説明

導電性粒子及びその製造方法、並びに異方性導電フィルム、接合体、及び接続方法

【課題】導電層の硬度を低下させることなく、導電層の酸化を抑制しつつ、耐腐食性を向上させることができる導電性粒子及びその製造方法、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電フィルム、接合体、及び接続方法の提供。
【解決手段】導電性粒子は、コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有し、前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成され、前記導電層の表面がリン含有疎水性基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粒子及びその製造方法、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電フィルム、接合体、及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(Tape Carrier Package:TCP)との接続、フレキシブル回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板(Printed Wiring Board:PWB)との接続といった回路部材同士の接続には、バインダー樹脂中に導電性粒子を分散させた回路接続材料(例えば、異方性導電フィルム)が使用されている。また、最近では半導体シリコンチップを基板に実装する場合、回路部材同士の接続のためにワイヤボンドを使用することなく、半導体シリコンチップをフェイスダウンして基板に直接実装する、いわゆるフリップチップ実装が行われている。このフリップチップ実装においても、回路部材同士の接続には異方性導電フィルム等の回路接続材料が使用されている。
【0003】
前記異方性導電フィルムは、一般に、バインダー樹脂と、導電性粒子とを含有している。この導電性粒子として、硬度が高く、且つ金(Au)に比べてコストを低減することができるという観点から、例えば、ニッケル(Ni)系の導電性粒子が注目されている。
【0004】
前記ニッケル(Ni)系の導電性粒子として、例えば、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に形成されたニッケル又はニッケル合金を含有する導電層とからなり、前記導電層は、表面に塊状微粒子の凝集体からなる突起を有し、前記導電層の含リン率が2%〜8%である導電性粒子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この導電性粒子には、表面修飾がなされておらず、耐腐食性(耐湿性)が低いので、接続信頼性が低くなってしまうという問題があった。
【0006】
前記ニッケル(Ni)系の導電性粒子として、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面に形成された導電層とからなり、前記導電層が、含リン率が10%〜18%である非結晶構造ニッケルメッキ層と、含リン率が1%〜8%である結晶構造ニッケルメッキ層とを有する導電性粒子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、この導電性粒子には、導電層における非結晶構造部分の硬度が低く、かつ、表面修飾がなされておらず、耐腐食性が低いので、接続信頼性が低くなってしまうというという問題があった。
【0008】
前記ニッケル(Ni)系の導電性粒子として、樹脂粒子と、前記樹脂粒子の表面がニッケル及びリンを含有する金属メッキ被膜層と最表面を金層とする多層の導電性膜で被覆されており、前記金属メッキ被膜中において、基材微粒子側から金属メッキ被膜膜厚の20%以下の領域で金属メッキ組成中に10質量%〜20質量%のリンを含有し、金属メッキ被膜表面側から金属メッキ被膜膜厚の10%以下の領域で金属メッキ組成中に1質量%〜10質量%のリンを含有する導電性微粒子が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、この導電性粒子には、導電層に硬度の低い部分が存在し、かつ、表面修飾がなされておらず、耐腐食性が低いので、接続信頼性が低くなってしまうという問題があった。
【0010】
前記ニッケル(Ni)系の導電性粒子として、コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有する導電性粒子であって、前記コア粒子が、ニッケル粒子であり、前記導電層が、表面のリン濃度が10質量%以下であるニッケルメッキ層であり、前記導電層の平均厚みが1nm〜10nmである導電性粒子が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
しかしながら、この導電性粒子には、表面修飾がなされておらず、耐腐食性が低いので、接続信頼性が低くなってしまうという問題があった。
【0012】
前記ニッケル(Ni)系の導電性粒子として、金及び/又はパラジウムを含む金属原子から構成される金属表面を有する最外層と該最外層の内側に配されたニッケル層とを含む導電粒子の前記金属表面を、末端に硫黄原子を有する表面修飾基で被覆された導電粒子が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0013】
しかしながら、この導電性粒子には、表面修飾がなされているものの、耐腐食性を向上させることができないので、接続信頼性が低くなってしまうという問題があった。
【0014】
