説明

導電性ポリ(アリーレンエーテル)組成物及びその製造法

ポリ(アリーレンエーテル);ポリアミド;耐衝撃性改良剤;導電性フィラー;及び4個以上の共役二重結合と400℃以下の融点を有する添加剤を含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2002年7月23日に出願された米国仮特許出願第60/319,419号に基づく優先権を主張する2003年2月11日出願の米国特許出願第10/248,702号の一部継続出願である。これらの各出願特許は引用によって全面的に本明細書に援用される。
[発明の背景]
本開示はポリ(アリーレンエーテル)組成物、特に導電性ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドに関する。
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)のようなポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、それらの加水分解安定性、高い寸法安定性、靱性、耐熱性、及び誘電特性のために極めて有用なクラスの高性能エンジニアリング熱可塑性樹脂である。この独特な特性の組合せゆえに、ポリ(アリーレンエーテル)ベースの組成物、特にポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンドは広範な用途に適切なものとなっている。広範な用途については当該技術分野で周知である。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)ブレンドは、自動車部品、電気部品、オフィス機器などの分野で広く使用されている。これらの各種用途の中には、グラファイト粉末及び/又はカーボンブラック粉末のような導電性フィラーを樹脂組成物に加えてポリ(アリーレンエーテル)ブレンドを導電性にしたものもある。
【0003】
樹脂組成物に使用される導電性フィラーの添加量が多いために、成形適性の低下及び機械的性質の劣化、例えば伸び不良及び衝撃強さの減退などがしばしば観察される。
従って、当該技術分野には、機械的性質を著しく低下させることなく電気的性質を増強させた導電性ポリ(アリーレンエーテル)ブレンド組成物を求めるニーズが依然として存在する。
[発明の概略]
前述のニーズは、
ポリ(アリーレンエーテル)と;
ポリアミド又はポリエステルと;
耐衝撃性改良剤と;
導電性フィラーと;そして
4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤と;
を含む樹脂組成物によって満たされた。
【0004】
該組成物の製造法及び該組成物から製造される製品も提供される。
[発明の詳細な説明]
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲におけるいくつかの用語について言及する。それらの用語は以下の意味を持つと定義されるものとする。
【0005】
単数形の冠詞“a”、“an”及び冠詞の“the”は、文脈が明らかにそうでない場合を指示しない限り、複数形の対象物も含む。
“所望による”又は“所望により”とは、後述の事象又は状況が起こることも起こらないこともあること、そして該記述は事象が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。
【0006】
ここで使用されている“組合せ”とは、混合物、コポリマー、反応生成物、ブレンド、複合材料などを含む。
さらに、同一特性を引用する全範囲の端点(複数)は、引用された端点も含めて独立して組合せ可能である。
【0007】
予想外にも、導電性フィラーを含むポリ(アリーレンエーテル)組成物に、4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤を含めると、添加剤を含まない類似組成物と比べた場合に導電性は増強されるが機械的性質にはほとんど影響のない組成物が得られることが見出された。
【0008】
さらに、他の態様において、添加剤化合物を含むポリ(アリーレンエーテル)組成物は、添加剤を含まない導電性ポリ(アリーレンエーテル)組成物よりも少ない量の導電性フィラーしか用いなくてもそれに匹敵する導電性を達成できるので、組成物の機械的性質が改良される。さらに他の態様において、添加剤を含まない導電性ポリ(アリーレンエーテル)組成物と比べて、耐熱性の改良及び熱膨張の低減が実現できる。
【0009】
体積抵抗率(specific volume resistivity, SVR)は、1センチメートル立方の材料を通る電気抵抗と定義され、オーム−cmで表される。材料の体積抵抗率が低いほど材料の導電性は高い。いくつかの態様において、組成物は1012オーム−cm以下の体積抵抗率を有する。一態様において、組成物は10オーム−cm以下、又は更に詳しくは10オーム−cm以下、又はなお更に詳しくは10オーム−cm以下の体積抵抗率を有する。一態様において、組成物は10オーム−cm以上、又は更に詳しくは10オーム−cm以上、又はなお更に詳しくは10オーム−cm以上の体積抵抗率を有する。体積抵抗率は実施例に記載のようにして決定することができる。
【0010】
一態様において、室温(22℃〜23℃)における組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強さは、ISO 180/1Aに準じて23℃でタイプ1及びノッチタイプAの標本を用いる試験で、17キロジュール/平方メートル(kJ/m)以上、又は更に詳しくは25kJ/m以上、又はなお更に詳しくは40kJ/m以上である。タイプ1の標本の寸法は、長さ80ミリメートル(mm)、幅10mm及び厚さ4mmである。ノッチ深さは2mmである。5.5ジュール(J)のハンマー重量(hammer weight)を自由落下させて、ノッチをハンマーに向けたノッチ付サンプルを破断した。衝撃エネルギーの最大限界は23℃で170kJ/mもの高さになりうるが、これはサンプルが5.5Jのハンマー衝撃で破断しない場合である。
【0011】
一態様において、組成物は、3×10−5mm/mm/℃(ミリメートル/ミリメートル/℃)〜10×10−5mm/mm/℃、又は更に詳しくは4×10−5mm/mm/℃〜8×10−5mm/mm/℃、又はなお更に詳しくは5×10−5mm/mm/℃〜7×10−5mm/mm/℃の熱膨張率(CTE)を有する。熱膨張率(CTE)の測定手順はISO 11359−2に準拠し、熱機械分析装置(TMA)を用いて行う。サンプルを第一の加熱サイクルでポリ(アリーレンエーテル)の軟化温度未満(PPEのガラス転移温度の約30℃下)でアニールし、第二の加熱サイクルで膨張を記録する。測定用のサンプル寸法は、9mm×9mm×4mm±1mmである。測定は、溶融物が成形時に金型キャビティ内部を流れる方向に沿った流入方向(in-flow direction)に沿って実施される。CTE測定用の温度は23℃〜60℃である。
【0012】
一態様において、組成物は、6グラム/10分(g/10分)以上、又は更に詳しくは7(g/10分)以上、又はなお更に詳しくは8(g/10分)以上のメルトインデックスを有する。ここで、メルトインデックスはISO 1133の手順によって280℃及び5キログラムの荷重で測定される。さらに、一態様において、組成物は4(g/10分)〜7(g/10分)、更に詳しくは4.5〜6(g/10分)のメルトインデックスを含む。
【0013】
組成物は、A)ポリ(アリーレンエーテル)、B)ポリアミド又はポリエステル、C)耐衝撃性改良剤、D)導電性フィラー、及びE)4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤を含む。
【0014】
様々なその他の態様において、組成物は以下に記載のように補強フィラー及び二次添加剤をさらに含むこともできる。
本明細書中で使用している“ポリ(アリーレンエーテル)”は、複数の式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
の構造単位を含む。式中、各構造単位について、各Q及びQは、独立して水素、ハロゲン、第一級又は第二級の低級アルキル(例えば1〜7個の炭素原子を含有するアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、ヒドロカーボンオキシ(carbonoxy)、アリール及びハロヒドロカーボンオキシ(ハロゲンと酸素原子は少なくとも2個の炭素原子によって隔てられている)である。いくつかの態様において、各Qは、独立してアルキル又はフェニル、例えばC1−4アルキルであり、各Qは、独立して水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、アミノアルキル含有末端基(典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位に位置する)を有する分子を含むこともできる。同様にしばしば存在するのはテトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基であるが、これは典型的にはテトラメチルジフェノキノン副産物が存在する反応混合物から得られる。
