説明

導電性組成物及びセンサーケーブル

【課題】荷重に対する感度が高く、少しの荷重でも圧力を関知することが可能なセンサーケーブルと、該センサーケーブルに用いられる導電性組成物を提供する。
【解決手段】導体2周囲に、絶縁体3を介在させて、架橋ゴム成分と導電性フィラーを含有し、体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下である導電性組成物からなる導電性ゴム層4を形成してセンサーケーブル1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性組成物及びそれを用いたケーブル状の感圧センサからなるセンサーケーブルに係り、特に自動車、電気、電子機器等に好適に使用される導電性組成物及びセンサーケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル状に形成された接触式の感圧センサが、センサーケーブルとして自動車、電気、電子機器等に使用されている。従来のセンサーケーブルは、例えば、同軸ケーブル状をなし、芯線の外周に、円筒状の導電ゴム層、感圧体、センサ電極、絶縁性の外皮が順次積層された構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のセンサーケーブルは、前記導電ゴム層がカーボンを含有するゴム材料により形成されている。また上記センサーケーブルの感圧体は、磁性材料としてニッケル粉末が分散されたゴム材料により形成されている。上記従来のセンサーケーブルは、ケーブルに外側から圧力が加わり感圧体が変形すると抵抗値が変化することを利用して、圧力を検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−300559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のセンサーケーブルは、感圧体であり圧力による抵抗値変化を利用するものであるから、微小圧力では抵抗値変化を読み取りにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消しようとするものであり、荷重に対する感度が高く、少しの荷重でも圧力を関知することが可能なセンサーケーブルと、該センサーケーブルに用いられる導電性組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の導電性組成物は、架橋ゴム成分と導電性フィラーを含有し、体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下であることを要旨とするものである。
【0008】
本発明のセンサーケーブルは、導体周囲に、絶縁体を介在させて上記の導電性組成物からなる導電性ゴム層を備えることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る導電性組成物は、架橋ゴム成分と導電性フィラーを含有し、体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下であるから、耐熱性と導電性に優れたゴム層を形成することができる。
【0010】
本発明に係る導電性組成物は、内導体上に、絶縁介在させて上記の導電性組成物からなる導電性ゴム層を備えるので、導電性組成物の導電性が低く、感度の高いセンサーケーブルを形成することが可能である。また架橋ゴム成分を有することから、耐熱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明のセンサーケーブルの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は図1のA−A線幅方向断面図である。
【図3】図3は図1のB−B線長手方向断面図である。
【図4】図4は図3のセンサーケーブルに圧力が加わった状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明のセンサーケーブルの一例を示し、端部を皮むきした状態を示す斜視図であり、図2は図1のA−A線幅方向断面図であり、図3は図1のB−B線長手方向断面図である。図1〜3に示すセンサーケーブルは、導体2の周囲が、軸方向に間隔を持って螺旋状に巻き回された絶縁体からなる絶縁介在3を間に挟んで、導電性ゴム層4により被覆されている。センサーケーブル1は更に導電性ゴム層4の周囲が絶縁皮膜5により被覆されている。
【0013】
センサーケーブル1は、図3に示すように外部から圧力が加わらない状態では、導体2と導電性ゴム層4の間が絶縁介在3により空隙6が形成され、非接触の状態になっている。図4は、図3のセンサーケーブルが外側から押圧されて、圧力Pが加わった状態を示す断面図である。図4に示すように、センサーケーブル1に絶縁皮膜5の上から圧力が加わると、絶縁介在3により形成されている空隙6の部分の導電性ゴム層4が圧力により変形して導体2と接触する。
【0014】
