説明

導電性布帛

【課題】人体や柔軟なものが接する際の圧力分布を検知するセンサー部材や電極等として使用しうる、伸縮性、柔軟性があり、人体の凹凸や変形に柔軟に追従できる導電性布帛の提供。
【解決手段】非導電性繊維からなる基布の表面上に、導電性繊維が該基布に編み込まれ又は織り込まれることによって形成された複数個の導電性層が、互いに絶縁された状態で島状に、配置されている導電性布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車シート用の着座センサー、ベッドや椅子上での人体の圧力分布を検知する圧力分布センサー、ロボットの触覚センサー、玩具等の圧力センサーやスイッチ、ウエアラブルな電極やスイッチ等の部材として使用しうる導電性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力を検知するセンサー部材やウエアラブルな電極やスイッチ等として、布帛表面に導電性層を島状に設けた導電性布帛が多く開発されてきた。
以下の特許文献1には、タッチセンサに加えられた圧力の位置及び範囲を測定するため、非導電性の布帛上に圧電性抵抗インクを非連続的に四角の島状に塗布したタッチセンサ用中間部材が開示されている。これ以外にも非導電性繊維からなる基布に金属蒸着、金属スパッタリング、金属メッキ等の後加工により導電性層を形成する技術があるが、これらの後加工により導電性層を形成する方法では、基布が伸縮性を有する場合は特に、導電性布帛の伸縮時に導電性層が剥がれたり、クラックが生じたりする場合があり、導電性層の耐久性が劣る問題があった。
【0003】
基布表面加工以外にも、非導電性繊維からなる基布に刺繍によって導電糸を島状に縫い込む方法が考えられるが、刺繍によって形成された島状導電層には基布が伸縮性を有する場合は特に、導電性布帛の伸縮性が阻害されるとともに、導電層が刺繍により硬くなるため柔軟性が劣る問題があった。
このように、特に伸縮性を有する布帛において、耐久性に優れ、伸縮性、柔軟性が良好な島状の導電性層を形成させる方法はいまだ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−531142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐久性に優れ、伸縮性、柔軟性が良好な、導電性層が布帛表面に島状に配置された導電性布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、布帛表面への導電性層の形成方法、布帛基材の構成、導電性層の面積比率等を鋭意検討し実験を重ねた結果、予想外に本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0007】
[1]非導電性繊維からなる基布の表面上に、導電性繊維が該基布に編み込まれ又は織り込まれることによって形成された複数個の導電性層が、互いに絶縁された状態で島状に、配置されている導電性布帛。
【0008】
[2]前記導電性層の一部が切り抜かれていることにより前記導電性層が島状に配置されている、前記[1]に記載の導電性布帛。
【0009】
[3]前記島状の個々の導電性層の面積が0.5〜200cmであり、前記複数個の導電性層の合計面積A(cm)と前記導電性層が形成されていない非導電性部分の合計面積B(cm)の比A/Bは1〜10である、前記[1]又は[2]に記載の導電性布帛。
【0010】
[4]前記導電性層には前記導電性繊維が配されているが、前記非導電性部分には前記導電性繊維が配されていない、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性布帛。
【0011】
[5]タテ及び/又はヨコ方向に5〜200%の伸長率を有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性布帛。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導電性布帛は、耐久性に優れ、伸縮性、柔軟性が良好な導電性層を布帛表面に島状に配置することにより、伸縮性、柔軟性の高い導電性布帛とすることができるため、人体の凹凸や変形に柔軟に追従できる感圧センサーや電極等の部材として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の導電性布帛の模式図(上視図)である。
【図2】本発明の導電性布帛の模式図(上視図)である。
【図3】本発明の導電性布帛の模式図(上視図)である。