【0017】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー;コポリマー;グラフトコポリマー;アイオノマー;又はブロックコポリマー;並びに前述の少なくとも一つを含む組合せの形態であり得る。例えば、一態様において、ポリ(アリーレンエーテル)は、所望により2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせた2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を含むポリフェニレンエーテル(PPE)などである。
【0018】
ポリ(アリーレンエーテル)は、モノヒドロキシ芳香族化合物(一つ又は複数)、例えば2,6−キシレノール及び2,3,6−トリメチルフェノールの酸化カップリングによって製造できる。このようなカップリングには触媒系が一般的に使用される。該触媒系は、銅、マンガン又はコバルト化合物のような重金属化合物(一つ又は複数)を、通常は様々なその他の物質、例えば第二級アミン、第三級アミン、ハロゲン化物、又は前述の二つ以上の組合せと組み合わせて含有しうる。
【0019】
ポリ(アリーレンエーテル)は多官能化合物で官能化することができる。多官能化合物とは、例えばポリカルボン酸又は分子中に(a)炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合、及び(b)少なくとも一つのカルボン酸、無水物、アミド、エステル、イミド、アミノ、エポキシ、オルトエステル、又はヒドロキシ基の両方を有する化合物である。そのような多官能化合物の例は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、及びクエン酸などである。
【0020】
ポリ(アリーレンエーテル)は、数平均分子量3,000グラム/モル(g/mol)〜40,000g/mol及び重量平均分子量5,000g/mol〜80,000g/molを有しうる。これは単分散ポリスチレン標準のスチレンジビニルベンゼンゲル(40℃)及びクロロホルム1ミリリットルあたり1ミリグラムの濃度のサンプルを用いたゲル透過クロマトグラフィーによる測定により決定される。ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)類の組合せは、25℃のクロロホルム中での測定で0.10デシリットル/グラム(dl/g)〜0.60デシリットル/グラム(dl/g)の初期固有粘度を有している。初期固有粘度は、組成物のその他の成分と溶融混合する前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義される。当業者には分かる通り、ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は溶融混合後最大30%高くなりうる。増加の割合は、(溶融混合後の最終固有粘度−初期固有粘度)/初期固有粘度によって計算できる。二つの初期固有粘度を使用する場合、正確な比率の決定は、使用されるポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望される最終的な物理的性質に多少なりとも依存することになる。
【0021】
ポリ(アリーレンエーテル)は、一般的に10重量パーセント(重量%)〜99.5重量%の量で使用される。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)は、20重量%以上、又は更に詳しくは30重量%以上の量で使用できる。同様にこの範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)は、85重量%以下、又は更に詳しくは80重量%以下の量で使用できる。重量パーセントは組成物の総重量に対してである。
【0022】
ポリアミドはナイロンとしても知られ、アミド基(−C(O)NH−)の存在を特徴とし、米国特許第4,970,272号に記載されている。ポリアミドの例は、ナイロン−6;ナイロン−6,6;ナイロン−4;ナイロン−4,6;ナイロン−12;ナイロン−6,10;ナイロン−6,9;ナイロン−6,12;非晶質ポリアミド樹脂;ナイロン9T;ナイロン6/6T及びナイロン−6,6/6T(トリアミン含有量0.5重量パーセント未満);並びに前述のポリアミドの少なくとも一つを含む組合せなどであるが、これらに限定されない。一態様において、ポリアミドはナイロン6及びナイロン6,6を含む。
【0023】
ポリアミド樹脂は、米国特許第2,071,250号;2,071,251号;2,130,523号;2,130,948号;2,241,322号;2,312,966号;及び2,512,606号に記載されているようないくつかの周知プロセスによって得ることができる。ポリアミド樹脂は様々な供給元より市販されている。
【0024】
ポリアミド樹脂は、ISO 307に準拠して96重量%硫酸中0.5重量%溶液中での測定で、400ミリリットル/グラム(ml/g)までの粘度を有するもの、又は更に詳しくは90ml/g〜350ml/gの粘度を有するもの、又はなお更に詳しくは110ml/g〜240ml/gの粘度を有するものが使用できる。
【0025】
ポリアミドは、一般的に20重量%〜90重量%の量で使用される。この範囲内で、ポリアミドは、組成物の総重量の30重量%以上、又は更に詳しくは40重量%以上の量で使用できる。同様にこの範囲内で、ポリアミドは、80重量%以下、又は更に詳しくは70重量%以下の量で使用できる。重量パーセントは組成物の総重量に対してである。ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドは混和できないため、ブレンドを製造する場合、ポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドのための相溶化剤(ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤)を使用する。本明細書中で使用されている“相溶化剤”という表現は、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤に適用される場合、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリアミド樹脂、又はその両者と相互作用する多官能化合物のことを言う。相溶化剤とポリ(アリーレンエーテル)間のこの相互作用は、化学的(例えばグラフト化)及び/又は物理的(例えば分散相の表面特性への作用)であり得る。いずれの場合も、得られた相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド組成物は、特に衝撃強さ、モールドニットライン強度(mold knit line strength)及び/又は伸びの増強によって証明されるように、改良された相溶性を示すようである。本明細書中で使用されている“相溶化ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミドブレンド”という表現は、前述のように薬剤で物理的及び/又は化学的に相溶化された組成物ばかりでなく、米国特許第3,379,792号に教示されているようにそのような薬剤を用いずとも物理的に相溶性である組成物のことも言う。
【0026】
使用できる様々なポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤の例は、液体ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、有機シラン化合物、多官能化合物、官能化ポリ(アリーレンエーテル)及び前述の少なくとも一つを含む組合せなどである。ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤については、米国特許第5,132,365号及び6,593,411号並びに米国特許出願第2003/0166762号にさらに記載されている。
【0027】
