説明

導電性ゴムローラの製造方法

【課題】導電性ゴムローラ表面への滲み出しの発生を防止し、かつ、比較的安価な製造工程で製造可能な、加工性の良好な導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を該押出し機のクロスヘッドダイを貫通させ、該芯金の外周面上に該ゴム組成物を層状に配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経て製造されるゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、該ゴム組成物がエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、炭酸カルシウムおよび液状ゴムを含有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真等の画像形成装置における帯電ローラ、転写ローラ等に用いられる導電性ゴムローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真に用いる帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ゴムローラは、一般的には以下のように製造されている。すなわち、各種原料ゴムに、カーボンブラック等のフィラー類、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤等を加えたものを混練りしたゴム組成物をチューブ形状に押出した後、熱風炉やマイクロ波加硫装置(UHF)で加硫する工程を経てから、その中に芯金を圧入する。また、近年は、工程を簡略化するために上記ゴム組成物をあらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金上に配置し、芯金上で加硫と接着を同時に行う工程を経て製造される導電性ゴムローラも知られている。
【0003】
ゴム組成物を芯金上で加硫と接着を同時に行う工程を経て製造される導電性ゴムローラは、一般的に次のように製造される。すなわち、クロスヘッド押出し機等を用いて、連続的に接着剤塗布済み芯金の外周上にゴム組成物のゴム層を配置せしめた後、電気炉等の無加圧下で加硫工程を経て製造されるかあるいは、金型等を用いて加圧下で加硫工程を経て製造される。クロスヘッド押出し機等を用いて、連続的に接着剤塗布済み芯金の外周上にゴム組成物を配置せしめる工程は、ゴム組成物と芯金を同時に押出す。そのため、押出し時のゴム収縮が大きいゴム組成物を用いると、芯金とゴム組成物との密着性が良好でなくなりやすいことや、芯金とゴム組成物が密着しないことがある。
【0004】
加硫工程を、金型等を用いて加圧下で行う場合においては、加圧下で加硫をするため、上記のゴム組成部と芯金との密着性は良好となる。しかし、大量生産時は多くの金型が必要になることや、金型の維持管理が必要になるなどの製造コスト面での不利が大きい。
【0005】
一方で、電気炉等の無加圧下で加硫工程を経て製造される場合は、製造ラインを簡素化できるなど、製造コストで優位であり、比較的安価な製造方法と言える。しかし、押出し時のゴム収縮が大きいゴム組成物を用いると、芯金とゴム組成物との密着性が良好でなくなりやすい。つまり、この比較的安価な製造工程で成形するには、製造加工性が良好なゴム組成物を用いることが望まれる。
【0006】
ところで、電子写真に用いる帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の導電性ゴムローラは、装置の高速化、良画質化に応えるために感光体ドラムへの均一な当接を維持することが重要視されている。導電性ゴムローラと感光体との十分な接触がなされるよう、導電性ゴムローラの硬度をできるだけ低くすることが望ましい。低硬度を達成するめに、通常は、ゴム組成物にオイルや可塑剤等の軟化剤を添加して硬度を下げることが行われる。
【0007】
しかしながら、これらのオイルおよび可塑剤等の軟化剤は一般的に移行性がある。これらが導電性ゴムローラの表面に滲み出した場合は、導電性ゴムローラの電流値(抵抗値)を変化させる、感光体を汚染させる、トナーの固着を引き起こしたりする等の現象が発生する可能性がある。導電性ゴムローラの外層に軟化剤と著しく溶解度パラメータ値が異なる軟化剤との親和性の小さな外層を用いることによって軟化剤の移行を回避できることが知られている。しかしこれでは、外層に用いることができる資材が限定されてしまう。
【0008】
特許文献1および特許文献2には、天然固形ゴムおよび合成ゴムの少なくとも一方と液状ゴムを含有することで、導電性ゴムローラの表面に滲み出し(ブリード)を防止する方法が記載されている。特許文献3には、エピクロルヒドリン、エチレンプロピレンジエン三元共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエンゴムからなる主ゴム成分と、液状ゴムからなる副ゴム成分を含有することで、導電性ゴムローラの表面に滲み出しを防止する方法が記載される。特許文献4には、エチレンプロピレンジエン三元共重合体と液状ゴムを含有するゴム組成物を用いることで、導電性ゴムローラの表面の滲み出しを防止する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平5−61345号公報
