい。
順方向の圧力における流れ予備能=(遠位側のP)/(近位側のP)(式4)
【0021】
図1は、導管に沿って軸方向12に流体媒質11を搬送するための導管10の概略図を示している。この導管10は、パイプ又はチューブであってもよく、ある重要な形態においては、ヒト又は動物の冠動脈系における導管の一部を構成していてもよい。導管10の狭窄部15は、導管を通る流体の流れにおける該狭窄部の影響を測定されることが望まれる標的領域16を例示する。ある形態においては、狭窄部15は、冠動脈狭窄病変であってもよく、該狭窄部が存在していない場合に生じると考えられる最大流量との比較における、該導管を通る最大流量の比を決定するために、該狭窄部を横断する流体圧力の降下量を決定することが要求される。領域5及び6は、以下で説明されている方法に従って圧力と速度の測定が行われ得る第1の場所及び第2の場所を示している。第1の場所5は、標的領域15の第1の側に存在し、第2の場所は、標的領域15の第2の側に存在する。該第1の場所5は、冠動脈狭窄病変(又は他の狭窄病変)の近位側又は大動脈側に存在してもよく、該第2の場所6は、該冠動脈狭窄病変(又は他の狭窄病変)の遠位側又は微小循環側に存在するであろう。狭窄病変から該第1の場所(近位側又は大動脈側)までの距離が該導管の制限されていない部分における導管の直径の少なくとも1.5倍であることが、好ましい。
【0022】
図2は、導管10における狭窄部15の大きさを決定するための一例となる方法20を示している。一連の第1の圧力測定P及び一連の対応する第1の速度測定Uが、第1の場所5で行われる(ステップ21)。一連の第2の圧力測定P及び一連の対応する第2の速度測定Uが、第2の場所6で行われる(ステップ22)。それぞれの圧力測定及びそれに対応する速度測定は、好ましくは、実質的に同時に行われる。
【0023】
第1の場所5及び第2の場所6のそれぞれにおける波動スピードcは、対応する速度変化dUの2乗で割り算された圧力変化dPの2乗の関数として決定される(ステップ23)。圧力変化dPは、好ましくは、一連の第1の圧力測定Pのうち一組及びそれに対応した一連の第2の圧力測定Pのうち一組から、決定される。速度変化dUは、好ましくは、一連の第1の速度測定Uのうち一組及びそれに対応した一連の第2の速度測定Uのうち一組から、決定される。より好ましくは、一連の圧力測定及びそれに対応する一連の速度測定は、信号対雑音比を改善すべく集計することができる多数のdP測定値及びdU測定値を発生させる時間の期間に亘って行われる。該波動スピードは、合計される一連の圧力測定値のうち一組対及び一連の速度測定値のうち一組と、行われた総和の平方根とから、出することが可能である。それ故、波動スピードは、第1の場所5及び第2の場所6のそれぞれにおいて、一連の測定時間に対して、次の式に従って決定することができる。
c=(1/ρ)√(ΣdP/ΣdU) (式5)
ここで、ρは、導管内の流体媒質の比重である。ある好ましい形態において、流体媒質は、1,050kg/mの比重を有する血液である。
【0024】
それから、順方向の圧力変化dP+は、圧力変化dP及びそれに対応する(同時に生じる)速度変化dUの総和の関数として、決定される。より好ましくは、ステップ24及びステップ25に示されているように、第1の場所における順方向の圧力変化dP+は、次の式に従って決定される。
dP+=.(dP+ρcdU)/2 (式6)
そして、第2の場所における順方向の圧力変化dP+は、次の式に従って決定される。
dP+=.(dP+ρcdU)/2 (式7)
【0025】
好ましくは、第1の場所における順方向の圧力値P+を得るため、dP+の値は、全ての一連の測定に亘って合計又は積分される(ステップ26)。また好ましくは、第2の場所における順方向の圧力値P+を得るため、dP+の値も、全ての一連の測定に亘って合計又は積分される(ステップ27)。
【0026】
それから、順方向の圧力に対する流れ予備能は、比P+/P+(又は、一つの圧力変化測定値が使用される場合には、dP+/dP+)の関数として、決定される。第1の場所5が狭窄病変の近位側又は大動脈側を構成していて、第2の場所6が狭窄病変の遠位側又は微小循環側を構成している場合には、順方向の圧力における流れ予備能は、
FPFRforward=P+distal/P+proximal
である。したがって、ある好ましい配列においては、第1の場所5は、標的領域15の上流であり、そして、第2の場所6は、標的領域15の下流である(連続的な正の流れがあるものと仮定している)。
