導電体被覆繊維集合体及びその製造方法
【課題】従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体を提供する。
【解決手段】平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存している導電体被覆繊維集合体1。本発明の導電体被覆繊維集合体1においては、各導電体被覆繊維10間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合が20%以下である。本発明の導電体被覆繊維集合体1は、例えば、保温材、電磁波シールド材、電磁波吸収材などの様々な用途において好適に用いることができる。
【解決手段】平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存している導電体被覆繊維集合体1。本発明の導電体被覆繊維集合体1においては、各導電体被覆繊維10間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合が20%以下である。本発明の導電体被覆繊維集合体1は、例えば、保温材、電磁波シールド材、電磁波吸収材などの様々な用途において好適に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体被覆繊維集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなる導電体被覆繊維集合体が知られている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の導電体被覆繊維集合体は、例えばメルトブロウン法により形成されたポリマー繊維からなるエラストマー不織布と、当該エラストマー不織布の表面を覆う金属コーティング(アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、鉄、金、銀、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金及び鉄系合金)を備える導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献1に記載の導電体被覆繊維集合体は、豪華な外観、各種の物理的性質(導電性、静電抵抗、化学的抵抗、熱反射性、熱放射性、光学的反射性)、望ましい柔軟性、弾性、柔らかさ及びドレープを有するようになる。
【0004】
特許文献2に記載の導電体被覆繊維集合体は、通気性を有するポリエステル製生地に真空蒸着法によりアルミニウム、ステンレス、銅、金、銀、チタン等からなる金属層を設けた導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献2に記載の導電体被覆繊維集合体からなる表地と、吸臭性を有する綿状の芯とを積層した繊維製品用素材を寝装品、敷物等の繊維製品に用いることにより、当該繊維製品は、通気性、脱臭性に加えて保温性、殺菌性を備えることとなるので、衛生上又は健康上好ましい環境を保つことができ、特に、老人や病人等に快適な環境を与えることができるようになる。
【0005】
特許文献3に記載の導電体被覆繊維集合体は、ナイロンの表面に銀めっきした構造を有する導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献3に記載の導電体被覆繊維集合体を含有する不織布等からなる布帛を電気敷毛布の裏面側に設置することにより、電気敷毛布の裏面側に熱が逸散し難くなり、高い省エネルギー効果をもった電気敷毛布となる。
【0006】
特許文献4に記載の導電体被覆繊維集合体は、熱可塑性合成繊維からなる嵩高な原料不織布にステンレス、チタン、ニッケルなどの耐食性金属が、物理蒸着により両面から被覆された導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献4に記載の導電体被覆繊維集合体は、繊維のほぼ全面が蒸着膜で被覆されることとなるため、十分な保温性を有し、軽量化可能であり、柔軟性に優れ、抗菌性に優れ、衣服や布団の中綿として好適に用いることができるようになる。
【0007】
特許文献5に記載の導電体被覆繊維集合体は、PAN系炭素繊維を含むポリエステル繊維の表面にステンレスなどの金属が、無電解めっき、電気めっき、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどにより被覆された導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献5に記載の導電体被覆繊維集合体は、不織布の柔軟性を損なわず、満足しうる電磁波シールド性を有するようになる。
【0008】
特許文献6に記載の導電体被覆繊維集合体は、ポリエステル繊維の表面に銀、金、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、これらの合金などが電解めっき、化学めっき、真空蒸着などにより表面粗さ0.01〜1μmで被覆された導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献6に記載の導電体被覆繊維集合体は、金属被膜の表面がオレンジピールを呈するようになり、優れた密着強度を有し耐久性に優れたものとなる。その結果、抗菌衣料、電磁波シールド材、静電防止材、電極・電線の代替材料、繊維強化プラスチックの導電性補強材となる。
【0009】
【特許文献1】特開平6−10262号公報
【特許文献2】特開平7−126976号公報
【特許文献3】特開2000−336546号公報
【特許文献4】実用新案登録第3120571号公報
【特許文献5】特開平6−294093号公報
【特許文献6】特開2001−234468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、繊維業界においては、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる繊維が常に求められており、導電体被覆繊維集合体においても例外ではない。
【0011】
そこで、本発明は、そのような事情に鑑みてなされたもので、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の導電体被覆繊維集合体は、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなり、各導電体被覆繊維間に空隙が残存していることを特徴とする。
【0013】
このため、本発明の導電体被覆繊維集合体は、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなり、各導電体被覆繊維間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0014】
ここで、ポリマー繊維の平均直径を50nm以上としたのは、ポリマー繊維の平均直径が50nm未満となるとポリマー繊維を高い生産性で製造することが困難となるからであり、ポリマー繊維の平均直径を800nm以下としたのは、ポリマー繊維の平均直径が800nmを超えると、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが困難となるからである。これらの観点から言えば、ポリマー繊維の平均直径は、70nm〜700nmであることがより好ましく、100nm〜600nmであることがさらに好ましい。
【0015】
(2)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
このように、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%以上であることにより、さらに高い柔軟性を有するようになる。この観点から言えば、各導電体被覆繊維集合体間に残存している空隙の単位体積に占める割合が50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。また、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が90%以下であることにより、繊維にしたときの機械的強度を維持することが可能となる。この観点から言えば、各導電体被覆繊維集合体間に残存している空隙の単位体積に占める割合が85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
(3)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、前記ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であることが好ましい。
【0018】
このように、ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であることにより、導電体被覆繊維集合体としてさらに高い特性を有するようになる。この観点から言えば、前記ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
(4)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、前記導電体は、金属からなることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、金属被覆繊維集合体となる。
【0021】
(5)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、前記導電体は、カーボンからなることが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、カーボン被覆繊維集合体となる。
【0023】
(6)本発明の保温材は、本発明の導電体被覆繊維集合体からなるものである。
【0024】
本発明の保温材によれば、後述する実施例からも明らかなように、高い保温性を備える保温材となる。また、本発明の保温材によれば、高い通気性、耐水性及び柔軟性をさらに兼ね備え、使用範囲が広く使い勝手のよい保温材となる。
【0025】
(7)本発明の電磁波シールド材は、本発明の導電体被覆繊維集合体からなるものである。
【0026】
本発明の電磁波シールド材によれば、後述する実施例からも明らかなように、高い電磁波シールド性を備える電磁波シールド材となる。また、本発明の電磁波シールド材によれば、高い通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をさらに兼ね備え、使用範囲が広く使い勝手のよい電磁波シールド材となる。
【0027】
(8)本発明の電磁波吸収材は、本発明の導電体被覆繊維集合体からなるものである。
【0028】
本発明の電磁波吸収材によれば、導電体(導電体層)の表面積を極めて大きくすることが可能となるため、高い電磁波吸収性を備える電磁波吸収材となる。また、本発明の電磁波吸収材によれば、高い通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をさらに兼ね備え、使用範囲が広く使い勝手のよい電磁波吸収材となる。
【0029】
(9)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法は、本発明の導電体被覆繊維集合体を製造するための導電体被覆繊維集合体の製造方法であって、長尺の可撓性基材を準備する可撓性基材準備工程と、前記可撓性基材における一方の面上に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の集合体からなるポリマー繊維層を形成するポリマー繊維層形成工程と、気相法によって前記ポリマー繊維層を構成する各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆する導電体被覆工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0030】
このため、本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法によれば、本発明の導電体被覆繊維集合体を製造することができる。
【0031】
(10)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法においては、前記ポリマー繊維層形成工程と前記導電体被覆工程との間に、前記可撓性基材から前記ポリマー繊維層を分離するポリマー繊維層分離工程をさらに含むことが好ましい。
【0032】
このような方法とすることにより、可撓性基材を有しない単体としての導電体被覆繊維集合体を製造することが可能となり、可撓性基材を有する積層体としての導電体被覆繊維集合体の場合とは異なる様々な用途に好適に用いることが可能となる。
【0033】
(11)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、前記導電体被覆工程においては、前記ポリマー繊維層の両面から各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆することが好ましい。
