説明

導電性組成物

【課題】従来と同程度の大きさの電極でありながら、一層少量の被検出物質にてもそれの検出が可能な、あるいは多量の被処理物質の取り扱いや保持が可能な、電極を作成し得る導電性組成物を提供すること。
【課題手段】水素イオン導電性、アルカリ金属イオン導電性、陰イオン導電性などの固体電解質、ゼオライト、アルミナ、シリカなどの吸着剤、20℃における導電度((イオン+電子)導電性)が少なくとも5Ω−1−1の導電性金属を含む導電性組成物、およびさらに白金族金属、ニッケル化合物、コバルト化合物、タングステン化合物、モリブデン化などの触媒を含む導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関し、詳しくはガスセンサ、燃料電池などの各種の電気化学装置、なかでも電気化学素子における電極の形成材として好適な導電性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記電気化学素子における電極の形成材としては、後記の特許文献1にはハロゲンガスセンサ用の電極として、固体電解質膜の一側面にハロゲン化金属と固体電解質との混合組成物からなる電極が開示されている。また後記の特許文献2には、SF、SOF、HF、SOなどのSF6の分解ガスを検知するガスセンサ用として、固体電解質膜の一側面に上記分解ガスと反応し難い不活性物質、例えば金からなる電極が開示されている。
【0003】
ところで、上記した従来の上記電極は、その構成材料がハロゲン化金属と固体電解質との混合組成物や金などと言った単純な組成のものであって、このために電極における電気化学反応は、当該電極の表面でしか、換言すると平面的にしか生じない。このために被検出物質が多量に存在する場合には、当該電極の面積を大きくする必要があって、電気化学素子を大型化する必要があって、大型化による電気化学素子の生産コストの増大や設置スペ−スの確保の問題があった。また電気化学素子において処理対象とする反応物質量の時間的変動が大きい場合、目的の電気化学反応を行わせるには電気化学素子に印加する電圧、または通電する電流を最適に制御する必要があった。またさらに電気化学素子を燃料電池などのように、その電極において燃料などの物質の必要量を必要時間、保持することが要求されるが、従来の電気化学素子では電極におけるかかる物質の保持容量が極めて小さいので、従来の電気化学素子は、そのような用途には不向きであった。
【特許文献1】特開昭62−207952号公報
【特許文献2】特開平10−26602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯界における前述の問題に鑑みて、従来と同程度の大きさの電極でありながら、一層少量の被検出物質にてもそれの検出が可能な、あるいは多量の被処理物質の取り扱いや保持が可能な、電極を作成し得る導電性組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固体電解質、ガス吸着剤、導電性金属を含むことを特徴とする導電性組成物(以下、第一導電性組成物と称す。)、および固体電解質、ガス吸着剤、導電性金属、触媒を含むことを特徴とする導電性組成物(以下、第二導電性組成物と称す。)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第一導電性組成物は、固体電解質と導電性金属と含むので、各種の電気化学素子における電極としての導電性を、就中、後記の実施例で明らかにされるように低周波数下において良好なイオン導電性を有する。加えて吸着剤をも含むので、このために当該吸着剤の存在に基づいて導電性組成物内部での反応表面積が三次元的となり、この反応表面積の立体化に基づく増大により、電気化学反応が平面的にしか生じなかった従来の電極と異なって、格段に大量の被反応物の扱いが可能な電極の作成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態