【0027】
冠動脈狭窄病変の測定の形態において、好ましくは、一連の圧力及び速度の測定は、少なくとも一つの全心周期に亘って行われ、さらに好ましくは、全数の心周期に亘って行われる。P+及びP+の平均値及び最大値は、FPFRmean及びFPFRmaxの値を導出するため、FPFRの計算において使用してもよい。順方向の圧力値P+及び順方向の圧力値P+を得るために使用されるdP+及びdP+の値は、1つ又はそれ以上の心周期の選定された部分から採用してもよく、又は上述のように、1つ又はそれ以上の心周期全体に亘って採用してもよい。好ましくは、それぞれの心周期に対して、少なくとも5個又は10個のdP+及びdP+の測定値が使用される。
【0028】
<装置>
上述される方法を実施するのに適した装置が図3に概略的に示されている。
【0029】
導管10における選定された場所5又は6での瞬間圧力を示す信号を発生させるため、圧力感知装置30が使用される。これらの圧力信号は、選定された場所で採用された時間の関数として一連の圧力測定値を発生させるため、例えば一連の第1の圧力測定値P及び一連の第2の圧力測定値Pを発生させるため、適切なアナログ・デジタル・コンバータ31へ送られる。同様に、圧力感知装置30の場合と実質的に同一の選定された場所5又は6における瞬間的な流体速度を示す信号を発生させるため、速度感知装置32が使用される。これらの流体速度信号は、選定された場所で採用された時間の関数として一連の流体速度測定値を発生させるため、例えば一連の第1の速度測定値U及び一連の第2の速度測定値Uを発生させるため、適切なアナログ・デジタル・コンバータ33へ送られる。該対応する圧力及び速度の測定は、好ましくは、実質的に同時に行われる。
【0030】
圧力感知装置30は、導管10内の選定された場所における圧力の直接的又は間接的な測定値をもたらすことが可能なあらゆる適切な変換器又は他の装置であってもよい。該圧力感知装置は、選定された場所5、6における導管10の流体内に位置された原位置型の圧力変換器であってもよく、又は、流体の流れやそれを閉じ込めている導管から検出可能な放射線であって、音響学的なもの、電磁気学的なもの、磁気学的なもの又はその他のものに関わらず、圧力を決定するために使用され得る放射線を利用して、離れた場所に位置された能動的又は受動的なセンサであってもよい。例えば、冠動脈及び大動脈においては、原位置型のセンサとして、Volcano Corporationから入手可能なPrimeWire(登録商標)、FloWire(登録商標)及びComboWire(登録商標)XTが、使用されてもよい。
【0031】
同様に、流体速度感知装置32は、導管10内の選定された場所における流体速度の直接的又は間接的な測定値をもたらすことが可能なあらゆる適切な変換器又は他の装置であってもよい。該流体速度感知装置32は、選定された場所5、6における導管の流体内に位置された原位置型の変換器であってもよく、又は、流体の流れから検出可能な放射線であって、音響学的なもの、電磁気学的なもの、磁気学的なもの又はDoppler超音波技術等の他のものに関わらず、流体速度を決定するために使用され得る放射線を利用して、離れた場所に位置された能動的又は受動的なセンサであってもよい。冠動脈及び大動脈においては、原位置型のセンサとして、上述したWaveWire(登録商標)、FloWire(登録商標)及びComboWire(登録商標)XT製品が、使用されてもよい。「流体の流れから検出可能な放射線」という表現は、その流体自身又はその流体内に伝わるあらゆる作用物質やマーカーからのエネルギーの、あらゆる能動的放射線又は反射による放射線もしくは再放射線を包含することを、意図されている。
【0032】
同一の圧力感知装置30は、別個の時間で、第1の場所5における一連の第1の圧力測定値P及び第2の場所6における一連の第2の圧力測定値Pを得るために、使用されてもよい。同様に、同一の速度感知装置32は、別個の時間で、第1の場所5における一連の第1の速度測定値U及び第2の場所6における一連の第2の速度測定値Uを得るために、使用されてもよい。代替的に、ComboWire(登録商標)センサ等の複合型のセンサが、第1の場所と第2の場所との両方で同時的に測定を行うために、構成されてもよい。ComboWire(登録商標)センサは、その先端の近位側に取り付けられた圧力変換器とその先端に取り付けられた超音波変換器とを有する可動ガイドワイヤである。それは、冠状血管と末梢血管との両方を含む血管内の同時発生的な圧力及び血流速度を測定するために使用することができる。