一態様において、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤は多官能化合物を含む。ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤として使用できる多官能化合物は3種類ある。第一の種類の多官能化合物は、分子中に(a)炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合と、(b)少なくとも一つのカルボン酸、無水物、アミド、エステル、イミド、アミノ、エポキシ、オルトエステル、又はヒドロキシ基の両方を有するものである。そのような多官能化合物の例は、マレイン酸;無水マレイン酸;フマル酸、グリシジルアクリレート;イタコン酸;アコニット酸;マレイミド;マレイン酸ヒドラジド;ジアミンと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などからの反応生成物;ジクロロ無水マレイン酸;マレイン酸アミド;不飽和ジカルボン酸(例えばアクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、t−エチルアクリル酸、ペンテン酸);デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸など);前述の不飽和カルボン酸のエステル、酸アミド又は無水物;不飽和アルコール(例えばアルキルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、4−ペンテン−1−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3−ブテン−1,4−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール及び式C2n−5OH、C2n−7OH及びC2n−9OH[式中、nは30以下の正の整数]のアルコール);上記不飽和アルコールの−OH基(一つ又は複数)をNH基で置換して得られる不飽和アミン;官能化ジエンポリマー及びコポリマー;並びに前述の一つ又は複数を含む組合せなどである。一態様において、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤は無水マレイン酸及び/又はフマル酸を含む。
【0028】
第二の種類の多官能ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤は、(a)式(OR)[式中、Rは水素又はアルキル、アリール、アシルもしくはカルボニルジオキシ基]によって表される基と、(b)カルボン酸、酸ハロゲン化物、無水物、酸ハロゲン化物無水物、エステル、オルトエステル、アミド、イミド、アミノ、及びその各種塩から選ばれる少なくとも2個の基(それぞれは同じでも異なっていてもよい)の両方を有することを特徴とする。このグループの典型的な相溶化剤は、脂肪族ポリカルボン酸、酸エステル及び酸アミドで、式:
(RO)R(COORII(CONRIIIIV
によって表される。式中、Rは、2〜20個、又は更に詳しくは2〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素であり;Rは水素、又は1〜10個、又は更に詳しくは1〜6個、又はなお更に詳しくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル、アリール、アシルもしくはカルボニルジオキシ基であり;各RIIは、独立して水素、又は1〜20個、又は更に詳しくは1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリール基であり;各RIII及びRIVは、独立して水素、又は1〜10個、又は更に詳しくは1〜6個、又はなお更に詳しくは1〜4個の炭素原子を有するアルキルもしくはアリール基であり;mは1に等しく、(n+s)は2以上、又は更に詳しくは2もしくは3に等しく、n及びsはそれぞれゼロ以上であり、そして(OR)はカルボニル基に対してアルファ又はベータであり、少なくとも2個のカルボニル基は2〜6個の炭素原子によって隔てられている。明白なことであるが、R、RII、RIII、及びRIVは、各置換基が6個未満の炭素原子しか持たない場合、アリールではあり得ない。
【0029】
適切なポリカルボン酸は、例えばクエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸などであるが、それらの様々な市販形態、例えば無水酸及び含水酸、並びに前述の一つ又は複数を含む組合せも含む。一態様において、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤はクエン酸を含む。本発明において有用なエステルの例は、例えばクエン酸アセチル、クエン酸モノ−及び/又はジステアリルなどである。本発明において有用な適切なアミドは、例えばN,N’−ジエチルクエン酸アミド;N−フェニルクエン酸アミド;N−ドデシルクエン酸アミド;N,N’−ジドデシルクエン酸アミド;及びN−ドデシルリンゴ酸などである。誘導体はそれらの塩などで、アミンとの塩並びにアルカリ及びアルカリ性金属塩を含む。適切な塩の例は、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カリウム、及びクエン酸カリウムなどである。
【0030】
第三の種類の多官能ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤は、分子中に(a)酸ハロゲン化物基と、(b)少なくとも一つのカルボン酸、無水物、エステル、エポキシ、オルトエステル、又はアミド基、特にカルボン酸又は無水物基の両方を有することを特徴とする。この範囲に入る相溶化剤の例は、無水トリメリット酸の酸塩化物、クロロホルミル無水コハク酸、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミル無水グルタル酸、クロロホルミルグルタル酸、クロロアセチル無水コハク酸、クロロアセチルコハク酸、トリメリット酸塩化物、及びクロロアセチルグルタル酸などである。一態様において、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤は無水トリメリット酸の酸塩化物を含む。
【0031】
前述のポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤は、溶融ブレンドに直接添加してもよいし、又はポリ(アリーレンエーテル)及びポリアミドのいずれか又は両者と、さらには組成物の製造に使用されるその他の樹脂性材料と予備反応させてもよい。前述のポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤の多数、特に多官能化合物に関しては、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤の少なくとも一部を、溶融物中又は適切な溶媒の溶液中のいずれかで、ポリ(アリーレンエーテル)のすべて又は一部と予備反応させた場合に相溶性にさらに大きな改良が見られる。そうした予備反応は、ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤をポリマーと反応させることになるので、結果としてポリ(アリーレンエーテル)が官能化されると考えられる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を無水マレイン酸と予備反応させると、無水物で官能化されたポリフェニレンエーテルが形成されうるが、これは官能化されていないポリフェニレンエーテルと比べてポリアミドとの相溶性が改良されている。
【0032】
ポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤を組成物の製造に使用する場合、使用量は、選択された特定のポリ(アリーレンエーテル)/ポリアミド相溶化剤及びそれが添加される特定のポリマー系に依存することになる。
【0033】
組成物はさらに、衝撃強さを改良するための一つ又は複数の薬剤、すなわち耐衝撃性改良剤を含有する。耐衝撃性改良剤は、アリールアルキレン反復単位を含有するブロックコポリマーであり得る。例えば、A−Bジブロックコポリマー及びA−B−Aトリブロックコポリマーで、典型的にはポリスチレンブロックである一つ又は二つのアリールアルキレンブロックA(アリールアルキレン反復単位を有するブロック)と、典型的にはイソプレン又はブタジエンブロックであるゴムブロックBを有する。ブタジエンブロックは部分的に又は完全に水素化されていてもよい。これらのジブロック及びトリブロックコポリマーの混合物、さらには非水素化コポリマー、部分水素化コポリマー、完全水素化コポリマーの混合物及び前述の二つ以上の組合せも使用することができる。
【0034】
A−B及びA−B−Aコポリマーは、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン及びポリ(アルファ−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(アルファ−メチルスチレン)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン−スチレン)−ポリスチレンなどであるが、これらに限定されない。前述のブロックコポリマーの混合物も有用である。このようなA−B及びA−B−Aブロックコポリマーはいくつかの供給元から市販されている。例えば、Phillips Petroleum(商標SOLPRENE)、Kraton Polymers(商標KRATON)、Dexco(商標VECTOR)、Asahi Kasai(商標TUFTEC)、Total Petrochemicals(商標FINAPRENE及びFINACLEAR)及びKuraray(商標SEPTON)などである。
