説明

導電性ローラとそれを用いた電子写真装置

【課題】柔軟性に優れるととともに前記柔軟性が周方向の全周に亘ってほぼ一定であるローラ本体を備え、例えば転写ローラとして使用した際に紙の表面に形成される画像に、特に低温条件下でムラ等を生じるおそれがない導電性ローラと、前記導電性ローラを転写ローラ等として組み込んだ電子写真装置とを提供する。
【解決手段】導電性ローラ1は、外周面6を構成する外筒体7と、通孔3を有する内筒体8とを備えたローラ本体2の、前記両筒体間を、前記両者間を繋ぐ複数の連結部9によって隔てることで複数の中空部10を設けるとともに、前記連結部9を、前記両筒体7、8の中心軸Lを通る一平面Pと交差させて配設することで、前記連結部9によって隔てられた隣り合う中空部10を、前記平面P上で径方向内方と外方にオーバーラップさせた。電子写真装置は、前記導電性ローラを組み込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザープリンタ等の電子写真装置に組み込んで、前記電子写真装置の感光体または像担持体の表面に形成されたトナー像を紙(プラスチックフィルム等を含む、以下同様)の表面に転写する転写ローラ等として用いる導電性ローラと、前記導電性ローラを転写ローラとして組み込んだ電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の電子写真装置においては、感光体の表面を一様に帯電させた状態で露光して、前記表面に形成画像に対応する静電潜像を形成し(帯電工程→露光工程)、前記静電潜像を、あらかじめ帯電させたトナーを選択的に付着させることでトナー像に現像したのち(現像工程)、前記トナー像を紙の表面に転写し(転写工程)、さらに定着させることにより(定着工程)、前記紙の表面に画像が形成される。
【0003】
また前記転写工程では、感光体の表面に形成したトナー像を紙の表面に直接に転写させる場合だけでなく、一旦像担持体の表面に転写させたのち紙の表面に再転写させる場合もある。
前記各工程のうち帯電工程、現像工程のうちトナーの帯電過程、および静電潜像への付着過程、転写工程、さらにはトナー像を紙の表面に転写後、感光体や像担持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング工程等において、導電性ないし半導電性を有するローラ(以下「導電性ローラ」と総称する場合がある)が広く用いられている。
【0004】
例えば前記感光体または像担持体と、転写ローラとしての導電性ローラとの間に所定の電圧を印加した状態で両者間に紙を通紙させることにより、前記感光体または像担持体の表面に形成されたトナー像を、転写ローラとの間の静電気力によって紙の表面に転写させて、前記紙の表面に画像を形成することができる。
前記転写ローラとして、従来は、架橋(加硫)されたゴムの多孔質体からなり、前記ゴム中に導電性カーボン等の電子導電性を有する充填剤を配合したり、ゴムそれ自体としてイオン導電性を有するゴムを用いたりして導電性を付与したローラ本体の中心にシャフトを挿通したもの等が用いられてきた。また近年では、前記加硫ゴムに代えてリサイクル等が容易な熱可塑性エラストマ組成物を用いてローラ本体を形成することも検討されている。
【0005】
前記転写ローラのローラ本体には、感光体や像担持体の表面に接触させた際に、その接触圧によって径方向に良好に圧縮変形されて、前記感光体または像担持体の表面に対して紙を挟んで所定のニップ幅でもって接触できる柔軟性が求められる。これにより、感光体や像担持体の表面に紙を隙間なく接触させることができ、トナー像を、前記感光体または像担持体の表面から紙の表面に良好に転写させることができる。
【0006】
しかし、特に熱可塑性エラストマ組成物からなる非多孔質のローラ本体は、加硫ゴムの多孔質体からなるもの等に比べて柔軟性が不足しがちである。
特許文献1〜4には、前記加硫ゴムや熱可塑性エラストマ組成物等の弾性材料からなるローラ本体の内部に、前記ローラ本体の中心に挿通されるシャフトを囲むように、前記シャフトおよびローラ本体の軸方向に沿う複数の中空部を設けることが記載されている。
【0007】
かかる構成によれば、熱可塑性エラストマ組成物からなる非多孔質のローラ本体であっても、その柔軟性を向上できるものと考えられる。すなわち、感光体や像担持体との接触によって圧力が加えられた際には、前記中空部が押し潰されるように変形されて、ローラ本体の外周面が、感光体や像担持体の表面に沿うように径方向内方へ圧縮変形されるのを補助する働きをするため、前記ローラ本体の柔軟性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−28868号公報
【特許文献2】特開平10−299762号公報
【特許文献3】特開2008−139691号公報
【特許文献4】特開2008−298855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし導電性ローラの構造上、前記中空部を、シャフトの周囲の全周に渡って連続して形成することはできない。すなわちローラ本体とシャフトとをそれぞれの中心軸を一致させた状態で一体的に形成するためには、前記ローラ本体の周方向の複数箇所に中実状の領域を設けなければならない。
前記中実状の領域は、前記各特許文献に記載されているように、前記シャフトの中心軸を通る一平面に沿って、前記シャフトの外周面からローラ本体の外周面に達するように配設するのが一般的である。
【0010】
しかし前記従来の導電性ローラでは、前記中実状の部分に対応する領域と、それ以外の中空部を含む領域とでローラ本体の柔軟性に差が生じる。その結果、前記導電性ローラを転写ローラとして使用した際には、前記両領域間で感光体や像担持体との接触状態(接触圧、ニップ幅等)に変動を生じて、紙の表面に形成された画像に、前記変動に伴うムラが発生するおそれがある。特に熱可塑性エラストマ組成物の柔軟性が低下する低温条件下において前記ムラが発生しやすい。
【0011】
本発明の目的は、柔軟性に優れるととともに前記柔軟性が周方向の全周に亘ってほぼ一定であるローラ本体を備え、例えば転写ローラとして使用した際に紙の表面に形成される画像に、特に低温条件下でムラ等を生じるおそれがない導電性ローラと、前記導電性ローラを転写ローラ等として組み込んだ電子写真装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、外周面を構成する外筒体と、前記外筒体内に同芯状に配設された、外径が前記外筒体の内径よりも小さい内筒体と、前記内筒体の外周から外筒体の内周に達する複数の板状の連結部とを、導電性が付与された熱可塑性エラストマ組成物によって一体に形成してなり、前記内筒体の外周と外筒体の内周との間に、前記連結部によって隔てられて複数の中空部が設けられたローラ本体を含む導電性ローラであって、前記ローラ本体の軸方向と直交方向の断面において、個々の連結部は、前記連結部によって隔てられた隣り合う中空部が、前記外筒体および内筒体の中心軸を通る一平面上で径方向内方と外方にオーバーラップするように、前記一平面と交差させて配設されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、ローラ本体の内部に設けた中空部の機能によって、前記ローラ本体の全体としての柔軟性を高めることができる。