【0033】
アナログ・デジタル・コンバータ31,33からのデータストリームは、データロギングモジュール35へ通され、好ましくは、コンピュータ34により実行される。コンピュータ34は、ここで説明されているアルゴリズムを実行するための分離された圧力における流れ予備能解析モジュール36を含む。
【0034】
第1のプロセッシングモジュール37(波動スピード解析モジュール)は、好ましくは、上記のcに対して与えられている式(式5)に従って、第1の場所及び第2の場所における波動スピードを決定する。第2のプロセッシングモジュール38(圧力解析モジュール)は、好ましくは、上で与えられているdP+に対する表現(式6)に従って、第1の場所における順方向の圧力変化を決定する。また、該第2のプロセッシングモジュール38は、好ましくは、上で与えられているdP+に対する表現(式7)に従って、第2の場所における順方向の圧力変化も決定する。波動スピードcは、選定された場所における一つ又はそれ以上の心周期全体に亘って、圧力及び流体速度をサンプリングし、そして、それらの周期に亘って平均することにより、決定してもよい。
【0035】
コンピュータ34は、好ましくは、図2のステップ26及び27に従って上述の第1及び第2の場所における順方向の圧力変化を積分又は合計し、かつ、好ましくは図2のステップ28に従って順方向の圧力における流れ予備能FPFRforwardを決定するための計算モジュール39をさらに含む。
【0036】
FPFRforwardは、冠動脈狭窄病変の重症度の大きさを与える。このようにして、即ち、順方向に走行する(大動脈から生じる)圧力波動のみを用いて得られた測定値は、心筋収縮能の局所的な変化による影響又は冠微小循環の自律調節障害による影響を実質的に受け難い又は受けない。コンピュータ34のデータプロセッシングは、例えば適切にプログラミングされたコンピュータシステム等の適切な装置で実行されてもよく、又は圧力及び流速測定の特注ハードウェア/ソフトウェア測定コンソールで実行されてもよい。ハードウェア及びソフトウェアにおける計算機能の配分は、図3に示す一例の解析モジュールと異なった処理をすることもでき、そして、ハードウェアとソフトウェアとの適切な組み合わせで実行されてもよい、ということが理解されるだろう。
【0037】
冠動脈狭窄病変の評価における順方向と逆方向とに分離された圧力の分離を用いることの臨床的意義に関する検討が、付属書類1に与えられている。
【0038】
本発明の技法が主に冠動脈系における狭窄病変又は他の狭窄の分析と結び付けて記述されているが、該記述されている技法は、例えば、腎循環系の他のシステムや、狭窄部を通過する流体の流れが順方向に走行する圧力波と逆方向に走行する圧力波により影響される他のシステムにも適用可能である。
【0039】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内であることが意図されている。
【0040】
<付属書類1>
この新規な順方向の圧力における流れ予備能に関する技法は、従来のFFRを上回るいくつかの重要な治療上の利点を有している。
1.急性心筋梗塞直後の冠動脈狭窄病変の評価
2.急性冠症候群の5日以内の冠動脈狭窄病変の評価
3.局所壁運動異常を有する患者における冠動脈狭窄病変の評価
4.微小循環疾患を有する被検者における冠動脈狭窄病変の評価
5.アデノシンを投与する必要性が無くなる
【0041】
これらの利点は、FFRタイプの評価に適した患者の数を著しく増大させ、そして、冠血行再建術の実施件数の合計数において肯定的な効果を有することができる。現在、UKにおいては、取扱件数のうちの約30%は、急性心筋梗塞又は急性冠症候群を有する患者での緊急入院がもたらすものである。この集団においては、FFRは、禁忌であり、よくても一貫性がなく、そして、高い頻度で信頼できないことが判明している。
【0042】
順方向の圧力における流れ予備能は、圧力波形の近位側成分と遠位側成分とを分離することにより、これらの限界を克服又は軽減する。順方向の圧力における流れ予備能は、順方向の圧力成分から逆方向の圧力成分を取り除くことができ、これにより、例えばアデノシン等の強力な血管拡張剤を投与する必要性を無くす。
【0043】