【0034】
このような方法とすることにより、ポリマー繊維の表面のうち導電体に被覆されていない部分の面積割合をさらに低くすることが可能となり、様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体を製造することが可能となる。
【0035】
(12)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、ポリマー繊維層形成工程においては、エレクトロスピニング法又はメルトブロウン法によってポリマー繊維層を形成することが好ましい。
【0036】
このような方法とすることにより、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の集合体からなるポリマー繊維層を高い生産性で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の導電体層被覆繊維集合体及びその製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0038】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の構成
図1は、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の構成を説明するために示す図である。図1(a)は導電体被覆繊維集合体1を構成する導電体被覆繊維10の断面構造を拡大して示す図であり、図1(b)は導電体被覆繊維集合体1からなる導電体被覆繊維集合体層112を備える導電体被覆繊維集合体積層シート104の断面構造を示す図である。
【0039】
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、図1に示すように、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体(導電体層)30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなるものである。実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1においては、後述する図10〜図13からも明らかなように、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存している。そして、各導電体被覆繊維10間に残存している空隙の単位体積に占める割合は40%〜90%の範囲内にあり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は20%以下である。
【0040】
ポリマー繊維20は、エレクトロスピニング法によって形成されたものである。導電体30は、気相法(例えばスパッタリング法)によってポリマー繊維20の表面に被覆されたものであり、導電体層30の平均厚さは、例えば10nm〜500nmである。
【0041】
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、図1(b)に示すように、可撓性基材100上に導電体被覆繊維集合体層112として形成することができる。この明細書においては、可撓性基材100上に導電体被覆繊維集合体層112が形成されたものを導電体被覆繊維集合体積層シート104ということとする。
【0042】
ポリマー繊維20の材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)など各種の材料を用いることができる。用途に応じて最適なものを選択すればよい。
【0043】
導電体30としては、金属からなる導電体及びカーボンからなる導電体を好適に用いることができる。金属としては、例えば、アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、クロム、チタン、シリコン、鉛、モリブデン、鉄、金、銀、白金、パラジウム、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金及び鉄系合金など各種の金属を用いることができる。用途に応じて最適なものを選択すればよい。例えば、用途が保温材の場合には、銀、銅、アルミニウムなどを好適に用いることができ、用途が電磁波吸収シールド材の場合には、金、白金、銀、銅、ニッケルなどを好適に用いることができ、用途が電磁波吸収材の場合には、カーボン、アルミニウムなどを好適に用いることができる。
【0044】
2.実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法
図2は、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。図2(a)〜図2(c)は各工程において導電体被覆繊維集合体1が製造されていく様子を示す断面図である。また、図3は、実施形態1における可撓性基材準備工程の内容を模式的に示す図である。また、図4は、実施形態1におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。また、図5は、実施形態1における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【0045】
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、以下の、可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより作製することができる。
【0046】
(1)可撓性基材準備工程
まず、図2(a)及び図3に示すように、長尺の可撓性基材100を準備する。可撓性基材100の厚さは、例えば50μm〜3mmである。また、可撓性基材100は、例えば、ポリエステル繊維の不織布からなる。
【0047】
(2)ポリマー繊維形成工程
次に、図2(b)及び図4に示すように、エレクトロスピニング法によって可撓性基材100における一方の面上にポリマー繊維層110を形成し、ポリマー繊維積層シート102を形成する。ポリマー繊維層110の厚さは、例えば、30μm〜500μmである。ポリマー繊維層110を構成するポリマー繊維20は、例えば、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維からなる。ポリマー繊維形成工程は、ロールツーロール方式のエレクトロスピニング装置200を用いる。なお、図4において、符号202は繰り出し側ロールを示し、符号204は送りローラを示し、符号208は巻き取り側ロールを示し、符号220は樹脂原料タンクを示し、符号222はバルブを示し、符号224はノズルを示し、符号226は対向電極を示し、符号228は高圧電源を示し、符号230はポリマー繊維の軌跡を示す。
【0048】
ポリマー繊維形成工程においては、まず、ポリマー繊維の原料を、溶媒に溶解して液体とした状態で樹脂原料タンク220に供給する。その後、可撓性基材100を移動させながら、ポリマー繊維の原料をノズル224から可撓性基材100に向けて飛ばすことにより、可撓性基材100における一方の面上にポリマー繊維層110を形成する。このとき、溶媒は、ポリマー原料がノズル224から可撓性基材100に向かう途中で蒸発する。なお、対向電極226は、図示しないヒータにより加熱されており、ポリマー繊維20中に残存することがある溶媒も、ヒータからの熱によって蒸発する。
【0049】
(3)導電体被覆工程
次に、図2(c)及び図5に示すように、気相法(スパッタリング法)によって可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に導電体(各種)30を被覆する。導電体30の厚さは、例えば、10nm〜500nmである。導電体被覆工程は、ロールツーロール方式のスパッタリング装置300を用いる。なお、図5において、符号302は繰り出し側ロールを示し、符号304は送りローラを示し、符号306は冷却ローラを示し、符号308は巻き取り側ロールを示し、符号310,320はスパッタ室を示し、符号312,322はスパッタリングユニットを示し、符号314,324はプラズマを示す。
【0050】
以上の工程を行うことにより、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1を製造することができる。
【0051】
3.実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の効果
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0052】
また、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1によれば、各導電体被覆繊維10間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあるため、さらに高い柔軟性を有するようになり、また、繊維にしたときの機械的強度を維持することが可能となる。
【0053】
また、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1によれば、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であるため、導電体被覆繊維としてさらに高い特性を有するようになる。
【0054】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。図6(a)〜図6(d)は各工程において導電体被覆繊維集合体2が製造されていく様子を示す断面図である。また、図7は、実施形態2におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。また、図8は、実施形態2における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【0055】
実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、基本的には実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1と同様の繊維構造を有するが、導電体被覆繊維集合体の層構造が実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の場合とは異なる。すなわち、図6(d)に示すように、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、可撓性基材を有しない単層構造を有する。
【0056】
このように、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、導電体被覆繊維集合体の層構造が実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1とは異なるが、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1と同様に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0057】
また、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、可撓性基材を有しない単層構造を有するため、可撓性基材を有する積層構造を有する場合(実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1参照。)とは異なる様々な用途に好適に用いることが可能となる。
【0058】
なお、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1と同様の繊維構造を有するため、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0059】
実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、以下の、可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより作製することができる。
【0060】
(1)可撓性基材準備工程
まず、図6(a)に示すように、実施形態1の場合と同様に、長尺の可撓性基材100を準備する。
【0061】
(2)ポリマー繊維形成工程
次に、図6(b)及び図7に示すように、実施形態1の場合と同様に、エレクトロスピニング法によって可撓性基材100における一方の面上にポリマー繊維層110を形成し、ポリマー繊維積層シート102を形成する。その後、図6(c)及び図7に示すように、実施形態1の場合とは異なり、可撓性基材100からポリマー繊維層110を分離する。
【0062】
(3)導電体被覆工程