以上より、導電層の硬度を低下させることなく、導電層の酸化を抑制しつつ、耐腐食性を向上させることができる導電性粒子の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−302716号公報
【特許文献2】特許4235227号公報
【特許文献3】特許2006−228475号公報
【特許文献4】特開2010−73681号公報
【特許文献5】特許2009−280790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、導電層の硬度を低下させることなく、導電層の酸化を抑制しつつ、耐腐食性を向上させることができる導電性粒子及びその製造方法、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電フィルム、接合体、及び接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決する手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有し、前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成され、前記導電層の表面がリン含有疎水性基を有することを特徴とする導電性粒子である。
<2> コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有し、前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成され、前記導電層の表面がリン含有化合物により疎水化処理されてなることを特徴とする導電性粒子である。
<3> コア粒子が樹脂粒子であり、導電層がニッケルメッキ層である前記<1>から<2>のいずれかに記載の導電性粒子である。
<4> コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有する導電性粒子の製造方法であって、前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成され、前記導電層の表面をリン含有化合物により疎水化処理することを含むことを特徴とする導電性粒子の製造方法である。
<5> リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度が10質量%以下である前記<4>に記載の導電性粒子の製造方法である。
<6> リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度が2.5質量%〜7.0質量%である前記<5>に記載の導電性粒子の製造方法である。
<7> リン含有化合物がリン酸化合物である前記<4>から<6>のいずれかに記載の導電性粒子の製造方法である。
<8> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含み、前記バインダー樹脂がエポキシ樹脂及びアクリレート樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とする異方性導電フィルムである。
<9> フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂の少なくともいずれかを更に含む前記<8>に記載の異方性導電フィルムである。
<10> 硬化剤を更に含む前記<8>から<9>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<11> シランカップリング剤を更に含む前記<8>から<10>のいずれかに記載の異方性導電フィルムである。
<12> 第1の回路部材と、前記第1の回路部材に対向する第2の回路部材と、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材間に配設された前記<8>から<11>のいずれかに記載の異方性導電フィルムとを有し、前記第1の回路部材における電極と、前記第2の回路部材における電極とが、導電性粒子を介して接続されたことを特徴とする接合体である。
<13> 第1の回路部材がフレキシブル回路基板であり、第2の回路部材がプリント配線基板である前記<12>に記載の接合体である。
<14> 前記<8>から<11>のいずれかに記載の異方性導電フィルムを用いた接続方法であって、第1の回路部材及び第2の回路部材のいずれかに前記異方性導電フィルムを貼付けるフィルム貼付工程と、前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを位置合わせするアライメント工程と、前記第1の回路部材における電極と、前記第2の回路部材における電極とを、導電性粒子を介して接続する接続工程とを含むことを特徴とする接続方法である。
<15> 第1の回路部材がフレキシブル回路基板であり、第2の回路部材がプリント配線基板である前記<14>に記載の接続方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、導電層の硬度を低下させることなく、導電層の酸化を抑制しつつ、耐腐食性を向上させることができる導電性粒子及びその製造方法、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電フィルム、接合体、及び接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の導電性粒子での疎水化処理を説明するための模式図である。
【図2】図2は、本発明の導電性粒子の断面図である(その1)。
【図3】図3は、本発明の導電性粒子の断面図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(導電性粒子及びその製造方法)
