説明

導電性材料の現像処理方法及び導電性材料の現像処理装置

【課題】銀塩含有層にキズが発生することを抑制すると共に、現像ムラを抑制することができる導電性材料の現像処理方法及び導電性材料の現像処理装置を提供する。
【解決手段】現像処理槽16内に3本の液中ターンバー30が配置されており、液中ターンバー30の周面に軸方向に形成されたスリットから現像液16Aが噴出されることにより、感光ウエブ12が液中ターンバー30から浮揚し、非接触で方向転換される。現像処理槽16内の現像液16A中で感光ウエブ12は、4m/分以上の搬送速度で搬送されている。また、3本の液中ターンバー30の上流側と下流側には、感光ウエブ12の両面に現像液16Aを吹き付けるノズル50Aを備えた複数の吹き付け装置50が配設されている。ノズル50Aから現像液が吹き付けられることにより、感光ウエブ12の表面近傍が撹乱され、現像液が感光ウエブ12の表面近傍に滞留することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を含有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の現像処理方法及び導電性材料の現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀塩感光材料を露光して現像処理した後、表面抵抗低減処理を施した透光性導電膜として、近年PDP(プラズマディスプレイパネル)の電磁波シールド膜が知られている。
【0003】
特許文献1には、細線等のパターンを銀塩感光材料に露光し、現像、めっき処理して導電性膜を得る方法が開示されている。この方法のなかで現像処理については、現像工程、定着工程、水洗・安定化処理工程の順で実施されることが記載されている。また、得られた現像済み材料を活性化処理、無電解銅めっき、連続電解めっきで処理し、最終的に所望の導電性を持つ透明導電性膜が得られることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、感光材料に乳剤層が実質的に最上層に配置され、乳剤層に酸化防止剤を含有する技術が開示されている。このなかで物理現像やめっき処理が速やかに行われるために乳剤層上に保護層を設けないことが有利であることが記載されている。また、保護層を設けない弊害として、外圧による影響を受けやすく、カブリが起きやすいことが示唆されており、この感光材料により外圧による影響を低減している。
【0005】
特許文献3、特許文献4には、銀塩感材を露光・現像処理して導電性パターンを得る工程において、銀塩感材の乳剤面には接触しないで、バック面のみローラに接触させて搬送する現像処理装置が開示されている。
【0006】
特許文献5には、X線フィルム等の写真感光材料を搬送ローラに挟持(ニップ)搬送して処理する自動現像機が開示されている。
【0007】
特許文献6には、写真感光材料の自動現像機において、写真感光材料を複数の挟持(ニップ)ローラにより搬送する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2006−352073号公報
【特許文献2】特開2006−228469号公報
【特許文献3】特開2007−207646号公報
【特許文献4】特開2006−190535号公報
【特許文献5】特開平5−61176号公報
【特許文献6】特開2007−127984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような技術では、以下のような問題点がある。
【0009】
感光材料を特許文献1(特開2006−352073号公報)で述べられたような現像方法で現像するのに、特許文献5(特開平5−61176号公報)、特許文献6(特開2007−127984号公報)に記載されているようないわゆるローラ搬送の機器を用いた場合、微細なゴミや感光材料の両側のエッジの裁断くずなどが液中搬送ローラに付着し、キズを発生させることがある。特に、特許文献2(特開2006−228469号公報)に記載された保護層のない感光材料では著しく傷がつきやすく、乳剤面側を液中搬送ローラに接触させながら搬送させることは困難である。
【0010】
また、特許文献4(特開2006−190535号公報)、特許文献3(特開2007−207646号公報)では、銀塩感材の乳剤面には接触しないでバック面のみローラに接触させるが、この文献で開示されている搬送方法では、一般的なハロゲン化銀感光材料で多く用いられている、連続する2個以上の処理槽(例えば、現像、定着、水洗)にフィルム上の被処理物を浸漬させて非接触で処理することには不向きである。
【0011】
さらには、特許文献4(特開2006−190535号公報)、特許文献3(特開2007−207646号公報)で示された方法では、搬送速度が早くなると(例えば4m/分以上)、挟持ローラがないため銀塩感材のいわゆる液境膜を適宜破壊し、現像反応を均一に進める手段がないため、銀塩感材への同伴液による流れムラが生じる。また、本発明者らの実験によれば、非接触搬送でも液境膜を破壊する手段が必要であることがわかってきた。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、感光材料の銀塩含有層にキズが発生することを抑制すると共に、現像ムラの発生を抑制することができる導電性材料の現像処理方法及び導電性材料の現像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の現像処理方法であって、前記導電性材料前駆体を現像処理液中で4m/分〜50m/分の搬送速度で、前記銀塩含有層に搬送ガイド部材が接触しないように搬送し、前記現像処理液中の少なくとも1箇所以上で前記銀塩含有層近傍の前記現像処理液を撹乱することを特徴としている。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、導電性材料前駆体を現像処理液中で4m/分〜50m/分の搬送速度で、銀塩含有層に搬送ガイド部材が接触しないように搬送することで、銀塩含有層にキズが発生することを抑制することができる。さらに、現像処理液中の少なくとも1箇所以上で銀塩含有層近傍の現像処理液を撹乱することにより、銀塩含有層の液境膜が破壊されると共に、銀塩含有層の表面近傍に現像液が滞留することが抑制される。これにより、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0015】
