説明

導電性粉末及び導電性ペースト

【課題】粒子表面部を銀層で被覆してなる銅粉粒子からなる導電性粉末において、銀の量を少なくしても、優れた導電特性を得ることができる導電性粉末を提案する。
【解決手段】銅粉粒子の表面に銀層を備えたデンドライト状導電性粉末であって、銀の含有量が銅の含有量の3〜30質量%であることを特徴とするデンドライト状導電性粉末を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストなどの材料として好適に用いることができる導電性粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
銀は導電性に優れているため、導電性ペースト、導電性接着剤などの導電性樹脂組成物や、導電性塗料として用いられている。例えば銀粒子に、結合剤および溶剤を混合して導電性ペーストとし、この導電性ペーストを用いて基板上に回路パターンを印刷し、焼き付けることでプリント配線板や電子部品の電気回路などを形成することができる。
【0003】
しかし、銀はとても高価であるため、無電解メッキなどによって芯材粒子の表面に、貴金属の膜をメッキしてなるコート粉と呼ばれる導電性粉末が開発され使用されている。例えば特許文献1には、相対的に融点が高い金属からなる核粒子と、その周囲に形成された相対的に融点が低い金属からなるコート層とからなる導電性粒子が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、銅の融点よりも低い焼成温度で、電子回路用の導電性の配線部を形成することができる導電性ペースト用の銀化合物付き銅粉として、芯材としての銀コート銅粒子の表面を酸化銀、炭酸銀、及び有機酸銀のいずれかの銀化合物で被覆してなる銀化合物被覆銅粉であって、SSA(m/g)が0.1〜10.0であり、D50(μm)が0.5〜10.0であり、1wt%〜40wt%の割合で銀化合物を粒子表面に付着させてなる銀化合物被覆銅粉が開示されている。
【0005】
銅粒子表面に銀を被覆させる方法として、例えば特許文献3には、還元剤が溶存した水溶液中で金属銅粉と硝酸銀を反応させる銀被覆銅粉の製造方法が提案されている。
また、置換反応を利用したものとして、特許文献4には、銅粉と、銀イオンが存在する有機溶媒含有溶液中で、銀イオンと金属銅との置換反応により、銀を銅粒子の表面に被覆する銀被覆銅粉の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−334614号公報
【特許文献2】特開2008―106368号公報
【特許文献3】特開2000−248303号公報
【特許文献4】特開2006−161081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、粒子表面部を銀層で被覆してなる銅粉粒子は、銀粒子に比べて原料コストが低いというメリットを有しているほか、銀は銅に比べて酸化を受けにくいため、導電性粉末全体の耐酸化性を高めることができる特徴を有している。
【0008】
近年、電子部品の小型化によって電極等のファインピッチ化や小面積化が進み、より優れた導電性能が求められているが、そのために銀の量を増やしたのでは、コスト面でのメリットが失われてしまう。
【0009】
そこで本発明の目的は、粒子表面部を銀層で被覆してなる銅粉粒子からなる導電性粉末において、導電性粉末の含有量を少なくしても、優れた導電特性を得ることができる、新たな導電性粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、銅粉粒子の表面に銀層を備えたデンドライト状導電性粉末であって、銀の含有量が銅の含有量の3.0〜30.0質量%であることを特徴とするデンドライト状導電性粉末を提案するものである。
【0011】
本発明の導電性粉末は、デンドライト状の粒子であるため、例えば粒状粒子と比較すると、粒子同士の接点の数が多くなり、導電性粉末の含有量を少なくしても優れた導電特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で得られた導電性粉末から任意に選択した一部の粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率で観察した際のSEM写真である。
【図2】実施例4で得られた導電性粉末から任意に選択した一部の粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率で観察した際のSEM写真である。
【図3】実施例5で得られた導電性粉末から任意に選択した一部の粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率で観察した際のSEM写真である。
