説明

導電性ゴムローラ

【課題】表面平滑性に優れた導電性ゴムローラを提供することにある。
【解決手段】導電性芯材上に1層以上のゴム層が設けられており、該ゴム層が加硫後の表面研削により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、
該ゴム層のゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム(A)及び非極性ゴム(B)を含有し、且つ、全ゴム成分に対する(B)の割合が3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ゴムローラに関し、特には電子写真等の画像形成装置における帯電ローラ等の導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、電子写真感光体の表面を均一に帯電させ、この電子写真感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成し、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。
【0003】
前記電子写真感光体の表面を均一帯電するための手段としては、電圧を印加した帯電部材を電子写真感光体に所定の押圧力で当接させて電子写真感光体を所定の電位に帯電させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式の中でも帯電ローラは、接触帯電方式による均一帯電のための重要なポイントである電子写真感光体への一様な接触が、二つの回転円筒体同士によりなされるため、ブラシ帯電やブレード帯電等の他の接触帯電方式よりも実現容易であり、採用されている。
【0004】
帯電ローラは電子写真感光体との接触帯電を行うものであるため、帯電ローラが電気的に不均一な場合、その電気的な不均一性を反映した帯電濃度ムラを生じる。従って、帯電ローラは所定の抵抗をもち、かつ電気的に均一であることが要求される。
【0005】
そして、そのような帯電ローラとしては、例えば、導電体である所定の軸体(芯金)の外周面上に、低硬度の導電性ゴム弾性体層が設けられ、更に必要に応じて、導電性弾性体層の外周面上に塗工等により抵抗調整層や保護層が、順次積層形成されて、構成されてなる構造のものが、採用されており、電子写真感光体ドラム等に対する均一な接触性を確保するために、良好な表面平滑性や高い寸法精度が要求されている。
【0006】
この低硬度の導電性ゴムを得るために、導電性ゴム組成物として、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のポリマーに、カーボンブラック等の導電性充填剤を添加し、更に低硬度を得るために軟化剤を添加したものが知られている。更には、より電気的に均一な導電性ゴムを得るために、ゴム自体がある程度の低抵抗性をもつ、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)やエピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムを使用した導電性ゴム組成物を用いることにより、電気的均一性に優れた導電性ゴムが得られることが知られている。
【0007】
中でもエピクロルヒドリン系ゴムは、各種ゴムの中で抵抗値の低いポリマーであることが知られている。エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体が知られており(例えば特許文献1)、更には、エピクロルヒドリン系ゴム中のエチレンオキサイドの共重合割合により抵抗値をコントロールすることが可能であり、各種導電性ローラの弾性体として求められる抵抗値により各種エピクロルヒドリン系ゴムが用いられている。
【0008】
例えば、帯電ローラとしては回転軸と表面との間の望ましい抵抗値は10〜1011Ωであり、導電弾性層の体積固有抵抗は10〜10Ω・cmである。ところでこれらの導電性ローラは、表面粗さが大きいと、トナー等の汚れがローラ表面に付着し易くなり、結果として記録媒体に汚れを生じる原因となる。
【0009】
このため電子写真装置用導電性ローラは、トナー等による汚れを防止する機能を向上させるために、表面粗さは小さいほうが好ましい。導電性ローラの表面粗さを小さくするために、導電弾性層の表面粗さを小さくしてから表面層を形成するという技術がある。しかし導電弾性層の表面粗さを小さくするには研磨時間が長くなってしまうという課題がある。また、表面層の層厚を厚くして導電弾性層の表面粗さを吸収するという技術があるが、この場合はローラが変形し難くなり、ローラに当接する相手材と所定の接触幅(ニップと呼ぶ)を確保することが難しくなるという課題がある。
【特許文献1】特開平6−266206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、導電性芯材の外周上に1層以上の導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラにおいて、表面平滑性に優れた導電性ゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に従って、導電性芯材上に1層以上のゴム層が設けられており、該ゴム層が加硫後の表面研削により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、