【特許文献2】特開平5−61346号公報
【特許文献3】特開2005−148467号公報
【特許文献4】特開平9−325563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2においては、主ゴム成分が何ら規定されていないため、主ゴム成分によっては、オゾン劣化による品質劣化を回避できない場合がある。また製造工程についても何ら記述がないため、上で説明した比較的安価な製造工程で成形する際に、上記で説明した芯金とゴム組成物との密着性が良好でなくなりやすいことや、芯金とゴム組成物が密着しないことがある等の問題が発生する可能性を否定できない。
【0010】
特許文献3においては、ゴム成分にアクリロニトリル−ブタジエンゴムを含むため、オゾン劣化による品質劣化を回避できない場合がある。また、ゴム材料としては比較的高価なエピクロルヒドリンを使用しているため、製造コストが高くなりやすい。
【0011】
特許文献4においては、コストが安く、耐オゾン性に優れるエチレンプロピレンジエン三元共重合体を用いているが、製造工程には何ら記述がない。このため、上で説明した安価な製造工程で成形する際に、上記で説明した芯金とゴム組成物との密着性が良好でなくなりやすいことや、芯金とゴム組成物が密着しないことがある等の問題が発生する可能性を否定できない。
【0012】
本発明の目的は、導電性ゴムローラ表面への滲み出しの発生を防止し、かつ、比較的安価な製造工程で製造可能な導電性ゴムローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を該押出し機のクロスヘッドダイを貫通させ、該芯金の外周面上に該ゴム組成物を層状に配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経て製造されるゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該ゴム組成物がエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、炭酸カルシウムおよび液状ゴムを含有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性ゴムローラ表面への滲み出しの発生を防止し、かつ、比較的安価な製造工程で製造可能な導電性ゴムローラの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の形態について説明する。
【0016】
導電性ゴムローラの製造方法としては、金型を用いる方法、チューブ状に押出したゴム組成物を加硫した後に芯金に圧入する方法および、未加硫ゴムを芯金に被覆してから加硫する方法等製造方法等が挙げられる。ゴム組成物を芯金上に配置せしめてから加硫する方法が、製造ラインの小型化や連続化に適している等の利点があることから好ましい。
【0017】
その中でも、ゴム組成物を芯金の外周面上に層状に配置せしめる工程を行い、この際、連続的に押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を押出し機のクロスヘッドダイを貫通させることが好ましい。このとき、芯金に予め接着剤を塗布しておくことができる。このようにして、芯金の外周面上にゴム層を配置せしめた後、ゴム層を加硫することが好ましい。
【0018】
また、加硫工程は金型を用いると運用コスト面で不利になることや連続生産性に劣る。よってコストや連続生産性の観点から、電気炉や熱風炉などを用いて、無加圧下での加硫工程を行うことが好ましい。
【0019】
以上から、比較的安価な製造工程で製造可能な導電性ゴムローラの製造方法として最適なのは次の方法である。すなわち、押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を押出し機のクロスヘッドダイを貫通させ、芯金の外周面上にゴム組成物を層状に配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経てゴム層を有する導電性ゴムローラを製造する方法である。本発明ではこの導電性ゴムローラの製造方法を採用する
本発明では、ゴム層の原料として、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、炭酸カルシウムおよび液状ゴムを含有するゴム組成物を用いる。エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムを用いる理由は、コストが安く、耐オゾン性に優れ、かつ、製造加工性の調整が容易なことからである。他の種類のゴム材料では、上記3点の個々の数値は、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムより優れるものもあるが、3点のバランスではエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムが非常に優れるからである。
【0020】