【図4】比較例1で得られた導電性粉末から任意に選択した一部の粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率で観察した際のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳述するが、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(本導電性粉末)
本実施形態に係る導電性粉末(以下「本導電性粉末」と称する)は、銅粉粒子(「芯材」とも称する)の表面に銀層を備えた導電性粉末である。
【0015】
(粒子形状)
本導電性粉末は、電子顕微鏡観察(1000倍)による粒子形状が、デンドライト状を呈することが重要である。
ここで、「デンドライト状」とは、主枝から枝部分が分岐して平面状或いは三次元的に成長してなる形状のものを包含する。
【0016】
好ましくは、デンドライト状の中でも、幅広の葉が集まって松ぼっくり状を呈するものではなく、棒状の主枝から棒状の分岐が適宜間隔を置いて伸長してなる針枝状を呈するのが好ましい。
デンドライト状と呼ばれるものの中には、多数の針状部が放射状に伸長してなる形状のものもある。しかし、本導電性粉末に主として含まれる粒子は、同じくデンドライト状を呈する粒子であっても、棒状の主枝から棒状の分岐が適宜間隔を置いて伸長してなる針枝状か、或いは前記分岐の内、一部の分岐が途中で折れた針枝状を呈するものであるのが好ましい。
【0017】
但し、電子顕微鏡で観察した際(1000倍)、非デンドライト状の粒子が混じっていても、多くがデンドライト状であれば、同様の効果を得ることができる。かかる観点から、本導電性粉末は、電子顕微鏡で観察した際(1000倍)、デンドライト状の粒子が80%以上、好ましくは90%以上を占めていれば、非デンドライト状の粒子が含まれていてもよい。
【0018】
(銀の量)
本導電性粉末において、銀の含有量は、本導電性粉末全体に対して3.0〜30.0質量%であることが重要である。銀の含有量が、銅の含有量の3.0質量%以上であれば、銅粒子の表面を均一に被覆するのに十分な量であるため、銅の露出が少なくなり、十分な導電性を得ることができる。その一方、30.0質量%以下であれば、導電性を得ることは十分であり、しかも、必要以上に銀を被覆することなく経済的である。言い換えれば、30.0質量%以下であれば、製造の方法にもよるが、銀粒子と比較して経済的により優位となるから好ましい。このような観点から、銀の含有量は、粉末全体に対して3.0〜30.0質量%であるのが好ましく、中でも5.0質量%以上或いは25.0質量%以下、その中でも8.0質量%以上或いは23.0質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0019】
(嵩密度:AD)
本導電性粉末の嵩密度は、0.40〜1.00g/cm3であることが好ましい。デンドライトが発達していると、粒子同士が最密に充填できないため、嵩密度が低くなる傾向がある。このような観点から、本導電性粉末の嵩密度は1.00g/cm3以下であるのが好ましい。他方、嵩密度が低くなり過ぎると、デンドライド状末端が微細化するため、ペースト化した際の分散性を阻害したり、ペースト粘度の上昇を招いたりするおそれがあるため、嵩密度は0.40g/cm3以上であるのが好ましい。
かかる観点から、本導電性粉末の嵩密度は0.40〜1.00g/cm3であるのが好ましく、中でも0.50g/cm3以上或いは0.90g/cm3以下、その中でも特に0.80g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
【0020】
(中心粒径(D50))
本導電性粉末の中心粒径(D50)、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50は、3.0μm〜30.0μmであるのが好ましい。導電粒子として大きな粒子であると、ペースト中の導電粒子のネットワークが少なくなるため、導電性能が低下するおそれがある。その一方、粒子径が小さ過ぎると、銀の被覆にムラをなくすためには、銀の含有量を多くする必要があり、経済的に無駄である。
よって、本導電性粉末の中心粒径(D50)は3.0μm〜30.0μmであるのが好ましく、中でも4.0μm以上或いは25.0μm以下、その中でも特に20.0μm以下であるのがさらに好ましい。
【0021】
(比表面積)
本導電性粉末のBET一点法で測定される比表面積は、0.30〜1.50m2/gであるのが好ましい。0.30m2/g以上であれば、デンドライト形状が十分に発達していることを示し、導電性に優れるから好ましい。1.50m2/g以下であれば、銀の被覆層の厚みが十分に得られ、その結果導電性に優れる粒子となり好ましい。
よって、本導電性粉末のBET一点法で測定される比表面積は0.30〜1.50m2/gであるのが好しく、中でも0.40m2/g以上或いは1.40m2/g以下、その中でも特に1.20m2/g以下であるのがさらに好ましい。