【図4】本発明の導電性布帛の模式図(上視図)である。
【図5】本発明の導電性布帛の模式図(上視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の導電性布帛は、人体の凹凸や変形に柔軟に追従するため、タテ方向及び/又はヨコ方法に5〜200%の伸長率を有することが好ましく、より好ましくは10〜100%、さらに好ましくは20〜80%である。
本発明でいう伸長率とは、タテ方向又はヨコ方向に布帛を5cm幅×30cm長にカットし、つかみ間隔を20cmとして、20cm/minの引張速度で布帛を伸長する際、14.7Nの荷重となった時の布帛の伸び率のことをいい、以下の式:
伸長率(%)={(14.7N荷重時のつかみ間隔cm−20cm)/20cm}×100
で算出される。
【0015】
本発明の導電性布帛の非導電性部分を形成する繊維としては、非導電性の任意の繊維を用いることができるが、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン等の比較的公定水分率の低い合成繊維を用いることが、湿度等の影響を受け難くする上で好ましい。より高い伸縮性を布帛に付与するためには、非導電性繊維にポリエステルやナイロンの仮撚加工糸を使用したり、ポリウレタン繊維を混用したりすることが好ましい。特にポリウレタン繊維は熱融着性等による生地の解れ防止機能を持つものを使用すると、ストライプ状の導電性層を切り抜く際に基布の解れ等が発生しにくくなるためより好ましい。これらの繊維の繊度は、製編織性を向上させる観点から、50〜1000デシテックスが好ましく、ポリウレタン繊維の場合には、15〜100デシテックスが好ましい。
【0016】
本発明の導電性布帛は、基布の表面に複数個の導電性層が互いに絶縁された状態で島状に配置されていることを特徴とする。導電性層の形状や配置は特に限定されないが、センサー部材として使用するためには、図1に示すように導電性層が格子状に配置されていることが好ましい。島状の導電性層と隣り合う島状の導電性層の間は、センサー等の用途において圧力分布状態を検知するために絶縁されている必要があり、電圧をかけても電流が流れないことが必要である。また、島状の導電性層の電気抵抗値は、本導電性布帛と接する別の導電性布帛の局部的な電気抵抗値を下げ、圧力分布を測定する圧力センサー用部材として用いる際、その検知性能を高めるために、2Ω/cm以下であることが好ましく、1Ω/cm以下がより好ましい。島の形状は正方形、長方形等の略四角形、略ひし形、略円形、略六角形等、任意の形状とすることができるが、形状の作り易さから正方形や長方形等の略四角形や略ひし形が好ましく、正方形であることが最も好ましい。
【0017】
本発明の導電性布帛において、1つの島状の導電性層の面積は0.5〜200cmであることが好ましく、より好ましくは1〜150cmである。1つの島状の導電性層の面積が200cmを超えると、導電性層が基布の伸長を妨げ布帛全体の伸縮性が劣る傾向となる。1つの島状の導電性層が0.5cm未満の場合、基布表面に精密に導電性層を形成することが困難となり、センサーや電極としての精度が劣るものとなる。ここで、複数個の導電性層の合計面積A(cm)と導電性層が形成されていない非導電性部分の合計面積B(cm)の比A/Bが1〜10であることが好ましい。A/Bが10を超えると伸縮性が阻害されやすく、一方、A/Bが1未満であると伸縮性は良好となるが、圧力分布を測定するには検出精度が低下して好ましくない。該比A/Bは、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜5である。
【0018】
導電性布帛が伸縮性を発現する際は、島状の導電性層の間の非導電性部分がまず優先的に伸縮する。このため、非導電性部分が導電性層に対して一定割合以上存在することが必要となる。そのため、好ましい非導電性部分の幅は2mm以上、より好ましくは3mm以上である。
【0019】
本発明では、非導電性繊維からなる基布の表面上に導電性繊維が編み込まれるか又は織り込まれることによって導電性層が形成されていることを特徴とする。導電性繊維が編み込まれるか又は織り込まれることによって形成された導電性層であることによって、耐久性に優れ、かつ柔軟性が良好な導電性布帛とすることができる。導電性層の全面が導電糸で構成されている必要は無く、格子柄のように導電糸を基布上に配して見かけ上、一定の面積が導電性層となるように配置することもできる。1つの島状の導電性層の面積に占める導電性繊維の面積比率は5〜80%であることが好ましく、より好ましくは10〜70%である。導電性繊維の面積比率がこの範囲であれば、導電性繊維が基布の伸縮性に影響を与えることがなく、導電性層全体に適切な導電性を付与することができる。
