説明

導電性熱可塑性樹脂組成物および製造方法

【課題】導電性に優れる熱可塑性樹脂組成物および前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップ、さらに、生産性に優れる前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、相容化剤および、DBP吸油量が特定の範囲にあり、BET比表面積が特定の範囲にあり、フルイ分け法による粒径および粒度分布が特定の範囲である、導電性カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂組成物、および、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法、および、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップに関するものである。さらに詳細には、導電性に優れる熱可塑性樹脂組成物および前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップに関するものであり、さらに、生産性に優れる前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂組成物は、従来から、自動車部品用成形品等に用いられている。例えば、特許第3467518号公報には、導電性樹脂組成物として、ポリアミド樹脂と、無水マレイン酸がグラフトされた熱可塑性弾性体と、カーボンブラックと特定のスルホンアミド類と、特定のジカルボン酸類を含む樹脂組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3467518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許公報に記載されているカーボンブラックを用いた場合、混練機へのカーボンブラックのフィードが良好でなかったり、カーボンブラックが投入されているホッパー内で、ホッパーブリッジが発生することがあり、カーボンブラックを含有する熱可塑性樹脂の導電性と、その生産性について、さらなる改良が求められていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、導電性に優れる熱可塑性樹脂組成物および前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップに関するものであり、さらに、生産性に優れる前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、かかる実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一は、
ポリプロピレン樹脂(成分(A))、ポリアミド樹脂(成分(B))、相容化剤(成分(C))および下記の要件(1)〜要件(3)を満足する導電性カーボンブラック(成分(D))を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、成分(A)と成分(B)の重量比((A)/(B))が5/95〜95/5であり、成分(A)と成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(C)の重量が0.05〜2重量部であり、さらに、成分(A)と成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(D)の重量が1〜30重量部である熱可塑性樹脂組成物、および、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップに係るものである。
要件(1):DBP吸油量が280ml/100g以上である。
要件(2):BET比表面積が300m2/g以上である。
要件(3):フルイ分け法による粒径および粒度分布について、
要件(3−1):重量が20%を占めるときの粒径D20が、280μm以上600μm以下である。
要件(3−2):重量中心粒径D50が、500μm以上1100μm以下である。
要件(3−3):重量が80%を占めるときの粒径D80が、700μm以上1700μm以下である。
【0006】
また、本発明の一は、前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、成分(A)〜成分(D)を溶融混練する熱可塑性樹脂組成物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、導電性に優れる熱可塑性樹脂組成物を優れた生産性で製造することができ、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる燃料タンク用キャップを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、または、プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【0009】
プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、または、プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の製造方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー触媒やメタロセン触媒が挙げられる。重合方法としては、スラリー重合や気相重合が挙げられる。
また、ポリプロピレン樹脂(成分(A))としては、市販品を用いても良い。
【0010】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体部分(A1)とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)からなる共重合体である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体に含有されるプロピレン単独重合体部分(A1)の含有量は95〜60重量%であり、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の含有量は5〜40重量%である。好ましくは、単独重合体部分(A1)が90〜65重量%であり、ランダム共重合体部分(A2)が10〜35重量%であり、より好ましくは、単独重合体部分(A1)が90〜70重量%であり、ランダム共重合体部分(A2)が10〜30重量%である。(但し、プロピレン−エチレンブロック共重合体の全重量を100重量%とする。)
