説明

導電性ゴム組成物

【課題】 導電性ゴム組成物において、カーボンブラックを使用しなくても導電特性を有し、また同時に伸長特性を有し、着色可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】 油展ゴムに、化学還元焼成法により得られた銀粉を配合した導電性ゴム組成物とする。油展ゴムに、油展スチレン−ブタジエンゴムもしくは油展エチレンプロピレンゴムを使用し、界面活性剤を配合することが好ましい。ゴム成分100部に対し銀粉は600〜1500部配合することが好ましい。また、銀粉は比表面積(BET):0.2〜2.0(m2/g)、かつタップ密度:1.0〜4.0(g/cm)、かつ平均粒径(50%D)が3.0〜40μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ゴム組成物に関する。特に高伸長特性を有する着色可能な導電性ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のIT化、環境保全機運の高まりの中で、エレクトロニクス分野の発展により、種々の導電性高分子材料が要望され、開発されている。例えば、回路パターンの形成、静電破壊からの保護、帯電防止、センサー電極、コネクター、電磁波シールドへの導電性高分子材料の応用が求められる産業分野では、高伸長性を有しながら導電特性を有したゴム組成物の開発が期待されている。特にロボット産業分野においては、アクチュエーターや人工皮膚等に取り付けられるセンサーなどでは、導電性組成物が伸長特性を有していなければセンサーとして機能しないばかりか、センサー回路が断線する等の問題が発生する為、伸長特性を有した高導電性のゴム組成物の要求がある。
【0003】
また、回路集積化が進んだことで回路が複雑化しており、ヒューマンエラーにより誤配線接続するなどの問題が発生するおそれがあるため、導電性ゴムを回路パターンや導線などに使用する場合には、回路識別が一目で判るように着色する事が求められている。工業デザイン的にも外観特性を要求されることもあり、ゴム組成物自体への着色化の要求がある。
【0004】
導電性のゴム組成物としては、カーボンを配合して導電性を高めたゴム組成物が、特許文献1に記載されている。また、金属粉を配合して導電性を高めたゴム組成物が、特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開2006−257334号公報
【特許文献2】特開2005−298661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カーボンブラックを配合したゴム組成物では黒色になる為、組成物が単色になる。単色では識別色がつけられない為、電気回路を誤配線するなどのトラブルの原因となるおそれがあった。その対策として、ゴム組成物表面にペンキ等で識別色の着色を行なうことも行われるが、着色したペンキが経年劣化に伴いゴム組成物表面から伸長時に剥落するなどの問題もあり、組成物自体に着色できるような導電性ゴム組成物が強く要望されている。
【0006】
また、カーボンブラックにはヒトに対して発がん性を示す可能性が示されており(2003年7月に国際連合から勧告されたGHS分類において、カーボンブラックは危険有害物質として分類されている)、作業形態に拠っては工場設備に暴露防止措置を講じる必要がある(労働安全衛生法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)ため、カーボンブラックを使用しない導電性ゴム組成物が要望されている。
【0007】
また、カーボンブラックをゴム充填剤として使用せず、特許文献2のように、導電性を付与させる目的で金属粉をゴムに配合することは広く行なわれているが、金属粉を多量配合するとゴムが有している伸長特性が著しく損なわれるという問題がある。また、金属粉を配合すると組成物の粘度が増加するため、製造加工面において圧延加工性が悪く、ロール加工や押出加工等での加工特性を損ねるという問題があった。
【0008】
したがって、カーボンブラックを使用しなくても導電特性を有し、また同時に伸長特性を有し、着色可能なゴム組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、油展ゴムに化学還元焼成法により得られた銀粉を配合することが導電特性および伸長特性の向上に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、油展ゴムと、化学還元焼成法により得られた銀粉とを含有する事を特長とする導電性ゴム組成物である。
【0011】
