説明

導電性向上剤及び導電性向上剤塗布器

【課題】プラグ、ターミナル、ジャック、コネクター、切替えスイッチ、その他電気部品や電子部品の接続端子といった電気接続部に、導電性を向上させるため塗布する塗布剤を提供する。
【解決手段】グラファイトカーボンとスクワランとを混合し、前記グラファイトカーボンの重量比率が20重量%以下であり、前記グラファイトカーボンの重量比率が20重量%以下、前記非晶質炭素の重量比率が5重量%以下であり、グラファイトカーボンがμmサイズの粒子径のものとnmサイズの粒子径のものとで構成され、グラファイトカーボン全体に占めるμmサイズの粒子径のものの重量比率が10〜20%で、nmサイズの粒子径のものの重量比率が90〜80%であることを特徴とする導電性向上剤及び、導電性向上剤を収容するペン型筒体と、ペン型筒体内の導電性向上剤を導出する芯とを備えたことを特徴とする導電性向上剤塗布器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プラグ、ターミナル、ジャック、コネクター、切替えスイッチ、その他電気部品や電子部品の接続端子といった電気接続部に、導電性を向上させるため塗布する塗布剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化による環境破壊が進み、地球環境の保全が世界的かつ喫緊の課題となっており、これを背景に、温室効果ガスの削減目標を各国で定めた京都議定書が1997年に締結されている。わが国では削減目標を1990年比−6%と定め、実行年を迎えた本年(2008年)4月から5年間で達成すべく産官学それぞれが努力をしているところである。産業部門の中でもとりわけ製造業では順調に排出量を減少させているが、家庭部門では決定的な対応策がなくむしろ増加傾向にあるのが現状である。今後は、家庭で使用される電気、ガス、水道などの節約が一層求められる。
【0003】
電気接続部は、家電製品のコンセントに代表されるように、差込み側、受け側ともに金属製であることが多い。金属接触の場合、差込み側と受け側の接触面が密着しない、差込み側の接触面と受け側の接触面との間に埃などの異物が介入する、などの原因により差込み側と受け側とが完全な面接触とならず、実際にはごくわずかとはいえ隙間が生じて多点接触となっており、これが面接触に比べ導電ロスを生じている。
また、電気接続部の金属表面は、繰返しの抜き差しによって筋状の疵が生じたり、長期間空気中に曝されることで酸化が進むため、時間経過とともに電気接続部の導電性は劣化していた。
このような、導電ロスや導電性の劣化などによって、発熱等で無駄なエネルギーが消費され、電気のエネルギー効率が低下し、機器本来の性能が発揮されないまま、ひいては余分な温室効果ガスを排出する一因となっている。
【0004】
このような導電性劣化を防ぐ手段として、電気接続部の摩耗を防ぐ潤滑剤や、酸化や硫化を防ぐ防止剤や、劣化した電気接続部を元の状態に回復させる接点復活剤、などが提案されてきた。(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−221071号公報
【特許文献2】特開2007−326996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気接続部が、継続使用や経時変化に伴う導電性劣化を回復する手段は種々あったが、劣化する前の新規の状態で導電ロスを減少し従来よりも導電性を向上させる手段はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、電気接続部の金属表面の防錆剤と抜差し時の摩耗を防ぐ潤滑剤の両機能を有し、さらに電気接続部の表面を洗浄して埃などの異物を取り除き、かつ差込み側と受け側で生ずる隙間に良導体であるグラファイトカーボンを充填して電気接続部の面接触を図った導電性向上剤と、これを塗布するための導電性向上剤塗布器を提供するものである。また、本願発明は、電気接続部の導電性を向上させることから、家庭等における導電ロスを低減して電気エネルギーの効率化を図り、ひいては温室効果ガス排出削減に寄与するものである。
【0008】
本願発明の導電性向上剤は、グラファイトカーボンとスクワランとを混合したものであり、その導電性向上剤中のグラファイトの重量比率は20重量%以下である。また、本願発明の導電性向上剤は、グラファイトカーボンとスクワランと非晶質炭素とを混合したものとし、その導電性向上剤中のグラファイトの重量比率を20重量%以下、前記非晶質炭素の重量比率を5重量%以下とすることもできる。
【0009】