【0035】
一態様において、耐衝撃性改良剤は、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)又は前述の組合せを含む。
別の種類の耐衝撃性改良剤は本質的にアリールアルキレン反復単位を持たず、カルボン酸、無水物、エポキシ、オキサゾリン、及びオルトエステルからなる群から選ばれる一つ又は複数の部分を含む。本質的に持たないとは、アリールアルキレン単位の存在量がブロックコポリマーの総重量を基準にして5重量パーセント未満、又は更に詳しくは3重量パーセント未満、又はなお更に詳しくは2重量パーセント未満であると定義される。耐衝撃性改良剤がカルボン酸部分を含む場合、該カルボン酸部分はイオン、特に亜鉛又はナトリウムのような金属イオンで中和されていてもよい。そのような耐衝撃性改良剤は、アルキレン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーで、そのアルキレン基は2〜6個の炭素原子を、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は1〜8個の炭素原子を有しうる。この種のポリマーは、オレフィン、例えばエチレン及びプロイレンを、様々な(メタ)アクリレートモノマー及び/又は様々なマレイン酸系モノマーと共重合させることによって製造できる。(メタ)アクリレートという用語は、アクリレート及び対応するメタクリレート類似体の両方を意味する。(メタ)アクリレートモノマーの用語に含まれるものは、アルキル(メタ)アクリレートモノマー及び前述の反応性部分の少なくとも一つを含有する様々なメタ(アクリレート)モノマーである。
【0036】
一態様において、該コポリマーは、アルキレン成分として、エチレン、プロピレン、又はエチレンとプロピレンの混合物から、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分として、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、又はプロピルアクリレート、並びに対応するアルキル(メチル)アクリレートから誘導され、アクリル酸、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート又はそれらの組合せがモノマーとして追加の反応性部分(すなわちカルボン酸、無水物、エポキシ)を提供する。
【0037】
第一の耐衝撃性改良剤の例は様々な供給元から市販されている。例えばELVALOY PTW、SURLYN、及びFUSABONDなどで、これらはいずれもDuPontから入手できる。
【0038】
前述の耐衝撃性改良剤は単独でも組み合わせても使用できる。
組成物は、耐衝撃性改良剤又は耐衝撃性改良剤の組合せを1重量%〜25重量%の量で含みうる。この範囲内で、耐衝撃性改良剤は、1.5重量%以上の量、又は更に詳しくは2重量%以上の量、又はなお更に詳しくは4重量%以上の量で存在しうる。同様にこの範囲内で、耐衝撃性改良剤は、20重量%以下、又は更に詳しくは18重量%以下、又はなお更に詳しくは15重量%以下の量で存在しうる。重量パーセントは組成物の総重量に基づく。
【0039】
組成物はさらに導電性フィラーを含む。適切な導電性フィラーは、固体の導電性金属フィラー又は固体の金属フィラーで被覆された無機フィラーなどである。これらの固体導電性金属フィラーは、樹脂ブレンドに配合する際、及びそれから完成品を製作する際に使用される条件下で融解しない導電性金属又は合金であり得る。アルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、及び前述の金属の少なくとも一つを含む混合物のような金属が、固体金属粒子としてポリマー樹脂に配合できる。物理的混合物及び真正合金、例えばステンレス鋼、青銅なども、導電性フィラー粒子の金属成分として役割を果たすことができる。さらに、少数の金属間化合物、例えばこれらの金属のホウ化物、炭化物など(例えば二ホウ化チタン)も導電性フィラー粒子の金属成分として役割を果たしうる。固体の非金属導電性フィラー粒子、例えば酸化スズ、酸化インジウムスズなども樹脂ブレンドに添加することができる。固体の金属及び非金属導電性フィラーは、引抜ワイヤ、チューブ、ナノチューブ、フレーク、ラミネート、小板、楕円体、ディスク、及びその他の市販形状の形態で存在できる。具体的には、導電性フィラーは、カーボンナノチューブ(単層及び多層)、直径2.5〜500ナノメートルの気相成長炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)炭素繊維のような炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、及び前述のフィラーの少なくとも一つを含む混合物のような炭素質フィラーなどでありうる。
【0040】
様々な種類の導電性炭素繊維は、それらの直径、形態、及び黒鉛化度(形態と黒鉛化度は相関している)に従って分類できる。これらの特性は現在、炭素繊維の合成に使用される方法によって決定される。例えば、5マイクロメートルの直径と繊維軸に平行なグラフェンリボン(放射状、面状、又は円周状配向)を有する炭素繊維は、商業的には繊維状の有機前駆体、例えばフェノール類、PAN、又はピッチの熱分解によって製造される。これらのタイプの繊維は比較的低い黒鉛化度を有する。
【0041】
3ナノメートル〜2,000ナノメートルの直径と“年輪”又は“フィッシュボーン”構造を有する小さい炭素繊維は現在、粒状金属触媒の存在下、適度の温度すなわち800℃〜1,500℃で気相の炭化水素から成長させており、一般に“気相成長炭素繊維”として知られている。これらの炭素繊維は一般的に円筒形で、中空のコアを有する。“年輪”構造の場合、多重の実質的黒鉛シートがコア周囲に同軸配置され、各シートのc軸はコアの軸に対して実質的に垂直である。層間の相互関係は一般的に低い。“フィッシュボーン”構造の場合、繊維は、例えばEP198 558に示されているように、中空コアの軸から伸びたグラファイト層を特徴とする。熱分解によって堆積した一定量の炭素も繊維の外側に存在しうる。3.5ナノメートル〜500ナノメートルの直径、詳しくは3.5ナノメートル〜70ナノメートルの直径、又は更に詳しくは3.5ナノメートル〜50ナノメートルの直径を有するグラファイト状又は一部グラファイト状の気相成長炭素繊維が使用できる。代表的な気相成長炭素繊維は、例えば米国特許第4,565,684号;5,024,818号;4,572,813号;4,663,230号;5,165,909号;4,816,289号;4,876,078号;5,589,152号;及び5,591,382号に記載されている。
【0042】
カーボンナノチューブはグラフェンシリンダからなるフラーレン関連構造で、両端は開放されていることも、又は五角形及び/又は六角形の環を含有するキャップで閉じられていることもある。ナノチューブは単一壁からなることも、又は同心円状に配置された多数の壁を有することもある。直径は、単層ナノチューブの場合0.7ナノメートル〜2.4ナノメートル、多層ナノチューブの場合2ナノメートル〜50ナノメートルである。多層構造の場合、中空コアの断面は層の数の増加に従って次第に小さくなる。直径が10ナノメートルより大きく20ナノメートルまでになると、多層ナノチューブは六角柱の形状を示し始める。その結果、ナノチューブの曲率は柱の角に集中する。カーボンナノチューブは、グラファイトのレーザー蒸着、炭素アーク合成によって、又は気相中の低炭化水素圧下で製造することができる。代表的なカーボンナノチューブは、米国特許第6,183,714号;5,591,312号;5,641,455号;5,830,326号;5,591,832号;及び5,919,429号に記載されている。
【0043】
カーボンブラックも導電性フィラーとして使用することができる。市販のカーボンブラックは導電性カーボンブラックなどで、樹脂の静電気の散逸(ESD)を改良するために使用される。そのようなカーボンブラックは様々な商品名で販売されている。例えば、S.C.F.(Super Conductive Furnace)、E.C.F.(Elcetric Conductive Furnace)、Ketjen Black EC(Akzo Co.,Ltd.より入手可)又はアセチレンブラックなどであるが、これらに限定されない。具体的なカーボンブラックは、平均粒径200ナノメートル未満、又は更に詳しくは100ナノメートル未満、又はなお更に詳しくは50ナノメートル未満のものである。導電性カーボンブラックは、100平方メートル/グラム(m/g)より大、詳しくは400m/gより大、なお更に詳しくは800m/gより大の表面積も有しうる。導電性カーボンブラックは、40立方センチメートル/100グラム(cm/100g)より大、詳しくは100cm/100gより大、更に詳しくは150cm/100gより大の細孔容積(フタル酸ジブチル吸収)も有しうる。