本発明の導電性粒子は、少なくとも、コア粒子と、導電層とを有し、必要に応じて、突起などを有する。
【0021】
<コア粒子>
前記コア粒子としては、前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成されている限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂粒子、金属粒子、などが挙げられる。前記コア粒子は、単層構造、複数構造のいずれであってもよい。
【0022】
−樹脂粒子−
前記樹脂粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
前記樹脂粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表面形状が微小凹凸を有することが好ましい。
【0024】
前記樹脂粒子の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造、積層構造、などが挙げられる。
【0025】
前記樹脂粒子の数平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましく、2μm〜20μmがより好ましく、5μm〜10μmが特に好ましい。
前記樹脂粒子の数平均粒子径が1μm未満であり、又は、50μmを超えると、粒度分布がシャープなものが得られないことがあり、工業的な製造が実用的用途の点からみても必要性に欠けることがある。一方、前記樹脂粒子の数平均粒子径が前記特に好ましい範囲内であると、良好な接続信頼性を得る点で有利である。
なお、前記樹脂粒子の数平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックMT3100)を用いて測定される。
【0026】
前記樹脂粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、(メタ)アクリル酸エステル重合体、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン系重合体が好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルのいずれかを意味し、前記(メタ)アクリル酸エステルは、必要に応じて、架橋型、非架橋型いずれかであってもよく、これらを混合して用いてもよい。
【0027】
−金属粒子−
前記金属粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記金属粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、接続面積を大きくして高電流を流すことができる点で、表面形状が微小凹凸を有することが好ましい。
【0029】
前記金属粒子の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造、積層構造、などが挙げられる。
【0030】
前記金属粒子の数平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜50μmが好ましく、2μm〜20μmがより好ましく、5μm〜10μmが特に好ましい。
前記金属粒子の数平均粒子径が1μm未満であり、又は、50μmを超えると、粒度分布がシャープなものが得られないことがあり、工業的な製造が実用的用途の点からみても必要性に欠けることがある。一方、前記金属粒子の数平均粒子径が、前記特に好ましい範囲内であると、PWBとFPCとの接続後に圧痕検査が可能となる点で有利である。
なお、前記金属粒子の数平均粒子径は、例えば、粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックMT3100)を用いて測定される。
【0031】
前記金属粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、金、純ニッケル、不純物含有ニッケル、などが挙げられる。前記不純物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機物、無機物のいずれであってもよく、例えば、リン、ホウ素、炭素、などが挙げられる。
【0032】
<導電層>
前記導電層としては、コア粒子の表面に形成され、表面にリン含有疎水性基を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケルメッキ層、ニッケル/金メッキ層などが挙げられる。
【0033】
前記導電層を形成するメッキ方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無電解法、スパッタリング法、などが挙げられる。
【0034】
−リン含有疎水性基−
前記リン含有疎水性基は、リン原子及び炭素数3以上の疎水性基を有する基を表し、例えば、下記構造式(1)で表される基が挙げられる。
【化1】

但し、Rは、炭素数3以上のアルキル基を表す。
前記疎水性基としては、炭素数3以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル基(長鎖アルキル鎖)、などが挙げられる。なお、前記アルキル基(長鎖アルキル鎖)は、置換基を有していてもよく、直鎖状でも、分岐を有していてもよいが、置換基を有さない直鎖状のものが好ましい。
前記アルキル基(長鎖アルキル鎖)の炭素数としては、3以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3〜16が好ましく、4〜12がより好ましい。