しかも本発明では、前記のように個々の中空部を隔てる連結部を前記一平面と交差させて配設することで、前記連結部によって隔てられた隣り合う中空部を、前記一平面上で径方向内方と外方にオーバーラップさせることができる。そのためローラ本体は、その全周に亘って必ず中空部が存在することになり、前記中空部の作用によってローラ本体の全体での柔軟性を周方向の全周に亘ってほぼ一定にすることもできる。
【0014】
前記ローラ本体を形成する熱可塑性エラストマ組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクス中に、
ジエン系ゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム分の架橋物と、
イオン導電性樹脂型帯電防止剤と
を分散させることで導電性が付与されているのが好ましい。
【0015】
これにより、前記の複雑な形状を有するローラ本体を、押出成形等によって容易に、生産性良く製造することができる。また形成したローラ本体のリサイクル性を向上することもできる。
前記イオン導電性樹脂型帯電防止剤は、少なくともイオン導電性エラストマと、イオン導電性塩とを含んでいるのが好ましい。
【0016】
これによりローラ本体の全体に均一な導電性を付与することができる。
本発明は、前記本発明の導電性ローラを備えることを特徴とする電子写真装置であり、前記導電性ローラの機能によって、紙の表面に、特に低温条件下でムラ等のない良好な画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柔軟性に優れるととともに前記柔軟性が周方向の全周に亘ってほぼ一定であるローラ本体を備え、例えば転写ローラとして使用した際に紙の表面に形成される画像に、特に低温条件下でムラ等を生じるおそれがない導電性ローラと、前記導電性ローラを転写ローラ等として組み込んだ電子写真装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の導電性ローラの、実施の形態の一例の全体を示す斜視図である。
【図2】図1の例の導電性ローラのうちローラ本体の断面図である。
【図3】前記ローラ本体の一部を拡大した断面図である。
【図4】前記ローラ本体を、押出成形によって形成するために用いるダイの口金を示す斜視図である。
【図5】図4の口金を有するダイを用いて前記ローラ本体を押出成形によって形成する一工程を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈熱可塑性エラストマ組成物〉
本発明の導電性ローラのローラ本体は、先に説明したようにスチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクス中に、
ジエン系ゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム分の架橋物と、
イオン導電性樹脂型帯電防止剤と
を分散させることで導電性が付与された熱可塑性エラストマ組成物によって形成するのが好ましい。
【0020】
前記熱可塑性エラストマ組成物は、例えば樹脂マトリクスと未架橋のゴム分とを含む混合物を加熱しながら混練してゴム分を架橋させる動的架橋によって、前記樹脂マトリクス中にゴム分の架橋物を分散させたのち、イオン導電性樹脂型帯電防止剤を配合する等して調製できる。
前記のうちスチレン系熱可塑性エラストマとしては、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマが好ましい。前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマは、水素添加によって二重結合が飽和されているため低硬度で柔軟性に優れる上、耐久性にも優れている。そのためヘタリ等が生じるのを有効に抑制でき、ローラ本体の、ひいては導電性ローラの耐久性を向上できる。
【0021】
また、前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマは二重結合を含まないため、ゴム分を動的架橋させる際に前記架橋を阻害するおそれがない上、自身は架橋されないため、動的架橋後の熱可塑性エラストマ組成物に所望の可塑性と柔軟性とを付与できる。
前記水素添加スチレン系熱可塑性エラストマとしては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、およびスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)からなる群より選ばれた少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマの水素添加物が好ましい。特にSEEPSの水素添加物が好ましい。
【0022】
ポリプロピレンは、熱可塑性エラストマ組成物の、押出成形時の加工性を向上する働きをする。前記ポリプロピレンとしては、プロピレンのみを重合させたホモポリマタイプの他、前記ホモポリマタイプのポリプロピレンの低温脆性等を改善するためにエチレン等の他のオレフィンを若干量、共重合させたランダムもしくはブロックコポリマタイプ等の種々のポリプロピレンの1種または2種以上が挙げられる。
【0023】
ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)等が挙げられる。またエチレンプロピレンゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)等が挙げられる。ゴム分としては前記ゴムのいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0024】
特にEPDMが好ましい。EPDMは、主鎖が飽和炭化水素からなり二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、紫外線を含む光照射等の環境下に長時間曝されても主鎖の切断が起こりにくい。そのためローラ本体の耐オゾン性、耐紫外線性、耐熱性等を向上できる。EPDMは単独で用いるのが好ましいが、EPDMと他のゴム分とを併用してもよく、その場合にはゴム分の全体に占めるEPDMの割合が50質量%以上、特に80質量%以上であるのが好ましい。
【0025】
前記のようにゴム分を動的架橋させる場合、前記ゴム分とマトリクス樹脂との混合物には、ゴム分を架橋させるための架橋剤を配合する。架橋剤としては樹脂架橋剤が好ましい。
樹脂架橋剤は、加熱等によってゴム分に架橋反応を起こさせることができる合成樹脂であり、通常の硫黄架橋系(硫黄と加硫促進剤等との併用系)のようにブルームを生じない上、架橋後のゴム分の圧縮永久ひずみや機械的特性の低下を小さくでき、耐久性を向上できるといった利点を有している。
【0026】
また樹脂架橋剤によれば、硫黄架橋系に比べて架橋時間を短くできる。そのため、例えばゴム分を含む各成分の混合物を押出機内で加熱しながら混練して動的架橋させる際に、前記押出機内に滞留している短い時間内で動的架橋を十分に進行させることができる。
樹脂架橋剤としてはフェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、およびヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、特にフェノール樹脂が好ましい。
【0027】
またフェノール樹脂としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノールもしくはレゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドもしくはフルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂を用いることもできる。