さらに本願発明の導電性向上剤は、これに混合されるグラファイトカーボンがμmサイズの粒子径のものとnmサイズの粒子径のものとで構成され、グラファイトカーボン全体に占めるμmサイズの粒子径のものの重量比率が10〜20%で、nmサイズの粒子径のものの重量比率が90〜80%とすることもできる。
【0010】
本願発明の導電性向上剤塗布器は、本願発明の導電性向上剤を収容するペン型筒体と、ペン型筒体内の導電性向上剤を導出するための芯とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の導電性向上剤及び導電性向上剤塗布器は次のような効果がある。
(1)電気接続部の表面に塗布することによってその表面を洗浄して埃などの異物を取り除き接続間の隙間の発生を防ぎ、また差込み側と受け側の微細な形状の差異によって生ずる隙間に良導体であるグラファイトカーボンを充填することで、従来の多点接触よりも接触面の大きい面接触とし、導電性を向上させることができる。本効果は、試験結果(試験例1)によって確認された。
(2)導電性の向上に伴って、省電力化、充電時間の短縮化、電気製品の長寿命化が実現し、AV機器の画質・音質の向上、照明機器の照度向上も実現する。本効果は、試験結果(試験例2及び3)によって確認された。
(3)本願発明の導電性向上剤に含まれるスクワランが潤滑油として働き、グラファイトカーボンも自己潤滑性を有するため、電気接続部における抜き差しなどが円滑となり、電気接続部の摩耗を防ぐ。
(4)本願発明の導電性向上剤を塗布することで、電気接続部の金属表面を酸化から防止し、電気接続部の機能維持を図る。
(5)本願発明の導電性向上剤をアンテナの端子部や基部に塗布することで、電波の感度を向上させる。本効果は、試験結果(試験例4)によって確認された。
(6)本願発明の導電性向上剤塗布器はペンタイプであり、持ち運びや塗布作業が容易であり、ペン先を細くすることもできるので細部にも塗布しやすい。
(7)本願発明の導電性向上剤は粘性が低く浸透性が高いため、少ない塗布で広く行き渡って塗布しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(導電性向上剤の実施形態1)
本願発明の導電性向上剤の一実施形態について説明する。
本願発明の導電性向上剤は、良導体であるグラファイトカーボンと浸透性や潤滑性に優れたスクワランとを混合したもので、コンセント差込み時など導電性向上剤が加圧状態に置かれると電気接続部の隙間を埋めたグラファイトカーボンが導電を促進し、加圧がない状態では不導体であるスクワランの働きで短絡を防止する。本願発明の導電性向上剤は、スクワランの揮発特性(引火点220℃以上)により、塗布後も長時間乾燥することなく効果を持続することができる。なお、スクワランは化粧品や医療品としても利用されるように、グラファイトカーボンとともに人体や金属類には悪影響を及ぼさない。
【0013】
また、本願発明の導電性向上剤は流動性が高く、この流動性を保つため導電性向上剤中のそれぞれの重量比率がグラファイトカーボン20重量%以下、スクワラン80重量%以上であって100重量%未満としたものであり、望ましくはグラファイトカーボン10重量%以下、スクワラン90重量%以上であって100重量%未満とするとさらに効果があがる。
【0014】
本願発明の導電性向上剤は、グラファイトカーボンの粒子間のつながりをさらに高めるために、粒子の間隙に入り込んで密着させるカーボンブラック等の非晶質炭素をグラファイトカーボンとスクワランとの混合体に添加することも有効である。この場合も前記同様、流動性を保つためにグラファイトカーボン20重量%以下、スクワラン75重量%以上であって100重量%未満、非晶質炭素5重量%以下で混合されたものとし、望ましくはグラファイトカーボン10重量%以下、スクワラン90重量%以上であって100重量%未満、非晶質炭素5重量%以下であってグラファイトカーボンの重量比率未満で混合されたものとするとさらに流動性の効果があがる。
【0015】
導電性向上剤に含有されるグラファイトカーボンは、黒鉛等の電解酸化により得られたカーボンコロイドを乾燥し、さらに粉末化して得られるもので、微細な薄片状を呈している。なお、本願発明の導電性向上剤にとっては、他の製法で得られたグラファイトカーボンを使用してもよい。
このグラファイトカーボンは、粒子径がμmサイズのグラファイトカーボンとnmサイズのグラファイトカーボンで構成され、グラファイトカーボンの粒子間のつながりを高めるべく粒子の間隙に入り込んで密着させるためには、以下の重量比1(粒子径μmサイズの重量比)と重量比2(粒子径nmサイズの重量比)とで構成される。