【0020】
島状の領域だけに導電性繊維を編み込む又は織り込む方法としては、例えば、特殊な編織機によって部分的に導電性繊維を編み込むか又は織り込む特殊な組織とすればよい。但し、これらの方法では、組織や布帛厚みの制約等により、伸縮性の点でやや劣る場合がある。
【0021】
別の方法として、編織物を二重に形成しながら導電性繊維を編織物の長さ方向にストライプ状に交編織する際に、二重の編織物の片側の基布に一定長さで導電性繊維を編込んだ後、他方の基布に一定長さで導電性繊維を編込む。これを繰り返すことにより、二重編織物の片面には導電性繊維が島状に形成される。このようにして得られた二重編織物をセンターカットすることにより、島状の導電性層が完全に絶縁された導電性布帛が得られる。センターカット後に、導電性繊維が解れるのを防止するためには、非導電性繊維からなる基布はポリウレタン繊維が交編織された基布であることが好ましく、また、熱融着等により導電性繊維と非導電性繊維を固着させることが好ましい。
【0022】
より大きな伸縮性を付与するためには、ダブルラッセル編機によってストライプ状に供給した導電性繊維をフロント針、バック針の交互に一定長さに編込んだ後、導電性繊維をセンターカットする方法が好ましい。この際、導電性繊維をストライプ状に編む際には、隣り合う導電性繊維が接触して導通することが必要となるため、導電性繊維の編み方は1針以上の振りを有するトリコット編や、1針以上の振りを有する挿入編が好ましい。より具体的には、導電性繊維を1針以上ヨコ振りして編み込むことにより、隣り合う導電性繊維が少なくとも一部分で同一のニットループを形成する方法、1本の導電性繊維のニットループに別の導電性繊維のニットループがタテ方向に連なる方法、1本の導電性繊維のニットループ、シンカーループや挿入糸が隣り合う導電性繊維のニットループ、シンカーループや挿入糸と接触する方法を用いることが好ましい。特に、布帛の伸長や変形に対する回復性や耐久性を向上させるためには、隣り合う導電性繊維が同一のニットループを形成方法、又は1本の導電性繊維のニットループに1本以上隣の別の導電性繊維のニットループがタテ方向に連なる方法がより好ましい。
【0023】
これらの方法は伸縮性等の点で優れるが、センターカットを行った導電性繊維が他の島状に形成された導電層に接触しないようカットする必要があるとともに、センターカットによってできた2枚の布帛のうち一方しか使用しないため製造コストの点でやや劣る。
【0024】
本発明で布帛表面に複数の導電性層を布帛表面に島状に配置するためのさらに別の方法としては、布帛表面の編織方向にストライプ状に導電性繊維を配置して導電性層を形成し、形成された導電性層の一部を絶縁することにより島状の導電性層を形成する方法が挙げられる。
まず、基布表面にストライプ状の導電性層を形成する方法としては、編機や織機によってストライプ状に導電性繊維を交編織する公知の方法で形成することができる。
ストライプの幅とピッチは特に限定されるものではないが、ストライプの幅は5〜500mm、非導電性部分となるストライプのピッチは2〜100mmが好ましい。より好ましくは、ストライプの幅が5〜300mm、ストライプのピッチが2〜60mm、さらに好ましくはストライプの幅が5〜150mm、ストライプのピッチが2〜30mmである。
【0025】
ストライプ状の導電性層は、図2のように導電糸で全面覆われていてもよく、図3のように、例えば、導電糸を格子柄に配して見かけ上、ストライプ状にすることもできる。
ストライプ状の導電性層の一部を絶縁するためには、絶縁すべき箇所の導電糸を切断することが好ましい。具体的には、ストライプ状の導電性層の一部を切り抜いて除去することにより、導電性層が島状になり完全に絶縁された導電性布帛が得られる。切り抜く方法としては特に限定されないが、打抜きやパンチング、カッティングプロッタ、レーザーカット、ヒートカッター等公知の方法が挙げられる。図2のようにストライプの幅全体を切り抜いてもよく、図3のように導電性繊維が配された部分だけを切り抜いてもよい。どちらの場合でも一定の幅を持つ非導電性部分が形成される結果、導電性層が島状に形成されることになる。切り抜き部分の面積をより小さくできる点で、後者の方法がより好ましい。切り抜き後に、導電性布帛が解れるのを防止するためには、レーザーカットやヒートカッターによる方法で基布の切り抜き部分の端面が熱融着によって固着されていることが好ましい。