電気化学素子として例えばメタノ−ル燃料電池の例を考えると、その場合には燃料となるメタノ−ル水溶液を電極に保持させる必要があるが、それは吸着剤を含む本発明の第一導電性組成物で形成された電極により工業的に可能となるのみならず、メタノ−ル燃料電池の大幅な小型化も実現する。また電気化学素子として六フッ化ガスを充填したガス絶縁開閉装置に設置するHFガスセンサの例を考えると、従来のこの種のガスセンサは、測定時における瞬間風速的なHFガス濃度しか測定できなかったが、HFガスセンサの電極を本発明の第一導電性組成物で形成すると、それは多量のHFガスを吸着保持可能、換言するとHFガスを蓄積保持可能であるので、ガス絶縁開閉装置の運転経過時間とその間に発生した合計HFガス量、即ちHFガス量の時間対する積分値を定量可能であって、それによりガス絶縁開閉装置の一層確度の高い寿命判定が行える。
【0008】
本発明の第二導電性組成物は、固体電解質、吸着剤、導電性金属の他に、さらに触媒を含むので、本発明の第一導電性組成物が有する上記効果に加えて、触媒により電気化学素子の電極における各種の電気化学反応を促進する作用がある。例えば前記メタノ−ル燃料電池の例を考えると、メタノ−ルの分解反応が促進されるのでメタノ−ル燃料電池の発電効率が向上する。
【0009】
本発明で用いられる固体電解質としては、一般的には融点より低い温度でイオン導電性を示す従来から公知あるいは周知のものであってよく、例えばHMo12PO40・29HO、HW12PO・29HO、HUOPO・4HO、SrCe0.95Yb0.053−α、HClO・4HO、Sb・4HO、C12(HSO1.5、Li(N)SO、KOH、CsHSO、H+−β’’−Al、NH+−H+β’’−Al、NH+−β/β’’−Ga、HxWO(但しXは0〜1、以下同様)、HxMoO、(ThO0.85(Y0.15、La0.96Ca0.04YO3−α(但しαは0〜1、以下同様)、SrCe0.95Yb0.053−α、BaCe0.90Nd0.103−α、BaCa1.18Nb1.829−α、固体高分子電解質(例えばデュポン社製の商品名;ナフィオン117)、などの水素イオン導電性の固体電解質、LiN、Li14Zn(GeO、Li3.6Si0.60.4、NaO・11Al、NaO・5.33Al、NaZrSiPO、KO・5.2Fe0.8ZnO、などのアルカリ金属イオン導電性の固体電解質、7CuBr・C12CHBr、RbCu16Cl13、α−AgI、RbAgI、AgI−AgWO、などの、1b属元素イオン導電性の固体電解質、CaF、LaF、(CeF0.95(CaF0.05、SnCll2、PbCl(+3%KCl)、(ZrO0.9(Y0.1、(CeO0.8(Gd0.2、(Bi0.75(Y0.25、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.23−α、などの陰イオン導電性の固体電解質類などの一種または二種以上が用いられる。
【0010】
吸着剤としては、固気界面で気体を物理的にあるいは化学的に吸着あるいは収着する従来から公知あるいは周知のものであってよく、例えば、方沸石、ゼオライトP、リョウ沸石、毛沸石、ゼオライトX、ゼオライトY、ソーダ沸石、モルデナイト、チャバサイト、エリオナイトなどの天然産のゼオライト類、陽イオンがKとNaである合成ゼオライト、陽イオンがNaである合成ゼオライト、陽イオンがCaとNaである合成ゼオライトなどの合成ゼオライト、などのゼオライト、さらにアルミナ、シリカゲル、骨炭、活性白土、モレキュラシーピングカーボンなどのその他の吸着剤が例示され、それら一種または二種以上が用いられる。
【0011】
導電性金属としては、20℃における導電率が、少なくとも5Ω−1・m−1の金属、例えば白金、オスミウム、ロジウム、イリジュウム、パラジウム、などの白金属金属、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、錫、など一種または二種以上が用いられる。
【0012】