センサーケーブル1は、導体2を芯電極とし、導電性ゴム層4はセンサ電極として構成されている。センサーケーブル1の導体2と導電性ゴム層4の端部は、電流検出素子及び制御回路等に電気的に接続されている。導体2と導電性ゴム層4が接触すると、導通し電流変化が生じて上記検出素子で電流変化を検出することができる。
【0015】
本発明では、導電性ゴム層4が架橋ゴム成分と導電性フィラーを含有し、体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下である導電性組成物から形成されているものである。導電性ゴム層4に架橋ゴム成分を用いることで耐熱性に優れたゴム層を形成することができる。更に導電性ゴム層4が、体積固有抵抗を10-1Ω・cm以下とすることで、少しの荷重でも変形し、導体2と接触した際に電流変化を読み取ることが容易であり、感度の高いセンサーケーブル1を得ることができる。
【0016】
従来、この種センサーケーブルは、感圧体を含有する感圧体層を設けて、該感圧体層が圧力を受けた際に抵抗値が変化することにより電流値が変化したのを測定して、圧力変化を関知している。これに対し、本願発明では、導体2と体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下である導電性ゴム層4が接触すると、直ちに導通させることができ、圧力変化を容易に関知することができ、感圧体を利用した場合と比較して感度の高いセンサーケーブルを得ることができる。
【0017】
体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下である導電性ゴム層4は、架橋ゴム成分と導電性フィラーを含有している導電性ゴム組成物から形成されている。導電性ゴム層4は、未架橋のゴム、導電性フィラー、架橋剤、その他の添加剤等を含む組成物を混練し加熱等して架橋させることで形成することができる。
【0018】
上記架橋ゴム成分としては、センサーケーブル1において導電性ゴム層4が圧力変化により変形して、導体2と接触して導通することが可能なゴム弾性を有する架橋ゴムが用いられる。導電性ゴム層4に柔軟な架橋ゴムを用いることで、センサーケーブル1が弱い圧力を受けた場合でも、容易に変形して導体と接触させることが可能であり、検出感度を向上させることができる。
【0019】
導電性ゴム層4に用いられる架橋ゴム成分としては、例えば架橋シリコーンゴム、架橋アクリルゴム、架橋エチレン−プロピレンゴム、架橋スチレン−ブタジエンゴム、架橋アクリロニトリル−ブタジエンゴム、架橋クロロプレンゴム、架橋エピクロルヒドリンゴム、架橋イソプレンゴム等が挙げられる。上記架橋ゴムは、一種単独で使用しても二種以上を混合して使用しても、いずれでもよい。上記架橋ゴム成分は、柔軟性、耐熱性に優れたものである。導電性ゴム層4は、上記架橋ゴムを用いることにより、柔軟性、耐熱性に優れ、荷重に対する感度が高く、少しの荷重で内部の導体と接触させることができる。
【0020】
上記架橋シリコーンゴムとしては、架橋剤を混練した後、加熱架橋させることで弾性体となるミラブル型(加熱架橋型)、或いは架橋前は液状である液状ゴム型のいずれを用いてもよい。液状ゴム型シリコーンゴムは、室温付近で架橋が可能な室温架橋型(RTV)と、混合後100℃付近で加熱すると架橋する低温架橋型(LTV)がある。
【0021】
上記ミラブル型シリコーンゴムは、架橋温度が180℃以上と比較的高温であり安定性が良いので、混練の際の混合がし易く、作業性に優れるという利点がある。これに対し、液状ゴム型シリコーンゴムは、架橋温度が通常120℃程度と低温であるため、安定性が低く混練の際の発熱を低く抑制する必要があり、温度の管理などが煩わしくなるおそれがある。ミラブル型シリコーンゴムは、直鎖状のオルガノポリシロキサンを主原料(生ゴム)として、補強充填剤、増量充填剤、分散促進剤、その他添加剤などを配合したゴムコンパウンドとして市販されているものを用いてもよい。
【0022】
上記架橋アクリルゴムは、未架橋のアクリルゴムと導電性フィラー等を含む組成物を所定の形状に成形した後、加熱してアクリルゴムを架橋処理することで架橋されたものである。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とする。
【0023】
上記アクリルゴムは、例えばアクリル酸エチルを主成分とし、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル等の他のモノマーと、架橋を行うためのコモノマーと共重合させたものが挙げられる。アクリルゴムの架橋を行うためのコモノマーとしては、2−クロロエチルビニルエーテル等の含ハロゲン化合物、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、エチリデンノルボルネン等のジエン系化合物等が挙げられる。上記アクリルゴムは、市販されているものを用いてもよい。
【0024】