【0026】
導電性層を切り抜く際の形と大きさは、布帛の特性を損なわない範囲であれば特に限定しないが、伸縮性が要求される場合は極力小さくすることが好ましい。切り抜き部分の面積率は個々の切り抜き部分の合計面積C(cm)と布帛全体の面積D(cm)の比を適正に保つことであり、1つの切り抜き部分の面積は0.03〜50cmが好ましく、より好ましくは0.05〜30cmである。1つの切り抜き部分の面積が50cmを超えると、布帛の伸長時に変形が大きくなり、センサーや電極としての使用が困難になる。1つの切り抜き部分の面積が0.03cm未満の場合、布帛の伸縮時に島状の導電性層同士が接触してしまうおそれがある。
【0027】
ここで、個々の切り抜き部分の合計面積C(cm)と布帛全体の面積D(cm)の比C/Dが0.01〜0.30であることが好ましい。C/Dが0.30を超えると布帛の伸長時に変形が大きくなりやすく、一方、C/Dが0.01未満であると伸縮性は良好となるが、圧力分布を測定するには検出精度が低下して好ましくない。該比C/Dは、より好ましくは0.03〜0.25であり、さらに好ましくは0.05〜0.20である。特に格子柄のように導電糸を基布上に配してストライプ状にした場合、格子柄の交点のみを切り抜くことで導電性層を島状にすることができ、切り抜く面積も小さくすることができて好ましい。
【0028】
導電性布帛により大きな伸縮性を付与するためには、導電性繊維をストライプ状に編む際に、隣り合う導電性繊維が接触して導通することが必要となるため、導電性繊維の編み方は1針以上の振りを有するトリコット編や、1針以上の振りを有する挿入編が好ましい。より具体的には、導電性繊維を1針以上ヨコ振りして編み込むことにより、隣り合う導電性繊維が少なくとも一部分で同一のニットループを形成する方法、1本の導電性繊維のニットループに別の導電性繊維のニットループがタテ方向に連なる方法、1本の導電性繊維のニットループ、シンカーループや挿入糸が隣り合う導電性繊維のニットループ、シンカーループや挿入糸と接触する方法を用いることが好ましい。特に、布帛の伸長や変形に対する回復性や耐久性を向上させるためには、隣り合う導電性繊維が同一のニットループを形成方法、又は1本の導電性繊維のニットループに1本以上隣の別の導電性繊維のニットループがタテ方向に連なる方法がより好ましい。
【0029】
本発明に用いる導電性繊維は、合成繊維の表面にスパッタリング、蒸着、メッキ等の方法により、銀、銅、ニッケル、硫化銅等の公知の金属皮膜を形成した繊維や、銅、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等の公知の金属繊維や、ポリピロール、ポリアニリン等の公知の導電性高分子繊維等であることができる。また、芯糸に弾性繊維を用い、これらを導電性繊維でカバーリングや撚糸した複合糸は、それ自体で布帛の伸縮性を増大できるものとなる。導電性繊維としては、任意の繊度を使用することができるが、高分子繊維を主体として構成される導電性繊維の場合、導電性が良好で製編織性に優れる観点から、総繊度30〜1000デシテックスのマルチフィラメントが好ましい。金属繊維の場合、単糸の直径が1〜500μmのモノフィラメントやマルチフィラメントが好ましいが、単糸の直径が1〜200μmのマルチフィラメントであると製編織性が良好となるため、より好ましい。
【0030】
本発明の導電性布帛は水等の液体で濡れたり、導電性繊維に腐食等の劣化が生じたりすることを防止するため、導電性層の反対面(電極等に使用しない面)の少なくとも一部が樹脂で被覆されていることが好ましい。樹脂で被覆する方法としては、導電性布帛の片面にコーティング加工やラミネート加工等による樹脂加工を行ことが、水分等の液体の浸入を防止する上で好ましい。
導電性布帛の片面を被覆する樹脂は限定されるものではなく、一般に使用されている樹脂を使用することができ、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、クロロプレン、クロロスルホン化ポリオレフィン、アクリル、フッ素、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレンブタジエン等の樹脂を使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