反応触媒としては、一般的には反応の活性化エネルギーを低くし速やかに平衡にまで進める機能あるいは作用を有する物質であって、例えばルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジュウム、パラジウム、白金などの白金属の金属あるいはそれらの酸化物、Ni、NiFe、NiFe、NiFe、NiFe、NiFe、NiFe、NiFe、NiCo、NiCo、NiCo、NiTi、NiTi、NiW、NiW、NiMo、NiMo、NiOx(但しXは、0〜1)、NiMnO、Ni1.5Mn1.5、NiMn、Ni0.8Cu0.2Mn、Ni0.8Cu0.5Mn、Ni0.33Al0.67Ox、Ni0.80Al0.20Ox、Ni0.87Al0.13Ox、Ni0.89Cu0.11Ox、Ni0.77Sn0.23Ox、NiFeO、Ni1.5Fe1.5、NiFe、NiCr、などのニッケル化合物、Co、CoFe、CoFe、CoFe、CoTi、CoTi、CoTi、CoTi、CoW、CoW、Co、Co、CoMO、CoMO、CoMO、CoCu、CoCu、CoCu、CoSi、などのコバルト化合物、W、WB、WB、W、などのタングステン化合物、Mo、MoB、MoSi、などのモリブデン化合物、NbB、TaB、TaB、ZrB、FeSi、などのその他の化合物など一種または二種以上が用いられる。
【0013】
上記導電性組成物の構成材料例から分かる通り、ニッケル、コバルト、および白金属金属は、導電性金属並びに触媒としての両機能を有するので、本発明の第一導電性組成物および第二導電性組成物を製造する際での使用材料種の調達上や後記する導電性組成物の製造プロセスの簡素化上から特に好ましい。
【0014】
本発明の第一導電性組成物および第二導電性組成物は、固体電解質、吸着剤、導電性金属、および触媒の各少なくとも1種または2種以上を用いて混合することにより製造可能であるが、その混合方法としては、機械的混合、スパッタリングなどの通常の方法が例示される。なお、本発明の上記導電性組成物が、一層優れた吸着性と低周波電界下におけるイオン導電性とを有するためには、第一導電性組成物および第二導電性組成物が成形物などの一固体として取り扱いが可能な程に、その構成成分同士が良好に互いに近接して存在していることが望ましい。
【0015】
以下に、上記成形物を得る具体的方法の若干例を説明する。なお本発明の導電性組成物における構成材料は、一部の固体電解質を除き、全て無機物であるので、無機固体電解質を採用する場合と有機固体電解質を採用する場合とに分けて成形物を得る方法を説明する。
【0016】
先ず、構成材料が全て無機物である場合には、各構成材料の粉末を機械的に均一に混合して機械的混合物を得、次いでこの機械的混合物を高圧下、例えば50kg/cm〜1000kg/cm程度の圧力で圧縮する高圧圧縮法、上記機械的混合物を表面エネルギーの減少に基づく物質移動にて粒子間に結合が生じる程度に焼結する第一焼結法、上記高圧圧縮法で得られた圧縮物を上記と同様に焼結する第二焼結法、各構成材料のそれぞれの粉末あるいは固形片を各ターゲットとし、各ターゲットを板状に集合した集合ターゲットに対してスパッタリングするスパッタリング法、などがある。
【0017】
上記機械的混合に供される各構成材料の粉末としては、粒径が0.01μm〜1μm程度の微粒子が好ましい。本発明において、上記粒径は、全てWiegnerの粒度分析器で測定された平均粒径値である。一般的に前記した各種の電気化学素子における電極は、その厚みが数0.1μm〜100μm程度の薄いものであって、かかる薄ものは、上記のいずれの方法で得たものであっても、それをスライスしてさらに分割することは可能ではあっても、工業的にそれを行うには高度の技術と高価な装置を要して経済的に不利であるので、スライスしなくても所望の厚みを有するシート状、フィルム状などの薄膜状の一固体物が得られるように、上記一固体物形成方法に供される機械的混合物の量を調整するとよい。
【0018】
上記の第二焼結法は、上記高圧圧縮法で得られた圧縮物を焼結するので、当該圧縮物における各構成材料同士のコンパクト化が一層向上するので好ましい。上記スパッタリング法においては、上記集合ターゲットを一方に回転せしめた状態で、例えばアルゴンイオンなどの一次イオンを衝突させることにより上記円板状の集合ターゲットに含まれている各構成材料の混合物が得られるが、その際に当該円板状集合ターゲットにおける構成材料の存在量比を調整することにより、スパッタリングで得られる混合物における構成材料の量比を調整することができる。
【0019】