次に、図6(d)及び図8に示すように、可撓性基材100を有しない単体としてのポリマー繊維層110を用い、気相法(スパッタリング法)によってポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に導電体層30を被覆する。
【0063】
以上の工程を行うことにより、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2を製造することができる。
【0064】
[実施形態3]
図9は、実施形態3における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【0065】
実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、基本的には実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2と同様の繊維構造を有するが、導電体の被覆のされ方が実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2の場合と異なる。すなわち、図9に示すように、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3においては、導電体被覆繊維集合体3は、ポリマー繊維層110の両面から各ポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された構成を有する。
【0066】
このように、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、導電体の被覆のされ方が実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2の場合とは異なるが、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2と同様に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0067】
また、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、ポリマー繊維層110の両面から各ポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された構成を有するため、ポリマー繊維の表面のうち導電体に被覆されていない部分の面積割合をさらに低くすることが可能となり、様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0068】
なお、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2と同様の繊維構造を有するため、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0069】
実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、以下の、可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより作製することができる。
【0070】
(1)可撓性基材準備工程
まず、実施形態1の場合と同様に、長尺の可撓性基材100を準備する。
【0071】
(2)ポリマー繊維形成工程
次に、実施形態2の場合と同様に、ポリマー繊維層110を形成する。
【0072】
(3)導電体被覆工程
次に、図9に示すように、気相法(スパッタリング法)によってポリマー繊維層110の両面から各ポリマー繊維20の表面に導電体を被覆する。
【0073】
以上の工程を行うことにより、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3を製造することができる。
【0074】
以下、実施例を参照しながら、本発明の導電体被覆繊維集合体の効果を説明する。
【0075】
1.試料の調整
[実施例1]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aを作製した。
【0076】
(1)可撓性基材準備工程
ポリエステル繊維の不織布からなる長尺の可撓性基材100を準備する。可撓性基材100の厚さは200μmである。可撓性基材100の1m2当たりの重量は50gである。
【0077】
(2)ポリマーナノ繊維形成工程
次に、上記したエレクトロスピニング装置200を用いて、エレクトロスピニング法によって可撓性基材100における一方の面上にポリウレタンからなるポリマー繊維層110を形成する。ポリマー繊維層110の厚さは10μmであり、ポリマー繊維層110の1m2当たりの重量は5gである。また、ポリマー繊維層110を構成するポリマー繊維20の平均直径は300nmである。なお、「ポリマー繊維20の平均直径」は、電子顕微鏡写真(図13(b)参照。)に写っている多数のポリマー繊維における測定箇所を無作為に100点抽出し、その箇所における繊維幅を測定し、測定された繊維幅を平均することよって算出した。
【0078】
(3)導電体被覆工程
次に、上記したスパッタリング装置300を用いて、気相法(スパッタリング法)によって、可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に銀からなる導電体30aを形成する。導電体30aの平均厚さは50nmである。得られた導電体被覆繊維集合体1a及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は90gである。なお、導電体被覆繊維集合体1aにおいては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合は60%であり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は5%である。
【0079】
なお、「導電体30aの平均厚さ」は、断面顕微鏡写真を撮影する箇所を導電体被覆繊維から無作為に10点抽出し、その箇所における断面電子顕微鏡写真から導電体の厚さを測定し、測定された導電体の厚さを平均することによって算出した。
また、「各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合」は、ポリマー繊維層110の厚さ及び1m2当たりの重量から計算して得られるポリマー繊維層110の嵩密度と、ポリマーの比重とから空隙の体積を算出する方法で算出した。
また、「ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合」は、無作為に選んだ電子顕微鏡写真(図10(b)参照。)から、被覆部及び未被覆部の面積を測定し、これらの比率から算出した。
【0080】
[実施例2]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより、実施例2に係る導電体被覆繊維集合体1bを作製した。このうち、可撓性基材準備工程及びポリマー繊維形成工程は、実施例1と同じであり、導電体被覆工程は、実施例1とは異なる。導電体被覆工程は以下のとおりである。
【0081】
(3)導電体被覆工程
次に、上記したスパッタリング装置300を用いて、気相法(スパッタリング法)によって、可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に銅からなる導電体30bを形成する。導電体30bの平均厚さは50nmである。得られた導電体被覆繊維集合体1b及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は75gである。なお、導電体被覆繊維集合体1bにおいては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合は60%であり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は5%である。
【0082】
[実施例3]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cを作製した。このうち、可撓性基材準備工程及びポリマー繊維形成工程は、実施例1と同じであり、導電体被覆工程は、実施例1とは異なる。導電体被覆工程は以下のとおりである。
【0083】
(3)導電体被覆工程
次に、上記したスパッタリング装置300を用いて、気相法(スパッタリング法)によって、可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面にアルミニウムからなる導電体30cを形成する。導電体30cの平均厚さは50nmである。得られた導電体被覆繊維集合体1c及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は63gである。なお、導電体被覆繊維集合体1cにおいては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合は60%であり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は5%である。
【0084】
[比較例1]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程とをこの順序で実施することにより、比較例1に係る繊維1dを作製した。なお、可撓性基材準備工程及びポリマー繊維形成工程は、実施例1と同じである。すなわち、比較例1においては、ポリマー繊維形成工程で作製されたポリマー繊維110をそのまま用いて繊維1dとした。繊維1dの1m2当たりの重量は6.7gである。また、繊維1d及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は57gである。
【0085】
[比較例2]
市販のポリエステル繊維(株式会社クラレ製、商品名P−800)をそのまま比較例2に係る繊維1eとした。繊維1eの1m2当たりの重量は129gである。なお、繊維1eの平均直径は14μmである。
【0086】
[比較例3]
天然の綿をそのまま比較例3に係る繊維1fとした。繊維1fの1m2当たりの重量は155gである。なお、繊維1fの平均直径は18μmである。
【0087】
[比較例4]
市販の導電性ファイバ(株式会社クラレ製、商品名クラカーボ)をそのまま比較例5に係る繊維1hとした。繊維1hの1m2当たりの重量は135gである。なお、繊維1hの平均直径は14μmである。
【0088】
[比較例5]
市販の金属メッキファイバ(株式会社クラレ製、商品名セルメック)をそのまま比較例4に係る導電体被覆繊維集合体1gとした。繊維1gの1m2当たりの重量は321gである。なお、繊維1gの平均直径は20μmである。
【0089】
2.試料の評価方法
【0090】
(1)電子顕微鏡写真
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1に係る繊維1dについて、電子顕微鏡写真を撮影した。
【0091】
(2)保温性
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1〜3に係る繊維1d〜1fを試料として用いて、保温性を評価した。保温性の評価は、JIS−L1096(恒温法)に準拠して行った。すなわち、各試料を30cm×30cmの大きさにした後、各試料の導電体蒸着側の面を空気に向けた状態で各試料を、表面温度を36℃とした恒温発熱体に取り付け、2時間後の消費電力をブランク(試料のない裸状態)での消費電力と比較することにより行った。
【0092】
(3)通気性
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1に係る繊維1dを試料として用いて、通気性を評価した。通気性の評価は、フラジール法に準拠して行った。すなわち、フラジール試験機における円筒の一端に20cm×20cmの大きさの各試料を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸い込みファンを調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、試験機に付属の表によって各試料を通過する空気量(cm3/cm2・s)を求めることにより行った。
【0093】
(4)電磁波シールド性
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1,4,5に係る繊維1d,1g,1hを試料として用いて、電磁波シールド性を評価した。電磁波シールド性の評価は、KEC(関西電子工業振興センター)法に準拠して行った。すなわち、各試料を12cm×12cmの大きさにした後、電磁波シールド測定室の高周波信号発生器と高周波信号強度測定器との間に各試料を配置した状態で、周波数を変化させながら(10MHz〜1000MHz)高周波信号の通過量を測定することにより行った。
【0094】
3.試料の評価結果
図10は、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aを説明するために示す図である。図10(a)は導電体被覆繊維集合体1aの電子顕微鏡写真であり、図10(b)は図10(a)の場合よりも高倍率で撮影した導電体被覆繊維集合体1aの電子顕微鏡写真である。