炭酸カルシウムを含有する理由としては、加工性の良好なゴム組成物を得られやすくなるためである。炭酸カルシウムを含有しないゴム組成物を用いると、押出工程でゴム組成物と芯金を同時に押出す際、押出し時のゴム収縮が大きくなり、ゴム組成物と芯金との密着性が良好でなくなりやすく、またゴム組成物が芯金と密着しない場合もある。炭酸カルシウムを含有することで、このような現象を効率よく回避することが可能となる。
【0021】
液状ゴムは特に限定されるものではないが、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムと相溶性が良くかつ、液状ゴムの中では比較的安価な液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンあるいは両者の混合物を用いることが好ましい。中でも水添加された液状ポリイソプレン(水添加液状ポリイソプレン)が、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムと相溶性が良好でさらに好ましい。以後、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムを単にゴム成分と略す場合がある。また、以後に示される質量部とは、ゴム組成物に含まれるゴム成分を100質量部とした際の数値である。但し、液状ゴムはゴム成分には含まない。
【0022】
また、移行性のあるオイルおよび可塑剤等の軟化剤は使用しないことあるいは含有量を極力少なくすること、より具体的には10質量部以下が好ましい。
【0023】
液状ゴムの合計量は、20質量部以上、70質量部以下にすると、移行性のあるオイルおよび可塑剤等を用いなくても導電性ゴムローラの硬度ならびに製造加工性の確保の両立が容易となり好ましい。
【0024】
液状ゴムの合計量が20質量部以上であると、導電性ゴムローラの硬度を低下させること容易であり、好ましい。液状ゴムの合計量が70質量部以下であると、ゴム組成物を混練りする際に、ゴム粘度の低下によってゴム混練り装置のミキサーやロール等にゴム組成物が貼りついてしまうなどの現象が生じることを防止することが容易であり好ましい。
【0025】
炭酸カルシウムは、20質量部以上、70質量部以下であることが好ましい。炭酸カルシウムが20質量部以上であると、押出工程でゴム組成物と芯金を同時に押出す際、押出し時のゴム収縮が小さくなり、ゴム組成物と芯金との密着性が良好になりやすく好ましい。炭酸カルシウムが70質量部以下であると、圧縮永久歪を良好にすることが容易であり、品質上好ましい。より好ましい該炭酸カルシウムの含有量は、30質量部以上60質量部以下である。
【0026】
また、炭酸カルシウムの平均粒子径は1.0μm以上、4.0μm以下が好ましい。平均粒子径が1.0μm以上であると、ゴム練り中や押出中に炭酸カルシウムが凝集することを防止することが容易で、凝集した炭酸カルシウムが異物としてゴムローラ表面に発生することを防止することが容易であり好ましい。平均粒子径が4.0μm以下であると、圧縮永久歪を良好にすることが容易であり、品質上好ましい。より好ましい炭酸カルシウムの平均粒子径は1.3以上3.0μm以下である。
【0027】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムの100℃で測定したムーニー粘度(JIS K6300−1、100℃、ML1+4)は15以上、90以下であることがより好ましい。ムーニー粘度がこの範疇にあると、製造加工性の容易なゴムが得られやすいためである。ムーニー粘度が15以上であると、ゴムが軟らくなって押出工程や加硫工程のゴムローラ成形時にちょっとした外圧が加わるだけで容易に変形ことを防止し、その結果、ゴムローラの外径を安定させることが容易である。ムーニー粘度が90以下であると、ゴムが硬くなって押出工程でゴムローラを成形時にゴムが収縮しやすくなることや押出工程でゴム温度が高温度になりやすくなることを防止し、スコーチの発生を抑制することが容易であり好ましい。
【0028】
ゴム組成物中の炭酸カルシウムおよび液状ゴムの含有量がいずれも高くなるほど、得られるゴム層の圧縮永久歪が劣る傾向がある。逆に、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムのジエン含有量は多い方が、圧縮永久歪は優れる傾向にある。よって、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムのジエン含有量が8質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。ジエン含有量が8質量%以上であると、圧縮永久歪を良好にすることが容易であり品質上好ましい。ジエン含有量が15質量%以下であると、加硫が速くなることを抑え、スコーチしやすくなることを防止することが容易であり好ましい。
【0029】