本発明の導電性ゴム組成物においては、油展ゴムが、油展スチレン−ブタジエンゴムもしくは油展エチレンプロピレンゴムまたはこれらを混合した油展ゴムであることが好ましく(請求項2)、本発明の導電性ゴム組成物は界面活性剤を含有することが好ましい(請求項3)。
【0012】
また、本発明の導電性ゴム組成物においては、油展ゴムのゴム成分100重量部に対し、銀粉が600〜1500重量部添加されることが好ましく(請求項4)、銀粉が比表面積(BET):0.2〜2.0(m2/g)、かつタップ密度:1.0〜4.0(g/cm)、かつ平均粒径(50%D)が3.0〜40μmであることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伸長特性に優れ、着色可能な導電性ゴム組成物を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の好ましい様態として界面活性剤を含有させた場合には(請求項3)、導電性と伸長特性を更に高めることができるという効果が得られる。また、油展ゴムのゴム成分100重量部に対し、銀粉を600〜1500重量部添加した場合には(請求項4)、伸びが200%以上で、体積抵抗率が9.9×10−2(Ω・cm)以下であるようなゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は油展ゴムに特定の銀粉を配合し、高導電性と伸長性を備えたゴム組成物である。本発明において高導電性であるとは、ゴム組成物の体積抵抗率が1.0×10(Ω・cm)以下、より好ましくは9.9×10−2(Ω・cm)以下であることをいう。また、本発明におけるゴム組成物の伸長性の好ましい範囲は伸び100%以上であり、より好ましくは伸び200%以上、さらに好ましくは伸び300%以上をいう。
【0016】
以下に、油展ゴム、銀粉等本発明のゴム組成物に配合される物質について詳述する。
(油展ゴム)
本発明における油展ゴムとは、加硫可能なゴム成分に、油展成分として鉱物オイルやパラフィンや、ナフテン系オイルなどを添加したゴム組成物である。加硫可能なゴム成分としては、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム(三元共重合体であるものも含む)を例示でき、本発明の実施においては、油展スチレン−ブタジエンゴム、あるいは油展エチレン−プロピレンゴム、油展エチレン−プロピレン−ジエンゴムを使用することが特に好ましい。これらゴムは、単独で、または、2種類以上混合して使用することができる。本発明においては、油展ゴムにはカーボンブラックは実質的に配合しないので、得られるゴム組成物は淡黄白色のものとなり、後述する顔料などにより着色を行うことができるゴム組成物が得られる。
【0017】
上記油展ゴムには種々のゴムをブレンドする事もできる。ブレンド可能なゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(三元共重合体も含む)、アクリルゴムなどが例示できる。
【0018】
(銀粉)
本発明に使用する銀粉は、化学還元法により得られた銀粉を更に焼成して調製した銀粉である。好ましくは、銀粉は、比表面積(BET法による)が0.2〜2.0(m2/g) 更に好ましくは1.0〜2.0(m2/g)であり、タップ密度が1.0〜4.0(g/cm3) 更に好ましくは1.0〜2.0(g/cm3)であり、平均粒径(50%D)が3.0〜40(μm)更に好ましくは5.0〜15(μm)であるようなものを使用する。なお、タップ密度の測定は、ISO3953−1977(E) Metallic Powders Determination of tap density に準拠し、平均粒径(50%D)はレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば島津製作所製 SALD−3000J)で行う測定値である。また、銀粉は、表面処理がなされていてもよいが、少なくとも体積抵抗率が9.9×10−3(Ω・cm)以下のものであることが好ましい。
【0019】
本発明においては、油展ゴムのゴム成分100重量部(油展重量部は含まず)に対して、上記銀粉を600〜1500重量部を配合することが好ましく、上記配合により、体積抵抗率が9.9×10−2(Ω・cm)以下の高導電性を有しながら、伸長度が200%以上を発現するゴム組成物を得ることができる。配合量が600部よりも少なければ、導電性の低下が著しくなり、配合量が1500部を超えると、伸長度(伸び)の低下が著しくなる。
【0020】
銀粉を600重量部以上配合する限り、他の金属粉と銀粉をブレンド配合しても良い。例えば、Au(金)、Al(アルミ)、Cr(クロム)、Cu(銅) 、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)、Pt(白金) 、Pd(パラジウム) 及びSn(錫)からなる金属元素群から選ばれる1種類以上の金属粉末または2種類以上の合金粉末を添加することも可能である。他の金属粉末を添加すれば、高価な銀粉の使用量を節約することができる。