28ゲージ、4枚筬を有するトリコット編機(カールマイヤー製KS4)を用いて、表側の非導電性の基布を形成する筬L1、L2、裏側の非導電性の基布を形成する筬L3において、L1にポリウレタン繊維44デシテックスをオールインで供給し、L2にポリエステル繊維110デシテックス48フィラメントをオールインで供給した。また、基布表面に導電性層を形成する筬L3にポリエステルの表面を銀で被覆した導電性繊維167デシテックス/72フィラメント(三菱マテリアル株式会社製シルファイバー)を20イン4アウトで供給し、下記に示す編組織にて生機を編成した。
・編組織
L1筬:デンビ
L2筬:コード
L3筬:デンビ
次いで、得られた生機を、精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、レーザーカット機により編地のストライプ状の導電性層をタテ2mm、ヨコ10mmの大きさで四角形状に切り抜き、目的とする導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛は、導電性繊維が基布表面を覆った10mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向、ヨコ方向共に2mm幅である図2に示す導電性布帛を得た。
【0032】
得られた導電性布帛は、導電性層部分の電気抵抗が0.7Ω/cmで良好な導電性を示した。本導電性布帛を産業技術総合研究所と東京大学が共同開発した触覚分布センサー(ロボティクスシンポジア予稿集Vol.14th Page.211−216 2009年3月16)の低抵抗率シートとして使用した。その結果、硫化銅で表面被覆したアクリル繊維を高伸縮性ニット生地にジグザグ縫いし、9mm角の格子状とした高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えると、高抵抗率シートの加圧部位の抵抗変化が顕著に現れ、圧力分布検知性能に優れたものであった。また、実施例1の導電性布帛は、伸縮性、柔軟性に優れ、伸長や変形時においても圧力分布を良好に検知できるものであった。
結果を以下の表1に示す。
【0033】
[実施例2]
28ゲージ、4枚筬を有するトリコット編機(カールマイヤー製KS4)を用いて、表側の非導電性の基布を形成する筬L1、L2、裏側の非導電性の基布を形成する筬L3、L4において、L1にポリウレタン繊維44デシテックスをオールインで供給し、L2にポリエステル繊維110デシテックス48フィラメントをオールインで供給した。また、基布表面に導電性層を形成する筬L3、L4にポリエステルの表面を銀で被覆した導電性繊維167デシテックス/72フィラメント(三菱マテリアル株式会社製シルファイバー)を1イン8アウトで5本に1本の割合で糸抜きをしながら供給し、下記に示す編組織にて生機を編成した。
・編組織
L1筬(バック1):デンビ
L2筬(バック2):コード
L3筬(フロント1):8コースアトラス
L4筬(フロント2):8コースアトラス
次いで、得られた生機を、精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、打ち抜きにより編地のストライプ状の導電性層を直径5mmの丸形状に切り抜き、目的とする導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛は、導電性繊維が基布表面を覆った30mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向で7mm幅、ヨコ方向で5mm幅である図3に示す導電性布帛を得た。
【0034】
得られた導電性布帛を実施例1と同様に触覚分布センサーの低抵抗率シートとして使用した。その結果、高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えると、高抵抗率シートの加圧部位の抵抗変化が顕著に現れ、圧力分布検知性能に優れたものであった。また、実施例2の導電性布帛は伸縮性、柔軟性に優れ、伸長や変形時においても圧力分布を良好に検知できるものであった。
結果を以下の表1に示す。
【0035】
[実施例3]
28ゲージのシングルニット丸編機を用いて、非導電性の基布を形成する糸としてポリエステル繊維167デシテックス72フィラメントを供給し、導電性層を形成する糸としてポリエステルの表面を銀で被覆した導電性繊維167デシテックス/72フィラメント(三菱マテリアル株式会社製シルファイバー)を供給し、非導電性層の幅が5mm、導電性層の幅が20mmとなるようにそれぞれ配列した。また、布帛に伸縮性を持たせるためにポリウレタン繊維44デシテックスを交編し、天竺組織にて生機を編成した。