導電性、補強性の目的から、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラック、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等の種類に分類される各種ゴム用カーボンブラック、カーボンブラック以外の各種導電剤;クレー類、炭酸マグネシウム、シリカ、珪酸マグネシウム、タルク等の各種フィラー類;亜鉛華,ステアリン酸等の加硫促進助剤;スコーチ防止剤、粘着付与剤、その他ゴム用添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲でゴム組成物に適宜添加することができる。本発明では、非極性のエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムを用いるため、導電性を付与するために各種の導電剤を用いることが好ましい。導電剤としては含有量に関係なくゴムローラ表面に滲み出し(ブリード)を発生しにくいカーボンブラックを用いることがより好ましい。導電性ゴムローラの導電性については、特に制限されるものではないが、体積固有抵抗値は、印加電圧50Vで、10の2乗から10乗Ω・cmの範疇がより好ましい。
【0030】
そして、カーボンブラックの含有量は、10質量部以上80質量部以下にすると所望の電気抵抗の導電性ゴムローラが得られやすくなり好ましい。
【0031】
加硫形態は、過酸化物および硫黄系加硫のどちらでも使用できるが、工程の制約が多い過酸化物加硫より、硫黄系加硫がより好ましい。また、ソリッドゴムや発泡剤等を用いて発泡させた発泡ゴムにおいても、何ら問題なくどちらも使用ができる。
【0032】
発泡ゴムに関しては、各種発泡剤が使用できるが、発泡度合いの制御の容易さから、有機発泡剤を用いることがより好ましい。
【0033】
なお、本発明の導電性ゴムローラは、さらなる表面平滑性の向上や抵抗調整や保護を目的としてゴム層の外周面上に1層以上の機能層を設けてもかまわない。機能層としては導電性を持たせる導電性機能層が多く使用される。例えば、ゴム層の外周面に抵抗調整層として、ゴムや樹脂等によるチューブ層、塗装による導電層等を形成しても差し支えない。中でも熱可塑性エラストマーを含有するシームレスチューブを最表層に用いることが、表面平滑性が良いことや、抵抗調整の容易なことから好ましい。
【0034】
本発明によれば、ゴム層がエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、炭酸カルシウムおよび液状ゴムを含有するゴム組成物を有して成ることを特徴とすることで、安価な製造工程で製造可能な導電性ゴムローラの製造方法を提供できる。また、移行性のあるオイルおよび可塑剤等の軟化剤が原因で発生する導電性ゴムローラの表面の滲み出しを防止できる。このため、導電性ゴムローラの電流値(抵抗値)を変化させたり、感光体を汚染したり、トナーの固着を引き起こしたりする現象が発生しない。
【0035】
この導電性ゴムローラは、電子写真装置や静電記録装置の部材として用いることができ、工業的価値は非常に高いものである。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により、なんら限定されるものではない。なお、各例で得られた導電性ゴムローラの特性は、以下の方法に従って測定した。
【0037】
〔押出加工性〕
クロスヘッド押出し機にて芯金と同時にゴムを押出した後のゴムと芯金との密着性とゴム表面の状態を目視で確認した。密着性に問題なく、ゴム表面の状態が肌荒れがなく良好なものを○、ゴムが収縮して、芯金とゴムの密着性が良好でないものが含まれるものを×とした。
【0038】
〔導電性ゴムローラ硬度〕
高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD−1型(商品名)を用いて、得られた導電性ゴムローラの硬度を測定した。この測定方法は、原理的にはJISK6253に定められているタイプAデュロメータに準じたものである。押針をスプリングの力で試料の表面に押し付けて変形を与え、試料の抵抗力とスプリングの力がバランスした時の押針の押込み深さに基いて硬度を測定するものである。
【0039】
〔圧縮永久ひずみ〕
JIS K6262に記載の加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験法において、温度70℃、時間24時間、圧縮率25%で測定した。試験用加硫ゴムは、何れもゴム組成物を160℃30分プレス加硫して得た。
【0040】
〔電流変化率〕
電流値は、導電性ゴムローラの軸体の両端部に500g荷重(4.9N)をかけ、芯金に合計で1kg(9.8N)の荷重が掛かるように外径30mmのアルミニウム製のドラムに導電性ゴムローラを圧着した状態で測定した。この状態で、軸体とアルミドラムとの間に200Vの電圧を印加した際の電流値を採用した。導電性ゴムローラを成形後、温度23±3℃、相対湿度50±5%の環境に1日間保管し、この保管環境から取り出してから30分後に電流値を測定した値を通常電流値とする。通常電流値を測定した導電性ゴムローラを、温度40±3℃、相対湿度90±5%の環境に1ヶ月保管し、この保管環境から取り出してから30分後に電流値を測定した値を苛酷保管電流値とする。電流変化率は、(通常電流値−苛酷保管電流値)割る通常電流値かける100で示し、この値が小さいほどで電流値変化が小さく、つまり、苛酷環境による抵抗変化が小さいことを意味する。
【0041】
〔ブリード性〕
ゴム層の外周上に導電性機能層が形成される以前の、ゴム層のみのゴムローラを、温度40±3℃、相対湿度90±5%の環境に1ヶ月保管(以下、苛酷環境保管という場合がある)した後、ゴムローラ表面のブリードの有無を確認した。ブリード性の評価は、ブリードの影響によりゴムローラ表面が苛酷保管前後において目視判断で色目や光沢に差がないもの○とし、差が確認できたものを×とした。