図11は、実施例2に係る導電体被覆繊維集合体1bを説明するために示す図である。図11(a)は導電体被覆繊維集合体1bの電子顕微鏡写真であり、図11(b)は図11(a)の場合よりも高倍率で撮影した導電体被覆繊維集合体1bの電子顕微鏡写真である。
図12は、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cを説明するために示す図である。図12(a)は導電体被覆繊維集合体1cの電子顕微鏡写真であり、図12(b)は図12(a)の場合よりも高倍率で撮影した導電体被覆繊維集合体1cの電子顕微鏡写真である。
図13は、比較例1に係る繊維1dを説明するために示す図である。図13(a)は繊維1dの電子顕微鏡写真であり、図13(b)は図13(a)の場合よりも高倍率で撮影した繊維1dの電子顕微鏡写真である。
【0095】
図14は、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1〜5に係る繊維1d〜1hの各種特性についての評価結果を示す図である。
図15は、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1,4,5に係る繊維1d,1g,1hの電磁波シールド特性についての評価結果を示す図である。
【0096】
(1)電子顕微鏡写真
図13に示すように、比較例1に係る繊維1dは平均直径が300nmのポリマー繊維であることが確認できた。従って、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cにおいても、ポリマー繊維の平均直径は300nmとなる。また、図10〜図12に示すように、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cは、ポリマー繊維1本1本に導電体が被覆されており、ポリマー繊維の繊維構造が維持されてていることが確認できた。また、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cにおいては、各導電体被覆繊維間に空隙が残存していること、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が60%であること、そしてポリマー繊維の表面のうち導電体に被覆されていない部分の面積割合が5%であることが確認できた。
【0097】
(2)保温性
図14に示すように、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cはいずれも、比較例1〜3に係る繊維1d〜1fよりも優れた保温特性(高いASTM保温率)を有することが確認できた。従って、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cは、防寒衣服の用途に好適に用いることができる。
(3)通気性
図14に示すように、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cは、比較例1に係る繊維1dとほぼ同等の優れた通気性を有することが確認できた。従って、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cは、スキーウェアその他の衣服の用途に好適に用いることができる。
【0098】
(4)電磁波シールド性
図14及び図15に示すように、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a,1b,1cはいずれも、比較例1に係る繊維1dよりも高い電磁波シールド特性を有することがわかった。また、実施例2に係る導電体被覆繊維集合体1bは、比較例4に係る繊維1hと同等の電磁波シールド特性を有することがわかった。また、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aは、比較例5の繊維gには及ばないものの比較例4に係る繊維1hよりも高い電磁波シールド特性を有することがわかった。従って、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aは、電磁波シールド材として好適に用いることができる。
【0099】
以上、本発明の導電体被覆繊維集合体を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0100】
(1)上記各実施形態においては、エレクトロスピニング法を用いてポリマー繊維層110を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、メルトブロウン法によってポリマー繊維層110を形成することとしてもよい。
【0101】
(2)上記各実施形態においては、スパッタリング法を用いて導電体30を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。図16は、変形例1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法における導電体被覆工程を説明するために示す図である。図16に示すように、真空蒸着法によって導電体30を形成することとしてもよい。なお、図16において、符号402は繰り出し側ロールを示し、符号404は送りローラを示し、符号406は冷却ローラを示し、符号408は巻き取り側ロールを示し、符号410は真空蒸着室を示し、符号412は真空蒸着ユニットを示し、符号414は金属蒸気を示す。
【0102】
(3)上記各実施形態においては、ポリマー繊維の原料を溶媒に溶解して液体としているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリマー繊維の原料を加熱して液体としてもよい。
【0103】
(4)上記各実施例においては、保温性、通気性、電磁波シールド性を例にとって本発明の導電体層被覆繊維集合体を説明したが、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、これに限定されるものではない。例えば、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、優れた電磁波吸収特性その他の高い特性を有するため、電磁波吸収材はじめ様々な用途において好適に用いることができる。
なお、電磁波吸収材を製造する場合には、用いる導電体としては、カーボン、アルミニウムなどを好ましく例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の構成を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1における可撓性基材準備工程の内容を模式的に示す図である。
【図4】実施形態1におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。
【図5】実施形態1における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【図6】実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図7】実施形態2におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。
【図8】実施形態2における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【図9】実施形態3における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【図10】実施例1に係る導電体被覆繊維集合体10aの電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例2に係る導電体被覆繊維集合体10bの電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例3に係る導電体被覆繊維集合体10cの電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例1に係る繊維10dの電子顕微鏡写真写真である。
【図14】実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1〜5に係る繊維1d〜1hの各種特性についての評価結果を示す図である。
【図15】実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1,4,5に係る繊維1d,1g,1hの電磁波シールド特性についての評価結果を示す図である。
【図16】変形例1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法における導電体被覆工程を説明するために示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,2,3,4…導電体被覆繊維集合体、10…導電体被覆繊維、20…ポリマー繊維、30…導電体、100…可撓性基材、102…ポリマー繊維積層シート、104…導電体被覆繊維集合体積層シート、110…ポリマー繊維層、112…導電体被覆繊維集合体層、200,200a…エレクトロスピニング装置、202,302,402…繰り出し側ロール、204,304,404…送りローラ、306,306a,306b,406…冷却ローラ、208,208a,208b,308,408…巻き取り側ロール、220…樹脂原料、222…バルブ、224…ノズル、226…対向電極、228…高圧電源、230…ポリマー繊維の軌跡、300,300a…スパッタリング装置、310,310a,320,320a…スパッタ室、312,312a,322,322a…スパッタリングユニット、314,314a,324,324a…プラズマ、400…真空蒸着装置、410…真空蒸着室、412…真空蒸着ユニット、414…金属蒸気
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体被覆繊維集合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなる導電体被覆繊維集合体が知られている(例えば、特許文献1〜6参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の導電体被覆繊維集合体は、例えばメルトブロウン法により形成されたポリマー繊維からなるエラストマー不織布と、当該エラストマー不織布の表面を覆う金属コーティング(アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、鉄、金、銀、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金及び鉄系合金)を備える導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献1に記載の導電体被覆繊維集合体は、豪華な外観、各種の物理的性質(導電性、静電抵抗、化学的抵抗、熱反射性、熱放射性、光学的反射性)、望ましい柔軟性、弾性、柔らかさ及びドレープを有するようになる。
【0004】
特許文献2に記載の導電体被覆繊維集合体は、通気性を有するポリエステル製生地に真空蒸着法によりアルミニウム、ステンレス、銅、金、銀、チタン等からなる金属層を設けた導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献2に記載の導電体被覆繊維集合体からなる表地と、吸臭性を有する綿状の芯とを積層した繊維製品用素材を寝装品、敷物等の繊維製品に用いることにより、当該繊維製品は、通気性、脱臭性に加えて保温性、殺菌性を備えることとなるので、衛生上又は健康上好ましい環境を保つことができ、特に、老人や病人等に快適な環境を与えることができるようになる。
【0005】
特許文献3に記載の導電体被覆繊維集合体は、ナイロンの表面に銀めっきした構造を有する導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献3に記載の導電体被覆繊維集合体を含有する不織布等からなる布帛を電気敷毛布の裏面側に設置することにより、電気敷毛布の裏面側に熱が逸散し難くなり、高い省エネルギー効果をもった電気敷毛布となる。
【0006】
特許文献4に記載の導電体被覆繊維集合体は、熱可塑性合成繊維からなる嵩高な原料不織布にステンレス、チタン、ニッケルなどの耐食性金属が、物理蒸着により両面から被覆された導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献4に記載の導電体被覆繊維集合体は、繊維のほぼ全面が蒸着膜で被覆されることとなるため、十分な保温性を有し、軽量化可能であり、柔軟性に優れ、抗菌性に優れ、衣服や布団の中綿として好適に用いることができるようになる。
【0007】