上記架橋エチレン−プロピレンゴムは、未架橋のエチレン、プロピレン、ジエン等の共重合体からなるゴムと導電性フィラー等を含む組成物を、加熱等して架橋させて得られるものである。上記共重合体からなるゴムは、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)がある。上記ジエンとしては、エチリデンンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。
【0025】
上記架橋スチレン−ブタジエンゴムは、スチレンとブタジエンを乳化重合又は溶液重合等で重合させたスチレン−ブタジエンゴム(SBR)と導電性フィラー等を含む組成物を所定の形状に成形した後、加熱等によりスチレン−ブタジエンゴムを架橋処理することで架橋されたものである。
【0026】
上記架橋アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、アクリルニトリルとブタジエンの共重合ゴム(NBR)を加熱等により架橋処理することで架橋されたものである。アクリルニトリル−ブタジエン共重合ゴムは、第3のモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル等と共重合し反応性末端基を有するものや、両末端が、カルボキシル基、メルカプト基、水酸基等になったテレケリック型等を用いることができる。
【0027】
上記架橋クロロプレンゴムは、クロロプレンゴム(CR)を加熱等により架橋処理することで架橋されたものである。クロロプレンゴムは、アセチレンを原料としたクロロプレンや、ブタジエンを原料としたクロロプレンを、乳化重合等により重合させることで得られる。
【0028】
上記架橋エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリンゴムを加熱等により架橋処理することで架橋されたものである。エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドの共重合体(ECO)、エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルの共重合体、エピクロルヒドリン、エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテルの三元共重合体(GECO)等がある。
【0029】
上記架橋イソプレンゴムは、ポリイソプレン(イソプレンゴム:IR)を加熱等により架橋処理することで架橋されたものである。イソプレンゴムは、チーグラー系触媒又はリチウム系触媒を用いたイソプレンの溶液重合等により得られる。
【0030】
導電性ゴム層4に用いられる上記導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、黒鉛粉末、炭素繊維、黒鉛繊維、金属粉末等が挙げられる。これらの導電性フィラーは一種単独で使用しても、二種以上を混合して使用しても、いずれでもよい。
【0031】
上記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のいずれを用いてもよいが、導電性グレードを用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、電気化学工業社の商品名「デンカブラック」シリーズ、東海カーボン社の商品名「シースト」シリーズ、ライオン社の商品名「ケッチェンブラック」シリーズ、三菱化学社の商品名「三菱カーボンブラック」シリーズ等が挙げられる。
【0032】
上記黒鉛粉末は、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。
【0033】
上記炭素繊維は、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられ、短繊維をチョップ化したものを用いることができる。
【0034】
上記黒鉛繊維は、炭素繊維を黒鉛化したもの等が挙げられる。
【0035】
上記金属粉末は、金粉、銀粉、銅粉、銅銀合金粉、ニッケル粉、アルミニウム粉等の粉末が挙げられる。中でも導電性、コスト等を考慮すると、銅粉が好ましい。銅粉としては、例えば、市販品として同和鉱業社の商品名「PCT−9」、住友金属鉱山社の商品名「UCP−030」、福田金属社の商品名「FCC−115」、「CE−25」、三井金属社の商品名「1020Y」、「1500Y」、「1110」等が挙げられる
【0036】
導電性フィラーの添加量は、導電性ゴム組成物の体積抵抗率が10−1Ω・cm以下となるように、架橋ゴム成分の導電性等に応じ、適宜量添加すれば良く特に限定されないが、架橋ゴム成分100質量部に対し、100〜500質量部の範囲内となるように添加するのが好ましい。上記導電性フィラーの添加量が100質量部以上であれば、導電性が容易に得られる。また上記導電性フィラーの添加量が500質量部を超えて多くなりすぎると、ゴムとしての柔軟性が損なわれる虞や、導電性ゴム組成物を混練する際の分散が困難になる虞があるが、500質量部以下であれば、上記の虞がない。
【0037】