(重量比1)=(粒子径μmサイズ)/(グラファイトカーボン全体)=10〜20%
(重量比2)=(粒子径nmサイズ)/(グラファイトカーボン全体)=90〜80%
【0016】
同じく導電性向上剤に含有されるスクワランは、鮫の肝油を原料として得られるスクワレンに水素添加する精製工程を経て得られる飽和炭化水素である。前記のとおりスクワランは化粧品や医療品としても利用されるように、人体に対する毒性はなく、金属類や樹脂類を侵すこともない。引火点が220度以上と極めて高いため、安全性も高く、塗布後も乾燥しにくい。また、浸透性や潤滑性に優れ、この特性から本願発明の導電性向上剤を少量塗布しただけで、塗布対象部全体に広がり、電気接続部の金属表面の異物も洗い流すことができる。なお、本願発明の導電性向上剤にとっては、このスクワランが植物を原料とする植物性スクワランやその他化学合成スクワランでもよい。
また、導電性向上剤に用いるスクワランを予め遠赤外線セラミックで電磁波処理しておくと、スクワランの凝固点が約−60℃から約−80〜−85℃に降下することで導電性向上剤の温度特性が高まり、寒冷地でも利用できるなど効果的である。
【0017】
(導電性向上剤塗布器の実施形態1)
本願発明の導電性向上剤塗布器の一実施形態を図1に基づいて説明する。
導電性向上剤塗布器1は、ペン型筒体2、ホルダー3、ペン先4及びキャップ5から構成され、片手に持って塗布しやすい形状を呈している。
図2(図1のA−A断面図)に示すように、ペン型筒体2の中にはステンレス玉6、シリンダーセット7が収容され、さらにこのシリンダーセット7の中にはシリンダーピン8及びバネ9が格納されている。なお、本願発明の導電性向上剤塗布器にとっては、ステンレス玉6がガラス玉や鋼球等であってもよい。
【0018】
図3は、導電性向上剤塗布器の組み立て分解図である。
ペン型筒体2の中に、導電性向上剤10とステンレス玉6を収容し、さらにバネ9の中にシリンダーピン8を挿入したものを格納したシリンダーセット7を収容し、ペン先4をホルダー3に取り付けてペン型筒体2の先端に設けられたねじ部に装着する。これらを完成品とし、使用時にはキャップ5をはずし、不使用時にはキャップ5で栓をする。
【0019】
図4は、導電性向上剤塗布器を使用して塗布する態様を示したものである。
シリンダーピン8を介してバネ9によって付勢されたペン先4を塗布対象物に押付けると、バネ9が縮みペン先4の一端(本体内部側の端)がペン型筒体2内に入り込み、ここに充填された導電性向上剤10に触れてペン先4全体に含浸する。ペン先4の押付けを解除すると、バネ9の弾性によってペン先4は元の状態に戻る。なお、導電性向上剤塗布器1を長手方向に振ると、ペン型筒体2内のステンレス玉6が導電性向上剤10を攪拌し、導電性向上剤10内のスクワラン、グラファイトカーボンが均一化する。
【0020】
ペン先4に導電性向上剤10が含浸した状態で、コンセントの端子部分11(図5)などに、サインペンで着色するように塗布する。
本実施例では、ペン先4に導電性向上剤10を含浸させる方法で説明したが、ペン先4に微小な孔を設け、ここから導電性向上剤10を滲出させる構造としてもよい。
【0021】
(試験例1)
ACコンセントプラグに導電性向上剤を塗布して、導電性が向上することを確認する試験を行った。(発明の効果(1)に相当する効果確認)
図6に示すように、直流回路12内に直流電源13と負荷14を配置し、さらにACコンセントプラグの受け側15にACコンセントプラグの差込み側16をつないだ状態で直流回路12に接続し、24V・1Aを印加する。直流回路12に取り付けた電流計17と電圧計18で、それぞれ電流・電圧を計測することによってコンセントプラグの抵抗値を測定したところ、以下の結果が得られた。なお、ACコンセントプラグは3種類用意し、それぞれACコンセントプラグの差込み側16のコンセントの端子部分11(図5)に導電性向上剤を塗布する前と塗布後の場合で試験を行った。
(1)未使用のACコンセントプラグの場合
導電性向上剤塗布前が15.2mΩで、塗布後が14.6mΩに抵抗値が減少(導電性が向上)。
(2)使用したACコンセントプラグの場合
導電性向上剤塗布前が15.9mΩで、塗布後が15.2mΩに抵抗値が減少(導電性が向上)。
(3)使用後に長期不使用のACコンセントプラグの場合
導電性向上剤塗布前が17.2mΩで、塗布後が16.3mΩに抵抗値が減少(導電性が向上)。
【0022】
(試験例2)
電動ポットのコンセントプラグに導電性向上剤を塗布して、省電力化の効果を確認する試験を行った。(発明の効果(2)に相当する効果確認)