特許文献5に記載の導電体被覆繊維集合体は、PAN系炭素繊維を含むポリエステル繊維の表面にステンレスなどの金属が、無電解めっき、電気めっき、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどにより被覆された導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献5に記載の導電体被覆繊維集合体は、不織布の柔軟性を損なわず、満足しうる電磁波シールド性を有するようになる。
【0008】
特許文献6に記載の導電体被覆繊維集合体は、ポリエステル繊維の表面に銀、金、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、これらの合金などが電解めっき、化学めっき、真空蒸着などにより表面粗さ0.01〜1μmで被覆された導電体被覆繊維の集合体からなるものである。このため、特許文献6に記載の導電体被覆繊維集合体は、金属被膜の表面がオレンジピールを呈するようになり、優れた密着強度を有し耐久性に優れたものとなる。その結果、抗菌衣料、電磁波シールド材、静電防止材、電極・電線の代替材料、繊維強化プラスチックの導電性補強材となる。
【0009】
【特許文献1】特開平6−10262号公報
【特許文献2】特開平7−126976号公報
【特許文献3】特開2000−336546号公報
【特許文献4】実用新案登録第3120571号公報
【特許文献5】特開平6−294093号公報
【特許文献6】特開2001−234468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、繊維業界においては、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる繊維が常に求められており、導電体被覆繊維集合体においても例外ではない。
【0011】
そこで、本発明は、そのような事情に鑑みてなされたもので、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の導電体被覆繊維集合体は、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなり、各導電体被覆繊維間に空隙が残存していることを特徴とする。
【0013】
このため、本発明の導電体被覆繊維集合体は、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなり、各導電体被覆繊維間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0014】
ここで、ポリマー繊維の平均直径を50nm以上としたのは、ポリマー繊維の平均直径が50nm未満となるとポリマー繊維を高い生産性で製造することが困難となるからであり、ポリマー繊維の平均直径を800nm以下としたのは、ポリマー繊維の平均直径が800nmを超えると、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが困難となるからである。これらの観点から言えば、ポリマー繊維の平均直径は、70nm〜700nmであることがより好ましく、100nm〜600nmであることがさらに好ましい。
【0015】
(2)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
このように、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%以上であることにより、さらに高い柔軟性を有するようになる。この観点から言えば、各導電体被覆繊維集合体間に残存している空隙の単位体積に占める割合が50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。また、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が90%以下であることにより、繊維にしたときの機械的強度を維持することが可能となる。この観点から言えば、各導電体被覆繊維集合体間に残存している空隙の単位体積に占める割合が85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
(3)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、前記ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であることが好ましい。
【0018】
このように、ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であることにより、導電体被覆繊維集合体としてさらに高い特性を有するようになる。この観点から言えば、前記ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
(4)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、前記導電体は、金属からなることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることにより、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、金属被覆繊維集合体となる。
【0021】
(5)本発明の導電体被覆繊維集合体においては、前記導電体は、カーボンからなることが好ましい。
【0022】
このような構成とすることにより、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、カーボン被覆繊維集合体となる。
【0023】
(6)本発明の保温材は、本発明の導電体被覆繊維集合体からなるものである。
【0024】
本発明の保温材によれば、後述する実施例からも明らかなように、高い保温性を備える保温材となる。また、本発明の保温材によれば、高い通気性、耐水性及び柔軟性をさらに兼ね備え、使用範囲が広く使い勝手のよい保温材となる。
【0025】
(7)本発明の電磁波シールド材は、本発明の導電体被覆繊維集合体からなるものである。
【0026】
本発明の電磁波シールド材によれば、後述する実施例からも明らかなように、高い電磁波シールド性を備える電磁波シールド材となる。また、本発明の電磁波シールド材によれば、高い通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をさらに兼ね備え、使用範囲が広く使い勝手のよい電磁波シールド材となる。
【0027】
(8)本発明の電磁波吸収材は、本発明の導電体被覆繊維集合体からなるものである。
【0028】
本発明の電磁波吸収材によれば、導電体(導電体層)の表面積を極めて大きくすることが可能となるため、高い電磁波吸収性を備える電磁波吸収材となる。また、本発明の電磁波吸収材によれば、高い通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をさらに兼ね備え、使用範囲が広く使い勝手のよい電磁波吸収材となる。
【0029】
(9)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法は、本発明の導電体被覆繊維集合体を製造するための導電体被覆繊維集合体の製造方法であって、長尺の可撓性基材を準備する可撓性基材準備工程と、前記可撓性基材における一方の面上に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の集合体からなるポリマー繊維層を形成するポリマー繊維層形成工程と、気相法によって前記ポリマー繊維層を構成する各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆する導電体被覆工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0030】
このため、本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法によれば、本発明の導電体被覆繊維集合体を製造することができる。
【0031】
(10)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法においては、前記ポリマー繊維層形成工程と前記導電体被覆工程との間に、前記可撓性基材から前記ポリマー繊維層を分離するポリマー繊維層分離工程をさらに含むことが好ましい。
【0032】
このような方法とすることにより、可撓性基材を有しない単体としての導電体被覆繊維集合体を製造することが可能となり、可撓性基材を有する積層体としての導電体被覆繊維集合体の場合とは異なる様々な用途に好適に用いることが可能となる。
【0033】
(11)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、前記導電体被覆工程においては、前記ポリマー繊維層の両面から各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆することが好ましい。
【0034】
このような方法とすることにより、ポリマー繊維の表面のうち導電体に被覆されていない部分の面積割合をさらに低くすることが可能となり、様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体を製造することが可能となる。
【0035】
(12)本発明の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、ポリマー繊維層形成工程においては、エレクトロスピニング法又はメルトブロウン法によってポリマー繊維層を形成することが好ましい。
【0036】
このような方法とすることにより、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の集合体からなるポリマー繊維層を高い生産性で製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の導電体層被覆繊維集合体及びその製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0038】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の構成
図1は、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の構成を説明するために示す図である。図1(a)は導電体被覆繊維集合体1を構成する導電体被覆繊維10の断面構造を拡大して示す図であり、図1(b)は導電体被覆繊維集合体1からなる導電体被覆繊維集合体層112を備える導電体被覆繊維集合体積層シート104の断面構造を示す図である。
【0039】
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、図1に示すように、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体(導電体層)30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなるものである。実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1においては、後述する図10〜図13からも明らかなように、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存している。そして、各導電体被覆繊維10間に残存している空隙の単位体積に占める割合は40%〜90%の範囲内にあり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は20%以下である。
【0040】
ポリマー繊維20は、エレクトロスピニング法によって形成されたものである。導電体30は、気相法(例えばスパッタリング法)によってポリマー繊維20の表面に被覆されたものであり、導電体層30の平均厚さは、例えば10nm〜500nmである。
【0041】
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、図1(b)に示すように、可撓性基材100上に導電体被覆繊維集合体層112として形成することができる。この明細書においては、可撓性基材100上に導電体被覆繊維集合体層112が形成されたものを導電体被覆繊維集合体積層シート104ということとする。
【0042】
ポリマー繊維20の材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)など各種の材料を用いることができる。用途に応じて最適なものを選択すればよい。
【0043】
導電体30としては、金属からなる導電体及びカーボンからなる導電体を好適に用いることができる。金属としては、例えば、アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、クロム、チタン、シリコン、鉛、モリブデン、鉄、金、銀、白金、パラジウム、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金及び鉄系合金など各種の金属を用いることができる。用途に応じて最適なものを選択すればよい。例えば、用途が保温材の場合には、銀、銅、アルミニウムなどを好適に用いることができ、用途が電磁波吸収シールド材の場合には、金、白金、銀、銅、ニッケルなどを好適に用いることができ、用途が電磁波吸収材の場合には、カーボン、アルミニウムなどを好適に用いることができる。
