説明

導電性ローラ

【課題】導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上の導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラにおいて、表面平滑性に優れた導電性ローラを提供することにある。
【解決手段】導電性芯材上に少なくとも1層以上の未発泡ゴム層が設けられており、そのゴム層が加硫後の表面研削工程により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、該ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度が5〜22kN/mであることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラに関し、特には電子写真等の画像形成装置における帯電ローラなどの導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、感光体の表面を均一に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する。次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。
【0003】
前記感光体の表面を均一帯電するための手段としては、電圧を印加した帯電部材を感光体に所定の押圧力で当接させて感光体を所定の電位に帯電させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式の中でも帯電ローラは、接触帯電方式による均一帯電のための重要なポイントである感光体への一様な接触が、二つの回転円筒体同士によりなされるため、ブラシ帯電やブレード帯電などの他の接触帯電方式よりも実現容易であり、採用されている。
【0004】
帯電ローラは感光体との接触帯電を行うものであるため、帯電ローラが電気的に不均一な場合、その電気的な不均一性を反映した帯電濃度ムラを生じる。従って、帯電ローラは所定の抵抗をもち、かつ電気的に均一であることが要求される。
【0005】
そして、そのような帯電ローラとしては、例えば、導電体である所定の軸体(芯金)の外周面上に、低硬度の導電性ゴム弾性体層が設けられる。更に必要に応じて、導電性弾性体層の外周面上に塗工などにより抵抗調整層や保護層が、順次積層形成されて、構成されてなる構造のものが、採用されており、感光体ドラム等に対する均一な接触性を確保するために、良好な表面平滑性や高い寸法精度が要求されている。
【0006】
この低硬度の導電性ゴムを得るために、導電性ゴム組成物として、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のポリマーに、カーボンブラック等の導電性充填剤を添加し、更に低硬度を得るために軟化剤を添加したものが知られている。更には、より電気的に均一な導電性ゴムを得るために、ゴム自体がある程度の低抵抗性をもつ、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムを使用した導電性ゴム組成物を用いることにより、電気的均一性に優れた導電性ゴムが得られることが知られている。中でもエピクロルヒドリン系ゴムは、各種ゴムの中で抵抗値の低いポリマーであることが知られている。エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリンホモポリマー、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体が知られており(例えば特許文献1)、更には、エピクロルヒドリン系ゴム中のエチレンオキサイドの共重合割合により抵抗値をコントロールすることが可能であり、各種導電性ローラの弾性体として求められる抵抗値により各種エピクロルヒドリン系ゴムが用いられている。例えば帯電ローラとしては回転軸と表面との間の望ましい抵抗値は109〜1011Ωであり、導電弾性層の体積固有抵抗は105〜107Ω・cmである。ところでこれらの導電性ローラは、表面粗さが大きいと、トナーなどの汚れがローラ表面に付着し易くなり、結果として記録媒体に汚れを生じる原因となる。このため電子写真装置用導電性ローラは、トナーなどによる汚れを防止する機能を向上させるために、表面粗さは小さいほうが好ましい。ところでこれらの導電性ローラの製造方法として、未加硫のゴム組成物を押出し機を用いて所定の寸法のチューブ状に押出して、その後、加熱して加硫ゴムチューブを作成する。そして接着剤を塗布した芯金を加硫ゴムチューブの内径部に挿入し、その後導電性ローラ形状をゴム層の研削工程により調整される製造方法が知られている。このような製造方法で得られる導電性ローラの表面粗さを小さくするために、導電弾性層の表面粗さを小さくしてから表面層を形成するという技術がある。しかし導電弾性層の表面粗さを小さくするには研削時間が長くなってしまうという問題がある。また、表面層の層厚を厚くして導電弾性層の表面粗さを吸収するという技術があるが、この場合はローラが変形しにくくなり、ローラに当接する相手材と所定の接触幅(ニップと呼ぶ)を確保することが難しくなるという問題がある。
【特許文献1】特開平6−266206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、導電性軸体の外周上に少なくとも1層以上の導電性ゴム弾性層を有する導電性ローラにおいて、表面平滑性に優れた導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成をとる。
【0009】
(1)導電性芯材上に少なくとも1層以上の未発泡ゴム層が設けられており、そのゴム 層が加硫後の表面研削工程により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、該 ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度が5kN/m以上、22kN/m以下であることを 特徴とする導電性ゴムローラである。