【0028】
特にベンゼンのオルト位またはパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールとホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴム分との相溶性に優れるとともに反応性に富み、架橋反応の開始時間を比較的早くできるため好ましい。
アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基としては炭素数が1〜10のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基が好ましい。またアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のハロゲン化物も好適に用いられる。
【0029】
さらに硫化−p−tert−ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。
また動的架橋を適切に行なうため、前記樹脂マトリクスとゴム分との混合物には架橋助剤(架橋活性剤)を配合してもよい。架橋助剤としては金属化合物、例えば酸化亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられ、特に酸化亜鉛(亜鉛華)が好ましい。
【0030】
また前記混合物には軟化剤を配合してもよい。軟化剤は、ゴム分を動的架橋させる際に混合物を混練しやすくして、前記ゴム分の架橋物を樹脂マトリクス中により微細かつ均一に分散させる働きをするとともに、ローラ本体の柔軟性を高める働きをする。
前記軟化剤としてはオイルや可塑剤が好ましい。このうちオイルとしては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油、炭化水素系オリゴマーからなる合成油、およびプロセスオイルからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。また合成油としては、例えばα−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、およびエチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0031】
また可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート、およびジオクチルアジペートからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
特にパラフィン系オイルが好ましく、前記パラフィン系オイルとしては鉱物油(原油)から精製され、基油がパラフィン系である種々のパラフィン系オイルがいずれも使用可能である。
【0032】
イオン導電性樹脂型帯電防止剤を構成するイオン導電性エラストマとしては、少なくともポリエーテルを含むブロック共重合体、具体的にはエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(以下「EO−PO共重合体」と略記する場合がある)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(以下「EO−PO−AGE共重合体」と略記する場合がある)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0033】
前記共重合体は、分子中に含まれるエチレンオキサイド(EO)単位やプロピレンオキサイド(PO)単位、特にEO単位の機能によってイオン導電性塩由来のイオンを安定化させてローラ本体に良好なイオン導電性を付与し、電気抵抗値を低減させる働きをする。
前記EO−PO共重合体は、EO単位の含有率が55モル%以上、特に65モル%以上であるのが好ましく、95モル%以下、特に92モル%以下であるのが好ましい。
【0034】
EO単位の含有率が前記範囲未満では、前記EO単位の機能によってイオン導電性塩由来のイオンを安定化させてローラ本体に良好なイオン導電性を付与する効果が十分に得られないおそれがある。また含有率が前記範囲を超える場合にはEO単位が結晶化しやすくなるため、やはりイオン導電性塩由来のイオンを安定化させてローラ本体に良好なイオン導電性を付与する効果が十分に得られないおそれがある。
【0035】
またEO−PO−AGE共重合体は、EO単位の含有率が55モル%以上、特に65モル%以上であるのが好ましく、95モル%以下、特に92モル%以下であるのが好ましい。
EO単位の含有率が前記範囲未満では、前記EO単位の機能によってイオン導電性塩由来のイオンを安定化させてローラ本体に良好なイオン導電性を付与する効果が十分に得られないおそれがある。また含有率が前記範囲を超える場合にはEO単位が結晶化しやすくなるため、やはりイオン導電性塩由来のイオンを安定化させてローラ本体に良好なイオン導電性を付与する効果が十分に得られないおそれがある。
【0036】
また前記EO−PO−AGE共重合体は、後述する過酸化物架橋剤によって架橋反応させる際に架橋性官能基として機能するアリル基を含むアリルグリシジルエーテル(AGE)単位の含有率が1モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に8モル%以下であるのが好ましい。
AGE単位の含有率が前記範囲未満ではEO−PO−AGE共重合体を良好に架橋させることができず、未架橋の、あるいは架橋が十分でない前記共重合体がローラ本体の表面にブリードまたはブルームしたり、前記ブリードやブルームに伴ってイオン導電性塩がローラ本体の表面にブルームしたりブリードしたりしやすくなり、感光体やトナー等を汚染するおそれがある。
【0037】
また、含有率が前記範囲を超える場合には架橋密度が高くなりすぎるため、EO−PO−AGE共重合体の引張強さや疲労特性、耐屈曲疲労性等が低下するおそれがある。
EO−PO共重合体、EO−PO−AGE共重合体の数平均分子量Mnは、いずれも10000以上、特に50000以上であるのが好ましい。数平均分子量Mnが前記範囲未満では、前記共重合体がローラ本体の表面にブリードしたりブルームしたり、前記ブリードやブルームに伴ってイオン導電性塩がローラ本体の表面にブルームしたりブリードしたりしやすくなり、感光体やトナー等を汚染するおそれがある。
【0038】
イオン導電性塩としては、ローラ本体に良好なイオン導電性を付与する効果の点で、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンと、陽イオンとの塩が好ましい。
このうちフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、例えばフルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等が挙げられる。
【0039】
また陽イオンとしてはナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属のイオンや、あるいはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の第2族元素のイオン、遷移元素のイオン、両性元素の陽イオン、第4級アンモニウムイオン、イミダゾリウム陽イオン等が挙げられる。特にリチウムイオンと組み合わせたリチウム塩が好ましい。