【0011】
単独重合体部分(A1)の含有量が過多の場合、衝撃強度が不充分となることがあり、単独重合体部分(A1)の含有量が過少の場合、剛性が不充分となることがある。
【0012】
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)のエチレン含量は20〜55重量%であり、好ましくは30〜55重量%、より好ましくは35〜50重量%である。(ただし、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A2)の全重量を100重量%とする。)
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)のエチレン含量が過多の場合、または、過少の場合、衝撃強度が不充分となることがある。
【0013】
プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)の固有粘度([η]EP)は、剛性と衝撃性のバランスを良好にするという観点、ゲルの発生を防止するという観点や成形品外観を良好にするという観点から、通常、1〜8dl/gであり、好ましくは2〜7dl/gである。
【0014】
プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法としては、例えば、プロピレン単独重合体部分(A1)を第1工程で製造し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)を第2工程で製造する方法が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体は、プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン単独重合体部分(A1)と同様のプロピレン単独重合体である。
プロピレン単独重合体のメルトフローレート(MFR、単位:g/10分、測定条件:230℃、21.2N)は、好ましくは、0.1〜100であり、さらに好ましくは、0.5〜50である。
【0016】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体は、プロピレン−エチレンブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A2)と同様のプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
【0017】
本発明で用いられるポリアミド樹脂(成分(B))は、
(1)ラクタム類から誘導される構造単位を含む脂肪族ポリアミド樹脂、
(2)アミノカルボン酸の重合によって得られる脂肪族ポリアミド樹脂、
(3)炭素原子数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸、該ジカルボン酸のエステル、酸塩化物および酸無水物から選ばれる少なくとも1種の単量体と、炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンおよび該ジアミンの塩から選ばれる少なくとも1種の単量体との重縮合によって得られる脂肪族ポリアミド樹脂、または、
(4)熱可塑性の芳香族ポリアミド樹脂である。
これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、少なくとも2種を任意の割合で組合せて用いてもよい。これらのポリアミド樹脂は結晶性であっても非晶性であってもよい。
【0018】
上記の脂肪族ポリアミド樹脂(1)に用いられるラクタム類としては、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタムが挙げられる。
【0019】
上記の脂肪族ポリアミド樹脂(2)に用いられるアミノカルボン酸としては、7−アミノフヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0020】
上記の脂肪族ポリアミド樹脂(3)に用いられる炭素原子数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等が挙げられ、炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミンやオクタメチレンジアミンが挙げられる。
【0021】
上記の脂肪族ポリアミド樹脂(3)が飽和脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとを重縮合して得られる脂肪族ポリアミド樹脂である場合、ジカルボン酸とジアミンの重縮合には、一般に、等モル量のジカルボン酸とジアミンとが用いられる。そして、アミン末端基の量がカルボキシル末端基の量より多い脂肪族ポリアミド樹脂を得るには、ジアミンを過剰に用いれば良く、カルボキシル末端基の量がアミン末端基の量より多い脂肪族ポリアミド樹脂を得るには、ジカルボン酸を過剰に用いれば良い。
【0022】
上記の芳香族ポリアミド樹脂(4)とは、主鎖骨格に芳香族骨格とアミド結合とを有するポリアミド樹脂である。
芳香族ポリアミド樹脂(4)の製造方法としては、例えば、
(1)芳香族アミノ酸を重縮合する方法、
(2)芳香族ジカルボン酸とジアミンとを重縮合する方法、
(3)芳香族アミノ酸と芳香族ジカルボン酸とジアミンとを重縮合する方法、
(4)芳香族ジカルボン酸とジイソシアネートとを重縮合する方法等が挙げられる。
【0023】
上記の方法に用いられる芳香族アミノ酸としては、パラアミノメチル安息香酸やパラアミノエチル安息香酸が例示され、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸やイソフタル酸が例示され、ジイソシアネートとしては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートが例示され、ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル、4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が例示される。