一方、導電性材料前駆体の搬送速度が4m/分より小さいと、導電性材料前駆体を搬送ガイド部材に接触させずに安定して搬送することが困難となる。また、導電性材料前駆体の搬送速度が50m/分より大きいと、銀塩含有層の液境膜をほぼ均一に破壊することができず、現像ムラの発生を効果的に抑制することが困難となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の導電性材料の現像処理方法において、実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴としている。
【0017】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理する場合、現像処理液中で銀塩含有層が軟膜であるため、銀塩含有層にキズがつきやすいが、請求項2に記載の発明では、実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理しても、銀塩含有層にキズが発生することを抑制することができる。ここで「実質的に表面に保護層を有しない」とは、表面の保護層の厚みが0.5μm以下若しくは表面に保護層を全く有しない場合をいう。
【0018】
請求項3に記載の発明は、支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の現像処理装置であって、現像処理液で満たされた現像処理槽と、前記導電性材料前駆体を4m/分〜50m/分の搬送速度で搬送する搬送手段と、前記現像処理槽内に設けられ、前記銀塩含有層に接触しないように前記導電性材料前駆体を搬送させる搬送ガイド部材と、前記現像処理槽内に設けられ、少なくとも1箇所以上で前記銀塩含有層近傍の前記現像処理液を撹乱する撹乱手段と、を有することを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、搬送手段によって、導電性材料前駆体を現像処理液中で4m/分〜50m/分の搬送速度で搬送し、現像処理槽内に設けられた搬送ガイド部材により、銀塩含有層に接触しないように導電性材料前駆体を搬送させる。これにより、銀塩含有層にキズが発生することを抑制することができる。さらに、現像処理槽内に設けられた撹乱手段によって、現像処理液中の少なくとも1箇所以上で銀塩含有層近傍の現像処理液が撹乱されることにより、銀塩含有層の液境膜が破壊されると共に、銀塩含有層の表面近傍に現像液が滞留することが抑制される。これにより、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0020】
一方、導電性材料前駆体の搬送速度が4m/分より小さいと、導電性材料前駆体を搬送ガイド部材に接触させずに安定して搬送することが困難となる。また、導電性材料前駆体の搬送速度が50m/分より大きいと、銀塩含有層の液境膜をほぼ均一に破壊することができず、現像ムラの発生を効果的に抑制することが困難となる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置において、前記撹乱手段は、前記銀塩含有層に現像処理液を吹き付けるノズルを備えた吹き付け装置であることを特徴としている。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、吹き付け装置のノズルから銀塩含有層に現像処理液を吹き付けることにより、銀塩含有層近傍の現像処理液が撹乱される。これにより、銀塩含有層の液境膜が破壊されると共に、銀塩含有層の表面近傍に現像液が滞留することが抑制される。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置において、前記撹乱手段は、前記導電性材料前駆体の搬送時に前記銀塩含有層と所定の間隔で対向し、弾性変形可能なブレードであることを特徴としている。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、導電性材料前駆体の搬送時に銀塩含有層と所定の間隔で対向し、弾性変形可能なブレードが設けられているので、導電性材料前駆体が所定の速度で搬送されたときに現像処理液によりブレードが弾性変形し、銀塩含有層とブレードとの間に所定の間隔が形成される。このブレードによって、銀塩含有層近傍の現像処理液が撹乱される。このため、銀塩含有層の液境膜が破壊されると共に、銀塩含有層の表面近傍に現像液が滞留することが抑制される。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置において、前記撹乱手段は、前記銀塩含有層と所定の間隔をおいて固定支持された板状体であることを特徴としている。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、銀塩含有層と所定の間隔をおいて固定支持された板状体が設けられており、板状体によって、銀塩含有層近傍の現像処理液が撹乱される。このため、銀塩含有層の液境膜が破壊されると共に、銀塩含有層の表面近傍に現像液が滞留することが抑制される。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置において、前記撹乱手段は、前記銀塩含有層と所定の間隔をおいて配置されたローラであることを特徴としている。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、銀塩含有層と所定の間隔をおいて配置されたローラが設けられており、ローラによって、銀塩含有層近傍の現像処理液が撹乱される。これにより、銀塩含有層の液境膜が破壊されると共に、銀塩含有層の表面近傍に現像液が滞留することが抑制される。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項3から請求項7までのいずれか1項に記載の導電性材料の現像処理装置において、実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴としている。
【0030】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理する場合、現像処理液中で銀塩含有層が軟膜であるため、銀塩含有層にキズがつきやすいが、請求項8に記載の発明では、実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理しても、銀塩含有層にキズが発生することを抑制することができる。ここで「実質的に表面に保護層を有しない」とは、表面の保護層の厚みが0.5μm以下若しくは表面に保護層を全く有しない場合をいう。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項3から請求項8までのいずれか1項に記載の導電性材料の現像処理装置において、前記搬送ガイド部材が、前記導電性材料前駆体を現像処理液中で方向転換させる液中ターンバーであることを特徴としている。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、搬送ガイド部材が、導電性材料前駆体を現像処理液中で方向転換させる液中ターンバーであるので、導電性材料前駆体を現像処理液中で効率よく搬送して現像処理することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、導電性材料前駆体を現像処理するときに、銀塩含有層にキズが発生することを抑制すると共に、現像ムラの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0035】
図1には、本発明に係る導電性材料の処理方法が適用される導電性材料の処理装置が示されている。この処理装置は、支持フィルム上に銀塩含有層としてハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を露光した後に配置され、露光が施された導電性材料前駆体の現像・定着・洗浄等を行う装置である。
【0036】
図1に示されるように、処理装置10では、帯状の支持フィルム上にハロゲン化銀乳剤層を有する感光ウエブ12が複数の支持ローラ14にガイドされた状態で一定方向に搬送される。この感光ウエブ12は、図示しない露光装置により所望の細線状のパターン露光が施されたものである。
【0037】
処理装置10には、感光ウエブ12の搬送方向に沿って上流側から下流側の順に、現像液16Aが貯留された現像処理槽16と、停止液18Aが貯留された現像停止処理槽18と、定着液20Aが貯留された定着槽20と、純水(洗浄液)22Aが貯留された第1水洗槽22と、純水(洗浄液)24Aが貯留された第2水洗槽24と、感光ウエブ12を乾燥させる乾燥装置26と、が配設されている。乾燥装置26には、千鳥状に配置された3本の支持ローラ14に感光ウエブ12が巻き掛けられており、3本の支持ローラ14より搬送方向上流側と搬送方向下流側で感光ウエブ12の表面に温風を吹き付ける温風発生装置28が配設されている。
【0038】
処理装置10では、感光ウエブ12は現像処理槽16の上部に配置された支持ローラ14を経て現像処理槽16に搬送される。現像処理槽16内には、3本の液中ターンバー30が千鳥状に配置されている。液中ターンバー30は、感光ウエブ12と対向する面が円弧状に形成され、感光ウエブ12と対向しない面が平面状に形成されている。すなわち、下方側に配置された2本の液中ターンバー30は、円弧状の面が下方側を向いており、2本の液中ターンバー30の間で上方側に配置された1本の液中ターンバー30は、円弧状の面が上方側を向いている。感光ウエブ12は、下方側に配置された2本の液中ターンバー30と、これらの間で上方側に配置された1本の液中ターンバー30に掛け渡された状態で支持されている。3本の液中ターンバー30により、現像処理槽16内で感光ウエブ12を効率よく搬送し、現像処理を行うことができる。
【0039】
液中ターンバー30には、周面に軸方向に複数のスリット(図示省略)が形成されており、複数のスリットから所定量の現像液16Aが噴射されることにより、感光ウエブ12が液中ターンバー30から浮揚し、非接触となる。これにより、3本の液中ターンバー30に対し、感光ウエブ12はハロゲン化銀乳剤層が非接触となるように支持され、方向転換される。感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層はウエット状態で軟膜のため、スリットから噴射される現像液16Aの量が強すぎて軟膜を破壊しないように所定の噴射量に調整することが望ましい。
【0040】
現像処理槽16内には、3本の液中ターンバー30の搬送方向上流側と搬送方向下流側のそれぞれの部位に、感光ウエブ12の両面に現像液16Aを吹き付ける撹乱手段としての複数の吹き付け装置50が設けられている。吹き付け装置50は、円筒状の部材からなり、感光ウエブ12と所定の間隔で対向するように配置されている。吹き付け装置50の周面の感光ウエブ12と対向する位置には、感光ウエブ12に現像液16Aを吹き付ける複数のノズル50Aが形成されている。複数のノズル50Aから感光ウエブ12の両面に現像液16Aを吹き付けることで、感光ウエブ12の両面近傍の現像液16Aが撹乱され、現像液16Aが感光ウエブ12の両面近傍に滞留することが抑制される。特に感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍を撹乱することで、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜が破壊され、現像反応が促進される。これにより、現像液現像ムラの発生を抑制することができる。
【0041】