【0040】
リチウム塩としては、CFSOLi、CSOLi、(CFSONLi、(CSONLi、(CSO)(CFSO)NLi、(FSO)(CFSO)NLi、(C17SO)(CFSO)NLi、(CFCHOSONLi、(CFCFCHOSONLi、(HCFCFCHOSONLi、〔(CFCHOSONLi、(CFSOCLi、および(CFCHOSOCLiからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0041】
中でもローラ本体に良好なイオン導電性を付与する効果の点で、CFSOLi(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、(CFSONLi〔ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム〕が好ましく、特にトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましい。
イオン導電性塩は、あらかじめイオン導電性エラストマ中に分散させたイオン導電性樹脂型帯電防止剤の状態で、ゴム分の架橋物を分散させた樹脂マトリクス中に配合される。これにより前記イオン導電性塩を、イオン導電性エラストマ中に良好に偏在させた状態で、樹脂マトリクス中に微細に分散させることができる。
【0042】
そのためローラ本体のイオン導電性をさらに向上できる上、例えば導電性ローラに電界をかけつづける等してもイオン導電性塩がローラ本体の表面に移動するのを抑制して、前記イオン導電性塩のブルームにより感光体やトナーが汚染されるのを防止できる。
前記樹脂マトリクスとイオン導電性樹脂型帯電防止剤との配合物には、さらに相溶化剤を配合してもよい。
【0043】
相溶化剤は、イオン導電性エラストマを樹脂マトリクス中に微細に分散させるとともに、イオン導電性塩を、前記イオン導電性エラストマとの良好な親和性に基づいて前記イオン導電性エラストマ中に偏在させた状態で樹脂マトリクス中にさらに微細に分散させる働きをする。
前記相溶化剤としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、およびエチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0044】
前記エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、および/またはエチレン−アクリル酸エステル−グリシジルメタクリレート共重合体は、アクリル酸エステル単位の含有率が0.1質量%以上、中でも1質量%以上、特に3質量%以上であるのが好ましく、30質量%以下、中でも20質量%以下、特に15質量%以下であるのが好ましい。無水マレイン酸単位の含有率は0.05質量%以上、中でも0.1質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、20質量%以下、中でも15質量%以下、特に10質量%以下であるのが好ましい。またグリシジルメタクリレート単位の含有率は0.05質量%以上、中でも0.1質量%以上、特に1質量%以上であるのが好ましく、20質量%以下、中でも15質量%以下、特に10質量%以下であるのが好ましい。
【0045】
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の1種または2種以上が挙げられる。
前記配合物には、さらに過酸化物架橋剤を配合してもよい。
【0046】
過酸化物架橋剤は、樹脂マトリクス中でイオン導電性エラストマを動的架橋させるために機能する。
前記過酸化物架橋剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,4−ビス[(tert−ブチル)パーオキシイソプロピル]ベンゼン、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジtert−ブチルパーオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキセンからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。特に、ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンが好ましい。
【0047】
前記過酸化物架橋剤と共に架橋助剤を併用してもよい。前記架橋助剤は、自身が架橋するとともにイオン導電性エラストマとも架橋して全体を高分子化する働きをする。前記架橋助剤を用いて共架橋することにより架橋密度を向上させることができる。
架橋助剤としては、メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、複素環ビニル化合物、アリル化合物、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類、およびジオキシム類からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0048】
詳しくはトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、およびN,N’−m−フェニレンビスマレイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。特に、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドが好ましい。
【0049】
前記各成分を含む熱可塑性エラストマ組成物には、さらに充填剤を配合してもよい。充填剤は、ローラ本体の機械的強度を高めるために機能する。
前記充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、およびアルミナからなる群より選ばれた少なくとも1種、炭酸カルシウムおよび/またはカーボンブラックが好ましい。
【0050】
また熱可塑性エラストマ組成物には、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、および気泡防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を配合してもよい。
前記各成分の配合割合は任意に設定できる。
例えばスチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクスの配合割合は、ゴム分100質量部あたり10質量部以上、特に20質量部以上であるのが好ましく、100質量部以下、特に75質量部以下であるのが好ましい。
【0051】
樹脂マトリクスの配合割合が前記範囲未満では、熱可塑性成分としての前記樹脂マトリクスの量が少なすぎるため、熱可塑性エラストマ組成物に良好な熱可塑性を付与できないおそれがある。またゴム分の架橋物やイオン導電性樹脂型帯電防止剤を樹脂マトリクス中に良好に分散できないおそれもある。
一方、樹脂マトリクスの配合割合が前記範囲を超える場合には、相対的にゴム分の架橋物の量が少なくなるため、ローラ本体に良好なゴム弾性を付与できないおそれがある。また相対的にイオン導電性樹脂型帯電防止剤の量が少なくなるため、ローラ本体に良好なイオン導電性を付与できないおそれもある。
【0052】