【0024】
脂肪族ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。芳香族ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ナイロン6T、ナイロン6I6T等が挙げられる。ポリアミド樹脂(成分(B))としては、市販品を用いても良い。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(成分(B))として、好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、または、ナイロン6とナイロン66を任意の割合で混合した混合物である。
【0025】
ポリアミド樹脂(成分(B))として、アミン末端基の量とカルボキシル末端基の量とが実質上等量のポリアミド樹脂を用いても良く、アミン末端基の量がカルボキシル末端基の量より多いポリアミド樹脂を用いても良く、カルボキシル末端基の量がアミン末端基の量より多いポリアミド樹脂を用いても良く、これらのポリアミド樹脂を任意の割合で混合した混合物を用いても良い。
【0026】
ポリアミド樹脂(成分(B))に含有されるアミン末端基の含有量は、相溶性を高めるという観点から、好ましくは40meq/kg以上であり、より好ましくは50meq/kg以上である。
【0027】
本発明で用いられる相容化剤(成分(C))は、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、クエン酸およびリンゴ酸から選ばれる少なくとも一種である。また、相溶化剤(成分(C))としては、市販品を用いても良い。
相溶化剤(成分(C))は、有機過酸化物と併用することが好ましく、さらにスチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族炭化水素を併用する方が好ましいことがある。
【0028】
本発明で用いられる導電性カーボンブラック(成分(D))は、アセチレンブラックおよびファーネスブラックから選ばれる少なくとも一種である。導電性カーボンブラック(成分(D))としては、少ない添加量で本発明の熱可塑性樹脂組成物に、必要な導電性を付与できる導電性カーボンブラックが望ましいことから、好ましくは、不純物が少なく、導電性が優れているオイルファーネスブラックである。
【0029】
導電性カーボンブラック(成分(D))のDBP吸油量は、280ml/100g以上である(要件(1))。好ましくは、充分な導電性を付与するという観点から、300ml/100g以上である。
DBP吸油量が、280ml/100g未満の場合、体積抵抗値が高くなり、導電性が不足することがある。
【0030】
導電性カーボンブラック(成分(D))のBET比表面積は、300m2/g以上である(要件(2))。好ましくは、充分な導電性を付与するという観点から、500m2/g以上である。
BET比表面積が、300m2/g未満の場合、体積抵抗値が高くなり、導電性が不足することがある。
【0031】
導電性カーボンブラック(成分(D))のフルイ分け法による粒径および粒度分布について(要件(3))、重量が20%を占めるときの粒径D20は、280μm以上600μm以下である(要件(3−1))。好ましくは、充分な導電性を付与するという観点や混練機へフィードし易いという観点から、400μm以上570μm以下である。
粒径D20が、280μm未満の場合、体積抵抗値が高くなり、導電性が不足することがある。600μmを超えた場合、混練機へフィードし難くなることがある。
【0032】
導電性カーボンブラック(成分(D))の重量中心粒径D50は、500μm以上1100μm以下である(要件(3−2))。好ましくは、充分な導電性を付与するという観点や混練機へフィードし易いという観点から、600μm以上1000μm以下である。
重量中心粒径D50が、500μm未満の場合、体積抵抗値が高くなり、導電性が不足することがある。1100μmを超えた場合、混練機へフィードし難くなることがある。
【0033】
導電性カーボンブラック(成分(D))のフルイ分け法による粒径および粒度分布について、重量が80%を占めるときの粒径D80は、700μm以上1700μm以下である(要件(3−3))。好ましくは、充分な導電性を付与するという観点や混練機へフィードし易いという観点から、750μm以上1500μm以下である。
粒径D80が、700μm未満の場合、体積抵抗値が高くなり、導電性が不足することがある。1700μmを超えた場合、混練機へフィードし難くなることがある。
【0034】
本発明で用いられるポリプロピレン樹脂(成分(A))とポリアミド樹脂(成分(B))の重量比((A)/(B))は、5/95〜95/5であり、好ましくは、強度を高めるという観点や耐ガソリン性(ガソリンに接しても劣化し難いこと)を高めるという観点から、8/92〜40/60である。
成分(A)の重量割合が5重量%未満の場合、射出成形を行う時に金型内部での流動性が低下することがあり、95重量%を超えた場合、強度や耐ガソリン性が低下することがある。
【0035】
本発明で用いられる相溶化剤(成分(C))の重量は、成分(A)と成分(B)の合計量100重量部に対して、0.05〜2重量部であり、好ましくは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る時の反応効率を高めるという観点から、0.1〜1重量部である。
成分(C)の重量が、0.05重量部未満の場合、ポリプロピレン樹脂(成分(A))へのグラフト反応が不足し、強度が低下することがある。2重量部を超えた場合、余剰の成分(C)が本発明の熱可塑性樹脂組成物に残存し、強度の低下や成形品の外観が低下することがある。
【0036】
本発明で用いられる導電性カーボンブラック(成分(D))の重量は、成分(A)と成分(B)の合計量100重量部に対して、1〜30重量部であり、好ましくは、充分な導電性を付与するという観点、強度や流動性を高めるという観点から、5〜25重量部である。