【0042】
〔実施例1〕
・エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(EPDM−1) 100質量部。
[商品名:EPT4070、三井化学(株)製、ムーニー粘度(100℃、ML1+4)が69、ジエン含有量が10.6質量%]。
・酸化亜鉛 5質量部。
[商品名:亜鉛華2種、白水テック(株)製]。
・ステアリン酸 1質量部。
[商品名:ルナックS−20、花王(株)製]。
・炭酸カルシウム 50質量部。
[商品名:スーパーSS、丸尾カルシウム(株)製、平均粒子径2.2μm]。
・液状ポリイソプレン−1 50質量部。
[商品名:LIR−290(水添加液状ポリイソプレン)、クラレ(株)社製]。
・カーボンブラック 80質量部。
[商品名:旭#70、旭カーボン(株)製]。
・モルホリノジチオ化合物(MDB) 2質量部。
[商品名:ノクセラーMDB、大内振興化学工業(株)製]。
・2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT) 2質量部。
[商品名:ノクセラーM、大内振興化学工業(株)製]。
・ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT) 2質量部。
[商品名:ノクセラーTRA、大内振興化学工業(株)製]。
・硫黄 2質量部。
【0043】
以上の成分を加圧ニーダーで混錬りし、ゴム組成物を作製した。φ40mmのクロスヘッド押出し機を用いて上記のゴム組成物を押出すと同時に、連続的にホットメルト接着剤[商品名:スリーボンド3315E、スリーボンド(株)製]を塗布したφ6mm、長さ250mmの芯金を押出し機のクロスヘッドダイを通過させた。なお本明細書においてφは直径を意味する。こうすることで、芯金の外周上にゴム組成物を配置せしめてローラ形状にした後、200℃で30分間熱風炉に投入して無加圧下で加硫を行い、芯金の外周上にゴム層を形成した未研削のゴムローラを作製した。そのゴム層の長さが240mmになるようゴム層の両端部分をカットした。この未研削のゴムローラを、研磨砥石GC80(商品名。 社製)を取り付けた研削機にセットし、研削条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分でゴム層の外径がφ10mmになるように研削し、ゴムローラを作製した。
【0044】
次に、ゴムローラの外周に配置する導電性機能層の製造方法について説明をする。
【0045】
スチレン系の熱可塑性エラストマー(商品名:ダイナロン4600P。JSR製)40質量部およびアミド系の熱可塑性エラストマー(商品名:ペバックス4033。アトフィナジャパン製)60質量部を用意した。これらを合わせ、さらに、カーボンブラック(商品名:トーカブラック#4300。東海カーボン製)40質量部、酸化マグネシウム10質量部およびステアリン酸カルシウム1質量部を添加した。上記の導電性機能層用材料を、加圧式ニーダーを用いて20〜220℃で溶融混練した後、冷却し、粉砕機で粉砕し、単軸押出機を用いて140℃〜200℃で造粒して導電性機能層用のペレットを製造した。この導電性機能層ペレットを押出し、サイジング、冷却工程を経て、内径φ9.8mm、層の厚さ100μm、のシームレスチューブに成形加工した。そして、このシームレスチューブに圧縮空気を吹き込みながら、上で説明した研削後のゴムローラ上に被覆して、実施例1の導電ゴムローラを得た。
【0046】
〔実施例2〕
液状ポリイソプレン−1を、水添加してない液状ポリイソプレン−2[商品名:LIR−30、クラレ(株)社製]に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0047】
〔実施例3〕
液状ポリイソプレン−1を、水添加してない液状ポリブタジエン[商品名:LBR−300、クラレ(株)社製]に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0048】
〔実施例4〕
50質量部の液状ポリイソプレン−1に替えて、液状ポリイソプレン−1を25質量部および液状ポリブタジエン[商品名:LBR−300、クラレ(株)社製]を25質量部用いた以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0049】
〔実施例5〕
液状ポリイソプレン−1の使用量を50質量部から20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0050】
〔実施例6〕
液状ポリイソプレン−1の使用量を50質量部から70質量部に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0051】
〔実施例7〕
炭酸カルシウムの使用量を50質量部から20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0052】
〔実施例8〕
炭酸カルシウムの使用量を50質量部から70質量部に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0053】