【0044】
グラファイトも導電性フィラーとして使用することができる。グラファイトは、典型的には層状の六角形構造を取る結晶形の炭素である。グラファイトは、粉末、フレーク、剥離(exfoliated)、膨張(expanded)、及びアモルファス形で市販されている。粉末は、例えば45マイクロメートル〜150マイクロメートルの粒径を有しうる。微粉化粉末は2マイクロメートル以上の粒径を有しうる。グラファイトフレークは50マイクロメートル〜600マイクロメートルのサイズを有しうる。
【0045】
導電性フィラーは一般的に0.25重量%〜60重量%の量で存在する。この範囲内で導電性フィラーは0.5重量%以上、又は更に詳しくは1.0重量%以上の量で存在しうる。同様にこの範囲内で導電性フィラーは40重量%以下、又は更に詳しくは20重量%以下の量で存在しうる。重量パーセントは組成物の総重量に基づく。
【0046】
組成物はさらに、4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤も含む。理論に拘束されるつもりはないが、粒子間電子ホッピングエネルギーは添加剤を含まない組成物と比べて低くなると予想されるので、組成物が獲得できる最大の導電性が増加する。言い方を変えれば、所望の導電性レベルを達成するのに必要な組成物中の導電性フィラーの量が少なくてすむ。さらに、導電性フィラーと添加剤間の相乗効果によって、組成物の機械的性質にはほとんど影響を及ぼさずに導電性の増大がもたらされると考えられる。
【0047】
添加剤は、導電性組成物の導電性を増強するようなものである。適切な添加剤は多環式芳香族化合物及び直鎖共役系などであるが、これらに限定されない。適切な多環式芳香族化合物は、フタロシアニン類、ポルフィリン類、ピレン類、アントラセン類、及び前述の化合物の一つ又は複数を含む組合せなどであるが、これらに限定されない。理論に固執するつもりはないが、組成物への添加剤の添加は、粒子間接触数の増加又は導電性粒子間の電子移動に対する抵抗の低下のいずれかによって導電性を増大させると考えられる。例えば、添加剤は、溶融加工中に融解してポリマーマトリックス中に均一分散し、導電性フィラーにコーティングを形成することもできる。それによって粒子間相互作用が増大し、改良された導電性が機械的性質を劣化させることなくもたらされる。
【0048】
さらに、理論に拘束されるつもりはないが、添加剤のサイズも導電性フィラーとの相乗効果に帰する要因となりうる。具体的には、添加剤は4個以上の共役二重結合を含む。一態様において、これらの少なくとも4個の共役二重結合は炭素−炭素二重結合である。さらに、一態様において、他の多環式芳香族化合物に比べて比較的小さい構造を有する多環式芳香族化合物は、所望レベルの導電性を達成するのに導電性フィラーの添加量を大きく削減することができる。比較的小さい構造は大きい構造に比べてフィラー粒子とのより大きな接触が可能になると考えられる。
【0049】
一態様において、添加剤はフタロシアニンであり得る。これはテトラベンゾポルフィリンのテトラアザ誘導体である。適切なフタロシアニン類は金属中心を持つものでも持たないものでもよい。金属中心を持たない(II)及び金属中心を持つ(III)置換フタロシアニンの構造を以下に示す。
【0050】
【化2】

【0051】
金属中心を持つフタロシアニンの場合、金属中心(M)は、例えば遷移金属、すなわち周期表の3〜12族に入る金属、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ランタンなどであろう。
【0052】
各R、R’、R”及びR’”(まとめて“R基”)は、独立して、水素;ハロゲン原子;酸素原子;硫黄原子;ヒドロキシル基;カルボニル基;スルホニル基;スルフィニル基;アルキレンオキシアルキレン基;ホスホニル基;ホスフィニル基;アミノ基;イミノ基;C〜Cアルキル;C〜Cアルコキシ;アリール;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルキル;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルコキシ;及びC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたアリールのような基であってもよく;又は2個のR基が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に6員の芳香環を形成してもよく、前記芳香環は所望により、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、スルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩によって置換されていてもよい。
【0053】
一態様において、添加剤はポルフィリンであり得る。ポルフィリンは金属中心を持つものでも持たないものでもよい。金属中心を持たない(IV)及び金属中心を持つ(V)置換ポルフィリンの構造を以下に示す。
【0054】
【化3】

【0055】
金属中心を持つポルフィリンの場合、金属中心(M)は、例えば“遷移金属”、すなわち周期表の3〜12族に入る金属、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ランタンなどであろう。
【0056】
各R及びR’(まとめて“R基”)は、水素;ハロゲン原子;酸素原子;硫黄原子;ヒドロキシル基;カルボニル基;スルホニル基;スルフィニル基;アルキレンオキシアルキレン基;ホスホニル基;ホスフィニル基;アミノ基;イミノ基;C〜Cアルキル;C〜Cアルコキシ;アリール;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルキル;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルコキシ;及びC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたアリールのような基から独立して選ばれてもよく;又は2個のR基が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に6員の芳香環を形成してもよく、前記芳香環は所望により、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、スルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩によって置換されていてもよい。
【0057】
一態様において、添加剤はピレンであり得る。置換ピレン(VI)の構造を以下に示す。
【0058】
【化4】

【0059】
各R、R’、R”及びR’”(まとめて“R基”)は、水素;ハロゲン原子;酸素原子;硫黄原子;ヒドロキシル基;カルボニル基;スルホニル基;スルフィニル基;アルキレンオキシアルキレン基;ホスホニル基;ホスフィニル基;アミノ基;イミノ基;C〜Cアルキル;C〜Cアルコキシ;アリール;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルキル;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルコキシ;及びC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩の少なくとも一つによって置換されたアリールのような基から独立して選ばれてもよく;又は2個のR基が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に6員の芳香環を形成してもよく、前記芳香環は所望により、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、スルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩によって置換されていてもよい。
【0060】
一態様において、添加剤はアントラセンであり得る。置換アントラセン(VII)の構造を以下に示す。
【0061】
【化5】

【0062】