【0010】
(2)該ゴム層が表面研削を実施後の表面粗さRzが6μm以下であることを特徴とする(1)に記載の導電性ゴムローラである。
【0011】
(3)上記ゴム組成物のゴム成分にエピクロロヒドリンゴムを含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の導電性ゴムローラである。
【0012】
(4)該ゴム層の表面研削を実施後に塗工液によりゴム層上にコーティングされていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の導電性ゴムローラである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ローラによれば、容易に表面粗さが小さい導電性ローラを製造することが可能である。従って、製造された導電性ローラは、電子写真等の画像形成装置に用いられる帯電ローラなどの導電性ローラとして好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の導電性ローラは、導電性芯材上に少なくとも1層以上の未発泡ゴム層が設けられており、そのゴム層が加硫後の表面研削工程により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、該ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度が5kN/m以上、22kN/m以下であることを特徴とする導電性ゴムローラである。すなわち該ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度を5kN/m以上、22kN/m以下にする事により、研削性が良くなり、研削後の表面粗さが小さくなる。該ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度が22kN/mを超える場合、研削性が悪く、表面粗さが大きくなってしまう。また該ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度が5kN/m未満の場合、研削時に非常にもろく、凸凹した表面になってしまう。
【0015】
また、表面研削を実施後の表面粗さRzが6μm以下である導電性ローラのときにより効果的である。これは従来の方法では研削後の表面粗さRzが6μm以下とするには研削時間が長くなってしまうが、この発明により研削時間を長くせずに表面粗さRzを6μm以下にすることが容易だからである。
【0016】
導電性部材Aの表面粗さ(Rz及びRa)の測定はJISB0601に準拠し、(株)小坂研究所製surfcorder SE−3400を用い、送り速度0.1mm/s、カットオフ0.8mm、測定長2.5mmの条件で測定した。測定は導電性ローラの導電性ゴム弾性層の表面を、表面粗さ計により導電性ローラ1本につき長手方向に3箇所、各長手方向あたり周方向に5点測定を行いそれぞれの測定値の平均値を算出し、3つの値の単純平均を導電性部材の表面粗さ(Rz)とした。
【0017】
また、上記ゴム組成物のゴム成分にエピクロロヒドリンゴムを含有する場合により効果的である。これは電気的均一性に優れた導電性ゴムを得るためにエピクロルヒドリン系ゴムが使われることが知られているが、一般にエピクロルヒドリン系ゴムの引き裂き強度は比較的大きく、研削後の表面粗さが大きくなってしまう。しかしエピクロルヒドリン系ゴム組成物の引き裂き強度が5kN/m以上、22kN/m以下になるように配合を設計することにより、容易に表面粗さの小さい導電性ゴムローラを作ることが可能である。
【0018】
本願発明の引き裂き強度が5kN/m以上、22kN/m以下のゴム組成物を得る方法は極性ゴム/他のゴム成分/充填剤の組み合わせで上記範囲の引き裂き強度になるように配合を適宜調節することによって得ることができる。
【0019】
極性ゴムとしては、前記したエピクロルヒドリン系ゴム、NBR、ウレタンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられ、特にエピクロルヒドリン系ゴムが好ましい。他のゴム成分としてはエチレン-プロピレン系ゴム、スチレン-ブタジエン系ゴム等が挙げられる。充填剤としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック等が挙げられる。
【0020】
極性ゴム/その他のゴム成分の混合比(質量比)は好ましくは98/2〜50/50、より好ましくは95/5〜55/45程度であり、充填剤の添加量はゴム成分100質量部に対して好ましくは50〜150質量部、より好ましくは60〜100質量部である。
本発明では極性ゴム/他のゴム成分の種類と比、充填剤の種類と使用量によって引き裂き強度は変化するが、上記記載の範囲で適宜配合処方を変更し、通常のゴム成型に使用する加硫剤を配合し、通常の加硫条件で加硫することで引き裂き強度の調節が可能である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
エピクロルヒドリン系ゴム[商品名 エピオンON301ダイソー(株)製]95質量部
エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]5質量部
酸化亜鉛[商品名 亜鉛華2種 白水テック(株)製]5質量部
ステアリン酸[商品名 ステアリン酸S 花王(株)製]1質量部
炭酸カルシウム[商品名 ナノックス#30 丸尾カルシウム(株)製]90質量部
FEF級カーボンブラック[商品名 旭#60 旭カーボン(株)製]5質量部
イオン導電材 [商品名 LV−70 旭電化工業(株)製] 2質量部
ポリエステル可塑剤 [商品名 PN−350 アデカ・アーガス(株)製] 5質量部
ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)[商品名 ノクセラーDM 大内振興化学工業(株)製]1質量部
テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)[商品名 ノクセラーTS 大内振興化学工業(株)製]1質量部
イオウ[商品名 サルファックスPMC 鶴見化学工業(株)製]0.8質量部
を混錬りし未加硫の導電性ゴム組成物を作成した。次に、φ40mmのストレートヘッド押出し機を用いてチューブ状に成形し、蒸気加硫によって一次加硫を160℃、30分行い、このように作成してチューブを接着剤を塗布した芯金に圧入し、その後二次加硫及び接着のため160℃、1時間熱風炉に投入して、導電性軸体上に加硫ゴム層を形成した未研削のローラ状成形体を作成した。この成形体を研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研削条件として回転速度2000RPM、送り速度2.0mm/分で外径がφ12mm(元の外径が約φ13mm)になるように研削し、導電性ローラを作成した。
【0023】
(実施例2)
ゴム材料としてエピクロルヒドリン系ゴム[商品名 エピオンON301ダイソー(株)製]95質量部アクリロニトリル・ブタジエン系ゴム[商品名Nipol 1042 日本ゼオン(株)製]5質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0024】
(実施例3)
ゴム材料としてエピクロルヒドリン系ゴム[商品名 エピオンON301ダイソー(株)製]90質量部エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]10質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0025】
(実施例4)
ゴム材料としてエピクロルヒドリン系ゴム[商品名 エピオンON301ダイソー(株)製]80質量部エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]20質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0026】
(実施例5)
ゴム材料としてエピクロルヒドリン系ゴム[商品名 エピオンON301ダイソー(株)製]60質量部エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]40質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0027】
(比較例1)
ゴム材料としてエピクロルヒドリン系ゴム[商品名エピオンON301ダイソー(株)製]100質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0028】
(比較例2)
ゴム材料として炭酸カルシウム[商品名 ナノックス#30 丸尾カルシウム(株)製]45質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0029】
(比較例3)
ゴム材料としてエピクロルヒドリン系ゴム[商品名エピオンON301ダイソー(株)製]60質量部エチレンプロピレンゴム系ゴム[商品名 EPT4021 三井化学(株)製]40質量部炭酸カルシウム[商品名 ナノックス#30 丸尾カルシウム(株)製]300質量部ポリエステル可塑剤 [商品名 PN−350 アデカ・アーガス(株)製] 50質量部とした以外は実施例1と同様に成形を行い導電性ローラを作成した。
【0030】
評価
実施例及び比較例のゴム組成物を用いて得られた各3本の導電性ローラの導電性ゴム弾性層の表面を、表面粗さ計により導電性ローラ1本につき長手方向に3箇所、各長手方向あたり周方向に5点測定を行いそれぞれの測定値の平均値を算出してローラの表面粗さの測定値とした。評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
上記結果から明らかなように、ゴム組成物の引き裂き強度を5〜22kN/mにする事により、研削性が良くなり、表面粗さの小さい導電性ローラを得ることができる。
【0033】
これに対して、引き裂き強度が22kN/mより大きい比較例1および比較例2では研削後の表面粗さが大きくなってしまった。また、引き裂き強度が5kN/mより小さい比較例3は研削時に非常にもろく、凸凹した表面になってしまい、表面粗さ測定不能であった。
【0034】
従って、本発明の導電性ローラは、電子写真等の画像形成装置における帯電ローラなどに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に少なくとも1層以上の未発泡ゴム層が設けられており、そのゴム層が加硫後の表面研削工程により形状が調整されている導電性ゴムローラにおいて、該ゴム層のゴム組成物の引き裂き強度が5kN/m以上、22kN/m以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
該ゴム層が表面研削を実施後の表面粗さRzが6μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
上記ゴム組成物のゴム成分にエピクロロヒドリンゴムを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
該ゴム層の表面研削を実施後に塗工液によりゴム層上にコーティングされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2008−122781(P2008−122781A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307913(P2006−307913)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】