次いで、得られた生機を開反した後、精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、ヒートカッターにより編地のストライプ状の導電性層をタテ20mm、ヨコ5mmの大きさで四角形状に切り抜き、目的とする導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛は、導電性繊維が基布表面を覆った20mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向、ヨコ方向共に5mm幅である図4に示す導電性布帛を得た。
【0036】
得られた導電性布帛を実施例1と同様に触覚分布センサーの低抵抗率シートとして使用した。その結果、高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えると、高抵抗率シートの加圧部位の抵抗変化が顕著に現れ、圧力分布検知性能に優れたものであった。また、実施例3の導電性布帛は伸縮性、柔軟性に優れているが、伸長や変形時においても圧力分布を良好に検知できるものであった。
結果を以下の表1に示す。
【0037】
[実施例4]
エアージェット織機を用いて、経糸として非導電性の基布を形成する糸にポリエステル繊維84デシテックス36フィラメントの仮撚加工糸を供給し、導電性層を形成する糸としてポリエステルの表面を銀で被覆した導電性繊維84デシテックス/36フィラメント(三菱マテリアル株式会社製シルファイバー)を供給し、非導電性層の幅が5mm、導電性層の幅が15mmとなるように経糸整経し、緯糸としてポリエステル繊維110デシテックス48フィラメントの仮撚加工糸を打ち込み、ツイル組織にて生機を製織した。
次いで、得られた生機を精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、ヒートカッターにより編地のストライプ状の導電性層をタテ5mm、ヨコ15mmの大きさで四角形状に切り抜き、目的とする導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛は、導電性繊維が基布表面を覆った15mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向、ヨコ方向共に5mm幅である図5に示す導電性布帛を得た。
【0038】
得られた導電性布帛を実施例1と同様に触覚分布センサーの低抵抗率シートとして使用した。その結果、高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えると、高抵抗率シートの加圧部位の抵抗変化が顕著に現れ、圧力分布検知性能に優れたものであった。また、柔軟性に優れていたが、伸縮性がやや劣るものの、伸長可能な範囲であれば伸長時にも圧力分布を良好に検知できた。
結果を以下の表1に示す。
【0039】
[比較例1]
28ゲージ、4枚筬を有するトリコット編機(カールマイヤー製KS4)を用いて、筬L1にポリウレタン繊維44デシテックスをオールインで供給し、筬L2にポリエステル繊維110デシテックス48フィラメントをオールインで供給し、下記に示す編組織にて生機を編成した。
・編組織
L1筬:デンビ
L2筬:コード
次いで、得られた生機を、精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、導電性樹脂(藤倉化成株式会社製ドータイト)を非連続的に20mm角の島状に5mm間隔で塗布し、目的とする導電性布帛を得た。
【0040】
得られた導電性布帛は、導電性樹脂によって基布表面を覆われた10mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向、ヨコ方向共に2mm幅である図1に示す導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛を実施例1と同様に触覚分布センサーの低抵抗率シートとして使用した。その結果、高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えるときの圧力分布検知性能を有するが、導電性層が生地の伸縮性を阻害するために、柔軟性に劣り、伸長や変形時において圧力分布を良好に検知できなかった。
結果を以下の表1に示す。
【0041】
[比較例2]
28ゲージ、4枚筬を有するトリコット編機(カールマイヤー製KS4)を用いて、筬L1にポリウレタン繊維44デシテックスをオールインで供給し、筬L2にポリエステル繊維110デシテックス48フィラメントをオールインで供給し、下記に示す編組織にて生機を編成した。