前記炭素数が3未満であると、導電性粒子の表面が酸化し易くなることがあり、16を超えると、接続抵抗値が高くなることがある。一方、前記炭素数がより好ましい範囲内であると、良好な接続信頼性を得ることができる。
前記リン含有疎水性基の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル基、などが挙げられる。
前記導電層にリン含有疎水性基が導入されたか否かは、XPSによる測定、TOF−SIMSによる測定、TEMによる断面観察、IR測定、などにより、導電層表面におけるリン原子及びエステル結合のいずれかの存在の有無により、判断することができる。
【0035】
前記導電層におけるリン濃度が低いほど、結晶性が増すために、導電率が高くなり、硬度が高くなり、導電性粒子の表面が酸化しにくくなる。よって、前記導電層におけるリン濃度が低いと、導電性粒子を介した回路部材同士の接続において、高い接続信頼性が得られる。しかしながら、前記導電層におけるリン濃度が低いと、イオン化しやすくなり、耐湿性が低下する。
そこで、前記導電層の表面にリン含有疎水性基を導入して、導電層におけるリン濃度を低く維持し、導電層の表面のリン濃度のみを高くする (導電層の表面にリンを偏在させる)ことにより、導電層が劣化して(導電層の硬度が低下して)酸化しないようにすることができ、また、導電性粒子の表面が酸化するのを更に防止することができ、さらに、導電性粒子の耐腐食性(耐湿性)を向上させることができる。
【0036】
前記リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以下が好ましく、2.5質量%〜7.0質量%がより好ましい。
ここで、前記導電層内でリン濃度勾配を有していてもよい。例えば、前記導電層のコア粒子側のリン濃度が15質量%であっても、前記導電層におけるリン濃度が10質量%以下であればよい。
前記リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度が10質量%以下であると、導電層の導電率及び硬度が高くなり、酸化膜のある電極(配線)に対しても長期にわたり接続信頼性が優れる。一方、前記リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度が10質量%より高くなると、延展性が増すことで、酸化膜のある電極(配線)に対して低い接続抵抗が得られない場合がある。一方、前記リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度がより好ましい範囲内であると、良好な接続信頼性を得る点や導電性粒子の保存安定性の向上ができる点で有利である。
【0037】
前記リン含有化合物により疎水化処理されてなる導電層表面(後述するリン含有化合物により疎水化処理されてなる導電層表面)のリン濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜8質量%がより好ましい。
前記導電層表面のリン濃度が0.5質量%未満であると、導電層の結晶性が高くなり過ぎることがあり、10質量%を超えると、導電層が酸化し易くなることがある。一方、前記導電層表面のリン濃度が、より好ましい範囲内であると、良好な接続信頼性を得る点で有利である。
【0038】
前記導電層におけるリン濃度を調整する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メッキ反応のpHを制御する方法、メッキ液中のリン酸濃度を制御する方法、などが挙げられる。
これらの中でも、メッキ反応のpHを制御する方法が、反応制御に優れている点で、好ましい。
なお、前記導電層におけるリン濃度及び前記導電層表面のリン濃度は、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製、商品名FAEMAX−7000)を用いて測定される。
【0039】
前記導電層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20nm〜200nmが好ましく、50nm〜150nmがより好ましい。
前記導電層の平均厚みが20nm未満であると、接続信頼性が悪化することがあり、200nmを超えると、粒子同士がメッキにより凝集しやすくなり、巨大粒子ができ易くなることがある。一方、前記導電層の平均厚みが、より好ましい範囲内であると、高い接続信頼性を得ることができ、また、導電層を形成するメッキ工程時に、メッキ粒子の凝集を回避することができ、2個〜3個のメッキ連結粒子が形成されるのを防止して、ショートを防止することができる。
また、前記コア粒子がニッケル粒子である導電性粒子は、前記コア粒子が樹脂粒子である導電性粒子よりも、前記導電層としてニッケルメッキ層を薄く形成することができる。
なお、前記導電層の平均厚みは、無作為に選んだ10個の導電性粒子の導電層の厚みを、例えば、収束イオンビーム加工観察装置(日立ハイテクノロジー社製、商品名FB−2100)を用いて断面研磨を行い、透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、商品名H−9500)を用いて測定し、これらの測定値を算術平均した厚みである。
【0040】
以下、本発明の導電性粒子を図2及び図3を用いて説明する。導電性粒子10としては、ニッケル粒子12と、ニッケル粒子12の表面に形成された導電層11とを有するもの(図2)、突起13をさらに有するもの(図3)などが挙げられる。
【0041】
(導電性粒子の製造方法)
本発明の導電性粒子の製造方法は、少なくとも、疎水化処理工程を含んでなる。
【0042】
<疎水化処理工程>