なお、上記機械的混合および焼結の場合、導電性金属と吸着剤とは、互いに別々に上記の各混合過程に投入してもよく、あるいは予め吸着剤の吸着内外面に導電性金属を予め無電解メッキなどによりメッキして、吸着剤と導電性金属との一体物として取り扱うようにしてもよい。なお上記一体物として取り扱う場合、上記一体物が本発明の導電性組成物に良好に分散されていると、導電性金属は、導電性金属と吸着剤とを別々に投入混合する場合と比較して、少量で必要な導電性が得られる利点がある。またその反面、吸着剤の一部の吸着面を導電性金属にて覆うので、吸着剤の吸着能を低下せしめることになる。よって、本発明の導電性組成物の吸着能と導電性の双方から試行錯誤的に最良の性能が得られるように、メッキの程度を決定すればよい。吸着剤と導電性金属との上記取り扱いやメッキの程度などは、後記する有機固体電解質を使用する場合にも同様のことが言える。
【0020】
次に、有機固体電解質を使用する場合に就き説明する。この場合には、当該有機固体電解質を適当な有機溶媒に溶解あるいは分散させてペースト状とし、それに導電性金属と吸着剤、あるいは導電性金属がメッキされた吸着剤、および触媒を分散させたものを適当な板体、例えば本発明の導電性組成物を各種の電気化学素子における電極形成材として利用する場合には、陽陰両極間に介在せしめられる固体電解質膜に塗布し、乾燥あるいは焼結する方法がよい。勿論、有機固体電解質を使用する場合でも、前記した高圧圧縮法、第一焼結法、第二焼結法、およびスパッタリング法も有効である。
【0021】
本発明における構成成分の配合量比は、本発明の前記した発明課題が達成される限り特に制限はないが、一般的な配合量比に就き、固体電解質100重量部あたりの他成分の配合量比にて説明すると、導電性金属は、それが吸着剤にメッキされずに使用される場合は、0.1〜100重量部、好ましくは1〜20重量部であり、吸着剤にメッキされて使用される場合は、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。吸着剤は、1〜100重量部、好ましくは5〜20重量部である。触媒は、1〜500重量部、好ましくは10〜100重量部である。
【0022】
本発明の第一導電性組成物および第二導電性組成物は、各種の電気化学素子における電極の形成に利用される際、多くの場合において第一導電性組成物や第二導電性組成物に含まれている固体電解質と同じ材料からなる、あるいは他の材料からなる固体電解質の膜(以下当該膜を素子中膜と称する。)の一面あるいは両面に電気的に結合した状態で固定される。その結合の方法は、上記の方法で得られた薄膜状成形物と上記素子中膜とを重ねて高圧で圧縮する、あるいは焼結する、などの方法で可能である。また第一導電性組成物や第二導電性組成物中の固体電解質が有機物である場合には、それら組成物の有機溶媒ペーストを素子中膜に塗布し、焼結する方法で可能である。
【0023】
以下、実施例および比較例により本発明を一層詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において使用された材料としては、市販品を用い、必要に応じてそれを擂り鉢にて微細化して使用されている。
【0024】
実施例1.
固体電解質としての粒径約0.5μmのHMo12PO40・29HOを、吸着剤としてゼオライトの1種である粒径約1.5μmのエリオナイトを、導電性金属として白金を用いた。なおエリオナイトは、次の条件で白金を無電解メッキした。無電解メッキ液は、ジニトロジアミン白金0.5g、28重量%濃度のアンモニア水50ミリリットル、および水250ミリリットルを加温下で溶解し、次いでそれに50重量%濃度のヒドロキシルアミン塩酸塩水溶液10ミリリットル、80重量%濃度のヒドラジン水和物5ミリリットル、を加え、さらに全量が400ミリリットルとなるように水を加えて調整したpH11.7のものである。温度24℃の当該無電解メッキ液400ミリリットルに上記エリオナイトの1gを20分間攪拌下に浸漬して無電解白金メッキを施し、次いで濾過し、イオン交換水で十分に洗浄し、乾燥して、白金メッキ層を有するエリオナイトを得た。白金メッキされる前のエリオナイト100重量部は、白金メッキ後では1重量部に増量していたので、増量分1重量部は白金メッキの重量に基づく。
次に、上記HMo12PO40・29HO100重量部に対して上記白金メッキエリオナイト20重量部の割合で混合し1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ50μmの試験片を得た。
【0025】
実施例2.