これは、いくつかの特有の利点を有している。
1.アデノシン不耐性の限界を克服する(喘息、COPD等)
2.アデノシン抵抗性の限界を克服する
3.二次的な中心静脈シースの挿入を回避する
4.事例での全体的な時間を短縮する
【0044】
予備試験データから、本発明者らは、正常な心室と重度な運動低下の心室とにおいて、近位側から生じる波動と遠位側から生じる波動との間の比に大きな相違が存在することを見出した。いくつかの事例において、重度な運動低下領域内に在る動脈では、正常に収縮する心筋内に在る動脈と比較した際に、近位側/遠位側の比率において80%より大きな低減が観測されている。これが図4に示されている。冠動脈の左前下行枝における動脈内ワイヤを用いて圧力及び流速が記録され、それぞれの動脈に対して波動強度が計算された。機能が維持されている心室においては、近位側/遠位側の比率は、約1であったが、一方、重度に運動低下領域内に在る動脈においては、この比率は、著しく増大している。これは、局所心筋機能が、近位側及び遠位側から生じる圧力に対して異なった影響を及ぼすことを示唆している。
【0045】
血流予備量比(FFR)は、冠動脈の圧力がその動脈の近位側(大動脈側)端部のみから生じ、そして、その伝えられるキャビティー圧力及び収縮する心筋により壁内冠動脈導管に与える力が冠動脈の圧力に寄与しないものと仮定している。本発明者らは、これが事実とは異なっており、それどころか、冠動脈の圧力が約50%の順方向に走行する(大動脈側から生ずる)圧力成分と50%の逆方向に走行する圧力成分とから成ることを実証した(図4の左側のグラフ参照)。心筋収縮能における局所的な変化を有する被検者においては、(i)逆方向に走行する圧力は(図4の右側のグラフで示されているように)著しく低減され、そして(ii)FFRにおける低下が血行動態に影響を与えるような冠動脈狭窄病変によるものであるのか、又は心筋収縮能の局所的な変化によるものであるかを決定することは不可能である、と確信される。この特許出願において記述されているように、分離された圧力成分を用いることは、心筋収縮能の局所的な変化と無関係に、冠動脈狭窄病変の血行動態的意義を定量化することが可能になる。この技法は、臨床診療においてルーチン的に採用することが可能であり、ルーチン的な静脈内アデノシン投与の必要性をなくす。
【0046】
血流予備量比(FFR)は、冠動脈狭窄病変の生理学的意義1、2、3、4の評価及び心臓カテーテル検査室におけるステント展開の適性の評価において、ますます使用される。この技法は、狭窄病変が大きくなればなるほど、その大動脈と狭窄病変の下流との間での圧力の低下が大きくなる、という単純な前提に基づいている。
【0047】
FFRは、圧力変化が純粋に冠動脈の大動脈側端部から起こる、という仮定に基づいている。しかしながら、我々自身の研究を含めた数件の研究6−9は、冠動脈の圧力がその導管の両方端部からの圧力変化により影響を受けることを、明らかに実証している。恐らく最も広く受け入れられている冠動脈の流れのモデルは、心筋内ポンプモデル及び時間依存性エラスタンスモデルである。両方とも、小さな微小循環導管の圧縮を引き起こす心筋内圧力の増大及び心筋収縮の結果として、心収縮期の間に逆行性冠動脈血流が存在することを予測している。そのような逆流は、針状プローブビデオ顕微鏡法10及びDopplerフロープローブ11を用いたイヌ体内における測定により、確認されている。これは、心収縮期において、かなりの逆方向の圧力勾配が存在することを示している。我々の研究は、この逆方向の圧力勾配を、冠微小血管系の圧縮による早期の心収縮期におけるヒトの冠動脈で見られた、逆方向に走行する波動として特徴付けた。拡張期には、心筋弛緩を伴う壁内導管の減圧の結果として、それに対応した冠微小血管系内への血液の「吸引」が存在する。我々は、最近、左心室肥大においては、この逆方向の吸引波動が弱められることを実証した。それ故、特定の冠動脈により供給される心筋領域の変弛緩作用を弱める他の状況下においても、より小さな逆方向に走行する圧力成分が存在していてもよい。収縮及び弛緩をする心筋により生成される圧力勾配の存在は、FFRの測定にかなり、恐らくは50%又はそれ以上もの影響を及ぼすであろう(図5)。
【0048】
FFRの計算において、絶対的な一方向の圧力勾配を仮定すること(即ち、冠動脈の圧力への大きな逆方向走行性の寄与が存在しないという仮定)の限界は、微小血管疾患及び左心室機能不全における潜在的なエラーの源として、認識されている2、12、13。しかしながら、最近まで、それに対処する手段がなく、即ち、ヒト被検者において、冠動脈の圧力波形を順方向に走行する成分と逆方向に走行する成分とに分離するための技術が存在していなかった。