樹脂マトリクスの配合割合は、前記樹脂マトリクスとしてスチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを併用する場合は、この2種の合計の配合割合である。
また前記2種の併用系においてスチレン系熱可塑性エラストマ100質量部あたりのポリプロピレンの配合割合は10質量部以上、特に30質量部以上であるのが好ましく、100質量部以下、特に50質量部以下であるのが好ましい。
【0053】
ポリプロピレンの配合割合が前記範囲未満では、前記ポリプロピレンを配合したことによる、先に説明した熱可塑性エラストマ組成物の、押出成形時の加工性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。またポリプロピレンの配合割合が前記範囲を超える場合には、相対的にスチレン系熱可塑性エラストマの量が少なくなるため、ローラ本体の柔軟性が低下するおそれがある。
【0054】
樹脂架橋剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり2質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下、特に15質量部以下であるのが好ましい。
樹脂架橋剤の配合割合が前記範囲未満ではゴム分の架橋が不十分となるため、ローラ本体に良好な機械的特性、耐久性を付与できないおそれがある。一方、樹脂架橋剤の配合割合が前記範囲を超える場合にはゴム分が硬くなりすぎるため、ローラ本体の柔軟性が低下するおそれがある。
【0055】
架橋助剤(架橋活性剤)の配合割合は、ゴム分100質量部あたり0.01質量部以上、特に0.1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
軟化剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり50質量部以上、特に80質量部以上であるのが好ましく、250質量部以下、特に200質量部以下であるのが好ましい。
【0056】
軟化剤の配合割合が前記範囲未満では、前記軟化剤を配合することによる先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また配合割合が前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、過剰の軟化剤がローラ本体の表面にブリードして、感光体やトナーを汚染したり、紙を汚したりするおそれがある。
イオン導電性樹脂型帯電防止剤を構成するイオン導電性エラストマの配合割合は、ゴム分100質量部あたり50質量部以上、特に70質量部以上であるのが好ましく、150質量部以下、特に120質量部以下であるのが好ましい。
【0057】
イオン導電性エラストマの配合割合が前記範囲未満では、前記イオン導電性エラストマによる、先に説明したイオン導電性塩由来のイオンを安定化させる効果が十分に得られず、ローラ本体に良好なイオン導電性を付与できないおそれがある。また前記範囲を超えてもそれ以上の添加効果が得られないおそれがある。
イオン導電性塩の配合割合は、ゴム分100質量部あたり0.1質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0058】
イオン導電性塩の配合割合が前記範囲未満では、ローラ本体に良好なイオン導電性を付与できないおそれがある。また前記範囲を超えてもそれ以上の添加効果が得られないだけでなく、過剰のイオン導電性塩がローラ本体の表面にブルームまたはブリードして、感光体や像担持体の表面を汚染するおそれがある。
相溶化剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり1質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
【0059】
配合割合が前記範囲未満では相溶化剤としての機能が不足して、イオン導電性エラストマを樹脂マトリクス中に微細に分散させることができず、押出成形時に、ローラ本体の表層部において押出方向に沿って筋状に分離したりするおそれがある。
一方、配合割合が前記範囲を超えてもそれ以上の添加効果が得られないだけでなく、逆にローラ本体の強度が低下したり硬度が上昇したりするおそれがある。
【0060】
イオン導電性エラストマを動的架橋させる場合、過酸化物架橋剤の配合割合は、前記イオン導電性エラストマ100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
過酸化物架橋剤の配合割合が前記範囲未満では架橋が不十分となって、先に説明した架橋させる効果が十分に得られない。一方、配合割合が前記範囲を超えると、分子切断による機械的特性の低下が起こったり、分散不良などが生じて加工が困難になったりする。
【0061】
架橋助剤の配合割合は、イオン導電性エラストマ100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
充填剤の配合割合は、ゴム分100質量部あたり10質量部以上、特に20質量部以上であるのが好ましく、100質量部以下、特に50質量部以下であるのが好ましい。
充填剤の配合割合が前記範囲未満では、前記充填剤を配合したことによる、ローラ本体の機械的強度を高める効果が十分に得られないおそれがある。また配合割合が前記範囲を超える場合にはローラ本体の柔軟性が低下するおそれがある。
【0062】
前記配合割合は、充填剤として2種以上の充填剤を併用する場合は、その合計の配合割合である。
前記熱可塑性エラストマ組成物を調製するには、まず樹脂マトリクス中にゴム分の架橋物を分散させた混練物を調製する。
例えば動的架橋を利用する場合は、先に説明したように、前記樹脂マトリクスと未架橋のゴム分に、さらに樹脂架橋剤、架橋助剤(架橋活性剤)、軟化剤等を配合した混合物を加熱しながら混練して、前記ゴム分を樹脂マトリクス中に微細に分散させながら動的架橋させることで混練物を得る。
【0063】
混練には押出機、バンバリミキサ、ニーダ等を用いることができ、特に押出機が好ましい。押出機を用いる場合、前記押出機のスクリュー部内で、混合物を連続的に加熱しながら混練してゴム分を動的架橋させて混練物を調製でき、前記混練物をノズル先端から順次押し出して連続的に次工程(例えばペレット化の工程等)に送ることができるため、前記混練物の生産性を向上できる。
【0064】
ゴム分はハロゲンの存在下で動的架橋させるのが好ましい。そのためには、ハロゲン化された樹脂架橋剤を用いればよい。また塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化第二銅等のハロゲン供与性物質を添加してもよい。
次に、あらかじめイオン導電性エラストマ中にイオン導電性塩を練り込んで調製しておいたイオン導電性樹脂型帯電防止剤と、先の混練物と、さらに必要に応じて相溶化剤、充填剤等とを配合した混合物を加熱しながら混練して、前記イオン導電性樹脂型帯電防止剤を基材樹脂中に微細に分散させることで熱可塑性エラストマ組成物を調製する。
【0065】
またこの際、前記混合物に過酸化物架橋剤、架橋助剤を配合して、イオン導電性樹脂型帯電防止剤を構成するイオン導電性エラストマを基材樹脂中に微細に分散させながら動的架橋させてもよい。
この混練にも押出機、バンバリミキサ、ニーダ等を用いることができ、特に押出機が好ましい。押出機を用いる場合、前記押出機のスクリュー部内で、混合物を連続的に加熱しながら混練して熱可塑性エラストマ組成物を調製でき、前記熱可塑性エラストマ組成物をノズル先端から順次押し出して連続的に次工程(例えばペレット化の工程等)に送ることができるため、前記熱可塑性エラストマ組成物の生産性を向上できる。