【0021】
(界面活性剤)
本発明の導電性ゴム組成物には、界面活性剤を配合することが好ましく、特にノニオン系界面活性剤を配合することが好ましい。本発明におけるノニオン系界面活性剤とは、両性界面活性剤(イオン性界面活性剤)と、狭義のノニオン系界面活性剤(イオン性でない界面活性剤)とを含む概念である。本発明に使用できるノニオン系界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド、ポリオキシエチレンココナットアルキルアミン等が例示できる。特に、ポリオキシエチレンココナットアルキルアミンの使用が好ましい。これらの界面活性剤は単独で、または二種以上混合して用いることができ、界面活性剤の使用量はゴム100重量部に対して、0.5〜10重量部程度である。
界面活性剤を配合することにより、導電性ゴム組成物の導電性や伸びを更に改善することができる。
【0022】
(加硫剤)
本発明のゴム組成物は、未加硫であっても加硫されていても良い。但し、加硫されている方が引張強さや形状安定性の面で好ましい。加硫剤として、硫黄や有機過酸化物が使用できる。しかし、加硫剤として硫黄を用いる場合には、特に表面処理等を行なっていない銀粉において、銀が硫化されて体積固有抵抗が変化することもあるため、組成物の調整過程において、温度や時間などの条件に配慮する必要がある。架橋剤として使用できる有機過酸化物としては、例えば、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、エチルメチルケトンペルオキシド、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレル、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、α、α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセン−3、t−ブチルペルオキシクメンなどの種々の有機過酸化物が例示される。これらの有機過酸化物加硫剤は単独で、または二種以上混合して使用することができ、加硫剤の使用量は、ゴム成分100重量部(油展重量部は含まず)に対して1〜15重量部、より好ましくは2.5〜10重量部程度である。なお、加硫は、例えば、100〜200℃程度で行なうことができる。
導電性ゴム組成物を、未加硫の組成物として用いる場合には、加硫剤や加硫助剤、加硫促進剤を添加しなくて良い。
【0023】
(加硫助剤)
また、加硫助剤として不飽和二重結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する重合性モノマーを含むものを配合する事も可能である。重合性モノマーとしては、ジビニルベンゼンなどのビニル基を有する化合物;アリル基を有する化合物;アルキル基、アリル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などの酸性基、グリシジル基、アミド基やアルキルアミノ基を有するアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレートなどの2以上のアクリロイル基を有する多官能性モノマー;これらのアクリレートに対応するメタクリレートなどが例示される。他にも加硫助剤として金属酸化物を用いる事もできる。例えばセレン、テルル、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが例示される。これら加硫助剤の配合量は、ゴム成分100重量部(油展重量部は含まず)に対して1〜20重量部程度である。
【0024】
(加硫促進剤)
更に、加硫剤に拠っては加硫促進剤や加硫促進助剤を用いても良い。例示として
グァニジン系(ジフェニル・グァニジン、ジ・オルトトリル・グァニジン、オルト・トリル・ビグァニド、ジカテコール・ホウ酸のジオルト・トリル・グァニジン塩)、アルデヒド−アミン系(n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合品等)アルデヒド−アンモニア系(ヘキサメチレン・テトラミン、アセトアルデヒド・アンモニア)、チアゾール系(2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール)、スルフェンアミド系(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド,N