・編組織
L1筬:デンビ
L2筬:コード
次いで、得られた生機を、精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、布帛の表面にスパッタリングにより、銀の金属皮膜を非連続的に20mm角の島状に5mm間隔で形成させ、目的とする導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛は、銀の金属皮膜によって基布表面を覆われた10mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向、ヨコ方向共に2mm幅である図1に示す導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛を実施例1と同様に触覚分布センサーの低抵抗率シートとして使用した。その結果、高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えるときの圧力分布検知性能を有するが、伸縮させることにより布帛の表面に形成された導電層にひびが入り、伸長や変形時において圧力分布を良好に検知できなかった。
【0042】
[比較例3]
28ゲージ、4枚筬を有するトリコット編機(カールマイヤー製KS4)を用いて、筬L1にポリウレタン繊維44デシテックスをオールインで供給し、筬L2にポリエステル繊維110デシテックス48フィラメントをオールインで供給し、下記に示す編組織にて生機を編成した。
・編組織
L1筬:デンビ
L2筬:コード
次いで、得られた生機を、精練・乾燥して余分な油分や不純物を除去し、熱セットにて形状を安定させた後、導電性層を形成する糸としてポリエステルの表面を銀で被覆した導電性繊維84デシテックス/36フィラメント(三菱マテリアル株式会社製シルファイバー)を合撚した糸を供給し、布帛に1頭刺繍機により、10mm角の導電性層を2mmの非導電性部分の幅を設けてタテ、ヨコ方向に各16列の導電性層を有する、目的とする導電性布帛を得た。
【0043】
得られた導電性布帛は、銀の金属皮膜によって基布表面を覆われた10mm角の導電性層がブロック状に複数形成され、非導電性部分の幅がタテ方向、ヨコ方向共に2mm幅である図1に示す導電性布帛を得た。
得られた導電性布帛を実施例1と同様に触覚分布センサーの低抵抗率シートとして使用した。その結果、高抵抗率シートと重ね合わせて圧力を加えるときの圧力分布検知性能を有するが、柔軟性、伸縮性に劣るものであった。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の導電性布帛は、伸縮性、柔軟性があり人体の凹凸や変形に柔軟に追従できる導電性布帛であり、自動車シート用の着座センサー、ベッドや椅子上での人体の圧力分布を検知する圧力分布センサー、ロボットの触覚センサー、玩具等の圧力センサーやスイッチ、ウエアラブルな電極やスイッチ等の部材として好適に利用しうる。
【符号の説明】
【0046】
1 導電性層
11 導電糸
2 非導電性部分
3 切り抜き部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性繊維からなる基布の表面上に、導電性繊維が該基布に編み込まれ又は織り込まれることによって形成された複数個の導電性層が、互いに絶縁された状態で島状に、配置されている導電性布帛。
【請求項2】
前記導電性層の一部が切り抜かれていることにより前記導電性層が島状に配置されている、請求項1に記載の導電性布帛。
【請求項3】
前記島状の個々の導電性層の面積が0.5〜200cmであり、前記複数個の導電性層の合計面積A(cm)と前記導電性層が形成されていない非導電性部分の合計面積B(cm)の比A/Bは1〜10である、請求項1又は2に記載の導電性布帛。
【請求項4】
前記導電性層には前記導電性繊維が配されているが、前記非導電性部分には前記導電性繊維が配されていない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性布帛。
【請求項5】
タテ及び/又はヨコ方向に5〜200%の伸長率を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19064(P2013−19064A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151662(P2011−151662)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】