【0044】
2.実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法
図2は、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。図2(a)〜図2(c)は各工程において導電体被覆繊維集合体1が製造されていく様子を示す断面図である。また、図3は、実施形態1における可撓性基材準備工程の内容を模式的に示す図である。また、図4は、実施形態1におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。また、図5は、実施形態1における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【0045】
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、以下の、可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより作製することができる。
【0046】
(1)可撓性基材準備工程
まず、図2(a)及び図3に示すように、長尺の可撓性基材100を準備する。可撓性基材100の厚さは、例えば50μm〜3mmである。また、可撓性基材100は、例えば、ポリエステル繊維の不織布からなる。
【0047】
(2)ポリマー繊維形成工程
次に、図2(b)及び図4に示すように、エレクトロスピニング法によって可撓性基材100における一方の面上にポリマー繊維層110を形成し、ポリマー繊維積層シート102を形成する。ポリマー繊維層110の厚さは、例えば、30μm〜500μmである。ポリマー繊維層110を構成するポリマー繊維20は、例えば、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維からなる。ポリマー繊維形成工程は、ロールツーロール方式のエレクトロスピニング装置200を用いる。なお、図4において、符号202は繰り出し側ロールを示し、符号204は送りローラを示し、符号208は巻き取り側ロールを示し、符号220は樹脂原料タンクを示し、符号222はバルブを示し、符号224はノズルを示し、符号226は対向電極を示し、符号228は高圧電源を示し、符号230はポリマー繊維の軌跡を示す。
【0048】
ポリマー繊維形成工程においては、まず、ポリマー繊維の原料を、溶媒に溶解して液体とした状態で樹脂原料タンク220に供給する。その後、可撓性基材100を移動させながら、ポリマー繊維の原料をノズル224から可撓性基材100に向けて飛ばすことにより、可撓性基材100における一方の面上にポリマー繊維層110を形成する。このとき、溶媒は、ポリマー原料がノズル224から可撓性基材100に向かう途中で蒸発する。なお、対向電極226は、図示しないヒータにより加熱されており、ポリマー繊維20中に残存することがある溶媒も、ヒータからの熱によって蒸発する。
【0049】
(3)導電体被覆工程
次に、図2(c)及び図5に示すように、気相法(スパッタリング法)によって可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に導電体(各種)30を被覆する。導電体30の厚さは、例えば、10nm〜500nmである。導電体被覆工程は、ロールツーロール方式のスパッタリング装置300を用いる。なお、図5において、符号302は繰り出し側ロールを示し、符号304は送りローラを示し、符号306は冷却ローラを示し、符号308は巻き取り側ロールを示し、符号310,320はスパッタ室を示し、符号312,322はスパッタリングユニットを示し、符号314,324はプラズマを示す。
【0050】
以上の工程を行うことにより、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1を製造することができる。
【0051】
3.実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の効果
実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1は、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0052】
また、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1によれば、各導電体被覆繊維10間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあるため、さらに高い柔軟性を有するようになり、また、繊維にしたときの機械的強度を維持することが可能となる。
【0053】
また、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1によれば、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であるため、導電体被覆繊維としてさらに高い特性を有するようになる。
【0054】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。図6(a)〜図6(d)は各工程において導電体被覆繊維集合体2が製造されていく様子を示す断面図である。また、図7は、実施形態2におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。また、図8は、実施形態2における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【0055】
実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、基本的には実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1と同様の繊維構造を有するが、導電体被覆繊維集合体の層構造が実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の場合とは異なる。すなわち、図6(d)に示すように、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、可撓性基材を有しない単層構造を有する。
【0056】
このように、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、導電体被覆繊維集合体の層構造が実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1とは異なるが、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1と同様に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0057】
また、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、可撓性基材を有しない単層構造を有するため、可撓性基材を有する積層構造を有する場合(実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1参照。)とは異なる様々な用途に好適に用いることが可能となる。
【0058】
なお、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1と同様の繊維構造を有するため、実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0059】
実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2は、以下の、可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより作製することができる。
【0060】
(1)可撓性基材準備工程
まず、図6(a)に示すように、実施形態1の場合と同様に、長尺の可撓性基材100を準備する。
【0061】
(2)ポリマー繊維形成工程
次に、図6(b)及び図7に示すように、実施形態1の場合と同様に、エレクトロスピニング法によって可撓性基材100における一方の面上にポリマー繊維層110を形成し、ポリマー繊維積層シート102を形成する。その後、図6(c)及び図7に示すように、実施形態1の場合とは異なり、可撓性基材100からポリマー繊維層110を分離する。
【0062】
(3)導電体被覆工程
次に、図6(d)及び図8に示すように、可撓性基材100を有しない単体としてのポリマー繊維層110を用い、気相法(スパッタリング法)によってポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に導電体層30を被覆する。
【0063】
以上の工程を行うことにより、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2を製造することができる。
【0064】
[実施形態3]
図9は、実施形態3における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【0065】
実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、基本的には実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2と同様の繊維構造を有するが、導電体の被覆のされ方が実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2の場合と異なる。すなわち、図9に示すように、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3においては、導電体被覆繊維集合体3は、ポリマー繊維層110の両面から各ポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された構成を有する。
【0066】
このように、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、導電体の被覆のされ方が実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2の場合とは異なるが、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2と同様に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された導電体被覆繊維10の集合体からなり、各導電体被覆繊維10間に空隙が残存しているため、通気性、耐水性、保温性及び柔軟性をバランスよく高くすることが可能となり、従来よりも高い特性を有し様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0067】
また、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、ポリマー繊維層110の両面から各ポリマー繊維20の表面に導電体30が被覆された構成を有するため、ポリマー繊維の表面のうち導電体に被覆されていない部分の面積割合をさらに低くすることが可能となり、様々な用途において好適に用いることのできる導電体被覆繊維集合体となる。
【0068】
なお、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2と同様の繊維構造を有するため、実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体2が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0069】
実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3は、以下の、可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより作製することができる。
【0070】
(1)可撓性基材準備工程
まず、実施形態1の場合と同様に、長尺の可撓性基材100を準備する。
【0071】
(2)ポリマー繊維形成工程
次に、実施形態2の場合と同様に、ポリマー繊維層110を形成する。
【0072】
(3)導電体被覆工程
次に、図9に示すように、気相法(スパッタリング法)によってポリマー繊維層110の両面から各ポリマー繊維20の表面に導電体を被覆する。
【0073】
以上の工程を行うことにより、実施形態3に係る導電体被覆繊維集合体3を製造することができる。
【0074】