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド,N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド,N−第三ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド,N−第三ブチル−ジ(2−ベンゾチアゾール)スルフェンイミド、)チオ尿素系(チオカルバニリド、エチレン・チオ尿素、ジエチル・チオ尿素、ジブチル・チオ尿素、トリメチル・チオ尿素、ジラリウル・チオ尿素)、チウラム系(テトラメチルチウラム・モノスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、活性化テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラメチルチウラム・ジスルフィド、テトラブチルチウラム・ジスルフィド、N,N−ジメチル−N,N’―ジフェニルチウラム・ジスルフィド、ジペンタメチレンチウラム・テトラまたはヘキサスルフィド、ジベンジルアミンとモノベンジルアミンの混合品、ベンゾチアジル−2−スルフェンモルホリド、ベンゾチアジル−2−ジシクロヘキシルスルフェンアミド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムスルフィド)ジチオカルバミン酸塩系(ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジル・ジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンフェニル・ジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチル・ジチオカルバミン酸テルル、ジメチル・ジチオカルバミン酸銅、ジメチル・ジチオカルバミン酸鉄、ペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレン・ジチオカルバミン酸ピペコリン)、キサントゲン酸塩系(イソプルピル・キサントゲン酸亜鉛、ブチル・キサントゲン酸亜鉛)等が例示され、添加量としては各薬品の最適添加量を添加すれば良い。これらは、2種以上を組み合わせて用い、加硫速度を調整することも可能である。また、無硫黄加硫や低硫黄加硫配合の場合であっても、加硫促進剤等に含まれる硫黄成分によって、銀が硫化されて体積固有抵抗が変化することもあるので、組成物の調整過程において、温度や時間などの条件に配慮する必要がある。さらに、促進剤の種類によっては着色性や汚染性を有する事がある為、本発明の効果を損なわない様にする事が重要である。
【0025】
(充填材・添加物)
また、本発明の組成物には無機充填剤(シリカ(無水ケイ酸、含水ケイ酸等)、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ゼオライト等)や可塑剤(プロセス油や植物油、サブ等)や発泡剤(ニトロソ化合物、アゾ化合物、スルホニル・ヒドラジド等)等を本発明の特長を損なわない範囲で添加することができる。
【0026】
更に、本発明の組成物には発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて添加物としてカップリング剤(シラン系、アルミニウム系、チタネート系)、分散剤(パラフィン及び炭化水素樹脂、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪アルコール等)、粘着付与剤(クマロン樹脂、フェノールテルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、ロジン誘導体等)、消泡剤や吸湿剤(オレイン酸カリ石鹸、ひまし油酸カリ石鹸、酸化カルシウム等)、難燃剤(燐系化合物、窒素系化合物、塩素系化合物、ハロゲン系化合物、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、錫酸亜鉛化合物、膨張黒鉛、ビニル化合物、酸基を含む化合物、水酸基を含む化合物、エポキシ基を含む化合物等)、顔料や着色剤等の各種添加剤を用いることができる。
【0027】
(顔料)