成分(D)の重量が、1重量部未満の場合、導電性が不足することがあり、30重量部を超えた場合、強度や流動性が低下することがあり、加工性が不充分になることがある。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)とを溶融混練する方法である。
成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)とを溶融混練する方法としては、単軸、二軸または多軸の連続混練機を用いる方法や、単軸、二軸または多軸のバッチ式混練機を用いる方法が挙げられる。
好ましくは、相溶化剤(成分(C))の反応性を高めるという観点や、導電性カーボンブラック(成分(D))が混練機へフィードし易いという観点や、経済性の観点から、原料のフィード口を複数有する二軸の連続混練機を用いる方法である。
【0038】
原料のフィード口を三個有する二軸の連続混練機に、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)のフィード方法として、好ましくは、最上流側の第一のフィード口から成分(A)と成分(C)を、下流側の第二のフィード口から成分(B)を、最下流側の第三のフィード口から成分(D)をそれぞれフィードする方法である。また、成分(B)を分割し、第二および第三のフィード口から投入しても良く、また、成分(D)を分割し、第二および第三のフィード口から投入しても良い。
【0039】
混練時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂(成分(B))を充分に溶融するという観点や、樹脂の劣化を抑えるという観点から、好ましくは230〜360℃であり、より好ましくは250〜330℃である。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途としては、自動車の燃料系部品や帯電防止部品等が挙げられる。好ましくは、燃料タンク用キャップである。
【0041】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた燃料タンク用キャップの製造方法(成形方法)としては、射出成形、押出成形、プレス成形が挙げられ、好ましくは、射出成形である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例によって、本発明を具体的に説明する。
実施例または比較例で用いた原料を、以下に示した。
(A)ポリプロピレン樹脂
(A−1)PP
プロピレン単独重合体部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とからなるブロック共重合体を用いた。230℃、21Nにおけるメルトフローレート(MFR)が0.5g/10分であり、プロピレン単独重合体部分が79重量%であり、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分が21重量%であり、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分に含有されるエチレンの含有量は36重量%であった。また、形状はパウダー形状であった。
【0043】
(B)ポリアミド樹脂(PA6)
(B−1)PA6−1
ユニチカ製 A1020BRL
(B−2)PA6−2
カネボウ製 MC100
【0044】
(C)相溶化剤(MAH)
無水マレイン酸
【0045】
(D)導電性カーボンブラック
(D−1)CB−1
フルイ分け法による粒径および粒度分布が、重量が20%を占めるときの粒径D20が500μm、重量が50%を占めるときの重量中心粒径D50が866μm、重量が80%を占めるときの粒径D80が1320μmであり、DBP吸油量320ml/100g、BET式比表面積が770m2/gである導電性カーボンブラックであった。
【0046】
(D−2)CB−2
フルイ分け法による粒径および粒度分布が、重量が20%を占めるときの粒径D20が261μm、重量が50%を占めるときの重量中心粒径D50が437μm、重量が80%を占めるときの粒径D80が635μmであり、DBP吸油量210ml/100g、BET式比表面積が76m2/gである導電性カーボンブラックであった。
【0047】
(D−3)CB−3
フルイ分け法による粒径および粒度分布が、重量が20%を占めるときの粒径D20が700μm、重量が50%を占めるときの重量中心粒径D50が1319μm、重量が80%を占めるときの粒径D80が2153μmであり、DBP吸油量360ml/100g、BET式比表面積が950m2/gである導電性カーボンブラックであった。
【0048】
EPR
エチレン−プロピレン共重合体として、住友化学製エスプレンV0111を用いた。
【0049】
有機過酸化物(PO)
1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼンをポリプロピレンで希釈したものを用いた。1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼンの含有量は8重量%で、ポリプロピレンの含有量は92%であった。
【0050】
添加剤
添加剤1として、ステアリン酸カルシウムが0.01重量部、住友化学製スミライザーGA80が0.012重量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガフォース168が0.02重量部の混合物を用いた。
添加剤2として、吉冨ファインケミカル製 GSY−P101を用いた。
添加剤3として、無水コハク酸を用いた。
【0051】
導電性カーボンブラックの測定方法を、以下に示した。
DBP吸油量は、ASTM D 2414に準拠して求められ、カーボンブラックのアグリゲート間の空隙を、フタル酸ジブチル(DBP)で置換して、そのフタル酸ジブチルの容積で求めた。
【0052】
BET式比表面積は、ASTM D 4820に準拠して求めた。
【0053】
粒度分布の測定方法は、手ブルイ法を用いた。手ブルイ法は、シェーカーを用いないで手動でフルイ分ける方法であり、本発明では、次の方法で測定した。