本実施形態では、吹き付け装置50は、感光ウエブ12の搬送方向における1本目の液中ターンバー30より上流側に3箇所、1本目と2本目の液中ターンバー30の間に2箇所、2本目と3本目の液中ターンバー30の間に2箇所、3本目の液中ターンバー30より下流側に3箇所設けられている。また、吹き付け装置50は、周面に軸方向に沿って4本のノズル50Aを備えている。吹き付け装置50による現像液16Aの吹き付け量は5〜10l/min×4本に設定されており、ノズル50Aのサイズは、スリット幅が0.5mm、長さが180mmに設定されている。また、ノズル50Aと感光ウエブ12との間隔は、3〜5mmに設定されている。
【0042】
感光ウエブ12の搬送方向下流側の現像処理槽16の出口には、感光ウエブ12と対向するようにエアーナイフ34が配設されている。エアーナイフ34は感光ウエブ12にエアーを吹き付けるものであり、現像処理槽16内を搬送された感光ウエブ12は、現像処理槽16の出口でエアーナイフ34から吹き付けられるエアーにより現像液16Aが掻き落とされ、現像処理槽16及び現像停止処理槽18の上部に配置された搬送ガイド部材36を経て次の現像停止処理槽18に導入される。搬送ガイド部材36は、感光ウエブ12と対向する面が円弧状に形成されており、円弧状面に軸方向に沿って複数のスリット(図示省略)が設けられている。搬送ガイド部材36は、スリットから所定量のエアーを噴出することで、感光ウエブ12を搬送ガイド部材36とほぼ非接触で方向転換させることができる。
【0043】
現像停止処理槽18内には、下方側に液中ターンバー38が配置されており、液中ターンバー38で感光ウエブ12はハロゲン化銀乳剤層が非接触となるように支持され、方向転換される。液中ターンバー38には、周面に軸方向に複数のスリット(図示省略)が形成されており、複数のスリットから所定量の停止液18Aが噴射されることにより、感光ウエブ12が液中ターンバー38から浮揚し、非接触となる。現像停止処理槽18内を搬送された感光ウエブ12は、現像停止処理槽18の出口で、感光ウエブ12の両面に対向して配置されたエアーナイフ34で停止液18Aが掻き落とされ、現像停止処理槽18及び定着槽20の上部に配置された搬送ガイド部材36を経て次の定着槽20に導入される。
【0044】
以下、上記の現像処理槽16と同様に、感光ウエブ12は、定着槽20内に配置された3本の液中ターンバー40でハロゲン化銀乳剤層が非接触の状態で方向転換され、定着槽20の出口で、感光ウエブ12の両面に対向して配置されたエアーナイフ34で定着液20Aが掻き落とされ、定着槽20及び第1水洗槽22の上部に配置された搬送ガイド部材36を経て次の第1水洗槽22に導入される。液中ターンバー40は、周面に軸方向に形成された複数のスリットから所定量の定着液20Aが噴射されるものであり、これにより感光ウエブ12が液中ターンバー40から浮揚し、非接触となる。
【0045】
その後、感光ウエブ12は、第1水洗槽22内の液中ターンバー42でハロゲン化銀乳剤層が非接触の状態で方向転換され、第1水洗槽22の出口で感光ウエブ12の両面に対向して配置されたエアーナイフ34で洗浄液が掻き落とされ、第1水洗槽22及び第2水洗槽24の上部に配置された搬送ガイド部材36を経て第2水洗槽24に導入される。さらに、感光ウエブ12は、第2水洗槽24内の液中ターンバー44でハロゲン化銀乳剤層が非接触の状態で方向転換される。液中ターンバー42、44は、周面に軸方向に形成された複数のスリットから所定量の純水22A、24Aが噴射されるものであり、これにより感光ウエブ12が液中ターンバー42、44から浮揚し、非接触となる。
【0046】
第2水洗槽24の出口には、感光ウエブ12の両面に対向するように2対のエアーナイフ34が配置されており、第2水洗槽24から出た感光ウエブ12はエアーナイフ34から吹き出されるエアーにより洗浄液が掻き落とされ、第2水洗槽24の上部に配置された搬送ガイド部材36を経て乾燥装置26に搬送される。
【0047】
乾燥装置26では、温風発生装置28から発生する温風により感光ウエブ12の両面が乾燥され、感光ウエブ12は乾燥装置26の上部に配置された支持ローラ14を経て搬送される。また、処理装置10には、現像処理槽16の上流側に感光ウエブ12を送り出す送り出しローラ(図示省略)が配置され、温風発生装置28の下流側に感光ウエブ12を巻き取る巻き取りローラ(図示省略)が配置されており、送り出しローラ(図示省略)と巻き取りローラ(図示省略)の回転により、感光ウエブ12が一定の搬送速度で搬送される。図示していないが処理装置10は感光ウエブ12を一定のテンションで搬送できるようにトルク調整機構を持っている。感光ウエブ12の搬送速度は、4m/分〜50m/分が好ましく、8m/分〜30m/分がより好ましく、10m/分〜20m/分がさらに好ましくい。
【0048】
また、感光ウエブ12の搬送速度が4m/分より小さいと、感光ウエブ12を現像処理槽16内の液中ターンバー30に接触させずに安定して搬送することが困難となる。また、感光ウエブ12の搬送速度が50m/分より大きいと、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜をほぼ均一に破壊することができず、現像ムラの発生を効果的に抑制することが困難となる。
【0049】
このような処理装置10では、複数の支持ローラ14、32、34と液中ターンバー30、38、40、42、44等によって、感光ウエブ12が現像処理槽16、現像停止処理槽18、定着槽20、第1水洗槽22、第2水洗槽24内を搬送されることで、現像、現像停止、定着、洗浄の各処理が行われる。これによって、細線メッシュ状の現像銀画像(導電膜)が形成された感光ウエブ12が得られる。
【0050】
処理装置10には、現像処理槽16と定着槽20との間に、停止液18Aが貯留された現像停止処理槽18が配置されている。停止液18Aは、pH1以上pH5以下が好ましく、pH2以上pH3以下がより好ましい。停止液のpHが、pH1以上pH5以下の範囲を外れると、現像液中の銀が導電性材料の銀線エッジ部に局部的に析出することを効果的に抑制することができなくなる。停止液18Aとして、例えば、酢酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸等が用いられる。本実施形態では、5%酢酸が用いられている。