前記疎水化処理工程は、導電層の表面をリン含有化合物により疎水化処理する工程である。
【0043】
−リン含有化合物−
前記リン含有化合物としては、リンを含有する限り、特に制限はなく、例えば、リン酸化合物、などが挙げられる。
前記リン酸化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、末端に水酸基及びアルキル基を有する界面活性剤、などが挙げられる。
前記界面活性剤は、例えば、図1に示すように、末端の水酸基と、ニッケルメッキ粒子100の表面の水酸基における水素原子とが脱離する脱水縮合反応が起こって、ニッケルメッキ粒子100の表面にアルキル基(長鎖アルキル鎖)Rが導入され、疎水化処理(撥水性が付与)される。
前記アルキル基(長鎖アルキル鎖)の炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3〜16が好ましく、4〜12がより好ましい。
前記炭素数が3未満であると、導電性粒子の表面が酸化し易くなることがあり、16を超えると、接続抵抗値が高くなることがある。一方、前記炭素数がより好ましい範囲内であると、良好な接続信頼性を得ることができる。
【0044】
−疎水化処理−
前記疎水化処理としては、リン含有化合物で導電層の表面を処理する処理である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
本発明では、導電層の表面をリン含有化合物により疎水化処理することにより、導電層におけるリン濃度を低く維持しつつ、導電層の表面のリン濃度のみを高くする(導電層の表面にリンを偏在させる)ことができる。導電層におけるリン濃度を低く維持することにより、導電層が劣化して(導電層の硬度が低下して)、酸化しないようにすることができる。導電層の表面のリン濃度のみを高くする(導電層の表面にリンを偏在させる)ことにより、導電性粒子の表面が酸化するのを更に防止することができる。リン含有化合物における疎水性基を導電性粒子の表面に導入することにより、耐腐食性を向上させることができる。
【0046】
前記リン酸化合物により疎水化処理されてなる導電層の表面における全水酸基に対するリン酸エステル化合物の置換率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
(異方性導電フィルム)
本発明の異方性導電フィルムは、本発明の導電性粒子と、バインダー樹脂とを少なくとも含み、硬化剤、樹脂、シランカップリング剤、必要に応じて、その他の成分を含む。
【0048】
<バインダー樹脂>
前記バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂及びアクリレート樹脂の少なくともいずれかを含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、などが好ましい。なお、前記バインダー樹脂が熱可塑性樹脂である場合、導電性粒子をしっかりと押さえ込むことができずに接続信頼性が悪化してしまう。
前記バインダー樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、などが挙げられる。
【0049】
−エポキシ樹脂−
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラッ
ク型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
−アクリレート樹脂−
前記アクリレート樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
<硬化剤>
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱により活性化する潜在性硬化剤、加熱により遊離ラジカルを発生させる潜在性硬化剤などが挙げられる。
前記加熱により活性化する潜在性硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミン、イミダゾール等のアニオン系硬化剤やスルホニウム塩などのカチオン系硬化剤などが挙げられる。
前記加熱により遊離ラジカルを発生させる潜在性硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物などが挙げられる。
【0052】
<樹脂>
前記樹脂としては、常温(25℃)で固形である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂などが挙げられる。前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれであってもよい。
前記常温で固形である樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、異方性導電フィルムに対して10質量%〜80質量%が好ましい。
前記常温で固形である樹脂の含有量が、異方性導電フィルムに対して10質量%未満であると、膜性に欠け、リール状の製品にしたときにブロッキング現象を引き起こすことがあり、80質量%を超えると、フィルムのタックが低下して回路部材に貼り付かなくなることがある。
【0053】
<シランカップリング剤>
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、などが挙げられ、アルコキシシラン誘導体が主に用いられる。
【0054】
(接合体)
本発明の接合体は、第1の回路部材と、前記第1の回路部材に対向する第2の回路部材と、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材間に配設された本発明の異方性導電フィルムとを有し、前記第1の回路部材における電極と、前記第2の回路部材における電極とが、導電性粒子を介して接続されている。