固体電解質としての粒径約0.3μmのHClO・4HOを、吸着剤としてゼオライトの1種である粒径約5μmの陽イオンがKとNaである合成ゼオライト(日揮ユニバーサル社の商品名MFI300)を、導電性金属として金を用いた。なお上記合成ゼオライトは、次の条件で金を無電解メッキした。無電解メッキ液はシアノ金(I)カリウム液0.02M、シアン化カリウム0.2M、水酸化カリウム0.2M、ホウ水素化カリウム0.4Mの成分を500ミリリットルを加温下で溶解したものである。
温度24℃の当該無電解メッキ液400ミリリットルに上記合成ゼオライト1gを20分間攪拌下に浸漬して無電解金メッキを施し、次いで濾過し、イオン交換水で十分に洗浄し、乾燥して、金メッキ層を有する合成ゼオライトを得た。金メッキされる前の合成ゼオライト100重量部は、金メッキ後では118重量部に増量していたので、増量分18重量部は金メッキの重量に基づく。次に、上記HClO・4HO100重量部に対して上記金メッキ合成ゼオライト20重量部の割合で混合し1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ50μmの試験片を得た。
【0026】
実施例3.
固体電解質として固体高分子電解質(デュポン社製の商品名;ナフィオン117)を、吸着剤としてゼオライトの1種である粒径約1μmのゼオライトPを、導電性金属として銀を用いた。なお上記ゼオライトPは、次の条件で銀を無電解メッキした。即ち、無電解メッキ液としてシアン化銀ナトリウム2g/L、塩化アンモニウム75g/L、クエン酸ナトリウム50g/L、次亜燐酸ナトリウム10g/Lを加温下で溶解したものである。当該無電解メッキ液400ミリリットルに上記ゼオライトPの1gを20分間攪拌下に浸漬して無電解銀メッキを施し、次いで濾過し、イオン交換水で十分に洗浄し、乾燥して、銀メッキ層を有するゼオライトPを得た。銀メッキされる前のゼオライトP100重量部は、銀メッキ後では112重量部に増量していたので、増量分12重量部は銀メッキの重量に基づく。
次に、上記固体高分子電解質100重量部あたり0.1リットルのアルキルベンゼン油(20℃の粘度:18c.sts)を用いて固体高分子電解質のアルキルベンゼン油ペースト得、ついで当該ペーストに上記固体高分子電解質100重量部あたり上記銀メッキゼオライトP20重量部の割合で投入混合して、混合ペーストを得、さらに当該混合ペーストを別途用意した上記固体高分子電解質と同じ材料の膜の片面上に塗布し、350℃の条件で当該塗布物を焼結し、当該塗布物の厚さ30μmの焼結膜を得た。
【0027】
実施例4.
固体電解質としての粒径約13μmのNaO・11AlOを、吸着剤としてゼオライトの1種である粒径約18μmの陽イオンがCaとNaである合成ゼオライト(日揮ユニバーサル社製品)を、導電性金属として銅を用いた。なお上記合成ゼオライトは、次の条件で銅を無電解メッキした。無電解メッキ液は、硫酸銅五水和物15g/L、EDTA-4Naを45g/L、ホルムルデヒド15g/L、添加剤としてジピリジルとシアン化ニッケルカリウムを所定量加え、pH12.5に調整したものを用いた。温度60℃の当該無電解メッキ液400ミリリットルに上記合成ゼオライト1gを20分間攪拌下に浸漬して無電解銅メッキを施し、次いで濾過し、イオン交換水で十分に洗浄し、乾燥して、銅メッキ層を有する合成ゼオライトを得た。銅メッキされる前の合成ゼオライト100重量部は、銅メッキ後では119重量部に増量していたので、増量分19重量部は銅メッキの重量に基づく。次に、上記NaO・11Al100重量部に対して上記銅メッキ合成ゼオライト20重量部の割合で混合し、1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ30μmの試験片を得た。
【0028】
実施例5.