【0066】
このあと、調製された熱可塑性エラストマ組成物を、ローラ本体のもとになる筒状体を押出成形するための押出成形機に供給し、前記押出成形機のスクリュー部の先端に接続されたダイの口金を通して筒状に押出成形することで前記ローラ本体が製造される。
押出成形の条件は従来同様でよい。例えば押出温度(スクリュー部先端での設定温度)は160℃以上、特に180℃以上であるのが好ましく、250℃以下、特に230℃以下であるのが好ましい。また押出速度は0.5m/分以上、特に0.8m/分以上であるのが好ましく、7m/分以下、特に5m/分以下であるのが好ましい。
【0067】
なお前記イオン導電性樹脂型帯電防止剤、混練物、相溶化剤、充填剤等の混合物を押出成形機に直接に供給して、前記押出成形機のスクリュー部内で混練しながら押出成形してもよい。押出成形の条件は前記と同等程度でよい。
〈導電性ローラおよび電子写真装置〉
図1は、本発明の導電性ローラの、実施の形態の一例の全体を示す斜視図である。図2は、前記図1の例の導電性ローラのうちローラ本体の断面図である。図3は、前記ローラ本体の一部を拡大した断面図である。図4は、前記ローラ本体を、押出成形によって形成するために用いるダイの口金を示す斜視図である。さらに図5は、図4の口金を有するダイを用いて前記ローラ本体を押出成形によって形成する一工程を説明する斜視図である。
【0068】
図1を参照して、この例の導電性ローラ1は、前記熱可塑性エラストマ組成物等からなる円筒状のローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを含んでいる。このうちローラ本体2は、例えば熱可塑性エラストマ組成物を押出成形して形成された筒状体5(図5参照)を所定の長さにカットして形成されている。
図1〜図3を参照して、ローラ本体2は、前記ローラ本体2の外周面6を構成する中実状の外筒体7と、前記通孔3を有し、前記外筒体7内に配設された、外径が前記外筒体7の内径よりも小さい中実状の内筒体8とを備えている。
【0069】
前記外筒体7と内筒体8とは、前記内筒体8の外周から外筒体7の内周に達する複数の連結部9によって連結されることで、それぞれの中心軸Lを一致させた状態で同芯状に配設されている。前記外筒体7、内筒体8、および連結部9は、前記押出成形により、先に説明した熱可塑性エラストマ組成物によって一体に形成されている。
内筒体8の外周と外筒体7の内周との間には、前記連結部9によって隔てられて複数の中空部10が設けられている。
【0070】
図の例の場合、連結部9と中空部10は、それぞれローラ本体2の周方向の12箇所に、通孔3を囲んで等間隔に配設されている。
個々の連結部9は、ローラ本体2の全長に亘る平板状に形成されているとともに、前記連結部9によって隔てられた隣り合う中空部10が、外筒体7および内筒体8の中心軸Lを通る一平面P上で、ローラ本体2の径方向内方と外方にオーバーラップするように、前記一平面Pと交差させて配設されている。
【0071】
図2、図3を参照して、両図において最も上側に位置する2つの中空部10を例にとって説明すると、前記連結部9が平面Pと交差させて配設されることにより、大部分が平面Pより左側に位置する中空部10は、両図において上側(径方向外方側、つまり外筒体7側)の一部(図3中の10a)が前記平面Pより右側に突出している。
また大部分が平面Pより右側に位置する中空部10は、両図において下側(径方向内方側、つまり内筒体8側)の一部(図4中の10b)が前記平面Pより左側に突出している。
【0072】
その結果、平面P上では前記両中空部10が、ローラ本体2の径方向内方と外方にオーバーラップしている。
その他の連結部9と中空部10についても同様の関係が成り立つように、前記他の連結部9も、直近の平面Pと交差させて配設されている。
これにより前記ローラ本体2は、その全周に亘って必ず中空部10が存在することになり、前記中空部10の作用によってローラ本体2の全体での柔軟性を周方向の全周に亘ってほぼ一定にすることができる。その上、ローラ本体2の内部に複数の中空部10を設けたことによって、前記ローラ本体2の全体としての柔軟性を高めることもできる。
【0073】
したがって、前記ローラ本体2を備えた本発明の導電性ローラ1を、例えば転写ローラとして使用した際には、紙の表面に形成される画像に、特に低温条件下でムラ等を生じるのを確実に防止することができる。
なおローラ本体2の中心軸Lと直交する図2の断面において、中空部10の断面積の総和と、前記中空部10以外の中実部の断面積とから、式(1):
【0074】
【数1】

【0075】
によって求められる中空部10の面積占有率は10%以上、特に15%以上であるのが好ましく、80%以下、特に70%以下であるのが好ましい。
面積占有率が前記範囲未満では、中空部10を設けることによる、ローラ本体2の全体に良好な柔軟性を付与する効果が得られず、例えば転写ローラとして使用した際に、前記転写ローラを所定のニップ幅でもって感光体や像担持体に接触させることができないため、紙の表面に良好な画像を形成できないおそれがある。
【0076】
一方、面積占有率が前記範囲を超えるローラ本体2を、押出成形法等によって製造するのは容易ではない。
図4、図5を参照して、前記各部を備えたローラ本体2は、前記熱可塑性エラストマ組成物を、口金11の内方に、前記中空部10のもとになる複数のピン(マンドレル)12と、通孔3のもとになるマンドレル13とを設けたダイを備えた押出成形機を用いて押出成形することによって形成された前記筒状体5を、所定の長さにカットして形成される。
【0077】
熱可塑性エラストマ組成物は、前記口金11の内周面14内の、ピン12、およびマンドレル13間の開口部を通して押出成形されるため、筒状体5の内部には、前記ピン12に対応する中空部10、およびマンドレル13に対応する通孔3が形成される。
すなわちピン12間の開口部を通して押出成形された熱可塑性エラストマ組成物によって連結部9が形成され、前記ピン12とマンドレル13との間の開口部を通して押出成形された熱可塑性エラストマ組成物によって内筒体8が形成され、前記ピン12と口金11の内周面14との間の開口部を通して押出成形された熱可塑性エラストマ組成物によって外筒体7が形成されるとともに、前記各部間に中空部10、および通孔3が設けられる。
【0078】
シャフト4は、導電性ローラ1を構成するために導電性とされる。前記導電性のシャフト4としては、例えばアルミニウムやその合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されたもの等が挙げられる。またセラミックや硬質樹脂等によって形成し、その外周面に、ローラ本体2と電気的に接続される導電膜等を設けた複合構造のシャフト4を用いることもできる。
【0079】
ローラ本体2の外周面6はコーティング層で被覆してもよい。前記コーティング層は、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂等のエマルションや溶液、あるいはゴムラテックス等にフッ素樹脂の粉末等を分散させたコーティング剤を塗布し、乾燥させて形成できる。前記コーティング層で被覆することにより、外周面6の表面エネルギーをコントロールして、前記外周面6に紙粉が付着したりトナーが固着したりするのを抑制したり、摩擦係数を調整したりすることができる。