顔料として、無機顔料(酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン、バライト、沈降性リュウサンバリウム、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ、チタンブラック、合成鉄黒、亜鉛末、亜酸化鉛、スレート粉、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、銀朱、弁柄、モリブデン赤、光明丹、アンバー、酸化鉄茶、カドミウム黄、亜鉛黄、黄土、黄色酸化鉄、黄鉛、チタン黄、酸化クロム緑、コバルト緑、クロム緑、群青、紺青、コバルト青、アルミ粉、ブロンズ粉など)や、有機顔料(アゾ顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、塩基性染料系レーキ、酸性染料系レーキ、媒染染料系レーキ、建染染料系顔料、フタロシアニン顔料など)や、真珠箔などを、本発明の導電性ゴム組成物に添加して着色することができる。
また、本発明は、他の顔料や着色剤による着色や色の識別に差し支えない範囲で、顔料としてカーボンブラックの配合を妨げるものではない。
【実施例】
【0028】
以下に実施例および比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例の以下の説明において、各成分の「部」は、全て「重量部数(phr)」を示すものとする。各実施例・比較例において、所定の配合でゴム組成物をローラで混練りし、プレス架橋してシート状サンプルを作成し、得られたゴム組成物の伸び、体積抵抗率、ロール加工性の評価を行った。
【0029】
各実施例や比較例のゴム組成物の特性の測定評価方法は以下に示すとおりである。
(体積抵抗率)
体積抵抗率の測定方法については、JIS K 6271:2001の5に準拠した測定を行なった。ただし、導電性が低いサンプル(体積抵抗率が1015のオーダより大きいもの)については、JIS K 6271:2001の6(二重リング電極法)に準拠した測定を行なった。
【0030】
(切断時伸び)
切断時伸びの試験方法については、JIS K 6251:2004に準拠した測定を行なった。以下の説明では切断時伸びを単に伸びまたはEBと記載する。
(ロール加工性)
試作したゴム組成物のロール加工性の評価基準は次の通りである。
◎ :極めて良好で量産可能と考えられる 〇:良好で量産可能と考えられる
△:良好とはいえないが量産可能と考えられる ×:加工性が悪く量産が非現実的
【0031】
(実施例1)
ゴム成分100部、油展量120部の油展エチレン−プロピレン−ジエンゴム(油展EPDM)である油展ゴムA220部に、銀粉Aを1500部、界面活性剤を1部配合した導電性ゴム組成物を、2段ロールによる混練とシート分出しの後、プレス架橋工程を経て架橋して実施例1の導電性ゴム組成物を調製した。その他の配合物を含めた配合と得られたゴム組成物の評価結果を表1に示す。得られたゴム組成物は、高い伸び(EB)と高い導電性(低い体積抵抗率)を示した。また、銀粉の配合量が比較的高い配合であるが、ロール加工性についても良好な特性を保持している。また、この実施例では、淡黄白色のゴム組成物が得られ、顔料などを配合すれば着色が可能である。
【0032】
使用した原材料及びその代表特性を以下に示す。油展ゴムAは[三井石油化学株式会社製 商品名 三井 EPT3042E]を使用した。銀粉Aは、[福田金属箔粉工業株式会社製 商品名シルコートAGC-1541]を使用した。この銀粉は化学還元法によって得られた銀粉を焼成した銀粉であり、粒子形状は微結晶状であり、比表面積(BET)が1.0〜2.0(m2/g)の範囲にあり、タップ密度が1.0〜2.0(g/cm3)の範囲にあり、平均粒径(50%D)が5.0〜15(μm)の範囲にある銀粉である。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤である[花王株式会社製 商品名エレクトロストリッパ−SR]を使用した。その他、消泡剤として[近江化学株式会社製 商品名CML#31]を、架橋剤として有機過酸化物A[日本油脂株式会社製 商品名ペロキシモンF40]を使用した。
【0033】
(実施例2)
実施例1と比較して、銀粉の配合量を600部と少なくして、界面活性剤を配合しないゴム組成物を調製し、実施例2とした。本配合においても、高い伸びと導電性を備える導電性ゴム組成物が得られ、ロール加工性も良好であった。
【0034】
(比較例)
比較例として、銀粉を配合しないもの(比較例1)を調製したが、導電性が得られなかった。また、銀粉を2900部配合したもの(比較例2)を調製したが、ロール加工性が量産に向かないレベルまで悪くなるとともに、ゴム組成物の伸びも大幅に低下した。
【0035】
【表1】

【0036】
表2には、実施例1における油展ゴムAを非油展ゴムAとした、比較例3及び4を示す。非油展ゴムAを使用することや、可塑剤Aを使用すること以外は、実施例1と同様にゴム組成物の調製を行った。非油展ゴムAは[三井石油化学株式会社製 商品名三井EPT3045]であり、非油展のEPDMである。可塑剤Aは[新日本石油株式会社製 商品名 フッコールプロセスオイルP200]を使用した。非油展のEPDMとした場合(比較例3)、その他は実施例1と同様の配合の組成物であるにも関わらず切断時伸びはかなり低下し、ロール加工性も量産に向かないレベルまで悪くなった。比較例3に可塑剤Aを配合し、伸びとロール加工性の改善を試みたが(比較例4)、比較的少量の可塑剤添加であるにも関わらず、加硫プレス工程においてシート表面にエアーが発生する加硫不具合が発生し、加硫物としてのシート状の試験片調製が不可能であった。