【0049】
我々は、最近、新たな技法(シングルポイント技法)を開発し、その技法は、波動強度解析と組み合わせ、圧力と流速との同時的な記録をベースとして、冠動脈の圧力をそれの順方向成分と逆方向成分とに分離することを可能にする14(図6)。そのような測定は、今や、冠動脈内で使用するために設計されて商業的に入手可能に組み合わせられた圧力・フローワイヤ(Combiwire、Volcano)を用いて、かなり実現可能であり、かつ、アデノシンを投与する必要性をなくす。我々は、ヒト体内の研究においてこの技法を用い、冠動脈の血流に関与する波動を特定し、その冠動脈の圧力波形を順方向に走行する(大動脈側から生じる)成分と逆方向に走行する(微小循環側から生じる)成分とに分離した
【0050】
これらの研究は、ヒト冠動脈における逆方向に走行する圧力成分が大きな順方向に走行する圧力成分と同じ重要性を有していることを実証している。冠動脈の圧力が順方向に走行する成分の結果と全く同じだけの逆方向に走行する圧力成分の結果であるため14、我々が圧力の順方向の伝播に関心を持った場合、分離された順方向に走行する圧力成分を用いてFFRを測定することがより適切であろう。したがって、逆方向に走行する圧力成分を取り除くことにより、我々は、左心室機能の局所的な変化、微小血管機能障害及び右心房圧の影響を排除することができ、狭窄病変の血行動態的意義のより正確な評価を行うことが可能になる。
【0051】
図6は、時間の関数として、全体的な測定圧力を順方向に走行する成分と逆方向に走行する成分との分離を描いた一組のグラフを示している。47歳の男性の回旋動脈において、同時に発生する圧力及び流速が測定された。冠動脈の圧力を順方向に走行する成分と逆方向に走行する成分とに分離するために、波動強度解析が適用された。順方向の圧力は、冠動脈と大動脈との間での大きなインピーダンス不整合により、大動脈圧とは異なっているように見える。そのような部位においては、逆方向に走行する波動は、再反射し、圧力を低減させる膨張波(又は吸引波)として、冠動脈へ戻る。
【0052】
<参照リスト>
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体媒質を送る導管内の狭窄の大きさを決定する方法であって、
a)導管内の第1の場所であって、標的領域の第1の側に在る第1の場所において、一連の第1の圧力測定Pと、それに対応した一連の第1の速度測定Uとを行うステップと、
b)導管内の第2の場所であって、標的領域の第2の側に在る第2の場所において、一連の第2の圧力測定Pと、それに対応した一連の第2の速度測定Uとを行うステップと、
c)それぞれの場所に対して、前記流体媒質における波動スピードcを、対応する速度変化dUの2乗で割り算された圧力変化dPの2乗の関数として決定するステップと、
d)前記第1の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、圧力変化dP及び速度変化dUの総和の関数として決定するステップと、
e)前記第2の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、圧力変化dP及び速度変化dUの総和の関数として決定するステップと、
f)前記標的領域を横断する圧力降下の指標である順方向の分離された流れ予備能を、dP+/dP+の比の関数として決定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記標的領域の前記第1の側は、前記標的領域の上流であり、前記第2の側は、前記標的領域の下流である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップc)は、前記それぞれの場所における前記波動スピードcを、式c=(1/ρ)√(ΣdP/ΣdU)に従って決定することを含む、請求項1記載の方法。
式のρは、前記導管内における前記流体媒質の比重である。
【請求項4】