【0055】
−第1の回路部材−
前記第1の回路部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FPC基板、PWB基板などが挙げられる。これらの中でも、FPC基板が好ましい。
【0056】
−第2の回路部材−
前記第2の回路部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FPC基板、COF(chip on film)基板、TCP基板、PWB基板、IC基板、パネルなどが挙げられる。これらの中でも、PWB基板が好ましい。
【0057】
(接続方法)
本発明の接続方法は、フィルム貼付工程と、アライメント工程と、接続工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0058】
−フィルム貼付工程−
前記フィルム貼付工程は、第1の回路部材又は第2の回路部材に、本発明の異方性導電フィルムを貼付ける工程である。
【0059】
−アライメント工程−
異方性導電フィルムが貼付けられた第1の回路部材又は第2の回路部材と、異方性導電フィルムが貼付けられていないもう一方の回路部材とを、相対する端子(電極)同士が対向するように、位置合わせする工程である。
【0060】
−接続工程−
前記接続工程は、第1の回路部材における電極と、第2の回路部材における電極とを、導電性粒子を介して接続する工程である。
【0061】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
(製造例1)
<ニッケルメッキ粒子Aの作製>
数平均粒子径3.8μmのスチレン樹脂粒子(積水化学工業社製、商品名:ミクロパール)を、硝酸タリウム水溶液に投入し、60℃に加温させた状態で攪拌しながら、アンモニア水又は硫酸で所定のpHに調整した、硫酸ニッケル(アルドリッチ社製)、次亜リン酸ナトリウム(アルドリッチ社製)、クエン酸ナトリウム(アルドリッチ社製)、硝酸タリウム(アルドリッチ社製)の混合溶液を30mL/分の速度で添加することでニッケルメッキ処理を行った。そのメッキ液をろ過し、ろ過物を純水で洗浄した後、80℃の真空乾燥機で乾燥させることにより、表面のリン濃度が1.3質量%、平均厚みが101nmのニッケルメッキ層が形成されたニッケルメッキ粒子Aを作製した。
【0064】
<導電性粒子の評価>
なお、前記メッキ層の厚み測定は、得られた導電性粒子を収束イオンビーム加工観察装置(日立ハイテクノロジー社製、商品名FB−2100)を用いて断面研磨を行い、透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、商品名H−9500)を用いて行った。結果を表1に示す。
【0065】
(製造例2)
<ニッケルメッキ粒子Bの作製>
製造例1において、混合溶液中の硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸タリウムの混合比を変更したこと以外は、製造例1と同様にして、表面のリン濃度が2.6質量%、平均厚みが約101nmのニッケルメッキ層が形成されたニッケルメッキ粒子Bを作製した。
【0066】
(製造例3)
<ニッケルメッキ粒子Cの作製>
製造例1において、混合溶液中の硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸タリウムの混合比を変更したこと以外は、製造例1と同様にして、表面のリン濃度が4.8質量%、平均厚みが約102nmのニッケルメッキ層が形成されたニッケルメッキ粒子Cを作製した。
【0067】
(製造例4)
<ニッケルメッキ粒子Dの作製>
製造例1において、混合溶液中の硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸タリウムの混合比を変更したこと以外は、製造例1と同様にして、表面のリン濃度が6.9質量%、平均厚みが約100nmのニッケルメッキ層が形成されたニッケルメッキ粒子Dを作製した。
【0068】
(製造例5)
<ニッケルメッキ粒子Eの作製>
製造例1において、混合溶液中の硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硝酸タリウムの混合比を変更したこと以外は、製造例1と同様にして、表面のリン濃度が9.8質量%、平均厚みが約102nmのニッケルメッキ層が形成されたニッケルメッキ粒子Eを作製した。
【0069】
(製造例6)
<ニッケル金メッキ粒子Fの作製>
ニッケルメッキ粒子Aを置換メッキ法により表面に金メッキを施すことで、表面のリン濃度が0質量%、平均厚みが81nmのニッケルメッキ層及び厚みが20nmの金メッキ層が形成されたニッケル金メッキ粒子Fを作製した。
【0070】
(製造例7)
<ニッケルメッキ粒子Gの作製>
製造例1において、スチレン樹脂粒子を用いる代わりに、平均粒子径5.0μmのニッケル粒子(日興リカ社製、商品名ニッケルパウダー123)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、表面のリン濃度が5.0質量%、平均厚みが101mmのメッキ層が形成された金メッキ−ニッケル粒子Gを作製した。
【0071】
(実施例1〜7)
<撥水処理粒子A〜Gの作製>
リン酸エステル系界面活性剤(フォスファノールGF−199、東邦化学工業(株)製)を、その酸成分が完全に中和される量の水酸化カリウムにより中和し、10質量%界面活性剤水溶液を作製した。この作製した10質量%界面活性剤水溶液2.5g、溶媒である水50g、ニッケルメッキ粒子A〜E、G及び金メッキ−ニッケル粒子Fのいずれかの粒子50gを、ポリプロピレン(PP)容器に入れ、攪拌後、乾燥を行い、撥水性処理を施した粒子(撥水処理粒子A〜G)を作製した。