【0037】
【表2】

【0038】
表3には、銅粉を配合した比較例5を示す。実施例1の銀粉の代わりに銅粉2440部を配合し、他の配合は実施例1と同様である。銅粉は、[福田金属箔粉工業株式会社製 FCC−2000]を使用した。この銅粉は、見かけ密度が1.73(g/cm3)で、比表面積(BET)が0.32(m2/g)であり、タップ密度が2.94(g/cm3)であり、平均粒径(50%D)が10.3(μm)である銅粉である。なお、見かけ密度の測定は、JIS Z2504−1966 による。比較例5においては、かなり多量の銅粉を配合したにも関わらず、導電性の高いゴム組成物が得られず、ロール加工性も量産適用が困難である程度に悪かった。
【0039】
【表3】

【0040】
表4には、実施例1における油展ゴムAを非油展ゴムDとした比較例6を示す。非油展ゴムDとしては、天然ゴム(NR)である[RSS #3]を使用した。非油展の天然ゴムを使用した場合でも、実施例1に比べて、ロール加工性が量産適用困難な程度まで悪化すると共に、伸びが低下する傾向が見られた。
【0041】
【表4】

【0042】
表5には、実施例における油展ゴムAを非油展ゴムBとした比較例7を示す。非油展ゴムBとしては、シリコーンゴムである [モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 商品名 TSE3450A]を使用した。また、硬化剤としては[モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 商品名 TSE3450B]を使用した。得られたゴム組成物(比較例7)は、銀粉Aの配合量が実施例1の配合量よりも低いにも関わらず、ロールの加工性が量産困難な程度まで悪化すると共に、伸びがかなり低下した。
【0043】
【表5】

【0044】
表6には、実施例1における油展ゴムAを非油展ゴムDとした比較例6に、さらに可塑剤Cを追加配合した比較例8を示す。可塑剤Cとしては、[新日本石油株式会社製 フッコールNL100W]を使用した。比較例8においても、比較例6と同じくロール加工性が悪化し、更に、比較的少量の可塑剤添加であるにも関わらず、加硫プレス工程において湧きが発生し、加硫物としてのシート状の試験片調製が不可能であった。
【0045】
【表6】

【0046】
表7には、更に他の非油展ゴムを使用した比較例9、比較例10を示す。非油展ゴムCは、シリコーンゴムである[モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 商品名 TSE260−5U]を、可塑剤Bは[モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 商品名TSF433]を使用した。また、架橋剤としての有機過酸化物Bは[モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製 商品名 TC−8]を使用した。比較例9については、600部という比較的少なめの銀粉の配合であるにも関わらず、ロール加工が出来ないものになり、ゴム組成物の調製が不可能であった。ロール加工性を改善する目的で界面活性剤を添加してロール加工性を向上させる試みを行ったが(比較例10)、比較例9と同様にロール加工が出来なかった。
【0047】
【表7】

【0048】
(他の実施例)
表8には、他の油展ゴムを用いた本発明の実施例3、実施例4を示す。実施例3では、油展ゴムとして、油展EPDMである油展ゴムB[三井石油化学株式会社製 商品名三井EPT3072E]140部(EPDM100重量部に油展成分40重量部)に銀粉A1000部を配合し、実施例4では油展スチレン−ブタジエンゴム(油展SBR)である油展ゴムC[JSR株式会社製 1778N](SBR100重量部に油展成分37.5重量部)に銀粉A1000部を配合した。いずれの実施例においても、伸びと導電性に優れ、ロール加工性の悪化も許容範囲内であるような、淡黄白色のゴム組成物が得られた。
【0049】
【表8】

【0050】
表9には、銀粉の配合量や種類を変えた実施例や比較例を示す。実施例5、実施例7、比較例11は、実施例1に対して、銀粉Aの配合量をそれぞれ800部、600部、50部と変化させた例である、実施例5及び実施例7によれば、高い伸びと導電性、及び良好なロール加工性を有する淡黄白色のゴム組成物が得られている。一方、銀粉Aの配合量を50部とした比較例11では、導電性が低いゴム組成物しか得られなかった。