ステップd)及びステップe)は、順方向の圧力変化dP+及びdP+を、式dP+=.(dP+ρcdU)/2及び式dP+=.(dP+ρcdU)/2に従って決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ステップf)は、順方向の圧力値P+及びP+を得るために、多数のdP+及びdP+の値を積分又は合計することと、順方向の分離された流れ予備能を、比P+/P+の関数として決定することと、を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記標的領域の何れかの側に変動する圧力源が存在する導管に適用される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ヒト又は動物の心臓の循環系における導管に適用される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記一連の第1及び第2の圧力測定と、前記一連の第1及び第2の速度測定とは、少なくとも1回の完全な心周期に亘って行われる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
対応する圧力及び速度の測定は、同時的に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
流体媒質を送る導管の狭窄の大きさを決定するための装置であって、
少なくとも標的領域の上流の第1の場所及び前記標的領域の下流の第2の場所において、該導管内における一連の圧力及び速度の測定を行うための圧力センサ及び速度センサと、プロセッシングモジュールと、を含み、
該プロセッシングモジュールは、
該導管内の前記第1の場所で行われた一連の第1の圧力測定値P及び一連の対応する第1の速度測定値Uを受信することと、
該導管内の前記第2の場所で行われた一連の第2の圧力測定値P及び一連の対応する第2の速度測定値Uを受信することと、
それぞれの場所に対して、流体媒質内の波動スピードcを、前記対応する速度変化dUの2乗で割り算された圧力変化dPの2乗の関数として決定することと、
前記第1の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、前記圧力変化dP及び前記速度変化dUの総和の関数として決定することと、
前記第2の場所に対して、順方向の圧力変化dP+を、前記圧力変化dP及び前記速度変化dUの総和の関数として決定することと、
前記標的領域を横断する圧力降下の指標である順方向の分離された流れ予備能を、dP+/dP+の比の関数として決定することと、をするように構成されている、装置。
【請求項11】
前記プロセッシングモジュールは、さらに、それぞれの場所における前記波動スピードcを、式c=(1/ρ)√(ΣdP/ΣdU)に従って決定するように構成されている、請求項10記載の装置。
式のρは、前記導管内における前記流体媒質の比重である。
【請求項12】
前記プロセッシングモジュールは、さらに、前記順方向の圧力変化dP+及びdP+を、式dP+=.(dP+ρcdU)/2及び式dP+=.(dP+ρcdU)/2に従って決定するように構成されている、請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッシングモジュールは、さらに、順方向の圧力値P+及びP+を得るために、多数のdP+及びdP+の値を積分又は合計し、そして、前記順方向の分離された流れ予備能を、比P+/P+の関数として決定するように構成されている、請求項10記載の装置。
【請求項14】
心調律をモニタリングするための手段と、前記一連の圧力測定値及び前記一連の速度測定値を1回の完全な心周期の間に収集するために、前記圧力センサ及び前記速度センサを制御するための手段とをさらに含む、請求項10記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−521092(P2013−521092A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556579(P2012−556579)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000344
【国際公開番号】WO2011/110817
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(505167543)インペリアル・イノベ−ションズ・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】