上記の導電性フィラーの中でも、導電性が高い点から金属粉が好ましい。更に金属粉の中では、金、銀等は特に導電性が優れているが、コストが高いので、比較的安価である点から、銅粉が好ましい。
【0038】
導電性フィラーは、粒径が小さくなると導電性が高くなるが、凝集し易くなって、分散性が低下する傾向がある。導電性フィラーは、導電性と分散性の点から、平均粒径が0.5〜20μmの範囲であるのが好ましい。
【0039】
導電性フィラーは、表面処理剤により表面処理が施された表面処理フィラーを用いることが好ましい。導電性フィラーとして表面処理フィラーを用いることで、架橋ゴムに対する分散性を向上させることができる。導電性フィラーの分散性が向上すると、例えばフィラーを高充填することが可能となって、導電性ゴム層の導電性を更に高めることができる。
【0040】
導電性フィラーの表面処理剤としては、シランカップリング剤、有機高分子等が挙げられる。これらは、導電性フィラーや架橋ゴム成分等の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、架橋ゴム成分が架橋シリコーンゴムの場合は、導電性フィラーの表面処理剤として、フィラー分散性が良好である点から、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0041】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン(KBM−1003)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE−846)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(KBM−7103)等を挙げることができる(括弧内は、信越化学社の商品名である)。これらは、一種単独で使用しても、二種以上を混合して用いても、いずれでも良い。
【0042】
導電性フィラーの表面処理に用いる前記シランカップリング剤の使用量は、導電性フィラーとシランカップリング剤の合計量に対し0.1〜10質量%の範囲内が好ましい。シランカップリング剤の使用量は、より好ましくは、0.5〜8質量%の範囲内である。シランカップリング剤の使用量が0.1質量%未満では、耐摩耗性向上効果が小さくなる虞があり、10質量%を超えると、導電性フィラーが凝集する虞がある。
【0043】
シランカップリング剤による導電性フィラーの表面処理方法は、特に限定されず、所定の粒径のフィラーに表面処理してもよいし、製造時に同時に処理してもよい。又、処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサンヘプタン等の脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。導電性フィラーの表面処理方法は、各種の混合装置等に導電性フィラーとシランカップリング剤を加え、混合することで処理を行うことができる。また導電性フィラーの表面処理は、樹脂組成物を作製する際に、表面処理剤を所望の添加剤と共に加えて混練してもよい。
【0044】
架橋ゴム成分として、上記の架橋シリコーンゴム以外の架橋ゴム成分を使用する場合は、表面処理剤としては架橋ゴム成分に対する分散性の点から有機高分子を用いるのが好ましい。有機高分子は、例えば、パラフィン系樹脂、オレフィン系樹脂などの炭化水素系樹脂が好ましい。炭化水素系樹脂は、具体的には、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体、もしくは相互共重合体、或いはそれらの混合物、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びそれらの誘導体などが挙げられる。表面処理剤は、上記樹脂を一種単独で使用しても、二種以上を併用しても、いずれでも良い。
【0045】
表面処理剤として用いられる有機高分子は、変性剤により変性されていてもよい。上記変性剤としては、不飽和カルボン酸、或いはその誘導体を用いることができる。具体的には不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸(MAH)、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステルなどが挙げられる。このうち好ましいのは、マレイン酸、無水マレイン酸などである。なお、これらの有機高分子の変性剤は一種単独で使用しても、二種以上を併用しても、いずれでもよい。
【0046】
有機高分子に酸を導入する方法としては、グラフト法や直接法等が挙げられる。また酸変性量としては、有機高分子と変性剤の合計量の0.1〜20質量%の範囲で用いることができる。酸変性量は、好ましくは有機高分子と変性剤の合計量の0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
【0047】