以下、実施例を参照しながら、本発明の導電体被覆繊維集合体の効果を説明する。
【0075】
1.試料の調整
[実施例1]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aを作製した。
【0076】
(1)可撓性基材準備工程
ポリエステル繊維の不織布からなる長尺の可撓性基材100を準備する。可撓性基材100の厚さは200μmである。可撓性基材100の1m2当たりの重量は50gである。
【0077】
(2)ポリマーナノ繊維形成工程
次に、上記したエレクトロスピニング装置200を用いて、エレクトロスピニング法によって可撓性基材100における一方の面上にポリウレタンからなるポリマー繊維層110を形成する。ポリマー繊維層110の厚さは10μmであり、ポリマー繊維層110の1m2当たりの重量は5gである。また、ポリマー繊維層110を構成するポリマー繊維20の平均直径は300nmである。なお、「ポリマー繊維20の平均直径」は、電子顕微鏡写真(図13(b)参照。)に写っている多数のポリマー繊維における測定箇所を無作為に100点抽出し、その箇所における繊維幅を測定し、測定された繊維幅を平均することよって算出した。
【0078】
(3)導電体被覆工程
次に、上記したスパッタリング装置300を用いて、気相法(スパッタリング法)によって、可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に銀からなる導電体30aを形成する。導電体30aの平均厚さは50nmである。得られた導電体被覆繊維集合体1a及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は90gである。なお、導電体被覆繊維集合体1aにおいては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合は60%であり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は5%である。
【0079】
なお、「導電体30aの平均厚さ」は、断面顕微鏡写真を撮影する箇所を導電体被覆繊維から無作為に10点抽出し、その箇所における断面電子顕微鏡写真から導電体の厚さを測定し、測定された導電体の厚さを平均することによって算出した。
また、「各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合」は、ポリマー繊維層110の厚さ及び1m2当たりの重量から計算して得られるポリマー繊維層110の嵩密度と、ポリマーの比重とから空隙の体積を算出する方法で算出した。
また、「ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合」は、無作為に選んだ電子顕微鏡写真(図10(b)参照。)から、被覆部及び未被覆部の面積を測定し、これらの比率から算出した。
【0080】
[実施例2]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより、実施例2に係る導電体被覆繊維集合体1bを作製した。このうち、可撓性基材準備工程及びポリマー繊維形成工程は、実施例1と同じであり、導電体被覆工程は、実施例1とは異なる。導電体被覆工程は以下のとおりである。
【0081】
(3)導電体被覆工程
次に、上記したスパッタリング装置300を用いて、気相法(スパッタリング法)によって、可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面に銅からなる導電体30bを形成する。導電体30bの平均厚さは50nmである。得られた導電体被覆繊維集合体1b及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は75gである。なお、導電体被覆繊維集合体1bにおいては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合は60%であり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は5%である。
【0082】
[実施例3]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程と、導電体被覆工程とをこの順序で実施することにより、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cを作製した。このうち、可撓性基材準備工程及びポリマー繊維形成工程は、実施例1と同じであり、導電体被覆工程は、実施例1とは異なる。導電体被覆工程は以下のとおりである。
【0083】
(3)導電体被覆工程
次に、上記したスパッタリング装置300を用いて、気相法(スパッタリング法)によって、可撓性基材100における一方の面上に形成されたポリマー繊維層110を構成する各ポリマー繊維20の表面にアルミニウムからなる導電体30cを形成する。導電体30cの平均厚さは50nmである。得られた導電体被覆繊維集合体1c及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は63gである。なお、導電体被覆繊維集合体1cにおいては、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合は60%であり、ポリマー繊維20の表面のうち導電体30に被覆されていない部分の面積割合は5%である。
【0084】
[比較例1]
以下の可撓性基材準備工程と、ポリマー繊維形成工程とをこの順序で実施することにより、比較例1に係る繊維1dを作製した。なお、可撓性基材準備工程及びポリマー繊維形成工程は、実施例1と同じである。すなわち、比較例1においては、ポリマー繊維形成工程で作製されたポリマー繊維110をそのまま用いて繊維1dとした。繊維1dの1m2当たりの重量は6.7gである。また、繊維1d及び可撓性基材100の1m2当たりの重量は57gである。
【0085】
[比較例2]
市販のポリエステル繊維(株式会社クラレ製、商品名P−800)をそのまま比較例2に係る繊維1eとした。繊維1eの1m2当たりの重量は129gである。なお、繊維1eの平均直径は14μmである。
【0086】
[比較例3]
天然の綿をそのまま比較例3に係る繊維1fとした。繊維1fの1m2当たりの重量は155gである。なお、繊維1fの平均直径は18μmである。
【0087】
[比較例4]
市販の導電性ファイバ(株式会社クラレ製、商品名クラカーボ)をそのまま比較例5に係る繊維1hとした。繊維1hの1m2当たりの重量は135gである。なお、繊維1hの平均直径は14μmである。
【0088】
[比較例5]
市販の金属メッキファイバ(株式会社クラレ製、商品名セルメック)をそのまま比較例4に係る導電体被覆繊維集合体1gとした。繊維1gの1m2当たりの重量は321gである。なお、繊維1gの平均直径は20μmである。
【0089】
2.試料の評価方法
【0090】
(1)電子顕微鏡写真
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1に係る繊維1dについて、電子顕微鏡写真を撮影した。
【0091】
(2)保温性
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1〜3に係る繊維1d〜1fを試料として用いて、保温性を評価した。保温性の評価は、JIS−L1096(恒温法)に準拠して行った。すなわち、各試料を30cm×30cmの大きさにした後、各試料の導電体蒸着側の面を空気に向けた状態で各試料を、表面温度を36℃とした恒温発熱体に取り付け、2時間後の消費電力をブランク(試料のない裸状態)での消費電力と比較することにより行った。
【0092】
(3)通気性
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1に係る繊維1dを試料として用いて、通気性を評価した。通気性の評価は、フラジール法に準拠して行った。すなわち、フラジール試験機における円筒の一端に20cm×20cmの大きさの各試料を取り付けた後、加減抵抗器によって傾斜形気圧計が125Paの圧力を示すように吸い込みファンを調整し、そのときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類とから、試験機に付属の表によって各試料を通過する空気量(cm3/cm2・s)を求めることにより行った。
【0093】
(4)電磁波シールド性
実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1,4,5に係る繊維1d,1g,1hを試料として用いて、電磁波シールド性を評価した。電磁波シールド性の評価は、KEC(関西電子工業振興センター)法に準拠して行った。すなわち、各試料を12cm×12cmの大きさにした後、電磁波シールド測定室の高周波信号発生器と高周波信号強度測定器との間に各試料を配置した状態で、周波数を変化させながら(10MHz〜1000MHz)高周波信号の通過量を測定することにより行った。
【0094】
3.試料の評価結果
図10は、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aを説明するために示す図である。図10(a)は導電体被覆繊維集合体1aの電子顕微鏡写真であり、図10(b)は図10(a)の場合よりも高倍率で撮影した導電体被覆繊維集合体1aの電子顕微鏡写真である。
図11は、実施例2に係る導電体被覆繊維集合体1bを説明するために示す図である。図11(a)は導電体被覆繊維集合体1bの電子顕微鏡写真であり、図11(b)は図11(a)の場合よりも高倍率で撮影した導電体被覆繊維集合体1bの電子顕微鏡写真である。
図12は、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cを説明するために示す図である。図12(a)は導電体被覆繊維集合体1cの電子顕微鏡写真であり、図12(b)は図12(a)の場合よりも高倍率で撮影した導電体被覆繊維集合体1cの電子顕微鏡写真である。
図13は、比較例1に係る繊維1dを説明するために示す図である。図13(a)は繊維1dの電子顕微鏡写真であり、図13(b)は図13(a)の場合よりも高倍率で撮影した繊維1dの電子顕微鏡写真である。
【0095】
図14は、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1〜5に係る繊維1d〜1hの各種特性についての評価結果を示す図である。
図15は、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1,4,5に係る繊維1d,1g,1hの電磁波シールド特性についての評価結果を示す図である。
【0096】
(1)電子顕微鏡写真
図13に示すように、比較例1に係る繊維1dは平均直径が300nmのポリマー繊維であることが確認できた。従って、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cにおいても、ポリマー繊維の平均直径は300nmとなる。また、図10〜図12に示すように、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cは、ポリマー繊維1本1本に導電体が被覆されており、ポリマー繊維の繊維構造が維持されてていることが確認できた。また、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cにおいては、各導電体被覆繊維間に空隙が残存していること、各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が60%であること、そしてポリマー繊維の表面のうち導電体に被覆されていない部分の面積割合が5%であることが確認できた。
【0097】
(2)保温性
図14に示すように、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cはいずれも、比較例1〜3に係る繊維1d〜1fよりも優れた保温特性(高いASTM保温率)を有することが確認できた。従って、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1cは、防寒衣服の用途に好適に用いることができる。
(3)通気性
図14に示すように、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cは、比較例1に係る繊維1dとほぼ同等の優れた通気性を有することが確認できた。従って、実施例3に係る導電体被覆繊維集合体1cは、スキーウェアその他の衣服の用途に好適に用いることができる。
【0098】
(4)電磁波シールド性
図14及び図15に示すように、実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a,1b,1cはいずれも、比較例1に係る繊維1dよりも高い電磁波シールド特性を有することがわかった。また、実施例2に係る導電体被覆繊維集合体1bは、比較例4に係る繊維1hと同等の電磁波シールド特性を有することがわかった。また、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aは、比較例5の繊維gには及ばないものの比較例4に係る繊維1hよりも高い電磁波シールド特性を有することがわかった。従って、実施例1に係る導電体被覆繊維集合体1aは、電磁波シールド材として好適に用いることができる。