【0022】
(タップ嵩密度:TD)
本導電性粉末のタップ嵩密度は、0.70〜2.00g/cm3であるのが好ましい。本導電性粉末の粒子形状がデンドライト状において、タップ嵩密度はそのデンドライト形状の発達度合いにより変わる。本導電性粉末のデンドライト形状は、デンドライトが発達しているため、タップ嵩密度は低くなり、2.00g/cm3以下となる。他方、タップ嵩密度が0.70g/cm3以上であれば、吸油量を少なくすることができ、ペースト作成時に高い導電性を得ることができる。
かかる観点から、本導電性粉末のタップ嵩密度は0.70〜2.00g/cm3であるのが好ましく、中でも0.80g/cm3以上或いは1.80g/cm3以下、その中でも特に0.90g/cm3以上或いは1.70g/cm3以下であるのがさらに好ましい。
【0023】
(圧縮度)
本導電性粉末の圧縮度、すなわち、{(タップ嵩密度−嵩密度)/タップ嵩密度}×100で示される圧縮度は、30〜60%であるのが好ましい。
本導電性粉末の圧縮度が30%以上であれば、タップ嵩密度に対して嵩密度が低いことを意味し、粉体が分散した際に、粒子同士が接触しながら適度な空間を維持していることを意味するため、導電性において有効なネットワークを構築していると言える。一方、圧縮度が60%以下であれば、前記導電性のネットワークは十分に維持したうえで、吸油量が極端に高くならないため好ましい。
よって、かかる観点から、本導電性粉末の圧縮度は30〜60%であるのが好ましく、中でも35%以上或いは55%以下、その中でも特に40%以上或いは50%以下であるのがさらに好ましい。
【0024】
(銀の含有量×D50)
本導電性粉末においては、デンドライト状導電性粉末全体に対する銀の含有量(質量%):A、及び、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50(μm):Bに関し、次の式1を満たすことがより一層好ましい。
40(質量%・μm)≦A×B≦400(質量%・μm)・・・式1
【0025】
本導電性粉末は、粒子表面が銀で被覆されており、導電性を確保するためには、粒子表面を被覆する銀の絶対量が一定以上であるのが好ましい。よって、D50が小さい粒子は、質量割合としては多めの銀を被覆するのがより一層好ましく、D50が大きな粒子は、質量割合としては多くの銀を被覆しなくても導電性能を十分に確保することができる。かかる観点から、銀の含有量(A)×D50としては、40(質量%・μm)〜400(質量%・μm)であるのが好ましく、中でも60(質量%・μm)以上或いは350(質量%・μm)以下であるのがさらに好ましい。
【0026】
(用途)
本導電性粉末は導電特性に優れているため、本導電性粉末を用いて導電性ペーストや導電性接着剤などの導電性樹脂組成物、さらには導電性塗料など、各種導電性材料の主要構成材料として好適に用いることができる。
【0027】
例えば導電性ペーストを作製するには、本導電性粉末をバインダ及び溶剤、さらに必要に応じて硬化剤やカップリング剤、腐食抑制剤などと混合して導電性ペーストを作製することができる。
この際、バインダとしては、液状のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
溶剤としては、テルピネオール、エチルカルビトール、カルビトールアセテート、ブチルセロソルブ等が挙げることができる。
硬化剤としては、2エチル4メチルイミダゾールなどを挙げることができる。
腐食抑制剤としては、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール等を挙げることができる。
【0028】
導電性ペーストは、これを用いて基板上に回路パターンを形成して各種電気回路を形成することができる。例えば焼成済み基板或いは未焼成基板に塗布又は印刷し、加熱し、必要に応じて加圧して焼き付けることでプリント配線板や各種電子部品の電気回路や外部電極などを形成することができる。
【0029】
(製造方法)
本導電性粉末は、例えば次のようにして製造することができる。但し、次に説明する製造方法に限定されるものではない。
【0030】
例えば電解銅粉(デンドライト状)を芯材とし、この芯材を水に分散させ、キレート化剤を添加した後、水に可溶な銀塩を加えて置換反応させ、芯材の表面層を銀に置換させることで、芯材表面に銀層をコートすることができる。
電解銅粉(デンドライト状)の製造方法としては、硫酸酸性の硫酸銅水溶液中に、銅電極を浸し、直流電流を流すことにより得ることができる。その際、直流電流は、銅電極1mあたり、300A〜1000Aが好ましい。単位面積当たりの電流量が300以上であると、十分にデンドライトが発達したデンドライト状の銅粉を得ることができる。また、単位面積当たりの電流量が1000A以下であると、ジュール熱などの発熱がなく、電解液の液温度が極端に上昇しないため、析出したデンドライト状の粒子が硫酸酸性溶液に再溶解せず、その形状の特徴を失わない点で好ましい。