有機高分子による導電性フィラーの表面処理方法としては、特に限定されるものではない。導電性フィラーの表面処理方法は、例えば、所定の粒径のフィラーに表面処理してもよいし、合成時に同時に処理してもよい。また処理方法としては、溶媒を用いた湿式処理でもよいし、溶媒を用いない乾式処理でもよい。湿式処理の際、好適な溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などを用いることができる。また、導電性ゴムの組成物を調製する際に、表面処理剤を他のゴム原料などの材料と同時に混練してもよい。
【0048】
導電性フィラーの表面処理に用いる有機高分子の使用量(コート量)は、導電性フィラーと有機高分子の合計量の、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。有機高分子の使用量が、0.1質量%未満では分散不良となるおそれがあり、10質量%を超えると凝集するおそれがある。
【0049】
未架橋のゴム成分は、加熱等により架橋することが可能であるが、組成物中に架橋剤(加硫剤)を添加して、加熱して架橋することが好ましい。
【0050】
架橋剤は、未架橋のゴムの種類や架橋条件などに応じて適宜選択することができ、特に限定されるものではない。架橋剤としては、例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤、金属石けん、アミン、チオール、チオカルバミン酸塩、有機カルボン酸などの化合物を挙げることができる。架橋剤としては、有機過酸化物等が、架橋速度の向上の点から好ましい。
【0051】
上記架橋剤に用いられる有機過酸化物としては、例えば、ジへキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド、n−ブチル4,4−ジ(t―ブチルパーオキサイド)バレレートなどのパーオキシケタールなどを挙げることができる。
【0052】
架橋剤の配合量は、適宜決定することができる。架橋剤の配合量は、例えば、未架橋のゴムと架橋剤の合計量に対し、0.01〜10質量%の範囲で配合するのが好ましい。
【0053】
導電性組成物中には、架橋ゴム成分、導電性フィラー、架橋剤等の他に、その他の添加剤を含有していても良い。
【0054】
導電性組成物は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、まず、未架橋のゴム成分を含むゴム組成物を混練等して調製する。次いで、調製したゴム組成物を所定の形状に押出す。次いで、加熱等の架橋手段により、未架橋ゴムを架橋する。これにより、架橋ゴムと導電性フィラーを含有する導電性組成物が得られる。
【0055】
上記導電性組成物の混練方法としては特に限定されるものではなく、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダ−、混練押出機、二軸混練押出機、ロール等の通常の混練機で溶融混練して均一に分散させることが可能である。
【0056】
センサーケーブル1の導電性ゴム層4以外の構成について説明する。導体2は通常の電線の導体等を用いることができる。導体としては、例えば、銅、銅合金
、アルミニウム等が挙げられる。導体の太さはセンサーケーブルの太さ等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、0.1〜2.0mmの範囲が好ましい。
【0057】
絶縁介在3は、例えば絶縁紙、プラスチックフィルム、アラミド繊維等の繊維、絶縁電線等の絶縁体が用いられる。これらの絶縁体は、導体2と導電性ゴム層4との間に介在し、センサーケーブル1に圧力が加わらない場合には、両者の間の空隙を保持して、両者を絶縁保持することが可能な形状に形成される。
【0058】
図1に示す実施形態のセンサーケーブル1では、絶縁介在3は、導体2の周囲を螺旋状に巻き回され、軸方向では離間して空隙が形成されるように、導体2の周囲に巻かれている。絶縁介在3の厚み等は特に限定されない。
【0059】
絶縁皮膜5は、導電性ゴム層4を被覆可能な絶縁体から形成されていればよく、特に限定されるものではない。絶縁被膜5としては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。絶縁被膜5の厚みは、導電性ゴム層4に対する絶縁性を維持することが可能であると共に、センサーケーブル1の圧力に対して変形が可能な柔軟性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0060】
図1に示すセンサーケーブルの製造方法の一例を下記に示す。導体2の周囲に絶縁介在3を長手方向に間隔を持たせて巻き回す。更に絶縁介在3の周囲に、導電性ゴム層を形成する。導電性ゴム層4は、絶縁介在3の周囲に、導体と接触しないように、空隙が形成されるように形成する。更に導電性ゴム層4の周囲に絶縁皮膜5を形成することで、センサーケーブル1が得られる。
【0061】
本発明のセンサーケーブル1の太さ、長さ等は、用途等に応じて、適宜、選択することができる。
【0062】