各R、R’及びR”(まとめて“R基”)は、水素;ハロゲン原子;酸素原子;硫黄原子;ヒドロキシル基;カルボニル基;スルホニル基;スルフィニル基;アルキレンオキシアルキレン基;ホスホニル基;ホスフィニル基;アミノ基;イミノ基;C〜Cアルキル;C〜Cアルコキシ;アリール;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基の塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルキル;C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基の塩の少なくとも一つによって置換されたC〜Cアルコキシ;及びC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、又はスルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基の塩の少なくとも一つによって置換されたアリールのような基から独立して選ばれてもよく;又は2個のR基が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に6員の芳香環を形成してもよく、前記芳香環は所望により、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、スルホネート、カルボキシレートもしくはホスホネート基のアルカリ金属塩によって置換されていてもよい。
【0063】
4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤は、一般的に0.0025重量%〜5重量%の量で存在する。この範囲内で添加剤は0.05重量%以上、又は更に詳しくは0.1重量%以上の量で存在しうる。同様にこの範囲内で添加剤は3重量%以下、又は更に詳しくは2重量%以下の量で存在しうる。重量パーセントは組成物の総重量に基づく。添加剤の量は、場合によってはフィラーの種類に左右されることもある。例えば、炭素質繊維が使用される場合、必要とされる添加剤の量は導電性カーボンブラックのようなその他のフィラーの場合よりも高くなりうる。理論に拘束されるつもりはないが、添加剤は少なくとも一部が炭素質繊維に吸着されうると考えられる。
【0064】
一態様において、組成物はポリエステルを含む。適切なポリエステルは、式(VIII):
【0065】
【化6】

【0066】
の構造単位を含むものなどである。式中、各Rは独立して、二価の脂肪族、脂環式又は芳香族の炭化水素ラジカル、又はそれらの混合物であり、各Aは独立して、二価の脂肪族、脂環式又は芳香族のラジカル、又はそれらの混合物である。式(VIII)の構造を含む適切なポリエステルの例は、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、及びポリエステルコポリマー、例えばコポリエステルカルボネート及びポリエステルアミドである。また、比較的少量のジエポキシ又はマルチエポキシ化合物で処理されたポリエステルも含まれる。さらに、分枝ポリエステルを使用することも可能である。その場合、分枝ポリエステルには、分枝剤、例えば、3個以上のヒドロキシル基を有するグリコール又は三官能もしくは多官能カルボン酸が組み込まれている。三官能又は多官能エポキシ化合物、例えばトリグリシジルイソシアヌレートによるポリエステルの処理を分枝ポリエステルを製造するのに使用できる。さらに、組成物の最終用途によってはポリエステルに様々な濃度の酸及びヒドロキシ末端基を持たせるのが望ましいこともある。
【0067】
組成物がポリエステルを含む場合、組成物はポリエステル相溶化剤も含む。これは高分子相溶化剤である。本明細書全体で使用されている高分子相溶化剤は、ポリ(アリーレンエーテル)樹脂、ポリエステル樹脂、又はその両者と相互作用する高分子多官能化合物である。この相互作用は化学的(例えばグラフト化)及び/又は物理的(例えば分散相の表面特性への作用)であり得る。相互作用が化学的な場合、相溶化剤はポリ(アリーレンエーテル)樹脂、ポリエステル樹脂、又はその両者と部分的又は完全に反応しうるので、組成物は反応生成物を含む。高分子相溶化剤の使用はポリ(アリーレンエーテル)とポリエステル間の相溶性を改良できる。このことは、衝撃強さ、モールドニットライン強度及び/又は伸びの増強からも明らかなとおりである。
【0068】
適切なポリエステル相溶化剤はエポキシ化合物を含み、ペンダントエポキシ基を持つ構造単位を含むコポリマーなどであるが、これに限定されない。いくつかの態様では、適切な高分子相溶化剤は、ペンダントエポキシ基を含む少なくとも一つのモノマーと少なくとも一つのオレフィン性モノマーから誘導された構造単位を含むコポリマーを含む。ペンダントエポキシ基を含むモノマー由来の含有量は6重量%以上、又は更に詳しくは8重量%以上、又はなお更に詳しくは10重量%以上である。適切な相溶化剤の例示的実例は、グリシジルメタクリレート(GMA)とアルケンとのコポリマー、GMAとアルケン及びアクリル酸エステルとのコポリマー、GMAとアルケン及び酢酸ビニルとのコポリマーなどであるが、これらに限定されない。適切なアルケンは、エチレン、プロピレン、及びエチレンとプロピレンの混合物を含む。適切なアクリル酸エステルはアルキルアクリレートモノマーで、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、及び前述のアルキルアクリレートモノマーの組合せなどであるが、これらに限定されない。前記アクリル酸エステルは、存在する場合、コポリマーに使用されるモノマーの総量を基準にして15重量%〜35重量%の量で使用できる。酢酸ビニルは、存在する場合、コポリマーに使用されるモノマーの総量を基準にして4重量%〜10重量%の量で使用できる。適切な相溶化剤の例示的実例は、エチレン−グリシジルアクリレートコポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレート−アルキルアクリレートコポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチルコポリマー、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸エチルコポリマー、及びエチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸ブチルコポリマーを含む。
【0069】
適切な高分子相溶化剤は商業的供給源から入手可能である。例えば、Sumitomo Chemical Co.,Ltd.の商標BONDFAST 2C(IGETABOND 2Cとしても知られる;これは94重量%のエチレン、及び6重量%のグリシジルメタクリレートから誘導された構造単位を含むコポリマー);BONDFAST E(IGETABOND Eとしても知られる;これは88重量%のエチレン、及び12重量%のグリシジルメタクリレートから誘導された構造単位を含むコポリマー);IGETABOND 2B、7B、及び20B(これは83重量%のエチレン、5重量%の酢酸ビニル、及び12重量%のグリシジルメタクリレートから誘導された構造単位を含むコポリマー);IGETABOND 7M及び20M(これは64重量%のエチレン、30重量%のアクリル酸メチル、及び6重量%のグリシジルメタクリレートから誘導された構造単位を含むコポリマー);及びAtofinaの商標LOTADER 8840(これは92重量%のエチレン、及び8重量%のグリシジルメタクリレートから誘導された構造単位を含むコポリマー);及びLOTADER 8900(これは67重量%のエチレン、25重量%のアクリル酸メチル、及び8重量%のグリシジルメタクリレートから誘導された構造単位を含むコポリマー)。前述の相溶化剤の混合物も使用できる。一態様において、相溶化剤は、最終樹脂組成物の加工温度で実質的に安定である。
【0070】
様々な態様において、組成物は有効量の少なくとも一つの二次添加剤、例えば抗酸化剤、難燃剤、ドリップ防止剤(drip retardant)、染料、顔料、着色剤、安定剤、小粒子鉱物のフィラー、例えば粘土、雲母、及びタルク、帯電防止剤、可塑剤、滑沢剤、ガラス繊維(ロング、チョップト(chopped)又はミルド(milled))、及び前述の少なくとも一つを含む組合せを含むこともできる。これらの二次添加剤は当該技術分野で周知である。それらの有効量及び配合法も周知である。二次添加剤の有効量は広く変動するが、組成物の総重量の60重量%以上までの総量で存在しうる。一般に、抗酸化剤、難燃剤、ドリップ防止剤、染料、顔料、着色剤、安定剤、帯電防止剤、可塑剤、滑沢剤などの二次添加剤は、組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%の量で存在し、小粒子鉱物のフィラー及びガラス繊維は、組成物の総重量の1重量%〜60重量%を含む。
【0071】
一態様において、特定の補強フィラーは、粘土、雲母、タルク、ガラス繊維(アミノシラン被覆(直径6マイクロメートル、長さ10〜12ミリメートル)、炭素繊維(直径6マイクロメートル、長さ6〜8ミリメートル)、又は前述の少なくとも一つを含む組合せなどである。これらのフィラーは、2重量%〜20重量%、詳しくは4重量%〜15重量%の量で存在する。ここで重量パーセントは組成物の総重量に基づく。組成物は溶融混合又はドライブレンディングと溶融混合の組合せによって製造できる。溶融混合は、一軸又は二軸スクリュー型押出機又は成分に剪断力を印加できる類似の混合装置中で実施することができる。
【0072】