固体電解質としての粒径約17μmの7CuBr・CH12NCHBrを、吸着剤としてゼオライトの1種である粒径約18μmのモルデナイトを、導電性金属として白金を用いた。なお上記モルデナイトは、前記実施例1における場合と同じ方法および条件で白金を無電解メッキした。白金メッキされる前のモルデナイト100重量部は、白金メッキ後では118重量部に増量していたので、増量分18重量部は白金メッキの重量に基づく。次に、上記7CuBr・C12CHBr100重量部に対して上記白金メッキモルデナイト20重量部の割合で混合し、1000kg/mmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ80μmの試験片を得た。
【0029】
実施例6.
固体電解質としての粒径約20μmのLaFを、吸着剤としてゼオライトの1種である粒径約18μmの陽イオンがNaである合成ゼオライト(日揮ユニバーサル社製品)を、導電性金属として白金を用いた。なお上記合成ゼオライトは、前記実施例1における場合と同じ方法および条件で白金を無電解メッキした。白金メッキされる前の合成ゼオライト100重量部は、白金メッキ後では118重量部に増量していたので、増量分18重量部は白金メッキの重量に基づく。次に、上記LaF100重量部に対して上記白金メッキ合成ゼオライト20重量部の割合で混合し、1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ90μmの試験片を得た。
【0030】
実施例7.
固体電解質としての粒径約20μmのLi14Zn(GeO)を、吸着剤として粒径約20μmのアルミナを、導電性金属として金を用いた。なお上記アルミナは、前記実施例2における方法と同じ条件で金を無電解メッキした。金メッキされる前のアルミナ100重量部は、金メッキ後では116重量部に増量していたので、増量分16重量部は白金メッキの重量に基づく。
次に、上記Li14Zn(GeOと上記金メッキ・アルミナとを個別に各1000kg/cmの圧力にて高圧圧縮して厚さ500μmのスパッタリング用ターゲットを得、さらに当該両ターゲットから半径5mmの円板状集合ターゲットを得た。当該円板状集合ターゲットにおけるLi14Zn(GeOの面積:金メッキ・アルミナの面積の比は、80対20とした。上記円板状集合ターゲットを回転した状態でアルゴンイオンを衝突させるスパッタリング法により、Li14Zn(GeO80重量部に対して金メッキ・アルミナ20重量部の割合で混合されてなる厚さ3μmの試験片を得た。
【0031】
実施例8.
固体電解質としての粒径約20μmのRbCu16ICl13を、吸着剤として粒径約20μmのシリカを、導電性金属として銀を用いた。なお上記シリカは、前記実施例3における方法と同じ条件で銀を無電解メッキした。銀メッキされる前のシリカ100重量部は、銀メッキ後では114重量部に増量していたので、増量分14重量部は銀メッキの重量に基づく。次に、上記RbCu16Cl13100重量部に対して上記銀メッキ・シリカ20重量部の割合で混合し、1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、次いで800℃の条件で焼結して厚さ50μmの試験片を得た
【0032】
実施例9.
固体電解質としての粒径約20μmの(ZrO)0.9(YO)0.1を、吸着剤として粒径約15μmのエリオナイトを、導電性金属として銅を用いた。なお上記エリオナイトは、次の条件で銅を無電解メッキした。即ち、無電解メッキ液として硫酸銅五水和物10g/L、酒石酸ナトリウムカリウム40g/L、水酸化ナトリウム(pH12.5)、ホルムアルデヒド13g/L、添加剤チオ尿素0.1〜2mg/L温度20℃のものを用い、当該無電解メッキ液400ミリリットルに上記エリオナイト粒子2gを20分間攪拌下に浸漬して無電解銅メッキを施し、次いで濾過し、イオン交換水で十分に洗浄し、乾燥して、銅メッキ層を有するエリオナイトを得た。銅メッキされる前のエリオナイト100重量部は、銅メッキ後では121重量部に増量していたので、増量分21重量部は銅メッキの重量に基づく。次に、上記(ZrO0.9(Y0.1100重量部に対してと上記銅メッキ・エリオナイト20重量部の割合で混合し、900kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ100μmの試験片を得た。
【0033】
実施例10.