容量2.2リットルの電動ポット(定格:交流100V、985W、50/60Hz、98℃保温時消費電力約44W)に水道水2.2リットルを注入して沸騰するまでの時間を計測した結果、導電性向上剤塗布前が平均17分43秒(1回目17分38秒、2回目17分48秒)で、塗布後が平均15分33秒(1回目15分46秒、2回目15分20秒)に短縮された(省電力化が図られる)ことが確認できた。
【0023】
(試験例3)
電気スタンドのコンセントプラグ及び電球とソケットの接点に導電性向上剤を塗布して、照度が向上することを確認する試験を行った。(発明の効果(2)に相当する効果確認)
白熱灯電気スタンド(60Wレフ型電球)の照度を測定した結果、導電性向上剤塗布前が795Luxで、塗布後が858Luxに照度が向上することが確認できた。また、電球型蛍光灯による試験を行ったところ、立ち上がり時における点灯速度が向上することも目視で確認できた。
【0024】
(試験例4)
自動車のキーレスリモコンが、導電性向上剤の塗布によって電波の感度が向上することを確認する試験を行った。(発明の効果(5)に相当する効果確認)
乗用車のキーレスリモコンに内蔵されているボタン電池(正極、負極)に導電性向上剤を塗布して、キーレスリモコンが作動する離隔を測定した結果、導電性向上剤塗布前が9.5mで、塗布後が11.5mに伸びる(感度向上が図られる)ことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本願発明の導電性向上剤は、家電製品の電気接続部や電池使用機器への利用に留まらず、各種自動販売機や電動フォークリフト等、業務用としての用途にも利用できる。
また、電波感度が向上することから、携帯電話や無線PCなど通信機器にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の導電性向上剤塗布器の外観図。
【図2】本願発明の導電性向上剤塗布器の断面図(図1に示すA−A断面図)。
【図3】本願発明の導電性向上剤塗布器の組み立て分解図。
【図4】本願発明の導電性向上剤塗布器の使用態様図。
【図5】コンセントの端子部分に塗布する例を示す図。
【図6】導電性向上剤の塗布による導電性向上確認試験を示す図。
【符号の説明】
【0027】
1 導電性向上剤塗布器
2 ペン型筒体
3 ホルダー
4 ペン先
5 キャップ
6 ステンレス玉
7 シリンダーセット
8 シリンダーピン
9 バネ
10 導電性向上剤
11 コンセントの端子部分
12 直流回路
13 直流電源
14 負荷
15 ACコンセントプラグの受け側
16 ACコンセントプラグの差込み側
17 電流計
18 電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続部に塗布する塗布剤において、グラファイトカーボンとスクワランとを混合し、前記グラファイトカーボンの重量比率が20重量%以下であることを特徴とする導電性向上剤。
【請求項2】
電気接続部に塗布して使用する塗布剤において、グラファイトカーボンとスクワランと非晶質炭素とを混合し、前記グラファイトカーボンの重量比率が20重量%以下、前記非晶質炭素の重量比率が5重量%以下であることを特徴とする導電性向上剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の導電性向上剤において、グラファイトカーボンがμmサイズの粒子径のものとnmサイズの粒子径のものとで構成され、グラファイトカーボン全体に占めるμmサイズの粒子径のものの重量比率が10〜20%で、nmサイズの粒子径のものの重量比率が90〜80%であることを特徴とする導電性向上剤。
【請求項4】
電気接続部に塗布剤を塗布するための塗布器において、請求項1乃至3に記載の導電性向上剤を収容するペン型筒体と、ペン型筒体内の導電性向上剤を導出する芯とを備えたことを特徴とする導電性向上剤塗布器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−286940(P2009−286940A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142486(P2008−142486)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(308017205)グリーンパワー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】