〔実施例9〕
EPDM−1に替えて、EPDM[商品名:EPT4021、三井化学(株)製、ムーニー粘度(100℃、ML1+4)が24、ジエン含有量が10.6質量%](EPDM−2)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0054】
実施例1から9では、安価な製造工程で、加工性の良好な導電性ゴムローラを製造できた。かつ、移行性のあるオイルおよび可塑剤等の軟化剤が原因で発生する導電性ゴムローラの表面の滲み出しを防止できた。これにより、導電性ゴムローラの電流値(抵抗値)を変化させる、感光体を汚染する、トナーの固着を引き起こす、等の現象は発生しない。
【0055】
〔比較例1〕
液状ポリイソプレン−1をパラフィンオイル[商品名:ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産(株)製]に変更した以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0056】
しかしながら、パラフィンオイルを用いたため、ゴローラ表面のブリードが観察された。そして、ゴムローラ表面の滲み出し(ブリード)が要因のひとつとして考えられる導電性ゴムローラの苛酷保管前後の電流値変化が40%と大きくなってしまった。
【0057】
〔比較例2〕
炭酸カルシウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成した。
【0058】
しかしながら、炭酸カルシウムを除いたため、押出時にゴム組成物が収縮し、芯金との密着性が良好ではなくなり、良品のゴムローラを得ることができなかった。良品のゴムローラが得られなかったため、各物性は全て測定をしなかった。
【0059】
表1および表2に、実施例および比較例について、ゴム組成物の一部の組成(質量部)および評価結果をまとめた。
【0060】
なお、EPDM−1およびEPDM−2がゴム成分である。液状ポリイソプレン−1、液状ポリイソプレン−1および液状ポリブタジエンが、液状ゴムである。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し機を用いてゴム組成物を押出すと同時に、連続的に芯金を該押出し機のクロスヘッドダイを貫通させ、該芯金の外周面上に該ゴム組成物を層状に配置せしめた後、無加圧下での加硫工程を経て製造されるゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
該ゴム組成物がエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、炭酸カルシウムおよび液状ゴムを含有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
該液状ゴムが液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンあるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
該液状ポリイソプレンが水添加液状ポリイソプレンであることを特徴とする請求項2に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
該ゴム組成物に含まれるゴム成分を100質量部としたとき、該ゴム組成物に含まれる該液状ゴムの合計量が20質量部以上、70質量部以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項5】
該ゴム組成物に含まれるゴム成分を100質量部としたとき、該ゴム組成物に含まれる該炭酸カルシウムが20質量部以上、70質量部以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項6】
該炭酸カルシウムの平均粒子径が1.0μm以上、4.0μm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項7】
該エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムの100℃で測定したムーニー粘度が15以上、90以下であり、かつ、
該エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴムのジエン含有量が8質量%以上、15質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項8】
該ゴム層の外周面上に少なくとも1層の導電性機能層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項9】
該導電性機能層が、熱可塑性エラストマーを含有するシームレスチューブで形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。

【公開番号】特開2009−25527(P2009−25527A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188151(P2007−188151)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】