【0051】
ここで、現像・定着・洗浄の各処理は、銀塩写真フィルム、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる現像処理技術を適用することができる。現像液、定着液、洗浄液もこれらに準じて適宜適用することができる。例えば、現像液としては、特に限定しないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、例えば、富士フイルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、又はそのキットに含まれる現像液、また、D−85などのリス現像液を用いることができる。なお、定着処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。
【0052】
本実施形態では、感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層の表面に保護層が設けられていない。また、感光ウエブ12を搬送するときの張力は、3N/m以上、150N/m以下とすることが好ましい。張力を3N/m未満にすると、支持ローラ14、34等が回転しなくなり、フィルムに傷がつく場合がある。また150N/mを超えると、感光ウエブ12に皺が発生して液中ターンバー表面にフィルムが接触して現像銀画像に傷をつける場合がある。
【0053】
次に、本実施形態の導電性材料の処理方法が適用される処理装置10の作用について説明する。
【0054】
処理装置10では、複数の支持ローラ14、32、34と液中ターンバー30、38、40、42、44等によって、感光ウエブ12が現像処理槽16、現像停止処理槽18、定着槽20、第1水洗槽22、第2水洗槽24内を搬送される。これにより、感光ウエブ12に現像、現像停止、定着、洗浄の各処理が行われる。そして、感光ウエブ12を乾燥装置26により乾燥させることで、細線メッシュ状の現像銀画像(導電膜)が形成された感光ウエブ12(導電性材料)が得られる。処理装置10により処理されて得られた感光ウエブ12は、透光性電磁波シールド膜に好適に使用できる。すなわち、処理装置10により感光ウエブ12を処理して発現された細線メッシュ状の銀パターンに、Cu、Agなどのめっき処理によって金属を所定量付与することで、透光性電磁波シールド膜が形成される。
【0055】
この処理装置10では、現像処理槽16内で感光ウエブ12が3本の液中ターンバー30によって非接触で搬送されるので、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層にキズが発生することを抑制することができる。また、感光ウエブ12の裏面と液中ターンバー30とが非接触であるので、感光ウエブ12の裏面にキズが発生することを抑制することができる。
【0056】
また、現像処理槽16内の3本の液中ターンバー30の上流側と下流側のそれぞれの部位に、感光ウエブ12の両面に現像液16Aを吹き付ける複数の吹き付け装置50が設けられており、吹き付け装置50の複数のノズル50Aから感光ウエブ12の両面に現像液16Aが吹き付けられる。これにより、感光ウエブ12の両面近傍の現像液16Aが撹乱され、感光ウエブ12の両面近傍に同じ現像液16Aが滞留することが抑制される。特に感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍が撹乱されることにより、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜が破壊されると共に、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍に同じ現像液16Aが滞留することが抑制される。このため、感光ウエブ12の現像反応が促進され、現像ムラの発生を抑制することができる。従って、感光ウエブ12を現像液16A中で4m/分以上、特に8m/分以上の比較的高速で搬送しても、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0057】
また、感光ウエブ12は、ハロゲン化銀乳剤層の表面に保護層が設けられていない。ハロゲン化銀乳剤層の表面に実質的に保護層を設けない場合には、感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層はウエット状態で軟膜のため、ハロゲン化銀乳剤層にキズが付きやすい。しかし、処理装置10では、表面に保護層を全く設けない感光ウエブ12、又は保護層の厚みが極めて薄い(例えば、保護層の厚みが0.5μm以下の)感光ウエブでも、ハロゲン化銀乳剤層のキズの発生を抑制することができる。
【0058】
もともと一般的な写真感光材料であれば、現像処理後にめっき等をすることがないので1対の搬送ローラによる搬送に耐えうるような十分な保護層を乳剤面上に設けることができるので、本発明の処理装置10を用いる必要はなかった。現像後にめっきをかけるためには現像後に銀線が表面に出ている必要があるので、ハロゲン化銀乳剤層に保護層が設けられなくなり、本発明の処理装置10のように感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層に非接触で現像処理を行うことが必要になった。
【0059】
また、処理装置10では、現像処理槽16と定着槽20との間に、停止液18Aが貯留された現像停止処理槽18が配置されており、現像処理槽16を出た感光ウエブ12は、現像停止処理槽18内に搬送され、現像停止処理が行われる。
【0060】