該ゴム層のゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム(A)及び非極性ゴム(B)を含有し、且つ、全ゴム成分に対する(B)の割合が3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする導電性ゴムローラが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電性ローラによれば、容易に表面粗さが小さい導電性ローラを製造することが可能である。従って、製造された導電性ローラは、電子写真等の画像形成装置に用いられる帯電ローラ等の導電性ローラとして好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の導電性ローラは、ゴム層のゴム成分をエピクロロヒドリンゴム(A)と非極性ゴム(B)を混合することにより、加硫後の研削性がエピクロロヒドリンゴム(A)単独よりも良くなり、研削後の表面粗さが小さくなる。また、非極性ゴムを混合することで極性の強いエピクロロヒドリンゴムと非相溶であるためポリマー混合による抵抗上昇を極性ゴムの混合よりも抑えることができる。非極性ゴム含有量が3質量%より少ない場合、混合による研削性向上の効果がなく、30質量%より多い場合、抵抗の高い非極性ゴムの割合が増えてしまうことにより抵抗が上昇し、適正なローラ抵抗が確保できなくなってしまう。好ましくは、全ゴム成分に対する非極性ゴム(B)の割合は4質量%以上10質量%以下である。
【0014】
上記エピクロロヒドリン系ゴムとしては特に限定されるものではないが、エチレンオキサイドを共重合したゴムが好ましい。エチレンオキサイドを共重合したゴムは低抵抗であり、添加量を変化させることによる抵抗調整の幅が広がる。
【0015】
上記非極性ゴム(B)は特に限定されるものではなく、例えばエチレンプロピレンゴムやブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴム等が挙げられる。非極性ゴム(B)にエチレンプロピレンゴムを使うとより効果的である。これはエピクロロヒドリンゴム(A)にエチレンプロピレンゴムを混合した方が他の非極性ゴムを混合したときよりも研削性が良くなり、研削工程後により小さい表面粗さがだせるからである。また、エチレンプロピレンゴムは、エチレン/プロピレン含量比、ジエン含量、ムーニー粘度が異なる種々のものが市販されており、各種要求品質や加工性を考慮して選択することが可能である。
【0016】
本発明の導電性ゴムローラは、表面研削後の表面粗さRzjisが6μm以下であることが好ましい。本発明にかかるゴム層のゴム組成物によれば、研削時間を長くせずに表面粗さRzjisを6μm以下とすることが可能で、トナー等の汚れがローラ表面に付着し難くなる。
【0017】
なお、Rzjisとは、JISB0601(1994年)でRzと定義されていたものである。JISB0601は、2001年の規格改訂でRzが改訂され、1994年時のRy(最大高さ)に置き換わった。1994年時のRzは区別のために、2001年にRzjisと名称変更された。
【0018】
更に、ゴム層の表面研削後に塗工液によりゴム層上にコーティングすることで電子写真感光体ドラム等に対する均一な接触性を確保するための良好な表面平滑性が得られる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
・エピクロロヒドリン系ゴム[商品名 エピオンON301ダイソー(株)製]95質量部
・エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]5質量部
・酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種 白水テック(株)製]5質量部
・ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S 花王(株)製]1質量部
・炭酸カルシウム[商品名 シルバーW 白石工業(株)製]90質量部
・FEF級カーボンブラック[商品名 旭#60 旭カーボン(株)製]5質量部
・イオン導電材[商品名 LV−70 旭電化工業(株)製] 2質量部
・ポリエステル可塑剤 [商品名 PN−350 アデカ・アーガス(株)製] 5質量部
・ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)[商品名 ノクセラーDM 大内振興化学工業(株)製]1質量部
・テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)[商品名 ノクセラーTS 大内振興化学工業(株)製]1質量部
・イオウ[商品名 サルファックスPMC 鶴見化学工業(株)製]0.8質量部
を混錬りし、未加硫の導電性ゴム組成物を作製した。
【0021】
次に、φ40mmのストレートヘッド押出し機を用いてチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を160℃で30分間行い、このように作製してチューブを接着剤を塗布した芯金に圧入し、その後二次加硫及び接着のため160℃で1時間熱風炉に投入して、導電性芯材上に加硫ゴム層を形成した未研削のローラ状成形体(外径がφ13mm)を作製した。この成形体を研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研削条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径がφ12mmになるように研削し、導電性ゴムローラを作製した。
【0022】
(実施例2)
ゴム材料として
エピクロロヒドリン系ゴム95質量部
エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4010 三井化学(株)製] 5質量部