【0080】
前記本発明の導電性ローラ1は、電子写真装置のうち帯電工程で感光体の表面を帯電させる帯電ローラ、現像工程のうちトナーの帯電過程でトナーをかく拌しながら帯電させる帯電ローラ、静電潜像への付着過程で帯電させたトナーを感光体表面の静電潜像に選択的に付着させてトナー像に現像する現像ローラ、転写工程で前記トナー像を紙または像担持体の表面に転写させる転写ローラ、あるいはクリーニング工程で残留したトナーを除去するクリーニングローラ等に使用できる。
【0081】
特に紙と直接に接触するため紙粉の付着に伴う種々の問題を生じやすい転写ローラとして、本発明の導電性ローラ1を使用するのが好ましい。
前記導電性ローラ1を転写ローラとして使用する場合、ローラ本体2の抵抗値は、印加電圧1000Vで10Ω以上、10Ω以下、特に10Ω以上、10Ω以下程度であるのが好ましい。
【0082】
抵抗値を前記範囲内に調整するためには、例えば前記イオン導電性エラストマやイオン導電性塩の種類や配合割合等を、先に説明した範囲内で適宜調整すればよい。
また転写ローラとして使用する導電性ローラ1のローラ本体2の、外周面6から中心軸L方向の硬さは、日本工業規格JIS K7312−1996「熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法」の付属書2で規定されたスプリング硬さ試験タイプC試験方法に準拠して、温度23±1℃、相対湿度55±1%の条件下で測定したスプリング式タイプC硬さが55以下、特に40以下であるのが好ましい。
【0083】
硬さがこの範囲内であれば、ローラ本体2に良好な柔軟性を付与して、導電性ローラ1を転写ローラとして使用した際に、特に低温条件下でムラ等が生じるのを確実に防止できる。また紙に対する摩擦係数を上昇させて、紙送りの不良等を生じにくくできる。
本発明の電子写真装置は、前記本発明の導電性ローラを、例えば転写ローラとして組み込んだものゆえ、前記導電性ローラの機能によって、紙の表面に、特に低温条件下でムラのない良好な画像を形成することができる。前記電子写真装置としては、レーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等が挙げられる。
【0084】
なお本発明は、以上で説明した例のものには限定されない。
例えば連結部9は平板状には限定されず、内筒体8側の端部と外筒体7側の端部との間の部分が、ローラ本体2の径方向外方へ突出された湾曲板状等の、任意の板状に形成できる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を施すことができる。
【実施例】
【0085】
以下の実施例、比較例における導電性ローラの製造、および試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈実施例1〉
(熱可塑性エラストマ組成物の調製)
樹脂マトリクスとしての水素添加スチレン系熱可塑性エラストマ〔SEEPS、(株)クラレ製のセプトン(登録商標)4077〕およびポリプロピレン〔日本ポリプロ(株)製のノバテック(登録商標)PP〕に、ゴム分としてのEPDM〔住友化学(株)製のエスプレン(登録商標)EPDM505A〕、パラフィン系オイル〔出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW−380〕、樹脂架橋剤〔臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)製のタッキロール(登録商標)250−III〕、および架橋助剤(架橋活性剤)としての酸化亜鉛〔三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号〕を配合した。
【0086】
前記各成分を2軸押出機のスクリュー部内で200℃に加熱しつつ混練してゴム分を動的架橋しながらノズル先端から押し出し、次いで連続的に所定の長さにカットしてペレット化して、前記樹脂マトリクス中にEPDMの架橋物が分散された混練物を調製した。
またイオン導電性塩としてのビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムと、イオン導電性エラストマとしてのEO−PO−AGE共重合体〔日本ゼオン(株)製のゼオスパン(登録商標)8010〕とを質量比1:9で配合し、混練してイオン導電性樹脂型帯電防止剤を調製した。
【0087】
次いで、前記イオン導電性樹脂型帯電防止剤、および先の混練物と、相溶化剤としてのエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体〔アルケマ社製のボンダイン(登録商標)LX4110〕とをタンブラーを用いてドライブレンドした後、2軸押出機のスクリュー部内で200℃に加熱しつつ混練しながらノズル先端から押し出し、次いで連続的に所定の長さにカットしてペレット化して熱可塑性エラストマ組成物を調製した。
【0088】
熱可塑性エラストマ組成物を構成する各成分の配合割合は、表1に示すとおりとした。
【0089】
【表1】

【0090】
(導電性ローラの製造)
前記熱可塑性エラストマ組成物のペレットを押出成形機のスクリュー部内で加熱しながら混練し、前記スクリュー部の先端に接続したダイの口金を通して筒状に押出成形して、ローラ本体2のもとになる筒状体5を作製した。
押出成形の条件は、押出温度(スクリュー部先端での設定温度)200℃、押出速度約1m/分の低速条件と、同じ押出温度で、押出速度約3m/分の高速条件の2つの条件を設定した。
【0091】
筒状体5の外径は12.5mm、通孔3の内径は4.6mmとした。
また、図4、図5に示すように口金11の内方に複数のピン12とマンドレル13とを設けることで、押出成形された筒状体5の内部に、それぞれ図2、図3に示す断面形状を有する、通孔3と、ローラ本体2の周方向の12箇所に、前記通孔3を囲んで等間隔に配設された平板状の連結部9、および中空部10とを形成した。
【0092】
図3の断面における、連結部9の厚みTは0.8mm、前記連結部9の、平面Pとの交差角度θは30°とした。
連結部9を隔てて隣り合う中空部10は、前記連結部9を平面Pと交差させて配設するとともに厚みTと交差角度θとを前記値に調整することにより、図3に示すように、前記平面P上で、ローラ本体2の径方向内方と外方で互いにオーバーラップさせた。これによりローラ本体2は、その全周に亘って必ず中空部10を存在させることができた。
【0093】
また中空部10の断面積の総和と、前記中空部10以外の中実部の断面積とから、前記式(1)によって求められる中空部10の面積占有率は30.4%であった。
押出成形した筒状体5は、その中心軸Lを中心として周方向に回転させないように維持しながら冷却したのち通孔3内にシャフト4を挿通するとともに、長さ216mmにカットしてローラ本体2を形成し、導電性ローラ1を製造した。
【0094】
〈比較例1〉
口金11の内方にピン12を設けず、したがってローラ本体2の内部に中空部10を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして筒状体5を押出成形した。筒状体5の外径は12.5mm、通孔3の内径は4.6mmとした。
前記筒状体5は全体が中空部のない中実状であり、前記式(1)によって求められる中空部の面積占有率は0%であった。
【0095】
前記筒状体5を用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体2を形成するとともに、導電性ローラ1を製造した。