現像処理槽16と定着槽20との間に現像停止処理槽18を設けない場合、現像後の定着初期又は現像後の定着槽入口でのスクイズ部において、現像の局部暴走(溶解物理現象の1種)により銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ、樹状の銀析出(黒ジミ)、スジムラが発生しやすい。これらの銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥は現像後透過光で見ていてもよく判らないが、透明導電性膜前駆体(めっき前の現像済み品)をめっきすると、上記の銀線エッジ部の欠陥がめっきで増幅され透過でも見えるようになる。PDP(プラズマディスプレイパネル)の電磁波シールドフィルムとするには、透過で目視可能なムラは故障となる。特に、保護層がない感光ウエブにおいては、現像の局部暴走が顕著に発現し、搬送速度が上がるとスクイズしきれず同伴する現像液が増えるので、ムラもひどくなる傾向がある。
【0061】
本実施形態の処理装置10では、現像処理槽16を出た感光ウエブ12は、現像停止処理槽18内に搬送され、現像停止処理が行われることにより、現像の局部暴走、すなわち現像液中に微少量溶け込んでいるハロゲン化銀が定着液と接触し、現像液中の銀が感光ウエブ12の銀線上に局部的に析出する現象を抑制できる。このため、感光ウエブ12の銀線エッジ部のにじみ、ギザギザ等の欠陥の発生を抑制することができ、滑らかな銀線エッジ部を得ることができる。
【0062】
次に、本発明の処理装置の他の実施形態について説明する。
【0063】
図2には、本発明の第2実施形態の処理装置で用いられる現像処理槽60が示されている。なお、第1実施形態と同一の部材には同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。図2に示されるように、現像処理槽60内には、下方側の2本の液中ターンバー62と、上方側の2本の支持ローラ64とが略千鳥状に配置されている。液中ターンバー62と近接対向する位置には、感光ウエブ12の搬送方向における上流側と下流側に、感光ウエブ12の裏面側で感光ウエブ12をガイドするガイドローラ65が配設されている。また、感光ウエブ12の搬送方向における2本の液中ターンバー62の上流側と下流側には、感光ウエブ12の表面に現像液16Aを吹き付ける複数の吹き付け装置50が配設されている。また、感光ウエブ12を挟んで複数の吹き付け装置50とそれぞれ対向する位置には、感光ウエブ12の裏面側で感光ウエブ12をガイドする複数のガイドローラ66が配設されている。
【0064】
図3に示されるように、吹き付け装置50は、円筒状部材の周面に軸方向に沿って4本のノズル50Aが設けられており、ノズル50Aから現像液16Aが感光ウエブ12の表面に吹き付けられる。ノズル50Aから感光ウエブ12の表面に吹き付けられた現像液16Aは、図3中の矢印に示すように感光ウエブ12の表面の上下方向に流れる。図2に示されるように、現像処理槽60には、現像処理槽60内の現像液16Aが導入されるチューブ68が設けられており、チューブ68はポンプ70を介して液中ターンバー62に接続されている。液中ターンバー62は、円筒状部材からなり、周面に軸方向に沿って複数のスリットを備えている。ポンプ70によってチューブ68を通って液中ターンバー62に導入された現像液16Aは、図2中の矢印に示すように複数のスリットから現像処理槽60内に噴射される。これにより、液中ターンバー62に対して感光ウエブ12が浮揚し、感光ウエブ12のハロゲン化銀乳剤層が非接触となるように支持された状態で方向転換される。また、現像処理槽60の出口には、現像処理槽60の上部に支持ローラ14が配置されており、支持ローラ14と感光ウエブ12を挟んで対向する位置には押圧ローラ72が配設されている。
【0065】
このような現像処理槽16では、感光ウエブ12の表面が2本の液中ターンバー30によって非接触で搬送されるので、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層にキズが発生することを抑制することができる。また、現像処理槽16内の2本の液中ターンバー30の上流側と下流側に、感光ウエブ12の表面に現像液16Aを吹き付ける複数の吹き付け装置50が設けられており、感光ウエブ12の裏面がガイドローラ66でガイドされた状態で、吹き付け装置50の複数のノズル50Aから感光ウエブ12の表面に現像液16Aが吹き付けられる。これにより、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍が撹乱され、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜が破壊されると共に、感光ウエブ12の表面近傍に同じ現像液16Aが滞留することが抑制される。このため、現像反応が促進され、現像ムラの発生を抑制することができる。従って、感光ウエブ12を現像液16A中で4m/分以上、特に8m/分以上の比較的高速で搬送しても、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0066】
図4には、本発明の第3実施形態の処理装置で用いられる撹乱手段としてのブレードが示されている。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部材には同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。図4に示されるように、感光ウエブ12の表面と対向する位置には、支持体82に支持されたブレード80が配設されている。ブレード80は、弾性変形可能な薄板状の部材で形成されている。図4(A)に示されるように、感光ウエブ12が静止しているときは、ブレード80の先端部80Aは感光ウエブ12の表面に接触している。図4(B)に示されるように、感光ウエブ12が矢印方向に搬送されると、現像液の流れによりブレード80が弾性変形して先端部80Aが感光ウエブ12の表面から離れる。これにより、ブレード80の先端部80Aが感光ウエブ12の表面に所定の間隔で対向した状態となる。
【0067】