とした以外は、実施例1と同様にして成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0023】
(実施例3)
ゴム材料として
エピクロロヒドリン系ゴム 90質量部
エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]10質量部
とした以外は、実施例1と同様にして成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0024】
(実施例4)
ゴム材料として
エピクロロヒドリン系ゴム 80質量部
エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]20質量部
とした以外は、実施例1と同様にして成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0025】
(比較例1)
ゴム材料として、
エピクロロヒドリン系ゴム100質量部
とした以外は、実施例1と同様にして成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0026】
(比較例2)
ゴム材料として
エピクロロヒドリン系ゴム98質量部
エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]2質量部
とした以外は、実施例1と同様にして成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0027】
(比較例3)
ゴム材料として
エピクロロヒドリン系ゴム65質量部
エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]35質量部
とした以外は、実施例1と同様に成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0028】
(比較例4)
ゴム材料として
エピクロロヒドリン系ゴム95質量部
アクリロニトリル・ブタジエン系ゴム[商品名Nipol 1042 日本ゼオン(株)製]5質量部
とした以外は、実施例1と同様に成形を行い導電性ゴムローラを作製した。
【0029】
評価
<表面粗さ>
実施例及び比較例のゴム組成物を用いて得られた各3本の導電性ゴムローラの導電性ゴム弾性層の表面を、JISB0601(2001年)に準拠して表面粗さ計((株)小坂研究所製surfcorder SE−3400を用い、送り速度0.1mm/s、カットオフ0.8mm、測定長2.5mmの条件)により導電性ゴムローラ1本につき長手方向に、中央部、両端部からそれぞれ30mmの箇所の計3箇所、各長手方向当たり周方向に等角度に5点測定を行いそれぞれの測定値の平均値を算出してローラの表面粗さRzjisの測定値とした。
【0030】
<ローラ体積固有抵抗の測定>
ローラを毎分30回転でステンレスドラムと接触させながら印加電圧200Vでローラの最大体積固有抵抗と最小体積固有抵抗を測定し、最大抵抗と最小抵抗の平均をローラ体積固有抵抗とした。
【0031】
【表1】

【0032】
上記結果から明らかなように、エピクロロヒドリン系ゴムとエチレンプロピレンゴム系ゴムを混合することにより、表面粗さの小さい導電性ゴムローラを得ることができる。
【0033】
これに対してエピクロロヒドリン系ゴム単独処方である比較例1は表面粗さが大きくなってしまう。また、比較例2ではエチレンプロピレンゴム系ゴムの混合量が少ないため混合による研削性向上の効果がなく表面粗さが小さくならなかった。また、比較例3はエチレンプロピレンゴム系ゴムの混合量が多いため抵抗上昇が大きくなってしまった。また、比較例4では極性ゴムであるアクリロニトリル・ブタジエン系ゴムを混合したため非極性ゴムと同部数混合した実施例1及び2の時より抵抗上昇が大きくなってしまった。
【0034】
従って、本発明の導電性ゴムローラは、電子写真等の画像形成装置における帯電ローラ等に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に1層以上のゴム層が設けられており、該ゴム層が加硫後の表面研削により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、
該ゴム層のゴム組成物のゴム成分が、エピクロロヒドリンゴム(A)及び非極性ゴム(B)を含有し、且つ、全ゴム成分に対する(B)の割合が3質量%以上30質量%以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記非極性ゴム(B)がエチレンプロピレンゴムである請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記ゴム層が表面研削後の表面粗さRzjisが6μm以下である請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記ゴム層の表面研削後に塗工液によりゴム層上にコーティングされている請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
電子写真感光体に接触して帯電させる画像形成装置に用いられる導電性ゴムローラにおいて、該導電性ゴムローラが電子写真感光体上に相対して配置される帯電ローラである請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2007−298820(P2007−298820A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127552(P2006−127552)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】