〈比較例2〉
口金11の内方で、かつマンドレル13の周囲に8本の断面円形のピンを周方向に等間隔に配置したこと以外は実施例1と同様にして、特許文献4の図2(b)に示す断面形状を有する筒状体5を押出成形した。筒状体5の外径は12.5mm、通孔3の内径は4.6mm、ピンに対応する断面円形の中空部の内径は1.3mmとした。
【0096】
前記筒状体5は、その周方向に、中空部を含む領域と、前記中空部を含まない中実状の領域とが交互に存在していた。
中空部の断面積の総和と、前記中空部以外の中実部の断面積とから、前記式(1)によって求められる中空部の面積占有率は10%であった。
前記筒状体5を用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体2を形成するとともに、導電性ローラ1を製造した。
【0097】
〈比較例3〉
口金11の内方で、かつマンドレル13の周囲に16本ずつ計48本の断面円形のピンを3段階の同心円状で、かつ周方向に等間隔に配置したこと以外は実施例1と同様にして、特許文献4の図2(c)に示す断面形状を有する筒状体5を押出成形した。筒状体5の外径は12.5mm、通孔3の内径は4.6mm、ピンに対応する断面円形の中空部の内径は0.5mmとした。
【0098】
前記筒状体5は、やはりその周方向に、中空部を含む領域と、前記中空部を含まない中実状の領域とが交互に存在していた。
中空部の断面積の総和と、前記中空部以外の中実部の断面積とから、前記式(1)によって求められる中空部の面積占有率は8.9%であった。
前記筒状体5を用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体2を形成するとともに、導電性ローラ1を製造した。
【0099】
〈比較例4〉
口金11の内方で、かつマンドレル13の周囲に18本の断面長円形のピンを周方向に等間隔に配置したこと以外は実施例1と同様にして、特許文献3の図1に示す断面形状を有し、外周面6に離型層を有しない筒状体5を押出成形した。筒状体5の外径は12.5mm、通孔3の内径は4.6mm、ピンに対応する断面長円形の中空部の短径寸法は1.0mm、長径寸法は2.0mm、長径方向が平面Pとなす角度は30°とした。
【0100】
前記筒状体5は、やはりその周方向に、中空部を含む領域と、前記中空部を含まない中実状の領域とが交互に存在していた。
中空部の断面積の総和と、前記中空部以外の中実部の断面積とから、前記式(1)によって求められる中空部の面積占有率は26.6%であった。
前記筒状体5を用いたこと以外は実施例1と同様にしてローラ本体2を形成するとともに、導電性ローラ1を製造した。
【0101】
〈硬さ測定〉
実施例、比較例で製造した導電性ローラ1のローラ本体2の、外周面6から中心軸L方向の硬さを、前記外周面6上で、周方向の22.5°ごとに、前出のJIS K7312−1996の付属書2で規定されたスプリング硬さ試験タイプC試験方法に準拠して測定して、その最大値と最小値とを求めるとともに、前記最大値と最小値との差を求めた。前記硬さの差が大きいほど、ローラ本体2は周方向の硬さのムラが大きいことを示している。
【0102】
〈画像評価試験〉
実施例、比較例で製造した導電性ローラを、レーザープリンタ〔ヒューレットパッカード社製のLaserJet(登録商標)P1006〕に転写ローラとして組み込んで、温度10℃、相対湿度20±1%の低温環境下でA4サイズの紙〔富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製のPPC用紙〕にハーフトーン画像を20枚連続して印刷した。
【0103】
次いで20枚の印刷を目視にて観察して下記の基準で、前記低温条件下での画像の良否を評価した。
○:20枚の印刷の中に、ムラやスジ等の画像不良は全く見られなかった。
×:20枚中のほぼ全数で、明らかなムラやスジ等の画像不良が見られた。
以上の結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
表より、ローラ本体内に中空部を設けず全体を中実状とした比較例1の導電性ローラは、硬さのばらつきが小さいものの全体として硬すぎるため、低温環境下で、特にローラ本体の中央部の紙との接触が不十分となって画像中央部に縦スジの画像不良が発生することが判った。
また内部に中空部を設けたものの、隣り合う中空部をオーバーラップさせなかった比較例2〜4の導電性ローラは、前記中空部を含む領域と含まない中実状の領域とで硬さの差が大きいため、前記低温環境下で、画像濃度のムラや、強度のムラであるスジ等の画像不良が発生することが判った。
【0106】
これに対し、内部に中空部10を設けるとともに隣り合う中空部10をオーバーラップさせて、ローラ本体2の全周に亘って必ず中空部10を存在させるようにした実施例1の導電性ローラは、全体が軟らかい上、硬さの差が小さいため、低温環境下でもムラやスジの画像不良のない良好な画像を形成できることが判った。
【符号の説明】
【0107】
1 導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
6 外周面
7 外筒体
8 内筒体
9 連結部
10 中空部
11 口金
12 ピン
13 マンドレル
14 内周面
L 中心軸
P 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面を構成する外筒体と、前記外筒体内に同芯状に配設された、外径が前記外筒体の内径よりも小さい内筒体と、前記内筒体の外周から外筒体の内周に達する複数の板状の連結部とを、導電性が付与された熱可塑性エラストマ組成物によって一体に形成してなり、前記内筒体の外周と外筒体の内周との間に、前記連結部によって隔てられて複数の中空部が設けられたローラ本体を含む導電性ローラであって、前記ローラ本体の軸方向と直交方向の断面において、個々の連結部は、前記連結部によって隔てられた隣り合う中空部が、前記外筒体および内筒体の中心軸を通る一平面上で径方向内方と外方にオーバーラップするように、前記一平面と交差させて配設されていることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマ組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマとポリプロピレンとを含む樹脂マトリクス中に、
ジエン系ゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム分の架橋物と、
イオン導電性樹脂型帯電防止剤と
を分散させることで導電性が付与されている請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記イオン導電性樹脂型帯電防止剤は、イオン導電性エラストマと、イオン導電性塩とを含んでいる請求項2に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の導電性ローラを備えることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−123294(P2011−123294A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280820(P2009−280820)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】