本発明に係るセンサーケーブルは、自動車、電子・電気機器のタッチセンサーとして利用することができる。特に耐熱性、センサとしての感度が要求される用途に最適である。具体的な用途としては自動車用ドアのドアパネルと車体との間に異物の挟み込みを検出するための感圧センサとして好適に利用することが可能である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
【0064】
表1〜表16に示す配合組成の各成分を、バンバリーミキサーを用いて常温にて混合し、未架橋ゴム、導電性フィラー、架橋剤等を含むゴム組成物を調製した。次いで、プレス成形機を用いて、厚さ2mmのシートを作製し、170℃で10分保持することにより未架橋ゴムを架橋させて実施例、比較例の架橋した導電性組成物のシートを得た。得られた導電性組成物のシートについて、導電性の試験を行った。試験の結果を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
表1〜表16の配合組成の各成分の詳細と、導電性の試験方法は、下記の通りである。
【0082】
[未架橋ゴム成分]
(表1、表2のシリコーンゴム)
・シリコーンゴム1:信越化学社製シリコーンゴム、商品名「931」(組成:ジメチルシロキサン)
・シリコーンゴム2:信越化学社製シリコーンゴム、商品名「541」(組成:ジメチルシロキサン)
・シリコーンゴム3:東芝社製シリコーンゴム、商品名「2267」(組成:ジメチルシロキサン)
・シリコーンゴム4:東芝社製シリコーンゴム、商品名「2277」(組成:ジメチルシロキサン)
【0083】
(表3、表4のアクリルゴム)
・アクリルゴム1:電気化学社製アクリルゴム、商品名「4200」
・アクリルゴム2:日本ゼオン社製アクリルゴム、商品名「Nipol AR14」
・アクリルゴム3:ユニマテク社製アクリルゴム、商品名「ノッックスタイトA−5098」
・アクリルゴム4:ユニマテク社製アクリルゴム、商品名「ノックスタイトPA422」
【0084】
(表5、表6のエチレン−プロピレンゴム)
・EPゴム1:JSR社製エチレン・プロピレンゴム、商品名「JSR EP11」
・EPゴム2:JSR社製エチレン・プロピレンゴム、商品名「JSR EP43」
・EPゴム3:住友化学社製EPDM、商品名「エスプレンEPDM301」
・EPゴム4:住友化学社製EPDM、商品名「エスプレンEPDM305」
【0085】
(表7、表8のSBRゴム)
・SBRゴム1:JSR社製乳化重合スチレン・ブタジエンゴム(E−SBR)、商品名「JSR 1507」
・SBRゴム2:JSR社製乳化重合スチレン・ブタジエンゴム(E−SBR)、商品名「JSR 1500」
・SBRゴム3:日本ゼオン社製乳化重合スチレン・ブタジエンゴム(E−SBR)、商品名「Nipol 1502」
・SBRゴム4:日本ゼオン社製溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(S−SBR)、商品名「Nipol NS116R」
【0086】
(表9、表10のニトリルゴム)
・ニトリルゴム1:JSR株式会社製ニトリルゴム(NBR)、商品名「JSR N222L(高ニトリルタイプ)」
・ニトリルゴム2:JSR株式会社製ニトリルゴム(NBR)、商品名「JSR N222SH(高ニトリルタイプ)」
・ニトリルゴム3:日本ゼオン社製ニトリルゴム(NBR)、商品名「Nipol 1041(高ニトリルタイプ)」
・ニトリルゴム4:日本ゼオン社製ニトリルゴム(NBR)、商品名「Nipol 1042(中高ニトリルタイプ)」
【0087】
(表11、表12のクロロプレンゴム)
・クロロプレンゴム1:昭和電工社製クロロプレンゴム、商品名「ショウプレンGS」
・クロロプレンゴム2:昭和電工社製クロロプレンゴム、商品名「ショウプレンGW」
・クロロプレンゴム3:東ソー社製クロロプレンゴム(メルカプタン変性)、商品名「スカイプレンB−5」
・クロロプレンゴム4:東ソー社製クロロプレンゴム(メルカプタン変性)、商品名「スカイプレンB−10」
【0088】
(表13、表14のエピクロルヒドリンゴム)
・エピクロルヒドリンゴム1:ダイソー社製エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン単独重合体)、商品名「エピクロマーH」
・エピクロルヒドリンゴム2:ダイソー社製エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン・エチレンオキサイド共重合体)、商品名「エピクロマーC」
・エピクロルヒドリンゴム3:日本ゼオン社製エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン・エチレンオキサイド共重合体)、商品名「Hydrin C2000L」
・エピクロルヒドリンゴム4:日本ゼオン社製エピクロルヒドリンゴム(エピクロルヒドリン・エチレンオキサイド共重合体のアリルグリシジルエーテル変性品の変性品)、商品名「Hydrin T3106」
【0089】
(表15、表16のイソプレンゴム)
・イソプレンゴム1:クラレ社製イソプレン単独重合体、商品名「クラプレンLIR−30」