全成分とも最初に加工システムに添加することができる。一部の態様においては、ポリ(アリーレンエーテル)を相溶化剤と予備配合することもできる。さらに、耐衝撃性改良剤、添加剤、及びポリアミドの一部のようなその他の成分を相溶化剤及びポリ(アリーレンエーテル)と予備配合することもできる。一態様では、ポリ(アリーレンエーテル)を相溶化剤と予備配合して官能化ポリ(アリーレンエーテル)を形成させる。次に、該官能化ポリ(アリーレンエーテル)を他の成分と配合する。別の態様では、ポリ(アリーレンエーテル)、相溶化剤、耐衝撃性改良剤、所望による添加剤を配合して第一の材料を形成させ、次にポリアミドを第一の材料に配合する。
【0073】
押出機を使用する場合、すべて又は一部のポリアミドはポリ(アリーレンエーテル)の融解後、例えば下流のポートを通じて添加できる。加工には別個の押出機を使用してもよいが、様々な成分の添加ができるように押出機の縦方向に沿って複数の供給ポートを有する単一の押出機での製造が工程を簡素化する。押出機の一つ又は複数のガス抜きポートを通じて溶融物を減圧し、組成物中の揮発性不純物を除去するのが好都合なことが多い。
【0074】
導電性フィラーは、単独で、又はその他の成分と一緒に(所望によりドライブレンドとして)又はマスターバッチの一部として添加することができる。一態様において、導電性フィラーはポリアミドを含むマスターバッチの一部であり得る。導電性フィラー(独立して又はマスターバッチとして)は、ポリ(アリーレンエーテル)と共に、ポリアミド(2分割方式を採用する場合、第二の部分)と共に、又はポリアミド(2分割方式を採用する場合、第二の部分)の添加後に添加できる。
【0075】
一態様において、組成物は、ポリ(アリーレンエーテル);ポリアミド;導電性フィラー;相溶化剤;及び耐衝撃性改良剤の反応生成物を含む。本明細書中で使用している反応生成物とは、組成物の形成に使用される条件下、例えば配合中又は高剪断混合中の前述の二つ以上の成分の反応に由来する生成物と定義される。
【0076】
一態様において、組成物は、30重量%〜38重量%のポリ(アリーレンエーテル);45重量%〜55重量%のポリアミド;10重量%〜15重量%の耐衝撃性改良剤;0.5重量%〜2重量%の導電性フィラー;及び0.0025重量%〜2重量%の、4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤を含む。ここで重量パーセントは組成物の総重量に基づく。
【0077】
組成物は溶融混合後、典型的にはストランド(紐)に成形され、これを切断してペレットにする。ストランド径及びペレット長は、典型的には微粉(体積がペレットの50%以下の粒子)の製造を防止又は削減し、その後の異形押出のような加工において最大効率が得られるように選ばれる。ペレット長の例は1〜5ミリメートルであり、ペレット径の例は1〜5ミリメートルである。
【0078】
ペレットは吸湿性を示しうる。ひとたび水を吸収すると除去するのは困難であろう。典型的には乾燥が行われるが、長時間の乾燥は組成物の性能に影響を及ぼしかねない。同様に、0.01〜0.1重量%、又は更に詳しくは0.02〜0.07重量%を超える水分は、一部の用途で組成物の使用を妨げ得る。大気中の水分から組成物を保護するのが好都合である。一態様では、ペレットを50℃〜110℃の温度に冷却したら、金属層を含まない単層のポリプロピレン樹脂を含む容器に包装する。該容器の壁厚は0.25ミリメートル〜0.60ミリメートルである。また、ペレットを50℃〜110℃に冷却したら、ホイルで内張りした箱及びバッグのような、ホイルで内張りした容器に包装することもできる。
【0079】
組成物は、フィルム及びシート押出、異形押出、押出成形、圧縮成形及びブロー成形のような低剪断熱可塑性プロセスを用いて製品に変換できる。フィルム及びシート押出プロセスは、メルトキャスティング、インフレートフィルム押出及びカレンダリングなどでありうるが、これらに限定されない。同時押出及びラミネーションプロセスも、複合多層フィルム又はシートを形成するのに使用できる。単層又は多層の基材にさらに単層又は多層のコーティングを施して、耐引掻性、紫外線耐性、及び美的アピールといった追加の性質を付与することもできる。コーティングは、ローリング、スプレー、浸漬、ブラッシング、又はフローコーティングのような標準的塗布技術によって適用できる。
【0080】
延伸フィルムは、インフレートフィルム押出によって、又はキャストフィルムもしくは圧延フィルムを熱変形温度付近で従来の延伸技術を用いて延伸することによって製造できる。例えば、多軸同時延伸の場合、放射状延伸パントグラフ(radial stretching pantograph)が使用でき;平面のx−y方向における同時又は逐次延伸にはx−y方向延伸パントグラフが使用できる。逐次一軸延伸セクションを備えた装置を用いて一軸及び二軸延伸を達成することもできる。例えば、縦方向の延伸に関しては差速ロールのセクション、横方向の延伸に関しては幅出機のセクションを備えた機械などである。
【0081】
組成物は多層シートに変換することもできる。多層シートは、第一の側と第二の側を有する第一のシート(第一のシートは熱可塑性ポリマーを含み、第一のシートの第一の側は、複数のリブの第一の側の上に配置される)と;第一の側と第二の側を有する第二のシート(第二のシートは熱可塑性ポリマーを含み、第二のシートの第一の側は、複数のリブの第二の側の上に配置される)とを含み、複数のリブの第一の側は複数のリブの第二の側と対向している。
【0082】
上記のフィルム及びシートは、二次成形(forming)及び一次成形(molding)プロセスによって熱可塑的に加工して造形品にすることもできる。例えば、熱成形、真空成形、圧力成形、射出成形及び圧縮成形などであるが、これらに限定されない。多層造形品は、以下に記載のように、熱可塑性樹脂を単層又は多層フィルム又はシートの基材上に射出成形することによって形成することもできる。
1.単層又は多層熱可塑性基材を用意する。該基材は所望により例えばスクリーン印刷又はトランスファー染料を用いて表面に一つ又は複数の色を有していてもよい。
2.基材を金型の形状に合わせる。例えば基材を成形及びトリミングすることによって三次元の形状にし、基材の三次元形状と合致する表面を有する金型に基材を嵌め込む。
3.熱可塑性樹脂を基材背後の金型キャビティに射出し、(i)一体化された永久接着三次元製品を製造するか、又は(ii)印刷付きの基材から射出樹脂に模様又は美的効果を移し、該印刷付き基材を除去することによって成形樹脂に美的効果を付与する。
【0083】
当業者には分かる通り、通常の硬化及び表面改質プロセス、例えばヒートセット、テクスチャリング、型押し、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び真空蒸着(これらに限定されない)を上記製品にさらに適用して、表面の外観を変更したり製品に追加の機能を付与したりすることもできる。
【0084】
そこで、別の態様は上記組成物から製造される製品、シート及びフィルムに関する。
製品例としては下記製品の全体又は一部分などである。すなわち、家具、間仕切り、コンテナ、鉄道車両、地下鉄車両、バス、トロリー車、飛行機、自動車、及びRV車(レクリエーショナル・ビークル)などの乗物の内装、ルーフレールのような車外アクセサリ、電化製品、調理器具、エレクトロニクス、分析装置、窓枠、電線導管、フローリング、幼児用家具及び設備、通信機器、エレクトロニクス機器及び部品用帯電防止包装、病院ベッド及び歯科椅子などの医療用品、運動器具、モーターカバー、ディスプレイカバー、事務機器用部品及びカバー、照明カバー、標識、空気処理装置及びカバー、自動車アンダーフード部品。
【0085】
以下の非制限的実施例で本明細書中に記載された様々な態様をさらに説明する。
[実施例]
組成物の成分とそれらの供給業者のリストは表1に示した。実施例中のすべての組成物は標準的安定剤を含んでいた。表3〜7に示した量は組成物の総重量に対する重量パーセントである。材料の性質を調べるために使用した試験法は表2にまとめてある。
【0086】
以下に記載の組成物は二軸スクリュー押出機で溶融混合した。押出機はバレル温度を270℃〜310℃にセットした。材料は10キログラム/時間(kg/hr)〜20kg/hrで送り、スクリューの回転は400回転/分(rpm)〜800rpmであった。4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤は、PAE混合物と共にメインフィードに添加するか、又は下流でポリアミドと共にマスターバッチの形態で添加するか、又はさらには導電性フィラーと混合して押出機のさらに下流 (down-down stream) から粉末形で添加するのいずれかであった。
【0087】