固体電解質としての粒径約20μmのH3Mo12PO40・29H2Oを、吸着剤として粒径約15μmのエリオナイトを、導電性金属として金を、さらに触媒として粒径約1μmのNiFeOを用いた。なおエリオナイトは、前記実施例2における場合と同じ方法および条件で金を無電解メッキした。金メッキされる前のエリオナイト100重量部は、金メッキ後では118重量部に増量していたので、増量分18重量部は金メッキの重量に基づく。次に、上記HMo12PO40・29HO100重量部に対して上記金メッキエリオナイト20重量部の割合で混合し、900kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ100μmの試験片を得た。
【0034】
実施例11.
前記実施例2とは、 触媒として粒径約0.5μmのNiFeを用い対外は同様の方法にて、HClO・4HO100重量部に対して金メッキ合成ゼオライト粒子の20重量部、NiFe20の重量部の割合で混合し、800kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ100μmの試験片を得た。
【0035】
実施例12.
前記実施例3とは、触媒として粒径約0.5μmのCoFeを用いた以外は同様の方法および条件にて、前記固体高分子電解質100重量部あたり銀メッキゼオライトP20重量部、CoFe40重量部の割合で用いて塗布、焼結し、塗布物の厚さ120μmの焼結膜を得た。
【0036】
実施例13.
前記実施例4とは、触媒として粒径約0.5μmのMoBを用いた以外は同様の方法および条件にて、前記固体高分子電解質100重量部あたり銅メッキゼオライトP20重量部、MoB40重量部の割合で用いて塗布、焼結し、塗布物の厚さ100μmの焼結膜を得た。
【0037】
実施例14.
前記実施例5とは、 触媒として粒径約0.3μmのNiCoを用いた以外は同様の方法にて7CuBr・C12CHBr100重量部に対して白金メッキモルデナイト20重量部の割合で混合し1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ80μmの試験片を得た。
【0038】
実施例15.
前記実施例6とは、触媒として粒径約0.5μmのNiCoを用いた以外は同様の方法および条件にてLaF100重量部に対して白金メッキ合成ゼオライトモルデナイト20重量部の割合で混合し、900kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ100μmの試験片を得た。
【0039】
実施例16.
前記実施例7とは、触媒として粒径約0.3μmのCoTiを用いた以外は同様の方法および条件にてLi14Zn(GeO100重量部に対して金メッキアルミナ20重量部、CoTi40重量部の割合とし、同様のスパッタリング法により厚さ1μmの試験片を得た。
【0040】
実施例17.
前記実施例8とは、触媒として粒径約0.5μmのMoSiを用いた以外は同様の方法および条件にて、RbCu16Cl13100重量部に対して銀メッキ・シリカ20重量部、MoSi30重量部の割合で混合し、高圧圧縮および焼結して厚さ厚さ50μmの試験片を得た。
【0041】
実施例18.
前記実施例9とは、触媒として粒径約0.2μmのNiWを用い、(ZrO0.9(Y0.1100重量部に対して銅メッキ・エリオナイト20重量部、NiW30重量部の割合で混合し、800kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ100μmの試験片を得た。
【0042】
比較例1.
比較例1は、前記実施例1とはエリオナイトを使用しない点で異なり、それ以外は実施例1と同じであって、但しHMo12PO40・29HO100重量部に対して粒度0.1μmの白金を実施例1の場合と同量となる3.4重量部の割合で混合し、1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、厚さ50μmの試験片を得た。
【0043】
比較例2.
比較例2は、前記実施例3とはゼオライトPを使用しない点で異なり、それ以外は実施例3と同じであって、但し実施例3におけるペーストに前記固体高分子電解質100重量部あたり粒度0.1μmの銀粒子を実施例3の場合と同量となる3.6重量部の割合で投入混合して、混合ペーストを得、さらに当該混合ペーストを別途用意した上記固体高分子電解質と同じ材料の膜の片面上に塗布し、350℃の条件で当該塗布物を焼結し、当該塗布物の厚さ30μmの焼結膜を得た。
【0044】
比較例3.
比較例3は、前記実施例8とはシリカを使用しない点で異なり、それ以外は実施例8と同じであって、但しRbCu16Cl13100重量部に対して粒度0.1μmの銀粒子を実施例8の場合と同量となる3.4重量部の割合で混合し、1000kg/cmの圧力下で高圧圧縮し、次いで800℃の条件で焼結して厚さ50μmの試験片を得た。
【0045】
比較例4.