【0099】
以上、本発明の導電体被覆繊維集合体を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0100】
(1)上記各実施形態においては、エレクトロスピニング法を用いてポリマー繊維層110を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、メルトブロウン法によってポリマー繊維層110を形成することとしてもよい。
【0101】
(2)上記各実施形態においては、スパッタリング法を用いて導電体30を形成することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。図16は、変形例1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法における導電体被覆工程を説明するために示す図である。図16に示すように、真空蒸着法によって導電体30を形成することとしてもよい。なお、図16において、符号402は繰り出し側ロールを示し、符号404は送りローラを示し、符号406は冷却ローラを示し、符号408は巻き取り側ロールを示し、符号410は真空蒸着室を示し、符号412は真空蒸着ユニットを示し、符号414は金属蒸気を示す。
【0102】
(3)上記各実施形態においては、ポリマー繊維の原料を溶媒に溶解して液体としているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリマー繊維の原料を加熱して液体としてもよい。
【0103】
(4)上記各実施例においては、保温性、通気性、電磁波シールド性を例にとって本発明の導電体層被覆繊維集合体を説明したが、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、これに限定されるものではない。例えば、本発明の導電体層被覆繊維集合体は、優れた電磁波吸収特性その他の高い特性を有するため、電磁波吸収材はじめ様々な用途において好適に用いることができる。
なお、電磁波吸収材を製造する場合には、用いる導電体としては、カーボン、アルミニウムなどを好ましく例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体1の構成を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1における可撓性基材準備工程の内容を模式的に示す図である。
【図4】実施形態1におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。
【図5】実施形態1における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【図6】実施形態2に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法を説明するために示す図である。
【図7】実施形態2におけるポリマー繊維形成工程の内容を模式的に示す図である。
【図8】実施形態2における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【図9】実施形態3における導電体被覆工程の内容を模式的に示す図である。
【図10】実施例1に係る導電体被覆繊維集合体10aの電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例2に係る導電体被覆繊維集合体10bの電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例3に係る導電体被覆繊維集合体10cの電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例1に係る繊維10dの電子顕微鏡写真写真である。
【図14】実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1〜5に係る繊維1d〜1hの各種特性についての評価結果を示す図である。
【図15】実施例1〜3に係る導電体被覆繊維集合体1a〜1c及び比較例1,4,5に係る繊維1d,1g,1hの電磁波シールド特性についての評価結果を示す図である。
【図16】変形例1に係る導電体被覆繊維集合体の製造方法における導電体被覆工程を説明するために示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,2,3,4…導電体被覆繊維集合体、10…導電体被覆繊維、20…ポリマー繊維、30…導電体、100…可撓性基材、102…ポリマー繊維積層シート、104…導電体被覆繊維集合体積層シート、110…ポリマー繊維層、112…導電体被覆繊維集合体層、200,200a…エレクトロスピニング装置、202,302,402…繰り出し側ロール、204,304,404…送りローラ、306,306a,306b,406…冷却ローラ、208,208a,208b,308,408…巻き取り側ロール、220…樹脂原料、222…バルブ、224…ノズル、226…対向電極、228…高圧電源、230…ポリマー繊維の軌跡、300,300a…スパッタリング装置、310,310a,320,320a…スパッタ室、312,312a,322,322a…スパッタリングユニット、314,314a,324,324a…プラズマ、400…真空蒸着装置、410…真空蒸着室、412…真空蒸着ユニット、414…金属蒸気
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなり、各導電体被覆繊維間に空隙が残存していることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体において、
各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電体被覆繊維集合体において、
前記ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電体被覆繊維集合体において、
前記導電体は、金属からなることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電体被覆繊維集合体において、
前記導電体は、カーボンからなることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項6】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体からなることを特徴とする保温材。
【請求項7】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体からなることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項8】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体からなることを特徴とする電磁波吸収材。
【請求項9】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体を製造するための導電体被覆繊維集合体の製造方法であって、
長尺の可撓性基材を準備する可撓性基材準備工程と、
前記可撓性基材における一方の面上に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の集合体からなるポリマー繊維層を形成するポリマー繊維層形成工程と、
気相法によって前記ポリマー繊維層を構成する各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆する導電体被覆工程とをこの順序で含むことを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、
前記ポリマー繊維層形成工程と前記導電体被覆工程との間に、前記可撓性基材から前記ポリマー繊維層を分離するポリマー繊維層分離工程をさらに含むことを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、
前記導電体被覆工程においては、前記ポリマー繊維層の両面から各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆することを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、
ポリマー繊維層形成工程においては、エレクトロスピニング法又はメルトブロウン法によってポリマー繊維層を形成することを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項1】
平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維の集合体からなり、各導電体被覆繊維間に空隙が残存していることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項2】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体において、
各導電体被覆繊維間に残存している空隙の単位体積に占める割合が40%〜90%の範囲内にあることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電体被覆繊維集合体において、
前記ポリマー繊維の表面のうち前記導電体に被覆されていない部分の面積割合が20%以下であることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電体被覆繊維集合体において、
前記導電体は、金属からなることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電体被覆繊維集合体において、
前記導電体は、カーボンからなることを特徴とする導電体被覆繊維集合体。
【請求項6】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体からなることを特徴とする保温材。
【請求項7】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体からなることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項8】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体からなることを特徴とする電磁波吸収材。
【請求項9】
請求項1に記載の導電体被覆繊維集合体を製造するための導電体被覆繊維集合体の製造方法であって、
長尺の可撓性基材を準備する可撓性基材準備工程と、
前記可撓性基材における一方の面上に、平均直径が50nm〜800nmのポリマー繊維の集合体からなるポリマー繊維層を形成するポリマー繊維層形成工程と、
気相法によって前記ポリマー繊維層を構成する各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆する導電体被覆工程とをこの順序で含むことを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、
前記ポリマー繊維層形成工程と前記導電体被覆工程との間に、前記可撓性基材から前記ポリマー繊維層を分離するポリマー繊維層分離工程をさらに含むことを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、
前記導電体被覆工程においては、前記ポリマー繊維層の両面から各ポリマー繊維の表面に導電体を被覆することを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の導電体被覆繊維集合体の製造方法において、
ポリマー繊維層形成工程においては、エレクトロスピニング法又はメルトブロウン法によってポリマー繊維層を形成することを特徴とする導電体被覆繊維集合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−65327(P2010−65327A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230359(P2008−230359)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(509214377)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(509214377)
【Fターム(参考)】
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