体積抵抗率(SVR)は以下のようにして決定した。引張試験片はISO 3167に準じて成形した。鋭く浅い切れ目を試験片の狭い中央部分の各端付近に入れた。試験片を各切れ目で脆性破壊し、狭い中央部分を分離した。これで10mm×4mmの寸法を有する破断端ができた。脆性破壊を得る必要があれば、引張試験片をまず、例えば−40℃の冷蔵庫内でドライアイス又は液体窒素に入れて冷却した。破断端間の試験片の長さを測定した。サンプルの破断端を導電性の銀塗料でペイントし、塗料を乾燥させた。Fluke 187、True RMS Multimeterのようなマルチメータを抵抗モードで使用し、電極を各塗装表面に取り付け、抵抗を印加電圧500ミリボルト〜1000ミリボルトで測定した。体積抵抗率は、測定された抵抗に試験片の片側の破断面積を掛け、長さで割ることによって得た。すなわち、
ρ=R×A/L
である。式中、ρはオーム−cmで表された体積抵抗率、Rはオームで表された、測定された抵抗、Aは平方センチメートル(cm)で表された破断面積、そしてLはセンチメートル(cm)で表されたサンプル長である。体積抵抗率の値はオーム.cmの単位を持つ。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
表3から分かる通り、ピレンの量が増加すると(実施例1、実施例3、及び実施例5)、SVRは減少するのにノッチ付アイゾッド強さはほぼ一定を保ち、導電性がノッチ付アイゾッド強さを犠牲にせずに増大できたことを示している。さらに、実施例2〜5のSVR値は、比較例1(有意に多量の導電性フィラーを有する)のSVR値に近づき始めているが、実施例1〜5のノッチ付アイゾッド値は比較例1のノッチ付アイゾッド値よりも著しく高い。
【0093】
【表5】

【0094】
表4から分かる通り、4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤を添加する相乗効果はピレンに限ったものではなかった。それどころか、メチレンブルー、アントラセン、フタロシアニン、ペリレン二無水物、C.I.ソルベントオレンジ60、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントグリーン3、及びC.I.ソルベントオレンジ63を含む組成物も、実施例1〜5に匹敵するSVR及びノッチ付アイゾッド値を示している。比較例3は400℃を超える融点を有する添加剤を使用している。比較例3は、400℃未満の融点を有する添加剤をほぼ同程度の量含む組成物より高い導電性(低抵抗率)を示すが、衝撃強さ(ノッチ付アイゾッド)は低い。
【0095】
【表6】

【0096】
表5から分かる通り、ピレンを含む組成物は、ピレンを含まない組成物のSVR及びノッチ付アイゾッド値と類似したSVR及びノッチ付アイゾッド値を有している。しかしながら、これらのフィラーと共にピレンも加えると線膨張率(CTE)にわずかな増加が認められた。さらに、SVR値は実質的に少ないカーボンブラックを用いて達成されている。
【0097】
【表7】

【0098】
表6に示した実施例から分かる通り、ポリ(アリーレンエーテル)の混合物を用いた場合も類似の結果が得られている。
【0099】
【表8】

【0100】
表7ではピレンの添加位置を変えた。
本発明を例示的態様を参照しながら記載してきたが、当業者であれば様々な変更が可能であること及び本発明の範囲から離れることなく構成要素を等価物で置換できることは理解されるであろう。さらに、特別の状況又は材料を本発明の教示に本発明の範囲内で適応させるために、多くの変更を実施することができる。従って、本発明は、本発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特別の態様に限定されず、本発明は添付の特許請求の範囲内に入るすべての態様も含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリーレンエーテル)と;
ポリアミドと;
耐衝撃性改良剤と;
導電性フィラーと;そして
4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤と;
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
共役二重結合が炭素−炭素結合である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
添加剤が、フタロシアニン類、ポルフィリン類、ピレン類、アントラセン類、C.I.ソルベントオレンジ63、C.I.ソルベントグリーン3、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントオレンジ60、ペリレン二無水物、及び前述の化合物の一つ又は複数を含む組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
添加剤がピレンである、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
添加剤が、樹脂の総重量を基準にして0.0025重量パーセント〜5重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアミドが、ナイロン−6;ナイロン−6,6;及び前述の組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
組成物が、10オーム−cm以下の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
体積抵抗率が10オーム−cm以下である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
体積抵抗率が10オーム−cm以下である、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂組成物が、室温で17kJ/m以上のノッチ付アイゾッド衝撃強さを有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂組成物が、室温で25kJ/m以上のノッチ付アイゾッド衝撃強さを有する、請求項10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
組成物が、3×10−5mm/mm/℃〜10×10−5mm/mm/℃の熱膨張率(CTE)を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
組成物が、6g/10分以上のメルトインデックスを有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物から製造される製品。
【請求項15】
30重量パーセント〜38重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)と;
45重量パーセント〜55重量パーセントのポリアミドと;
10重量パーセント〜15重量パーセントの耐衝撃性改良剤と;
0.5重量パーセント〜2重量パーセントの導電性フィラーと;そして
0.0025重量パーセント〜2重量パーセントの、4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤と;
を含み、さらに重量パーセントは組成物の総重量に対してである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
2重量%〜20重量%の補強フィラーをさらに含む、請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物から製造される製品。
【請求項18】
ポリ(アリーレンエーテル)と;
ポリアミドと;
耐衝撃性改良剤と;
導電性フィラーと;
相溶化剤と;そして
4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤と;
の反応生成物を含む組成物。
【請求項19】
樹脂組成物の製造法であって、
ポリ(アリーレンエーテル)、耐衝撃性改良剤及び相溶化剤を含む組成物を溶融混合して第一のブレンドを形成させ;
第一のブレンドを、ポリアミドを含む混合物と溶融混合して第二のブレンドを形成させ;そして
第二のブレンドを、導電性フィラーと4個以上の共役二重結合及び400℃以下の融点を有する添加剤とを含む混合物と溶融混合する
ことを含む、上記方法。
【請求項20】
添加剤が、フタロシアニン類、ポルフィリン類、ピレン類、アントラセン類、及び前述の化合物の一つ又は複数を含む組合せからなる群から選ばれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
添加剤がピレンである、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2009−518463(P2009−518463A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543456(P2008−543456)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045836
【国際公開番号】WO2007/064791
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】