受け皿とフタを付けた75mm径のフルイを一方の手に持ち、フルイの中心が直径50mmの円を描く様に、毎分120回の速度で回転させ、かつ30秒に一回の割合で他方の手に5回衝突させた。これを5分間行いフルイ上のカーボンブラックの重量を測定した。測定には公称目開き4760μm、2000μm、1190μm、710μm、420μm、250μm、149μmのフルイを用い、目開きの大きいフルイからフルイ分けを行った。
【0054】
ふるい分けによって得られたカーボンブラックの重量積算分布から、重量が20%を占めるときの粒径D20、重量中心粒径D50、重量が80%を占めるときの粒径D80を求めた。
【0055】
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物の物性の測定方法を、以下に示した。
【0056】
メルトフローレート(MFR)の測定方法は、ペレットを140℃で5時間真空乾燥した後、ASTM D−1238に準拠して測定した。但し、荷重は49N、設定温度は280℃で行った。
【0057】
アイゾット衝撃強度の測定方法は、ペレットを130℃ 2時間熱風オーブン中で乾燥した後、射出成形機(東芝機械製 IS220EN)によりシリンダー温度260℃、射出圧力1200kg/cm2、金型温度50℃の条件で各テストピースを成形した射出成形によって得た3.2mmアイゾット用試験片を、ASTM D256に準拠してノッチを入れ23℃雰囲気下で衝撃テストを実施した。
【0058】
体積抵抗値の測定方法は、上記のアイゾット用試験片の成形と同様に射出成形によって得た3.0mmの平板を高抵抗抵抗計(Hiresta IP MCP−HT260)を用い、23℃、印加電圧 10Vで測定した。
【0059】
カーボンブラックのフィード性は、以下の基準で評価した。
重量フィーダーから供給された原料のカーボンブラックと樹脂ペレットの混合物またはカーボンブラックが、混練機サイドフィーダー(押し込み機)から安定して混練機内に供給されたか否かで、以下の基準で評価した。
○:問題なく供給できた場合を○とした。
×:供給不良が発生しサイドフィーダー(押し込み機)のホッパー部に原料が溜まった場合を×とした。
【0060】
実施例1
原料フィード口を3箇所設けた東芝機械製TEM50Aを用いて、シリンダー(C1〜C11)の温度をC1〜C3を220℃、C4を240℃、C5〜C11を240℃とし、表1に示した割合で、50kg/h、250rpm、サイドフィーダーの回転数を250rpmの条件で溶融混練を行い、押出されたストランドをペレタイザーでカッティングしペレットを得た。得られたペレットを130℃2時間熱風オーブンで乾燥後、東芝機械製射出成形機IS220ENを用いてテストピースを成形し、物性を測定した。体積抵抗値が低く良好な導電性を示した。また、混練時のカーボンブラックのフィード性は問題なかった。
【0061】
実施例2
実施例1と同様に表1に示した割合で、溶融混練、テストピース成形および物性評価を行った。体積抵抗値が低く良好な導電性を示した。混練時のカーボンブラックのフィード性は問題なかった。混練時のカーボンブラックのフィード性も問題なかった。
【0062】
比較例1
実施例1と同様に表1に示した割合で、溶融混練、テストピース成形および物性評価を行った。体積抵抗値が高く導電性が不足した。混練時のカーボンブラックのフィード性は問題なかった。
【0063】
比較例2
実施例1と同様に表1に示した割合で、溶融混練、テストピース成形および物性評価を行った。混練開始後5分程度で、サイドフィーダーのホッパー部に原料が溜まり始めホッパーブリッジが発生し、安定した連続生産が出来なかった。混練初期に少量サンプリングできたペレットを用いて物性を測定したところ、体積抵抗値は低く良好な導電性を示した。
【0064】
【表1】

*混練初期のサンプリング品
【0065】
本発明の要件を満足する実施例1および2は、カーボンブラックのフィード性(生産性)に優れた方法によって製造された導電性に優れる熱可塑性樹脂組成物であることが分かる。
本発明の要件(1)〜(3)を満足しないカーボンブラックを用いた比較例1は導電性が不十分なものであり、本発明の要件(3−1)〜(3−3)を満足しないカーボンブラックを用いた比較例2はカーボンブラックのフィード性(生産性)が不十分であったことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂(成分(A))、ポリアミド樹脂(成分(B))、相容化剤(成分(C))および下記の要件(1)〜要件(3)を満足する導電性カーボンブラック(成分(D))を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、成分(A)と成分(B)の重量比((A)/(B))が5/95〜95/5であり、成分(A)と成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(C)の重量が0.05〜2重量部であり、さらに、成分(A)と成分(B)の合計量100重量部に対して、成分(D)の重量が1〜30重量部である熱可塑性樹脂組成物。
要件(1):DBP吸油量が280ml/100g以上である。
要件(2):BET比表面積が300m2/g以上である。
要件(3):フルイ分け法による粒径および粒度分布について、
要件(3−1):重量が20%を占めるときの粒径D20が、280μm以上600μm以下である。
要件(3−2):重量中心粒径D50が、500μm以上1100μm以下である。
要件(3−3):重量が80%を占めるときの粒径D80が、700μm以上1700μm以下である。
【請求項2】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、成分(A)〜成分(D)を溶融混練する熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた燃料タンク用キャップ。

【公開番号】特開2008−19372(P2008−19372A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193845(P2006−193845)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】