・イソプレンゴム2:クラレ社製イソプレン・スチレン共重合体、商品名「クラプレンLIR−310」
・イソプレンゴム3:日本ゼオン社製ポリイソプレンゴム(IR)、商品名「Nipol IR2200」
・イソプレンゴム4:日本ゼオン社製ポリイソプレンゴム(IR)、商品名「Nipol IR2200L」
【0090】
[導電性フィラー成分]
カーボンブラックは、表17に示すものを用いた。尚、表中の表面処理剤の欄の「KBM503」は3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社の商品名)であり、「PE」はポリエチレンであり、三井化学社製、商品名「400P」である。又、表面処理剤の処理量(コート量)は、表面処理剤とフィラーの合計量に対する表面処理剤の質量%である。
【0091】
【表17】

【0092】
銅粉は表18に示すものを用いた。
【0093】
【表18】

【0094】
架橋剤は、ジヘキシルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パーへキシルD)を用いた。
【0095】
〔導電性試験方法〕
導電性は、シートの所定の部位に導電性ペーストを塗布し、測定器で体積固有抵抗を測定して導電性を評価した。測定方法は、JIS K 6271の二重リング電極法に準拠して実施した。導電性の評価は、体積固有抵抗が、10-2Ω・cm以下を◎、10-2Ω・cm超〜1×10-1Ω・cm以下を○、10-1Ω・cm超の場合を×とした。評価結果を表1〜16に示す。
【0096】
表1〜16の導電性の試験結果に示すように、実施例のシートはいずれも体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下であった。これに対し、比較例のシートはいずれも体積固有抵抗が10-1Ω・cm超であった。
【0097】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 センサーケーブル
2 導体
3 絶縁介在
4 導電性ゴム層
5 絶縁皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ゴム成分と導電性フィラーを含有し、体積固有抵抗が10-1Ω・cm以下であることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性フィラーの含有量が、前記架橋ゴム成分100質量部に対し100〜500質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記架橋ゴム成分が、架橋シリコーンゴム、架橋アクリルゴム、架橋エチレン−プロピレンゴム、架橋スチレン−ブタジエンゴム、架橋アクリロニトリル−ブタジエンゴム、架橋クロロプレンゴム、架橋エピクロルヒドリンゴム、架橋イソプレンゴムからなる群から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記導電性フィラーが、カーボンブラック、黒鉛粉末、炭素繊維、黒鉛繊維、金属粉末からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
前記導電性フィラーが、金属粉末であることを特徴とする請求項4記載の導電性組成物。
【請求項6】
前記導電性フィラーが、表面処理剤により表面処理が施された表面処理フィラーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項7】
前記表面処理剤が、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項6記載の導電性組成物。
【請求項8】
前記表面処理剤が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−エチルアセテート、エチレン−ビニルアセテート、これらの誘導体からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含む有機高分子であることを特徴とする請求項6記載の導電性組成物。
【請求項9】
前記表面処理フィラーの前記表面処理剤のコート量が、前記導電性フィラーと前記表面処理剤の合計量に対し0.1〜10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項10】
導体周囲に、絶縁体を介在させて、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性組成物からなる導電性ゴム層を備えることを特徴とするセンサーケーブル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113736(P2013−113736A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260632(P2011−260632)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】