【0072】
(実施例8)
<撥水処理粒子Hの作製>
実施例3において、リン酸エステル界面活性剤(フォスファノールGF−199、東邦化学工業(株)製)を用いる代わりに、リン酸エステル界面活性剤(フォスファノールSM−172、東邦化学工業(株)製)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、表面のリン濃度が4.8質量%、平均厚みが102mmのメッキ層が形成された撥水処理粒子Hを作製した。
【0073】
<粒子の電気伝導度測定>
作製された撥水処理粒子A〜Hについて、下記測定方法で電気伝導度の測定を行った。
−電気伝導度の測定方法−
60℃の純水中で洗浄及び乾燥を行ったポリプロピレン(PP)容器を用いて、導電性粒子0.4gに対して200mLの超純水を入れ、100℃10時間で抽出を行った。その後、1時間冷却し、濾紙にてろ過を行った抽出液を、電気伝導度測定器(東亜DKK製、商品名:CM−31P)にて、電気伝導度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0074】
<導電性粒子の評価>
前記リン濃度測定は、前記エネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製、商品名FAEMAX−7000)を用いて行った。結果を表1に示す。
【0075】
<接合材料1〜8の作製>
下記組成の接着剤中に、撥水処理粒子A〜Hのいずれかの粒子を粒子密度が10,000個/mmとなるように分散させ、斯かる接着剤を、シリコン処理された剥離PETフィルム上に塗布し、乾燥させることにより厚み20μmの接合材料1〜8を得た。
【0076】
−接着剤の組成−
フェノキシ樹脂(巴工業社製、商品名:PKHC) 50質量部
ラジカル重合性樹脂(ダイセル・サイテック社製、商品名:EB−600)
45質量部
シランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名:KBM−503) 2質量部
疎水性シリカ(EVONIK社製、AEROSIL972) 3質量部
反応開始剤(日本油脂社製、商品名:パーヘキサC) 3質量部
【0077】
<接合体1〜8の作製>
得られた接合材料1〜8(20μm厚に作製した異方性導電フィルム)を用いて、評価用COF(50μmピッチ(Line/Space=1/1)、Cu8μm厚−Snメッキ、38μm厚−S’perflex基材)と、評価用IZOコーティングガラス(全表面IZOコーティングガラス、基材厚み0.7mm)との接続を行った。まず、1.5mm幅にスリットされた接合材料1〜8(20μm厚に作製した異方性導電フィルム)を評価用IZOコーティングガラスに貼り付け、その上に、評価用COFを位置合わせして仮固定した後、190℃−4MPa−10秒間の圧着条件で、緩衝材としての100μm厚のテフロン(登録商標)及び1.5mm幅の加熱ツールを用いて圧着を行い、接合体1〜8を作製した。
【0078】
<接合体1〜8の接続抵抗測定>
作製した接合体1〜8について、デジタルマルチメータ(商品名:デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法により、電流1mAを流したときの接続抵抗(Ω)を、初期と信頼性試験(温度85℃、湿度85%で500時間処理)後について測定した。結果を表2に示す。
【0079】
<保存安定性試験>
作製された撥水処理粒子A〜Hについて、30℃/60%環境オーブンに48時間と投入して、エージングを行ったのち、接合材料1〜8を作製し、さらに、接合体1〜8を作製し、作製した接合体1〜8の接続抵抗を測定した。結果を表2に示す。
【0080】
<腐食評価サンプルの作製>
評価基材として、評価用櫛歯パターンガラス(Line/Space=25/13、ITO配線)を接続材料で覆い、190℃−4MPa−10秒間の圧着条件で、緩衝材としての100μm厚のテフロン(登録商標)及び1.5mm幅の加熱ツールを用いて圧着を行い、腐食評価サンプルを作製した。
【0081】
<腐食評価サンプルの作製>
作製した腐食評価サンプルを60℃湿度95%の環境中にて暴露し、15Vの直流電圧を50時間印加し、ITO配線の腐食発生の有無を確認した。評価結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1〜2、4)
実施例1〜8において、撥水処理粒子A〜Hのいずれかの粒子を用いる代わりに、ニッケルメッキ粒子A、G及び金メッキ−ニッケル粒子Fを用いたこと以外は、実施例1〜8と同様にして、接合材料9、10及び12及び接合体9、10及び12を得て、粒子の電気伝導度の測定、粒子の硬度測定、接合体の接続抵抗測定、保存安定性試験、腐食評価サンプル作製、及び腐食評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0083】
(比較例3)
実施例3において、リン酸エステル界面活性剤(フォスファノールGF−199、東邦化学工業(株)製)を用いる代わりに、シランカップリング剤(商品名:A−187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)を用いたこと以外は、実施例3同様にして、表面のリン濃度が4.8質量%、平均厚みが102mmのメッキ層が形成されたシランカップリング処理粒子Cを作製し、接合材料11及び接合体11を得て、粒子の電気伝導度の測定、粒子の硬度測定、接合体の接続抵抗測定、保存安定性試験、腐食評価サンプル作製、及び腐食評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1及び表2より、メッキ層表面にリン含有化合物による疎水化処理がなされた導電性粒子を用いた実施例1〜8では、メッキ層表面に疎水化処理がなされていない導電性粒子を用いた比較例1〜4と比較して、電気伝導度、導通抵抗(初期及び信頼性試験後)、保存安定性、腐食評価において、良好な結果が得られることが分かった。