本実施形態では、ブレード80として、厚さが0.5mm、長さが20mmのウレタンブレードを用いる。また、ブレード80の硬度(JISA硬度)は50〜90度である。また本実施形態では、感光ウエブ12を搬送したときに、ブレード80の先端部80Aと感光ウエブ12との間隔が0.1〜0.5mmとなるように調整している。
【0068】
このようなブレード80では、図4(B)に示されるように、感光ウエブ12が矢印方向に搬送されると、現像液の流れによりブレード80の先端部80Aが感光ウエブ12の表面に所定の間隔で対向した状態となる。このブレード80の先端部80Aにより、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍の現像液が撹乱され、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜が破壊されると共に、感光ウエブ12の表面近傍に同じ現像液が滞留することが抑制される。このため、現像反応が促進され、現像ムラの発生を抑制することができる。従って、感光ウエブ12を現像液16A中で4m/分以上、特に8m/分以上の比較的高速で搬送しても、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0069】
また、ブレード80に代えて、感光ウエブ12の表面に所定の間隔をおいて対向するように、剛性を有する板状の邪魔板(板状体)を固定支持してもよい。このとき、邪魔板と感光ウエブ12との間隔は、0.1〜0.5mmに設定することが好ましい。剛性を有する邪魔板を設けた場合でも、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍の現像液が邪魔板によって撹乱され、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜が破壊されると共に、感光ウエブ12の表面近傍に同じ現像液が滞留することが抑制される。このため、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0070】
図5には、本発明の第4実施形態の処理装置で用いられる撹乱手段としてのローラが示されている。なお、第1〜第3実施形態と同一の部材には同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。図5に示されるように、感光ウエブ12の表面と対向する位置にはローラ90が配設されている。ローラ90は、軸方向に沿って感光ウエブ12の表面と所定の間隔で対向する円柱状のローラ部90Aと、ローラ部90Aの両端部にローラ部90Aより半径が大きい円形状のフランジ部90Bと、を備えている。フランジ部90Bは、感光ウエブ12の幅方向両側でガイドローラ66の周面の両端部と接触するように配置されており、このフランジ部90Bによりローラ部90Aと感光ウエブ12の表面とが所定の間隔で対向した状態となる。ローラ部90Aと感光ウエブ12との間隔は、0.1〜0.5mmに設定されている。
【0071】
このようなローラ90では、ローラ部90Aが感光ウエブ12の表面に所定の間隔で対向しているので、ローラ部90Aにより、感光ウエブ12の表面のハロゲン化銀乳剤層近傍の現像液が撹乱され、ハロゲン化銀乳剤層の液境膜が破壊されると共に、感光ウエブ12の表面近傍に同じ現像剤が滞留することが抑制される。このため、現像反応が促進され、現像ムラの発生を抑制することができる。従って、感光ウエブ12を現像液中で4m/分以上、特に8m/分以上の比較的高速で搬送しても、現像ムラの発生を抑制することができる。
【0072】
次に、処理装置10を用いて、感光ウエブ12の現像ムラとハロゲン化銀乳剤層のキズの状態を調べる実験を行った。
【0073】
吹き付け装置50は、ノズル50Aからの現像液の吹き付け量を5〜10l/min×4本に設定し、ノズル50Aのサイズは、幅が0.5mm、長さが180mmに設定した。また、ノズル50Aと感光ウエブ12との間隔を3〜5mmに設定した。ブレード80は、厚さが0.5mm、長さが20mmのウレタンブレードを用い、ブレード80の硬度(JISA硬度)は50〜90度に設定した。また、邪魔板とローラ90は、感光ウエブ12との間隔を0.1〜0.5mmに設定した。この条件にて、感光ウエブ12の現像処理を行い感光ウエブ12の現像ムラとハロゲン化銀乳剤層のキズの発生状態を調べた。また、感光ウエブ12は、ハロゲン化銀乳剤層の表面に保護層を設けないものを用いた。この実験の結果を表1に示す。表1では、極めて良好な場合を◎、良好な場合を○、キズ又は現像ムラが少量認められた場合を△として評価した。
【0074】
【表1】


表1に示されるように、吹き付け装置50では、感光ウエブ12の現像ムラ、キズともに極めて良好であることが確認された。また、ブレード80では、感光ウエブ12の現像ムラ、キズともにほぼ良好であることが確認された。さらに、邪魔板、ローラ90では、感光ウエブ12の現像ムラは良好であるが、キズが少量発生することがわかった。従って、本発明の撹乱手段によれば、感光ウエブ12の現像ムラを抑制できると共に、ハロゲン化銀乳剤層のキズの発生を低減できることがわかった。
【0075】
次に、感光ウエブ12について説明する。感光ウエブ12は、例えば、光透過性支持体上に銀塩が含有した銀塩含有層(本実施形態では、ハロゲン化銀乳剤層)を設けた、感光材料からなる長尺幅広フレキシブル基材である。また、本実施形態では、銀塩含有層上には実質的に保護層が設けられていないが、銀塩含有層上には保護層が設けられていてもよく、この保護層とは例えばゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために銀塩含有層上に形成される。保護層の厚みは0.02〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは0.3〜3μmである。
【0076】
これらの銀塩含有層や保護層の組成などは、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に適用されるハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層)や保護層を適宜適用することができる。