【0051】
実施例6のように、銀粉A600部に加えて銅粉300部を配合しても、高い伸びと導電性、及び良好なロール加工性を有する淡黄白色のゴム組成物が得られることが確認された。
【0052】
実施例8には、配合する銀粉を銀粉Bとした配合の実施例を示す。銀粉Bとしては、[福田金属箔工業株式会社製 商品名シルコートAGC-2011]を使用した。この銀粉は化学還元法によって得られた銀粉を焼成した銀粉であり、粒子形状はフレーク状であり、比表面積(BET)が0.5〜3.0(m2/g)の範囲にあり、タップ密度が2.5〜5.0(g/cm3)の範囲にあり、平均粒径(50%D)が2.0〜10(μm)の範囲にある銀粉である。実施例8の配合において使用した銀粉の実測値は、見掛け密度が1.98(g/cm3)、比表面積(BET)が1.68(m2/g)、タップ密度が3.92(g/cm3)、平均粒径(50%D)が4.2(μm)であった。実施例8のゴム組成物においても、伸びと導電性に優れ、ロール加工性の悪化も許容範囲内であるような、淡黄白色のゴム組成物が得られた。
【0053】
比較例12および比較例13には、配合する銀粉を銀粉Cとした配合の比較例を示す。銀粉Cとしては、[福田金属箔粉工業株式会社製 AGE−350]を使用した。この銀粉は電解法によって得られた銀粉であり、見かけ密度が、21.5〜30.0(g/cm3)にある銀粉であり、配合12に使用した銀粉Cの実測値は、見掛け密度が2.20(g/cm3)、比表面積(BET)が0.16(m2/g)、タップ密度が4.35(g/cm3)、平均粒径(50%D)が17.0(μm)であった。銀粉Cを1500重量部配合した比較例12および、銀粉Cを600重量部配合した比較例13では、導電性ゴム組成物は得られるものの、体積抵抗率が高めの水準にあった。
【0054】
【表9】

【0055】
表10には、界面活性剤を配合しない実施例9と、顔料を配合した実施例10を示す。実施例9は、界面活性剤を配合しない点以外は、実施例1と同じ配合である。実施例9のゴム組成物によっても、高い伸びと導電性、及び良好なロール加工性を有する淡黄白色のゴム組成物が得られている。実施例1と対比すると、ノニオン系界面活性剤を配合することにより、実施例1は伸びと導電性の両方が改善されていることがわかる。実施例10は顔料Aを配合した以外は実施例5と同じ配合である。顔料Aは、有機顔料の一種であるフタロシアニン顔料で、[レヂノカラー工業株式会社製 レヂノブルーRT−6(LB)]を使用した。顔料Aを配合することにより、得られる導電性ゴム組成物は青色のものとなった。また、顔料を配合しても、実施例5とほぼ同じレベルの物性を示すゴム組成物が得られた。
【0056】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、伸び性と導電性に優れると共に、顔料などを配合することにより着色が可能なゴム組成物を提供することができる。このゴム組成物は、着色を必要とする導電性ゴム組成物の応用分野や、高い伸長性が要求される電性ゴム組成物の応用分野において特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油展ゴムと、化学還元焼成法により得られた銀粉とを含有する事を特長とする導電性ゴム組成物。
【請求項2】
油展ゴムが、油展スチレン−ブタジエンゴムもしくは油展エチレンプロピレンゴム、またはこれらを混合した油展ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴム組成物。
【請求項3】
界面活性剤を含有することを特徴とする請求項2に記載の導電性ゴム組成物。
【請求項4】
油展ゴムのゴム成分100重量部に対し、銀粉が600〜1500重量部添加されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性ゴム組成物。
【請求項5】
銀粉が比表面積(BET):0.2〜2.0(m2/g)、かつタップ密度:1.0〜4.0(g/cm)、かつ平均粒径(50%D)が3.0〜40μmであることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性ゴム組成物。

【公開番号】特開2009−269985(P2009−269985A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120862(P2008−120862)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】