比較例4は、前記実施例16とはアルミナを使用しない点で異なり、それ以外は実施例16と同じであって、但しLi14Zn(GeO100重量部に対して粒度0.1μの金粒子を実施例16の場合と同量となる16重量部、およびCoTi40重量部の割合として、同様のスパッタリング法により厚さ1μmの試験片を得た。
【0046】
前記実施例1〜18、および前記比較例1〜4で得た各成形物に就き、下記の試験条件にて、イオン導電性、ガス吸着能、および水分吸着能を測定し、それらの測定結果を図1の表にまとめて示す。
(イオン+電子)導電性:温度20℃、周波数1kHzにおける導電度(Ω−1・m−1)を測定。イオン導電性:Tubandt法によりイオン電流の割合を測定し求めた。
ガス吸着能:試験片を100℃で、真空度0.1mmHg以上の高真空下で2時間真空処理し、ついで当該高真空下の室温に2時間保持して冷却し、かく乾燥された上記試験片を温度20℃のNOガス中に2時間保持し、当該2時間保持前後における上記試験片の重量差を測定し、当該重量差をもってNOガスのガス吸着能とした。
水分吸着能:試験片を100℃で、真空度0.1mmHg以上の高真空下で2時間真空処理し、ついで当該高真空下の室温に2時間保持して冷却し、かく乾燥された上記試験片を温度20℃、相対湿度50%の室内に2時間保持し、当該2時間保持前後における上記試験片の重量差を測定し、当該重量差をもって水分吸着能とした。
【0047】
図1から、比較例1〜4は、吸着剤を含まないのでその分、導電性金属の配合比率が高くなるのでイオン導電性においては実施例1〜18より優れてはいるが、ガス吸着能および水分吸着能が極めて低い欠点がある。これに対して、実施例1〜18では、イオン導電性においては比較例1〜4に劣るが、それでも電気化学素子用の電極と使用する上では十分な値を有し、しかも従来の電気化学素子用の電極には到底みられない高度のガス吸着能および水分吸着能を有していることがわかる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態1〜18および比較例1〜4により説明したが、本発明はそれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明における課題および解決手段の精神に沿った種々の変形形態を包含する。例えば固体電解質、吸着剤、導電性金属、および触媒としては、実施の形態1〜18で使用した以外のものであってもよく、また実施の形態1〜18では固体電解質、吸着剤、導電性金属、および触媒としていずれも一種類の材料を用いたが、2種以上の固体電解質、2種以上の吸着剤、2種以上の導電性金属、および2種以上の触媒を配合したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の導電性組成物は、前記実施例において示したNOと水分以外にも、各種のNOxガス、アンモニアガス、ハロゲンガス、SFの各種分解ガス等のガス類、各種の無機化合物およびその水溶液、アルコール、低級炭化水素油、あるいはその他の各種液体を吸着する機能を有するので、先に例示したメタノ−ル燃料電池やHFガスセンサ以外にも、NOx検出センサ、メタノ−ル燃料電池以外の各種燃料電池、室内の湿度検出および調整装置、あるいはその他の電気化学装置や素子における電極形成材としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1〜実施例18のイオン導電性、ガス吸着能、および水分吸着能を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質、吸着剤、導電性金属を含むことを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
上記固体電解質は、水素イオン導電性の固体電解質、アルカリ金属イオン導電性の固体電解質、1b属金属イオン導電性の固体電解質、および陰イオン導電性の固体電解質から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項3】
上記吸着剤は、ゼオライト、アルミナ、およびシリカから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の導電性組成物。
【請求項4】
上記導電性金属は、20℃における導電率が少なくとも5Ω−1−1のものである請求項1記載の導電性組成物。
【請求項5】
触媒を含む請求項1〜4記載の導電性組成物。
【請求項6】
上記触媒は、白金族金属、白金族金属化合物、ニッケル、ニッケル化合物、コバルト、コバルト化合物、タングステン、タングステン化合物、モリブデン、およびモリブデン化合物から選ばれる少なくとも一種である請求項5記載の導電性組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2008−60043(P2008−60043A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238967(P2006−238967)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】