【0077】
特に、感光ウエブ12(感光材料)としては、銀塩写真フィルム(銀塩感光材料)が好ましく、白黒銀塩写真フィルム(白黒銀塩感光材料)が最もよい。また、銀塩含有層に適用する銀塩としては、特にハロゲン化銀が最も好適である。
【0078】
一方、光透過性支持体としては、単層のプラスチックフィルムや、これを2層以上組み合わせた多層フィルムを適用することができる。プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
【0079】
これらの中でも、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び価格の点から、支持体としてのプラスチックフィルムは、銀塩写真フィルム(銀塩感光材料)に通常適用されるポリエチレンテレフタレートフィルムやセルロールトリアセテートフィルム、また、その他、ポリイミドフィルムであることが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが最も好ましい。
【0080】
また、ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合における光透過性支持体の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。
【0081】
感光ウエブ12の幅は、例えば、50cm以上とし、厚みは50〜200μmとすることがよい。
【0082】
なお、本実施形態では、光透過性電磁波遮蔽材料を製造する装置及び製造方法について説明したが、これに限られず、例えば、その他工業品などの微細な導電性金属部からなる細線状パターンを有する光透過性導電性材料の製造装置及び製造方法としても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態における導電性材料の処理方法が適用された導電性材料の処理装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態における導電性材料の処理装置に用いられる現像処理槽を示す構成図である。
【図3】図2に示される吹き付け装置を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態における導電性材料の処理装置に用いられるブレードを示す構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態における導電性材料の処理装置に用いられるローラを示す構成図である。
【符号の説明】
【0084】
10 処理装置
12 感光ウエブ(導電性材料前駆体)
16 現像処理槽
16A 現像液
30 液中ターンバー(搬送ガイド部材)
34 エアーナイフ
36 搬送ガイド部材
50 吹き付け装置(撹乱手段)
50A ノズル
60 ガイドローラ
60 現像処理槽
62 液中ターンバー(搬送ガイド部材)
80 ブレード(撹乱手段)
80A 先端部
90 ローラ(撹乱手段)
90A ローラ部(撹乱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の現像処理方法であって、
前記導電性材料前駆体を現像処理液中で4m/分〜50m/分の搬送速度で、前記銀塩含有層に搬送ガイド部材が接触しないように搬送し、
前記現像処理液中の少なくとも1箇所以上で前記銀塩含有層近傍の前記現像処理液を撹乱することを特徴とする導電性材料の現像処理方法。
【請求項2】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴とする請求項1に記載の導電性材料の現像処理方法。
【請求項3】
支持体上に少なくとも1層の銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することにより導電性パターンを形成させる導電性材料の現像処理装置であって、
現像処理液で満たされた現像処理槽と、
前記導電性材料前駆体を4m/分〜50m/分の搬送速度で搬送する搬送手段と、
前記現像処理槽内に設けられ、前記銀塩含有層に接触しないように前記導電性材料前駆体を搬送させる搬送ガイド部材と、
前記現像処理槽内に設けられ、少なくとも1箇所以上で前記銀塩含有層近傍の前記現像処理液を撹乱する撹乱手段と、
を有することを特徴とする導電性材料の現像処理装置。
【請求項4】
前記撹乱手段は、前記銀塩含有層に現像処理液を吹き付けるノズルを備えた吹き付け装置であることを特徴とする請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置。
【請求項5】
前記撹乱手段は、前記導電性材料前駆体の搬送時に前記銀塩含有層と所定の間隔で対向し、弾性変形可能なブレードであることを特徴とする請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置。
【請求項6】
前記撹乱手段は、前記銀塩含有層と所定の間隔をおいて固定支持された板状体であることを特徴とする請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置。
【請求項7】
前記撹乱手段は、前記銀塩含有層と所定の間隔をおいて配置されたローラであることを特徴とする請求項3に記載の導電性材料の現像処理装置。
【請求項8】
実質的に表面に保護層を設けない銀塩含有層を有する導電性材料前駆体を露光し、現像処理することを特徴とする請求項3から請求項7までのいずれか1項に記載の導電性材料の現像処理装置。
【請求項9】
前記搬送ガイド部材が、前記導電性材料前駆体を現像処理液中で方向転換させる液中ターンバーであることを特徴とする請求項3から請求項8までのいずれか1項に記載の導電性材料の現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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