【0031】
芯材は、必要に応じて、置換反応前に表面酸化物(酸化皮膜)を除去する処理を行なうのがよい。例えば、芯材を水に投入して攪拌混合した後、ヒドラジン等の還元剤を加えて攪拌混合して反応させればよい。この際、加えた還元剤を十分に洗浄して芯材から除去するのが好ましい。
【0032】
キレート化剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸塩(以下「EDTA」という)、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノ二酢酸から選ばれた1種又は2種以上のものを挙げることができるが、中でもEDTAを用いるのが好ましい。
【0033】
銀塩を加える際、溶液のpH、すなわち置換反応させる際の溶液のpHは3〜4に調整するのが好ましい。
銀塩としては、水に可溶な銀塩、すなわちAgイオン供給源としては、硝酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀、塩素酸銀、6フッ化リン酸銀、4フッ化ホウ酸銀、6フッ化ヒ酸銀、硫酸銀から選ばれた1種又は2種以上を挙げることができる。
【0034】
銀塩の添加量は、理論当量以上、例えば銅を芯材として用いる場合、銅1モルに対して銀2モル以上、特に2.1モル以上となるように添加するのが好ましい。2モルより少ないと、置換が不十分となり銀の被覆が十分に行われない。但し、2.5モル以上入れても不経済である。
【0035】
銀塩は、攪拌しながらゆっくりと時間をかけて加えるのが好ましい。一度に多量に加えると、銀塩が大過剰となり、芯材と置換反応しない銀イオンが多量に生じ、銀が単独で析出するようになる。但し、あまり長時間になると、芯材が酸化して酸化皮膜を形成するため、適度な時間、例えば30分〜120分かけて銀塩濃度が0.1〜10g/Lとなるように調整するのが好ましい。
【0036】
本導電性粉末における銀の含有率は、銀塩の添加量、反応時間、反応速度、キレート化剤の添加量などによって調整することができる。
置換反応終了後は、十分に洗浄し、乾燥させるのが好ましい。
【0037】
(語句の説明)
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「好ましくYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(粒度測定)
導電性粉末(サンプル)を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉末になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)50mLを添加し、その後、超音波分散器TIPφ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散処理して測定用サンプルを調製した。
この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて体積累積粒径D50を測定した。
【0040】
(比表面積の測定)
比表面積は、ユアサアイオニクス社製モノソーブにて、BET一点法で測定した。
【0041】
(タップ嵩密度(TD)測定)
導電性粉末(サンプル)のタップ嵩密度(g/cm3)は、試料200gを用いてパウダーテスターPT−E型(ホソカワミクロン製)により測定した。
【0042】
(嵩密度(AD)測定)
導電性粉末(サンプル)の嵩密度(g/cm3)は、JIS K−5101に準拠して蔵持科学器械製作所製カサ比重測定器を使用して測定した。
【0043】
(導電性ペーストの導電性(比抵抗)評価)
シリコーンシーラント(スリーボンド社製、型番5211)に対し、導電性粉末(サンプル)を50質量%又は70質量%の比率で配合し、更に導電性粉末(サンプル)と同じ質量のトルエンを添加し、シンキー社製あわ取り練太郎(型番AR−100)を用いて十分に混合した後、ガラス板状にスクリーン印刷により1cm×10cmの帯状のパターンを印刷した。そのペーストを大気中にて70℃で60分間乾燥させ後、デジタルボルトメーター(YOKOGAWA ELECTRIC WORKS製)にて電気抵抗を測定した。
また、マイクロメーターにて膜厚を測定し、比抵抗(Ω・cm)=幅(cm)×膜厚(μm)×電気抵抗(Ω)/(長さ(cm)×104)という式にて、導電性ペーストの導電性(比抵抗)を算出した。
【0044】
<実施例1>
デンドライト状電解銅粉(純度99%以上、D50:13.4μm)300gを、50℃に保温した3000mlの純水に投入し、5分間攪拌混合してスラリーとした。次いで、還元剤である水化ヒドラジンを32g投入し、30分間攪拌を維持して還元処理を行なった。その後、ブフナロートにて固液分離し、2.8Lの純水で洗浄した後、メタノールを0.5mL添加処理して前処理済銅粉を得た。