また、表1及び表2より、疎水化処理前の導電層表面におけるリン濃度が2.6質量%〜6.9質量%の導電性粒子を用いた実施例2〜4が、実施例1及び5〜7と比較して、電気伝導度、導通抵抗(初期及び信頼性試験後)、保存安定性、腐食評価において、良好な結果が得られたことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の導電性粒子は、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(Tape Carrier Package:TCP)との接続、フレキシブル回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)とTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板(Printed Wiring Board:PWB)との接続といった回路部材同士の接続に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0088】
10 導電性粒子
11 導電層
12 ニッケル粒子
13 突起
100 ニッケルメッキ粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有し、
前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成され、
前記導電層の表面がリン含有疎水性基を有することを特徴とする導電性粒子。
【請求項2】
コア粒子が樹脂粒子であり、導電層がニッケルメッキ層である請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
コア粒子と、該コア粒子の表面に形成された導電層とを有する導電性粒子の製造方法であって、
前記コア粒子が樹脂及び金属の少なくともいずれかで形成され、
前記導電層の表面をリン含有化合物により疎水化処理することを含むことを特徴とする導電性粒子の製造方法。
【請求項4】
リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度が10質量%以下である請求項3に記載の導電性粒子の製造方法。
【請求項5】
リン含有化合物による疎水化処理前の導電層におけるリン濃度が2.5質量%〜7.0質量%である請求項4に記載の導電性粒子の製造方法。
【請求項6】
リン含有化合物がリン酸化合物である請求項3から5のいずれかに記載の導電性粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から2のいずれかに記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含み、前記バインダー樹脂がエポキシ樹脂及びアクリレート樹脂の少なくともいずれかを含むことを特徴とする異方性導電フィルム。
【請求項8】
フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂の少なくともいずれかを更に含む請求項7に記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
硬化剤を更に含む請求項7から8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
シランカップリング剤を更に含む請求項7から9のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
第1の回路部材と、前記第1の回路部材に対向する第2の回路部材と、前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材間に配設された請求項7から10のいずれかに記載の異方性導電フィルムとを有し、前記第1の回路部材における電極と、前記第2の回路部材における電極とが、導電性粒子を介して接続されたことを特徴とする接合体。
【請求項12】
第1の回路部材がフレキシブル回路基板であり、第2の回路部材がプリント配線基板である請求項11に記載の接合体。
【請求項13】
請求項7から10のいずれかに記載の異方性導電フィルムを用いた接続方法であって、第1の回路部材及び第2の回路部材のいずれかに前記異方性導電フィルムを貼付けるフィルム貼付工程と、前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを位置合わせするアライメント工程と、前記第1の回路部材における電極と、前記第2の回路部材における電極とを、導電性粒子を介して接続する接続工程とを含むことを特徴とする接続方法。
【請求項14】
第1の回路部材がフレキシブル回路基板であり、第2の回路部材がプリント配線基板である請求項13に記載の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−278026(P2010−278026A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−193790(P2010−193790)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】