【0045】
次に、3000mLの純水を40℃に加熱させ、上記得られた全ての前処理済銅粉を投入し、5分間攪拌混合してスラリーとした。次いで、EDTAを100g投入して10分間攪拌した後、予め用意しておいた硝酸銀溶液2000mL(硝酸銀25gを純水で完全溶解したもの)を4時間かけて攪拌しながら滴下して置換反応を進めた後、5分間攪拌を止めて静置してエージング処理を行なった。その後、ブフナロートにて固液分離し、3000mLの純水で洗浄した後、メタノール500mL添加処理後、続いてアセトン500mLで脱水処理を行い、得られたケーキをステンレス製バットに移し変えて100℃の雰囲気で5時間乾燥させて、銅粉粒子の表面に銀層を備えたデンドライト状導電性粉末(サンプル)を得た。
【0046】
得られたデンドライト状導電性粉末(サンプル)を、電子顕微鏡観察(1000倍)で観察したところ、棒状の主枝から棒状の分岐が伸長してなる針枝状を呈することを確認した。
【0047】
<実施例2−5及び比較例1−2>
表1に示した以外は実施例1と同様に行い、粉末を得た。得られた粉末は実施例1と同様に評価を行った。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
(考察)
表2に示したとおり、実施例1から実施例5の粉末はSEM写真より、その形状がデンドライト状であることが確認された。
更に、実施例の粉末および比較例の粉末をペースト化し、比抵抗を測定した結果、例えば実施例2の粉末の比抵抗について言えば、シリコーンシーラントに対し導電性粉末を50質量%配合した場合の比抵抗が0.0035Ω・cm、70質量%配合した場合の比抵抗が0.0016Ω・cmであったのに対し、比較例1の粉末は抵抗が大き過ぎて測定できない程であった。このように、本発明の導電性粉末は、ペースト中の粉末含有量が少なくても良好な導電性を得ることができることが分かった。これは、本発明のデンドライト形状を呈した粉末は、粒子同士の接点の数が多いため、ペースト中の粉末含有量が少なくても十分な導電性能を発現することができるものと推察することができる


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粉粒子の表面に銀層を備えたデンドライト状導電性粉末であって、銀の含有量がデンドライト状導電性粉末全体に対して3.0〜30.0質量%であることを特徴とするデンドライト状導電性粉末。
【請求項2】
電子顕微鏡観察(1000倍)で観察される粒子形状が、棒状の主枝から棒状の分岐が伸長してなる針枝状を呈することを特徴とする請求項1に記載のデンドライト状導電性粉末。
【請求項3】
嵩密度が0.40〜1.00g/cm3であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデンドライト状導電性粉末。
【請求項4】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が3.0μm〜30.0μmである請求項1〜3の何れかに記載のデンドライト状導電性粉末。
【請求項5】
デンドライト状導電性粉末全体に対する銀の含有量(質量%):A、及び、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50(μm):Bに関し、次の式1を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のデンドライト状導電粉末。
40(質量%・μm)≦A×B≦400(質量%・μm)・・・式1
【請求項6】
BET一点法で測定される比表面積が0.30〜1.50m2/gであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のデンドライト状導電性粉末。
【請求項7】
{(タップ嵩密度−嵩密度)/タップ嵩密度}×100で示される圧縮度が30〜60%であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のデンドライト状導電性粉末。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の導電性粉末と、樹脂とを含有する導電性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の導電性粉末を含有する導電性塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153967(P2012−153967A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16613(P2011−16613)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】